説明

流量制御弁

【課題】回転運動を直線駆動に変換する機構を有するモータ駆動流量制御弁に於いて、弁軸の抜け出しを防止する係合部の摩耗を低減する構造を提供する。
【解決手段】モータの回転を弁軸の直線運動に変換する機構に於いて、弁軸上端21cにワッシャ形式の軸受部材51を嵌着し、弁軸上端21cのカシメ加工により軸受部材51を回動不動に弁軸上端21cに固着し、弁軸と軸受部材51の相対運動を防止すると共に、嵌着部の摩耗を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給湯装置に内蔵され、給湯装置内の給水管内を流れる水の流量を連続して増減させる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような流量制御弁は、水などの流体が通過する弁口と、この弁口を開閉すると共に、弁口との距離を増減することによって弁口を通過する流体の流量を変化させるように構成されている。この弁体の移動はモータによって自動で行われるように構成されている。例えば、モータの回転軸にウォームを取り付けると共に、このウォームにウォームホイルを噛合させ、ウォームホイルが回転することによって弁体を進退移動させるものが知られている。
【0003】
例えば、ウォームホイルの中心部分にスプライン構造を介して噛合する可動部材を設け、この可動部材の外周面に、本体側に螺合するネジ部を設けておき、ウォームホイルが回転すると可動部材が回転しながら軸線方向に移動する構成を採用する。そして、この可動部材に弁軸の一端を固定しておけば、弁軸の他端に取り付けた弁体を弁軸の軸線方向に移動させることができる構成を、すでに提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
但し、このものでは、弁軸を可動部材に対して完全に固定すると、可動部材の回転と共に弁軸が回転し、従って弁体まで回転する。弁体が回転すると弁体が弁座に着座する際に弁体と弁座との間に擦れが生じ、弁体の寿命が損なわれる。そこで、弁軸と可動部材との間に若干の隙間を設け、可動部材が回転しても弁軸は回転しないようにする必要がある。但し、このように隙間を設けると可動部材から弁体が容易に抜けてしまうので、弁軸の一端を可動部材から突出させ、その突出した部分に溝を設けて、溝にEリングを装着することにより弁軸が可動部材から抜け出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−139065号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の流量制御弁では、弁軸の抜け止めにEリングを用いているが、Eリングは溝に装着された状態で自由に回転するため、弁軸に対して可動部材が回転する際にEリングが弁軸に対して相対的に回転する恐れがある。Eリングが回転すると、Eリング自体が溝の内面を削り、その結果生じる摩耗粉が、ウォームホイルとウォームとの螺合部分や可動部材と本体との螺合部分に入り込み、作動を損なう恐れがある。また、Eリングが装着されている溝の内面の摩耗が進行すれば、Eリングが溝から脱落する可能性も生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、摩耗粉が生じることなく可動部材から弁軸が抜け出ないようにする構造を採用することにより上記の不具合が生じない流量制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による流量制御弁は、円筒状の外周面にネジ部を有し、このネジ部が本体側に螺合され、モータで回転されるとネジ部の作用により軸心方向に移動する可動部材と、この可動部材を可動部材の軸心に沿って一端側が貫通し、可動部材に対して回転方向には拘束されないが軸心方向には拘束される弁軸とを有し、弁軸の他端に弁体を取り付け、可動部材が移動することにより弁軸と共に弁体を移動させて開度を変化させる流量制御弁において、上記弁軸の一端側を他の部分より細くして貫通部を形成し、この貫通部と他の部分との間に形成される段部に上記可動部材の一方の端面を当接させ、可動部材の他方の端面と弁軸の一端である貫通部の端部との間にスラスト軸受部を設けて可動部材が貫通部から抜けないようにしたものであって、このスラスト軸受部を構成する1対の軸受部材のうち、貫通部の端部側の軸受部材を弁軸の貫通部に対して回転しないように固定したことを特徴とする。
【0009】
スラスト軸受部では摩耗粉は生じないが、このスラスト軸受部を構成する軸受部材が弁軸に対して回転したのではその軸受部材が弁軸を摩耗させてしまう。そこで、1対の軸受部材のうち、貫通部の端部側の一方を上記のように弁軸の一部である貫通部に対して固定して、弁軸に対して回転しないようにした。
【0010】
なお、スラスト軸受部での摩擦を低減させるために、上記軸受部材のうち、上記弁軸の貫通部に対して固定される側の軸受部材の外径と、可動部材側の軸受部材の外径とを相違させ、両軸受部材の段差部分にグリス溜まりを形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、スラスト軸受部を構成する軸梅部材を弁軸に固定したので弁軸が摩耗することによる摩耗粉が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】スラスト軸受部の拡大図
【図3】スラスト軸受部の他の形態を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明による流量制御弁であり、本実施の形態では、給湯装置に組み込まれ、出湯量を増減制御するため通水経路の途中に設置されている。この流量制御弁1の上流には流量計Fが直列に設けられており、流量制御弁1を通過する流水量を流量計Fが検知して図外の制御装置によって流水量をフィードバック制御するように構成されている。
【0014】
流量制御弁1には水が通過する弁口11が設けられており、この弁口11を開閉する弁体2が弁軸21の下端に取り付けられている。この弁軸21は自己の長手方向に沿って進退するように構成されており、図において下側に移動すると弁体2が弁口11を閉鎖して水が流れなくなる。逆にその状態から弁軸21が上方に移動すると弁体2が弁口11から離れて開弁し、水は弁口11を通って下流へと流れる。弁軸21を更に上方に移動させると弁体2が弁口11から離れ、弁口11を通過する流水量が増加する。弁軸21を進退させて弁体2と弁口11との距離を増減させることにより弁口11を通過する流水量が増減する。
【0015】
弁軸21の上端には可動部材22が取り付けられている。弁軸21の上端から所定の範囲には他の部分より細い貫通部21aが形成されている。そして、この貫通部21aに可動部材22が装着されている。貫通部21aの下端部分には段部21bが形成されており、可動部材22はこの段部21bに当接する。従って、可動部材22が下方に移動すれば、この段部21bを介して可動部材22が弁軸21を下方へと押し下げることになる。一方、弁軸21の上端でもある貫通部21aの上端にはスラスト軸受部5が設けられている。従って、可動部材22が上昇すると、このスラスト軸受部5を介して弁軸21が上方へと引き上げられることになる。なお、貫通部21aと可動部材22の内周面との間には微小な隙間が確保されており、特に弁軸21に対して回り止めはしていないが、可動部材22が回転しても弁軸21はシールとの摩擦などにより回転しないように構成されている。
【0016】
可動部材22の外周面は上下2段に分かれており、下部にネジ部22aが形成され、上部にスプライン部22bが形成されている。ネジ部22aは固定側の保持部材6に螺合しており、スプライン部22bはウォームホイル4の袋部41の内周面に形成したスプライン部4aに係合している。このため、ウォームホイル4が回転すると可動部材22も回転し、ネジ部22aの作用によって可動部材22が上下する。上述のように、可動部材22は弁軸21の貫通部21aに取り付けられているので、可動部材22が上下すると弁軸21を介して弁体2が上下することになる。
【0017】
図2を参照して、本実施の形態では、弁軸21は真鍮やステンレススチール等の金属材料で形成されている。弁軸21の上端である貫通部21aの上端21cは貫通部21aよりもさらに小径に形成されており、貫通部21aに可動部材22を取り付けた後、軸受部材52を取り付ける。この軸受部材52はワッシャ形状をしており、ステンレススチールで形成されている。そして、内径は可動部材22の内径より若干大径に形成されている。さらにその後に軸受部材51を取り付ける。この軸受部材51は軸受部材52と全く同じ材料で形成されており、外径および内径共に軸受部材52よりも小径に形成されている。
【0018】
この状態で上端21cを円錐状のカシメ具Jを用いてスピンカシメによってつぶすと、小径の軸受部材51は弁軸21に対して強固に固定される。図示のように、軸受部材51の外径と軸受部材52の外径とが相違するので段状の部分が形成される。その部分をグリス溜まり53としてグリスを付着させておく。
【0019】
この構成により、可動部材22が回転すると、可動部材22と共に軸受部材52が回転しても、両軸受部材51,52の間で滑りが生じ、回転力は軸受部材51および軸受部材51が固定されている弁軸21に伝達されることがない。
【0020】
ところで、図2に示した構成では、金属製の2枚の軸受部材51,52を用いてスラスト軸受部5を構成したが、金属製の1枚の軸受部材を用いてスラスト軸受部を構成してもよい。例えば図3に示すように、ワッシャ状の1枚の軸受部材54を弁軸21にカシメによって固定し、可動部材側の軸受部材として可動部材22自体を用い、可動部材22の上面22cと軸受部材54の下面との間で摺動するようにしてもよい。なお、本実施の形態では可動部材22を樹脂で形成した。また、グリス溜まり53を形成することは図2に示した構成と同じである。
【0021】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0022】
1 流量制御弁
2 弁体
21 弁軸
22 可動部材
31 ウォーム
4 ウォームホイル
5 スラスト軸受部
F 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外周面にネジ部を有し、このネジ部が本体側に螺合され、モータで回転されるとネジ部の作用により軸心方向に移動する可動部材と、この可動部材を可動部材の軸心に沿って一端側が貫通し、可動部材に対して回転方向には拘束されないが軸心方向には拘束される弁軸とを有し、弁軸の他端に弁体を取り付け、可動部材が移動することにより弁軸と共に弁体を移動させて開度を変化させる流量制御弁において、上記弁軸の一端側を他の部分より細くして貫通部を形成し、この貫通部と他の部分との間に形成される段部に上記可動部材の一方の端面を当接させ、可動部材の他方の端面と弁軸の一端である貫通部の端部との間にスラスト軸受部を設けて可動部材が貫通部から抜けないようにしたものであって、このスラスト軸受部を構成する1対の軸受部材のうち、貫通部の端部側の軸受部材を弁軸の貫通部に対して回転しないように固定したことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
上記軸受部材のうち、上記弁軸の貫通部に対して固定される側の軸受部材の外径と、可動部材側の軸受部材の外径とを相違させ、両軸受部材の段差部分にグリス溜まりを形成したことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246992(P2012−246992A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118616(P2011−118616)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】