説明

流量率表示システム

【課題】流量率を検出する際の、重量計の振動により生じる測定値変動を解消する。
【解決手段】測定データは、ネットワークを介してダウンロードメモリ31に転送され、荷重データは微分手段32にて微分処理され荷重変化データに変換され、第1バッファメモリ33に記憶される。加速度データは微分手段32にて微分処理され加速度変化データに変換され、第2バッファメモリ34に記憶される。第1バッファメモリ33と第2バッファメモリ34から低速で読み出されたデータは、減算手段36とアダプティフィルタ37とウエイトコントローラ38で構成されるノイズキャンセラに入力される。減算手段36から得られる減算データは、グラフ化のためにグラフ化手段39に入力された後、表示メモリ40に入力され、ディスプレイ41にグラフ化された尿の流量率が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は尿等の液体の流量率を検出して表示する流量率表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
市販されている尿流量率測定装置は、特許文献1に記載されているように専用便器と一体化されて便器の水位変化を測定するものであり家庭等で簡便に測定することが難しかった。
【0003】
そこで、重量計でコップ等の容器に流入する尿の重量変化より尿流量率を測定することが考えられるが、使用に際しては重量計を使用者が手で持って排尿する必要があり、コップの位置変動(振動)により測定値も変動して正しい流量率測定が出来ない。
【0004】
また、特許文献2には、重量計の振動により生じる測定値変動を解消するため、重量計の鉛直方向の振動を加速度センサで検出し、測定値(荷重値)に含まれる変動成分を、検出した加速度成分でキャンセルする技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−221794号公報
【特許文献2】特開2010−151812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述する従来技術は一定重量値即ち固定値をある程度の時間をかけて特定するためのものであり、流量率測定の前段でこのような技術を採用して測定する重量に含まれる変動成分を解消しようとしてもキャンセル演算が間に合わず、結果として測定する流量率に含まれる変動を除去することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の振動に影響されることなく容器に流入する液体の流量率を正確に検出して表示するため、荷重データを微分した荷重変化データを用いてその変動成分をキャンセルするべく、荷重変化データをバッファメモリから低速でノイズキャンセラに供給するものである。
【0008】
第1の発明は、容器に流入する液体の質量を測定するロードセルと、前記ロードセルが受ける加速度を検出する加速度センサと、前記ロードセルより得られる荷重値と前記加速度センサより得られる加速度値をデジタル化して荷重データと加速度データを出力するAD変換回路と、荷重データと加速度データとを微分して荷重変化データと加速度変化データとを出力する微分手段と、荷重変化データと加速度変化データを入力して記憶し低速で読み出すバッファメモリと、前記バッファメモリの出力を入力して荷重変化データ中に含まれる変動成分を軽減するノイズキャンセルデータを出力するノイズキャンセラと、ノイズキャンセルデータに基づいて形成される流量率を表示する表示手段とを設けることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、容器に流入する液体の質量を測定するロードセルと、前記ロードセルが受ける加速度を検出する加速度センサと、前記ロードセルより得られる荷重値と前記加速度センサより得られる加速度値をデジタル化して荷重データと加速度データを出力するAD変換回路と、荷重データと加速度データとを微分して荷重変化データと加速度変化データとを出力する微分手段と、荷重変化データと加速度変化データとを記憶して低速で読み出すバッファメモリと、荷重データを入力してその高域成分を除去して荷重の増加にほぼ対応する減衰制御データを出力する荷重レベル検出手段と、前記バッファメモリより出力される荷重変化データを入力し荷重変化データに含まれる高域成分の振幅値を減衰制御データ値に応じて減衰して減衰データを出力する振幅制御手段と、減衰データと加速度変化データを入力して減衰データ中に含まれる変動成分を軽減するノイズキャンセルデータを出力するノイズキャンセラと、ノイズキャンセルデータに基づいて形成される流量率を表示する表示手段とを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
よって本発明によれば、容器振動により荷重変化データに含まれる変動成分を効率的に抑圧してより正確な流量率を表示することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】流量率計本体の実施例を示す正面図である。
【図2】流量率計本体の実施例を示す右側面図である。
【図3】流量率計本体の実施例を示す左側面図である。
【図4】流量率計本体の実施例を示す正面破断図である。
【図5】流量率計に含まれる回路動作の実施例を示す機能ブロック回路図である。
【図6】流量率計に含まれるマイクロコンピュータの測定データ処理プログラムの実施例を示すフローチャート図である。
【図7】流量率計に含まれるマイクロコンピュータの音声処理プログラムの実施例を示すフローチャート図である。
【図8】記録端末、中継パソコン及び表示パソコンの回路動作に関する実施例1の機能ブロック回路図である。
【図9】実施例において測定される荷重や荷重変化や加速度の変化を示す波形説明図である。
【図10】記録端末、中継パソコン及び表示パソコンの回路動作に関する実施例2の機能ブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1が示すように、使用者が取手を持って排尿測定をする可搬式の流量率計は、本体1両側に一対のフレーム2の下部が螺子止め固定されている。これらのフレーム2の上部には紙コップ3の装着を容易にする一対のガードリング4が固定されている。一方のフレーム2の他端外側には、折りたたみ式の取手5が回動自在に枢支されている。
【0014】
取手5の枢支部分近傍には枢支位置を選択的に固定するプッシュ式の係止ピン6が設けられており、水平方向と鉛直方向に2位置に取手5を固定している。本体1の正面には使用者が排尿の感触を判定する4個の押ボタン式の自己判定スイッチ7が、また取手5にはスライドスイッチ8が設けられている。
【0015】
紙コップは、本体1上の載置台9上に着脱自在に取り付けられている。自己判定スイッチ7には、図示省略したラベルが貼り付けられており、個々の判定スイッチ7に対応して「良い」「やや良い」「少し悪い」「悪い」という4段階の感触表示が為されている。
【0016】
図2の右側面図に示すように、本体1の右側には、操作ガイド音声を出力するスピーカの放音孔10が設けられている。
【0017】
図3の左側面図に示すように、本体1の左側には、充電用のジャック孔11と充電状態を表示するLED12が設けられている。
【0018】
図4の正面一部破断図に示すように載置台9の中心の突起9aが本体1の上板1aに設けたロードセル13に当接しており、紙コップ3に流入する尿の重量が測定できるように構成されている。
【0019】
また、上板1aを挟んでロードセル13の下方には加速度センサ14が設けられている。更に、本体1内のプリント基板15には、流量率計を作動させるための回路部品(図示省略)が設けられている。
【0020】
以下、図5に従い、図示省略した回路部品が形成する電気回路の動作について説明する。まず、流量率計は充電式のバッテリー16で駆動されるように構成されており、充電電流は充電用のジャック孔11に挿入される充電プラグ(図示省略)と充電回路17を介してバッテリー16に供給され、電源コントローラー18はバッテリー16の充電状態をチェックし、充電期間中は充電確認用のLED12を赤色点灯させ満充電状態になった時点で緑色点灯させている。
【0021】
流量率計を動作させるにはまず、本体1下面に設けた電源スイッチ19をONさせる。電源スイッチ19がON状態になると電源供給回路20がマイクロコンピュータ21等の回路素子に電力を供給する。
【0022】
マイクロコンピュータ21は、この流量率計の主要動作を実行しており、入力側にはロードセル13より連続的に入力されるアナログの荷重値をデジタル化して荷重データに変換する第1AD変換回路23と、加速度センサ14より連続的に入力されるアナログの加速度値をデジタル化して加速度データに変換する第2AD変換回路24とを備えている。
【0023】
尚、第1AD変換回路23と第2AD変換回路24は、共通サンプリングパルスを入力して同一タイミングでアナログ値をデジタル値に変換している。
【0024】
更に、マイクロコンピュータ21の入力側には、使用者の排尿感触を4段階のレベルで判定できるように4個の自己判定スイッチ7と、動作の開始と終了タイミングをコントロールするためのスライドスイッチ8が、センシング入力手段として接続されている。
【0025】
一方、マイクロコンピュータ21の出力側には、SDカード22と送信機25が設けられており、測定荷重データと加速度データと感触データとを、一時記憶することや送信することができるように構成されている。
【0026】
また更に、マイクロコンピュータ21の出力側には、音声出力回路26が設けられており、アナウンスデータ等をアナログに変換してスピーカ27に入力している。
【0027】
マイクロコンピュータ21の内部には、荷重データや加速度データや感触データを記憶するデータ記憶メモリ21aと、アナウンスデータとビープ音データとを記憶する読出専用の音声メモリ21bと、使用者の自己判定操作によって入力される感触レベルを検知する感触データラッチ手段21cとを機能として持っている。
【0028】
データ記憶メモリ21aは、荷重データと加速度データとをサンプリングタイミングに同期して交互に記憶した後に感触データを一時記憶して外部に出力している。音声メモリ21bは、測定中であることを報知する測定ビープ音P1を出力する為の測定ビープ音データと、測定を終了したことを報知する終了ビープ音P2出力する為の測定終了ビープ音データと、「測定を始めます。」という測定開始アナウンスデータと、「測定を中止しました。」という測定中止アナウンスデータと、「測定を終了しました。」という測定終了アナウンスデータと、「判定ボタンを押して下さい。」という感触入力アナウンスデータとを記憶している。感触データラッチ手段21cには、排尿後に操作者が押圧した自己判定スイッチ7に応じた感触データを、データ記憶メモリ21aに記憶している。
【0029】
また、マイクロコンピュータ21は、スライドスイッチ8の操作に連動して4種類の識別をする手段を含んでおり、ON検出手段21dはスライドスイッチ8がON状態になったことを、2分タイマー21eはスライドスイッチ8がON状態になって2分を経過したことを、3秒タイマー21fはスライドスイッチ8がON状態になって3秒を経過したことを、OFF検出手段21gはスライドスッチ8がOFF状態になったことを識別している。
【0030】
更にマイクロコンピュータ21は、感触データラッチ手段21cに連動する10秒タイマー21hを備えており、感触データラッチ開始後10秒間を経過したことを識別している。
【0031】
この10秒は、ラッチを開始後測定終了ビープ音、測定終了アナウンス、感触入力アナウンスが終了して使用者が判定スイッチ7を操作するに十分な期間として設定されている。
【0032】
図6は、マイクロコンピュータ21のデータ処理プログラムを示すフローチャートを示しており、最初はステップS1でスライドスイッチ8がON状態になるまで待機状態を保つ。
【0033】
ステップS2でスライドスイッチ8がON後2分を経過したか否か判断する。2分以内であれば、ステップS3で荷重データをデータ記憶メモリ21aに取り込み、ステップS4で加速度データをデータ記憶メモリ21aに取り込み、ステップS5でスライドスイッチ8がOFF状態になっていないかチェックする。スライドスイッチ8がOFF状態となっていなければ、ステップS2に戻り前述のステップを繰り返す。
【0034】
ステップS5でスライドスイッチ8がOFFになっていれば、測定を終了しステップS6でスライドスイッチ8が3秒以内にONからOFFに切り換えられたか否かをチェックし、3秒以内に切り換えられた場合は、誤操作とみなしてデータ処理プログラムを終了する。
【0035】
3秒以上経過後に切り換えられていれば、測定が終了したものとみなしてステップS7に進む。ステップS7では、使用者の判定操作により感触データがラッチできたか否かチェックする。ラッチできていなければ、ステップS8で10秒間待機状態とする。10秒以内に感触データのラッチが出来た場合は、ステップS9で感触データをデータ記憶メモリ21aに記憶させ、ステップS10でデータ記憶メモリ21aに蓄積したデータを、送信機25とSDメモリカード22に出力する。尚、10秒以内に感触データがラッチできなかった場合は、使用者に判定スイッチ7を操作する意思がないものとみなしてステップ10に進み感触データを除くデータを送信機25とSDメモリカード22に出力する。
【0036】
図7は、マイクロコンピュータ21の音声出力処理プログラムを示すフローチャートを示しており、まずステップS11で、スライドスイッチ8がON状態になるまで待機する。
【0037】
スライドスイッチ8がON状態となるとステップS12に進み「測定を始めます。」という測定開始アナウンスが発生される。次にステップS13でスライドスイッチ8がOFFになっていないかチェックし、OFFになっていなければステップS14に進み、スライドスイッチ8がON後2分を経過していないかチェックする。ステップS14で2分を経過していない場合には、ステップS15に進み測定ビープ音P1を発生させる。以降、スライドスイッチ8がOFFになるか2分を経過するまで、定期的に測定状態を示す測定ビープ音を発生する。ステップS13でスライドスイッチ8がOFFになったことを検出したとき、ステップS16に進み、スライドスイッチON後3秒以内にスライドスイッチ8がOFFになったか否かをチェックする。3秒以上経過していない場合は、誤操作とみなしてステップS17に進み「測定を中止しました。」という測定中止のアナウンスを発生する。
【0038】
一方3秒以上が経過している場合は、適正な測定がされたものとみなして、ステップS18に進む。ステップS14でスライドスイッチ8のON後2分を経過した場合も同様に、測定が終了しているものとみなしてステップS18に進む。ステップS18では、測定ビープ音P1より長い終了ビープ音P2を発生させる。続いてステップS19で「測定を終了しました。」という終了アナウンスを発生し、更にステップS20で「判定ボタンを押してください。」という感触入力アナウンスを行い、音声アナウンスを終了する。尚、測定が終了してステップS20を完了するまでの時間は3秒程度と短く、図6のステップS8において使用者がアナウンスを聞いて判定操作を行うまでに7秒間の余裕が確保されていることが分かる。
【0039】
図8は、流量率計に無線接続されている携帯可能な小型の記録端末28と、記録端末28やSDメモリカード21に接続されてデータをインタネット等のネットワークを介して病院の表示用パソコン30に伝送する家庭用の中継パソコン29の動作を説明する機能ブロック図である。
【0040】
記録端末28は、受信機28aとデータ蓄積メモリ28bを備えており、排尿の度に測定して得られるデータを受信機28aで受信し、定められた数日分のデータをデータ蓄積メモリ28bに蓄積記憶している。
【0041】
数日分の測定データは、記録端末28を中継パソコン29に接続することによって、データ転送用メモリ29aに一旦記憶される。尚、記録端末28を利用しない場合は、流量率計に装着して測定データを記憶したSDメモリカード21を中継パソコン29のカードスロット29bに装着すれば、測定データはデータ転送用メモリ29aに記憶される。
【0042】
上記何れかの方法でデータ転送用メモリ29aに記憶された測定データは、ネットワークを介して病院の表示用パソコン30のダウンロードメモリ31に転送される。
【0043】
転送された測定データはダウンロードメモリ31より荷重データ、加速度データ、感触データの順に読出される。連続して読み出される荷重データは微分手段32にて微分処理され荷重変化データに変換され、第1バッファメモリ33に記憶される。次に連続して読み出される加速度データは微分手段32にて微分処理され加速度変化データに変換され、第2バッファメモリ34に記憶される。その後、測定データ中に感触データが含まれている場合は、感触データがキャラクタ発生手段35に入力され、感触データが文字パターンデータに変換され表示メモリ40に入力される。
【0044】
第1バッファメモリ33の荷重変化データと第2バッファメモリ34の加速度変化データは、対応関係にあるデータがパソコンの処理速度に合わせて同一タイミングで順次出力される。
【0045】
以下、本実施例のノイズキャンセルの原理を数式で説明する。
第1バッファメモリ33より減算手段36に入力されるnビット目の荷重変化データ値d(n)は、以下の式で表される。
【数1】

【0046】
また、アダプティブフィルタ37より出力されるnビット目のキャンセルデータ値y(n)は、以下の式で表される。
【数2】

【0047】
即ち、キャンセルデータ値は、(M−1)ビット前までの加速度変化データに適当な係数hを乗じて加算したM次の多項式で形成され、荷重変化データに含まれる加速度変化データ値に近似した値となる。
【0048】
更に、ノイズキャンセルされたnビット目の減算データ値e(n)は、以下の式で表される。
【数3】

【0049】
従って、減算手段36からは、真の荷重変化データ値s(n)に観測データ値η(n)を含む減算データ値e(n)が出力される。
【0050】
本実施例では、減算手段36とアダプティブフィルタ37とウエイトコントローラ38でノイズキャンセラを構成しており、荷重変化データは直接減算手段36に入力され、加速度変化データはアダプティブフィルタ37とウエイトコントローラ38に入力される。
【0051】
アダプティブフィルタ37からは、キャンセルデータが出力される。このキャンセルデータ値y(n)は、現在の加速度変化データから(M−1)ビット前までの加速度変化データに適当な係数を乗じて合算処理して得られるM次の多項式で構成されている。
【0052】
ウエイトコントローラ38は、帰還入力される減算データ値e(n)と加速度変化データとを比較し、アダプティブフィルタ37から出力されるセルデータ値y(n)の多項式の各項の係数を設定している。各項の係数は、キャンセルデータ値y(n)を、荷重変化データ中に混入する変動成分に近似するような値に設定される。尚、係数については必要に応じて公知で種々の手法を選択採用することができるので、詳細な係数の設定手法についてはその説明を割愛する。荷重変化データとキャンセルデータとを入力する減算手段36からは、変動成分が少なく真の流量率に近い減算データがノイズキャンセルデータとして出力されるため、減算データ値e(n)には変動成分値が殆ど含まれなくなる。
【0053】
流量率を表示する表示手段は、グラフ化手段39と表示メモリ40とディスプレイ41で構成されており、減算データはグラフ化のためにグラフ化手段39に入力された後、表示メモリ40に入力される。表示メモリ40には、文字信号化された感触情報も入力され、ディスプレイ41には、使用者が入力した排尿の感触とグラフ化された尿の流量率が表示される。
【0054】
上述する実施例1では、第1バッファメモリ33と第2バッファメモリ34から低速でデータを読み出すことにより、ノイズキャンセル演算に必要な十分な時間を確保しており、高精度のノイズキャンセルが可能となっている。また、加速度変化データでノイズキャンセルを行うことにより、相関性の高い変動成分を高い精度でキャンセルすることができる。
【0055】
しかし、前述する実施例1では、ノイズキャンセルするために加速度データを微分して加速度変化データとして荷重変化データのノイズキャンセルを行っていたが、図9に図示するように、荷重に混入する加速度成分は、ロードセルに加わる質量に比例して振幅が増加するが、加速度センサから得られる加速度はロードセルに加わる質量には影響されない。即ち、測定する尿量の増加と共に荷重に混入する加速度成分の振幅だけが大きくなる。その結果、アダプティブフィルタを用いたノイズキャンセルの精度のアップには限界があった。
【0056】
そこで、実施例2では、測定する荷重の質量増加に伴う加速度成分の振幅増加を抑圧して、変動成分と加速度変化データの相関性を更に高めてノイズキャンセル効果を更にアップするよう構成している。
【0057】
以下、実施例2について説明する。尚、図1から図8までは実施例1も実施例2も共通であり、共通部分の重複説明を割愛し、本実施例にのみ固有の図10に従い説明する。
【実施例2】
【0058】
図10は、流量率計に無線接続されている携帯可能な小型の記録端末28と、記録端末28やSDメモリカード21に接続されてデータをインタネット等のネットワークを介して病院の表示用パソコン30に伝送する家庭用の中継パソコン29の動作を説明する機能ブロック図である。
【0059】
記録端末28は、受信機28aとデータ蓄積メモリ28bを備えており、排尿の度に測定して得られるデータを受信機28aで受信し、定められた数日分のデータをデータ蓄積メモリ28bに蓄積記憶している。
【0060】
数日分の測定データは、携帯端末28を中継パソコン29に接続することによって、データ転送用メモリ29aに一旦記憶される。尚、携帯端末28を利用しない場合は、流量率計に装着して測定データを記憶したSDメモリカード21を中継パソコン29のカードスロット29bに装着すれば、測定データはデータ転送用メモリ29aに記憶される。
【0061】
上記何れかの方法でデータ転送用メモリ29aに記憶された測定データは、ネットワークを介して病院の表示用パソコン30のダウンロードメモリ31に転送される。
【0062】
転送された測定データはダウンロードメモリ31より荷重データ、加速度データ、感触データの順に読出される。連続して読み出される荷重データは微分手段32にて微分処理され荷重変化データに変換され、第1バッファメモリ33に記憶される。次に連続して読み出される加速度データは微分手段32にて微分処理され加速度変化データに変換され、第2バッファメモリ34に記憶される。その後、測定データ中に感触データが含まれている場合は、感触データがキャラクタ発生手段35に入力され、感触データが文字パターンデータに変換され表示メモリ40に入力される。
【0063】
第1バッファメモリ33の荷重変化データと第2バッファメモリ34の加速度変化データは、対応関係にあるデータがパソコンの処理速度に合わせて同一タイミングで順次出力される。
【0064】
本実施例では、荷重データを入力してその高域成分を除去して荷重の増加にほぼ対応する減衰制御データを出力する荷重レベル検出手段43と、荷重変化データを入力し荷重変化データに含まれる高域成分の振幅値を減衰制御データ値に応じて減衰した減衰データを出力する振幅制御手段42とを設けている。
【0065】
本実施例では、減算手段36とアダプティブフィルタ37とウエイトコントローラ38でノイズキャンセラを構成しており、減衰データは直接減算手段36に入力され、加速度変化データはアダプティブフィルタ37とウエイトコントローラ38に入力される。
【0066】
アダプティブフィルタ37からは、キャンセルデータが出力される。このキャンセルデータは、現在の加速度変化データから(M−1)ビット前までの加速度変化データに適当な係数を乗じて合算処理して得られるM次の多項式で構成されている。
【0067】
ウエイトコントローラ38は、帰還入力される被制御データと加速度変化データとを比較し、アダプティブフィルタ37から出力されるキャンセルデータの多項式の各項の係数を設定している。各項の係数は、キャンセルデータを、減衰データ中に混入する変動成分に近似するような値に設定される。尚、係数については必要に応じて公知で種々の手法を選択採用することができるので、詳細な係数の設定手法についてはその説明を割愛する。減衰データとキャンセルデータとを入力する減算手段36からは、変動成分が少なく真の流量率に近い減算データがノイズキャンセルデータとして出力される。
【0068】
流量率を表示する表示手段は、グラフ化手段39と表示メモリ40とディスプレイ41で構成されており、減算データは、グラフ化のためにグラフ化手段39に入力された後、表示メモリ40に入力される。表示メモリ40には、文字信号化された感触情報も入力され、ディスプレイ41には、使用者が入力した排尿の感触とグラフ化された尿の流量率が表示される。
【0069】
上述する実施例2では、第1バッファメモリ33と第2バッファメモリ34から低速でデータを読み出すことにより、ノイズキャンセル演算に必要な十分な時間を確保しており、高精度のノイズキャンセルが可能となっている。
【0070】
また、ノイズキャンセラに入力する減衰データ中の変動成分は、実施例1に比べて加速度変化データと相関性が高いため、ノイズキャンセル効果が更にアップする。
【符号の説明】
【0071】
3 紙コップ(容器)
13 ロードセル
14 加速度センサ
23 第1AD変換回路
24 第2AD変換回路
32 微分手段
33 第1バッファメモリ
34 第2バッファメモリ
36 減算手段(ノイズキャンセラ)
37 アダプティブフィルタ(ノイズキャンセラ)
38 ウエイトコントローラ(ノイズキャンセラ)
39 グラフ化手段(表示手段)
40 表示メモリ(表示手段)
41 ディスプレイ(表示手段)
43 荷重レベル検出手段
42 振幅制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に流入する液体の質量を測定するロードセルと、前記ロードセルが受ける加速度を検出する加速度センサと、前記ロードセルより得られる荷重値と前記加速度センサより得られる加速度値をデジタル化して荷重データと加速度データを出力するAD変換回路と、荷重データと加速度データとを微分して荷重変化データと加速度変化データとを出力する微分手段と、荷重変化データと加速度変化データを入力して記憶し低速で読み出すバッファメモリと、前記バッファメモリの出力を入力して荷重変化データ中に含まれる変動成分を軽減するノイズキャンセルデータを出力するノイズキャンセラと、ノイズキャンセルデータに基づいて形成される流量率を表示する表示手段とを、設けることを特徴とする流量率表示システム。
【請求項2】
容器に流入する液体の質量を測定するロードセルと、前記ロードセルが受ける加速度を検出する加速度センサと、前記ロードセルより得られる荷重値と前記加速度センサより得られる加速度値をデジタル化して荷重データと加速度データを出力するAD変換回路と、荷重データと加速度データとを微分して荷重変化データと加速度変化データとを出力する微分手段と、荷重変化データと加速度変化データとを記憶して低速で読み出すバッファメモリと、荷重データを入力してその高域成分を除去して荷重の増加にほぼ対応する減衰制御データを出力する荷重レベル検出手段と、前記バッファメモリより出力される荷重変化データを入力し荷重変化データに含まれる高域成分の振幅値を減衰制御データ値に応じて減衰して減衰データを出力する振幅制御手段と、減衰データと加速度変化データを入力して減衰データ中に含まれる変動成分を軽減するノイズキャンセルデータを出力するノイズキャンセラと、ノイズキャンセルデータに基づいて形成される流量率を表示する表示手段とを、設けることを特徴とする流量率表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−76595(P2013−76595A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215863(P2011−215863)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年3月31日http://keihanna.biz/toshieria/
【出願人】(507126487)公立大学法人奈良県立医科大学 (12)
【出願人】(000113573)マイクロニクス株式会社 (13)
【Fターム(参考)】