説明

流量計

【課題】本発明の目的は、パルス出力部が出力すべきパルス数と実際に出力したパルス数を診断するパルス診断部を設けることで、出力すべきパルス数と実際に出力したパルス数が一致しなかった場合にアラーム等を出力することを可能とする流量計を実現することにある。
【解決手段】本発明は、流量センサが、配管を流れる流体の流量を検出し、パルス出力部が、この流量に応じたパルス数を有するパルス信号を生成し、パルス出力端から前記パルス信号を出力する流量計において、前記パルス出力部が出力すべきパルス数と、前記パルス出力部から前記パルス出力端に至る経路に出力されたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力する特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を流れる流体の流量を測定する流量計に関し、更に詳しくは、充填装置等に用いられる流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を充填容器に充填する充填装置等に用いられる従来の流量計の構成を、図面を用いて詳細に説明する。図4は、従来の流量計が、充填装置とともに用いられる構成例を示した図である。
【0003】
図4において、タンク1は水、水溶液等の流体を格納している。流体の流路である配管2は、タンク1と接続されており、タンク1から出力される流体を入力する。
流量計3は配管2と接続されており、流量センサ31と、流量演算器32と、パルス出力部33と、パルス出力端34とを備える。
流量センサ31は、配管2に取り付けられ、配管2を流れる流体の流量を検出して、流量信号を出力する。流量演算器32は、流量センサ31が出力する流量信号を入力する。
パルス出力部33は、パルス発生器331とパルス遮断回路332を備える。
パルス発生器331は、予め定められた波形形状のパルスを出力し、また流量演算器32と接続されている。パルス遮断回路332は、流量演算器32とパルス発生器331とに接続されており、流量演算器32からの出力に基づいて、パルス発生器331が出力するパルス信号を、そのまま通過させるか、または遮断する。
制御装置4は、パルス遮断回路332から出力されるパルス信号を、流量計3のパルス出力端34を経由して入力し、パルス信号のパルス数を積算し、この積算値が、定められた値に達しているか否かに基づいて、バルブ制御信号を出力する。
【0004】
開閉バルブ5は、配管2に取り付けられ、制御装置4が出力するバルブ制御信号に基づいて、自身の開閉をおこなう。
充填容器6は、配管2の出力部に接続されており、開閉バルブ5の開閉によって流体の流入量を制御され、開閉バルブ5を通過する流体を受け入れる。
【0005】
このような従来の流量計の動作例を、図面を用いて説明する。
図4において、制御装置4が、開閉バルブ5を開けるよう制御信号を出力し、開閉バルブを開く。タンク1は、配管2へ流体の供給を開始し、充填容器6に流体が流入し始める。
流量センサ31は、配管2を流れる流体の流量を検出して流量信号を出力する。
【0006】
流量演算器32は、流量センサ31が出力する流量信号に基づいて、定められた時間(例えば、100ms)ごとに、流量計3が出力すべきパルス数であるパルス数期待値(例えば、6)を算出する。流量演算器32は、パルス発生器331にこのパルス数期待値を出力し、さらに、パルス遮断回路332に回路開放信号を出力する。
パルス遮断回路332は、流量演算器32が出力する回路開放信号を受信すると、回路を開放し、パルス発生器331から出力されるパルスを通過させる。
パルス発生器331は、予め定められたパルス(例えば、周期100us、デューティー比50%のパルス)を定常的に発生しており、流量演算器32が出力するパルス数期待値を入力すると、この入力時点からパルス数期待値数分(例えば6個)のパルスを出力したタイミングで、パルス送出済信号を出力する。
この様子を図5に示す。図5は、パルス発生器331が周期100us、デューティー比50%のパルスを出力し続け、パルス遮断回路332が、パルス数期待値に基づいて、100msの間で、6個のパルスを通過させた例を示している。
【0007】
流量演算器32は、パルス発生器331が出力するパルス送出済信号を受信すると、パルス遮断回路332に回路遮断信号を出力する。
パルス遮断回路332は、流量演算器32が出力する回路遮断信号を受信すると、回路を遮断し、パルス発生器331から出力されるパルス信号の出力を停止する。
流量演算器32、パルス発生器331、パルス遮断回路332は、このような一連の動作を定められた時間ごと(図5の例では、100msごと)に繰り返す。
【0008】
制御装置4は、パルス遮断回路332からパルス出力端34を介して出力されるパルス信号のパルス数を計測し、このパルス数の積算値が定められた値に達しているか否かによって、達していなければ開閉バルブ5を開く制御信号を、達していれば閉める制御信号を出力する。
制御装置4によって開閉バルブ5を閉めることで、充填容器6への流体の流入が停止し、流体の充填が終了する。
【0009】
特許文献1には、このような流量計を用いた充填装置の例が記述されており、配管にとりつけられた流量計が、流体の流量に応じたパルスを出力し、制御装置がそのパルス数に基づいて配管を流れる流体の流量を計測し、あらかじめ定められた分量の流体が通過した時に配管に取り付けられたバルブを閉めることで充填容器に充填する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−181608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
パルス出力部33を構成するパルス発生器331やパルス遮断回路332において、またはパルス遮断回路332からパルス出力端34に至る経路において故障やノイズが生じた場合、流量計3が出力すべきパルス数と、実際に出力したパルス数が一致しない可能性がある。
しかしながら、従来の流量計では、パルス出力部33から出力されたパルス信号のパルス数の確認は行っておらず、このような流量計を実装した充填装置においては、充填容器に誤った量の流体を充填した場合にもそれが見過ごされる可能性があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、パルス出力部が出力すべきパルス数と、実際に出力したパルス数を診断するパルス診断部を設け、出力すべきパルス数と実際に出力したパルス数が一致しなかった場合にアラーム等を出力することで、流量計測結果の信頼性を高めた流量計を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
流量センサが、配管を流れる流体の流量を検出し、
パルス出力部が、検出した流量に応じたパルス数を有するパルス信号を生成し、
パルス出力端から前記パルス信号を出力する流量計において、
前記パルス出力部が出力すべきパルス数と、前記パルス出力部から前記パルス出力端に至る経路に出力されたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力するパルス診断部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記パルス診断部は、パルス計測回路とパルス数比較器を有し、
前記パルス計測回路は、前記パルス出力部から前記パルス出力端に至る経路に取り付けられ、前記パルス出力部が実際に出力したパルス信号を入力してパルス数をカウントし、
前記パルス数比較器は、前記パルス出力部が出力すべきパルス数と、前記パルス計測回路がカウントしたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力するすることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明であって、
前記配管に取り付けられ弁の開閉をおこなう開閉バルブと、前記配管からの流体を受け入れる充填容器と、前記パルス出力端から出力されたパルス数に基づいて開閉バルブを制御するとともに前記アラーム信号により規定量の流体が前記充填容器に充填されているか否かを検知する制御装置と、を有する充填装置に用いられることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明であって、
前記パルス計測回路は、前記パルス出力部と前記パルス出力端に至る経路に、少なくとも2つ取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
流量センサが、配管を流れる流体の流量を検出し、パルス出力部が、この流量に応じたパルス数を有するパルス信号を生成し、パルス診断部が、パルス出力部の出力すべきパルス数と実際に出力したパルス数との比較を行い、その比較結果に基づいてアラーム信号を出力するので、配管を流れる流体の流量と、この流量に応じたパルス数との不整合をアラームとして出力することができる流量計を実現することができる。
しがって、当該流量計を用いた充填装置等は、流量計が出力するアラームに基づいて、流量計の誤動作に起因する誤充填の恐れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例が、充填装置と共に用いられる構成を示した図である。
【図2】図1で示される流量計が、出力すべきパルス数よりも少ないパルスを出力した場合のタイムチャート例である。
【図3】図1で示される流量計が、出力すべきパルス数よりも多いパルスを出力したタイムチャート例である。
【図4】従来の装置が、充填装置と共に用いられる構成例を示した図である。
【図5】パルス発生器およびパルス遮断回路が出力するパルスのタイムチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施例が、充填装置と共に用いられる構成を示した図である。
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図4と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。
流量計7は、流量センサ31と、流量演算器71と、パルス出力部33と、パルス計測回路72とを含む。
流量演算器71は、流量センサ31が出力する流量信号を入力し、流量計7が出力すべきパルス数期待値を算出し、出力する。また、流量演算器71は、内部にパルス数比較器711を備え、パルス数期待値をパルス数比較器711に格納する。
【0020】
(従来装置に新たに追加されたのは、パルス数比較器711と、パルス計測回路72であり、これらによりパルス診断部73が形成される。パルス診断部73は、パルス数期待値と、パルス遮断回路332が実際に出力したパルス数を比較し、その比較結果に基づいてアラームを出力する機能を有する。また、付随回路74は、パルス遮断回路332とパルス計測回路72の間に接続された任意の回路を指す。)
【0021】
パルス計測回路72は、パルス遮断回路332から付随回路74を介して出力されるパルス信号を通過させ出力するとともに、パルス信号のパルス数をカウントし、カウント数を出力する。
流量演算器71のパルス数比較器711は、自身に格納しているパルス数期待値と、パルス計測回路72が出力するカウント数を入力して両者を比較し、比較結果に基づいてアラーム信号を出力する。
【0022】
制御装置8は、パルス計測回路72がパルス出力端34を介して出力するパルスのパルス数を積算し、この積算値が定められた値に達しているか否かによって、達していなければ開閉バルブ5を開く制御信号を、達していれば閉める制御信号を出力する。
制御装置8は、また、流量計7から出力されるアラーム信号に基づいて、必要に応じてエラー処理を行う。
【0023】
以下本発明の動作を、図面を用いて詳細に説明する。
図1において、制御装置8が、開閉バルブ5の弁を開けるよう制御信号を出力し、開閉バルブ5を開く。タンク1は、配管2への流体の供給を開始し、充填容器6に流体が流入され始める。流量センサ31は、配管2を流れる流体の流量を検出して流量信号を出力する。
【0024】
流量演算器71は、流量センサ31が出力する流量信号に基づいて、定められた時間(例えば100ms)ごとに、流量計7が出力すべきパルス数であるパルス数期待値(例えば6)を算出する。流量演算器71は、このパルス数期待値を自身のパルス数比較器711に格納するとともに、パルス発生器331に出力し、さらに、パルス遮断回路332に回路開放信号を出力する。
パルス遮断回路332は、流量演算器71が出力する回路開放信号を受信すると、回路を開放し、パルス発生器331から出力されるパルス信号を通過させる。
パルス発生器331は、流量演算器71が出力するパルス数期待値を入力すると、この入力時点からパルス数期待値分(たとえば6個)のパルスを出力したタイミングで、パルス送出済信号を出力する。
これら、パルス発生器331とパルス遮断回路332から出力されるタイムチャートは従来例の図5と同様である。
流量演算器71は、パルス発生器331が出力するパルス送出済信号を受信すると、パルス遮断回路332に回路遮断信号を出力する。
パルス遮断回路332は、流量演算器71が出力する回路遮断信号を受信すると、回路を遮断し、パルス発生器331から出力されるパルスの通過を停止する。
パルス計測回路72は、パルス遮断回路332から付随回路74を介して出力されるパルス信号を通過させるとともに、パルス信号のパルス数を計測し、計測結果を出力する。
パルス遮断回路332からの出力されるパルス信号は、パルス発生器331やパルス遮断回路332や付随回路74の故障、またはそれら周辺経路におけるノイズのために、図2のようにパルス数過少(例えば、見かけ上パルス数5個)となることや、図3のようにパルス数が過多(例えば、見かけ上パルス数7個)となることがある。
流量演算器71のパルス数比較器711は、自身に格納されているパルス数期待値と、パルス遮断回路72からのパルス数の計測結果とを比較し、その結果に基づき、アラーム信号を出力する。
流量演算器71、パルス発生器331、パルス遮断回路332、パルス計測回路72は、このような一連の動作を、定められた時間(例えば100ms)ごとに繰り返す。
【0025】
制御装置8は、パルス出力端34から出力されるパルス数を計測し、このパルス数の積算値が、定められた値に達しているか否かによって、達していなければ開閉バルブ5を開く制御信号を、達していれば開閉バルブ5を閉める制御信号を出力する。
制御装置8によって開閉バルブ5を閉めることで、充填容器への流体の流入が停止し、充填が終了する。
制御装置8は、また、流量計7から出力されるアラーム信号に基づいて、必要に応じてエラー処理を行う。
【0026】
流量センサ31が、配管2を流れる流体の流量を検出し、パルス出力部33が、この流量に応じたパルス数を有するパルス信号を生成し、パルス計測回路72が、パルス出力部33が実際に出力したパルス信号を入力してパルス数をカウントし、パルス数比較器が、パルス出力部33が出力すべきパルス数と、パルス計測回路72がカウントしたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力するするので、配管2を流れる流体の流量と、この流量に応じたパルス数との不整合をアラームとして出力することができる流量計7を実現することができる。
しがって、当該流量計7を用いた充填装置等は、流量計7が出力するアラームに基づいて、流量計7の誤動作に起因する誤充填の可能性を低減することができる。
【0027】
なお、パルス遮断回路332からパルス出力端34までの経路に複数のパルス計測回路72を配置してもよい。この場合、パルス数がどの経路において一致しないかを特定可能となる。
【0028】
また、アラーム信号に、単にパルス数比較器711による比較の不一致情報のみではなく、パルス数期待値とパルス数の計測結果との大小比較結果情報を付加することで、制御装置8は、充填容器6への流体の超過充填、充填不足等の判定も可能である。
【符号の説明】
【0029】
2 配管
31 流量センサ
33 パルス出力部
34 パルス出力端
5 開閉バルブ
6 充填容器
71 流量演算器
711 パルス数比較器
72 パルス計測回路
73 パルス診断部
8 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量センサが、配管を流れる流体の流量を検出し、
パルス出力部が、検出した流量に応じたパルス数を有するパルス信号を生成し、
パルス出力端から前記パルス信号を出力する流量計において、
前記パルス出力部が出力すべきパルス数と、前記パルス出力部から前記パルス出力端に至る経路に出力されたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力するパルス診断部を有することを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記パルス診断部は、パルス計測回路とパルス数比較器を有し、
前記パルス計測回路は、前記パルス出力部から前記パルス出力端に至る経路に取り付けられ、前記パルス出力部が実際に出力したパルス信号を入力してパルス数をカウントし、
前記パルス数比較器は、前記パルス出力部が出力すべきパルス数と、前記パルス計測回路がカウントしたパルス数との比較を行い、比較の結果に基づいてアラーム信号を出力するすることを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項3】
前記配管に取り付けられ弁の開閉をおこなう開閉バルブと、前記配管からの流体を受け入れる充填容器と、前記パルス出力端から出力されたパルス数に基づいて開閉バルブを制御するとともに前記アラーム信号により規定量の流体が前記充填容器に充填されているか否かを検知する制御部と、を有する充填装置に用いられることを特徴とする請求項1または2記載の流量計。
【請求項4】
前記パルス計測回路は、前記パルス出力部と前記パルス出力端に至る経路に、少なくとも2つ取り付けられることを特徴とする請求項3記載の流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169776(P2011−169776A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34288(P2010−34288)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】