説明

浄水システム、建築物、化学物質除去装置並びに異物除去装置

【課題】異物を止水栓近傍で排除するとともに残留塩素は末端給水栓近傍で除去する手段である給水システム、浄水システム、建築物、化学物質除去装置並びに異物除去装置を提供する。
【解決手段】給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える二重濾過浄水システムにおいて、前記末端給水栓毎に隣接して配置する化学物質除去部と、止水栓側に配置する異物除去部とを備えることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を止水栓近傍で排除するとともに残留塩素は末端給水栓近傍で除去することのできる浄水システム、建築物、化学物質除去装置並びに異物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国の水道普及率は、厚生労働省によれば総人口当りで96.3%に上る。雑菌繁殖を防止させながら、この普及率を達成させてしかも低価格でサービスを提供し続けることができたのは、塩素の使用による効果が大きい。しかしながら、水道水に混入する塩素ガスの半数致死量は3200mg/l立方メートル中であるように塩素は無毒な物質ではない。特に塩素は酸化力を有するため蛋白質を変性させてしまう。このため残留塩素濃度の高い水道水で髪や肌を洗浄すると髪や肌の蛋白質を変性させるために傷むこととなる。そこで、近年、水道水の残留塩素を削減させるために塩素除去フィルタの使用が提案されている。
【0003】
ところが、塩素除去フィルタを水道の蛇口に設ける場合に、特に規制はないが、塩素除去フィルタを各家庭の水道メータ付近に設ける場合は、水道法施行規則第17条により衛生上必要な措置として、「給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/l(結合残留塩素の場合は、0.4mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること」が規定されている。このため、特に水道メータ以降に取付ける塩素除去フィルタの場合は、特に末端給水栓までの距離がある際には、塩素除去フィルタを通過する水の遊離残留塩素濃度を調整する必要がある。
【0004】
そこで、遊離残留塩素濃度を調整する装置が幾つかの特許文献で提案されている。特許文献1では、濾過水の遊離残留塩素の濃度を任意に調節することを可能にすべく、「水濾過装置に異物を除去する機能のある濾過材と異物や遊離残留塩素を吸着する機能のある活性炭の濾過材を直列に組み込み、活性炭の濾過材に対してバイパス配管を設け、バイパス配管の途中に調節の為に弁を設ける」水濾過装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、メーターボックスなどに取り付けられて、家庭内で使用される水をまとめてろ過、除菌を行なうための浄水器において、通過する水道水の含有塩素量を確保するべく、「筒状ケーシングと、前記筒状ケーシング内に設けられたフィルタと、前記筒状ケーシングの上端を遮蔽するヘッドキャップとを備え、前記フィルタは、前記筒状ケーシング内において、該筒状ケーシングの内周面と環状間隙をおいて略同心に配置された中空の筒状体をなすとともに、通過する水道水に含まれる塩素を除去する機能を有する第1フィルタ部と、該第1フィルタ部によって周りを取り囲まれる位置に配された、前記第1フィルタ部よりも塩素除去機能の低い第2フィルタ部と、前記第1フィルタ部の上端を遮蔽し、前記第2フィルタ部の上方を覆うとともに、前記ヘッドキャップとの間に上部空間を構成する上板とを含み、前記上板の略中央には、前記第2のフィルタ部の上端に隣接する空間と前記上部空間との間を連通する貫通穴が設けられ、前記上板の周縁と前記ヘッドキャップとの間の隙間から前記上部空間を経て前記貫通穴に至る流水路をバイパス流路として、前記フィルタを通過する水道水の内の所定量が前記バイパス流路を流れるようにした、浄水器」を提案している。
【0006】
これに対して、特許文献3では部品点数が少なく構造が単純で長期間に亘る信頼性の高い遊離残留塩素濃度を調整するために、「導入口と排出口を備えるヘッドキャップに遮蔽されてその内部にごみ除去フィルタが挿入されるごみ除去ハウジングとからなるごみ除去ユニットと、前記排出口とパイプを介して第二導入口と接続されて第二放出口を設ける第二ヘッドキャップに遮蔽されて塩素除去フィルタが挿入される塩素除去ハウジングとからなる塩素除去ユニットとを備え、前記第二ヘッドキャップは第二導入口からその底面の端部へと貫通する導入口管と、その底面の中央部から第二放出口へと貫通する放出口管と、前記放出口管と前記底面の端部とを貫通する塩素確保開口部と、塩素確保開口部の開度調整部とを備える残留塩素濃度確保装置」を提案している。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3052598号公報公報、図1、第1頁
【特許文献2】特許第2644127号公報、図1、第1頁
【特許文献3】特開2005−199144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、いずれの浄水システムにおいても戸建住宅を想定したものであり、各末端給水栓と止水栓の間が短く、さらに、一つの止水栓に対して1戸のみに配水することを前提としたものであった。
【0009】
浄水システムの機能を水道水内の異物を除去する第一の機能と水道水内の残留塩素を削減する第二の機能について検討すると、戸建住宅の場合は第一の機能と第二の機能を分離させる必要はなく、第一の機能と第二の機能とを連結して適用することにはなんら問題はない。
【0010】
一方、マンションやアパート等の集合住宅においては、集合住宅の個数と同数の第一の機能と第二の機能のいずれをも兼ね備える浄水システムが必要となり、配水管に接続される止水栓当たりの浄水システムは集合住宅の戸数分必要となり、設置コストとメンテナンスコストが発生する。そこで、集合住宅を全体として浄水することで、浄水システムを集合住宅の止水栓近傍に1つとすることで、浄水化のコストを削減する方法を採用することもできる。
【0011】
しかしながら、各戸別に配置されるはずの浄水システムを止水栓近傍1つにし、そこに第一の機能と第二の機能とを連結して適用すると浄水システムと各部屋の間の配水管の残留塩素濃度を低下させてしまい、前記水道法施行規則第十七条の規定にそぐわないととともにその間の水についての殺菌・消毒の不備についての課題が生じる。
【0012】
そこで、前記の課題を解決すべく、本発明の目的は、異物を止水栓近傍で排除するとともに残留塩素は末端給水栓近傍で除去する手段である給水システム、浄水システム、建築物、化学物質除去装置並びに異物除去装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的を達成するために本発明に係る浄水システムは、給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える浄水システムにおいて、前記末端給水栓毎に隣接して配置する化学物質除去部と、止水栓側に配置する異物除去部とを備えることで止水栓で異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく濾過して給水する。
【0014】
ここで、化学物質除去部は、化学物質除去フィルタと前記化学物質除去フィルタを回避するバイパス部を備えてもよく、異物除去部は、異物除去フィルタと前記異物除去フィルタを回避するバイパス部を備えてもよい。
【0015】
次に、本願に係る第二の発明である建築物は、給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える給水システムを備える建築物において、前記末端給水栓毎に隣接して配置する化学物質除去部と、止水栓側に配置する異物除去部とを備えることで止水栓で異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水する給水システムを備える。
【0016】
さらに、本願に係る第三の発明である化学物質除去装置は、給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える給水システムに内蔵されて、止水栓側に配置する異物除去部に連結されることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水するための、前記末端給水栓毎に隣接して配置される。
【0017】
そのうえ、本願に係る第四の発明である異物除去装置は、給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える給水システムに内蔵されて、前記末端給水栓毎に隣接して配置される化学物質除去部に連結されることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水するための、止水栓側に配置する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の浄水システム、建築物、化学物質除去装置並びに異物除去装置は、異物を止水栓近傍で排除するとともに残留塩素は末端給水栓近傍で除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の浄水システム2について、図1乃至図3に基いて説明する。図1は、本発明に係る浄水システム2と浄水建築物4の全体構成図である。浄水建築物4は、柱6と梁8と壁部10より複数の住戸12を構成し、その低層部に異物除去フィルタを内蔵する異物除去部14を備え、この異物除去部14に連結されて各戸へ配水するために壁部10等に埋設される異物除去配管16と、この異物除去配管16にそれぞれ連結される戸別化学物質除去部18が配置される。前記異物除去部14は、さらに敷地内給水管20を介して水道メータ22と連結され、この水道メータ22はさらに止水栓24を介して、公道下に埋設される配水管(図示せず)と連結している給水管26と連結される。
【0020】
このように配置されることで、配水管から供給される水道水は前記異物除去部14を通過することで塵や錆等の水道水内の異物が排除されて浄水建築物4内部に導入されて、さらに各戸毎に設けられる戸別化学物質除去部で残留塩素が除去された浄水として各戸の末端給水栓(図示せず)に給水される。
【0021】
続いて、図2を用いて異物除去部14の詳細について説明する。異物除去部14は、水道メータ22から配管される敷地内給水管20がT字型パイプ21で分岐され一方のポートが2ポートボールバルブ28から浄水管30を介して浄水塔32に連結される。T字型パイプ21の他方のポートはバイパス管34と連結される。浄水塔32は、浄水管36と2ポートボールバルブ38を経由してT字型パイプ39を介して、異物除去配管16と連結される。バイパス管34は、2ポートボールバルブ40を介してT字型パイプ39と連結されて異物除去配管16に合流する。
【0022】
浄水塔32は、高分子フィルタを内蔵し、大型のごみによる目詰まり等の発生を防止することができ、戸別化学物質除去部18の負荷を減少させる。ここで、フィルタとしてポリプロピレン等の化学繊維、羊毛等の動物繊維、紙等の植物繊維を採用することができる。
【0023】
また、高分子フィルタの交換や故障時に敷地内給水管20と異物除去配管16とを直結できるようにバイパス管34が設けられており、2ポートボールバルブ28と2ポートボールバルブ38を閉じて2ポートボールバルブ40を開放することで使用可能となる。たとえ、異物が各戸の止水栓まで到達することを除き、給止栓手前での残留塩素減少が発生する問題は生じない。
【0024】
さらに図3において、戸別化学物質除去部18について説明する。異物除去配管16は、戸別止水栓42と結合し、パイプ44を介して、戸別水道メータ46と連結される。戸別水道メータ46はパイプ48を介してT字型パイプ50と結合される。T字型パイプ50はボールバルブ52と連結される。このボールバルブ52はパイプ54を介して化学物質除去ユニット56と連結される。この化学物質除去ユニット56の出力はパイプ58を介してボールバルブ60と連結される。ボールバルブ60はT字型パイプ62とパイプ66を介して図示しない末端給水栓と連結される。化学物質除去ユニット56は、カーボンフィルタから構成される。
【0025】
次に本発明に係る浄水システム2の動作について説明する。給水管26から流入する水道水は止水栓24、水道メータ22、敷地内給水管20を通過して異物除去部14に到達する。水道水は、敷地内給水管20から2ポートボールバルブ28、浄水管30を通過して浄水塔32に流入する。ここで、浄水塔32内部のフィルタにより水道水内の溶融物質を除く異物が除去される。
【0026】
水道水は浄水塔32から浄水管36、2ポートボールバルブ38を通過して異物除去配管16を経過して各住戸12の戸別化学物質除去部18に到達する。
【0027】
戸別化学物質除去部18では、水道水は異物除去配管16から、戸別止水栓42、パイプ44、戸別水道メータ46、パイプ48、T字型パイプ50、ボールバルブ52、パイプ54を経由して化学物質除去ユニット56に流入する。ここで、水道水からは残留塩素を含む化学物質が化学物質除去ユニット56のカーボンフィルタによって除去される。化学物質除去ユニット56を通過した水道水は、パイプ58、ボールバルブ60、T字型パイプ62、パイプ66を経由して末端給水栓へ流れる。
【0028】
さらに、異物除去部14では、2ポートボールバルブ28と2ポートボールバルブ38の開口ポートを変更して2ポートボールバルブ40を開放することでバイパス流路が開通する。
【0029】
一方、戸別化学物質除去部18では、ボールバルブ52、ボールバルブ60を遮断し、ボールバルブ64を開放することでバイパス流路が開通する。
【0030】
以上のように構成することで、従来の元栓設置型の浄水システムと比較して全体のメンテナンスコストを大幅に削減することができ、各戸は化学物質除去ユニット56について自らの使用量に応じてコストを負担でき、従来の合算方式と比較しても公平となった。また、最終的に各戸に対しては複数の末端給水栓に対して全て浄水を提供することができる。
【0031】
さらに異物除去部14と戸別化学物質除去部18を全く別な場所に配置することができたため設置スペースの確保も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る浄水システムは、止水栓から末端給水栓との距離が長い場合や、住戸を複数有する集合住宅に適用することで、低コストで浄水システムを適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る浄水システムの全体構成図を示す。
【図2】本発明に係る浄水システムの異物除去部の拡大図を示す。
【図3】本発明に係る浄水システムの戸別化学物質除去部の拡大図を示す。
【符号の説明】
【0034】
2 浄水システム
4 浄水建築物
6 柱
8 梁
10 壁部
12 住戸
14 異物除去部
16 異物除去配管
18 戸別化学物質除去部
20 敷地内給水管
22 水道メータ
24 止水栓
26 給水管
28 2ポートボールバルブ
30 浄水管
32 浄水塔
34 バイパス管
36 浄水管
38 2ポートボールバルブ
40 2ポートボールバルブ
42 戸別止水栓
44 パイプ
46 戸別水道メータ
48 パイプ
50 T字型パイプ
52 ボールバルブ
54 パイプ
56 化学物質除去ユニット
58 パイプ
60 ボールバルブ
62 T字型パイプ
66 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える二重濾過浄水システムにおいて、前記末端給水栓毎に隣接して配置する化学物質除去部と、止水栓側に配置する異物除去部とを備えることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水する二重濾過浄水システム。
【請求項2】
化学物質除去部は、化学物質除去フィルタと前記化学物質除去フィルタを回避するバイパス部を備えることを特徴とする請求項1記載の二重濾過浄水システム。
【請求項3】
異物除去部は、異物除去フィルタと前記異物除去フィルタを回避するバイパス部を備えることを特徴とする請求項1記載の二重濾過浄水システム。
【請求項4】
給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える二重濾過浄水システムを備える建築物において、前記末端給水栓毎に隣接して配置する化学物質除去部と、止水栓側に配置する異物除去部とを備えることで止水栓で異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水する二重濾過浄水システムを備える建築物。
【請求項5】
給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える二重濾過浄水システムに内蔵されて、止水栓側に配置する異物除去部に連結されることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水するための、前記末端給水栓毎に隣接して配置される化学物質除去装置。
【請求項6】
さらに化学物質除去フィルタと前記化学物質除去フィルタを回避するバイパス部を備えることを特徴とする請求項5記載の化学物質除去装置。
【請求項7】
給水管と接続される止水栓を介して接続される複数の末端給水栓を備える二重濾過浄水システムに内蔵されて、前記末端給水栓毎に隣接して配置される化学物質除去部に連結されることで止水栓において異物を除去するとともに遊離残留塩素濃度を末端給水栓近傍まで低下させることなく給水するための、止水栓側に配置する異物除去装置。
【請求項8】
さらに異物除去フィルタと前記異物除去フィルタを回避するバイパス部を備えることを特徴とする請求項7記載の異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−188566(P2008−188566A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28612(P2007−28612)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(507022787)相鉄不動産販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】