説明

浚渫土の無害化処理方法

【課題】汚染された浚渫土中のPCBおよびダイオキシン等を環境基準値以下にまで除去して低減し、処理後の浚渫土を再利用可能とすることである。そして、さらに浚渫土から分離したPCBおよびダイオキシン類をほぼ完全に分解することである。
【解決手段】低濃度のPCBおよびダイオキシンを含む浚渫土を無害化処理する方法において、該浚渫土に酸化剤を加えて脱水処理し脱水土と成した後、該脱水土を20℃以上であって200℃以下の温度に加熱して乾燥し、次に150℃以上であって500℃以下の温度のガスと接触させ、該ガス供給量は該浚渫土の乾燥後の1キログラムあたり0.1立方メートル以上とし、該浚渫土と接触した該ガスを700℃以上の高温度に加熱するものであり、該高温度のガスを該浚渫土の乾燥のための熱源として使用することを特徴とした方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水底からの浚渫土に含まれているPCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン類、鉱物油、腐植物質等の有害物を分解処理して、浚渫土を無害化処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底からの浚渫土には環境基準値を超えるPCBおよびダイオキシン類等が含まれていることがしばしばある。その場合、浚渫土を別途の場所に埋め立てたり、再利用したりするためには、浚渫土に含まれるPCBおよびダイオキシン類を低濃度化あるいは無害化処理しなければならない。一般に浚渫土に含まれているPCBおよびダイオキシン類は低濃度であり、環境基準値を超えているとは言え、わずかな量である。例えば浚渫土1グラム中にPCBは1ミリグラム以下、ダイオキシン類は10ナノグラム以下程度という様な量である。一方、浚渫土は膨大な量である。例えば、港湾の浚渫では年間に数万トン以上の膨大な量となることもある。その膨大な量の浚渫土がすべてPCB或いはダイオキシン類等に汚染されているのではないけれど、汚染されている浚渫土の量が大量であることがしばしばある。そのため浚渫土を無害化処理する場合、大量の浚渫土中の微量のPCBおよびダイオキシン類を処理しなければならないのである。このことは、浚渫土の無害化処理を実施する上で大きな困難な障害壁となっている。
【0003】
そのため従来は、この様な浚渫土を適切に合理的に処理する方法は実施されておらず、便宜的な処理方法がとられてきた。すなわち、従来の処理方法は汚染された浚渫土を脱水処理した後、セメント固化して、これを埋め立て処分するという方法によって対応してきた。しかしこの方法においては、PCBおよびダイオキシン類は分解されずにセメント固化物の中に残存しているのであり、根本的な無害化処理方法とは言えないのである。そして処理後において、汚染された浚渫土は廃棄物として埋め立て処分されるため、有効に再利用することはできないのである。これは従来法の根本的問題点である。
【0004】
また、浚渫土を800℃から1000℃の高温度に加熱して、PCBおよびダイオキシン等を熱的に分解する方法もある。しかしこの方法の場合、汚染された浚渫土が膨大な量であるために、無害化処理設備は非常に大規模なものとなり、さらにエネルギーも大量に使用することになる。そのために、経済的に不経済であり、実用的な方法とは言えない。
【0005】
さらに、浚渫土に還元剤を添加した上で高温度に加熱して、脱塩素化処理を行ってPCB、ダイオキシン等を無害化処理する方法も知られている。しかしこの方法の場合、処理後の浚渫土の中に還元剤が残留してしまい、処理後の浚渫土を土壌として再利用することができないのである。この様に従来いろいろな方法が研究されているが、いずれの方法も大きな問題点を持っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来法の根本的問題点を解決しようとするものである。すなわち、汚染された浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類を環境基準値以下にまで除去して低減し、処理後の浚渫土を再利用可能とすることである。そして、さらに浚渫土から分離したPCBおよびダイオキシン類をほぼ完全に分解することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、浚渫土を乾燥処理した後に、300℃程度の高温度において、大量の空気と接触させることによって、浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類を浚渫土から蒸発させて空気中に移動させることができることを見出した。そしてその結果、浚渫土中のPCBおよびダイオキシン等は環境規制値以下とすることができることを見出し、本発明をなすにいたった。
【0008】
すなわち、低濃度のPCBおよびダイオキシン類を含む浚渫土を無害化処理する方法において、該浚渫土に酸化剤を加えて脱水処理して脱水土と成した後、該脱水土を20℃以上であって200℃以下の温度に加熱して乾燥し、次に200℃以上であって500℃以下の高温度ガスと接触させることを特徴とするものであり、該高温度ガスの供給量は該浚渫土の乾燥物1キログラムあたり0.1立方メートル以上とすることを特長とするものであり、該浚渫土と接触した該高温度ガスを700℃以上の高温度に加熱することを特長とするものであり、該高温度のガスを該浚渫土の乾燥のための熱源として使用することを特長とした方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法に基づいて浚渫土を無害化処理する場合幾つもの大きな効果がある。まず、浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類は、高温度で空気等のガスと接触する際に、ガス中へ蒸発して移動してしまう。その結果、浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類は環境基準値以下に低減する。そして浚渫土は無害化されて、再利用することができる。
【0010】
そして、ガス中のPCBおよびダイオキシン類は、高温度に加熱された結果、熱分解して無害の物質に変化してしまう。つまり、浚渫土中に含まれていたPCBおよびダイオキシン類は分解されて無害化されるのである。
【0011】
さらに、高温度に加熱されたガスは浚渫土を乾燥するための熱源として使用されるために、燃料使用量を最小限に抑えることができ、熱経済性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明をさらに詳細に説明する。浚渫土に含まれるPCBおよびダイオキシン類は、通常の場合、前述した様に微量である。一方浚渫土は大量である。このことが、浚渫土の無害化処理を困難にしているのである。本発明の方法は、従来法では困難であった、微量のPCBおよびダイオキシン類を含む大量の浚渫土を、無害化する方法である。具体的にはPCB濃度として1mg/g以下、ダイオキシン濃度として10ng/g以下の浚渫土を無害化処理する方法である。
【0013】
水底から浚渫された土砂は、通常の場合、多量の水分を含んでいる。これを加熱して乾燥しようとすると、大量のエネルギーが必要となり、熱経済的に非常に不経済である。本発明の方法を実施する場合、前処理として浚渫土を脱水処理して、できるだけ水分を低減しておくことが大事である。脱水処理の方法としては、ろ過器等によって脱水処理することが望ましい。この脱水処理は公知の方法が幾つも知られており、その方法で実施可能である。例えば、凝集剤を添加してフィルタープレス式脱水器によって実施可能である。そして、脱水後の浚渫土中の水分を40%程度まで低減することができる。
【0014】
浚渫土中には硫化物やアンモニア化合物等が含まれており、脱水処理に次いで行う加熱乾燥操作において、それらが水分とともに蒸発してでてくる。その処理が大変に厄介なものとなる。さらには浚渫土中には亜鉛等の重金属類の硫化物が混在しており、それが浄化後の浚渫土の有効利用の制約となる。そこで加熱乾燥操作において硫化物やアンモニア等の悪臭物質発生を防ぐために、硫化物、アンモニア化合物、重金属硫化物等を事前に除去しておくことが必須の要件である。本発明者らはその方法として、脱水処理操作において浚渫土に酸化剤を加えて酸化処理することが効果的であることを見出した。酸化剤としては過酸化水素、次亜塩素酸ソーダ、サラシコ、塩素ガス等が実用的である。酸化剤を加える方法として、特に制約はない。通常は、浚渫土に水を加えてドロドロの液状となして、これに酸化剤を加える。加える酸化剤の量は、浚渫土中の硫化物、アンモニア化合物、重金属硫化物等の濃度に応じて加減する。例えば過酸化水素の場合、通常の浚渫土の乾燥物1キログラムに対して0.5から30グラム程度を加える。すると、浚渫土は酸化剤によって改質され、重金属硫化物は硫酸塩または亜硫酸塩に変化し、水溶性物質となる。またアンモニア化合物は硝酸化合物に変化し水溶性物質となる。そしてこれらの水溶性物質は、脱水処理操作において濾水側に移り、排出される。結局、浚渫土中からアンモニア化合物、亜鉛等の重金属硫化物は除去されるのである。
【0015】
脱水処理した浚渫土は、それでもなお40%程度以上の水分を含んでいる。そこで本発明の方法においては、まず浚渫土を乾燥しなければならない。乾燥する方法としては、熱風ガスと直接接触させる方法と加熱管によって間接的に加熱する方法があり、いずれも実施可能である。通常は、熱風と直接接触させて水分を蒸発させて乾燥する。例えば回転式乾燥器を用いて、高温度の熱風を通気して、浚渫土と直接接触させる。この時の乾燥温度が高いと乾燥工程においてPCBおよびダイオキシン類の一部が蒸発揮散する可能性がある。また、前述のように酸化処理してあっても、硫化物やアルデヒド類等の悪臭が発生する恐れがある。その結果、乾燥器からの排出ガスを洗浄或いは脱臭処理をしなければならず、大変に厄介なことである。そこで、排気ガスの性状を悪化させないために、乾燥温度は20℃以上、200℃以下でなければならない。そしてできるだけ低い温度であることが好ましい。通常は大気圧において100℃以上で水分を蒸発乾燥するのであるが、乾燥器内部を減圧にする場合には100℃以下の温度においても蒸発乾燥することができる。この乾燥温度は浚渫土の温度である。熱風ガスの温度も、この温度であることが望ましいのであるが、乾燥操作における熱伝達を効果的に行うためには、もっと高い温度であることが望ましい。回転式乾燥器の様に浚渫土が常に攪拌されていて前記温度に保持される場合には、熱風ガス温度を300℃程度まで高くすることもできる。この様にして、浚渫土中の水分をすべて蒸発させ、乾燥させる。この乾燥操作において、浚渫土の温度を200℃以下に保つ場合には、浚渫土中のPCB及びダイオキシン等がガス中へ蒸発する量はわずかであり、問題にならない程度である。従って、乾燥器から排出されるガスは環境上の問題なく、大気中へ放出することができる。
【0016】
乾燥器で乾燥された浚渫土は、次に高温度の熱風ガスと直接接触する。使用するガスの種類に制約はなく、空気、窒素ガス等のガスを用いることができる。この操作は、浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類を蒸発させて、分離するための操作である。PCBおよびダイオキシン類は、非常に低い値であるが蒸気圧を有しており、操作温度による蒸気圧に対応した量が熱風ガス中へ蒸発し移動するのである。
【0017】
本発明者等は、20グラムの乾燥浚渫土を350℃に加熱して、ここに350℃に加熱した窒素ガスを通気して、PCBおよびダイオキシンの蒸発分離試験を行った。通気した窒素ガス量は毎分0.1リットルであり、通気時間は3時間であった。乾燥浚渫土中には1グラムあたりPCBが30マイクログラム、ダイオキシンが515ピコグラム含まれていた。試験終了後において測定したところ、乾燥浚渫土1グラムあたりPCBが0.2マイクログラム、ダイオキシンが0.7ピコグラムであった。この試験結果によると、高温度において熱風ガスと直接接触させることによって、浚渫土中のPCBおよびダイオキシンを蒸発分離できることが分かる。
【0018】
本発明者等はさらに研究し、乾燥浚渫土からPCBおよびダイオキシン類を蒸発分離するために、操作温度は200℃以上、500℃以下でなければならないことを見出した。操作温度がこれより低い場合は蒸発分離が遅くなり、本方法は実用的でなくなる。また操作温度がこれより高い場合は処理済の浚渫土が冷却する過程でダイオキシン類が再合成される可能性がある。特に500℃以上になるとダイオキシンの再合成の可能性は高くなる。そして高温度において蒸発分離操作を行う場合には、浚渫土から多量の硫黄酸化物等が発生することがあり、これらを処理しなければならない。また高温度において操作することは、大きな設備を必要とし、熱的に不経済な方法である。
【0019】
また、PCBおよびダイオキシン等の蒸発分離操作を短時間に効果的に行うためには、熱風ガス量を多くする必要がある。通常、乾燥浚渫土1キログラムあたり、0.1立方メートル以上の量を必要とし、好ましくは1立方メートル程度である。なお熱風ガスの量は標準状態に換算した値である。
【0020】
以上の様なPCBおよびダイオキシン等の蒸発分離操作を行うための装置として、公知のさまざまな方法が実施可能である。例えば、キルン型の回転乾燥器を用いて実施する方法は、浚渫土と熱風ガスの接触をよくすることおよび浚渫土の温度を適切に制御することのために効果的な方法である。
【0021】
蒸発分離操作から出てくる熱風ガス中にはPCBおよびダイオキシン等が混入している。そこでこの熱風ガスを高温分解炉に供給して、700℃以上、好ましくは1000℃程度に加熱する。すると、熱風ガス中のPCBおよびダイオキシン等はほぼ完全に熱分解して、無害化される。この高温分解炉は重油等の燃料を燃焼して温度上昇させる方法が実用的であり、公知の高温焼却炉方法で容易に実施可能である。
【0022】
高温分解炉から排出される燃焼ガスは700℃以上の高温度である。必要に応じて熱回収することが望ましい。通常、蒸発分離操作に供給するガスは、大気を吸引してこれを使用する。そこで大気を高温分解炉の燃焼ガスによって必要な温度まで加熱昇温して熱風ガスとなして、そして蒸発分離操作へ供給する。また蒸発分離操作から排出される熱風ガスを高温分解炉へ供給する前に、この燃焼ガスによってさらに加熱昇温してから高温分解炉に供給することも望ましいことである。これらは全体のシステムの熱的バランスに基づいて経済的なシステムに設計されるものである。
【0023】
高温分解炉から排出される燃焼ガスは、通常の場合、前記の熱回収を行ってもなお高温度である。そこで、この燃焼ガスの熱を、浚渫土の乾燥のために利用することがのぞまれるのである。前述の乾燥器の様に、高温度の熱風と浚渫土を直接接触させる方法の場合には、乾燥用の熱風となして乾燥器へ供給する前に、適切な温度に低減しなければならない。適切な温度とは、浚渫土の温度を20℃以上200℃以下に保持するための温度である。そしてこの適切な温度は乾燥装置の設計によって定まる温度であり、通常は300℃程度以下である。また、燃焼ガス温度をこの温度に低減する方法として、燃焼ガスに外気を加える方が簡便で実用的な方法である。こうすることによって、燃焼ガスの容量は増大し、浚渫土の乾燥を効果的に行うことができ、さらに燃焼ガスの熱を有効に利用することができる。
【実施例】
【0024】
本発明の方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。図1は浚渫土に酸化剤を添加して脱水処理する方法を示している。図において浚渫土1は溶解槽10に投入される。同時に酸化剤2が添加される。そして脱水助剤として凝集剤3が添加される。実施例においては、回分式操作とし、1回の浚渫土投入量は160リットルとした。別途の分析測定によって、この中には乾燥浚渫土として58kgが含まれていることがわかっていた。酸化剤として、実施例においては過酸化水素を使用した。乾燥浚渫土1kg当り1gとして、過酸化水素約58gを、水溶液として添加した。溶解槽10には攪拌装置が設置されており、これによって攪拌混合した。次に高圧ポンプ20によって、溶解槽10から浚渫土を抜き出し、ろ過器30へ供給した。
【0025】
ろ過器30はフィルタープレス式の公知のものであり、ろ液4と脱水土5とに分離した。ろ液4を分析測定したところ、PCBおよびダイオキシン類は検知されなかった。脱水処理後の脱水土5の水分は約40%、固形分は約60%であった。さらに脱水土5を乾燥し易い程度に細かに破砕してから、汚染浚渫土として無害化処理操作に供給した。
【0026】
図2は汚染浚渫土の無害化処理の方法を示している。脱水処理から送られてきた脱水土すなわち汚染浚渫土41は乾燥器101に供給される。乾燥器101は公知の回転式乾燥器であり、内部において汚染浚渫土は熱風54と直接に接触して、水分を蒸発させて乾燥する。熱風54の温度は乾燥器の設計条件によってさまざまであるが、本実施例では約300℃とした。乾燥器101内の浚渫土は加熱されて、乾燥後の乾燥浚渫土42は約150℃であった。そして乾燥浚渫土42は充分に乾燥しており、水分はほぼゼロであった。また乾燥器101からの乾燥器排出ガス55は約130℃であった。これを乾燥器ファン106によって吸引排出し、大気中へ放出した。乾燥器排出ガス55の臭気および有害成分を測定したところ、環境基準上で問題となる様なものはなにもなかった。
【0027】
乾燥浚渫土42は有害物分離器102に供給される。有害物分離器102は公知の回転式乾燥器構造のものであり、乾燥浚渫土42と熱風ガス46とが直接接触する。そして浚渫土中のPCBおよびダイオキシン類等の有害物は乾燥浚渫土42から蒸発して、熱風ガス46へ移動するのである。本実施例では乾燥浚渫土42は約150kg/hであり、入口温度は150℃であり、出口温度は300℃であった。熱風ガス46は300℃の高温度とし、300Nm3/hの流量とした。熱風ガス46の温度および流量は、乾燥浚渫土の温度と量に応じて設計されるものであり、乾燥浚渫土が150℃以上、400℃以下となる様に設計される。有害物分離器102内の熱風ガスは有害物分離器循環ファン107によって、吸引排気されて、高温分解炉104へ供給される。この有害物分離器排気ガス47は約250℃であり、300Nm3/hであった。
【0028】
有害物分離器102から排出される処理済高温浚渫土43は冷却器103へ供給されて、冷却される。冷却器103は公知の回転式乾燥器構造のものであり、処理済高温浚渫土43と外気温度の大気51とが直接接触する。処理済高温浚渫土43は冷却されて、約50℃となって冷却器103から排出される。一方、外気51は、冷却器103の中で処理済高温浚渫土43と直接接触して温度上昇し、冷却器ファン109によって吸引排気され、そして熱風混合器105へ供給される。冷却器排気ガス52の温度は外気51の風量によって定まるが、本実施例では約105℃であった。冷却器103から排出される無害化浚渫土44は無害化処理されたものである。無害化浚渫土44に含まれるPCBおよびダイオキシンを測定したところ、PCBは0.2mg/kg以下、ダイオキシンは0.7pg/g以下であった。これは環境基準値以下であり、無害の一般土砂と同様に扱うことができる。そして浚渫土44は、一般土壌として再利用することのできるものである。
【0029】
有害物分離器102から排出される有害物分離器排気ガス47はPCBおよびダイオキシン類等の有害物をふくんでいる。そこでこのガスを高温分解炉104に導入して、有害物を熱分解する。高温分解炉104に導入する前に、高温分解炉104内に設置した有害物分離器排気ガス加熱器112によって予備加熱する。加熱後の高温有害物分離器排気ガス48の温度は、本システムの熱バランスによって設計されるものであるが、本実施例では約500℃であった。高温分解炉104は公知の高温焼却炉構造のものであり、燃料57としてA重油を燃やして高温度とするものである。この場合、燃焼空気ファン111によって大気を吸引して、燃焼空気56となして供給する。高温分解炉104においては、高温有害物分離器排気ガス48と燃料57の燃焼ガスとを混合して約1000℃となした。これは燃料の量を加減することによって容易に実施可能である。高温有害物分離器排気ガス48中の有害物は燃焼ガスと混合して1000℃に加熱される際に、分解して無害な炭酸ガスおよび水蒸気等に変化する。高温分解炉内の燃焼排気ガス9は常に約1000℃に保持する様に制御する。また1000℃に保持する時間として、2秒以上の滞留時間とすることが望ましい。その結果、燃焼排気ガス49にはPCBおよびダイオキシン類等の有害物は分解して無くなる。
【0030】
高温分解炉104内に有害物分離器予熱器113が設置されており、ここに大気温度の外気5が有害物分離器ファン108によって供給される。そして約300℃まで加熱され、熱風ガス46として有害物分離器102へ供給される。
【0031】
燃焼排気ガス49は有害物分離器排気ガス加熱器112および有害物分離器予熱器113と熱交換してから高温分解炉排気ガス50として、高温分解炉104から排出され、熱風混合器105へ供給さる。
【0032】
高温分解炉排気ガス50は通常、相当に高温度であり、実施例の場合約650℃であった。そこでこの分解炉排気ガス50を急速に冷却し、乾燥器101に適した温度の熱風と成す。この急速冷却操作は熱風混合器105において行う。熱風混合器105において、高温分解炉排気ガス50の他に冷却器排気ガス52および外気53が供給され、これらのガスが直接混合されて急速冷却されるのである。熱風混合器105から排出される熱風の温度は、外気53の風量を加減することによって適切な温度に調節することができる。通常、外気53は熱風混合器ファン110によって供給される。適切な温度は乾燥器101の操作条件によって設計されるのであるが、本実施例では約300℃である。この様にして、熱風54の温度を乾燥器101に適した温度に調整した後、汚染浚渫土41の乾燥用熱源として乾燥器101へ供給する。この様なシステムを構成することによって、高温分解炉で使用した燃料の熱を最大限に有効利用することができるのである。
【0033】
本実施例は本発明の一つの実施例であり、本実施例と異なる温度、流量条件についても実施可能である。さらに乾燥器、有害物分離器、高温分解炉等の構造についても、さまざまな公知の方法が可能である。特に排気ファンの設置方法は本実施例以外に種々の公知の方法が実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】:酸化剤を添加して脱水処理する方法の工程図
【図2】:浚渫土無害化処理方法の工程図
【符号の説明】
【0035】
1:浚渫土
2:酸化剤
3:凝集剤
4:ろ液
5:脱水土
10:溶解槽
20:高圧ポンプ
30:ろ過器
41:汚染浚渫土
42:乾燥浚渫土
43:処理済高温浚渫土
44:無害化浚渫土
45:外気
46:熱風ガス
47:有害物分離器排気ガス
48:高温有害物分離器排気ガス
49:燃焼排気ガス
50:高温分解炉排気ガス
51:外気
52:冷却器排気ガス
53:外気
54:熱風
55:乾燥器排気ガス
56:燃焼空気
57:燃料
101:乾燥器
102:有害物分離器
103:冷却器
104:高温分解炉
105:熱風混合器
106:乾燥器ファン
107:有害物分解炉循環ファン
108:有害物分離器ファン
109:冷却器ファン
110:熱風混合器ファン
111:燃焼空気ファン
112:有害物分離器排気ガス加熱器
113:有害物分離器予熱器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度のPCBおよびダイオキシンを含む浚渫土を無害化処理する方法において、該浚渫土に酸化剤を加えて脱水処理し脱水土と成した後、該脱水土を20℃以上であって200℃以下の温度に加熱して乾燥、次に200℃以上であって500℃以下の高温度ガスと接触、該高温度ガスの供給量は該浚渫土の乾燥物1キログラムあたり0.1立方メートル以上とし、該浚渫土と接触した該高温度ガスを700℃以上の高温度に加熱、該高温度のガスを該浚渫土の乾燥のための熱源として使用することを特徴とした方法である。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216068(P2007−216068A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309221(P2005−309221)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(300064320)株式会社エコアップ (7)
【Fターム(参考)】