説明

浮遊選別装置および浮遊選別方法

【課題】発泡体を含む材料から、発泡体を確実に選別することのできる、浮遊選別装置および浮遊選別方法を提供すること。
【解決手段】発泡体を含む材料を液体2に浮遊させて、発泡体を選別する浮遊選別装置1であって、液体2を収容するための外側ケーシング3と、外側ケーシング3内に、外側ケーシング3と連通するように配置され、材料を受け入れる内側筒4と、外側ケーシング3内に設けられ、液体2を攪拌するための水平回転羽根5と、内側筒4内に設けられ、上下移動可能な上下移動羽根6とを備える浮遊選別装置1に、湿潤状態の材料を投入し、その浮遊選別装置1により発泡体を選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊選別装置および浮遊選別方法、詳しくは、発泡体を含む材料を液体に浮遊させて、発泡体を選別する浮遊選別装置および浮遊選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来により、各種材料の中から、目的の材料を選別するための選別装置が知られている。
例えば、下端が開放される内側サイクロンと、これの外側に設けられ、水を収容する有底の外側サイクロンとを備える比重選別機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、特許文献1で提案される比重選別機では、球状のPPおよびPETとアルミニウム粒とを含む材料を、内側サイクロン内において渦流となる水に投入し、まず、比重が大きいアルミニウム粒を沈殿させてこれを採取し、次いで、PPおよびPETを内側サイクロンにおいて下降させながら、渦流によって内側サイクロンから外側サイクロンに移動させ浮上させて、これらを選別している。
【特許文献1】特開平10−244536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、廃棄される樹脂などの材料は、発泡ポリスチレンなどの発泡体を含んでおり、かかる発泡体を選別する必要がある。
しかし、特許文献1で提案される比重選別機では、発泡体を選別することは困難である。
本発明の目的は、発泡体を含む材料から、発泡体を確実に選別することのできる、浮遊選別装置および浮遊選別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の浮遊選別装置は、発泡体を含む材料を液体に浮遊させて、前記発泡体を選別する浮遊選別装置であって、液体を収容するための外側ケーシングと、前記外側ケーシング内に、前記外側ケーシングと連通するように配置され、前記材料を受け入れる内側筒と、前記外側ケーシング内に設けられ、前記液体を攪拌するための水平回転可能な第1羽根と、前記内側筒内に設けられ、上下移動可能な第2羽根とを備えていることを特徴としている。
【0006】
この選別装置では、内側筒に受け入れられる材料は、第2羽根の上下移動に基づく液体の下方流および上方流によって、上下方向に分離される。
つまり、第2羽根の下方への移動に基づく液体の下方流によって、材料は、一旦、下部に押し下げられる。続いて、比重が極めて小さい発泡体は、相対的に、第2羽根の上方への移動に基づく液体の上方流に追随して、上方に押し上げられて浮上する。
【0007】
一方、発泡体以外の材料は、相対的に、第2羽根の上方への移動に基づく液体の上方流に追随せず、内側筒内の下部においてそのまま浮遊する。そして、発泡体以外の材料は、第1羽根の水平回転に基づく水平方向の攪拌に起因する渦流によって、水平回転されながら、水平方向外側へ向かう遠心力によって、内側筒内からそれに連通する外側ケーシングへ移動する。
【0008】
そのため、内側筒において浮上する発泡体と、外側ケーシングの発泡体以外の材料とをそれぞれ回収することにより、材料から発泡体を確実に選別することができる。
その結果、簡易な構成により、発泡体を確実に選別することができる。
また、本発明の浮遊選別装置では、さらに、前記内側筒の上下方向途中に向かって、材料を供給するための供給部を備えていることが好適である。
【0009】
この浮遊選別装置では、供給部により、内側筒の上下方向途中に供給される材料が、第2羽根の下方流と上方流との両方に円滑かつ確実に作用される。そのため、相対的に上方へ押し上げられる発泡体と、相対的に下方へ押し下げられる発泡体以外の材料とを、効率よく分離することができる。その結果、発泡体を効率よく選別することができる。
また、本発明の浮遊選別装置では、前記第2羽根は、水平方向に対して傾斜して設けられていることが好適である。
【0010】
この浮遊選別装置では、第2羽根の水平方向より上方に傾斜する部分では、材料が浮上し易く、第2羽根の水平方向より下方に傾斜する部分では、材料が沈降し易くなる。そのため、発泡体と、発泡体以外の材料とを、効率よく分離して、発泡体を効率よく選別することができる。
また、本発明の浮遊選別装置では、前記内側筒の上部には、前記発泡体を前記内側筒から取り出すための取出部が設けられ、前記取出部の下側には、液体を滞留させる滞留部が設けられていることが好適である。
【0011】
この選別装置では、内側筒の上部では、液体において上方に押し上げられて浮上する発泡体は、滞留部によって、液体とともに滞留される。そうすると、発泡体は、滞留部によって澱みを生じるので、確実に分離できる。
そのため、取出部から、滞留された発泡体をまとめて取り出せば、内側筒の上部からの液体の余分な排出を抑制することができる。
【0012】
その結果、発泡体の混在を確実に防止することにより、発泡体の選別のコストを低減させながら、発泡体を効率よく選別することができる。
また、本発明の浮遊選別装置では、前記内側筒には、材料を前記内側筒内に取り入れるための取入部が設けられ、前記取出部と前記取入部とが、前記内側筒の軸線を挟んで対向配置されていることが好適である。
【0013】
この浮遊選別装置では、取入部から材料を取り入れて、材料を内側筒の直径方向に沿って軸線に通過させながら発泡体を分離して、取出部で発泡体を取り出すので、取入、分離および取出を円滑に実施することができる。そのため、発泡体を効率よく選別することができる。
また、本発明の浮遊選別方法は、発泡体を含む材料を液体に浮遊させて、前記発泡体を選別する浮遊選別方法であって、湿潤状態の前記材料を、上記の浮遊選別装置に投入する工程と、前記浮遊選別装置により前記発泡体を選別する工程とを備えていることを特徴としている。
【0014】
この浮遊選別方法は、湿潤状態の材料を、上記の浮遊選別装置に投入するので、浮遊選別装置において、発泡体を確実に浮上させて、発泡体以外の材料を確実に浮遊させることができる。そのため、発泡体を効率よく選別することができる。
また、本発明の浮遊選別方法では、前記第1羽根を、周速3〜30m/minで水平回転させ、前記第2羽根を、速度5〜50m/minで上下に往復移動させることが好適である。
【0015】
この浮遊選別方法では、ゆっくりとした特定の周速で第1羽根を水平回転させ、ゆっくりとした特定の速度で第2羽根を上下に往復移動させるので、発泡体を確実に浮上させて、発泡体以外の材料を確実に浮遊させることができる。そのため、発泡体を効率よく選別することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浮遊選別装置および浮遊選別方法によれば、簡易な構成により、発泡体を確実に選別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の浮遊選別方法に用いられる、本発明の浮遊選別装置の正断面図、図2は、図1におけるA−A矢視図、図3は、外側ケーシングの正面図、図4は、図3に示す外側ケーシングの平面図、図5は、内側筒の正断面図、図6は、図5におけるB−B矢視図、図7は、第2羽根の正断面図、図8は、図7におけるC矢視図である。
なお、図2において、外側ケーシング3および内側筒4の相対位置を明確に示すために、第1フレーム43および第2フレーム44を省略している。
【0018】
また、方向に関する記載は、図1を基準として、紙面右側を「右側」(一方側)、紙面左側を「左側」(他方側)、紙面上側を「上側」、紙面下側を「下側」、紙面手前側を「前側」、紙面奥側を「後側」とする。
図1において、この浮遊選別装置1は、発泡体を含む材料を液体2に浮遊させて、発泡体を選別する浮遊選別装置1であって、液体2を収容するための外側ケーシング3と、材料を受け入れる内側筒4と、液体2を攪拌するための第1羽根としての水平回転羽根5と、第2羽根としての上下移動羽根6とを備えている。
【0019】
外側ケーシング3は、図1および図2に示すように、第1フレーム43に支持され、浮遊選別装置1の上下方向略中央に配置されており、図3および図4に示すように、上端が開放される有底略円筒形状に形成されている。また、外側ケーシング3は、上下方向に延びる第1側壁8と、第1側壁8の下端から連続する第1底壁9とを一体的に備えている。
第1側壁8には、第1側壁8の上部に小比重取出部10が形成されている。
【0020】
小比重取出部10は、後述する発泡体の選別において浮上する材料(例えば、後述する小比重樹脂)を取り出すために設けられ、第1側壁8の上端部における前端に配置され、平面視略矩形状に形成されている。小比重取出部10は、正断面略コ字形状に形成されており、第1側壁8の前端から連続して膨出するように形成されている。
また、小比重取出部10により区画される空間が小比重取出室18として形成されている。小比重取出室18は、外側ケーシング3の内部空間(図1および図2において示される後述する第2選別室28)と連通している。
【0021】
また、第1側壁8には、取付部12、供給受部13および発泡体取出受部14が設けられている。
取付部12は、第1側壁8を第1フレーム43(図1参照)に取り付けて固定するために設けられ、第1側壁8の上下方向途中の外側面に、第1側壁8の周方向に間隔を隔てて複数設けられている。
【0022】
供給受部13は、図1および図2に示すように、後述する供給部としての供給フィーダ31が接続される材料取入管33を収容するために設けられ、第1側壁8の左側上端に配置されている。供給受部13は、図3および図4に示すように、第1側壁8の左端から左方斜め上方に向かって突出するように形成されている。
発泡体取出受部14は、図1および図2に示すように、後述する発泡体取出管34を収容するために設けられ、第1側壁8の右側上端に配置されている。発泡体取出受部14は、図3および図4に示すように、第1側壁8の右端から右方斜め下方に向かって突出するように形成されている。
【0023】
第1底壁9は、第1側壁8の下端から径方向中心に向かうに従って下方に突出する正断面湾曲形状に形成されている。
また、第1底壁9には、前後方向中央および左右方向中央に大比重取出部11が設けられている。
大比重取出部11は、発泡体の選別において沈降して沈殿する材料(例えば、後述する大比重樹脂)を取り出すために設けられ、略円筒形状に形成されている。具体的には、大比重取出部11は、第2大比重取出管19を備えている。
【0024】
第2大比重取出管19は、上下方向に延びるように形成され、その上端が、第1底壁9の下端に接続されている。
また、第2大比重取出管19の下端には、図1に示すように、開閉ゲート20を介して下方に延びる下部管49が接続され、その下部管49の下端には、取出フィーダ21が接続されている。
【0025】
開閉ゲート20は、第2大比重取出管19および下部管49の間を開閉可能に設けられている。なお、開閉ゲート20は、自動操作により、一定周期で開閉するように構成されることができる。
取出フィーダ21は、スクリューフィーダからなり、下部管49の下端に沈殿する材料を取出可能に設けられている。
【0026】
内側筒4は、略矩形平板状のベース7および支持ロッド68を介して第2フレーム44に支持され、外側ケーシング3内に設けられている。すなわち、内側筒4は、外側ケーシング3の前後方向内側および左右方向内側に、これらと間隔を隔てて配置されている。また、内側筒4は、その軸線が、外側ケーシング3の第1側壁8の上下方向に沿う軸線と重複するように、つまり、外側ケーシング3と同心状に、配置されている。
【0027】
また、内側筒4は、図5および図6に示すように、上端および下端が開放される略円筒形状に形成され、具体的には、下端および上下方向途中では、上方に向かうに従って内径がわずかに小さくなるテーパ形状に形成されるとともに、上端では、略直管形状に形成されている。
また、内側筒4は、図1および図2に示すように、外側ケーシング3内に、外側ケーシング3と連通するように配置されている。すなわち、内側筒4の下端が、外側ケーシング3内に臨むように配置されている。また、内側筒4の上端は、外側ケーシング3の上端より上側にやや突出して配置されている。
【0028】
これにより、内側筒4の外側、すなわち、内側筒4と外側ケーシング3との間には、これらにより区画される空間(第2選別室)28が形成され、また、内側筒4の内側には、これにより区画される空間(第1選別室)27が形成されている。そして、第1選別室27および第2選別室28は、内側筒4の下端である連通口26を介して、互いに連通している。
【0029】
また、内側筒4には、図5および図6に示すように、取入部としての材料取入部29と、取出部としての発泡体取出部30とが形成されている。
材料取入部29は、材料を内側筒4内に取り入れるために設けられ、内側筒4の左端の上下方向途中に配置されており、材料取入管33を備えている。
材料取入管33は、上下方向、具体的には、下方斜め右側から上方斜め左側に延びるように形成されている。材料取入管33は、略直管形状に形成され、その下端が、内側筒4の上下方向途中に接続されている。また、材料取入管33の上端には、第1フランジ45が設けられている。
【0030】
そして、内側筒4には、材料取入管33が内側筒4の左端の上下方向途中に接続されることによって、内側筒4の上下方向途中に材料側開口66が形成され、材料側開口66を介して、第1選別室27(図1および図2参照)と材料取入管33の内部空間とが連通している。
また、材料取入管33の上側には、図1に示すように、供給フィーダ31が設けられている。
【0031】
また、供給フィーダ31は、材料を内側筒4に供給するために設けられるスクリューフィーダであって、また、スクリュー(供給スクリュー)32の下部が材料取入管33に挿入されている。また、供給フィーダ31は、供給フィーダ31の下端に設けられる第3フランジ47と第1フランジ45とが固定されることにより、材料取入管33に取り付けられている。
【0032】
また、供給フィーダ31の上部には、材料を供給フィーダ31に供給するための、シュート35が設けられている。シュート35は、下方に向かって内径が小さくなる、平面視略台形状の中空状に形成されている。また、シュート35内には、図示しない注液装置が設けられている。
注液装置は、シュート35に投入される材料の状態に応じて、材料に液体(水など)を注液(注水)するように構成されている。
【0033】
発泡体取出部30は、図5および図6に示すように、発泡体の選別において浮上する発泡体を内側筒4から取り出すために設けられ、材料取入部29と、内側筒4の軸線22を挟んで対向配置されている。すなわち、発泡体取出部30は、内側筒4の右端の上部に配置されている。また、発泡体取出部30は、左右方向(内側筒4の直径方向)に延び、上方が開放される略円筒形状に形成されている。
【0034】
発泡体取出部30は、左側(内側筒4の直径方向内側)に配置される滞留部37と、右側(内側筒4の直径方向外側)に配置される回収部38とを備えている。
滞留部37は、液体2を滞留させるために設けられ、発泡体取出部30の下側に配置される第3底壁39と、第3側壁40とを一体的に備えている。
第3底壁39は、内側筒4の右端と連続して形成されており、内側筒4の右端から右方斜め上側に延びる、平面視略矩形平板状に形成されている。
【0035】
第3側壁40は、内側筒4の右端と連続して形成されており、第3底壁39の前後方向両端から上方に延びる平板状に形成されている。
滞留部37において、第3底壁39および第3側壁40により区画される空間が、滞留室64として形成される。
回収部38は、第3底壁39の右側に連続して配置される第4底壁41と、第3側壁40の右側に連続して配置される第4側壁42とを一体的に備えている。
【0036】
第4底壁41は、第3底壁39の右端から右方斜め下側に延びる平板形状に形成されている。また、第4底壁41は、第3底壁39の右端から右方(第4底壁41の左右方向途中)に向かうに従って幅狭となり、その後、左右方向途中から右方にさらに向かって同幅で形成されている。
第4側壁42は、第4底壁41の平面形状に対応するように、第4底壁41の前後方向両端から上方に延び平板形状に形成される。
【0037】
回収部38において、第4底壁41および第4側壁42により区画される空間が、回収室65として形成される。
そして、内側筒4には、発泡体取出部30の第3底壁39および第3側壁40が内側筒4の上部右端に接続されることにより、内側筒4の上端が切り欠かれた、右側面視略矩形状の発泡側開口67が形成されている。
【0038】
そして、内側筒4において、滞留室64と回収室65とが連通しており、また、滞留室64が、発泡側開口67を介して、第1選別室27(図1参照)と連通している。
また、第1内側筒4の上端には、第2フランジ46が設けられており、図1に示すように、第2フランジ46の上側に設けられる支持ロッド68がベース7を介して第2フレーム44に固定されることによって、第1内側筒4は、第2フレーム44に支持されている。
【0039】
水平回転羽根5は、図1および図2に示すように、外側ケーシング3内に設けられており、外側ケーシング3および内側筒4の軸線に沿う回転軸52と、回転軸52の下端において支持される水平回転羽根部材53とを備えている。
回転軸52は、内側筒4を貫通するように、より具体的には、後述する上下移動羽根6の支持筒59を挿通するように、配置されている。また、回転軸52の上部には、図1に示すように、第2フレーム44にベース7を介して支持されるモータ51が設けられ、回転軸52の上端がモータ51に接続されている。
【0040】
水平回転羽根部材53は、図2に示すように、回転軸52の下端から径方向外側に延びる複数(3枚)の水平羽根を備えている。モータ51の回転駆動によって、回転軸52が回転されると、水平回転羽根部材53の水平羽根が水平回転される。
上下移動羽根6は、図1および図2に示すように、内側筒4内に設けられており、支持筒59と、支持筒59の下端において支持される上下移動羽根部材63とを備えている。
【0041】
支持筒59は、その軸線が、内側筒4の軸線と重複するように、つまり、内側筒4と同心状に配置され、回転軸52を回転自在に外嵌している。
また、支持筒59は、回転軸52に対して上下移動可能に配置されている。また、支持筒59の上端には、図1に示すように、水平ロッド58が、支持筒59と一体的に設けられている。
【0042】
水平ロッド58は、左右方向に延び、その左右方向中央において、支持筒59を固定するとともに、回転軸52が貫通する貫通孔が形成されている。また、水平ロッド58の右端には、シリンダ54に上下移動自在に摺動支持される上下ロッド56の下端55が連続されている。
上下ロッド56は、上下方向に延び、第2フレーム44に固定されるシリンダ54内において上下移動可能に摺動するように、シリンダ54に挿入されて支持されている。また、上下ロッド56の上端には、上下ロッド56の上下方向の移動範囲を調整するための調整部材57が設けられている。
【0043】
シリンダ54は、圧空により上下ロッド56を上下移動させるエアシリンダである。なお、シリンダ54には、上下ロッド56の上下移動(スライド)の速度を調整するための図示しない速度調整装置(例えば、スピードコントローラ)が設けられている。
また、水平ロッド58の左右方向他端部(左端部)には、ガイドロッド25が設けられており、水平ロッド58は、ガイドロッド25および上下ロッド56により、その水平姿勢を確保しながら、上下移動するように形成されている。
【0044】
上下移動羽根部材63は、図1および図7に示すように、内側筒4内に設けられており、水平方向に対して傾斜、具体的には、左方から右方に向かうに従って上方に傾斜して設けられている。すなわち、上下移動羽根部材63は、図1、図7および図8に示すように、支持筒59の下端において回転軸52が挿通されるリング形状の基部62と、基部62から径方向外側に延びる上下移動羽根部材63とを一体的に備えている。
【0045】
基部62は、図7および図8に示すように、上下方向に延びる円筒形状に形成されている。基部62は、回転軸52に対して、密着状に摺動自在に設けられており、支持筒59の下端を閉塞している。
上下移動羽根部材63は、図8に示すように、放射状に形成され、具体的には、平板状の略円形状の円盤部材69の周端から、径方向内側に略凹状に切り欠かれる複数の切欠部70が形成されるように形成されている。また、上下移動羽根部材63は、図7および図8に示すように、水平方向に対して傾斜して設けられ、すなわち、上下移動羽根部材63(円盤部材69)の軸線(羽根軸線)71が、基部62の軸線(基部軸線)72と交差するように設けられている。なお、羽根軸線71と、基部軸線72とのなす角度αは、例えば、3〜30度、好ましくは、5〜15度である。
【0046】
そして、上下移動羽根6では、図1の矢印(実線および破線)で示すように、シリンダ54により、上下ロッド56、水平ロッド58および支持筒59が上下移動されて、調整部材57により調整される上下方向の移動範囲において、上下移動羽根部材63が上下に往復移動する。具体的には、上下移動羽根部材63の上下方向の移動(ストローク)範囲が、上下方向において、材料取入管33の材料側開口66を含むように、調整部材57により上下移動羽根部材63の上下方向の移動範囲が調整されている。また、上下移動羽根部材63の上下の移動速度は、速度調整装置により調整される。
【0047】
そして、この浮遊選別装置1は、以下の手順により組み立てられる。
すなわち、まず、ベース7を用意して、そのベース7にモータ51とシリンダ54とを固定する。
次いで、モータ51に回転軸52の上端を取り付けるとともに、シリンダ54に上下ロッド56を挿入する。
【0048】
次いで、水平ロッド58を、回転軸52の下端から回転軸52に挿入し、続いて、水平ロッド58と上下ロッド56の下端55とを連結させる。次いで、ガイドロッド25の下端を水平ロッド58に取り付ける。
次いで、内側筒4を、回転軸52の下端から、回転軸52に挿入させる。
別途、支持筒59に、上下移動羽根部材63を取り付け、次いで、第2フランジ46に支持ロッド68を取り付け、その支持ロッド68をベース7に取り付ける。
【0049】
次いで、回転軸52に水平回転羽根部材53を取り付ける。
別途、外側ケーシング3を用意し、取付部12を第1フレーム43に固定し、その後、ベース7を、内側筒4が第2フレーム44の上方から外側ケーシング3内に挿入されるように、第2フレーム44に固定する。
その後、発泡体取出管34と発泡体取出受部14との間を、シール部材でシールする。
【0050】
次に、本発明の浮遊選別方法の一実施形態について説明する。
この方法では、まず、材料を用意する。
材料としては、例えば、発泡体を含む樹脂などであって、具体的には、一般消費者が廃棄する発泡体を含む廃プラスチック(より具体的には、「容器リサイクル法」に基づくプラスチック回収品)などが挙げられる。
【0051】
発泡体としては、例えば、食品トレイなどに使用される、発泡ポリスチレン(発泡PS)など、比重が顕著に小さい発泡樹脂が挙げられる。
発泡体以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの比重が1よりわずかに小さい樹脂(小比重樹脂)や、例えば、ポリスチレン(例えば、延伸ポリスチレン(OPS)など、発泡PSを除くポリスチレン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC、具体的には、硬質PVCなど)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの比重が1より大きい樹脂(大比重樹脂)などが挙げられる。
【0052】
このような小比重樹脂の比重は、例えば、0.9〜0.96であり、大比重樹脂の比重は、例えば、1.1〜1.7である。
材料における各成分の含有割合は、材料100重量部において、例えば、発泡体が3〜8重量部、発泡体以外の材料が85〜95重量部である。より具体的には、材料100重量部において、例えば、発泡PSが5〜6重量部、小比重樹脂が約90重量部、大比重樹脂がそれらの残部である。
【0053】
また、上記した材料を、必要により、公知の粉砕装置によって、予め粉砕する。この粉砕により、材料の最大長さを、例えば、5〜50mm、好ましくは、10〜30mmに調整する。
次いで、この方法では、材料を湿潤状態にする。すなわち、材料に、液体をスプレーなどの散布方法により塗布したり、あるいは、材料を液体に浸漬する。
【0054】
液体としては、例えば、水または界面活性剤を含む界面活性剤水溶液などが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など、公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の含有割合は、例えば、界面活性剤水溶液の比重が大比重樹脂の比重以下となるように設定され、具体的には、水100重量部に対して、例えば、1重量部以下、好ましくは、0.5重量部以下(通常、0.3重量部以上)に設定される。界面活性剤の含有割合が上記範囲を超える場合には、界面活性剤水溶液の比重が大比重樹脂の比重より大きくなるので、大比重樹脂を沈降させることができず、大比重樹脂と小比重樹脂とを分離して回収できない場合がある。
【0055】
これにより材料の含水率を、例えば、50重量%以上、好ましくは、70重量%以上、より具体的には、70重量%程度に設定する。材料の含水率が上記範囲にない場合、とりわけ、上記範囲に満たない場合には、材料の表面に空気(気泡)や油膜が付着し易いため、選別において発泡体のみを浮上させにくい場合、具体的には、発泡PSと、PEおよびPPとの浮遊速度を相違させることができない場合がある。
【0056】
また、浮遊選別装置1に液体2を充填する。液体2は、上記と同様の液体が用いられる。
浮遊選別装置1に液体2を充填するには、外側ケーシング3の上端または内側筒4の上端から、第2選別室28および第1選別室27に液体2が充填されるように、液面が滞留部37の右端の高さと同じ高さになるまで、液体2を注入(注液)する。
【0057】
次いで、この方法では、浮遊選別装置1の水平回転羽根部材53を水平回転させるとともに、上下移動羽根部材63を上下に往復移動させる。
すなわち、モータ51の回転駆動により、回転軸52を介して水平回転羽根部材53をゆっくりと水平回転させる。また、上下ロッド56の上下の往復移動により、水平ロッド58、支持筒59および基部62を介して、上下移動羽根部材63をゆっくりと上下に往復移動させる。
【0058】
具体的には、水平回転羽根部材53の周速を、例えば、3〜30m/min、好ましくは、10〜20m/minに設定して、水平回転羽根部材53を水平回転させる。また、上下移動羽根部材63の上下の往復移動速度を、例えば、5〜50m/min、好ましくは、25〜50m/minに設定する。
水平回転羽根部材53の周速および上下移動羽根部材63の上下の往復移動速度が上記範囲にない場合には、発泡体を確実に浮上させて、大比重樹脂および小比重樹脂を確実に浮遊させることができない場合がある。そのため、発泡体を効率よく選別することができない場合がある。
【0059】
そして、第1選別室27では、上下移動羽根部材63の上下の往復移動により、液体2の上方流および下方流を生じる。また、第2選別室28では、水平回転羽根部材53の水平回転により、液体2が水平回転されて、液体2の水平方向の渦流を生じる。
次いで、この方法では、材料を浮遊選別装置1に投入する(投入工程)。
具体的には、まず、材料を、シュート35に投入し、続いて、供給フィーダ31の供給スクリュー32の回転により、材料を材料側開口66から第1選別室27に送り出す。これと同時に、材料の内側筒4内への供給の促進と、液体2の補給とを兼ねて、図示しない注液装置から注液する。注液される液体2は、上記した液体2と同様である。
【0060】
そして、第1選別室27において、材料を、上下移動羽根部材63の上下移動に基づく液体2の下方流および上方流によって、上下方向に分離する(選別工程)。
つまり、上下移動羽根部材63の下方への移動に基づく液体2の下方流によって、材料は、一旦、第1選別室27の下部に押し下げられる。
続いて、比重が極めて小さい発泡体は、上下移動羽根部材63の上方への移動に基づく液体2の上方流に追随して、上方に押し上げられて浮上する。さらに、液体2と発泡体とは、第1選別室27の上部において、滞留部37により滞留されて、発泡体がまとめて回収部38から取り出れて選別される。
【0061】
一方、発泡体以外の材料、つまり、小比重樹脂および大比重樹脂は、上下移動羽根部材63の上方への移動に基づく液体2の上方流に追随せず、内側筒4内の第1選別室27の下部において浮遊する。そして、小比重樹脂および大比重樹脂は、水平回転羽根部材53の水平回転に基づく水平方向の渦流によって、水平回転されながら、水平方向外側へ向かう遠心力によって、内側筒4内から外側ケーシング3、つまり、第1選別室27から連通口26を介して第2選別室28に移動し、徘徊する。
【0062】
続いて、小比重樹脂および大比重樹脂は、第2選別室28において、その比重の相違により、上下方向に分離される。
つまり、小比重樹脂は、比重が1より小さいことから、遠心力により外側ケーシング3の第1側壁8に対して押し付けられるように浮上して、小比重取出室18から、取り出される。
【0063】
一方、大比重樹脂は、比重が1より大きいことから、沈降して、第2大比重取出管19内に沈殿する。さらに、大比重樹脂は、開閉ゲート20が開放されることにより、取出フィーダ21の入口に至り、取出フィーダ21の図示しない出口から回収される。
つまり、この方法では、材料から、発泡体を選別し、大比重樹脂を回収するとともに、小比重樹脂を回収する。具体的には、材料から、発泡PSと、PETおよび硬質PVCとを選別して、これらを廃棄した後、PEおよびPPを回収して、これらをリサイクルすることができる。
【0064】
そして、この方法では、供給フィーダ31から内側筒4の第1選別室27に受け入れられる発泡体を含む材料は、上下移動羽根部材63の上下移動に基づく液体2の下方流および上方流によって、上下方向に分離される。
そのため、第1選別室27において浮上する発泡体と、第2選別室28の大比重樹脂および小比重樹脂とをそれぞれ回収することにより、樹脂から発泡体を確実に選別することができる。
【0065】
その結果、簡易な構成により、発泡体を確実に選別することができる。
また、この方法では、供給フィーダ31により、第1選別室27の上下方向途中に供給される材料が、第1選別室27の液体2中に強制的に流入されて、液体2の上下移動羽根部材63による下方流と上方流との両方に円滑かつ確実に作用される。
そのため、上方へ押し上げられる発泡体と、下方へ押し下げられる大比重樹脂および小比重樹脂の材料とを、効率よく分離することができる。その結果、発泡体を効率よく選別することができる。
【0066】
また、この方法では、上下移動羽根部材63の水平方向より上方に傾斜する右部分では、材料が浮上し易く、上下移動羽根部材63の水平方向より下方に傾斜する左部分では、材料が沈降し易くなる。
そのため、発泡体と、大比重樹脂および小比重樹脂とを、効率よく分離して、発泡体を効率よく選別することができる。
【0067】
また、この方法に用いられる浮遊選別装置1では、内側筒4の上部では、液体2において上方に押し上げられて浮上する発泡体が、滞留部37によって、液体2とともに滞留される。そうすると、発泡体は、滞留部37によって澱みを生じるので、確実に分離できる。
そして、発泡体取出部30から、滞留された発泡体をまとめて取り出すので、内側筒4の上部からの液体2の余分な排出を抑制することができる。
【0068】
その結果、発泡体の混在を確実に防止することにより、発泡体の選別のコストを低減させながら、発泡体を効率よく選別することができる。
また、この方法に用いられる浮遊選別装置1では、材料取入部29から材料を取り入れて、材料を第1選別室27における内側筒4の直径方向に沿って、軸線22に通過させながら発泡体を分離して、発泡体取出部30で発泡体を取り出すので、取入(供給)、分離および取出(回収)を円滑に実施することができる。そのため、発泡体を効率よく選別することができる。
【0069】
なお、上記した説明では、図8に示すように、上下移動羽根部材63を、円盤部材69に複数の切欠部70を設けて形成したが、例えば、図示しないが、1つの切欠部70を設けることができる。また、上下移動羽根部材63に切欠部70を設けず、上下移動羽根部材63を円盤部材69のみから形成することもできる。
好ましくは、上下移動羽根部材63を、円盤部材69に複数の切欠部70を設けて形成する。これにより、切欠部70により、材料を上下方向に円滑に移動させることができる。
【0070】
また、上記した説明では、材料を供給フィーダ31により供給したが、例えば、図示しないが、ピストンおよびピストンを収容するシリンダによって、材料を押し出すことができる。あるいは、供給フィーダ31を設けず、材料を材料取入管33に直接投入することもできる。
また、上記した説明では、図1に示すように、大比重樹脂を取出フィーダ21を用いて取り出したが、例えば、図示しないが、ロータリーバルブなどの公知の排出装置を用いることもできる。
【0071】
また、上記した説明では、上下移動羽根部材63を、水平方向に対して傾斜して設けたが、例えば、図示しないが、水平方向に沿って設けることもできる。
また、上記した浮遊選別方法では、浮遊選別装置1を1つ用いたが、例えば、図示しないが、複数の浮遊選別装置1を直列に多段で接続することができる。このようにすれば、発泡体の選別の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の浮遊選別方法に用いられる、本発明の浮遊選別装置の正断面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視図である。
【図3】外側ケーシングの正面図である。
【図4】図3に示す外側ケーシングの平面図である。
【図5】内側筒の正断面図である。
【図6】図5におけるB−B矢視図である。
【図7】第2羽根の正断面図である。
【図8】図7におけるC矢視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 浮遊選別装置
2 液体
3 外側ケーシング
4 内側筒
5 水平回転羽根
6 上下移動羽根
7 供給フィーダ
22 軸線
29 材料取入部
30 発泡体取出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を含む材料を液体に浮遊させて、前記発泡体を選別する浮遊選別装置であって、
液体を収容するための外側ケーシングと、
前記外側ケーシング内に、前記外側ケーシングと連通するように配置され、前記材料を受け入れる内側筒と、
前記外側ケーシング内に設けられ、前記液体を攪拌するための水平回転可能な第1羽根と、
前記内側筒内に設けられ、上下移動可能な第2羽根と
を備えていることを特徴とする、浮遊選別装置。
【請求項2】
さらに、前記内側筒の上下方向途中に向かって、材料を供給するための供給部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の浮遊選別装置。
【請求項3】
前記第2羽根は、水平方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の浮遊選別装置。
【請求項4】
前記内側筒の上部には、前記発泡体を前記内側筒から取り出すための取出部が設けられ、
前記取出部の下側には、液体を滞留させる滞留部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊選別装置。
【請求項5】
前記内側筒には、材料を前記内側筒内に取り入れるための取入部が設けられ、
前記取出部と前記取入部とが、前記内側筒の軸線を挟んで対向配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の浮遊選別装置。
【請求項6】
発泡体を含む材料を液体に浮遊させて、前記発泡体を選別する浮遊選別方法であって、
湿潤状態の前記材料を、請求項1〜5のいずれかに記載の浮遊選別装置に投入する工程と、
前記浮遊選別装置により前記発泡体を選別する工程と
を備えていることを特徴とする、浮遊選別方法。
【請求項7】
前記第1羽根を、周速3〜30m/minで水平回転させ、
前記第2羽根を、速度5〜50m/minで上下に往復移動させることを特徴とする、請求項6に記載の浮遊選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−160531(P2009−160531A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1386(P2008−1386)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000129183)株式会社カワタ (120)
【Fターム(参考)】