説明

浮遊非励振素子を含むマルチバンド平板逆Fアンテナと、それを組み込んだ無線端末

マルチバンド平板逆Fアンテナ(300)は浮遊非励振素子(340)を含む。例えば、平板逆Fアンテナは誘電体基板上に延びた第1及び第2平板逆Fアンテナブランチを含む。第1平板逆Fアンテナブランチ(305)は第1周波数帯にある第1電磁波に応答して共振するように構成される。第2平板逆Fアンテナブランチ(330)は第2周波数帯に或る第2電磁波に応答して共振するように構成される。浮遊非励振素子は、例えば、第2平板逆FアンテナブランチがRF給電点を経由して供給される電磁波によって励振された時に(すなわちアンテナが送信するために使用されるときに)、第2平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合するように構成されている。浮遊非励振素子はまた、浮遊非励振素子が自由空間から供給される電磁波によって励振された時に、第2平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に通信の分野に関し、より詳しくはアンテナとそれを組み込んだ無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の多くの無線端末は、携帯電話機のように、長さが11センチメートル以下である。それゆえ、このような無線端末の中に収容できるアンテナに技術的関心が集まる。平板逆Fアンテナのような平板アンテナは、小型無線端末という限られた空間において用いられるのに適しているアンテナの一種である。典型的には、従来の逆Fアンテナは接地板から隔離された導体素子を含むものである。代表例としての逆Fアンテナは例えば特許文献1及び特許文献2に開示されており、その開示内容は全体としてここに引用して取り込まれるものとする。
【0003】
無線アンテナは多重通信システムの運用を可能とするためにマルチ周波数バンドで動作することになる。例えば、多くの携帯電話は現在、850MHz、900MHz、1800MHz及び1900MHzの公称周波数で動作するGSMやCDMA(符号分割多重接続)モードにおいて、2重バンド又は3重バンドで動作するように設計されている。ディジタル通信システム(DCS)は標準的には1710MHzから1850MHzの周波数帯にて動作するディジタル携帯電話システムである。北米における携帯端末に割り当てられた周波数帯もアドバンスト・モバイル・フォン・サービス(AMPS)では824−894MHzであり、パーソナル・コミュニケーション・サービス(PCS)では1850−1990MHzを含んでいる。地域によっては無線端末はこれらの周波数帯の2つ又は3つのバンド対応である。これをここでは以後、マルチバンド動作と呼ぶ。
【特許文献1】米国特許6,639,560
【特許文献2】米国特許6,573,869
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアンテナの多くは、無線端末のトランシーバが対応する周波数帯域のそれぞれの無線信号をアンテナ経由で送受信できるように、無線周波数(RF)の給電点と接地点を含んでいる。従来のマルチバンドアンテナ形態のいくつかは低周波数域(例えば824−894MHz)での動作においてはRF給電点を接地点から2−3mm離し、高周波数帯での動作においてはRF給電点と接地点を2−3mmよりも多く離すことが必要であることが知られている。いくつかのマルチバンドアンテナ形態では、高周波特性と低周波特性の折衷案としてRF給電点と接地点との間隔を約7−11mmとすることが知られている。
【0005】
従来のマルチバンドアンテナ形態のいくつかのものは接地非励振素子を備えている。そのような手法は(RF給電点と接地点のほかに)少なくとももう1つの接点を接地することが必要である。それゆえアンテナを収容するために無線端末内に更なるスペースが必要となる。このために無線端末のハウジングの中に他の部品を設置するために必要なスペースが減少することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、浮遊非励振素子(floating parasitic element)を含む平板逆Fアンテナを提供するものである。これら実施形態によれば、マルチバンドアンテナは第1周波数帯における第1電磁波に応答して共振するように構成された第1平板逆Fアンテナブランチと、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の第2電磁波に応答して共振するように構成することのできる第2平板逆Fアンテナブランチとを含むものである。浮遊非励振素子は第2平板逆Fアンテナブランチから距離を離れて、オーミックには分離されて、電磁的にはそれと結合することができるものである。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子は第2平板逆Fアンテナブランチと同一平面となっている。また本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子は第2平板逆Fアンテナブランチの下方位置にあり、少なくとも部分的にこれとオーバーラップしている。また本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子は第2平板逆Fアンテナブランチの上方位置にあり、少なくとも部分的にこれとオーバーラップしている。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、マルチバンドアンテナは接地板をさらに含んでもよい。このとき浮遊非励振素子は接地板と第2平板逆Fアンテナブランチの間に位置することになる。本発明のいくつかの実施形態では、第1及び第2平板逆Fアンテナブランチは空間領域を部分的に囲むように第1方向に伸びている。本発明のいくつかの実施形態では、第2平板逆Fアンテナブランチは浮遊非励振素子と空間領域の間に位置する。本発明のいくつかの実施形態では、第2平板逆Fアンテナブランチは第1と第2方向に伸び、浮遊非励振素子は第1と第2方向に伸びている。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、第1平板逆Fアンテナブランチは第1周波数帯の第1周波数領域の第1信号成分を提供するように構成される。浮遊非励振素子は第1周波数帯の中の第2周波数領域の第2信号成分を提供するために共振するように構成される。この第2周波数領域は第1周波数領域とオーバーラップして、マルチバンドアンテナ集合体の第1周波数領域におけるバンド幅を構成する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、マルチバンドアンテナはさらに第1及び第2平板逆Fアンテナブランチが上面に搭載されるような誘電体基板を含むことができる。第1及び第2平板逆Fアンテナブランチは誘電体基板の近端部で相互に結合する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、マルチバンドアンテナは誘電体基板の近端部で第1及び第2平板逆Fアンテナブランチに結合するRF給電点をさらに含むことができる。接地点はRF給電点とは離れた位置にあり、近端部に結合している。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、マルチバンド無線端末はハウジングと、ハウジング中に配置されていてマルチバンド無線通信信号を受信する受信器及び、又はマルチバンド無線通信信号を送信する送信器を備えることができる。マルチバンド無線端末は第1周波数帯の第1電磁波に応答して共振するように構成された第1平板逆Fアンテナブランチを有するマルチバンドアンテナをさらに含むことができる。マルチバンドアンテナの第2平板逆Fアンテナブランチは第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の第2電磁波に応答して共振するように構成される。マルチバンドアンテナの浮遊非励振素子は第2平板逆Fアンテナとは空間的には分離されていて、オーミックには分離されていて、電磁的にはそれと結合している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して本発明を以下にさらに詳しく記述する。しかしながら本発明は多くの異なった形態で実現できるので、ここに開示する実施形態に限定して解釈されるべきものではなく、むしろ開示内容が綿密であり完全であり、当業者に本発明の意図をすべて伝えるためにこの実施形態が提供されているものである。
【0014】
説明を明瞭にするために、図では線、層、及び領域の厚さは誇張して書かれている。層、領域、又は基板などの或る要素が他要素の「上に」あるという場合は、この他要素の直接「上に」あることもあるし、その間に介在する要素が存在する場合もあってもよいと理解されたい。これとは対照的に、或る要素が他要素の「直接上に」存在するという場合は、介在する要素は存在しないということである。また、或る要素が他要素に「接続している」又は「結合している」という場合は、それは他要素に直接的に接続している場合もあるし、間に介在する要素が存在する場合もあるものと理解されたい。対照的に、或る要素が他の要素に「直接的に接続している」又は「直接的に結合している」という場合は、間に介在する要素が存在しないことを意味する。全文を通して同じ数字は同じ要素を示している。
【0015】
さらに、「下に」「下方に」「下位に」「上に」「上方に」などの空間的な相対関係を示す語は、ここでは或る要素又は特徴物の他の要素や特徴物に対する図示の関係を記述するときの記述の容易さのために用いられている。空間的な相対関係を示す語は、装置を使用したり操作したりする場合に、図示の方向だけでなくこれとは別の方向へ拡張する場合もありうるものと意図していると解釈されたい。例えば、図中の装置が回転した場合、他の要素又は特徴物の「下に」又は「下方に」と記された要素は、回転後は他の要素又は特徴物の「上に」くることになる。このように「下に」と例示した用語は「上に」と「下に」の両方に方向に拡張できるものとする。装置が(90°回転したり、又は他の方向に回転したりするなど)他の方向に向いていることもあるが、ここに使われる空間的相対関係を記述する語はそれに従って適宜解釈されるべきものである。よく知られた機能や構成は、簡潔で明快な説明とするために、ここでは詳しくは記述しない。
【0016】
ここで用いられる「無線端末」という用語はマルチラインディスプレイを有する携帯無線端末又はそれを持たない携帯無線端末や、携帯無線端末とデータ処理機能、ファクシミリとデータ通信機能を結合したものであるパーソナル・コミュニケーション・サービス(PCS)端末や、無線端末、ページャー、インターネット/イントラネットアクセス、ウェブブラウザ、オーガナイザ、カレンダー及び/又は全地球測位システムGPS受信機を含むことがある個人用携帯端末PDAや、無線端末トランシーバを含む従来のラップトップ及び/又はパームトップの受信機その他の機器を含むが、それらに限定するものではない。無線端末はまた、普及計算デバイスと呼ばれる移動端末でもよい。
【0017】
本発明のマルチバンドアンテナの実施形態は、ここでは無線端末について記述されるが、本発明はそれに限定しない。例えば本発明のマルチバンドアンテナの実施形態は、無線通信信号を送信するだけ、又は受信するだけの無線通信器に用いることもできる。例えば、アンテナを利用する従来のAM/FMラジオや全ての受信機は通信信号を受信するだけのものである。一方、遠隔データ発生装置は通信信号を送信するだけのものである。
【0018】
本発明の実施形態による浮遊非励振素子を含むマルチバンドアンテナは図1の無線端末10に組み込まれるものである。無線端末10はハウジング上部13とハウジング底部14を含む。これらは合わさって、中に空洞を含んでいるハウジング12を構成する。上部及び底部のハウジング13,14は複数のキー16を含むキーパッド15、ディスプレイ17、及び無線端末10が多重通信システムにおいて稼動する通信信号の送受信を可能とする電子部品(不表示)を収納している。
【0019】
本発明によるマルチバンドアンテナの実施形態は、ハウジング12で囲まれた空洞に収納されるものであると理解してよい。本発明によるマルチバンドアンテナの実施形態は、空洞に収納されるものであるとここでは書いているが、本発明によるマルチバンドアンテナの実施形態はハウジングの外に置かれる場合もあると理解してもよい。そのような実施形態においては、例えば、マルチバンドアンテナはハウジング底部13の上に設置されてハウジング12を通して空洞内部の他のアンテナと電磁的に結合することができるようになっている。本発明の実施形態によるこのような外部設置のマルチバンドアンテナはこの無線端末が加入者に売れてた後で付け加える付属品として(又はその他の構成物として)提供されることもありうる。
【0020】
さて、無線端末が通信信号を送受信することを可能としている電子部品の構成を図2を参照してより詳しく記述しよう。図示したように、無線周波数(RF)を受信及び/又は送信するマルチバンド平板逆Fアンテナ22は電気的にRFトランシーバに結合していて、トランシーバはさらにマイクロプロセッサのようなコントローラ25に電気的に繋がっている。このコントローラ25はスピーカ26に電気的に繋がっていて、このスピーカは例えばコントローラ25によって提供されたデータに基づいて無線端末のユーザに可聴信号を送信するように構成される。コントローラ25はまたマイク27に電気的に繋がっていて、マイク27はユーザからの可聴入力を受信して、その入力をコントローラ25とトランシーバ24に提供して、遠くに離れた装置に伝える。コントローラ25はキーパッド15とディスプレイ17に電気的に繋がっていて、ユーザが無線端末操作に関するデータの入出力ができるようにする。
【0021】
マルチバンドアンテナ22は多重周波数帯での通信を可能とするために無線端末10へ、又は無線端末10からの電磁波(RF信号の形の)を送信したり又は受信したりするために用いれれることは当業者には理解されるであろう。特に、送信中はマルチバンドアンテナはトランシーバ24の送信部から受けた信号に応答して共振し、対応するRF電磁波を自由空間へ放射する。受信中はマルチバンドアンテナ22は自由空間経由で受信したRF電磁波に応答して共振し、対応する信号をトランシーバ24の受信部へ提供する。
【0022】
送信及び受信の効率のよい動作を可能とするために、マルチバンドアンテナのインピーダンスをトランシーバ24のインピーダンスと「整合」させて、マルチバンドアンテナ22とトランシーバ24間のパワーの伝達を最大にすることができる。ここで用いられるように、「整合」という用語は、インピーダンスが電気的におおむね同調して、アンテナのインピーダンスの不要成分を補償して、マルチバンドアンテナ22の給電点において50オーム(Ω)のような或る特定のインピーダンス値となるように構成されることを含むものと理解されよう。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、マルチバンドアンテナ22は浮遊非励振素子を含んだマルチバンド平板逆Fアンテナ(PIFA)となることができる。例えば、図3に示すように、マルチバンド平板逆Fアンテナ300は、誘電体基板315上を誘電体基板315の近端部320から誘電体基板315の遠端部321へ向けておおむね第1方向に伸びている第1平板逆Fアンテナブランチ305を含んでいる。第1平板逆Fアンテナブランチ305は第1周波数帯の第1電磁波に応答して共振するように構成されている。本発明のいくつかの実施形態では、上記第1周波数帯は約1710MHzと約1990MHzの間の範囲にある周波数を含むものである。
【0024】
第2平板逆Fアンテナブランチ330は近端部320からおおむね第2方向に第1距離だけ伸びて、第1方向に(おおむね第1平板逆Fアンテナブランチ305に平行に)遠端部321へ第2距離だけ伸びる。図示のように、第2平板逆Fアンテナブランチ330はまた、遠端部321から第3の方向に(第2方向に逆向きに)伸びている。第2平板逆Fアンテナブランチ330は第1周波数帯よりは低い第2周波数帯の中の第2電磁波に応答して共振する。本発明のいくつかの実施形態では、第2周波数帯は約824MHzと約960MHzの間の範囲にある周波数を含むものである。第1及び第2平板逆Fアンテナブランチ305,330はその間に空間領域(open region)335を区画する配置となっている。
【0025】
平板逆Fアンテナ300を経て送信されることになる電磁波は誘電体基板315の近端部320に位置するRF給電点310を経てそこに供給される。接地点325も誘電体基板315の近端部320に、RF給電点310とは離れた位置に設置される。
【0026】
図3に示すように、マルチバンド平板逆Fアンテナ300はまた、誘電体基板315上面を第1、第2及び第3の方向に伸びていて、第2平板逆Fアンテナブランチ330の外郭におおむね沿って位置している浮遊非励振素子340を含んでいる。浮遊非励振素子340は第1及び第2平板逆Fアンテナブランチ305,330とは空間的に分離している。ここに用いられているように、「浮遊」という用語は(浮遊非励振素子340に付されているように)浮遊素子がマルチバンドアンテナ300に関する接地板から電気的に分離されている(又は電気的に浮いている)配置を含むものであると理解されよう。「接地板」は、ここに用いられているように平板の形をしているとは限らないと理解されよう。例えば「接地板」は細長い板とかその他の形や適当なサイズであってもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子340と第2平板逆Fアンテナブランチ330とは、第1周波数帯に含まれるRF電磁波の波長の一般的に1.5%以下の距離だけ離れている。浮遊非励振素子340が第2平板逆Fアンテナブランチ330と同一平面であるような本発明のいくつかの実施形態では、上記2素子間の間隔は約1.0mm以下とすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子340は第1及び第2方向に伸びて、第2平板逆Fアンテナブランチ330の外郭に沿っている配置となっている。
【0028】
浮遊非励振素子340は第1及び第2平板逆Fアンテナブランチ305,330とはオーミックには分離していて、例えば第2平板逆Fアンテナブランチ330がRF給電点310より電磁誘導によって供給される電磁波によって励振されるときに、第2平板逆Fアンテナブランチ330と電磁的には結合するように配置されている。さらに、浮遊非励振素子340は浮遊非励振素子340が自由空間経由で供給される電磁波によって励振されるときに第2平板逆Fアンテナブランチ330と電磁的に結合するように配置されている。
【0029】
ここで用いられたように、「オーミックに」という用語は、2つの素子の間の電圧をVとして、その間の電流をIとしたときに、おおむね全ての周波数で2つの素子の間のインピーダンスが実質的にインピーダンス=V/Iで与えられる(すなわち、オーミックに結合した2素子間のインピーダンスは全ての周波数で実質的には同じである)という配置を指している。それゆえ、「オーミックに分離している」という語句は、2素子間のインピーダンスが直流のように比較的低い周波数においては実質的に無限大となるような配置を指している。しかしながら2つの素子がオーミックには分離されているが、例えばこれらの素子が互いに容量的には結合している場合には、この2つの素子の間のインピーダンスは周波数の関数となると理解されよう。例えば、金属導電体で互いに直接結合している2素子は互いにオーミックに分離してはいない。対照的に、容量効果だけで互いに電気的に結合している2素子は互いにオーミックには分離していて、互いに電磁的には結合している。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、浮遊非励振素子330は上記の第1周波数帯に含まれる第1周波数領域にある信号成分を供給するために共振するように構成されている。さらに浮遊非励振素子330は第1平板逆Fアンテナブランチ305と共同して動作し、上記第1周波数帯に含まれる第2周波数領域の他の信号成分を供給するように共振する。特に浮遊非励振素子330の共振状態は、第1周波数帯の動作を提供するために、第2平板逆Fアンテナブランチを経由して第1平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合することができるようになっている。
【0031】
第1及び第2信号成分は合わさって、マルチバンドアンテナ300の電圧定在波比(VSWR又はSWR)が第1周波数帯で約2.5と約1.0の範囲の値を実現することができる。マルチバンドアンテナ22に関するVSWT値は、マルチバンドアンテナ22の給電点と無線端末の供給線路すなわち伝送線路との間のインピーダンス整合に関係する。損失最小でRF電磁波を放射するため、また、受信したRF電磁波を、損失最小で無線端末のトランシーバに提供するために、マルチバンドアンテナ300のインピーダンスは、RF電磁波がマルチバンドアンテナ300へ、又はマルチバンドアンテナ300から供給される伝送線路又は給電点のインピーダンスと整合される。
【0032】
アンテナブランチ305,330はFR4又はポリイミドの誘電体基板の上に形成され、1つ又は複数の金属層をエッチングして誘電体基板上にパターンを形成して構成されることは当業者ならば理解されよう。アンテナブランチ305,330は銅のような導電材料で形成できる。例えば、アンテナブランチは銅箔から形成可能である。代替技術として、アンテナブランチ305,330は誘電体基板上の銅層から形成できる。本発明の平板逆Fアンテナブランチは他の導電材料でも形成でき、銅には限定されるものではない。
【0033】
本発明の実施形態によるマルチバンド平板逆Fアンテナ300はいろいろな形、配置、及び/又はサイズを持っていてよく、図示したものには限定されない。例えば本発明は任意のマイクロストリップアンテナを用いて実施してもよい。さらには、本発明の実施形態は2つの分岐を持つ平板逆Fアンテナに限定されるものではない。例えば、本発明の実施形態の平板逆Fアンテナは2つより多い分岐を持っていてもよい。
【0034】
図4は本発明の実施形態の浮遊非励振素子を含む平板逆Fアンテナの模範的な動作特性を示すグラフである。図4によれば、浮遊非励振素子330は例えば第1周波数帯の低周波領域にある第1信号成分を提供することができる。(第1周波数帯の高周波領域にある)第2信号成分は第1平板逆Fアンテナブランチ305により供給することができる。とくに、VSWR曲線405の第1周波数帯の低周波領域に関する低域端は図3に示した浮遊非励振素子340によって供給することができる。さらに第1平板逆Fアンテナブランチ305は前述のように共振してVSWR曲線405の第1周波数帯に含まれる高周波領域に関する高域端を提供する。あわせて、浮遊非励振素子340と第1平板逆Fアンテナブランチ305のそれぞれの共振特性は第1周波数帯に約2.5:1という低いVSWR値を実現することができる。比較のために、図4は本発明の浮遊非励振素子を備えない従来のマルチバンドアンテナの特性の代表例を示す。特に従来のマルチバンドアンテナに関するVSWR曲線410は約3.3:1と約3.5:1の範囲にある。
【0035】
図5は本発明のマルチバンド平板逆Fアンテナの実施形態を示す平面図である。浮遊非励振素子540は第2平板逆Fアンテナブランチ530の上方に位置し、第2平板逆Fアンテナブランチ530とはオーミックには分離されている。さらに浮遊非励振素子540は少なくとも部分的に第2平板逆Fアンテナブランチ530とオーバーラップしている。本発明の他の実施形態では、浮遊非励振素子540を接地板と第2平板逆Fアンテナブランチ530の間で、第2平板逆Fアンテナブランチ530の下方に配置することができる。浮遊非励振素子540を第2平板逆Fアンテナブランチ530の上方か下方に置くと、その間の電磁的結合を増大させることができる。RF給電点510はマルチバンド平板逆Fアンテナの一部分520に配置される。接地点525はその部分520に配置され、RF給電点510からは空間的に離れて配置される。
【0036】
図6は本発明の平板逆Fアンテナの実施形態を示す平面図である。特に、図6は約1710MHzから約1850MHzの第1バンドと約1850MHzから約1990MHzの第2バンドという2つの周波数帯で共振する第1平板逆Fアンテナブランチ605を示している。第2平板逆Fアンテナブランチ630は第1、第2及び第3の方向に伸びて、第2平板逆Fアンテナブランチ630により少なくとも部分的に取り囲まれた空間領域635を区画している配置となっている。第2平板逆Fアンテナブランチ630は約824MHzから約960MHzの第3の周波数帯で共振できる。浮遊非励振素子640は第2平板逆Fアンテナブランチ630から空間的に分離されて、オーミックにも分離されている。さらに、浮遊非励振素子640は、図3から5を参照して上記したように、第2平板逆Fアンテナブランチ630と電磁的には結合するように配置されている。RF給電点610は上記マルチバンド平板逆Fアンテナの一部分620に配置される。接地点625はその部分620のRF給電点610から離れた位置に配置される。
【0037】
ここに記したように、本発明のいくつかの実施形態では、マルチバンドアンテナは浮遊非励振素子を含んだマルチバンド平板逆Fアンテナとすることができる。例えば、本発明の平板逆Fアンテナは誘電体基板上に延びる第1及び第2平板逆Fアンテナブランチを含むことができる。第1平板逆Fアンテナブランチは第1周波数帯に或る第1電磁波に応答して共振するように構成することができる。第2平板逆Fアンテナブランチは第2周波数帯に或る第2電磁波に応答して共振するように構成することができる。
【0038】
浮遊非励振素子は、例えば第2平板逆FアンテナブランチがRF給電点を経由して供給される電磁波によって励振された時に(すなわちアンテナが送信するために使用されるときに)、第2平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合するように構成することができる。浮遊非励振素子はまた、浮遊非励振素子が自由空間から供給される電磁波によって励振される時に、第2平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合するように構成される。
【0039】
図面及び記述においては、本発明の典型的な、好適の実施形態を開示してきた。特異な用語が用いられてはきたが、それらは共通用語であり書き表しやすいが為に用いられているものであり、制限を意味するものではない。本発明の範囲はつぎの請求項に明示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の無線端末のいくつかの実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明のマルチバンドアンテナを含む無線端末のいくつかの実施形態を示すブロック図である。
【図3】本発明のマルチバンド平板逆Fアンテナのいくつかの実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明のいくつかの実施形態による、非励振素子有りの、あるいは非励振素子無しのマルチバンド平板逆Fアンテナの電圧定在波比の典型例を示すグラフである。
【図5】本発明によるマルチバンド平板逆Fアンテナのいくつかの実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明によるマルチバンド平板逆Fアンテナのいくつかの実施形態を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数帯の第1電磁波に応答して共振するように構成された第1平板逆Fアンテナブランチと、
前記第1周波数帯よりは低い第2周波数帯の第2電磁波に応答して共振する第2平板逆Fアンテナブランチと、
前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチの下方にあり、前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチからオーミックに分離した接地板と、
前記第2平板逆Fアンテナブランチ及び前記接地板からオーミックに分離し、前記第2平板逆Fアンテナブランチと電磁的に結合する浮遊非励振素子と、
を備えることを特徴とするマルチバンドアンテナ。
【請求項2】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチと同一平面にあることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項3】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチの下方に位置し、前記第2平板逆Fアンテナブランチと少なくとも部分的にオーバーラップしていることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項4】
前記浮遊非励振素子が前記接地板と前記第2平板逆Fアンテナブランチの間にあることを特徴とする請求項3に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項5】
前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチは第1方向に延び、空間領域を部分的に取り囲むことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項6】
前記第2平板逆Fアンテナブランチは、前記浮遊非励振素子と前記空間領域の間に位置することを特徴とする請求項5に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項7】
前記第2平板逆Fアンテナブランチは第1及び第2方向に延び、前記浮遊非励振素子は前記第1及び第2方向に延びていることを特徴とする請求項6に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項8】
前記第1平板逆Fアンテナブランチは前記第1周波数帯の第1周波数領域にある第1信号成分を提供し、
前記浮遊非励振素子は、共振し、前記第1周波数帯の中の前記第1周波数領域とオーバーラップする第2周波数領域に第2信号成分を提供して、前記アンテナ集合体の電圧定在波比を、前記第1周波数帯において約2.5:1とすることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項9】
前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチが上面に搭載された誘電体基板を更に備え、前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチは、前記誘電体基板の近端部にて相互に結合していることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項10】
前記誘電体基板の前記近端部で前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチに結合するRF給電点と、
前記RF給電点とは離れた位置にある接地点と、
とをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項11】
前記第1周波数帯は約1710MHzと約1990MHzの間の領域の周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項12】
前記第2周波数帯は約824MHzと約960MHzの間の領域の周波数を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項13】
前記マルチバンドアンテナは無線端末のハウジング内の空洞に配置されることを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項14】
前記マルチバンドアンテナは無線端末のハウジングの外部と結合することを特徴とする請求項1に記載のマルチバンドアンテナ。
【請求項15】
内部に空洞を有するハウジングと、
前記空洞の中に置かれ、マルチバンド無線通信信号を受信し、マルチバンド無線通信信号を発信するトランシーバと、
前記空洞内のマルチバンドアンテナと、
を備えるマルチバンド無線端末であって、
前記マルチバンドアンテナは、
第1周波数帯の中の第1電磁波に応答して共振するように構成された第1平板逆Fアンテナブランチと、
前記第1周波数帯よりは低い第2周波数帯の中の第2電磁波に応答して共振するように構成された第2平板逆Fアンテナブランチと、
前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチの下方に位置し、前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチとはオーミックには分離している接地板と、
前記第2平板逆Fアンテナブランチ及び前記接地板とからオーミックには分離され、前記第2平板逆Fアンテナブランチとは電磁的には結合するように構成された浮遊非励振素子と、
を備えることを特徴とするマルチバンド無線端末。
【請求項16】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチと同一平面にあることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項17】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチの下方に位置し、少なくとも部分的に、前記第2平板逆Fアンテナブランチとオーバーラップしていることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項18】
前記第1及び第2平板逆Fアンテナブランチは第1方向に伸びて、空間領域を部分的に囲んでいることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項19】
前記第2平板逆Fアンテナブランチは前記浮遊非励振素子と前記空間領域の間に位置することを特徴とする請求項18に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項20】
前記第2平板逆Fアンテナブランチは第1及び第2方向に延び、前記浮遊非励振素子は前記第1及び第2方向に延びていることを特徴とする請求項19に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項21】
前記第1平板逆Fアンテナブランチは前記第1周波数帯の第1周波数領域にある第1信号成分を提供するように構成され、
前記浮遊非励振素子は共振して、前記第1周波数帯の中の前記第1周波数領域とオーバーラップする第2周波数領域に第2信号成分を提供し、前記アンテナ集合体の電圧定在波比を、前記第1周波数帯において約2.5:1とすることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項22】
前記第1周波数帯は約1710MHzと約1990MHzの間の領域の周波数を含むことを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項23】
前記第2周波数帯は約824MHzと約960MHzの間の領域の周波数を含むことを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項24】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチと同一平面にあることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項25】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチの下方に位置し、少なくとも部分的に前記第2平板逆Fアンテナブランチとオーバーラップしていることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。
【請求項26】
前記浮遊非励振素子が前記第2平板逆Fアンテナブランチの上方に位置し、少なくとも部分的に前記第2平板逆Fアンテナブランチとオーバーラップしていることを特徴とする請求項15に記載のマルチバンド無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−510362(P2007−510362A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538038(P2006−538038)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033416
【国際公開番号】WO2005/045994
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】