説明

浴槽水濾過装置

【課題】外部から熱殺菌に必要な高温湯を供給され、その高温湯に濾過槽を暴露して熱殺菌し、その高温湯を有効に浴槽に戻すことができる濾過装置を提供する。
【解決手段】本発明は、温水発生手段で生成された熱殺菌に必要な温度以上の高温を、熱殺菌に必要な時間濾過槽に流して濾過槽を熱殺菌する。そして、その濾過槽に流す高温湯を浴槽に戻した時の浴槽があふれない場合に、当該高温湯を浴槽に戻して浴槽の昇温に利用する。或いは、浴槽があふれない程度の量の高温湯を、濾過槽に流し且つ浴槽に戻す。それを超える高温湯は排水することで、浴槽の湯があふれるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の水を循環させて浄化する浴槽水濾過装置に関し、特に、この装置に設けられた濾過槽に所定温度以上の湯を流して、濾過槽を熱殺菌することができる手段を備えた浴槽水濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽内の水(以下浴槽水という)を循環させて濾過する浴槽水濾過装置が存在する。浴槽水は、浴槽水濾過装置の循環路に導かれ、その循環路に設けられた濾過槽を通過し、濾過槽によって浄化された後、浴槽内に戻される。
【0003】
この濾過槽は、例えば、浴槽水と共に循環する髪の毛やゴミなどを捕獲するフィルタや、湯の中に含まれる人の汗や脂肪、その他アンモニアなどの有機物を吸着するための活性炭などの濾過材を備えている。
【0004】
このように、循環路を循環する浴槽水は、循環路に設けられた濾過槽を通ることによって浄化されて再度浴槽に戻されるので、浴槽内での雑菌の繁殖及び雑菌の繁殖による浴槽への水垢の付着などが防止され、浴槽内を衛生的に維持することができる。かかる濾過槽については以下の先行技術に記載されている。
【特許文献1】特開平04−7007号公報
【特許文献2】特開平02−275241号公報
【特許文献3】実開平02−38043号のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、濾過槽には、濾過によって捕獲、吸着されたゴミ、有機物が付着しているため、そこに雑菌が繁殖しやすい。雑菌の中には、レジオネラ属菌のような人体に悪影響のある悪性菌が存在するので、濾過槽を定期的に殺菌処理し、衛生的に維持する必要がある。そして、濾過槽の殺菌処理には、一般的に、塩素などの薬剤による殺菌処理、又は高温の湯による熱殺菌処理が行われる。
【0006】
薬剤による殺菌処理を行うには、塩素などの薬剤の取り扱いに専門的な知識が必要となる上、薬剤の費用がかかるので、メンテナンスが面倒である。
【0007】
濾過槽の熱殺菌処理は、浴槽水濾過装置の循環路に接続された外付けの温水発生手段から循環路に供給される上記所定温度以上の高温の湯を濾過槽に通すことによって行われる。このとき、従来において、この熱殺菌に用いた高温の湯は、熱殺菌が行われた後、排水されていた。
【0008】
しかしながら、この高温の湯は、殺菌処理に用いられた湯であるので、湯内には、雑菌は繁殖しておらず、本来衛生的な湯である。従って、殺菌に利用した湯を排水することは、省エネルギー及び節水の観点から好ましくなく、また、浴槽水濾過装置の目的である省エネルギー及び節水という趣旨にも反する。
【0009】
そこで、本発明の目的は、熱殺菌に利用した湯を浴槽の湯に再利用することができる浴槽水濾過装置を提供することにある。
【0010】
更に、本発明の目的は、熱殺菌に利用した湯を浴槽内に戻すことで、熱殺菌に使用される熱量を利用して浴槽の湯を昇温または保温を可能にする浴槽水濾過装置を提供することにある。
【0011】
更に、本発明の目的は、熱殺菌に利用した高温湯を浴槽内に戻す場合、それにより浴槽の温度が設定温度を大きく超えることになったり、浴槽が満水になって湯があふれることになったりすることを防止することができる浴槽水濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成する為に、本発明は、第一に温水発生手段で生成された熱殺菌に必要な温度以上の高温湯を、熱殺菌に必要な時間濾過槽に流して濾過槽を熱殺菌する。そして、その濾過槽に流す高温湯を浴槽に戻した時の浴槽温度が設定温度近傍以内の場合に、当該高温湯を浴槽に戻して浴槽の昇温に利用する。或いは、浴槽の温度が設定温度近傍を超えない程度の量の高温湯を、濾過槽に流し且つ浴槽に戻す。それを超える高温湯は排水することで、浴槽の温度が過度に高くなるのを防止する。
【0013】
第二に、本発明は、熱殺菌に利用する高温湯を浴槽に戻した場合に浴槽が満水にならない場合は、当該高温湯を浴槽に戻して足し湯として利用する。或いは、浴槽が満水にならない程度の量の高温湯を、濾過槽に流し且つ浴槽に戻す。それを超える高温湯は排水することで、浴槽が満水になって湯があふれることを防止する。
【0014】
第三に、本発明は、濾過槽に流す高温湯を浴槽に戻した時の浴槽温度が設定温度近傍を超える場合は、濾過槽を通過した高温湯を冷却して、或いは冷水と混合して浴槽に戻す。その結果、浴槽の温度が過度に高くなるのを防止することができる。
【0015】
本発明は、両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、該通過した高温湯を前記浴槽に注入した時の浴槽温度が設定温度またはその近傍を超えない場合は、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は、両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、該通過した高温湯を前記浴槽に注入した時の浴槽の湯があふれない場合は、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする。
【0017】
更に、本発明は、両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、浴槽温度が設定温度またはその近傍を超えない範囲で、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする。
【0018】
更に、本発明は、両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、浴槽の湯があふれない範囲で、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする。
【0019】
更に、本発明は、両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、該通過した高温湯を冷やして前記浴槽に注入することを特徴とする。
【0020】
上記の発明では、濾過槽を通過した高温湯を、浴槽の温度が過度に高くならない様に浴槽に戻すことができる。更に、浴槽から湯があふれない様に戻すことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明によれば、濾過槽が設けられた循環路に、外付けの温水供給手段からの熱殺菌に必要な高温湯を供給し、濾過槽を熱殺菌することができると共に、浴槽温度が設定温度を超えない様に、或いは浴槽から湯があふれない様に、その殺菌用湯を浴槽に戻すことができる。従って、省エネルギーで節水型の浴槽水濾過装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の例を図面に従って説明する。しかしながら、本発明の技術的範囲はその実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態例である浴槽水濾過装置の構成図である。図1によれば、浴槽10には、浴槽水が循環する循環路20の両端が接続され、循環路20の一端20aから引き込まれた浴槽水は、循環路20に設けられたポンプ21によって循環路20内を矢印A方向に流れ、循環路20の他端20bから再度浴槽10に注入される。そして、ポンプ21より下流側の循環路20には、循環する水を濾過する濾過槽22及び濾過槽22から流れ出る水の温度を検出する温度センサ23が設けられている。また、循環路20内には、循環する水を加熱するヒータ24、循環する水の量を検出する水量センサ25が設けられる。
【0024】
さらに、ポンプ21より下流側であって、濾過槽22より上流側の循環路20には、循環方向Aへ順に、三方弁K及び四方弁Mが設けられ、さらに、温度センサ23より下流側の循環路20には、四方弁Yが設けられている。
【0025】
また、本実施の形態例の浴槽水濾過装置は、例えばマイクロコンピュータのような図示されない制御手段を備え、以下に説明する濾過運転及び熱殺菌処理は、この制御手段の制御のもとで行われる。
【0026】
浴槽水濾過装置は、通常の濾過運転により浴槽水が濾過されるとき、ポンプ21を通過した水は、三方弁Kの出入口1から出入口2へ流れ、さらに、四方弁Mの出入口1から出入口2を通って、濾過槽22内を流れる。濾過槽22を流れる湯は、濾過槽22内の濾過材によって、ゴミや有機物が除去され、浄化された湯として濾過槽22から流出する。そして、濾過槽22を通り浄化された湯は、三方弁Yの出入口1から出入口2を通って、浴槽10に戻される。また、ヒータ24により循環路内を流れる湯が加熱されて、浴槽内の湯が設定温度近傍に保温される。
【0027】
また、本実施の形態における浴槽水濾過装置は、上述のように浴槽水が濾過槽22を流れることによって濾過槽22に付着するゴミなどを洗い流し、排出するための逆洗浄回路30を備えている。この逆洗浄回路30を用いて濾過槽22を洗浄する場合、まず、四方弁Mにおける流路が出入口1から出入口4の方向へ設定され、循環路20を流れる湯は逆洗浄回路30に導かれる。そして、逆洗浄回路30を矢印B方向に流れる湯は、三方弁Yの出入口4から出入口1へ流れ、濾過槽22へ矢印C方向に流入する。そして、濾過槽22内を浴槽水を浄化するための通常の循環方向(矢印D)と反対方向(矢印C)に湯が流れることによって、濾過槽22に付着したゴミなどが洗浄され、さらに、濾過槽22から矢印C方向に流れ出る。このとき、四方弁Mの流路は、四方弁Mの出入口2から出入口3の方向に設定され、濾過槽22から流れ出た湯は、四方弁Mの出入口2から出入口3を通って、排水路31から排水される。
【0028】
このような、濾過槽22内に反対方向(矢印C)の水を流して濾過槽22を洗浄する逆洗によって、濾過槽22に付着したゴミや有機物のほとんどは除去されるが、濾過槽22に繁殖した悪性菌は除去されない。従って、本実施の形態における浴槽水濾過装置は、さらに、これらの悪性菌を熱殺菌するための高温の湯を濾過槽22に供給するための温水発生手段である温水熱源機40が外付けで設けられている。
【0029】
温水熱源機40によって生成された熱殺菌に必要な所定温度(例えば65℃)以上の湯(以下殺菌用湯という)は、開閉弁Vが設けられた温水供給路41を通って循環路20に供給される。温水供給路41は、三方弁Kの出入口3に接続されており、温水供給路41内に流れ込んだ湯は、三方弁Kの出入口3から出入口2を通って循環路20内に供給される。三方弁Kの出入口2から流出する殺菌用湯は、四方弁Mの出入口1から出入口2を通って、濾過槽22内を流れる。そして、熱殺菌に必要な所定時間(湯温が65℃以上の場合、例えば10分以上)の間、温水熱源機40から殺菌用湯が供給され続け、殺菌用湯に濾過槽22を暴露することによって、濾過槽22の殺菌が行われる。
【0030】
ここで、従来において、熱殺菌処理時に、四方弁Yの流路が出入口1から出入口3の方向に設定されていたため、濾過槽22から流出した殺菌用湯は、排水路31を通って、排水されていた。しかしながら、濾過槽22内を流れた殺菌用湯は、上述したように、本来衛生上問題のない湯であるゆえ排水することは、省エネルギー及び節水の観点から好ましくない。
【0031】
従って、本発明の実施の形態例においては、熱殺菌処理時おいて、四方弁Yの流路が、通常の濾過運転と同じである出入口1から出入口2の方向に設定され、濾過槽22の殺菌に用いられた殺菌用湯は、排水されずに浴槽10に注入される。これによって、殺菌用湯を浴槽水として再利用することが可能となり、節水が達成される。そして、浴槽10には、新たな湯が供給されるため、足し湯をする必要がなくなり、使用者の負荷(手動による注湯)を低減することができる。また、一般的な浴槽水の設定温度(42℃付近)より高い温度の湯が供給されるため、保温のためのエネルギーが節約され、省エネルギーにも貢献することができる。
【0032】
ところで、上記の通り、浴槽に熱殺菌に利用した殺菌用湯を浴槽に戻す場合に、二つのことを考慮する必要がある。第一に、殺菌用湯は65℃と通常の設定温度(例えば42℃)に比較して高温であるので、単に浴槽に戻すと浴槽の温度が設定温度或いはその近傍を超える場合がある。第二に、浴槽と接続される循環路20の外側に設けられた温水熱源機40で発生した高温湯を浴槽に戻すと、浴槽内の水量が多い場合は、注入された殺菌用湯が浴槽からあふれる場合がある。
【0033】
かかる2つの問題を考慮して、殺菌用湯を浴槽に戻す方法として、以下の実施の形態例で説明する。
【0034】
[第1の実施の形態例]
図2は、第1の実施の形態例のフローチャート図である。図2の例では、熱殺菌工程が始まる前に、温水熱源機40からの湯温が殺菌に必要な温度まで上昇する間に、濾過槽22を逆洗浄する。そして、殺菌温度になってから濾過槽22に殺菌用湯を殺菌に必要な時間だけ流す場合、その殺菌用湯を浴槽に戻した場合に設定温度近傍以内の場合は、四方弁Yを1−2の位置に設定して浴槽に戻し、浴槽温度が設定温度近傍を超える場合は、四方弁Yを1−3の位置に設定して排水路31に導く。
【0035】
更に、殺菌用湯を浴槽に戻した場合に浴槽が満水にならない、即ち、あふれない場合は、四方弁Yを1−2の位置に設定して浴槽に戻し、浴槽が満水になる場合は、四方弁Yを1−3の位置に設定して排水路31に導く。
【0036】
図2に沿って説明する。最初に、ステップS10では、循環路20に浴槽水を循環させ、濾過槽で濾過する濾過運転である。即ち、弁Kを1−2の位置に、弁Mを1−2の位置に、弁Yを1−2の位置にそれぞれ設定し、弁Vは閉じて、ヒータ24はオフにする。この状態で、ポンプ21が駆動され、浴槽水が循環路内を循環し、濾過槽で濾過される。
【0037】
そして、浴槽温度TB が設定温度Tsより低くなると(S11)、ヒータ24がオンとなり(S12)、保温工程が行われる。この保温工程で、ヒータ24から投入された熱量と、浴槽温度TB の変化から、浴槽内の水量WB が演算される。浴槽内の水量WB が求められると、後に熱殺菌工程で、殺菌用湯を浴槽に戻した場合の浴槽温度Txを求めることができる(S13)。或いは、殺菌用湯を浴槽に戻した場合に浴槽から湯があふれるか否かを知ることができる。
【0038】
図3は、殺菌用湯を浴槽に戻した場合の浴槽の温度の変化を示すグラフ図である。ここでの例は、65℃の湯を毎分5リットルで10分間浴槽に戻した場合の浴槽の温度の変化を、浴槽の水量毎に分けて示している。上記の熱量演算をグラフに表したものである。例えば、浴槽水量が180リットルの場合は、熱殺菌前の浴槽温度が38℃の場合は、65℃50リットルの殺菌用湯を浴槽に戻すと、浴槽温度は44℃になる。従って、設定温度近傍(42℃+2℃)以下であるので、その殺菌用湯の浴槽への戻しは許可される。
【0039】
やがて、熱殺菌信号が、例えば図示しないリモコンから使用者により指令されたり、または制御部のタイマーがタイムアップして自動的に熱殺菌が指令される(S14)。その時、ヒータ24がオンの場合は、演算された浴槽水量WB や浴槽温度Txは最新の値であり使用することができるが、ヒータ24がオフの場合は、念の為に再度ヒータ24がオンされ(S16)、再度浴槽水量と浴槽温度Txとの演算が行われる(S17)。
【0040】
そして、温水熱源機40の加熱が開始され、供給される湯が逆洗浄路30を経由して濾過槽22に矢印Cの方向に流され、逆洗浄が行われる(S18)。温水熱源機40からの湯が熱殺菌に必要な温度を超えない間は、その湯は殺菌用湯として利用することができないから、逆洗浄に利用され、且つ排水路31から排水される。
【0041】
やがて、供給される湯が熱殺菌に必要な温度(例えば65℃)になると(S19)、熱殺菌工程が開始される。その際に、熱殺菌に利用される殺菌用湯、例えば65℃の湯が毎分5リットルで10分間、濾過槽22に流され、その殺菌用湯が浴槽に戻された場合に、浴槽温度Txが設定温度近傍、例えばTs+2℃、を超えないか否かのチェック(S20)、或いは浴槽が満水にならないか否かのチェック(S21)が行われる。そして、いずれの条件も満たす場合は、弁Mを1−2の位置に、弁Yを1−2の位置にそれぞれ設定し、濾過槽22に流された殺菌用湯が浴槽10に戻されるようにする(S22)。いずれかの条件を満たさない場合は、弁Yが1−2の位置に設定され、濾過槽22を流れた殺菌用湯が排水路31に導かれるようにする(S24)。
【0042】
そして、熱殺菌タイマTnがカウントを始め(S23)、熱殺菌に必要な時間濾過槽22が高温の殺菌用湯に暴露される。この例では、10分間暴露される。やがて、10分間が経過すると(S25)、弁Vが閉じられ、弁Kが1−2の位置に、弁Yが1−2の位置に設定され、通常の濾過運転の循環路に切り換えられる(S26)。
【0043】
尚、上記の第1の実施の形態例の変形例として、ステップS14で熱殺菌信号を受けた時に、ステップS20及びS21の浴槽に殺菌湯を注入した場合に浴槽温度Txが設定温度近傍以内であるか否か、及び満水にならないか否かをチェックし、両方の条件を満たす場合に、ステップS15以下の熱殺菌工程を行い、いずれかの条件を満たさない場合は、熱殺菌工程そのものをキャンセルするか、或いは一定時間待機することもできる。この場合は、熱殺菌に使用される湯は必ず浴槽に注入ことができ、省エネルギー及び節水を実現できる。
【0044】
[第2の実施の形態例]
図4は、第2の実施の形態例のフローチャート図である。第1の実施の形態例では、熱殺菌信号をうけてから、温水熱源機40からの湯温が65℃に達してから、熱殺菌に使用される湯を浴槽に戻した時に、浴槽温度が設定温度近傍を超える場合、或いは浴槽が満水になる場合は、浴槽に殺菌用湯を戻さずに排水した。それに対して、第2の実施の形態例では、浴槽温度が設定温度近傍に達っしない限りは殺菌用湯を浴槽に戻す。或いは、浴槽が満水にならない限りは殺菌用湯を浴槽に戻す。
【0045】
即ち、図4のステップS30〜S35の部分が、図2の第1の実施の形態例と異なる。残りの部分は、同じである。即ち、供給される温水が65℃に達すると(S19)、最初に熱殺菌路に弁が切り換えられる(S30)。つまり、弁Mを1−2の位置に、弁Yを1−2の位置に設定して、濾過槽22を通過した殺菌用湯が浴槽10に戻されるようにする。そこで、熱殺菌タイマTnがスタートする(S31)。そして、ステップS32及びS33で、浴槽温度が設定温度を超えない限り、或いは浴槽が満水にならない限り、濾過槽22を通過した殺菌用湯は浴槽に戻される。また、浴槽温度が設定温度を超えると、或いは浴槽が満水に達すると、弁yを1−3の位置に切り換えて、濾過槽22を通過した殺菌用湯は排水路31に導かれ、排水される(S34)。
【0046】
ステップS32及びS33での判断は、例えば、ステップS13或いはS17での熱量演算により、殺菌用湯の内何リットルを浴槽に戻すと、設定温度近傍を超えるか或いは満水になるかを検出しておき、その量が水量センサ25により検出される時に、排水路への切り換えを行うことで実現可能である。或いは、時間で管理することも可能である。さらに、水位センサを設けて、浴槽が満水になったか否かを監視することも可能である。
【0047】
上記の実施の形態例では、浴槽の温度、水位に支障のない限り、濾過槽を通過した殺菌用湯を浴槽に戻すことができるので、よりきめの細かい省エネルギー、節水を実現することができる。
【0048】
[第3の実施の形態例]
第3の実施の形態例は、第1の実施の形態例の変形例である。第1の実施の形態例では、殺菌用湯を浴槽に戻した時の浴槽温度Txが設定温度近傍を超える場合は、殺菌用湯を排水したが、第3の実施の形態例では、その場合は、殺菌用湯を冷却してから浴槽に全て戻す。冷却方法としては、後に説明する循環路20に並列に放熱路を設けて、殺菌用湯を放熱させてから浴槽に戻す方法と、循環路20に冷水を混合させてから浴槽に戻す方法とが考えられる。
【0049】
図5は、第3の実施の形態例のフローチャート図である。図2と異なる部分は、ステップS40が追加されていることである。即ち、熱殺菌工程において、熱殺菌路に切り換える前に、演算で求めた浴槽温度Txが設定温度近傍を超えることが判明すると、循環路20の濾過槽22と浴槽10との間に並列に設けられた放熱路側に弁を切り換え、殺菌用湯を冷却してから浴槽に戻す。或いは、循環路20の濾過槽22の出力側に接続された給水路の弁を開いて冷水を混合させて浴槽に戻す。
【0050】
従って、浴槽温度が設定温度近傍を超えることを理由にして、殺菌用湯が排水されることが避けられる。
【0051】
[第4の実施の形態例]
図6は、第4の実施の形態例の浴槽水濾過装置の構成を示す図である。この例では、図1に比較すると、逆洗浄路、ヒータ、水量センサなどが省略されている。また、濾過槽22と浴槽10との間の循環路20に平行に、放熱手段42が設けられた放熱路43が設けられる。また、循環路20には、浴槽水位を検出する水位センサ43が設けられる。
【0052】
図7は、第4の実施の形態例のフローチャート図である。ステップS50は、通常の濾過運転である。弁Kを1−2の位置に、弁Mを1−2の位置に、そして弁Yを1−2の位置にそれぞれ設定して、浴槽10内の湯が循環路20内をポンプ21により循環し、濾過槽22により浴槽水内のゴミや雑菌の死骸等を濾過する。
【0053】
熱殺菌信号が出されると(S51)、温水熱源機40からの給湯路41が循環路20に接続され、弁Kが3−2の位置に設定される。更に、弁Yが1−3の位置に設定され、排水路31側に設定される。また、弁Vが開かれる。そして、温水熱源機40からの湯温が熱殺菌に必要な温度、例えば65℃になるまで待機する(S53)。この時に、図1の如き逆洗浄路を設けて、濾過槽を逆洗浄してもよい。
【0054】
やがて、湯温が65℃に達すると(S53)、弁Yが1−2の位置に、弁Mが3−2の位置にそれぞれ設定され、濾過槽22を通過した殺菌用湯が放熱路43を経由して浴槽に戻されるようにする(S54)。そして、熱殺菌タイマTnがスタートする(S55)。そして、熱殺菌が開始される。
【0055】
温水熱源機40から供給される殺菌用湯は、濾過槽22を通過し、放熱手段41で冷却されて、浴槽10に戻される。そのとき、水位センサ43により、浴槽の水位を監視する。浴槽の水位が満水に達しない間は、殺菌用湯は冷却されて浴槽に戻される。満水に達すると(S56)、排水路に切り換えられて、排水しながら熱殺菌が続けられる(S57)。そして、10分間の熱殺菌が終了すると(S58)、循環路に弁が切り換えられ、弁Vが閉じられる(S59)。
【0056】
第4の実施の形態例では、放熱路を設けて濾過槽22を通過した殺菌用湯を冷却することにすることで浴槽の温度が設定温度を大きく超えることが防止される。従って、保温工程で熱量演算による浴槽水量や殺菌用湯を戻した時の浴槽の温度Txを求める必要がない。
【0057】
[第5の実施の形態例]
図8は、第5の実施の形態例の浴槽水濾過装置の構成を示す図である。この例は、殺菌用湯の冷却手段として、冷水を混合できる給水路44を、循環路20の濾過槽22の入出力2と浴槽10との間に接続する。そして、弁Mを浴槽10の手前に設け、混合温度を検出するサーミスタ47が設けられる。給水路44には、弁Wと、水量調節弁45及び逆止弁46とが設けられる。
【0058】
図9は、第5の実施の形態例のフローチャート図である。このフローチャートは、図7のフローチャートと比較して、図7のステップS54の代わりに、ステップS60が設けられる点で異なる。
【0059】
図9のフローチャートに従って説明すると、ステップS50で通常の濾過運転が行われ、熱殺菌信号が出されると(S51)、弁Kが3−1の位置に設定され、温水熱源機40からの給湯路41が循環路20に接続され、弁Yが1−3の位置に設定され、弁Vが開かれる。そのとき、弁M、Wは閉じたままである。そして、温水熱源機40からの湯が65℃になるまで待機する。この間に、上記と同様に濾過槽22の逆洗浄を行ってもよい。
【0060】
やがて、65℃に達すると、熱殺菌が開始される。熱殺菌タイマTnがスタートする(S55)。水位センサ43により検出される浴槽水位が、満水にならない限り(S56)、温水熱源機40からの湯は、濾過槽22を通過し、弁Yの1−2から、弁Mを経由して浴槽10に戻される。更に、弁Wも開かれ、冷水が混ぜられる。更に、65℃の殺菌用湯を設定温度近傍まで下げるに必要な水量になるように、水量調節弁45の開度が調節される。従って、浴槽10の温度が設定温度近傍を大きく超えることは避けられる。尚、水位センサ43により浴槽が満水に達したことが検出されると、排水路に切り換えられて排水しながら濾過槽の熱殺菌が行われる(S57)。
【0061】
やがて、熱殺菌時間の10分が経過すると(S58)、弁Vが閉じられ、弁Kが1−2の位置、弁Yが1−2の位置に設定され、弁Mが開かれて、通常の濾過運転の循環路に切り換えられる。
【0062】
上記の実施の形態例では、殺菌用湯に冷水を混合することで、浴槽に戻される湯温が設定温度を大きく超えることはなく、浴槽の温度が設定温度より高くなることが避けられる。この例では、第4の実施の形態例と同様に保温工程で残水量演算等が行われない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態例である浴槽水濾過装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態例のフローチャート図である。
【図3】殺菌用湯を浴槽に戻した場合の浴槽の温度の変化を示すグラフ図である。
【図4】第2の実施の形態例のフローチャート図である。
【図5】第3の実施の形態例のフローチャート図である。
【図6】第4の実施の形態例の浴槽水濾過装置の構成を示す図である。
【図7】第4の実施の形態例のフローチャート図である。
【図8】第5の実施の形態例の浴槽水濾過装置の構成を示す図である。
【図9】第5の実施の形態例のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0064】
10 浴槽 20 循環路 22 濾過槽 30 逆洗浄路
31 排水路 40 温水供給手段、温水熱源機 41 温水供給路
42 放熱手段 43 放熱路 44 給水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、
前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、該通過した高温湯を前記浴槽に注入した時の浴槽の湯があふれない場合は、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする浴槽水濾過装置。
【請求項2】
請求項1において、該通過した高温湯を前記浴槽に注入した時の浴槽の湯があふれる場合は、当該通過した高温湯を排出することを特徴とする浴槽水濾過装置。
【請求項3】
両端が浴槽に接続され浴槽内の水を循環させる循環路と、前記循環路内に設けられた濾過手段と、前記循環路に湯を供給する温水生成手段とを有し、前記温水生成手段から供給される熱殺菌に必要な温度の高温湯に前記濾過手段を暴露することで該濾過手段の熱殺菌を行う浴槽水濾過装置において、
前記温水生成手段から供給される前記高温湯に、前記濾過手段を殺菌に必要な時間通過させ、浴槽の湯があふれない範囲で、当該通過した高温湯を前記浴槽に注入することを特徴とする浴槽水濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−284173(P2006−284173A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133537(P2006−133537)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【分割の表示】特願平9−280473の分割
【原出願日】平成9年10月14日(1997.10.14)
【出願人】(000129231)株式会社ガスター (277)
【Fターム(参考)】