説明

海松子抽出物を有効成分として含有する化粧料組成物

本発明は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する化粧料組成物に関する。より詳細には、本発明による化粧料組成物は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することによって、優れた角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する化粧料組成物に関する。より詳細には、本発明による化粧料組成物は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することによって、優れた角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果を示す。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度及び湿度変化と紫外線や公害物質など外部環境の刺激から保護し、体温調節などの生体恒常性維持に重要な役目をしている。しかし、紫外線、外部から受ける過度な物理的、化学的刺激及びストレス、栄養欠乏などは、皮膚の正常機能を低下させ、弾力損失、角質化、しわ生成などの皮膚老化現象を促進させるようになる。
【0003】
特に、角質細胞が順々に続いて作られ、最外層の古い角質細胞が時々離脱されて行くので、表皮が一定の厚さを維持するようになる角化過程が順調でなければ、非正常的な角質細胞が生成され、皮膚表面に積もって角質層が厚くなり、これにより、皮膚が粗くなり、微細な小じわが生じるようになり、結局、皮膚老化が進行される。また、紫外線によって生成される活性酸素及び皮膚基質の分解に関連した紫外線によるMMP−1の生合成によるタイプ1プロコラーゲンの生合成減少も皮膚老化と関連がある。
【0004】
したがって、このような現象を防止し、一層元気で且つ弾力ある皮膚を維持するために、従来、各種の動物、植物、微生物などから得た生理活性物質が強化された化粧品を使用することによって、皮膚の固有機能を維持させ、皮膚細胞を活性化させて、皮膚老化を効果的に抑制するための努力が行われて来た。しかし、既存の化粧品原料は、大部分効能が弱いか、皮膚副作用を誘発するなどさまざまな問題点を持っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これより、本発明者らは、天然物のうち皮膚副作用を誘発せずに、皮膚保湿効果及び皮膚老化防止効果を有する原料を捜すために努力した結果、海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する組成物が角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成を減少させてタイプ1プロコラーゲンの生合成を促進する効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果があることを知見し、本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、有効成分として海松子抽出物抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有し、角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果を有する化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による化粧料組成物は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする。前記本発明による化粧料組成物は、前記有効成分を含有することによって、優れた角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果を示すことを特徴とする。
【0008】
以下、本発明による化粧料組成物の各有効成分を詳しく説明する。
海松子(Pinus koraiensis)は、マツ科に属する朝鮮松の熟した実を乾したもので、漢方では松の実を薬剤として称する言葉で、柏子、松子、実柏とも言う。これは、松かさのような毬果に入っており、種子は、三角卵状形である。昔から海松子は、滋養強壮剤として多く使用し、病後回復期に食べれば良いものと知られている。また、これは、脂肪及びタンパク質が豊かな高熱量食品であり、特にビタミンBが豊かで、皮膚を柔らかくし、血圧を下げる作用をする。
【0009】
梅子(Prunus mume)は、ローズ科に属する梅の実であって、主として「メシル」と呼ばれる。中国古書である新農本初耕によれば、梅子は、最も古い果物の木であって、薬用として使用されたという記録が残っており、東医宝監など各種医書にも、漢薬材として使用されたという記録が多い。漢方では、健胃、止血、下痢止め、去痰、酒毒排出、解毒などに効果を示す漢薬材として利用している。梅子は、アルカリ性食品であって、疲労回復によく、体質改善効果がある。特に、これは、解毒作用に優れていて、皮膚の美容にもよく、殺菌効果もある。最近では、抗癌食品として多くの研究が行われている。
【0010】
赤小豆(Phaseolus angularis)は、マメ科の植物であって、アズキの生薬名として小豆とも言う。赤小豆の原産地は、中国一帯であると推定されており、東洋では、前々から栽培した作物である。漢方では、利水、散血,縮氣、行風、消腫、除濕、和血、解毒、排膿、健脾胃、開心竅、堅筋骨、瘟疫などに効果を示す漢薬材として利用している。
【0011】
カリン(Chaenomeles sinensis)は、カリンの実であって、中国原産の栽培植物であり、真桑瓜のような形状をしているが、木にぶらさがっていて、木瓜とも呼ばれる。カリンの主要成分としては、サポニン、有機酸、フラボノイド、タンニンなどを含有している。漢方では、舒筋、活絡、平肝、和胃、去濕(removing wetness in the body)、止痛などに効果を示す漢薬材として利用している。
【0012】
巨勝子(Sesamum indicum)は、晩成胃膓炎、神経炎、高血圧、便秘、強壮、貧血などに優れた効果を示し、本草学によれば、コレステロールを減少させ、血液循環を円滑にし、皮膚と髪の毛を潤沢にする作用があると記録されている。漢方では、潤五臟、補肝腎、烏須髮、明耳目、長飢肉、利大小腸(strengthening functions of the intestines)に効果を示す漢方薬で利用している。巨勝子のタンパク質は、主にグロブリンであり、抗酸化作用を助けるγ-トコフェロールが多く含有されていて、抗酸化作用によって皮膚老化を防止し、皮膚新陳代謝を活発にして、部分的に黒く変わった色素沈着現象にも役立つ。
【0013】
本発明による化粧料組成物に含有される前記抽出物は、植物体から有効成分を抽出するために、通常使用され且つ当業者に周知の方法によって製造されたものである。例えば、生薬材の粉砕物に水、炭素数1〜3の無水または含水低級アルコール、アセトン、エチルアセテートまたはジエチルエーテルを粉砕物の乾燥重量に対して1〜15体積倍の量で付加した後、冷却コンデンサーが付着された抽出器で50〜100℃温度で5〜24時間加熱して抽出するか;前記粉砕物に水、炭素数1〜3の無水または含水低級アルコール、アセトン、エチルアセテートまたはジエチルエーテルを粉砕物の乾燥重量に対して1〜15体積倍の量で付加した後、4〜25℃温度で3〜20日間沈積させて抽出物を得るか;無水または含水エチルアルコールまたはメタノール抽出物に適量の水を加えた後に生ずる沈殿物を濾過して除去し、これにエチルアセテート、ブタノールまたはジエチルエーテルを加えてよく混合した後、静置して層を分離し、上層を分離した後、冷却コンデンサーが付着された抽出器で抽出物を得る。上記した方法によって抽出した生薬材抽出物の抽出濾液を減圧濃縮し、乾燥した後、化粧料組成物に配合する。
【0014】
本発明による抽出物は、各生薬材の別途の抽出物を混合して利用することもでき、生薬材を混合した後、一度に抽出して製造されたものを使用することもできる。
【0015】
本発明による化粧料組成物は、全体組成物のうちすべての有効成分、すなわち海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有し、前記有効成分は、組成物の全体重量に対して0.0001乃至25重量%の濃度で含有することが好ましい。これは、有効成分が0.0001重量%未満の場合には、その効果が弱く、25重量%を超過する場合には、製品の使用感及び剤型の安定性に問題が発生するからである。
【0016】
本発明による化粧料組成物は、優れた角質形成細胞成長促進効果、活性酸素消去効果、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果を示す。
【0017】
また、本発明による化粧料組成物は、上記した抽出物以外に本発明が目的とする主効果を損なわない範囲内で、好ましくは、主効果に相乗効果を与えることができる他の成分などを含有してもよく、本発明の抽出物以外に他の成分は、その他の化粧料の剤型または使用目的によって当業者が困難性なしに適宜選定して配合することができる。
【0018】
例えば、前記化粧料組成物は、その効果を増加させるために皮膚吸収促進物質を含むことができる。また、本発明の化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草エキスよりなる群から選択された物質を含むことができる。
【0019】
さらに、本発明の化粧料組成物は、前記必須成分とともに、必要に応じて通常化粧料に配合される他の成分を含むことができ、その例として、油脂成分、保湿剤、エモルリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0020】
本発明の化粧料組成物に含まれることができる配合成分は、これらに限定されるものではなく、また、前記成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内で可能であるが、組成物の全体重量に対して、好ましくは、0.01〜10重量%、より好ましくは、0.01〜5重量%配合される。
【0021】
本発明による化粧料組成物は、その剤型において特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、エッセンス、パック、ジェル、パウダー、リップスティック、メーキャップベース、ファウンデーション、ローション、軟膏、ゲル、パッチ、美容液、クレンジングフォーム、クレンジングクリーム、クレンジングウォーター、せっけんまたは噴霧剤などのような剤型が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、実施例及び試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら例に限定されるものではない。
【0023】
[参考例1:生薬材抽出物の製造]
海松子、梅子、赤小豆、カリン、巨勝子(ゴンファ薬品(株))の各薬材を採取し
た後、品質に優れた薬材のみを選別し、水洗して不純物を除去した後、日陰で乾燥した。次に、海松子、梅子、赤小豆、カリン、巨勝子を各々100g取って精製水2Lずつを添加した後、約95〜100℃還流装置下で18時間沸かしながら抽出した。抽出完了後、続いて蒸溜濃縮して、全体重量が約500gになるまで煎じた後、常温に冷却した。次に、濾過布に入れて圧搾し、固形粉を分離し除去した後、濾過し、粘性ある濃縮液を得た。濃縮液を80℃減圧下で濃縮し、水を完全に除去した後、真空乾燥し、て粉末固体状態の抽出物(海松子5.0g、梅子10g、赤小豆5.0g、カリン5.0g、巨勝子5.0g)を収得した。
【0024】
[実施例1〜15及び比較例1]
前記参考例1で得た各生薬材水抽出物を下記表1の組合せで混合して実施例1〜15及び比較例1を製造し、実験に使用した。この時、各抽出物の混合割合は、同量にした。
【0025】
【表1】

【0026】
[試験例1:角質形成細胞の成長促進(MTT assay)効果]
前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物が角質形成細胞の成長能に及ぶ効果をMTT方法で測定した。以下、その方法を簡略に説明する。
【0027】
まず、角質形成細胞を96ウェルプレートにウェル(well)当り200μL当り5×103個の濃度(5×103個/200μL/ウェル)で植えて24時間培養した後、実施例1〜15及び比較例1の抽出物を用いて0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%の各濃度で処理して48時間培養した後、培養液を吸入して除去した後、PBSで1回洗浄し、MTT(Methylthiazolyldiphenyl-tetrazoliumbromide, Sigma, USA)(0.5mg/ml)溶液を100μLずつ細胞に添加し、4時間37℃、5%CO2で培養した。その後、培養液を吸入して除去した後、DMSO(dimethylsulfoxide)溶液200μLを添加し、シェーカーで10分間揺れた後、ELISAリーダー(DI biotech, Korea)で540nmでの吸光度を読み取った。この時、対照群としては、実施例1〜15及び比較例1の抽出物の無処理群を使用した。その結果を下記表2に示した。
【0028】
【表2】

【0029】
前記表2に示したように、すべての場合においてその効果が発現されることが分かり、一般的に、使用した抽出物の濃度が高いほど、角質形成細胞の成長促進効果も増加した。また、海松子抽出物のみを含む比較例1の組成物より海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する実施例1乃至15の組成物がさらに効果的であり、海松子抽出物に付加される梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された抽出物の種類が多いほど、それに伴って角質形成細胞の成長促進効果も増加することが分かった。
【0030】
[試験例2:活性酸素消去効果]
前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物の紫外線によって生成される活性酸素生成抑制効果、すなわち活性酸素消去効果を調べるために蛍光物質を利用して下記のような実験を行った。
【0031】
まず、実験に使用した細胞株は、ドイツ癌研究センターのフセニグ博士(Dr. Fusenig)から分譲された人間角質細胞HaCaT細胞株(Human keratinocytes HaCaT cell line)であって、これを蛍光測定用96ウェルブラックプレートにウェル当り2.0×104個に分株し、ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されたDMEM(Dulbeccos Modification of Eagles Medium, FBS10%, Gibco, USA)培地を使用して37℃、5%CO2条件で1日間培養した後、実施例1〜15及び比較例1の抽出物を用いて0.5%、0.25%、0.125%、0.0625%、0.03125%の各濃度で処理した。
【0032】
次に、試験試料を入れて24時間培養した後、HCSS(HEPES-buffered control salt solution, Gibco, USA)で洗浄し、残っている培地を除去し、HCSSに20μMで用意したDCFH−DA(2',7'-dichlorodihydro-fluoresceindiacetate, Molecular Probes, USA)を100μL加え、37℃、5%CO2条件で20分間培養し、HCSSで洗浄した。その後、各試料濃度別に処理されたHCSSを100μL加えた後、初期に活性酸素に酸化されたDCF(dichlorofluorescein)の蛍光度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)で測定した。その後、UVB(30mJ/cm2)を照射し、処理直後(表3)及び処理3時間後(表4)の蛍光度を蛍光プレートリーダー(Ex=485nm、Em=530nm)で測定した。この時、対照群としては、実施例1〜15及び比較例1の抽出物の無処理群を使用した。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
前記表3及び表4に示されたように、すべての試験試料において活性酸素生成抑制効果が発現されることが分かり、一般的に、使用した抽出物の濃度が高いほど、活性酸素生成がさらに抑制されることが分かった。また、海松子抽出物のみを含む比較例1の組成物より海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する実施例1〜15の組成物がさらに効果的であり、海松子抽出物に付加される梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された抽出物の種類が多いほど、それに伴って活性酸素生成もさらに抑制されることが分かった。また、処理直後より処理3時間後に効果がさらに高いことが分かった。
【0036】
[試験例3:MMP−1及びプロコラーゲン分析(procollagen assay)]
前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物の皮膚基質の分解に関連された紫外線によるMMP−1の生合成を減少させて、タイプ1プロコラーゲンの生合成を促進させる効果を調べるために、MMP−1及びプロコラーゲン分析を下記のような方法で行った。
【0037】
まず、正常表皮の脂肪層を除去し、細く切って、コラゲナーゼで表皮と真皮を分離した後、表皮と真皮組職をそれぞれ0.25%トリプシン溶液に入れて37℃、5%CO2培養器で10分間処理した。その後、ボルテックス(vortex)を施行し、角質形成細胞と繊維芽細胞をそれぞれ遊離させた。遊離された細胞を集めて洗浄した後、角質形成細胞は、KGM(keratinocyte growth medium, Clonetics, USA)に1×104cells/cm2濃度で培養し、繊維芽細胞は、10%牛胎児血清(FBS)が添加されたDMEM培地で培養した。70〜80%程度成長すれば、1:3の割合で分株し、継代培養し、3〜4次継代培養した細胞を実験に利用した。
【0038】
MMP−1の量を測定する実験のために、繊維芽細胞を48ウェルプレートに90%以上培養した後、1日間飢餓(starvation)状態にした。その後、PBSで2回洗浄した後、PBSを100μLずつ入れた状態でプレートの蓋を開いて紫外線A(UVA filtersが装置されたDermlight cube 401, UVAtec, USA)を15J/cm2で照射した。照射直後にさらにPBSで1回洗浄し、前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物がそれぞれ0.001%、0.01%の割合で含まれた牛胎児血清を含まないDMEMを入れて37℃、5%CO2培養器で48時間培養した後、培地中に遊離されたMMP−1の量をMMP−1人間ELISAシステム(RPN2610, Amersham Pharmacia Biothch, UK)を利用して測定し、繊維芽細胞の全体タンパク質の量で補正した(表5)。この時、対照群としては、実施例1〜15及び比較例1の抽出物の無処理群を使用した。
【0039】
一方、プロコラーゲンの量を測定するために、前記MMP−1の量を測定する方法と同一の条件で飢餓状態で紫外線の照射なしに実施例1〜15及び比較例1の抽出物をそれぞれ0.001及び0.01%の割合で加え、24時間後に培地中に遊離されたプロコラーゲンの量をプロコラーゲンタイプ−1C−ペプチッドEIAキット(MK101, Takara, Japan)を使用して測定した(表6)。対照群としては、実施例1〜15及び比較例1の抽出物の無処理群を使用した。
【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
前記表5のMMP−1抑制効果に示されたように、すべての試験試料においてMMP−1抑制効果が発現されることが分かり、一般的に、使用した抽出物の濃度が高いほど、生成されたMMP−1の量が減少することが分かった。また、海松子抽出物のみを含有する比較例1の組成物より海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含む実施例1〜15の組成物がさらに効果的であり、海松子抽出物に付加される梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された抽出物の種類が多いほど、それに伴って生成されたMMP−1の量も減少することが分かった。
【0043】
また、前記表6のタイプ1プロコラーゲンの生合成増加効果を示したように、すべての試験試料においてタイプ1プロコラーゲンの生合成増加効果が発現されることが分かり、一般的に、使用した抽出物の濃度が高いほど、生成されたプロコラーゲンの量が増加することが分かった。また、海松子抽出物のみを含有する比較例1の組成物より海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する実施例1〜15の組成物がさらに効果的であり、海松子抽出物に付加される梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された抽出物の種類が多いほど、それに伴って生成されたプロコラーゲンの量も増加することが分かった。
【0044】
[剤型例1〜15及び比較剤型例1:化粧料組成物の製造]
下記表7の組成によって前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物を使用して剤型例1〜15及び比較剤型例1の化粧料組成物を製造した。下記表7の組成によって成分1〜7の油相パートと成分8〜15の水相パートをそれぞれ加熱して溶解した後、水相を撹拌しながら油相パートを水相に徐々に添加して乳化した。
前記剤型例1〜15の化粧料組成物は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する組成物であるのに対し、比較剤型例1の化粧料組成物は、ただ海松子抽出物のみを含有するものである。前記組成物は、それぞれ油相と水相を65〜75℃で完全溶解させ、7,000乃至8,000rpmで5分間乳化させてクリーム剤型を製造した。
【0045】
【表7】

【0046】
[試験例4:しわ改善効果]
前記剤型例15及び比較剤型例1のしわ改善効果を調べるために、下記のような方法を行った。
【0047】
30代女性140名をそれぞれ20名ずつ7つのグループに分けて朝夕毎日2回ずつ8週間指定された目尻部位に剤型例15及び比較剤型例1のクリームをそれぞれ塗布するようにした後、シリコーン材質のレプリカを製作し、指定部位のしわの状態を画像分析機であるビジオメータ(visiometer:SV60, Courage+Khazaka electronic GmbH, Germany)で測定した。対照群としては、剤型例15及び比較剤型例1のクリームの無処理群を使用した。その結果を下記表8に示し、この結果は、8週後のそれぞれのパラメータ値から8週前のパラメータ値を差し引いた値の平均を示すものである。すなわち、この値が負の数が出るほどしわ改善効果が高いことを意味する。
【0048】
【表8】

【0049】
前記表8から分かるように、海松子抽出物のみを含有する比較剤型例1の組成物に比べて海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物をすべて含有する剤型例15の組成物の皮膚しわ改善効果が大きく増進されたことを確認することができた。
【0050】
[試験例5:角質形成細胞分化促進効果]
ヒト角質形成細胞を培養用フラスコに入れて培養し、約80%程度に成長させた後、下記表9の試料をそれぞれ5ppm濃度で添加して4日間処理した。次に、尿素やSDS(sodiumdodecyl sulfate)のような変成剤及びβ-メルカプトエタノールのような還元剤を混合し、溶解されるタンパク質を除去した。その後、残った角質層を310nmでの吸光度を測定してペプチド濃度を分析し、陰性対照群である蒸留水を基準(0%)にして各試料による増加量を比較し、その結果を下記表9に示した。
【0051】
【表9】

【0052】
前記表9の結果から、本発明の実施例1〜15の角質形成細胞分化促進効果に非常に優れていることを確認することができた。
【0053】
[剤型例16〜30及び比較剤型例2:皮膚保湿用化粧料の製造]
下記表10の組成によって前記実施例1〜15及び比較例1の抽出物を使用して剤型例16〜30及び比較剤型例2の化粧料組成物を製造した。下記表10の組成によって成分1〜5の水相パートと成分6〜9のアルコールパートをそれぞれ室温で溶解した後、水相を撹拌しながらアルコールパートを水相に徐々に添加して可溶化した。次に、アルコールパートの添加が完了した後、3〜5分間撹拌を続いた後、真空脱気し、化粧料の製造を完成した。
【0054】
【表10】

【0055】
[試験例6:皮膚障壁機能回復効果]
前記剤型例16〜30及び比較剤型例2の皮膚障壁機能回復効果を測定するために、無毛マウスの皮膚にアセトンを繰り返し的に塗布し、障壁機能を損傷させた後、Servomed社(スウェーデン)製evaporimeter EP1で測定された表皮水分損失量(TEWL, transdermal water loss)が4.0g/m2/hに到逹したときに、前記剤型例16〜30及び比較剤型例2の試料を5cm2面積に塗布し、その後、表皮水分損失量を1時間、2時間、4時間、8時間経過後に測定し、減少する程度を評価することによって、障壁機能が回復される程度を評価した。この時、公知の脂質混合物(セラミド:コレステロール:脂肪酸の2:1:1混合物)を陽性対照群として使用した。その結果は、初期損傷された障壁状態での表皮水分損失量を基準(100%)にして時間による変化を比較し、下記表11に示した。
【0056】
【表11】

【0057】
前記表11の結果から分かるように、海松子抽出物のみを含有する比較剤型例2の組成物より海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有する剤型例16〜30の組成物がさらに効果的であり、海松子抽出物に付加される梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物、巨勝子抽出物よりなる群から選択された抽出物の種類が多いほど、障壁機能回復効果がさらに高いことが分かった。
以下では、本発明による化粧料組成物の剤型例を説明するが、本発明は、これらを限定するものではなく、ただ具体的に説明するためのものである。
【0058】
【表12】

【0059】
【表13】

【0060】
【表14】

【0061】
【表15】

【0062】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明による化粧料組成物は、有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有し、優れた角質形成細胞の成長促進効果、紫外線によって生成される活性酸素消去効果、皮膚基質の分解に関連された紫外線によるMMP−1の生合成を減少させてタイプ1プロコラーゲンの生合成を促進させる効果、老化防止効果及び皮膚保湿効果があるので、前記組成物は、角質形成細胞成長促進用組成物、活性酸素消去用組成物、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進用組成物、皮膚老化防止用組成物及び皮膚保湿用組成物として化粧品に有用に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする角質形成細胞成長促進用化粧料組成物。
【請求項2】
有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする活性酸素消去用化粧料組成物。
【請求項3】
有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする、MMP−1の生合成減少によるタイプ1プロコラーゲンの生合成促進用化粧料組成物。
【請求項4】
有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする皮膚老化防止用化粧料組成物。
【請求項5】
有効成分として海松子抽出物に梅子抽出物、赤小豆抽出物、カリン抽出物及び巨勝子抽出物よりなる群から選択された1つ以上をさらに含有することを特徴とする皮膚保湿用化粧料組成物。
【請求項6】
前記抽出物は、水を抽出溶媒として抽出したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記組成物は、1,3-ブチレングリコールをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記抽出物は、組成物の全体重量に対して0.0001乃至25重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の化粧料組成物。

【公表番号】特表2009−523785(P2009−523785A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551169(P2008−551169)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002549
【国際公開番号】WO2007/083868
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】