説明

海水淡水化システム

【課題】システム全体としてのランニングコストを低減できる海水淡水化システムを提供する。
【解決手段】逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備18と、逆浸透膜式海水淡水化設備18の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備14と、活性炭吸着処理設備14に高温流体を注入して活性炭を洗浄する高温流体注入設備22と、を備える。又は、逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備18と、逆浸透膜式海水淡水化設備18の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備14と、活性炭吸着処理設備14の下流側に設けられた水質計測装置36と、水質計測装置36から出力される水質計測値に基づき活性炭吸着処理設備14の洗浄時期を演算によって求める洗浄トリガ演算部32と、洗浄トリガ演算部32から出力される洗浄トリガ信号に基づき、活性炭吸着処理設備14に高温流体を注入する高温流体注入設備22と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から淡水を得るための逆浸透膜を用いた海水淡水化設備と前処理・後処理設備を含めた海水淡水化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、逆浸透膜を用い、ろ過処理を行う海水淡水化装置が増加する傾向にある。逆浸透膜は、セルロースやポリアミド等の素材で造られており、この逆浸透膜に海水の浸透圧の二倍以上の圧力を加え、塩分は膜を透過させないで水を透過させることにより淡水を得ることができる。
【0003】
海水に含まれるホウ素濃度が、4.5〜5mg/L程度であるのに対し、WHOの飲料水の水質基準値は0.5mg/Lであるので、ホウ素の阻止率は約90%が必要である。しかし、一般的には、逆浸透膜モジュール1本のホウ素の阻止率は50〜70%であり、高圧逆浸透膜と低圧逆浸透膜の二段階処理が必要となって、イニシャルコストやランニングコストが増大する。ランニングコストをできるだけ低減するため、一段階処理の水と二段階処理の水を製造する二系統を設けて、処理水のホウ素濃度が基準値よりわずかに低くなるように、一段階処理の水と二段階処理の水をブレンドすることが実施されているが、イニシャルコストとランニングコストが増大する課題があった。
【0004】
〔特許文献1〕には、逆浸透膜(半透膜)を用いて、海水中に含有されたホウ素を除去する淡水製造装置が開示されている。〔特許文献1〕に記載の淡水製造装置は、原水(海水)に前処理を施すフィルターなどの前処理と、前処理水を処理する第一の半透膜ユニットと、一次透過水を一旦貯留する中間水タンクと、中間水タンクに貯留されていた一次透過水を処理する第二の半透膜ユニットと、第一の半透膜ユニットの前段に設けられた高圧ポンプと、第二の半透膜ユニットの前段に設けられた昇圧ポンプとに加えて、更に高圧ポンプの前段に設けられた第一のアルカリ添加手段と、中間水タンク内の一次透過水のpHを高くする第二のアルカリ添加手段,二次透過水のpHを下げる酸添加手段とを備えた淡水製造装置であり、要するに、pHによってホウ素等の成分の除去率が変化することを利用して、pHの制御を行って淡水を効率的に製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−187719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
〔特許文献2〕に記載の従来の技術は、装置が複雑になったり、薬品を常に加えることが必要となり、そのためにランニングコストが高くなるなどの問題があり、経済性の改善が要望されている。さらに、逆浸透膜処理後の廃液に薬品の成分が残留し、放流先である海域の生態系に影響を及ぼす課題を有している。
【0007】
本発明の目的は、システム全体としてのランニングコストを低減できる海水淡水化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の海水淡水化システムは、逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備と、該逆浸透膜式海水淡水化設備の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備と、該活性炭吸着処理設備に高温流体を注入して活性炭を洗浄する高温流体注入設備と、を備えたものである。
【0009】
又、逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備と、該逆浸透膜式海水淡水化設備の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備と、該活性炭吸着処理設備の下流側に設けられた水質計測装置と、該水質計測装置から出力される水質計測値に基づき前記活性炭吸着処理設備の洗浄時期を演算によって求める洗浄トリガ演算部と、該洗浄トリガ演算部から出力される洗浄トリガ信号に基づき、前記活性炭吸着処理設備に高温流体を注入する高温流体注入設備と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、海水淡水化システムの処理水に含まれる溶解性成分濃度、特にホウ素濃度を基準値以下に抑制できるため、飲用に使用しても問題のない水を供給でき、高い安全性を確保することができる。また、薬品を使わないため、濃縮液の放流先に与える環境負荷も小さい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の活性炭吸着処理設備を逆浸透膜式海水淡水化設備の前段に備えた海水淡水化システムの構成図である。
【図2】実施例1の活性炭吸着処理設備を逆浸透膜式海水淡水化設備の後段に備えた海水淡水化システムの他の構成図である。
【図3】実施例1における洗浄信号に関する海水淡水化システムの構成図である。
【図4】本実施例の海水淡水化システムにおける活性炭吸着処理設備の構造図である。
【図5】本実施例の海水淡水化システムにおける活性炭吸着処理設備の他の構造図である。
【図6】本発明の実施例2の海水淡水化システムにおける活性炭吸着処理設備の構造図である。
【図7】本発明の実施例3の海水淡水化システムにおける活性炭吸着処理設備の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の海水淡水化システムの構成をブロック線図で示す。
【0014】
海水12は、逆浸透膜式海水淡水化設備18に流入する前に、活性炭吸着処理設備14で処理される。図1中には示していないが、逆浸透膜式海水淡水化設備18に、二層ろ過装置やUF膜ろ過装置、あるいはMF膜ろ過装置などの前処理設備が設けられている場合は、活性炭吸着処理設備14は、その前処理設備より上流側にあっても、下流側にあってもいずれでもよい。
【0015】
一般に、活性炭はホウ素の吸着能があるため、活性炭吸着処理設備14から流出する活性炭設備処理水16のホウ素濃度は低下している。したがって、この活性炭設備処理水16を逆浸透膜式海水淡水化設備18で淡水化した水のホウ素濃度も低く、飲用に使用しても問題のない淡水20を供給する事ができる。
【0016】
しかし、活性炭はその吸着量に限界があり、連続して使っていると飽和吸着量に近づくにつれて吸着能が低下する。一般に、飽和吸着量は温度が低いほど多く、逆に温度が高いほど少ない。したがって、低水温の条件下でホウ素を吸着した活性炭に、高水温の温水を供給すると、一度吸着したホウ素が活性炭から脱着する。その結果、活性炭の吸着能が回復する。
【0017】
図1に示す例では、活性炭に高水温の温水を供給するために、高温流体注入設備22から高温流体10を注入している。高温流体10とは、高温にした流体であれば何でもよく、淡水,海水、あるいは水蒸気や空気でもよい。温度は、例えば40℃以上であればよい。高温流体注入設備22としては、海水淡水化システムに併設される発電設備の排熱,太陽熱温水器で作られる温水、あるいは太陽光発電の光発電セルの冷却水を用いると効率が良い。
【0018】
特に、海水淡水化設備と発電設備の双方が備えられているIWPP(Independent Water and Power Production)の設備であればガスタービンあるいは原子力発電からの多量の排熱が得られるため、効率が良い。
【0019】
本実施例の高温流体10は、活性炭の吸着能回復時に必要であるため、ガスタービンあるいは原子力発電からの排熱や自然エネルギーを用いなくとも、その都度ボイラーやヒーターなどの加温設備によって高温水にしてもよい。
【0020】
活性炭吸着処理設備14に与えられた高温流体10には、一度活性炭に吸着したホウ素およびその他の物質が脱着し、廃液24として廃棄される。この廃液24には、取水した海水12中にもともと存在していたホウ素や有機物などの物質しか含まれておらず、水環境の負荷は増加しない。ただし、廃液24は暖められており、その温度の廃液24が排気されると、環境の生態系に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、活性炭から脱着した物質を含む高温流体10の廃液24は、大気中にその熱エネルギーを放出などの処理をして、温度を海水温程度まで低下させてから廃棄することが望ましい。
【0021】
図1に示す例では、逆浸透膜式海水淡水化設備18の上流側に活性炭吸着処理設備14を設置している。この場合、活性炭にはホウ素以外に有機物や微粒子も吸着される。それが原因で、逆浸透膜のファウリングや目詰まりが低減される。また、海水12を活性炭吸着処理設備14に継続して通水していると、もともと海水12中に生息していた微生物が活性炭表面に付着し、繁殖する場合がある。その結果、微生物がその体内から排出する有機物によって逆浸透膜がファウリングあるいは目詰まりする恐れがある。
【0022】
本実施例では、図1で示した構成のように、高温流体10を活性炭吸着処理設備14に供給することで、微生物の繁殖を抑制あるいは微生物を殺すことができる。これは、通常繁殖している条件と異なる環境を微生物に与えることでダメージを与え、微生物の体内に含まれるタンパク質が熱変性するためである。
【0023】
図2では、活性炭吸着処理設備14を、図1の場合と逆の逆浸透膜式海水淡水化設備18の下流側に設置した例を示す。活性炭はさまざまな物質を吸着する能力があるため、逆浸透膜式海水淡水化設備18より前段にあると海水12に含まれる有機物や微粒子もホウ素と同様に活性炭表面に付着してしまい、ある頻度で高温流体10による脱着処理が必要となる。
【0024】
図2の構成は、この頻度の低減を目的とする。逆浸透膜式海水淡水化設備18を通過した水には有機物や微粒子はほとんど含まれておらず、ホウ素など溶解成分の一部しか含まれていない。したがって、逆浸透膜式海水淡水化設備18から流出する淡水20を活性炭吸着処理設備14へ導くことで、残留しているホウ素をより効率的に吸着除去することが可能となる。
【0025】
ただし、この場合には逆浸透膜式海水淡水化設備18より前段で有機物や微粒子を吸着する設備がなくなるため、図1の場合に比べると逆浸透膜のファウリングや目詰まりが発生しやすくなる可能性がある。しかし、他の前処理設備が逆浸透膜式海水淡水化設備18より上流側に備えられてファウリングや目詰まりを抑制する性能が十分であれば、図2の構成でも問題は生じない。
【0026】
図3は、活性炭吸着処理設備14へ高温流体注入設備22から高温流体10を供給して洗浄する信号を適切な時期に与えるための装置構成である。この場合、活性炭吸着処理設備14は、逆浸透膜式海水淡水化設備18より上流側であっても下流側であってもいずれでもよい。
【0027】
活性炭吸着処理設備14から流出する活性炭設備処理水16は、水質計測装置36によってその水質が計測される。この計測項目はホウ素濃度,アデノシン三リン酸,紫外線吸光度のいずれか1つを含む。このうちホウ素濃度は、活性炭の吸着能の残余分を評価することができる。アデノシン三リン酸は活性炭吸着処理設備14で繁殖している微生物の量の指標となる。紫外線吸光度はその波長によっても異なるが、活性炭の吸着能の残余分を評価でき、活性炭吸着処理設備14で繁殖している微生物の量の指標ともなりうる。
【0028】
これらの成分の水質計測値30は洗浄トリガ演算部32に与えられる。洗浄トリガ演算部32では水質計測値30と予め設定したしきい値あるいは時間的変化データの分析に基づいて適切な洗浄時期を求め、洗浄トリガ信号34を高温流体注入設備22に与える。高温流体注入設備22は、洗浄トリガ信号34に基づいて高温流体10を活性炭吸着処理設備14に注入する。
【0029】
その際、脱着した成分が活性炭設備処理水16とともに下流側へ流出することを防ぐため、まず活性炭設備処理水16側の弁を閉じ、廃液24の排出弁を開とする。高温流体10は、活性炭吸着処理設備14の中で活性炭の温度を上昇させ、一度付着したホウ素やそのほかの成分を脱着させ、廃液24として排出される。
【0030】
このように、洗浄トリガ演算部32を設けた構成とすることで、活性炭吸着処理設備14の洗浄頻度を適正化でき、洗浄不足による下流側へのホウ素流出を抑制でき、洗浄過剰による造水効率の低下や廃液24の増加を抑制する事ができる。
【0031】
実施例1によれば、高温流体10で洗浄する機能を備えた活性炭吸着処理設備14を用いることで、薬品を使わずに海水12に含まれているホウ素を除去することができる。廃液24には薬品など人為的に加えられた成分が含まれないため、取水した海域へ戻してもその水温以外の問題は生じない。
【0032】
又、活性炭吸着処理設備14を逆浸透膜式海水淡水化設備18の上流側に設置する事で、逆浸透膜のファウリングや目詰まりを抑制できる。その結果、逆浸透膜の長寿命化や動力費の低減,逆浸透膜の薬品洗浄で用いる薬剤量の低減が可能となる。
【0033】
図4は、活性炭吸着処理設備14の構造の一例である。活性炭42はその使用とともに磨耗および破砕が起きるため、活性炭設備処理水16に微細化した活性炭42が流出する可能性がある。下流側に逆浸透膜式海水淡水化設備18が備えられる場合、微細化した活性炭42が逆浸透膜の流路閉塞を招きかねない。図4に示す活性炭吸着処理設備14は、活性炭槽40と活性炭槽40の流出口に無機膜を備える。この構成によって、微細化した活性炭42が流出しない。この構成で逆浸透膜式海水淡水化設備18への悪影響を抑制できる。
【0034】
高温流体10でホウ素やそのほかの成分を脱着させるため、有機膜では耐熱性の問題があるため、無機膜である必要がある。無機膜の材料としては、ステンレスなどの金属であってもセラミックでもよい。
【0035】
この構成では、活性炭の磨耗や破砕が起きなくても活性炭42の粒径はもともとから小さくても流出しない。したがって粒状活性炭よりも粒径が小さい粉末活性炭であっても活性炭槽40に備えることができる。粉末活性炭は150μm,100μm、あるいは75μm以下の粒径のものが一般に用いられているが、本実施例の粉末活性炭の粒径の範囲は、150μm,100μm、あるいは75μm以下でなくともよく、より大きい粒径の活性炭でもよい。
【0036】
粒径が小さいと活性炭42の比表面積が大きいため、吸着速度や吸着量が増え、活性炭吸着処理設備14の規模を小さくすることができる。その結果、高温流体注入設備22から供給する高温流体10の量が少なくてもよく、効率的な脱着処理が可能となる。ただし、粒径にもよるが粉末活性炭は下降流で用いると圧密化されて抵抗が高くなる可能性があるため、上向流の槽で用いるのがよい。
【0037】
活性炭42は粒径が小さいと水流に乗って流れやすく沈降しづらいため、上向流であっても流速が早いと上面に設けた流出口側無機膜38に粉末活性炭が付着して圧密化する可能性がある。そこで、図5に示すようにテーパーを設け、下方では上向流の流速が早く、上方の流出口付近では上向流の流速が遅くなるように構成することで上面の流出口側無機膜38に粉末活性炭が付着して圧密化することを抑制できる。テーパーは図5に示すように直線状である必要はなく、曲線上であっても階段状でもよく、下部の断面積に比べて上部の断面積が大きい箇所があればよい。
【0038】
本実施例では、活性炭吸着処理設備14の後段へ微細化した活性炭や微粒子が流出しないため、すぐ下流側に逆浸透膜式海水淡水化設備18が備えられていても流路の閉塞を抑制することができる。
【0039】
又、活性炭42の粒径が小さくても下流へ流出しないため、粒径が小さい粉末状の活性炭を用いる事が可能であり、その結果、吸着速度や吸着量が増加して活性炭吸着処理設備14の規模が小さくなり、イニシャルコストやランニングコストを低減することができる。
【0040】
又、活性炭槽40を上向流とし、下部の断面積に比べて上部の断面積が大きい箇所を設けることで、上面に設けた流出口側無機膜38に微細な活性炭42が付着して圧密化することを抑制でき、長期の連続運転が可能となる。
【実施例2】
【0041】
本発明の実施例2を図6により説明する。
【0042】
図6は、実施例2の活性炭吸着処理設備14の構造の一例であり、その断面図を示す。実施例2においては、無機膜を活性炭槽40の流出口側と流入口側の双方に設け、活性炭42は活性炭槽40の外へ流出しない仕組みとする。活性炭吸着処理設備流入水28は上向流であり、活性炭吸着処理設備流入口44から流入し、流入口側無機膜48の下側の面で粗大な有機物や微粒子が分離除去される。引き続いて流入水は上向流で活性炭槽40の活性炭42と接触する。粉末活性炭など活性炭42の粒径が小さい場合には活性炭槽40の内部は流動床となる。ここでホウ素とともに微細な有機物や微粒子が吸着分離される。流入口側無機膜48を通過できない粗大な有機物や微粒子は活性炭槽40の内部へ流入できない。
【0043】
したがって、活性炭表面に吸着する物質が減り、活性炭42の表面が有効に利用されるため、ホウ素の吸着能が飽和に達するまでの期間を長くでき、高温流体10による洗浄頻度を減少できる。
【0044】
活性炭槽40の上部には流出口側無機膜38が備えられ、ここで活性炭42が分離除去される。活性炭粒子の粒径がきわめて小さく沈降性が悪い場合には、上向流の流れによって流出口側無機膜38の下側に活性炭42が付着して圧密化する可能性がある。それを抑制するためには、上向流の流速を低く維持することができ、沈降性が良い活性炭を用いることがよい。
【0045】
流出口側無機膜38をろ過した活性炭設備処理水16は活性炭吸着処理設備流出口46から流出する。
【0046】
高温流体10で活性炭槽40の活性炭42を洗浄する際には、逆に活性炭吸着処理設備流出口46から下降流で高温流体10を通過させる。流入口側無機膜48が備えられているため、活性炭42は活性炭槽40から流出しない。
【0047】
洗浄時は水流が通常の吸着使用時と逆方向になるため、流出口側無機膜38の下方に付着している物質、主に微細な活性炭42は剥離して活性炭槽40の中に戻る。これによって流出口側無機膜38のろ過性能が回復する。高温流体10であるため、低い温度の流体に比べて高い洗浄効果がある。
【0048】
高温流体10は、活性炭42を加温し、活性炭42に吸着されていた物質、主にホウ素,有機物,微粒子を脱着して液中に移動させる。移動した成分は、元々は上向流で流入口側無機膜48を通過して流入した物質であるため、逆に洗浄工程の下降流でも流入口側無機膜48を通過して流出する。洗浄によって発生した廃液は、流入口側無機膜48よりも上流側に設けた排出口50から排出される。
【0049】
流入口側無機膜48の孔径は、微細な活性炭42が流出しない大きさとすることが望ましい。ただし、活性炭槽40で吸着した有機物がほかの有機物と合体し大きな有機物となっている可能性があるため、その大きさの有機物が洗浄時に活性炭槽40から除去できるように、流入口側無機膜48の孔径を流出口側無機膜38の孔径よりも大きくしてもよい。この下降流により流入口側無機膜48の下側の面に付着していた粗大な有機物や微粒子は逆洗されて剥離し、流入口側無機膜48のろ過性能も回復する。高温流体10であるため、低い温度の流体に比べて高い洗浄効果がある。
【0050】
本実施例では、活性炭吸着処理設備流入口44側にも流入口側無機膜48を設けているので、活性炭表面には粗大な有機物や微粒子が分離された海水12が接触するため、活性炭42のホウ素吸着能が飽和に達するまでの期間を長くでき、高温流体10による洗浄頻度を減少できる。
【0051】
また、高温流体10による洗浄を活性炭吸着処理設備流出口46から活性炭吸着処理設備流入口44に向け、このように逆方向に向けて洗浄を実施しても活性炭42が流出せず、表面に吸着されていた物質が流出する。この高温流体10の洗浄効果によって流入口側無機膜48および流出口側無機膜38のろ過性能も効率的に回復する。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3を図7により説明する。
【0053】
図7は実施例3の活性炭吸着処理設備14の構造の一例であり、その断面図を示す。実施例3の活性炭吸着処理設備14では、活性炭吸着処理設備流入水28は、流入口側無機膜48へ活性炭吸着処理設備流入口44から下降流として流入する。活性炭吸着処理設備流入水28に含まれる粗大な有機物や粒子は、流入口側無機膜48の上面で分離される。流入口側無機膜48を通過した活性炭吸着処理設備流入水28は、活性炭槽40の中の活性炭42に接触し、ホウ素,微細な有機物,微粒子が吸着除去される。その後、流出口側無機膜38で微細な活性炭42は分離され、粗大な有機物や粒子,ホウ素,微細な有機物,微粒子が除去された液が活性炭設備処理水16として流出する。
【0054】
高温流体10で活性炭槽40の活性炭42を洗浄する際には、逆に活性炭吸着処理設備流出口46から鉛直下方に向けて高温流体10を注入する。流入口側無機膜48が備えられているため、活性炭42は活性炭槽40から流出しない。洗浄時は水流が通常使用時と逆方向になるため、流出口側無機膜38の下方に付着している物質、主に微細な活性炭42は、剥離して活性炭槽40の中に戻る。これによって流出口側無機膜38のろ過性能が回復する。高温流体10であるため、低い温度の流体に比べて高い洗浄効果がある。
【0055】
高温流体10は活性炭42を加温し、活性炭42に吸着されていた物質、主にホウ素,有機物,微粒子が脱着されて液中に移動する。移動した成分は、元々は流入口側無機膜48を上向流で通過して流入した物質であるため、洗浄工程の上向流でも流入口側無機膜48を通過して流出する。
【0056】
流入口側無機膜48の孔径は、微細な活性炭42が流出しない大きさとすることが望ましい。ただし、活性炭槽40で吸着した有機物が他の有機物と合体して大きな有機物となっている場合があるため、その大きさの有機物が洗浄時に活性炭槽40から除去できるように流入側無機膜の孔径を流出側無機膜の孔径よりも大きくしてもよい。
【0057】
この上向流により流入口側無機膜48の上面に付着していた粗大な有機物や微粒子は逆洗されて剥離し、流入口側無機膜48のろ過性能も回復する。高温流体10であるため、低い温度の流体に比べて高い洗浄効果がある。
【0058】
図6に示した構造と異なり、本実施例の活性炭吸着処理設備14では、洗浄時には流入口側無機膜48に対して上向流で高温流体10が流れる。上向流の流速を低く維持すること及び沈降性が良い活性炭42を用いることで、洗浄時に流入口側無機膜48のろ過性能が低下するのを抑制することができる。
【0059】
本実施例によれば、洗浄時に流入口側無機膜48へ高温流体10が上向流で与えられる構造としているので、洗浄時のろ過抵抗の低下を抑制することができ、洗浄時間の短縮および流入口側無機膜48の目詰まりを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
10 高温流体
12 海水
14 活性炭吸着処理設備
16 活性炭設備処理水
18 逆浸透膜式海水淡水化設備
20 淡水
22 高温流体注入設備
24 廃液
26 濃縮海水
28 活性炭吸着処理設備流入水
30 水質計測値
32 洗浄トリガ演算部
34 洗浄トリガ信号
36 水質計測装置
38 流出口側無機膜
40 活性炭槽
42 活性炭
44 活性炭吸着処理設備流入口
46 活性炭吸着処理設備流出口
48 流入口側無機膜
50 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備と、該逆浸透膜式海水淡水化設備の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備と、該活性炭吸着処理設備に高温流体を注入して活性炭を洗浄する高温流体注入設備と、を備えた海水淡水化システム。
【請求項2】
逆浸透膜を用いた逆浸透膜式海水淡水化設備と、該逆浸透膜式海水淡水化設備の上流あるいは下流側に設けられた活性炭吸着処理設備と、該活性炭吸着処理設備の下流側に設けられた水質計測装置と、該水質計測装置から出力される水質計測値に基づき前記活性炭吸着処理設備の洗浄時期を演算によって求める洗浄トリガ演算部と、該洗浄トリガ演算部から出力される洗浄トリガ信号に基づき、前記活性炭吸着処理設備に高温流体を注入する高温流体注入設備と、を備えた海水淡水化システム。
【請求項3】
前記水質計測装置で計測する成分が、ホウ素,アデノシン三リン酸,紫外線吸光度のうち少なくとも1つを含むものである請求項2に記載の海水淡水化システム。
【請求項4】
前記活性炭吸着処理設備が、活性炭が内部に備えられる活性炭槽と、活性炭槽の流出口に設けられた活性炭が流出しないように形成された孔径の流出口側無機膜で構成される請求項1から3のいずれかに記載の海水淡水化システム。
【請求項5】
前記活性炭層の活性炭洗浄時に洗浄廃液を活性炭槽から外へ排出する排出口を活性炭吸着処理設備の流入口より上流側に設け、前記活性炭吸着処理設備の流入口に活性炭が流出しないように形成された孔径の流入口側無機膜を設けた請求項4に記載の海水淡水化システム。
【請求項6】
前記活性炭槽の活性炭として粉末活性炭を用い、吸着時の水の流れが上向流となる構造とした請求項5に記載の海水淡水化システム。
【請求項7】
前記活性炭を洗浄する高温流体は流出口側無機膜を下降流で通過する構造とした請求項6に記載の海水淡水化システム。
【請求項8】
活性炭槽の活性炭として粉末活性炭を用い、活性炭吸着処理設備の流入口側無機膜から活性炭槽へは下降流で流れる構造とし、活性炭吸着処理設備の活性炭槽から流出口側無機膜へは上向流で流れる構造とし、活性炭を洗浄する高温流体は前記流出口側無機膜を下降流で通過する構造とし、活性炭を洗浄した高温流体は前記流入口側無機膜を上向流で通過する構造とした請求項5に記載の海水淡水化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177601(P2011−177601A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41251(P2010−41251)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】