説明

海洋ホスホリピド組成物

ここにヒトおよび水産養殖の用途に適した海洋ホスホリピド(MPL)組成物を記載する。この化合物は、乾燥組成物を含み、この乾燥組成物は、乾燥させた海洋原材料の流体抽出物より得ることが可能な海洋ホスホリピド、海洋タンパク質およびアミノ酸混合物よりなる群から選択される栄養成分を含有する。この組成物は、少量の中性脂質および特に少量のコレステロールおよびコレステロールエステルを有し、これらは、粉末状形態において使用され得るか、エタノール抽出により精製されたMPL化合物を調製するために使用され得る。両形態は、栄養補助物質、機能性食品の成分として使用され得、ならびに多成分性の魚類飼料用組成物において栄養成分の送達および封じ込めを最適化するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋ホスホリピド(MPL)組成物に関連し、この組成物は、長鎖のω−3−脂肪酸を含む。この組成物は、ヒトの消費、動物のエサ、または養殖漁業および魚の幼生のためのエサの組成物における栄養上の目的および包埋の目的のための栄養補助物質(supplement)として特に適切である。
【0002】
(発明の背景)
ホスホリピドは、両親媒性脂質であり、これは全ての細胞膜の成分である。このホスホリピド分子は、リン酸エステルの先端基を含み、この先端基は、一以上の(通常二つの)脂肪酸鎖を伴うグリセロール骨格に結合される。この先端基は、pHに依存して中性、アニオン性、カチオン性または双生イオン性であり得る。この異なる型のホスホリピドは、これらの先端基により同定される。その供給源にかかわらず、最も広範に生じる天然のホスホリピドは、ホスファチジルコリン(PC)であり、これは先端基としてコリンを有する。第二に最も豊富なものは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)である。ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンゴミエリン(SPM)およびモノアシル誘導体は、通常、より少量見出される。異なる供給源に由来するホスホリピド間の主な違いは、脂肪酸のプロフィールに反映され、この脂肪酸のプロフィールは、鎖の長さおよび不飽和の程度に従って変化する。
【0003】
天然の供給源に由来するホスホリピドに結合する脂肪酸部分は、14個〜24個の炭素原子を有する。この不飽和脂肪酸部分は、主にC18〜C22鎖を含み、そしてその起源(つまり海洋、動物、または植物)に依存して1〜6の間の二重結合を含み得る。植物に由来するホスホリピドは通常、18個を超える炭素原子の鎖の長さを有する脂肪酸を含まない。大豆における約65重量%〜75重量%の脂肪酸の例(主にC18)は、1〜3の二重結合を含み、およそ60重量%の脂肪酸は、2つの二重結合を有するω−6リノール酸である。比較すると、卵のホスホリピドは、さらにいくらか長い鎖の脂肪酸を含む(4および6の二重結合をそれぞれ有する、C20およびC22)。海洋ホスホリピドは、非常に高いレベルの主に長鎖(C20およびC22)高度不飽和脂肪酸(HUFA)、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)により特徴付けられる。海洋ホスホリピド脂肪酸の顕著な特徴は、脂肪酸鎖のω−3位における二重結合の一般的な存在である。
【0004】
大豆および卵のホスホリピドは、その偏在性かつ多機能的特性のため広範に使用される。これらは、その両親媒性の性質のために、食品および飼料の産業において、特に乳化剤として全ての型の用途に広範に使用される。これらはまた、栄養食品および機能食品における不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸、リノレン酸(大豆)、アラキドン酸およびドコヘキサエン酸(卵))の豊富な供給源として使用される。植物に由来するホスホリピドは、魚油に見出される長鎖の高度不飽和ω−3−脂肪酸の型を含まない。海洋ホスホリピドにおけるHUFAのレベルは、同一の供給源に由来する対応する油性中性脂肪におけるレベルよりも高い。さらにこの脂肪酸の生物学的利用能は、ホスホリピドに由来する脂肪酸の方が中性脂肪に由来する脂肪酸と比較して高いと考えられる。これは、ホスホリピドの両心媒性の性質に起因し得、この性質は優れた水分散性および/または中性脂肪のグリセロール分解と比較してホスホリパーゼに対するそのより大きな感受性に反映される。従って海洋ホスホリピドは、魚の食餌およびヒトへの栄養補助として組み入れるための長鎖ω−3ポリ不飽和脂肪酸の非常に豊富な供給源を提供することは明白である。
【0005】
水産養殖における海洋ホスホリピドに関連する先行技術は、異なる海洋の供給源および原材料またはバイオマスに由来する魚の餌の組成物を調製することに主に関連する。
【0006】
WO 00/27218は、幼魚のための合成の乾燥のエサを記載し、水に不溶な栄養物および粒子に包埋されたホスホリピドを含んでいるマトリックスを含む生きたエサの置換、ならびにエサの粒子を調製する方法を記載する。
【0007】
WO 01/50884は、水産養殖に適切な餌食有機物を摂餌するための合成のエサを記載する。この脂質成分は、海洋有機物(例えば、魚の食物、植物性プランクトンまたは動物性プランクトン(zoo plankton)のバイオマス)に由来する。
【0008】
EP 0996740は、脂質画分に高比率のDHAを有しかつ5ミクロン〜10ミクロンの間の平均粒子サイズ(水産養殖において栄養補助物質として適切である)を有する粒状物質を提供する。この方法は、タンパク質/ホスホリピド組成物を記載し、このタンパク質/ホスホリピド組成物は、溶媒和物抽出法および噴霧乾燥による水の除去を使用して破砕した藻細胞の水溶性懸濁液から抽出される。
【0009】
通常の魚の食餌ためのエサの組成物は、大豆に由来するホスホリピド混合物(レシチン)を使用して親油性および親水性の成分を乳化し、そしてそれらを共にエサの粒子内に保持する。しかし、摂食を開始し卵黄から脱離している(weaning)幼生のための特別の均衡を保つ組成物においては、よく特徴付けられたホスホリピドが、使用されることが必須である。高比率のエステル型のポリ不飽和脂肪酸(乳化特性に加えて生体膜を形成する特性を有する)は、海洋ホスホリピドを栄養特性を最適化しおよび流出(特に水溶性の栄養物)を最小化するためにより効果的にする。選択された海洋ホスホリピドおよび他の成分を含有する組成物は、可変性の脂質凝集体を形成し得、これは、乳化処理に加えて結合または可溶化のいずれかにより水溶性および油溶性の化合物を共に取り込む。この取り込みは、凝集体の型に依存し、これは、このホスホリピド混合物の組成物に従って、二重層またはミセルの、小胞性もしくは非小胞性であり得る。リポソームは、小胞構造の一つの例であり、マイクロエマルジョンの水滴、ミセルおよび混合性ミセルは、取り込みに有用な非小胞構造の例である。本発明に記載されるMPL組成物に由来する脂質凝集体の顕著な特徴は、ヒトの栄養補助物質および機能性食品だけではなく、また動物、魚および幼生のエサの組成物(特に海水の様な不安定化培地の存在下において)においてもまた、親水性物質および親油性物質の両方を封じ込めるための、その予測不可能な収容能力である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、ヒトの栄養食品および機能性食品における栄養補助物質として好適な「粒子状の」および「ワックス状の」海洋ホスホリピド組成物および「HUFA濃縮物」の分野であり、また動物および魚のエサの微粒子組成物における包埋目的および栄養上の目的のための分野でもある。
【0011】
(A)粒子状海洋ホスホリピド/海洋タンパク質およびアミノ酸ブレンド)
本発明は、乾燥組成物、すなわち、粒子または粉末形態を含むヒトまたは水産養殖適用に適切な海洋ホスホリピド(MPL)組成物に関し、主要量の極性およびより低い量の非極性(中性)脂質を含む乾燥された海洋原材料の臨界超過(supercritical)または超臨界(hypercritical)状態下での溶媒またはガス抽出によって調製された、海洋ホスホリピド、海洋タンパク質、アミノ酸、ミネラルを含むからなる群から選択される栄養成分を含む。この乾燥された海洋原材料は、低湿度、すなわち10wt%未満を有している。
【0012】
この組成物は、以下を含む、
I)10重量%〜30重量%の総(極性および中性)脂質;
II)70重量%〜90重量%海洋タンパク質とアミノ酸とのブレンド。I)中の総脂質の70重量%〜95重量%は、極性脂質および中性脂質からなる5重量%〜30重量%からなる。
【0013】
好ましくは、この組成物は、以下を含む、
I)15wt%〜30wt%の総(極性および中性)脂質;
II)70重量%〜85重量%海洋タンパク質とアミノ酸とのブレンド。
【0014】
好ましくは、I)中の総脂質の80重量%〜95重量%は、極性脂質および中性脂質からなる5重量%〜20重量%からなる。
【0015】
本発明はまた、極性脂質の40重量%〜80重量%がホスファチジルコリン、またはPCとそのモノアセチル誘導体の混合物からなり、このホスファチジルコリンおよびモノアセチル誘導体が、30重量%〜60重量%のHUFAでエステル化されている粒子状組成物を記載する。この組成物中の極性脂質の20重量%〜60重量%のバランスは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンゴミエリン(SPM)およびそれらのモノアセチル誘導体を含む。
【0016】
(B)精製されたワックス状海洋ホスホリピド(MPL)組成物)
本発明はさらに、粒子状MPL組成物からエタノール抽出によって調製される、精製された粘性またはペースト状のワックス状MPL組成物を記載する。このワックス状MPL組成物は、
i)70重量%〜95重量%またはそれ以上の総脂質、
ii)5重量%〜30重量%の中性脂質、を含む。
【0017】
この精製されたワックス状MPL組成物は、ホスホリピド/海洋タンパク質/アミノ酸/ミネラルブレンドからなる群から選択される栄養成分を含む乾燥組成物のエタノール抽出によって調製され得る。
【0018】
この組成物は、すべてのホスホリピドを基礎に算出して、好ましくは、15重量%を超えない中性脂質および少なくとも40重量%のホスファチジルコリンまたはPCおよびそのモノアセチル誘導体を含み、ここで、少なくとも30%の脂肪酸は、ホスホリピドにエステル化されたω−3脂肪酸である。
【0019】
得られるワックス状組成物はさらに、ヒト栄養物のための栄養補助物質として、ハードゼラチンまたはソフトゼラチンカプセル中に充填され得る液体組成物を調製するために魚油または食物油とブレンドされ得る。
【0020】
(C)水に分散可能な海洋ホスホリピド(MPL)濃縮物)
本発明はさらに、油溶性および水溶性栄養成分の含有および保持を最適化するための「微粒子」と呼ばれる複数成分の魚類および幼生における使用のためのワックス状組成物から調製され得る親水性媒体中の水分散性海洋ホスホリピド(MPL)を提供する。
【0021】
この実施形態は、以下を含む均一な水分散性濃縮物を含む:
i)主要成分として少なくとも40%の量のPCまたはPCおよびモノアシル誘導体の混合物、およびPE、PI、SPMおよびPSならびにそれらのモノアシル誘導体からなる群から選択される小量のホスホリピドを含む、海洋ホスホリピド組成物を25重量%〜75重量%、
ii)15重量%〜75重量%のエタノールまたは少なくとも1つのポリオールまたはそれらの混合物、
iii)100%にする水;および、必要に応じて、ポリマー、栄養物成分、安定化剤、保存剤、および抗酸化剤からなる群から選択されるさらなる添加剤。
【0022】
本発明はまた、魚および幼生に供給する粒子中に包埋するための脂質凝集物を調製する方法を含み、この方法は、水中に以下を含む脂質濃縮物を分散する工程を包含する、
i)主要成分として少なくとも40%の量のPCまたはPCおよびモノアシル誘導体の混合物、およびPE、PI、SPMおよびPSならびにそれらのモノアシル誘導体からなる群から選択される小量のホスホリピドを含む、海洋ホスホリピド組成物を25重量%〜75重量%、
ii)15重量%〜75重量%のエタノールまたは少なくとも1つのポリオールまたはそれらの混合物、
iii)100%にする水;および、必要に応じて、
iv)ポリマー、栄養物成分、安定化剤、保存剤、および抗酸化剤からなる群から選択されるさらなる添加剤。
【0023】
ヒトにおいて、MPLは、栄養補助物質として特に有用であり、冠状動脈心臓疾患(CHHD)を防ぎ、増加した血液コレステロールおよびトリグリセリド、高血圧、高血圧グルコースを減少し、そしといくつかの精神障害(アルツハイマー病など)、月経前症候群(PMS)、炎症性大腸疾患、変形性関節炎、炎症性皮膚疾患などを処置する。
【0024】
ω−3脂肪酸もまた、水産養殖食餌で供給される必要がある。なぜなら、魚幼生は、より短い鎖前駆体からデノボでこれら化合物を合成する能力がないからである。これらの必須脂肪酸の欠如は、増殖レベルを損なう。
【0025】
本発明は、植物または卵ホスホリピド、酵素改変ホスホリピドならびに1〜6の二重結合をもつC14からC22の脂肪酸を含む合成および半合成ホスホリピドからなる群から選択されるホスホリピドとの混合物で、乾燥またはワックス状組成物および水分散性濃縮物であり得る海洋ホスホリピドブレンドを含み、ここで、この海洋ホスホリピドは、好ましくは、主要成分、すなわち、総混合物の重量の50%を超えて含む。これら組成物は、生物学的に活性な化合物をさらに含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明では:
組成物中の成分に関する数値範囲は、正確および近似の(およそ、約)範囲を示し;
「レシチン」は、広範な定義として用いられ、ホスファチジルコリン(PC)およびその他のタイプのホスホリピドを含む混合物を記載する。PCのみを記載する狭い定義と交換可能には用いられない。これはまた、異なる供給源からのホスホリピドの混合物およびそれらの混合物を含み;
「海洋ホスホリピド」(MPL)は、「海洋原材料」、例えば、サケ、ニシン、カラフトシシャモ、セイスおよびタラなどのような魚の白子および魚精から得られる優勢に長鎖および高度不飽和脂肪酸を含むホスホリピド組成物をいう。それは、オキアミおよびその他の甲殻類のような海洋植生および生命形態のすべての形態のホスホリピド、ならびにその他の供給源および異なる種からのホスホリピドを含む合成または部分合成(例えば、酵素的脂肪酸交換)によって調製されたホスホリピドを含む。この用語はまた、混合物中の主要成分として上記MPLとの、海洋ホスホリピドならびに卵または大豆ホスホリピドのブレンドまで拡張される。このホスホリピド含量は、起源、供給源、気候およびその他の季節の因子に依存して異なる種について通常見積もられる値の±25wt%まで変動し得る。この定義はまた、適切な海洋ホスホリピド基質に対するホスホリパーゼA2を用いる酵素加水分解によって調製される海洋ジアシルホスホリピドおよびモノアシル誘導体を含む混合物またはブレンドを含む。
【0027】
「極性脂質」は、海洋生物からの細胞膜の成分である、ホスホリピド、グリコリピドおよびスフィンゴリピドのような両親媒性脂質であり;
「中性脂質」は、海洋生物中に存在する、モノ、ジおよびトリグリセリド、遊離脂肪酸およびエステル、コレステロール、コレステロールエステルおよびカロチノイドのような非極性脂質であり;
「総脂質」は、極性および中性脂質の組み合わせであり;
「海洋タンパク質およびアミノ酸」は、海洋生物に由来するタンパク質性材料をいい;
「濃縮物」は、水分散性の親水性媒体中のDHAおよびEPAが優勢であるHUFAを含む精製MPLから調製された標準化され、かつ規定された混合物を記載する。この濃縮物は、大豆、卵、合成、半合成および酵素改変ホスホリピドとブレンドされた海洋ホスホリピドの混合物を含み得る。それは、魚幼生およびウィーニングのための微粒子を含む水性生命種族のための複数成分フィードに適切な液体またはゲル様組成物であり得る。それはまた、そのようにしてか、または単位用量形態としてのヒトのための栄養補助物質といて投与され得る。
【0028】
「栄養成分」は、ヒト、生命種族、魚幼生、スメルトおよびその他の海洋種にとって栄養的に価値があるすべての物質を含む。例は、ホスホリピド、タンパク質、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、魚タンパク質加水分解物、魚油トリグリセリドおよび炭水化物を含む。
【0029】
「長鎖脂肪酸」は、エイコサ(C20)およびドコサ(C22)脂肪酸で開始する18より多い炭素原子をもつ脂肪酸をいう。
【0030】
「高度に不飽和な」脂肪酸(HUFA)は、通常4以上である3以上の二重結合、例えば、ω−6またはω−3脂肪酸のいずれかであるテトラエン(4)、ペンタエン(5)およびヘキサエン(6)を有し得る。エイコサテトラエン酸(AA)は、ω−6脂肪酸、エイコサペタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)はω−3脂肪酸であり;
「流体抽出」は、アセトンのような液体形態の溶媒、または超臨界(臨界超過)条件下の二酸化炭素、酸化窒素またはプロパンまたはそれらの混合物のような超臨界ガスを用いて乾燥された海洋原材料からの中性脂質の「脱オイル」または除去を意味し;
「エタノール抽出」は、タンパク質およびアミノ酸およびその他の不純物から上記極性脂質を抽出するために、エタノール、またはメタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、n−プロパノールおよびそれらの混合物のような関連溶媒を用いることによる、脱オイル後の乾燥MPL組成物の精製を記載する。
【0031】
「粒子状組成物」は、10%未満である湿度をもつ0.5mmを超える平均粒子直径の乾燥された粉末組成物を記載する。
【0032】
(海洋ホスホリピド(MPL)組成物の調製)
特に大豆および卵からの精製または半精製ホスホリピドを得るための標準的な手順は、粗製の市販レシチンから開示する、複数ステップ分画および/または精製プロセスに基づく。
【0033】
(粗製植物油からのレシチンの除去(脱ゴム化))
植物性レシチンは、粗製油を脱ゴム化する単一性の水によってか、または湿性開始物質の特定の遠心分離のようなほかのプロセスによって入手され得る。しかし、ヒト栄養物および魚用飼料組成物のための海洋ホスホリピドを調製するために、そのプロセスを改変することなく、高水含量を有する海洋原材料および生物資源に基づいた現在利用可能な手順の使用は、可変性の内容物および異なる起源由来のMPLの粗製物に起因して、あまり良好ではない。従って、改善した抽出方法は、望ましい量の極性脂質および少量の中性脂質を含む、ヒトの栄養補助物質および機能性食品用途に好ましいMPL組成物を調製するため、ならびに、微粒子飼料に包埋された脂質凝集体を形成するために必要である。
【0034】
(乾燥)
通常、高温またはスプレー乾燥を用いる乾燥を用いて、粗製水性魚卵および精巣由来、または多量の水を含む破壊した海洋藻類由来の粉末を含むMPLを調製する。本発明において、加工の前により少ない水分含量を有するように、海洋原材料を乾燥させるために、別の技術(例えば、凍結乾燥または他の低負荷の乾燥方法)を使用することが好ましい。
【0035】
(脱油化)
天然の脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロールおよびコレステロールエステル)の海洋原材料からの除去のために好ましい方法は、超臨界条件下で、適切な脂質(例えば、アセトン)および気体(二酸化炭素または他の適切な気体)を用いた流体抽出である。
【0036】
アセトンまたは、より好ましくはCO抽出後に残存する生成物は、タンパク質、アミノ酸、無機物、極性脂質および少量(低量)の中性脂質を含有する微粒子組成物である。微粒子MPL組成物は、70重量%〜90重量%(好ましくは、80重量%以下)の海洋タンパク質および海洋アミノ酸を含有する。極性脂質および中性脂質は、総計10重量%〜30重量%になり、好ましくは、15重量%以上である。極性脂質は、総計70重量%〜95重量%になり、好ましくは、総脂質の80重量%以上であり、それに対して、中性脂質は、総計5重量%〜20重量%、好ましくは、15重量%以下でバランスをとる。含水量は、10%以下であり、それに対して、灰分残留物に基づく無機物および微量元素は、10重量%以下を構成する。
【0037】
組成物は、以下のように、栄養補助物質中の粉末の形態で、単位投薬量形態で、または機能性食品用途のために、そのままで、または生物学的に活性な化合物と組み合わせて使用され得る。それは、魚類飼料微粒子中の栄養補助物質としても使用され得る。代表的に、その組成物は、遊離の流動粉末である。
【0038】
(タンパク質の除去)
脱油化MPL粉末は、生成物として、または生成物によるホスホリピドおよび残存するタンパク質、アミノ酸および大部分の無機物を除去するために、例えば、エタノール抽出を使用してさらに加工され、精製され得る。エタノールに加えて、他の溶媒(例えば、メタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールおよびn−プロパノールが等しく適している。
【0039】
エバポレーションによるエタノールまたは別の適切な溶媒の除去の後、その組成物は、ワックス状で、ペースト状の物質であり、70重量%〜95重量%(または、カラムクロマトグラフィー後は、これより多い)のホスホリピド、好ましくは、40重量%の最低PC含有量を含んで、約75重量%、好ましくは、主成分として60重量%〜80重量%の間のホスホリピドを含む精製されたMPL組成物を含む。好ましくは、HUFAは、40重量%〜60重量%の間のω−3脂肪酸であるEPAおよびDHAを含む。他の型のホスホリピドおよび代表的な存在量は、PE(15重量%)、PI(10重量%)、SPM(5重量%)、PS(2重量%)およびこれらのモノアシル誘導体(4重量%)である。より少量の糖脂質もまた、存在し得る。
【0040】
非極性の(天然の)脂質は、合計、ワックス状のMPL組成物の5重量%〜30重量%であって、好ましくは、15重量%以下である。最大量のコレステロールおよびコレステロールエステルは、約8重量%、好ましくは、5重量%以下である。ホスホリピドの値は、リン31 NMR測定に基づく。この精製された組成物はまた、液体形状のMPL濃縮物を調製するためにも使用され得る。
【0041】
(さらなる精製)
より多い量のPCが必要である場合、60重量%〜95重量%の間のPCを有するPC富化されたMPLを産生するために、酸化アルミニウムまたはシリカを備えるカラムクロマトグラフィーを使用してさらなる精製が実施され得る。酸化アルミニウムは、80%より高い濃度が所望される場合に選択される物質である。
【0042】
MPL組成物が、所望の脂肪酸プロフィールを提供し、また、適切な形態での栄養成分の最大限の含量および送達を可能にする。本発明の背後にある概念は、組成物中の特定の型の海洋ホスホリピドの固有の特性を活用することであり、この組成物は、栄養上有益であり、さらに、会合形成/複合体形成により、栄養成分および他の成分を含有する可能性を有する。
【0043】
特定のMPL組成物を栄養補助物質およびヒト使用のための食品添加物として使用する場合に考えられる因子は、
i)10重量%〜30重量%の総脂質を含む脂質画分中で、70重量%〜95重量%の間のホスホリピド、
ii)40重量%より多い、好ましくは60重量%より多いホスホリピドを、少なくとも30重量%のHFUAとともに含む、ホスファチジルコリンであって、脂肪酸プロフィールは、所望のレベルのDHAおよびEPAを提供する、ホスファチジルコリン、
iii)少量の中性脂質、好ましくは、15重量%以下、
iv)少量のコレステロールおよびコレステロールエステル、好ましくは、5重量%以下、
iv)固体としての適合性および液体単位投薬形態への変換、
である。
【0044】
魚類飼料微粒子の栄養上の目的および包埋目的に適したMPL濃縮物を調製するための流体抽出後の精製されたワックス状のMPL組成物の使用に配慮され得るさらなる因子は、
i)最大限の会合に対する他の栄養性成分との適合性、
ii)凝集体形成、構造、粒子サイズおよび安定性に影響する長鎖の高度に不飽和な脂肪酸の立体的な効果、
iii)膜の強剛性を増加させ得るエステル化したC18:2脂肪酸およびより飽和した脂肪酸を有する50重量%以上のホスホリピドの回避、
iv)飼料粒子中の最大限のMPL量を提供するための水分散可能な組成物を調製する
能力、
v)水中で脂質凝集物を形成する濃縮物の調製において有害であり得る高温および激しい混合の回避、
vi)ホスホリピドを可溶性にするために、(v)において一般に使用される有機溶媒(特にエタノール)の回避、
vii)飼料微粒子中に包埋するために、栄養性成分および必要に応じてポリマーを含む、小さく、均質で、かつ安定な脂質凝集物の形成、
viii)飼料組成物中に、例えば、賦形剤(例えば、結合剤および安定剤)を含む微粒子を組み込む、工業的に適用可能な方法、
ix)pH5〜pH8の間での凝集物の安定性、
x)先端の基の荷電および脂質凝集物の融合を引き起こし得る二価イオンの効果、
xi)浸透圧衝撃効果、
xii)細菌汚染および過増殖、
である。
【0045】
A)
本発明は、50重量%未満、好ましくは、10重量%未満の水を含む乾燥した海洋原料の流体抽出により入手可能な海洋ホスホリピド、海洋タンパク質および海洋アミノ酸混合物からなる群より選択される栄養性成分を含有する乾燥組成物であり得る、ヒト適用または養殖漁業適用に適したすぐに使用できる海洋ホスホリピド(MPL)組成物を提供する。
【0046】
乾燥海洋原料の流体抽出または超臨界気体抽出によって調製した代表的な微粒子組成物は、以下:
タンパク質およびアミノ酸: 70重量%〜90重量%
総脂質(極性および非極性): 10重量%〜30重量%
極性脂質: 70重量%〜95重量%
PC含有量: 40重量%〜80重量%(の極性脂質)
エステル化HUFA: 30重量%〜40重量%(の極性脂質)
天然(非極性)脂質: 5重量%〜20重量%
コレステロール、コレステロールエステル: <8重量%
遊離脂肪酸: <5重量%
ヨウ素価(脂質画分の): 110〜130
無機物、微量元素: <8重量%
水: <10重量%
を含有する。
【0047】
B)
本発明はまた、溶媒(例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブタノールおよびn−プロピルアルコールおよびこれらの混合物)を用いたホスホリピドの抽出によって入手可能なホスホリピド/海洋タンパク質/乾燥した海洋原料のアセトンまたはより好ましくは超臨界気体処理後のアミノ酸混合物から精製された、直接的なヒト消費または他の適用に適した、ワックス状のホスホリピド組成物を調製する方法を記載する。得られたこの組成物は、精製され、少量の天然の脂質を含むワックス状の海洋ホスホリピド混合物は、水分散可能な濃縮物を調製するために適している。
【0048】
ワックス状の組成物はまた、ハードゼラチンカプセルもしくはソフトゼラチンカプセル、またはヒトの栄養上の目的で使用され得る液状またはゲル状の親油性組成物を調製するために、中性油とブレンドされ得るか、または混合され得る。この油は、生理学的に受容可能な任意の天然の油であり得る。好ましくは、それは、魚油もしくは植物油であるか、または中鎖トリグリセリド(例えば、ミグリオール(Miglyol)および食用脂肪酸エステル、エーテル)であり得る。ブレンドに対する油の量は、25重量%〜60重量%の間、またはそれより多くあり得、これは、その目的に依存する。この油は、単に、希釈剤であり得るか、または、不飽和ω−6脂肪酸のサプリメントとして使用され得る。
【0049】
ワックス状のMPL組成物は、約30重量%のエステル化ω−3脂肪酸および5重量%〜30重量%の間の中性脂質を含む総ホスホリピド存在に基づいて計算して、少なくとも40重量%のホスファチジルコリンを含むホスホリピドを約70重量%〜約95重量%、またはそれより多く含有する。この精製されたホスホリピド混合物は、魚類飼料微粒子中への包埋に適しているか、またはヒト、動物および養殖漁業使用のための高度に生物利用可能な長鎖ω−3脂肪酸のサプリメントとして適している水分散可能な海洋ホスホリピド(MPL)濃縮物を調製するために、好ましいものであり得る。
【0050】
本発明に記載される方法によって調製された精製された、ワックス状のMPL組成物の代表的な内訳は:
極性脂質: 70重量%〜95重量%
PC含有量: 40重量%〜80重量%
エステル化HUFA: 30重量%〜40重量%の極性脂質
非極性(天然)脂質 5.0重量%〜30重量%
コレステロール、コレステロールエステル: <8重量%
遊離脂肪酸: <5重量%
ヨウ素価(脂質画分の): 110〜130
エタノール: <2.5重量%
無機物、微量元素(灰分): <2重量%
水: <5重量%
C)
さらなる局面では、本発明は、均質な水分散性MPL濃縮物を記載し、それは、以下:
i)PCまたはPCのブレンド、および酵素加水分解によって調製されるモノアシル誘導体を少なくとも40重量%の量で主成分として含有し、少量の他の成分(PE、PI、SPM、PSおよびそれらのモノアシル誘導体)を含有する、25重量%〜75重量%のMPL組成物、
ii)15重量%〜75重量%のグリセロールもしくは別のポリオール、または、糖、
iii)1重量%〜50重量%の水、
iv)必要に応じて、ポリマー、栄養成分、安定化剤、保存剤、および抗酸化剤からなる群から選択される、他の添加剤。
【0051】
水分散性濃縮物は、ヒトの栄養摂取のための食物に利用され得るか、または生物学的に活性な化合物とともにか、もしくはそれなしで、適切な単位投薬形態で投与される栄養補助物質として利用され得る。これはまた、飼育魚もしくは魚の幼生に餌を与えるための栄養成分を含むように飼料粒子に包埋された、脂質凝集物を調製するために使用され得る。好ましくは、水分散性濃縮物は、粒子状もしくは粉末状の海洋ホスホリピド/海洋タンパク質、アミノ酸および無機質組成物のエタノール抽出によって精製された少なくとも40重量%のPCを含む、精製されたワックス状のホスホリピド組成物を用いて調製される。本発明は、流体およびエタノール抽出によって得られたMPL組成物から水分散性MPL濃縮物を調製するための方法を、さらに記載する。
【0052】
本発明は、飼料粒子への包埋および封入のためか、またはヒトが消費するための食品への添加のために、脂質凝集物を調製する方法をさらに提供する。この方法は、脂質濃縮物(B)を分散させる工程に関与し、この脂質濃縮物(B)は、以下を、水または水性媒体中に含有する:
i)25重量%〜75重量%のMPL組成物、このMPL組成物は、主成分として、少なくとも40重量%の量で、PCもしくは酵素加水分解によって調製されたPCとモノアシル誘導体とのブレンドを含有し、かつ少量の他の成分(PE、PI、SPM、PSおよびそれらのものアシル誘導体を含む)を含有する;
ii)15重量%〜75重量%のグリセロールもしくは別のポリオール、または糖;
iii)1重量%〜50重量%の水;
iv)必要に応じて、ポリマー、栄養成分、安定化剤、保存剤、および抗酸化剤からなる群から選択される他の添加剤。
【0053】
ホスホリピドの脂肪酸の性質は、全脂肪酸含有量に基づいて少なくとも30重量%のHUFA(主にDHAおよびEPA)が存在することによって特徴付けられる。好ましくは、これは、40重量%と60重量%との間のω−3脂肪酸を含有すべきである。
【0054】
(親水性媒体)
適切な親水性媒体は、無毒性のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリグリセロールおよびそれらの混合物)である。好ましいポリオールは、グリセロールである。ヒトの使用のためには、エタノールが適切である。グリセロールの代わりにかもしくはグリセロールに加えて使用され得る代替的ポリオールは、水性の糖溶液であり、この糖溶液は、少なくとも25重量%の、例えば、グルコース、スクロース、可溶性マルトデキストリン、またはマンニトールおよびソルビトールなどのような多価アルコール、を含有する。
【0055】
(ポリマー)
Ca++イオンと架橋結合し得る天然ゴム、特にアルギン酸ナトリウムは、微粒子のための材料を形成する基質として好ましい。代替的な材料は、ゼラチンのようなタンパク質、カゼインのようなポリペプチドおよびペプチド、ならびにダイズタンパク質である。
【0056】
(安定剤)
これらは、緩衝液、浸透圧成分、抗酸化剤、および魚用の飼料および栄養補助物質に一般的に使用される抗菌剤を含む。
【0057】
魚用飼料への適用のため、精製された、ワックス状のMPL組成物は、エタノール処理後、好ましくは高い温度を用いることなく、親水性媒体中に水和されて、均一な水分散性のゲル様濃縮物を生成する。好ましくは、許容される抗酸化剤および保存剤が、添加され得る。水性媒体との混合で、この濃縮物は、レーザー光回折によって測定された平均直径で10μ以下、好ましくは1μ以下の、種々の脂質凝集物へと容易に分散する。この濃縮物は、栄養成分およびアルギネートをさらに含み、微粒子飼料組成物に包埋され得る。多成分飼料組成物中に取り込まれて包埋され得るMPL濃縮物の量は、10重量%〜75重量%の間、好ましくは20重量%〜40重量%の間であり得る。脱水もしくは凍結乾燥(適切な場合)後、全ホスホリピド含有量に基づいて25重量%〜75重量%の間の水溶性栄養成分(例えばタンパク質加水分解物)が、微粒子中に保持され得る。この大きな容量は、海のような不安定な環境で組成物へ水溶性および脂溶性栄養成分の両方を封じ込めるための、海洋ホスホリピド濃縮物の予期しない性質に起因する。
【0058】
本発明がまた、MPL組成物を包含し、ここでこの混合物が、海洋ジアシルホスホリピドおよびそれらのモノアシル誘導体を含むことを、理解すべきである。この混合物は、粒子状MPL組成物またはEP1011634に記載される方法によるワックス状組成物のいずれかであり得るホスホリピドマトリックス上で、ホスホリパーゼA2またはA1を用いた酵素加水分解によって調製される。酵素加水分解されたMPL組成物中でのモノアシルホスホリピドに対するジアシルホスホリピドの量は、1:10〜20:1の間であり得る。
【0059】
海洋ホスホリピド(MPL)組成物が、記載され、特徴付けられ、そして定義される。この組成物は、栄養補助物質としておよび/または機能性食品のため、ならびに多成分魚用飼料組成物中への栄養成分の送達および封じ込めのため、粉末形態のものとして使用され得るか、または精製されたワックス状脂質組成物(水分散性が改善されたMPL組成物を調製するために使用され得る)を調製するためかのいずれかで、使用され得る。粉末形態および水分散性濃縮物としてのMPL組成物は、ヒトが使用するために生体適合性の高いω−脂肪酸を供給するため、栄養補助物質として、単位投薬形態で使用され得る。この投薬形態はまた、MPL組成物と組み合わせて、生物学的に活性な化合物を含有する。飼料微粒子中に包埋するために標準化され、明瞭に規定されたホスホリピドを含むMPL濃縮物が、また記載される。これは、幼生への飼料において栄養学的に必須である。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
35重量%の全脂質含有量を有する1000gの凍結乾燥されたシシャモ(capelin)卵からなる、乾燥した海洋原材料を、40kg/hの二酸化炭素を含む回分抽出(batch extraction)用容器内で抽出し(300バール、40℃で4時間)、18重量%のコレステロールおよびコレステロールエステルを含む180gの澄んだ橙褐色(orange−brown)の油を除去した。回収された、粗い粉末の形態の粒子状MPL組成物は、約21重量%の全脂質含有量を含み、その主な割合は、極性ホスホリピド(約17重量%)であり、そして4重量%は中性脂質である。このホスホリピドの約70重量%はホスファチジルコリンであり、これは、少なくとも30重量%のHUFASを含有する。この組成物の約70重量%は、タンパク質性海洋材料であり、約8重量%の無機質および微量元素を含む。この組成物は、いくぶん(mild)魚のような食味および匂いがあり、3以下の過酸化物価を有し、機能性食品への適用では、そのまま使用され得るかまたは適切な賦形剤と混合され得る。栄養補助物質として経口的に使用するためには、300mgの単位用量の粉末が、ハードゼラチンカプセルに充填され得る。この粉末はまた、錠剤に変換され得る。必要に応じて、このMPL組成物は、生物学的に活性な化合物を含有し得る。
【0061】
シシャモ卵の代わりに、ニシンもしくはタラの卵が使用され得る。この実施例で使用され得る代替的な乾燥した開始材料は、オキアミに由来する。
【0062】
(実施例2)
実施例1に由来する820gの粉末組成物を、この粉末に対して5:1、3:1および2:1比のエタノール(水を6%含有する)を用いて、連続的に3回抽出し、ホスホリピドを抽出する。約160gのワックス状材料(主成分としてホスホリピドを、少量の中性脂質とともに含む)を得る。代表的な精製組成物は、以下を含有する:
極性脂質:82重量%
PC含有量:72重量%
エステル化HUFA:(全脂質に基づいて、PCの)33重量%
非極性(中性)脂質:13重量%
遊離脂肪酸:5重量%
コレステロール/エステル:4重量%
ヨウ素価:112(110〜130の範囲)
無機質(灰分):2重量%
エタノール:2.2重量%
水:1.9重量%
MPL組成物を、50重量%の油(魚油、植物油、もしくはミグリオール(Miglyol)のような中鎖脂肪酸)とブレンドして、流動性の親油性組成物を調製し得る。あるいは、これをまた、グリセロール中で、室温で一晩水和して、親水性組成物を調製し得る。この脂質組成物は、経口的に使用するためにソフトゼラチンカプセル中に充填され得るか、または実施例1でのように、魚および幼生の飼料に使用され得る。
【0063】
(実施例3)
72重量%のPCを含むMPL(*) 50重量%
グリセロール90% 50重量%
(*)約40%のPCを含むMPLを、また使用し得る。
【0064】
MPLを、グリセロールの溶液中で、室温で一晩水和し、粘性のあるゲル様のMPL濃縮物を調製する。
【0065】
(実施例4)
実施例3由来のMPL濃縮物を、25重量%までの親油性栄養成分(魚のトリグリセリドであり得る)および抗酸化剤(例えば、ビタミンE、アスコルビン酸パルミテート、t−ブチル化ヒドロキシトルエン、t−ブチル化ヒドロキシアニソール、アスコルビン酸もしくはエトキシキン)と混合する。加えて、25重量%〜50重量%の親水性魚用飼料成分(例えば、魚タンパク質加水分解物)を添加し得る。水溶液中の2重量%アルギン酸ナトリウムを、この実施例に示されるように、MPL濃縮物に添加し得る。結果として得られた脂質の水性懸濁物を、栄養成分とともに凝集させ、そしてアルギネートを使用して、Ca++イオンを含む槽中のこの組成物中で、このアルギネートが架橋結合してWO 0027218に記載されるような微粒子を調製することによって、飼料微粒子を調製する。微粒子を回収し、乾燥させる。代表的組成物を、以下に例示する。
【0066】
MPL(約70重量%のPCを含む)(*) 20.0重量%
グリセロール(70%) 10.0重量%
水(2%アルギン酸ナトリウムを含有する) 19.5重量%
魚油10.0重量% (親水性栄養成分)
魚タンパク質加水分解物(親水性栄養成分) 40.0重量%
混合抗酸化剤(トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート) 0.5重量%
(*)約40重量%の最低PC含有量を含むワックス状のMPL組成物を、また使用し得る。
【0067】
乾燥組成物を含有する、ヒト、飼料および水産養殖目的に適切な海洋ホスホリピド(MPL)組成物を、記載する。この乾燥組成物は、乾燥された海洋原材料の流体抽出物によって得られる海洋ホスホリピド、海洋タンパク質およびアミノ酸ブレンドからなる群から選択される栄養成分を含有する。この組成物は、少量の中性脂質、および特に少量のコレステロールおよびコレステロールエステルを有する。これらは、粉末形態のものとしてか、およびエタノール抽出によって精製MPL組成物を調製するためかのいずれかで使用され得る。どちらの形態も、それ自身でかもしくは生物学的に活性な化合物と組み合わせて、栄養補助物質、機能性食品の成分として使用され得るか、または多成分魚用飼料組成物への栄養成分の送達および封じ込めを最適化するために使用され得る。
【0068】
精製され、エタノール抽出されたMPL組成物のブレンドをさらに記載する。これは、海洋油、植物性油もしくは中鎖トリグリセリド油と混合されて、ハードもしくはソフトのゲルへの封入のための脂質調製物を調製する。
【0069】
親水性媒体中に分散された、精製され、明瞭に規定されたホスホリピド型を含有するMPL濃縮物を、さらに記載する。これは、幼生の飼料として栄養学的に必須である。やはりさらに、栄養補助物質としての単位投薬形態でのMPL濃縮物を記載する。これは、ヒトが使用するために、必要に応じて生物学的に活性な化合物とともに、生体適合性の高いω−3脂肪酸を供給する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋ホスホリピド(MPL)組成物であって、該組成物は、ヒト、エサまたは養殖漁業の用途に適しており、乾燥した海洋原材料の流体抽出物より得えることが可能な海洋ホスホリピド、海洋タンパク質およびアミノ酸混合物よりなる群から選択される栄養成分を含む乾燥組成物を含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ここで前記乾燥組成物は、粒子形態のまたは粉末形態で存在する、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、ここで前記乾燥組成物は、主要量の極性脂質およびより少量の非極性(中性)脂質を含有する、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、ここで前記乾燥組成物は、
I)10重量%〜30重量%の極性脂質および中性脂質;ならびに
II)70重量%〜90重量%の海洋タンパク質およびアミノ酸混合物を含有する、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、ここで前記乾燥組成物は、
I)15重量%〜30重量%の極性脂質および中性脂質;
II)70重量%〜85重量%の海洋タンパク質、アミノ酸混合物およびミネラルを含む、組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の組成物であって、ここで前記総脂質含量は、70重量%〜95重量%の極性脂質から構成され、そして5重量%〜30重量%は中性脂質から構成される、組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の組成物であって、ここで前記総脂質含量は、80重量%〜95重量%の極性脂質から構成されそして5重量%〜20重量%は中性脂質から構成される、組成物。
【請求項8】
請求項4に記載の組成物であって、ここで40重量%〜80重量%の前記極性脂質は、ホスファチジルコリンおよびそのモノアシル誘導体から構成され、ここで該ホスファチジルコリンおよびそのモノアシル誘導体は、30重量%〜60重量%HUFAを伴うエステル型である、組成物。
【請求項9】
請求項4に記載の組成物であって、ここで20重量%〜60重量%の前記極性脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンおよびそのモアシル誘導体からなる群から選択されるホスホリピドから構成される、組成物。
【請求項10】
請求項4に記載の組成物であって、該組成物は、エタノール抽出により調製され、ワックス状構造を得る、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物であって、該組成物は、
i)70重量%〜95重量%の極性脂質および中性脂質;
ii)5重量%〜30重量%の中性脂質を含有する、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、該組成物は、ハードまたはソフトゼラチンカプセル中で使用するため、30重量%〜60重量%の魚油または任意の他の食用中性油とブレンドされた、組成物。
【請求項13】
均質な水分散性MPL濃縮物であって、該濃縮物は、
i)25重量%〜75重量%の海洋ホスホリピド;
ii)15重量%〜75重量%のエタノールまたは少なくとも一つのポリオールもしくはその混合物
iii)100%にするための水;ならびに、
iv)必要に応じてさらにポリマー、栄養成分、安定剤、保存薬および抗酸化物質よりなる群から選択される添加物を含有する、濃縮物。
【請求項14】
請求項1、4、10および11に記載の組成物であって、該組成物は、大豆ホスホリピド、植物ホスホリピド、卵ホスホリピド、半合成ホスホリピド、酵素改変されたホスホリピドおよび必要に応じて生物学的に活性な化合物よりなる群から選択されるホスホリピドと均一に混合される、組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のMPL組成物をさらに加工するための方法であって、該方法は、前記乾燥組成物から前記海洋タンパク質およびアミノ酸混合物を分離する工程を包含する、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の水分散性MPL濃縮物をさらに加工するための方法であって、該方法は、水中に該濃縮物を分散する工程、ならびに魚および/または幼生に該分散を投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
ヒトまたは養殖漁業の用途に適したワックス状の海洋ホスホリピド(MPL)組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、乾燥した海洋原材料を流体抽出に供することにより乾燥組成物を調製する工程を包含し、該乾燥組成物は、海洋ホスホリピド、海洋のタンパク質、アミノ酸およびミネラルブレンドよりなる群から選択された栄養成分を含む、プロセス。
【請求項18】
請求項1に記載の海洋ホスホリピド組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、前記乾燥した海洋原材料をアセトンを用いた流体抽出に供することにより前記乾燥組成物を調製する工程を包含する、プロセス。
【請求項19】
請求項1に記載の海洋ホスホリピド組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、前記乾燥させた海洋原材料を臨界超過のガスを用いた流体抽出に供することにより前記乾燥組成物を調製する工程を包含する、プロセス。
【請求項20】
水分散性MPL濃縮物を、MPL組成物から調製するプロセスであって該プロセスは、液体およびエタノール抽出を包含する、プロセス。

【公表番号】特表2006−507846(P2006−507846A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510238(P2005−510238)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013299
【国際公開番号】WO2004/047554
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(504438358)ファレス ファーマシューティカル リサーチ エヌ.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】