説明

海藻類調味料および食品

【課題】海藻類から有用成分を抽出する方法については、従来から種々の方法が検討されているが、多くは抽出に時間がかかり、また、無機質成分のみを抽出するには不適であったことから、より短時間でより簡便な方法で海藻類に含まれる有効成分の内の無機質成分を効率よく抽出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】 海藻類を焼成処理する工程およびそれにより得られた焼成物を水または熱水抽出する工程を含むことを特徴とする海藻類抽出組成物を製造し、抽出組成物を含有することを特徴とする調味料または食品または飲料、並びに化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の抽出組成物及びそれらの製造方法並びにそれら抽出組成物を含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海藻類には様々な栄養成分が含まれることが知られている。最近では、昆布の食物繊維や多糖類のひとつであるフコダインの作用が注目され、昆布の加工食品やフコイダンなどの健康食品の開発が進んだ。
しかしながら、海藻類に豊富に含まれる海洋ミネラル成分やその他成分を活用した商品は今のところ殆ど無いのが現状である。例えば、海藻類の中でも昆布に最も多く含まれるヨウ素は、甲状腺ホルモンの原料になり、基礎代謝を活発にしたり、交感神経に作用してたんぱく質や脂質・糖質の代謝を促進する働きがあることが知られている。
他にも、アミノ酸の一種で昆布のうまみ成分であるグルタミン酸は、脳の機能を活性化させ、ボケや痴呆の予防に効果があると考えられており、骨や歯を丈夫にするカルシウムや、むくみを改善し高血圧を予防する効果があるカリウム、ビタミン類など、昆布には人体に有益な栄養素が豊富にバランス良く含まれている。また、昆布に代表される海藻類は豊富な海洋・栄養成分を持ちながら極めて低カロリーな食材であり、健康に気を遣う方や、ダイエットしたい方、肌を若々しく保ちたい方、頭髪の健康に気を遣う方にお勧めしたい食材でもある。
現在、海藻類のなかで商品にならない部分は、その殆どが廃棄処分されているのが現状である。例えば、昆布の根や耳といわれる昆布の端の部分は、そのままでは食用に加工しにくく一部が健康食品や調味料用の原料として用いられているものの殆どが廃棄処分されている。これら廃棄処分されている部分にも同じように栄養成分を含有し、栄養価の高い貴重な生物資源である。
【0003】
昆布を含む海藻類からそのエキスを抽出する方法については、従来から種々の方法が検討されている。例えば、熱水で抽出する方法(特許文献1〜3参照)、酸性溶液で抽出する方法(特許文献4参照)、含水有機溶媒で抽出する方法(特許文献5参照)、超音波処理で細胞破砕して抽出する方法(特許文献6参照)、加圧下で熱処理抽出する方法(特許文献7参照)等がある。しかしながら、上述した抽出法の多くは、抽出に時間がかかり、また、得られる抽出物の収率が低く大量の産業廃棄物(残渣)が生じることが課題の一つとなっていた。また、上述の抽出方法では無機質成分のみを抽出するには不適であった。
【特許文献1】特公昭50−11980号公報
【特許文献2】特開平01−157363号公報
【特許文献3】特開平11−113529号公報
【特許文献4】特公昭52−48184号公報
【特許文献5】特開昭62−294068号公報
【特許文献6】特開昭58−149666号公報
【特許文献7】特開2006−320320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記従来の問題点を解決することである。本発明の課題は、より短時間でより簡便な方法で海藻類に含まれる有効成分の内の無機質成分を効率よく抽出する方法を提供することである。
【0005】
本発明の他の課題は抽出動作の制御が容易で、得られる海藻類抽出組成物の収率に優れた製造方法を提供することである。さらに、この製造方法により得られた海藻類抽出組成物を調味料として含む食品全般、化粧料及び健康食品等に応用して利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
海藻類を焼成処理する工程およびそれにより得られた焼成物を水または熱水抽出する工程を含むことを特徴とする海藻類抽出組成物の製造方法。ここでの「抽出組成物」とは、上記の抽出操作により得られる水溶性成分の混合物をいい、水溶液、その濃縮物又は乾燥物として利用できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め海藻類を焼成処理することにより、簡便な方法で必要とする海藻類抽出組成物を短時間で製造することができる。さらに、抽出操作を容易に制御でき、海藻類構成成分の収率に優れる。さらに、上記の製造方法により得られた海藻類抽出組成物は調味料を含む食品全般、化粧料または健康食品等に添加して効果的に利用することが可能である。
【0008】
また、本発明によれば、海藻類を原料とした、廃棄物の少ない海藻類抽出組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の海藻類抽出組成物の製造方法は、海藻類を100度から800度、好ましくは500度から700度で焼成処理する工程を含むことを特徴とし、焼成処理した焼成物を、無機質が溶出できる水溶液、例えば、0度から100度の水または熱水、好ましくは100度の熱水で抽出する。
【0010】
抽出は水溶液に焼成物を浸出して行うことができるが、この限りではない。また抽出時間について厳密な時間は設けないが、10分〜60分間くらいが適度である。
【0011】
本発明の製造方法では、海藻類に含まれる無機質成分を効率よく抽出することが可能となる。
【0012】
本発明において海藻類とは、海中に生育する食用等の有用な植物をいい、具体的には、アオノリ類、アオサ類、ミル類等の緑藻類、ワカメ類、コンブ類、ヒジキ類、モズク類、ホンダワラ類等の褐藻類、アマノリ類、テングサ類等の紅藻類、クダモ類、ヒゲモ類等の藍藻類などが例示できるが、これらに限られたものではない。これらの中でも、褐藻類は最も好ましく、特に、ワカメ類、コンブ類及びモズク類よりなる群から選ばれる少なくとも1つの海藻類を使用することが好ましい。コンブ類は褐藻類コンブ属藻類の総称でマコンブ、リシリコンブ、ナガコンブ、ガゴメを例示できる。海藻類は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、海藻はその全体を使用することもできるし、一部分のみを使用することもできる。例えば、ワカメの根本の胞子嚢であるメカブやマコンブの根などを使用することが例示できる。本発明においては、コンブ、ワカメを好ましく用いることができ、中でも、ガゴメやワカメのメカブを使用することも好ましい。
【0013】
海藻類は、原藻のままでも使用できるが、予め細片状又はプレス加工しておくことが好ましく、予め乾燥・破粉された海藻類を使用することが特に好ましい。このような海藻類を使用することにより、焼成処理工程を短縮することが可能である。
【0014】
本発明において水性媒体とは、無機質を溶出することができる水溶液であり、軟水又はイオン交換水が好ましいが、これに限ったものではない。
【0015】
抽出処理後の溶液は、目的に応じて更に固形分を分離する工程および可溶性成分を濃縮する工程又は固化する工程を施すことが好ましい。固形分を分離する方法としては、公知の分離方法は何れも使用することができる。具体的には、遠心分離、濾過、圧搾などが例示できる。これらの中でも、遠心分離、遠心濾過又は加圧濾過により固形分を分離することが好ましい。また、可溶性成分(抽出液)は、そのまま食品や化粧料等に使用することもできるが、保存性の観点から、所望により固化することが好ましい。固化する方法は特に限定されないが、噴霧乾燥や凍結乾燥、天日干しや煎ることにより固化粉末化することができる。
【0016】
本発明の製造方法によって得られた海藻類抽出組成物は、種々の目的に使用することができる。具体的には、得られた海藻類抽出組成物の濃縮液及び/又はその固化物を調味料、化粧料、健康食品等に添加することができる。また、加熱処理により得られた海藻類抽出組成物を含む水溶液をストレートタイプとして原液のまま使用することもできる。
また、得られた海藻類抽出組成物の水溶液、その濃縮物及び/又はその固化物を、そのまま調味料を含む食品全般または健康食品として使用することもできる。
【0017】
具体的には、得られた海藻類抽出組成物の水溶液を乾燥して粉末化した後、これを水に再溶解して、和風だし汁等として使用することができる。海藻類抽出組成物の乾燥方法としては、公知のいかなる乾燥方法も使用することができ、その目的に応じて、公知の乾燥方法を適宜選択することが好ましい。海藻類抽出組成物の乾燥物は、いかなる形状とすることもできるが、粉末状、顆粒状にすることが好ましく、粉末状とすることがコスト上より好ましい。
【0018】
健康食品として使用する場合、本発明の海藻類抽出組成物は、いかなる形態で摂取することもできるが、日常的に簡易に摂取できるよう、粉末剤、錠剤、カプセル剤などの剤形で摂取することが好ましく、これらの中でも錠剤とすることが特に好ましい。錠剤としては素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠などを例示できるが、本発明はこれに限定されない。以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0020】
製造例〔昆布に含まれる無機質の抽出分離〕
乾燥昆布1kgをミキサーで粗く粉砕し、電気炉(ASH社製AMF−20S)を用いて500度に設定して昆布を30分間焼成した。焼成後、室温に戻して焼成物を294g得た。
【0021】
焼成物を10倍量の蒸留水にて1時間攪拌をしながら抽出を行い、ろ紙(ワットマンNo.1)を用いてろ過して焼成物残渣を取り除いた。
【0022】
ろ過した水溶液をビーカーに入れ、加熱して水分を蒸発させた。24時間乾燥機(60度)に入れて完全に乾燥させて結晶物130gを得た。
【0023】
同様にして、700度で30分間焼成した場合は、結晶物を154g得た。800度で30分間焼成した場合は、結晶物を159g得た。
【0024】
実施例〔結晶物の成分分析〕
結晶物100gを蛍光X線オーダー分析により無機質成分の測定を行った。
【0025】
これらの結果を表1に示した。表に示すように無機質成分としてCl(クロライド)、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Si(ケイソ)、S(イオウ)、Fe(鉄)、Sr(ストロンチウム)、I(ヨウ素)、Al(アルミニウム)、P(リン)、Br(臭素)が含まれる。
焼成温度の違いによって各ミネラルの含有量が少し変わるが、ミネラルの種類に違いは見られない。
【0026】
【表1】

【産業上の利用の可能性】
【0027】
本発明により、海藻類を用いた無機質の調味料が提供され、不足しがちなミネラル成分をバランスよく摂取することによって、特にナトリウムの摂取が気になる方などにとって、高血圧の予防や改善に資することができる。
本発明に関わる海藻類抽出無機質成分は、天然物由来であることから、安全、かつ安心した摂取が可能であり、様々な飲食物等に広く応用され,生活習慣病等の予防や国民の健康の維持・増進により国民生活の向上に資することが期待できる。
【表の簡単な説明】
【0028】
【表1】
各温度による焼成物から得られた抽出物中の無機質成分(%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻類を焼成処理することを特徴とする焼成物から、無機質を溶出することができる水溶液によって得られる抽出組成物。
【請求項2】
請求項1記載の抽出組成物を含有することを特徴とする調味料または食品または飲料並びに化粧料。

【公開番号】特開2010−187651(P2010−187651A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60209(P2009−60209)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(509071817)
【Fターム(参考)】