説明

浸漬処理装置および浸漬処理装置の運転方法

【課題】短時間で、且つ処理溶液に混入している異物を確実に濾過することができる浸漬処理装置および浸漬処理装置の運転方法を提供する。
【解決手段】貯留した処理溶液により、浸漬した処理対象物の表面処理を行う処理タンク2と、処理タンク2以上の容量を有するバッファタンク3と、処理タンク2とバッファタンク3とを相互に接続する循環流路4と、処理タンク2とバッファタンク3との間に処理溶液を送液する送液手段と、循環流路4に介設したフィルタ6と、送液手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、処理タンク2に貯留された処理溶液の濾過時に、処理タンク2に貯留している全ての処理溶液をバッファタンク3に送液した後、バッファタンク3から処理タンク2に送液する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を処理溶液に浸漬することにより、処理対象物に表面処理を行う浸漬処理装置および浸漬処理装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコーティング装置(浸漬処理装置)として、ワークに対して表面処理を行なう浸漬槽(処理槽)と、浸漬槽からオーバーフローしたコーティング用液体(処理溶液)を回収する貯液槽(補充槽)と、貯液槽と浸漬槽とを接続する配管と、配管に介設され、コーティング用液体中に混入した異物を除去するフィルタと、配管に介設され、貯液槽のコーティング用液体を浸漬槽に送液するポンプと、を有するものが知られている(特許文献1参照)。このコーティング装置では、ワークの浸漬によって浸漬槽からオーバーフローしたコーティング用液体を貯液槽に受けると共に、ポンプを駆動することで、貯液槽のコーティング用液体の異物をフィルタにより濾過した後に浸漬槽に戻すようにしている。
【特許文献1】特開2004−113935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、従来のコーティング装置では、ワークの浸漬により浸漬槽からオーバーフローしたコーティング用液体のみを循環させながら濾過作業を行っているため、浸漬槽のコーティング用溶液に多くの異物が残留してしまうと共に、混入している異物を完全に除去するには多くの時間を要するという問題があった。
【0004】
本発明は、短時間で、処理溶液に混入している異物を確実に濾過することができる浸漬処理装置および浸漬処理装置の運転方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の浸漬処理装置は、貯留した処理溶液により、浸漬した処理対象物の表面処理を行う処理タンクと、処理タンクの容量以上の容量を有するバッファタンクと、処理タンクとバッファタンクとを相互に接続する循環流路と、循環流路に介設され、処理タンクの処理溶液をバッファタンクに送液すると共に、バッファタンクの処理溶液を処理タンクに送液する送液手段と、循環流路に介設したフィルタと、送液手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、処理タンクに貯留された処理溶液の濾過時に、処理タンクに貯留している全ての処理溶液をバッファタンクに送液した後、バッファタンクから処理タンクに送液することを特徴とする。
【0006】
本発明の浸漬処理装置の運転方法は、処理タンクの処理溶液を、フィルタを介設した循環流路を介して循環させることで、処理溶液を濾過する浸漬処理装置の運転方法において、循環流路に、処理タンクの処理溶液を全て抜き取るバッファタンクを設け、処理タンクの全ての処理溶液をバッファタンクにいったん抜き取った後、処理タンクに戻すことを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、処理溶液を濾過するときに、処理タンクの全ての処理溶液をバッファタンクにいったん抜き取った後、処理タンクに戻すようにしている。その際、循環流路を流れる処理溶液は、循環流路に介設したフィルタを通過し、濾過される。この場合、処理タンクの全ての処理溶液をいったん抜き取るため、処理タンクに異物が残ることがない。また、循環流路を介して処理タンクからバッファタンクへ、更にバッファタンクから処理タンクへ送液するだけで、全ての処理溶液を濾過することができる。したがって、処理溶液に混入している異物を確実に濾過することができると共に、処理溶液全体の濾過作業を短時間で行うことができる。
【0008】
この場合、循環流路は、処理溶液を、処理タンクからバッファタンクに送液するための往流路と、バッファタンクから処理タンクに送液するための返流路と、を有し、送液手段は、往流路に介設した循環往ポンプと、返流路に介設した循環返ポンプと、を有していることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、循環往ポンプで処理タンクからバッファタンクへの処理溶液の送液を行い、循環返ポンプでバッファタンクから処理タンクへの処理溶液の送液を行なって、処理溶液の濾過が行われる。したがって、処理タンクおよびバッファタンクの設置位置の上下に関わらず、短時間で処理溶液を送液することができ、濾過作業をより一層、短時間で行うことができる。
【0010】
この場合、循環往ポンプの下流側の往流路には、分岐切替バルブを介して処理溶液を廃棄するための廃液タンクが接続されていることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、往流路の一部を処理タンクから廃棄タンクに処理溶液を送液する流路として利用することができると共に、循環往ポンプを廃棄のための駆動源として利用することができるため、装置の構造を簡単にすることができる。
【0012】
この場合、循環返ポンプの上流側の返流路には、合流切替バルブを介して処理溶液を供給するための給液タンクが接続されていることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、返流路の一部を給液タンクから処理タンクに処理溶液を送液する流路として利用することができると共に、循環返ポンプを駆動源として利用することができるため、装置の構造を簡単にすることができる。
【0014】
この場合、バッファタンクの底部には、返流路の上流端が接続される集液部が設けられ、バッファタンクの底面は、集液部に向って導水勾配を有していることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、送液終了直前において、バッファタンク内の処理溶液が残り少なくなると、処理溶液は底部の導水勾配によって集液部に集液される。このため、処理タンクに処理溶液を戻した(送液)ときに、バッファタンクに処理溶液が残ることがなく、全ての処理溶液をバッファタンクから処理タンクに確実に送液することができる。
【0016】
この場合、処理タンクは、処理対象物の表面処理を行なう処理槽と、処理槽に処理溶液を補充するための補充槽と、処理槽と補充槽とを区画すると共に、処理槽から補充槽に流れる処理溶液の堰として機能する隔壁と、を有し、往流路の上流端は、処理槽および補充槽に流路切替え可能に接続され、返流路の下流端は、補充槽に接続され、循環往ポンプより上流側の往流路と、循環返ポンプの上流側の返流路と、を接続するバイパス流路、を更に備え、制御手段は、循環返ポンプを駆動し、バイパス流路を介して、補充槽の処理溶液を隔壁からオーバーフローするように処理槽に補充することが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、例えばワークの浸漬により、処理槽からオーバーフローした処理溶液を補充槽で回収することができると共に、循環返ポンプを駆動することで、目減りした処理槽の処理溶液を補充槽から満杯となるように補充することができる。さらに、往流路および返流路の一部をバイパス流路の一部として利用すると共に、循環返ポンプを処理溶液を補充するためのポンプとして利用することができる。このため、装置構成を単純化することができる。
【0018】
この場合、循環返ポンプより下流側の返流路には、処理溶液の送液の有無を検出する送液センサが介設され、制御手段は、循環返ポンプがバッファタンクから処理タンクに送液を開始した後、送液センサが「無」を検出したときに、循環返ポンプを停止させることが、好ましい。
【0019】
同様に、返流路の下流端と処理タンクとの間に介設され、バッファタンクから送液された処理溶液を受容した後、自然流下で処理タンクに供給するサブタンクを、更に備えたことが、好ましい。
【0020】
これらの構成によれば、処理タンクへの送液終了直前に、エアー混じりの処理溶液が処理タンクに流入することがない。したがって、処理溶液内を浮上した気泡の崩壊による、処理溶液の処理タンク外部への飛散を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る浸漬処理装置および浸漬処理装置の運転方法について説明する。この浸漬処理装置は、溶媒および溶質からなる処理溶液にワークを浸漬してコーティング等の表面処理を行う、いわゆるDipコータである。
【0022】
図1に示すように、浸漬処理装置1は、貯留した処理溶液により、浸漬したワークWの表面処理を行なう処理タンク2と、処理タンク2の全ての処理溶液を一時的に貯留するバッファタンク3と、処理タンク2およびバッファタンク3を相互に接続する循環流路4と、循環流路4を介して処理タンク2およびバッファタンク3間で処理溶液を送液する送液装置5と、循環流路4に介設され、処理溶液に混入した異物を濾過するフィルタ6と、溶媒を貯留する給液タンク7と、廃棄する処理溶液を貯留する廃液タンク8と、本装置の運転を制御する制御装置と、を有している。循環流路4は、処理タンク2からバッファタンク3に処理溶液を導く往流路21と、バッファタンク3から処理タンク2に処理溶液を導く返流路25とで構成され、また、送液装置5は、往流路21に介設した循環往ポンプ36と、返流路25に介設した循環返ポンプ44とで構成されている。
【0023】
処理タンク2は、浸漬することでワークWの表面処理を行う処理槽11と、主に処理槽11に補充するための処理溶液を貯留する補充槽12と、を有している。処理槽11および補充槽12は、隔壁13により区画されており、隔壁13は、処理タンク2の周壁より低く設計されている。処理槽11の底部には、返流路25の下流端が接続され、処理槽11および補充槽12の底部には、合流部24を介して往流路21の上流端が接続されている。なお、図示では省略したが、処理タンク2には蓋体が開閉自在に設けられている。
【0024】
処理槽11および補充槽12に貯留されている処理溶液は、給液タンク7から処理タンク2に供給された溶媒に、所定の濃度となるように少量の溶質を直接投入して調整したものであり、処理にあたり、適宜フィルタリングを実施しながら使用し、汚れが目立ってきたとこで廃棄するようになっている。一方、ワークWは、数枚から数十枚を単位として、一括して浸漬処理する。ワークWの浸漬(処理)にあたっては、処理溶液を隔壁13からオーバーフローさせるようにして処理槽11を満杯にしておく。また、ワークWの浸漬によりオーバーフローした処理溶液は、ワークWの徐給材(交換)の際に補充槽12から補充する。そして、補充槽12から処理槽11への処理溶液の補充は、上記の循環返ポンプ44により行い、且つこの循環往ポンプ36により、上記の溶媒と溶質との混合も行う。
【0025】
バッファタンク3は、処理タンク2より低い位置に配設され、処理タンク2から抜き取るように送液された処理溶液を貯留する。バッファタンク3の容量は、処理タンク2の容量と同等か、大きい容量を有している。バッファタンク3の底部には、集液部14が設けられており、集液部14に処理溶液が集まるようにバッファタンク3の底面は、集液部14に向って所定の導水勾配を有している。すなわち、処理タンク2に貯留している全ての処理溶液がバッファタンク3に貯留することができると共に、バッファタンク3に貯留された全ての処理溶液を処理タンク2に送液できるようになっている。そして、バッファタンク3の上部には、上記の往流路21の下流端が接続され、集液部14には、上記の返流路25の上流端が接続されている。これにより、バッファタンク3の処理溶液を処理タンク2に送液したときに、バッファタンク3に処理溶液が残ることがない。
【0026】
往流路21は、処理槽11の底面に接続された処理側短流路22と、補充槽12の底面に接続された補充側短流路23と、合流部24を介して両短流路22,23の下流端からバッファタンク3に至る主往流路27と、で構成されており、主往流路27の下流側には、分岐部を介して廃液タンク8に至る廃液流路26が接続されている。処理側短流路22および補充側短流路23には、それぞれ処理側開閉バルブ31および補充側開閉バルブ32がそれぞれ介設されており、また主往流路27と後述するバイパス流路33との分岐部には、第1分岐切替バルブ34が介設されている。同様に、主往流路27と廃液流路26との分岐部には、第2分岐切替バルブ35が介設され、第1分岐切替バルブ34と第2分岐切替バルブ35との間の主往流路27には、処理タンク2の処理溶液をバッファタンク3に送液する循環往ポンプ36が介設されている。第1分岐切替バルブ34は、主往流路27とバイパス流路33との間で流路の切替えを行い、第2分岐切替バルブ35は、主往流路27と廃液流路26との間で流路の切替えを行う。
【0027】
一方、返流路25は、上流端をバッファタンク3の集液部14に接続され、下流端を処理槽11の底部に接続されており、上流側には合流部を介して給液タンク7に至る給液流路41が接続されている。そして、この合流部には、返流路25と給液流路41との流路切替えを行う第1合流切替バルブ42が介設されている。第1合流切替バルブ42の下流側の返流路25には、第2合流切替バルブ43が介設されており、第2合流切替バルブ43には、バイパス流路33が接続されている。すなわち、バイパス流路33は、循環流路4をショートカットするように介設されている。第2合流切替バルブ43の下流側の返流路25には、上記の循環返ポンプ44が介設され、また循環返ポンプ44下流側の返流路25には、上記のフィルタ6が介設されている。さらに、フィルタ6の下流側に位置して返流路25には、送液の有無を検知する送液センサ45が設けられている。
【0028】
バイパス流路33は、その一端が循環往ポンプ36の上流側の往流路21に設けた第1分岐切替バルブ34に接続され、他端が返流路25の循環返ポンプ44の上流側に設けた第2合流切替バルブ43を介して接続されている。例えば、処理溶液を補充槽12から処理槽11に補充する場合、循環返ポンプ44を駆動させ、このバイパス流路33を介して、補充槽12から処理槽11へ処理溶液を送液する。なお、バイパス流路33は、循環往ポンプ36の下流側と循環返ポンプ44の下流側とを接続するものであってもよく、かかる場合には、循環往ポンプ36の駆動により送液を行う。
【0029】
フィルタ6は、循環返ポンプ44と送液センサ45の間に介設され、ワークWに付着していた異物や、処理溶液が空気中の水分と反応して生ずるゲル状の反応物を濾過する。実施形態のものでは、処理タンク2の処理溶液をいったんバッファタンク3に抜き取ってから、フィルタ6に通液するようにして、全処理溶液を一括してフィルタリングするようになっている。なお、フィルタ6は、循環流路4のいずれかの位置、すなわち返流路25は元より往流路21のいずれかの位置に介設されていればよい。
【0030】
送液センサ45は、フィルタ6と補充槽12との間に介設された流量センサ等から成り、処理タンク2へ送液される処理溶液の有無を検出する(実際には、流速を計測している。)。処理溶液の処理槽11への送液が完了し、送液センサ45が「無」を検出すると、制御装置は、循環返ポンプ44を停止させ、送液を終了させる。好ましくは、送液センサ45から処理槽11までの送液時間を予め把握しておき、送液センサ45が「無」を検出してからこの送液時間分遅延させて、循環返ポンプ44を停止させる。これにより、処理溶液を返流路25に残すことなく処理タンク2に送液することができ、且つ送液完了時のエアー混じりの処理溶液が、処理タンク2に吹き込むことがない。なお、送液センサ45は、循環返ポンプ44とフィルタ6との間に介設されていてもよい。
【0031】
一方、給液タンク7は、溶媒を処理タンク2に供給するものであり、溶媒運搬用のボトルをそのまま転用している。すなわち、購入したボトルをそのまま設置し、その流出入口に、ワンタッチの接続具を介して返流路25(チューブ)を接続するようにしている。また、廃液タンク8も、同様の構造となっている。なお、図中の符号52は、給液タンク7を交換するときにのみ「閉」としておく、タンク専用バルブである。
【0032】
制御装置は、特に図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等により主要部が構成され、後述する各種の運転形態別に、各バルブ31,32,34,35,42,42および両循環ポンプ36,44を制御する(図1参照)。
【0033】
次に、図1を参照して、浸漬処理装置1の運転方法を説明する。浸漬処理装置1の運転動作には、浸漬処理に使用する処理溶液を調整する調整動作と、処理溶液を補充する補充動作と、処理溶液中の異物を除去する濾過動作と、使用済みの処理溶液を廃棄する廃液動作と、がある。
【0034】
調整動作では、給液タンク7に貯留している溶媒と部外の溶質とを混和させて、処理溶液を調整する。先ず、第1合流切替バルブ42を給液流路41側に切り替えると共に第2合流切替バルブ43を返流路25側に切り替えた後、循環返ポンプ44を駆動する。これにより、給液タンク7の溶媒を処理タンク2に送液し、その後、所定の濃度になるように少量の溶質を直接添加する。次に、後述する補充動作と同様に、処理側開閉バルブ31を「閉」、補充側開閉バルブ32を「開」とし、また第1分岐切替バルブ34および第2合流切替バルブ43を、それぞれバイパス流路33側に切り替え、循環返ポンプ44を駆動する。これにより、補充槽12の処理溶液は、補充側短流路23、主往流路27、バイパス流路33、返流路25を通って処理槽11に送液され、処理槽11からオーバーフローして補充槽12に戻る。この循環動作を複数回(実際には、所定時間)繰り返すことにより、溶媒と溶質とが均一に混和する。
【0035】
補充動作では、上記と同様に、処理側開閉バルブ31を「閉」、補充側開閉バルブ32を「開」とし、また第1分岐切替バルブ34および第2合流切替バルブ43を、それぞれバイパス流路33側に切り替え、循環返ポンプ44を駆動する。これにより、補充槽12の処理溶液は、補充側短流路23、主往流路27、バイパス流路33および返流路25を介して、処理溶液が目減りした処理槽11に補充される。そして、処理槽11から処理溶液がオーバーフローしたところで、循環返ポンプ44を停止する。まお、補充される処理溶液は、自動的にフィルタ6を通過して濾過される。これにより、ワークWの浸漬する直前には、処理槽11の水位が復元する(満水にする)。
【0036】
濾過動作は、ワークWの浸漬処理によって処理溶液に混入した異物の除去が必要な場合に行い、処理溶液に混入している異物をフィルタ6により除去する。まず、処理側開閉バルブ31および補充側開閉バルブ32をそれぞれ「開」とし、第1分岐切替バルブ34および第2分岐切替バルブ35をそれぞれ主往流路27側に切替えて、処理タンク2とバッファタンク3を連通した後、循環往ポンプ36を駆動する。これにより、処理槽11および補充槽12に貯留している処理溶液は、それぞれ処理側短流路22および補充側短流路23から合流部24を介して主往流路27で合流し、いったんバッファタンク3に貯留(液抜き)される。
【0037】
次に、第1合流切替バルブ42および第2合流切替バルブ43を返流路25側に切替えて、バッファタンク3と処理タンク2を連通した後、循環返ポンプ44を駆動させる。これにより、バッファタンク3の処理溶液は、返流路25を通って処理槽11に送液される。このとき、処理溶液は、フィルタ6を通過し濾過される。すなわち、全ての処理溶液に混入する異物が濾過される。ここで、バッファタンク3から処理タンク2への送液中は送液センサ45が作動しており、制御装置は、送液センサ45が送液完了直前に「無」を検知すると、送液センサ45から処理タンク2に処理溶液が移動するための所要時間分だけ送液した後、循環返ポンプ44を停止する。これにより、一度の濾過作業で処理溶液内に混入している異物を全て除去することができる。
【0038】
廃棄動作では、処理側開閉バルブ31および補充側開閉バルブ32をそれぞれ「開」とし、第1分岐切替バルブ34を主往流路27側に切替えると共に、第2分岐切替バルブ35を廃液タンク8側に切り替えて、処理タンク2と廃液タンク8を連通させた後、循環往ポンプ36を駆動する。これにより、処理溶液に濾過しきれない異物が混入した場合あるいは経時的な劣化により交換が必要になった処理溶液は、それぞれ処理側短流路22および補充側短流路23から合流部24を介して主往流路27に合流し、廃液流路26を経て廃液タンク8に廃液される。
【0039】
以上の構成によれば、処理タンク2の処理溶液を、混入した異物と共に一時的にバッファタンク3に貯留し、その後フィルタ6を通過させることで異物を濾過するため、一度の濾過作業で処理溶液内に混入している全ての異物を短時間で、且つ確実に除去することができる。
【0040】
次に、図2を参照して、浸漬処理装置1の第2実施形態について説明する。重複記載を避けるべく異なる分部のみを記載する。この、浸漬処理装置1は、送液センサ45に換えて、処理タンク2の一次側にサブタンク50を設け、返流路25の下流端をサブタンク50に接続していることが第1実施形態と異なる。
【0041】
サブタンク50は、濾過された処理溶液を一時的に貯留するものであり、自然流下により処理溶液を処理タンク2に補充する。サブタンク50は、上蓋を有する開放タンクであり、上部に返流路25の下流端が接続され、底部が勾配を有する短管51を介して処理槽11に接続されている。バッファタンク3からの送液完了時に生ずるエアー混じりの処理溶液は、サブタンク50に流入するが、サブタンク50から処理槽11に流入する処理溶液は、気水分離されて処理槽11に流入する。したがって、処理溶液が処理タンク2から外部に飛散することがなく、処理溶液による周辺部品の汚染を防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態において、処理タンク2とバッファタンク3との水頭差が十分にとれ、且つ往流路21にエアー溜りが生じない構造であれば、循環往ポンプ36を省略し、これに代えて開閉バルブを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態にかかる浸漬処理装置の図である。
【図2】第2実施形態にかかる浸漬処理装置の処理タンク周辺の図である。
【符号の説明】
【0044】
1…浸漬処理装置 2…処理タンク 3…バッファタンク 4…循環流路 6…フィルタ 7…給液タンク 8…廃液タンク 11…処理槽 12…補充槽 14…集液部 21…往流路 25…返流路 33…バイパス流路 35…第2分岐切替バルブ 36…循環往ポンプ 42…第1合流切替バルブ 44…循環返ポンプ 45…送液センサ 50…サブタンク W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留した処理溶液により、浸漬した処理対象物の表面処理を行う処理タンクと、
前記処理タンクの容量以上の容量を有するバッファタンクと、
前記処理タンクと前記バッファタンクとを相互に接続する循環流路と、
前記循環流路に介設され、前記処理タンクの前記処理溶液を前記バッファタンクに送液すると共に、前記バッファタンクの前記処理溶液を前記処理タンクに送液する送液手段と、
前記循環流路に介設したフィルタと、
前記送液手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記処理タンクに貯留された前記処理溶液の濾過時に、前記処理タンクに貯留している全ての前記処理溶液を前記バッファタンクに送液した後、前記バッファタンクから前記処理タンクに送液することを特徴とする浸漬処理装置。
【請求項2】
前記循環流路は、前記処理溶液を、前記処理タンクから前記バッファタンクに送液するための往流路と、前記バッファタンクから前記処理タンクに送液するための返流路と、を有し、
前記送液手段は、前記往流路に介設した循環往ポンプと、前記返流路に介設した循環返ポンプと、を有していることを特徴とする請求項1に記載の浸漬処理装置。
【請求項3】
前記循環往ポンプの下流側の前記往流路には、分岐切替バルブを介して前記処理溶液を廃棄するための廃液タンクが接続されていることを特徴とする請求項2に記載の浸漬処理装置。
【請求項4】
前記循環返ポンプの上流側の前記返流路には、合流切替バルブを介して前記処理溶液を供給するための給液タンクが接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載の浸漬処理装置。
【請求項5】
前記バッファタンクの底部には、前記返流路の上流端が接続される集液部が設けられ、
前記バッファタンクの底面は、前記集液部に向って導水勾配を有していることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項6】
前記処理タンクは、前記処理対象物の表面処理を行なう処理槽と、前記処理槽に前記処理溶液を補充するための補充槽と、前記処理槽と前記補充槽とを区画すると共に、前記処理槽から前記補充槽に流れる前記処理溶液の堰として機能する隔壁と、を有し、
前記往流路の上流端は、前記処理槽および前記補充槽に流路切替え可能に接続され、前記返流路の下流端は、前記補充槽に接続され、
前記循環往ポンプより上流側の前記往流路と、前記循環返ポンプの上流側の前記返流路と、を接続するバイパス流路、を更に備え、
前記制御手段は、前記循環返ポンプを駆動し、前記バイパス流路を介して、前記補充槽の前記処理溶液を前記隔壁からオーバーフローするように前記処理槽に補充することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項7】
前記循環返ポンプより下流側の前記返流路には、前記処理溶液の送液の有無を検出する送液センサが介設され、
前記制御手段は、前記循環返ポンプが前記バッファタンクから前記処理タンクに送液を開始した後、前記送液センサが「無」を検出したときに、前記循環返ポンプを停止させることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項8】
前記返流路の下流端と前記処理タンクとの間に介設され、前記バッファタンクから送液された前記処理溶液を受容した後、自然流下で前記処理タンクに供給するサブタンクを、更に備えたことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の浸漬処理装置。
【請求項9】
処理タンクの処理溶液を、フィルタを介設した循環流路を介して循環させることで、前記処理溶液を濾過する浸漬処理装置の運転方法において、
前記循環流路に、前記処理タンクの前記処理溶液を全て抜き取るバッファタンクを設け、
前記処理タンクの全ての前記処理溶液を前記バッファタンクにいったん抜き取った後、前記処理タンクに戻すことを特徴とする浸漬処理装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−101292(P2009−101292A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275040(P2007−275040)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】