説明

消火用ハロンガスの回収・再充填方法及びその装置

【課題】消火用ハロンガスを高い回収率でありながら低コストで回収することのできる消火用ハロンガスの回収・再充填方法及びその装置を提供する。
【解決手段】消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器1から液化ハロンを液ポンプ3を使用して液回収タンク5に回収したのち、回収元容器1から気体成分を真空ポンプ6を使用してガス回収タンク8に回収し、液回収タンク5に回収した液化ハロンと、ガス回収タンク8に回収した気体成分とを充填用容器14に再充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火剤として使用されるハロンガスを回収し、再充填する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロン1301、ハロン1211に代表されるハロンガスは、その科学的性質や熱的性質を利用して、消火剤として窒素ガスと共に消火器などの消火設備に充填して使用されている。そして、ハロンガスを充填している消火器や消火設備は定期点検時等に充填されているハロンガスを抜き取ることになる。
【0003】
このとき、ハロンガスなどのフッ素系ガスを大気に放出すると、地球を取り巻くオゾン層破壊の原因になることから、フッ素系ガスの大気放出は規制の対象となり、1994年1月1日からハロン規制がおこなわれたため現在は製造されていないが、消防法上の失効を迎えていないため継続設置されている場合がある。そして、ハロン1301は二酸化炭素のような作動時の人体への被害が少ないこと、水などを使用しないことから、他の消火剤に置き換えにくい特定の区域(電気機器の設置区画や駐車場、図書室など)では、撤去や他の消火設備に交換され不要となったハロンを回収し、精製して供給される。
【0004】
このハロンを含むフッ素系ガスを回収するものとして、本出願人は、先に、貯蔵容器に貯蔵されている液化フッ素系ガスを、液体成分の大部分を自圧で回収タンクに送給し、ついで、貯蔵容器から取り出した気体成分を圧縮した後低温冷媒で冷却している冷却液化槽に導入して冷却液化し、この液化ガスを回収タンクに送給するように構成したフッ素系ガスの回収技術(特許文献1)や、貯蔵容器内に貯蔵されている液化フッ素系ガスを、液体成分の大部分を自圧で回収タンクに回収する第1回収手順と、第1回収手順終了後に貯蔵容器内の気体成分と加圧用ガス成分とを貯蔵容器の内圧力で冷却液化槽に供給してフッ素系ガスと加圧用ガス成分とに分離するとともに、フッ素系ガスを液化する第2回収手順と、貯蔵容器内に残留している気体成分を、吸引ポンプを介して冷却液化槽に導入し、冷却液化することにより、フッ素系ガスと加圧用ガスとに分離させるとともに、フッ素系ガスを液化する第3回収手順と、冷却液化槽を昇温して第2回収手順及び第3回収手順で液化したフッ素系ガスの液化ガスを液化タンクに回収する第4回収手順からなるフッ素系ガスの回収技術(特許文献2)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2599086号公報
【特許文献2】特許2691389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に提案した、フッ素系ガスの回収技術では、貯蔵容器から液体成分を取り出したのちの気体成分は冷却液化槽に導入して液化することで加圧用ガスと分離して回収するようにしているこのため、高純度のフッ素系ガスを大量に回収することはできるが、回収・精製にコストが嵩むという問題があり、消火器や消火設備に充填されて使用されるハロンは低濃度であっても十分機能を果たすことから、高純度に回収することはオーバースペックとなり、消火用ハロンガスの回収に使用することは経済的負担が大きすぎることが分かった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされてもので、消火用ハロンガスを高い回収率でありながら低コストで回収することのできる消火用ハロンガスの回収・再充填方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器から液化ハロンを液体ポンプを使用して液回収タンクに回収し、ついで、回収元容器から気体成分を真空ポンプを使用してガス回収タンクに回収し、液回収タンクに回収した液化ハロンと、ガス回収タンクに回収した気体成分とを充填用容器に再充填するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、液化ハロンと気体成分の回収のあと、配管内に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスを吸着装置に導入してハロンガス成分を吸着回収し、液化ハロンと気体成分とともに吸着装置で回収したハロンガス成分を充填用容器に再充填するようにしたものである。
【0010】
請求項3に記載した本発明は、消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填している回収元容器と液回収タンクとを液ポンプを介装した液化ハロン回収路で連通接続するとともに、回収元容器とガス回収タンクとを真空ポンプを介装した気体成分回収路で連通接続し、液回収タンクから導出した液化ハロン充填路に充填ポンプを配設し、ガス回収タンクから導出したガス充填路に圧縮器を配設し、この液化ハロン充填路とガス充填路とを充填用容器に連通接続してあることを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の構成に加えて、液化ハロン回収路と気体成分回収路とに残ガス回収路を連通し、この残ガス回収路にガスポンプ、吸着装置、真空ポンプ、バッファタンク、コンプレッサ、一時回収タンクを順に配置し、液化ハロン回収路と気体成分回収路内に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスからハロンガス成分を吸着回収し、この吸着装置で回収したハロンガス成分をガス充填路に送給するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器から液化ハロンを液体ポンプを使用して液回収タンクに液体のまま回収するとともに、液体成分が取り出された回収元容器から気体成分を真空ポンプを使用してガス回収タンクに回収し、この回収した液化ハロンと気化ハロンガスと窒素ガスとを充填用容器に再充填するようにしていることから、消火用ハロンガスを高い回収率でありながら低コストで回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す消火用ハロンガスの回収・再充填設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図は本発明の一実施形態を示し、この消火用ハロンガスの回収・再充填設備は、消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填している回収元容器(1)を連通接続しているヘッダー(2)に液ポンプ(3)を介装した液化ハロン回収路(4)を連通接続し、この液化ハロン回収路(4)の導出端を液回収タンク(5)に連通接続している。また、ヘッダー(2)と液ポンプ(3)との間の液化ハロン回収路(4)から真空ポンプ(6)を介装した気体成分回収路(7)を分岐導出し、この気体成分回収路(7)の導出端をガス回収タンク(8)に連通接続している。
【0015】
液化ハロン中に溶解している窒素ガスは、液回収タンク(5)に回収した際に溶出してくるので、この溶出した窒素ガスを回収するため、液回収タンク(5)の上部に形成される気相部と、ガス回収タンク(7)とを溶出ガス移送路(9)で連通接続している。
【0016】
液回収タンク(5)から導出した液化ハロン充填路(10)に充填ポンプ(11)を配設するとともに、ガス回収タンク(7)から導出したガス充填路(12)に圧縮器(13)を配設し、この液化ハロン充填路(10)とガス充填路(12)とを合流させて充填用容器(14)に連通接続してある。
【0017】
さらに、液化ハロン回収路(4)と気体成分回収路(7)との分岐部に接続する状態で残ガス回収路(15)を連通し、この残ガス回収路(15)にガスポンプ(16)、吸着装置(17)、真空ポンプ(18)、バッファタンク(19)、コンプレッサ(20)、一時回収タンク(21)を順に配置し、液化ハロン回収路(4)と気体成分回収路(7)内に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスからハロンガス成分を吸着装置(17)で回収し、この吸着装置(17)に吸着されたハロンガス成分を離脱処理し、離脱したハロンガスをガス充填路(12)に送給するようにしてある。
【0018】
図中符号(22)は充填用容器(14)への充填量を計測するデジタル台秤などの計量機器、(23)は充填用容器(14)への充填路内の残留ガスを回収する充填ロス回収ラインである。
【0019】
次に、上述の構成からなる消火用ハロンガスの回収・再充填設備を使用しての消火器点検時でのハロン消火剤回収・再充填作業の手順を説明する。
【0020】
複数のハロン消火剤を充填している回収元容器(1)をヘッダー(2)に接続する。次いでヘッダー(2)に連通接続している液化ハロン回収路(4)の液ポンプ(3)よりも上流側に配設されている流路開閉弁(V1)および液ポンプ(3)と液回収タンク(5)との間に配置した流路開閉弁(V2)をそれぞれ開弁するとともに、液ポンプ(3)を作動させて、回収元容器(1)から液化ハロンを液回収タンク(5)に回収する。
【0021】
回収元容器(1)の液体成分回収が終わると、液化ハロン回収路(4)の両流路開閉弁(V1)(V2)を閉弁し、気体成分回収路(7)の真空ポンプ(6)よりも上流側に配設されている流路開閉弁(V3)および真空ポンプ(6)とガス回収タンク(7)との間に配置した流路開閉弁(V4)をそれぞれ開弁するとともに、真空ポンプ(6)を作動させて、回収元容器(1)に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスを引けるところまで引いてガス回収タンク(7)に回収し、両流路開閉弁(V3)(V4)を閉弁する。
【0022】
そして、気体成分回収作業後に配管内に残っている混合ガスを残ガス回収路(15)に装着したガスポンプ(16)を作動させて吸着装置(17)に導入し、吸着装置(17)内に充填されている吸着剤(例えば活性炭)に残ガス中のハロンガスを選択吸着させるとともに、窒素ガスを放出する。ついで、真空ポンプ(18)を作動させて、吸着剤からハロンガスを離脱させて、離脱させたハロンガスをバッファタンク(19)に貯留するとともに、コンプレッサ(20)で加圧して一時回収タンク(21)に回収貯留する。
【0023】
液回収タンク(5)に回収された液化ハロンおよびガス回収タンク(7)に回収されたハロンガスと窒素ガスとの混合ガスは、点検が終了した消火器容器あるいは新規の消火器容器からなる充填用容器(14)に液化ハロンを所定容量供給したのち混合ガスを所定ガス圧で充填される。
【0024】
以上のように、この消火用ハロンガスの回収・再充填設備では、消火器などの消火設備に充填されていた液化ハロンおよび加圧ガスを液体成分とガス成分とに分けて回収し、回収した液体とガスとをそのまま再充填に使用していることから、例えば99.99%という高い収率で回収することができるうえ、充填用容器には回収元の消火器容器内の混合ガスと同じ混合割合の混合ガスを再充填することができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ハロン消火器の点検時での再充填に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0026】
1…回収元容器、3…液ポンプ、4…液化ハロン回収路、5…液回収タンク、6…真空ポンプ、7…気体成分回収路、8…ガス回収タンク、10…液化ハロン充填路、11…充填ポンプ、12…ガス充填路、13…圧縮器、14…充填用容器、15…残ガス回収路、16…ガスポンプ、17…吸着装置、18…真空ポンプ、19…バッファタンク、20…コンプレッサ、21…一時回収タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器(1)から液化ハロンを回収し、回収したハロンガスを充填用容器(14)に再充填する消火用ハロンガスの回収・再充填方法であって、
消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器(1)から液化ハロンを液体ポンプ(3)を使用して液回収タンク(5)に回収したのち、消火剤容器(1)から気体成分を真空ポンプ(6)を使用してガス回収タンク(8)に回収し、液回収タンク(5)に回収した液化ハロンと、ガス回収タンク(8)に回収した気体成分とを充填用容器(14)に再充填するようにしたことを特徴とする消火用ハロンガスの回収・再充填方法。
【請求項2】
液化ハロンと気体成分の回収のあと、配管内に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスを吸着装置(17)に導入してハロンガス成分を吸着回収し、吸着装置(17)で回収したハロンガス成分を充填用容器(14)に再充填するようにした請求項1に記載した消火用ハロンガスの回収・再充填方法。
【請求項3】
消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してなる回収元容器(1)から液化ハロンを回収し、回収したハロンガスを充填用容器(14)に再充填する消火用ハロンガスの回収・再充填装置であって、
消火剤としての液化ハロンと、加圧ガスとしての窒素ガスとを充填してしている回収元容器(1)と液回収タンク(5)とを液ポンプ(3)を介装した液化ハロン回収路(4)で連通接続するとともに、回収元容器(1)とガス回収タンク(8)とを真空ポンプ(6)を介装した気体成分回収路(7)で連通接続し、液回収タンク(5)から導出した液化ハロン充填路(10)に充填ポンプ(11)を配設し、ガス回収タンク(8)から導出したガス充填路(12)に圧縮器(13)を配設し、この液化ハロン充填路(10)とガス充填路(12)とを充填用容器(14)に連通接続してあることを特徴とする消火用ハロンガスの回収・再充填方法。
【請求項4】
液化ハロン回収路(4)と気体成分回収路(7)とに残ガス回収路(15)を連通し、この残ガス回収路(15)にガスポンプ(16)、吸着装置(17)、真空ポンプ(18)、バッファタンク(19)、コンプレッサ(20)、一時回収タンク(21)を順に配置し、液化ハロン回収路(4)と気体成分回収路(7)内に残留しているハロンガスと窒素ガスの混合ガスからハロンガス成分を吸着装置(17)で吸着回収し、この吸着装置(17)で回収したハロンガス成分をガス充填路(12)に送給するようにしてある請求項3に記載した消火用ハロンガスの回収・再充填装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−21554(P2012−21554A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158494(P2010−158494)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】