説明

消火用開閉弁設備

【課題】消火用の開閉弁の開度を制御して流速を規制し、配管内の過流現象を防止する。
【課題手段】
第1パイロット弁20は差圧制御パイロット弁として、一次側配管50と開閉弁本体10を開放する機構である加圧室17の間に設置し、前記加圧室17へ一次側配管50から流れ込む水の圧力を制御し、開閉弁本体10の初期開度を制限する。また、第2パイロット弁30は充水感応パイロット弁として一次側配管50と加圧室17の間に設置して、さらに第2パイロット弁30の加圧室35に二次側配管60と連通せしめて、第2パイロット弁30の開放を二次側配管60から流れる水の圧力に応じて行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用の開閉弁の開度を制御して流速を規制し、配管内の過流現象を防止することに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来の消火制御用の開閉弁1を開くため、自動起動弁41または手動起動弁42を開けて、加圧室17に水を供給すると、弁主体11が急激に弁座12から離れて全開するので、開閉弁本体10の一次側配管50内の高圧水が、充水されていない開閉弁本体10の二次側配管60内に高速で流れ込む。ところで、前記二次側配管60の放水口にはノズル等で絞られているため、前記高速水は急激に止められる状態となる。これによって、配管内に振動や騒音、いわゆる過流(ウオーターハンマ)現象が発生する。
この現象を解消するため、開度調節機構を内蔵して流量を制限する開閉弁が開発されていて、例えば開閉弁の加圧室に分流管を設け、加圧室に流れ込む水の一部をこの分流管で機外に排出し、そして開閉弁の二次側配管の充水が一定程度に達すると上記分流管で水の機外排出を停止することによって開閉弁の開度を調節する、という開閉弁があった(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−272202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に開示された開閉弁を実現するためには、開閉弁の構造に対する改造が必要である。そのため、開閉弁が複雑になり、部品点数が多く、コストが高くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係わる消火用開閉弁設備は、上述の問題を解決するためになされたもので、一次側配管と二次側配管とを接続する開閉弁本体と、この開閉弁本体の連通口を開閉する弁主体と、この弁主体と流路を介して対向するピストン室と、このピストン室を加圧室と排気室に区切って配設され、前記弁主体より受圧面積の大きいピストンと、このピストンと前記弁主体とを連結するステムと、を有する開閉弁において、第1パイロット弁と第2パイロット弁とを、前記開閉弁本体の一次側配管と前記開閉弁の加圧室の間に並列で設けて、前記第1パイロット弁の加圧室を前記開閉弁本体の一次側配管に連通させ、前記第2パイロット弁の加圧室を前記開閉弁本体の二次側配管に連通させるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、第1パイロット弁は差圧制御パイロット弁として、開閉弁本体の一次側配管と開閉弁を開放する機構である加圧室の間に設置し、前記加圧室へ前記一次側配管から流れ込む水の圧力を制御し、開閉弁の初期開度を制限し、また、第2パイロット弁は充水感応パイロット弁として開閉弁本体の一次側配管と開閉弁の加圧室の間に設置して、さらに第2パイロット弁の加圧室に開閉弁本体の二次側配管と連通せしめて、第2パイロット弁の開放を前記二次側配管から流れる水の圧力に応じて行わせる。したがって、上記二つのパイロット弁の調整で、開閉弁本体の二次側配管の充水完了前に開閉弁の開度を制限して流速を規制し、前記二次側配管の充水後に開閉弁を全開することができるので、急激な開弁がなく、前記過流現象が発生しないようにすることができる。
【0006】
また、パイロット弁自体は安価なものであって、汎用の開閉弁と簡単に組合せをすれば、汎用の開閉弁の構造を変更せずに過流防止することができ、設備のコストおよび取付け費用も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明を利用する設備を図1に示し、第1パイロット弁の構造を図2に示し、第2パイロット弁の構造を図3に示し、以下にその構成を簡単に説明する。
【0008】
図1に示すように、開閉弁1は図4と同じもので、主に開閉弁本体10とピストン室15とで構成されている。
【0009】
消火用配管に設けられた開閉弁本体10には、一次側配管50と二次側配管60とを連通せしめる連通口Kが設けられている。この連通口Kの上縁部には、弁主体11が着座する弁座12が設けられて、この弁主体11はスプリング13により弁座12に圧接されている。この弁主体11の外周部分は、テーパ状に形成されていて、上下方向に移動しその位置を変化すると、弁主体11と弁座12との隙間の大きさが変化し、一次側配管50から二次側配管60に流入する水の流量を調整することができる。
【0010】
ピストン室15は前記弁主体11と対向している。このピストン室15には弁主体11の受圧面積より大きい表面積のピストン16が嵌着され、ステム14を介してこのピストン16は弁主体11と連結されている。該ピストン16には脱気孔Q1が形成されて、この脱気孔Q1によりピストン室15を構成する加圧室17と排気室18とが連通している。
【0011】
排気室18には、排気孔Q2が設けられ、この排気孔Q2の径は前記脱気孔Q1の径より大きいである。
【0012】
加圧室17は、並列で配置されている二つのパイロット弁である第1パイロット弁20、第2パイロット弁30と、並列で配置されている後述の二つの起動弁41、42と、前記加圧室17を加圧するための導圧管70と、導水管90とを介して一次側配管50に接続されている。前記起動弁41、42は火災感知器の信号で作動する自動起動弁41と、人間で操作することによって作動する手動起動弁42である。
【0013】
また、メンテナンス弁43は常時開で、点検や保守のときに使用され、ストレーナー44は導水管90内のゴミを濾過し、オリフィス46は水の流量を制限し、自動排水弁45は配管内の残水を常時に排出するが水圧が高くなると自動的に閉鎖するもので、感圧管80は二次側配管60を第2パイロット弁30に連通する配管である。
【0014】
図2は第1パイロット弁である差圧制御パイロット弁20の構造を示すものである。該パイロット弁20は、弁主体21と、弁主体21が着座する弁座22と、加圧されると弁主体21を持上げるダイアフラム24と、弁主体21を弁座22に圧接するスプリング23と、導水管90と連通する加圧室25とで構成され、導水管90の水圧がスプリング23で設定された所定開放圧力(Pa)より高くなると、弁主体21は弁座22から離れ、導水管90の水が導圧管70に流れる。
【0015】
図3は第2パイロットである充水感応パイロット弁30の構造を示すものである。該パイロット弁30は、弁主体31と、弁主体31が着座する弁座32と、加圧されると弁主体31を持上げるダイアフラム34と、弁主体31を弁座32に圧接するスプリング33と、感圧管80を介して二次側配管60と連通する加圧室35と、加圧室35をその下方の空間に分離する隔壁36とで構成され、感圧管80の水圧がスプリング33で設定された所定開放圧力(Pb)より高くなると、弁主体31は弁座32から離れ、導水管90の水が導圧管70に流れる。
【0016】
以下、図1、図2及び図3による構成につき、開閉動作の手順を簡単に説明する。
【0017】
まず、火災が発生するとき弁主体11を開く場合について説明する。火災感知器などの制御手段または人間からの指示により自動起動弁41または手動起動弁42が起動され、導水管90が開通される。この場合、一次側配管50の水圧は第1パイロット弁20の所定開放圧力(Pa)を超えると、第1パイロット弁20が開放し、一次側配管50の水は導水管90、導圧管70を介して開閉弁の加圧室17に流れる。
【0018】
加圧室17に流れる水は加圧室内の空気を脱気孔Q1から排気室18に排出させるとともに、排気孔Q2を介して機外に排出される。脱気孔Q1の径をオリフィス46の径より小さく形成することにより、機外に排出された水量を給水量に比べて少なくなるように設計しているので、加圧室17内に圧力が発生する。
【0019】
ピストン16の受圧面積は、弁主体11のそれより大きく形成されているので、加圧室17内の圧力で徐々にピストン16が押上げられ、弁主体11は弁座12からピストン16のステム14を介して徐々に離れ、一次側配管50の水は二次側配管60に流れる。このとき、二次側配管60の圧力はまだ低く、感圧管80を介して第2パイロット弁30を開ける水圧に至ってないので、開閉弁本体10の開度は第1パイロット弁20のみによって制限されて、流速が規制されている。
【0020】
二次側配管60内は、充水で圧力が次第に高くなり、遂に第2パイロット弁30の所定開放圧力(Pb)より高くなると、この充水は感圧管80を介して第2パイロット弁30を開放させる。この結果、一次側配管50の水は導水管90を介して第2パイロット弁30を通し、さらに多くの量が導圧管70を通して開閉弁の加圧室17に流れ込み、ピストン16が一気に押上げられ、弁主体11は弁座12からさらに離れて、開閉弁本体10が全開する。
【0021】
以上のように、第1パイロット弁20は開閉弁本体10の初期開度を制限し、第2パイロット弁30は二次側配管60から流出する水の圧力に応じて開閉を行い、上記二つのパイロット弁の組合せの調節で開閉弁本体10の開度を制御して流速を規制し、配管内の過流現象を防止することができる。
【0022】
次に、弁主体11を閉じる場合について説明する。消火後、自動起動弁41または手動起動弁42を閉じると、一次側配管50から導水管90へ流入する水が停止し、加圧室17に流入する水も停止する。
【0023】
加圧室17内の水は、脱気孔Q1を通って排気室18に移動して排気孔Q2から機外に流出するので、該加圧室17の圧力が次第に減少する。加圧室17の圧力が次第に減少につれ、弁主体11を押上げるピストン16の力はスプリング13の逆方向に押圧される力に耐えなくなり、弁主体11は弁座12に着座するので、開閉弁本体10は閉止する。
【0024】
この実施形態1における消火用開閉弁設備は、一次側配管50と二次側配管60とを接続する開閉弁本体10と、この開閉弁本体の連通口Kを開閉する弁主体11と、この弁主体11と流路を介して対向するピストン室15と、このピストン室15を加圧室17と排気室18に区切って配設され、前記弁主体11より受圧面積の大きいピストン16と、このピストン16と前記弁主体11とを連結するステム14と、を有する開閉弁1において、第1パイロット弁20と第2パイロット弁30とを、前記一次側配管50と前記加圧室17の間に並列で設けて、前記第1パイロット弁20の加圧室25を前記一次側配管50に連通させ、前記第2パイロット弁30の加圧室35を前記二次側配管60に連通させるものであるので、第1パイロット弁20は前記加圧室17へ一次側配管50から流れ込む水の圧力を制御し、開閉弁本体10の初期開度を制限する。また、第2パイロット弁30の開放を二次側配管60から流れる水の圧力に応じて行わせる。これによって、上記二つのパイロット弁の調整で、二次側配管60の充水完了前に開閉弁本体10の開度を制限して流速を規制し、二次側配管60の充水後に開閉弁本体10を全開することができるので、急激な開弁がなく、配管内に過流現象が発生しないという効果がある。
【0025】
また、パイロット弁自体は安価なものであって、汎用の開閉弁と簡単に組合せをすれば、汎用の開閉弁の構造を変更せずに過流防止することができ、設備のコストおよび取付け費用も低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例形態に係わる消火用開閉弁の系統図である。
【図2】第1パイロット弁の詳細図である。
【図3】第2パイロット弁の詳細図である。
【図4】従来技術に係わる消火用開閉弁の系統図である。
【符号の説明】
【0027】
1 開閉弁
10 開閉弁本体
11、21、31 弁主体
12、22、32 弁座
13、23、33 スプリング
14 ステム
15 ピストン室
16 ピストン
17、25、35 加圧室
18 排気室
20 第1パイロット弁(差圧制御パイロット弁)
30 第2パイロット弁(充水感応パイロット弁)
41 自動起動弁
42 手動起動弁
43 メンテナンス弁
44 ストレーナー
45 自動排水弁
46 オリフィス
50 一次側配管
60 二次側配管
70 導圧管
80 感圧管
90 導水管
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側配管と二次側配管とを接続する開閉弁本体と、この開閉弁本体の連通口を開閉する弁主体と、この弁主体と流路を介して対向するピストン室と、このピストン室を加圧室と排気室に区切って配設され、前記弁主体より受圧面積の大きいピストンと、このピストンと前記弁主体とを連結するステムと、を有する開閉弁において、
第1パイロット弁と第2パイロット弁とを、前記開閉弁本体の一次側配管と前記開閉弁の加圧室の間に並列で設け、前記第1パイロット弁の加圧室を前記開閉弁本体の一次側配管に連通させ、前記第2パイロット弁の加圧室を前記開閉弁本体の二次側配管に連通させることを特徴とする消火用開閉弁設備。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−42958(P2006−42958A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225206(P2004−225206)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】