説明

消火設備用流水検知装置

【課題】 本発明は、弁体開閉強度等の調整の容易な消火設備用流水検知装置を得ること。
【解決手段】 弁筐体内に弁体をシャフトにより開閉可能に軸支し、弁筐体の一次側から二次側に向かう水流により上記弁体を開放してスイッチを動作状態とする消火設備用流水検知装置において、シャフトの一端を弁筐体外側に突出し、弁筐体外側におけるシャフトに、弁体の開閉動作に伴うシャフトの回転運動をシャフトに直交する直線運動に変換する変換機構を取り付け、弁体の開動作に基づいて変換機構によって変換された直線運動を行いスイッチを作動させる作動部材を設け、作動部材の運動方向に対して対向方向の附勢力を及ぼす附勢手段と、附勢手段の附勢力を調整し得る調整手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅用のスプリンクラー設備等に用いて好適なものであり、弁体開閉強度を容易に調整し得る消火設備用流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な集合住宅用のスプリンクラー設備は、図8に示すように集合住宅の各階の各戸毎に複数個のスプリンクラーヘッド40が設けられ、各戸において上記各ヘッド40がスプリンクラー配管40’を介して流水検知装置1の二次側に接続され、かつ該流水検知装置1の一次側に消火水配管41が接続され、各配管41は集合住宅の地階に配設され、該地階において加圧送水ポンプ42、圧力保持ポンプ43を介して貯水槽44に接続されている。また、上記配管41には圧力タンク45及び上記配管41内の圧力低下を圧力タンク45を介して検出し得る圧力スイッチ46が接続されている。尚、同図中47は屋上に配置された消火水の補助水槽である。
【0003】
そして、上記スプリンクラー設備は警戒動作中において全配管内が水で満たされ上記圧力保持ポンプ43により静圧(加圧ポンプ42から最遠箇所で0.1MPa以上)が印加されており、何れかの一戸Pで火災が発生すると、スプリンクラーヘッド40”のノズルが熱により自動的に発砲し、配管40’内に充満する消火水が同ヘッド40”から放出され、かかる流水圧力により、上記一戸Pで上記流水検知装置1のリードスイッチ等がオンしてこれにより火災警報等が発せられる。また、上記ヘッド40”の発砲に基づく管内圧力の低下を圧力スイッチ46が検知してオンし、該オンに基づいて加圧送水ポンプ42が起動され、配管41内に貯水槽44内の消火水が加圧送水され、引き続いて上記スプリンクラーヘッド40”から消火水が放水され消火活動が行われるものである。
【0004】
このようなスプリンクラー設備における上記流水検知装置1として、従来、特許文献1、2に示すような装置が提案されている。これらの装置はいわゆる逆止弁の弁体の回動を利用したもので、上記逆止弁の弁体のシャフトを逆止弁筐体外に突出させ、該シャフト先端部にカム機構を介して警報機のスイッチを配置し、上記スプリンクラーヘッド40”の開放による逆止弁の2次側圧力の低下により上記弁体が回動すると、当該弁体のシャフトの回転に基づいて上記カム機構により上記スイッチをオンして上記警報機を作動せしめる構造となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−142251号公報
【特許文献2】特開2002−65885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のものは、カム板の板面と弁体シャフトの先端に設けられたアームとの間にスプリングを設け、弁体の開放時には上記シャフトの回転を上記アームに伝達し、該アームの回動により上記スプリングを介してカム板を回転させ、該カム板の回転により警報スイッチをオンするという構造を採っており、これにより漏水や点検中の少量の水による誤動作を防止するものである。しかしながら、該特許文献1のものは、その構造が極めて複雑であるし、上記スプリングの引っ張り強度を調整することが難しいので、弁体の開閉強度の調整や警報スイッチのオンタイミングの調整が難しいという問題がある。
【0007】
特許文献2のものは、弁体のシャフト先端部にカムを設けると共に該カムによって回動するレバーを設け、該レバーによって警報スイッチをオンするように構成し、かつ常時は上記レバーの回動を阻止する磁石を該レバーに吸着させておき、該磁石の吸着力より大きい力が該レバーに作用した場合のみ該レバーの回動により上記警報スイッチをオンするように構成したものであり、これにより上記弁体に所定以上の圧力が作用しない限り、上記警報スイッチがオンされない構成として、流量変化等による流水検知装置の誤動作の防止を図ったものである。しかしながら、特許文献2のものは、磁石の吸着力を調整することが難しく、上記特許文献1と同様に、弁体の開閉強度の調整や警報スイッチの動作タイミングの微調整が難しいという課題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の各課題に鑑みてなされたもので、簡単な構造で弁体の開閉強度を容易に調整することのできる消火設備用流水検知装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、弁筐体内に弁体をシャフトにより開閉可能に軸支し、弁筐体の一次側から二次側に向かう水流により上記弁体を開放してスイッチを動作状態とする消火設備用流水検知装置において、上記シャフトの一端を上記弁筐体外側に突出し、該弁筐体外側における上記シャフトに、上記弁体の開閉動作に伴う該シャフトの回転運動を該シャフトに直交する直線運動に変換する変換機構を取り付け、かつ、上記弁体の開動作に基づいて上記変換機構によって変換された上記直線運動を行い上記スイッチを作動させる作動部材を設け、さらに上記作動部材の運動方向に対して対向方向の附勢力を及ぼす附勢手段と、該附勢手段の附勢力を調整し得る調整手段とを設けたものであることを特徴とする消火設備用流水検知装置により構成される。
【0010】
上記変換機構は、例えばシャフト(8)のピニオンギア(14)と該ギアに噛合するラックギア(16)、或はシャフト(8)に接続されたアーム(30)と該アームにより直線運動するスイッチ作動片(32)等により構成することができる。上記作動部材は先端に作動部(16c)を有するラックギア(16)等として構成し得るし、後者の場合はテーパ面(32’)を有するスイッチ作動片(32)等として構成することができる。上記附勢手段は例えば上記ラックギア(16)に接続された弁体開放強度調整用スプリング(20)、上記調整手段は該スプリング(20)を伸縮可能な弁体開閉強度調整用螺子(18)により構成することができる。このように構成すると、弁体開閉強度等の調整のために、シャフトの回転運動ではなく作動部材の直線運動を調整すればよいため、調整が容易であるし附勢手段及び調整手段を簡単に構成し得る。
【0011】
第2に、上記スイッチは、上記作動部材が上記直線運動を行うことにより、該作動部材に当接して上記直線運動方向に交差する方向に移動することによりオンするスイッチ操作部を有するものであることを特徴とする上記第1記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0012】
従って、上記作動部材が直線運動を行うと、スイッチ操作部は例えば上記作動部材の側面に当接して上記運動方向と交差する方向に例えば回動してオンするものであるため、作動部材の作動ストロークを正確に調整する必要がなく、装置構成の容易な流水検知装置を実現し得る。ここで、交差する方向は作動部材の運動方向と直交する方向も含む概念である。
【0013】
第3に、上記変換機構は、上記シャフトに設けられたピニオンギアと、該ピニオンギアに噛合するラックギアにより構成される機構であることを特徴とする上記第1又は2記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0014】
第4に、上記変換機構は、上記シャフトに設けられたアームと、上記シャフトに直交する方向の案内レールと、上記シャフトの回転に基づく上記アームの回動により上記案内レールに沿って直線運動を行うスイッチ作動片とから構成される機構であることを特徴とする上記第1又は2記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0015】
第5に、上記附勢手段は上記作動部材に接続されたスプリングであり、上記調整手段は上記スプリングを伸縮し調整し得る調整螺子であることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の消火設備用流水検知装置により構成される。
【0016】
従って、上記附勢力を調整するには、例えば調整螺子の頭をプラスドライバー等により回すことによって極めて容易に調整することができる。
【0017】
尚、本発明の構成に対応して実施形態中の符号をかっこ書で示したが、これは対応関係を明確にするために便宜上表示したものであって、本発明の構成が実施形態中の構成に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁体の開閉動作を直線運動に変換して警報スイッチ等のスイッチを操作するように構成したものであるから、弁体の開閉強度を調整する際は、作動部材の直線運動に対して附勢力を作用させれば良く、その附勢にかかる機構及びその調整機構を極めて簡単に構成することができるものである。
【0019】
また、その調整も容易に行うことのできる流水検知装置を実現し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る流水検知装置の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1乃至図3は本発明の第1実施形態に係る流水検知装置1を示すものであり、1aは、逆止弁筐体としての弁筐体であって、一次側A(貯水槽側)から二次側B(スプリンクラー側)に抜ける流水経路(矢印E方向)が形成されており、一次側流水経路2には一次側配管41に接続するための一次側の取付用フランジ4、二次側流水経路3には二次側配管40’に接続するための二次側の取付用フランジ5が形成されている。
【0022】
6は、上記弁筐体1a内において、上記一次側流水経路2の出口側に設けられたリング状の弁座であり、外周に螺子部6aが形成されており、当該螺子部6aを以って上記一次側流水経路2出口の取付用螺子部2aに螺着されている。
【0023】
7a,7bは(図2参照)、上記弁筐体1a内において、上記一次側流水経路2の出口側の弁筐体1a内壁に設けられた一対のボスであり、一次側から二次側への流水方向(矢印E方向)と直交する方向に対向して設けられている。これらボス7a,7bには各々弁体シャフト8を挿通支持するための支持孔7a’,7b’が設けられており、上記支持孔7b’は当該弁筐体1aを貫通し、該筐体1a側面に開口部7b”を以って開口している(図2参照)。
【0024】
8は、上記弁体シャフトであり、該シャフト8は上記開口部7b”からその端部が上記支持孔7a’端部に至るまで挿入されており、支持孔7b’側に設けられたベアリング10により上記支持孔7a’,7b’内において回転可能に支持されている。
【0025】
9は、上記一次側流水経路2を閉鎖する逆止弁としての弁体であり、弁本体9aと該本体9aを支持するもので中央部に透孔の貫設された一対の支持腕9b、9bとから構成されている。この弁体9は、上記ボス7a,7b間にその支持腕9b,9bを配置した状態で、上記弁体シャフト8を上記開口部7b”から上記支持腕9b,9bの上記各透孔を介して上記支持孔7a’,7b’に挿通することで(図2参照)、該弁体シャフト8により矢印C,D方向に回動可能に軸支される。また、上記弁体シャフト8と上記支持腕9b、9bは固着されており、上記弁体9が上記弁体シャフト8を支軸として回動すると、当該弁体9の回動に伴って上記弁体シャフト8も同時に回転するように構成されている。このように、上記弁体9が一次側流水経路2の出口側に配置され、弁体9により、上記弁座6を二次側から閉鎖し得るように構成して、いわゆる逆止弁を構成している。
【0026】
上記弁体シャフト8の一端は上記開口部7b”を介して弁筐体1a外部に突出しており、後述のスイッチボックス11のボス部11aを介して該ボックス11内側に配置された抜止ナット12によって回動可能に抜け止めされている。尚、図2中Rは止水用オーリングである。
【0027】
11は、後述の警報スイッチ22及びその作動機構を収納するためのスイッチボックスであり、上記弁筐体1aの側面1a’のボックス取付部にそのボス部11aを以って固着(接着又は図示しないビス止め)されており、上記弁体シャフト8は上記ボス部11aの開口部13を介して、当該ボックス11内に位置するように構成されている。
【0028】
次に、上記ボックス11内における警報スイッチ駆動機構について説明する。
【0029】
14は、開き角度90度の扇状のピニオンギアであり(図3参照)、上記弁体シャフト8の先端部に挿通固定され、上記弁体シャフト8の先端部に螺着された抜止ナット15により抜け止めされている。従って、このピニオンギア14は上記弁体シャフト8の回転に伴って該シャフト8と同一方向に回転する。このピニオンギア14は扇状の円弧部分にギア部14aを有しており、図3に示すように、弁筐体1a内の弁体9が上記弁座6を閉鎖している水平状態にあるとき、即ち、弁体9の閉鎖状態において、その上側面14bが水平状態を保持するように角度調整された上で上記シャフト8に固定されている。
【0030】
16は、ラックギア(作動部材)であり、上記ピニオンギア14側の一側面にギア部16aを有しており、上記ボックス11内に固設されたガイドレール17内に上記弁体シャフト8と直交する上下方向に摺動自在に挿通支持されている。このラックギア16の上記ギヤ部16aは常時に上記ピニオンギア14に噛合しており、該ラックギア16の上端部には後述の警報スイッチ22を作動させるための棒状の作動部16cが上記ラックギア16と一体的に形成されている。従って、かかる構成により上記ピニオンギア14が矢印C方向又はD方向に回動すると、上記ラックギア16は、上記ガイドレール17に案内されながら矢印H方向又は矢印I方向に上下直線運動するように構成されている。
【0031】
また、上記ガイドレール17の上記ピニオンギア14とは反対側の側面には所定範囲に亙り上下方向スリット17aが開口形成されている。そして、上記ラックギア16の上記ギア部16aとは反対側の側面には、弁体開閉強度調整用スプリング20の一端が係合する係合片16bが水平方向に突出形成されており、当該係合片16bは上記スリット17aを介して上記ガイドレール17外側に位置している。
【0032】
18は、弁体開閉強度調整用螺子であり、上記ガイドレール16下端に固定された雌螺子アングル19に螺着され、この調整用螺子18の先端部には上記弁体開閉強度調整用スプリング20の他端が固着されている。従って、上記スプリング20は上記係合片16bと上記調整用螺子18端部との間に張設された状態となっており、かかる構成により当該スプリング20は上記係合片16bを介して上記ラックギア16を常時矢印I方向(ラックギア16の運動方向に対向する方向(上記運動方向に対する逆方向)、即ち弁体9の閉鎖方向)に附勢している。よって、上記弁体9の開方向の回動には上記スプリング20の矢印I方向(開方向の回動を阻止する方向)の附勢力が作用する構成となっている。
【0033】
21は、一端部が上記雌螺子部19に固設されたスプリング保護カバーであり、該カバー21は図3の弁体9の閉鎖位置においては上記スプリング20の外周全体を略覆うように構成されている。
【0034】
このような構成により、当該スプリング20の矢印I方向の附勢力は上記弁体9の開方向への抵抗力として作用する。そして、上記弁体開閉強度調整用螺子18の頭をプラスドライバー又はマイナスドライバー等により回転させて該調整螺子18の先端部から上記係合片16bまでの距離を変化させることにより、上記スプリング20の附勢力を調整できるように構成している。
【0035】
例えば、上記弁体9の閉鎖状態(図3の状態)、即ち上記ラックギア16が図3の位置に停止した状態で、調整用螺子18を右に回して該螺子18を雌螺子アングル19に螺子こんでいくと、該螺子18の先端部は上記係合片16bに接近していくため、これにより上記スプリング20が縮小され上記附勢力を小さくすることができる。即ち、上記弁体9の開放を阻止する抵抗力を小さくする方向に調整することができる。一方、上記調整用螺子18を左に回して該螺子18を雌螺子アングル19から外れる方向に移行させると、該螺子18の先端部と上記係合部16bとの距離が増していき、これにより上記スプリング20が伸長され上記附勢力は大きくなる。即ち、上記調整用螺子18を回転させるだけで、上記弁体9の開放を阻止する抵抗力を大きくする方向に容易に調整することができる。このように、上記スプリング20の附勢力を調整することにより、どの程度の水流で上記弁体9を開放するか等を極めて容易に調整することができる。
【0036】
22は、上記ボックス11内において、上記ピニオンギア14の上方位置に配設された警報スイッチであり、いわゆるリミットスイッチにより構成されている。当該警報スイッチ22において、23はスイッチ操作部であり、先端ローラ23aと該ローラ23aを支軸23b’を以って支持するアーム部23bと該アーム部23bをスイッチオフ方向に附勢するスプリング23cにより構成されている。そして、図3に示すように上記先端ローラ23aが上記ラックギア16の作動部16cに近接して位置するように構成している。従って、上記弁体9が開放されて、上記ピニオンギア14が矢印C方向に回動して上記ラックギア16が上方(矢印H方向)に摺動すると、上記先端ローラ23aにより上記スイッチ操作部23が矢印J方向、即ちラックギア16(作動部16b)の直線摺動方向と交差する方向に回動し、これにより警報スイッチ22がオンするものである。
【0037】
このように、上記警報スイッチ22のスイッチ操作部23の作動方向を、上記ラックギア16の作動部16bの直線方向の動きに交差する方向又は直交する方向とすることにより、上記警報スイッチ23をオンさせるに当たって、ラックギア16のストロークを正確に設定する必要がなくなり、少なくとも上記スイッチ操作部23に当接して当該警報スイッチ22をオンさせるに必要なストロークがあれば、該ストロークがそれ以上長くなっても何等問題ない。よって、警報スイッチ22をオンさせるに当たり、ラックギア16のストロークの細かい調整を必要としない。
【0038】
本発明は上述のように構成されるものであるから、次にその動作を説明する。
(1)火災警戒状態
本発明に係る流水検知装置1は図8に示す集合住宅の各戸に配置され、一次側フランジ4に一次側配管41が接続され、二次側フランジ5に二次側配管としてのスプリンクラー配管40’が接続されおり、上記配管41、40’及び流水検知装置1内は消火水で満たされており、圧力保持ポンプ43にて静圧(末端で0.1MPa以上)が印加された火災警戒状態を維持しているものとする。
【0039】
また、ドライバー等の工具により、流水検知装置1の弁体開閉強度調整用螺子18を右又は左に回して、弁体開閉強度調整用スプリング20の附勢力を適切な大きさに調整しておくものとする。この警戒状態においては、上記流水検知装置1の一次側と二次側は同一圧力であり、弁体9は必ずしも完全な閉鎖状態にある必要はないが、上記弁体開閉強度調整用スプリング20の矢印I方向の附勢力により、常に閉鎖方向の附勢力を受けた状態となっている。従って、この状態において、何らかの原因により一次側から二次側への少量の水流が生じても、上記弁体9は容易に開方向へ回動することはなく、かかる警戒状態における誤動作を防止することができる。
【0040】
(2)火災発生したときの動作
この火災警戒状態で、例えば図8のエリアPにて火災が発生し、当該火災により特定のスプリンクラーヘッド(例えばスプリンクラーヘッド40”)が発砲すると、配管40’内に充満している消火水が上記ヘッド40”から放出され、これにより流水検知装置1の二次側の圧力が低下し、これにより流水検知装置1において一次側から二次側への水流(矢印E方向)が生じる。
【0041】
すると、当該水流により弁筐体1a内の弁体9が水流により矢印C方向に回動していく。このとき、弁体9の回動に伴ってシャフト8も同方向に回動し、これによりピニオンギア14が矢印C方向に回動し、このピニオンギア14の回動に伴ってラックギア16が案内ガイド17に案内されながら、かつ弁体開閉強度調整用スプリング20の附勢力に抗しながら矢印H方向に直線運動して行く。従って、上記弁体9は上記スプリング20の附勢力(矢印I方向)に抗して矢印C方向に回動していく。
【0042】
そして、上記ラックギア16の移動の過程において、該ラックギア16の作動部16cに警報スイッチ22におけるスイッチ操作部23aが当接し、上記ラックギア16のさらなる直進に伴って当該スイッチ操作部23aが上記ラックギア16の運動方向に交差する方向に回動押圧され、上記弁体9が図4の位置まで回動した時点、即ち、ラックギア16が図4の位置まで直線移動した位置で上記スイッチ操作部23aにより警報スイッチ22がオンする。これにより、警報機が作動して警報音が鳴り、火事が発生したことを住人に知らせることができる。
【0043】
さらに、上記ヘッド40”の発砲に基づく配管40’、41の圧力低下は、圧力タンク45を介して圧力スイッチ46により検出され、当該検出に基づいて加圧送水ポンプ42が駆動され、これにより引き続き配管41内に貯水槽44内の消火水から圧力送水され、当該送水された消火水が開状態の当該弁体9を介して引き続き上記スプリンクラーヘッド40”等から放水されて消火作業が続行される。
【0044】
このように、本発明に係る流水検知装置1では、火災警戒時は誤動作を防止すべく、弁体9に閉鎖方向に附勢力を与え、火災発生時においては、弁体9の回転運動をラックギア等の作動部材の直線運動に変換して、当該作動部材の直線運動により警報スイッチ22をオンするように構成しているため、弁体の開閉強度の調整をする際には、上記ラックギア16のような作動部材の直線運動に対して附勢力を作用させれば良く、上記弁体の開閉強度の調整を極めて簡単な構造で行うことができる。また、その調整もドライバー等の工具により簡単に行うことができ、例えば上記弁体強度調整用螺子18の螺子頭に対向する位置にドライバー等の工具挿入孔を設けておけば、より整備性を向上させることができる。
【0045】
また、作動部16cの直線運動によりスイッチ操作部23が作動部16cに当接して上記直線運動に交差する方向に移動(回動)することにより該スイッチ22がオンする構成であるから、警報スイッチ22をオンさせるにあたって、作動部16c、即ちラックギア16の移動ストロークは上記スイッチ22をオンさせるに必要なストロークで良く、あまり正確に調整する必要はないため、これにより誤動作を防止しつつ極めて構造簡単な流水検知装置を実現できるものである。
【0046】
尚、図1において1bは弁筐体1aの側面に設けられたメンテナンス用開閉蓋であり、図2にその螺子孔(5箇所)が示されるよう5本のボルトにより上記弁筐体1aに止水状態で固定される。図2において11bはスイッチボックス11の側面に設けられたメンテナンス用開閉蓋であり、図3に四隅の螺子孔(4箇所)が示されるように4本のボルトによりスイッチボックス11に固定される。
【0047】
次に、本発明に係る第2の実施形態を図5乃至図7に基づいて説明する。これら第2の実施形態の図において、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して便宜上それらの説明を省略する。第2の実施形態は、図1、図2に示す弁筐体1a内部の弁体9の構成は上記第1の実施形態の構成と同一なので、当該部分の説明も便宜上省略する。この第2の実施形態は上記スイッチボックス11内の警報スイッチの動作機構が上記第1の実施形態と異なっている。
【0048】
同図において、上記弁体9のシャフト8はスイッチボックス11のボス部11aを介して上記第1の実施形態と同様に上記ボックス11内に位置している。上記シャフト8の端部にはスイッチ作動片32を動かすためのアーム30がその一端の透孔30aを以って挿通され、該アーム30は上記シャフト8の先端の抜け止めナット15により抜け止め固定されている。かかるアーム30の他端部には後述のスイッチ作動片32の突出ピン33が係合する長孔30bが貫設されている。
【0049】
31は、上記ボス部11aの内側上部に上記シャフト8に直交する方向に直線的に形成された案内レール、32は後述の警報スイッチ37を操作するスイッチ作動片(作動部材)であり、上記アーム30の長孔30bに係合する係合ピン33が突設された支持部32aと、該支持部32aから上記警報スイッチ方向に向けて徐々に上昇するテーパ面32’を有する操作部32bとを具備すると共に、背面側には上記案内レール31にそって摺動可能にかつ前方向には抜け止めされた状態で係合する案内レール32cが一体的に形成されている。従って、かかるスイッチ作動片32は上記案内レール31に沿って矢印J,K方向(上記シャフト8と直交する方向)に往復直線運動可能となっている。
【0050】
34は、弁体開閉強度調整用螺子を支持するアングルであり、図7に示すように全体がL型をなしており、下端の取付部34aが上記スイッチボックス11の内側面11”に螺子止めされ、該内側面11”に図7に示すように立設固定されている。
【0051】
35は、上記アングル34の上端部の透孔34bに挿通された弁体開閉強度調整用螺子、36は弁体開閉強度調整用スプリングであり、該スプリング36の一端36aは上記調整用螺子35の端部に係合し、該スプリング36の他端36bは上記アーム30の板面に突設された係合ピン30cに係合している。当該スプリング36はかかる構成により、上記アーム30に対して常時矢印K方向の附勢力(即ち、作動部材としてのスイッチ作動片32の運動方向に対して対向する方向(上記運動方向に対する逆方向)の附勢力)、従って、上記弁体9を閉鎖する方向(矢印D方向)の附勢力を及ぼしているものである。
【0052】
上記スプリング36の一端36a側の複数のリング部分36a’は、図7に示すように、上記調整用螺子35の螺子山35aに強く係合しており、該調整用螺子35から分離することはない。また、上記螺子35を右に回すことにより上記一端36aが矢印K方向に移行し、これによりスプリング36の長さを伸長して上記弁体閉鎖方向の附勢力を大きくすることができる。一方上記調整用螺子35を左に回すことにより、上記一端36aを矢印J方向に移行して、これにより上記スプリング36の長さを縮小して上記弁体閉鎖方向の附勢力を小さくすることができる。このように、上記調整用螺子35をドライバー等で回転することにより、弁体開閉強度を極めて容易に調整することができる。
【0053】
37は、警報スイッチであり、上記スイッチ作動片32の上部位置に配置固定されている。この警報スイッチ37において37aはスイッチ操作部であり、上記作動片32の支持部32aに対向する位置に位置しており、上記スイッチ作動片32が矢印J方向に直線移動することにより、上記スイッチ操作部37aは、上記操作部32bのテーパ面32’に押されて、上記スイッチ作動片32の直線運動の方向に交差(直交)する方向に移動してオンするように構成されている(図6参照)。
【0054】
第2の実施形態は上述のように構成されるものであるから、以下その動作を説明する。
(1)火災警戒状態
火災警戒状態においては、上記第1の実施形態と同様に一次側と二次側は同一圧力であり、弁体9は上記弁体開強度調整用スプリング36の矢印K方向の附勢力により、常に閉鎖方向(矢印D方向)の附勢力を受けた状態となっている。従って、この状態において、何らかの原因により一次側から二次側への少量の水流が生じても、上記弁体9は容易に開方向へ回動することはなく、誤動作を防止できる。
【0055】
(2)火災発生したときの動作
例えば図8のエリアPにて火災が発生し、当該火災により特定のスプリンクラーヘッド(例えばスプリンクラーヘッド40”)が発砲すると、第1の実施形態と同様に、流水検知装置1において一次側から二次側への水流(矢印E方向)が生じる。
【0056】
そして、当該水流により弁筐体1a内の弁体9が水流により矢印C方向に回動していく。このとき、弁体9の回動に伴ってシャフト8も同方向に回動し、これによりアーム30が弁体開閉強度調整用スプリング36の矢印K方向の附勢力に抗しながら矢印C方向に回動し、これによりスイッチ作動片32が案内レール31に沿って矢印J方向に直線移動していく。
【0057】
そして、上記スイッチ作動片32の移動の過程において、上記作動片32のテーパ面32’が警報スイッチ37のスイッチ操作部37aを押圧し、これにより該スイッチ操作部37aが上記スイッチ作動片32の直線移動方向に直交する方向(交差する方向)に移動して、当該警報スイッチ37がオンする(図6参照)。これにより、警報機が作動して警報音が鳴り、火事が発生したことを住人に知らせることができる。
【0058】
さらに、引き続く、加圧送水ポンプ42の駆動による消火水から圧力送水、これによる上記スプリンクラーヘッド40”等からの放水は、上記第1の実施形態と同様である。
【0059】
このように、第2の実施形態の流水検知装置においても、火災警戒時は誤動作を防止すべく、弁体9に閉鎖方向に附勢力を与え、火災発生時においては、弁体9の回転運動を作動部材の直線運動に変換して、当該作動部材の直線運動により警報スイッチ37をオンするように構成しているため、弁体の開閉強度の調整をする際には、上記作動部材の直線運動に対して附勢力を作用させれば良く、上記弁体の開閉強度の調整を極めて簡単な構造で行うことができる。また、その調整も第1の実施形態と同様に、ドライバー等の工具により簡単に行うことができ、例えば上記弁体強度調整用螺子35の螺子頭に対向する位置にドライバー等の工具挿入孔を設けておけば、より整備性を向上させることができる。
【0060】
また、作動部材としてのスイッチ作動片32(テーパ面32’)の直線移動によりスイッチ操作部37aがスイッチ作動片32(テーパ面32’)に当接して上記直線運動に直交する方向に移動することにより該スイッチ37がオンする構成であるから、警報スイッチ37をオンさせるにあたって、スイッチ作動片32の移動ストロークをあまり正確に調整する必要はなく、よって、誤動作を防止しつつ構造簡単な流水検知装置を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の消火設備用流水検知装置の側面断面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図2のY−Y線断面図であり、弁体閉鎖状態を示す図である。
【図4】図2のY−Y線断面図であり、弁体開放状態を示す図である。
【図5】(a)は本発明に係る第2の実施形態の消火設備用流水検知装置の警報スイッチ作動機構を示す正面図、(b)は(a)の側面図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の消火設備用流水検知装置の警報スイッチ機構を示す正面図であり、弁体開放状態を示す図である。
【図7】同上装置の弁体開放強度調整用螺子近傍の構成を示す側面図である。
【図8】集合住宅におけるスプリンクラー設備の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 流水検知装置
1a 弁筐体
8 弁体シャフト
9 弁体
14 ピニオンギア
16 ラックギア
16c 作動部
17 案内ガイド
18、35 弁体開閉強度調整用螺子
20、36 弁体開閉強度調整用スプリング
22、37 警報スイッチ
23、37a スイッチ操作部
30 アーム
31 案内レール
32 スイッチ作動片
32’ テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁筐体内に弁体をシャフトにより開閉可能に軸支し、弁筐体の一次側から二次側に向かう水流により上記弁体を開放してスイッチを動作状態とする消火設備用流水検知装置において、
上記シャフトの一端を上記弁筐体外側に突出し、該弁筐体外側における上記シャフトに、上記弁体の開閉動作に伴う該シャフトの回転運動を該シャフトに直交する直線運動に変換する変換機構を取り付け、
かつ、上記弁体の開動作に基づいて上記変換機構によって変換された上記直線運動を行い上記スイッチを作動させる作動部材を設け、
さらに上記作動部材の運動方向に対して対向方向の附勢力を及ぼす附勢手段と、該附勢手段の附勢力を調整し得る調整手段とを設けたものであることを特徴とする消火設備用流水検知装置。
【請求項2】
上記スイッチは、上記作動部材が上記直線運動を行うことにより、該作動部材に当接して上記直線運動方向に交差する方向に移動することによりオンするスイッチ操作部を有するものであることを特徴とする請求項1記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項3】
上記変換機構は、上記シャフトに設けられたピニオンギアと、該ピニオンギアに噛合するラックギアにより構成される機構であることを特徴とする請求項1又は2記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項4】
上記変換機構は、上記シャフトに設けられたアームと、上記シャフトに直交する方向の案内レールと、上記シャフトの回転に基づく上記アームの回動により上記案内レールに沿って直線運動を行うスイッチ作動片とから構成される機構であることを特徴とする請求項1又は2記載の消火設備用流水検知装置。
【請求項5】
上記附勢手段は上記作動部材に接続されたスプリングであり、上記調整手段は上記スプリングを伸縮調整し得る調整螺子であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の消火設備用流水検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220434(P2006−220434A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31683(P2005−31683)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(593192900)株式会社立売堀製作所 (22)
【出願人】(504318429)大明機械工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】