説明

消火設備

【課題】 薬剤による高い消火効果を維持しつつ、配管内の腐食を防止すること、及び、薬液の膨張に伴う配管の損傷を防止すること。
【解決手段】 消火ヘッド6が接続された二次側配管5と、その二次側配管の基端側に設けられた流水検知装置1とを備えた消火設備において、二次側配管内に、消火ヘッドの放水口の内径よりも小さい中空の球体15を、消火水と共に充填した。
球体15aは、火災時の熱によって溶ける材質からなり、球体内には、消火剤16が封入されている。
中空の球体15bは、二次側配管内に充填された消火水の膨張に伴う高圧で破壊されうる材質からなり、中空は真空である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災を消火する消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるような消火設備のシステムがある。この従来の消火設備は、消火薬剤を貯えた薬剤タンクと、混合器とを備え、火災時には、薬剤タンク内の消火薬剤と水とを混合器で混合して消火薬液を生成する。そして、消火ヘッドが接続された二次側配管に、消火薬液を送水し、消火ヘッドから消火薬液を放水して火災を消火するものである。水に消火薬剤を添加した場合は、水だけによる消火に比べ消火効率が高いことがわかっている。このような水に薬剤を加えて消火する設備は、主に駐車場などに設置されることが多い。
【特許文献1】特開平5−345045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の消火設備では、通常時も二次側配管内に消火薬液が充填されているが、消火薬剤には腐食性を有するものがあり、長期間にわたって、配管内に消火薬液が充填されていると、配管内が腐食してしまうという問題がある。
【0004】
また、駐車場などは室内と違い空調設備がないことから、外気の影響を受けやすく、二次側配管内に消火薬剤が充填されていると、夏期では、温度の上昇により配管内が異常昇圧するという問題がある。また、冬季では、充填した消火薬液の凍結に伴う膨張により配管が損傷してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、薬剤による高い消火効果を維持しつつ、配管内の腐食を防止すること、及び、薬液の膨張に伴う配管の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、消火ヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管の基端側に設けられた流水検知装置とを備えた消火設備において、二次側配管内に、前記消火ヘッドの放水口の内径よりも小さい中空の球体を、消火水と共に充填したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、消火剤を封入した球体を、二次側配管内に充填したので、通常時は、二次側配管と消火剤とは触れあうことがないので、例え、腐食性のある消火剤を使用したとしても、二次側配管が、消火剤によって腐食することはない。同様に、外気によって消火剤が劣化することもない。また、球体は、火災時の熱によって溶ける材質からなるので、消火ヘッドから水と共に放水されると、球体は、火災の熱によって溶け、火災には水に加えて消火剤が放水されることになり、高い消火効果を維持することができる。
【0008】
また、中空の球体として、中が真空状態のものを、二次側配管内に充填しておくと、配管内の水が膨張して、配管内の圧が異常に上昇した場合に、球体は、高圧によって破壊される。このため、二次側配管内では、膨張した水が、球体の真空部分に流れこみ、配管内の圧力は低下するので、配管の損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図1、図2により説明する。図1において、1は流水検知装置で、この一次側には一次側配管2が接続されている。一次側配管2の基端側には加圧送水装置としての水槽及びポンプが設けられる。また、加圧送水装置と流水検知装置1との間には、混合装置3と消火剤タンク10とが設けられる。消火剤タンク10は一次側配管2から分岐した配管11と接続されると共に、配管12を介して混合装置3と接続されている。
【0010】
6は消火ヘッドとしての閉鎖型噴霧ヘッドで、二次側配管5に接続され、二次側配管5の基端側には流水検知装置1が設けられる。なお、13は末端試験弁で、二次側配管5の末端に設けられる。
【0011】
図2は、二次側配管5の断面図で、二次側配管5内に消火水と共に充填された中空の球体15を拡大図で示している。この球体は、内部が空洞になっている中空部を有する。球体15には、二種類あり、球体15aは、中空部には、消火剤16が封入されている。消火剤は、不活性ガス、粉末の消火剤、腐食性のある液体の消火剤いずれを使用してもよい。そして、球体15a自体は、火災時の熱によって溶ける材質、例えば、樹脂、ガラスなどからなる。火災時の熱によって溶融する樹脂内に消火剤を封入する方法としては、例えば、特開平11−413号公報などに記載の方法がある。
【0012】
また、球体15bは、中空部には、何もなく、真空状態になっている、この球体15bは、ガラスなどから作られている。なお、球体15bのガラスの強度は、二次側配管内5に充填された消火水の膨張に伴う高圧、例えば1〜2MPaで破壊されて割れる程度となっている。
【0013】
どちらの球体15a,15bも、大きさは同じであり、その外径は、少なくとも、消火ヘッド6の放水口の内径よりも小さく形成され、火災時に、図示しない放水口に詰まることなく、放水されるようにしてある。また、球体15の比重は、水と同じになるようにすすることが好ましく、水と同じ比重であれば、配管内の下部に溜まったりして停滞せず、水と分離することはない。
【0014】
球体15としては、消火ヘッド6の放水口よりも小さければよいとしたが、もっと微少なものを使用することが望ましい。これは、微少なほど、流動性がよく、放水時に水と一緒になって放水されるからである。球体15の一例としては、一般的にはシラスバルーン、ガラスバルーン、カーボンバルーン等として知られているものが使用される。
【0015】
これらの中で強度と経済性の点でガラスバルーンが最も優れている。ガラスバルーンとしては、住友3M(株)の”スコッチライト(商標)”グラスバブルスや旭硝子(株)のセルスター(商標)および富士デヴィソン化学(株)ガラスマイクロバルーン等が知られている。これらのガラスバルーンは種々の性状のものがあるが、平均粒子径が1000μm以下のものを使用する。なお、この微少ガラス球を、製造段階において、窒素雰囲気下で製造すれば、球体の中空部に不活性ガスが封入された球体を作ることができる。
【0016】
このような球体15は、消火水と共に二次側配管5内に充填されている。なお、異常昇圧に伴う配管の損傷を防止することを主に目的とする場合には、球体15bだけを充填すればよく、また、消火効果を向上させることを目的とする場合には、球体15aだけを充填すればよく、両方の球体15を必ず一緒に充填させる必要はない。
【0017】
配管5への充填は、混合装置3と消火剤タンク10とによって行われる。消火剤タンク10内には、球体15a,15bが水と共に貯えられている。そして、加圧送水装置から水を混合装置3及び消火剤タンク10に送水し、混合装置3で、加圧送水装置から送水された水に、消火剤タンク10から送られた球体15入りの水を加えて二次側配管5に供給する。この際、二次側配管5の消火剤濃度が3%程度になるように混合装置3で設定されている。なお、消火設備としては、混合装置3と消火剤タンク10とを使用しているが、これらは必須の構成機器ではなく、例えば、加圧送水装置を構成する水槽内に、球体15a,15bを入れておいてもよい。
【0018】
以上のような消火設備における作用について説明する。まず、通常時、外気の温度の影響をうけて二次側配管5内の消火水の圧力が上昇する場合について説明する。この場合、配管内の圧が異常に上昇し、内部の圧力が2〜3MPa以上になると、球体15bは、高圧によって割れて、破壊される。そうすると、二次側配管5内では、膨張した水が、球体15bの中空部の真空部分に流れこみ、その結果、配管内の圧力は低下するので、配管の損傷を防止することができる。
【0019】
続いて、火災時の場合について説明する。火災が発生すると、消火ヘッド6が動作して、開栓する。消火ヘッド6からは、球体15a入りの水が放水されるが、球体15aは、火災時の熱によって溶ける材質からなるので、火災の熱によって溶けて、火災には水に加えて消火剤16が放水されることになる。このため、水だけで、火災を消火する場合に比べ、消火効率が向上する。ここで、球体15aとしては、中空部全体に消火剤16を封入してもよいが、例えば、消火剤16と加圧空気とを混在させて中空部内に封入すれば、火災時の熱で球体15aが溶けるときに、加圧空気によって消火剤16が飛散して、消火範囲を広げることができる。
【0020】
なお、通常時、二次側配管5内には、消火剤16が充填されているわけであるが、消火剤16は、球体15a内に封入されているので、二次側配管5とは触れあうことがない。このため、長期間にわたって、消火剤16が配管内にあっても、二次側配管5が、消火剤16によって腐食することはない。
【0021】
また、万が一、消火ヘッド6に物がぶつかるなどして、火災でないにも関わらず放水されるような場合、この場合には、消火ヘッド6から球体15aが水と共に放水されても、熱によって溶けることはないので、消火剤16は球体内にそのまま封入された状態である。このため、放水現場には、水しか放水されないので、消火剤によって生成される泡など後始末が不要であり、復旧作業が容易となる。また、消火剤による環境への影響も小さくできる。
【0022】
本発明は、以上説明した通りであり、消火設備の配管内に、実施形態で説明したような、球体を充填することが特徴である。このため、消火設備としては、予作動式など、どのようなシステムに適用してもよい。
【0023】
また、ガラス製の球体内に、常温で液体の消火剤と、一部気泡とを封入してもよい。この場合には、球体が火災部分に放出されると、熱により球体の内圧が上昇して、球体が破壊される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の消火設備のシステム図である。
【図2】二次側配管の断面図と充填される球体の拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1 流水検知装置、 2 一次側配管、 3 混合装置、 5 二次側配管、
6 消火ヘッド、 10 消火剤タンク、 11 配管、 12 配管、
13 末端試験弁、 15 球体、 tt 16 消火剤、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火ヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管の基端側に設けられた流水検知装置とを備えた消火設備において、
前記二次側配管内に、前記消火ヘッドの放水口の内径よりも小さい中空の球体を、消火水と共に充填したことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記球体は、火災時の熱によって溶ける材質からなり、球体内には、消火剤が封入されていることを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項3】
前記中空の球体は、前記二次側配管内に充填された前記消火水の膨張に伴う高圧で破壊されうる材質からなり、中空は真空であることを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項4】
ガラス製の前記球体内に、常温で液体の消火剤と、一部気泡とを封入し、火災時の熱により球体の内圧が上昇して、球体が破壊されることを特徴とする請求項1記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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