説明

消臭機能付き粘着シートおよびこれを備えた粘着クリーナ

【課題】優れた消臭性能と、埃などの除去性能とを兼ね備えた消臭機能付き粘着シートと、これを備えた粘着クリーナの提供。
【解決手段】基材シート上に粘着層が形成され、この粘着層には、0.01g/m以上の消臭基剤(A)と、常温で液体であり、沸点が120℃以上である高沸点溶剤(B)と、粘着剤(C)とが含まれる消臭機能付き粘着シートである。消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)との質量比率((B)/(A))は、0.001〜100であることが好ましい。この消臭機能付き粘着シートをローラ面上に備えるローラ部材と、該ローラ部材を回動自在に支持するシャフト部材とにより、粘着クリーナを構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば衣類に付着した埃などと臭いとを除去するために使用される消臭機能付き粘着シートおよびこれを備えた粘着クリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スーツ、制服などの衣類についた臭いを除去するために、消臭剤組成物がスプレー容器に充填された、いわゆる消臭スプレーが開発されている(例えば特許文献1参照。)。また、衣類に付着した埃、髪の毛、ペットの毛等を除くための製品として、粘着層がローラ面に形成されたローラタイプの粘着クリーナも市販されている。
【0003】
ところが、埃、髪の毛、ペットの毛等と、臭い(タバコ臭、調理臭、ペット臭など。)とが付着した衣類からこれらを除去するためには、臭いを消臭スプレーで除去し、一方、埃、髪の毛、ペットの毛等を粘着クリーナで除去する必要があり、作業が面倒であった。
また、消臭スプレーを使用した場合には衣類が濡れてしまうため、消臭スプレーの使用直後に衣類をすぐに着用できないという問題もあった。
【0004】
このような事情を背景として、例えば特許文献2には、埃などを除去するための接着剤(粘着剤)と衣類に香りを付与するための香料とを基材上に備えた手持ち式ローラが開示されている。このような手持ち式ローラを使用すると、衣類などの被処理物上でローラを転がすだけで、埃などの除去と香りの付与とを同時に行えるものと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−239118号公報
【特許文献2】特表2008−509288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような手持ちローラを使用しても、埃などの除去と香りの付与とを共に満足のいくレベルで行うことは困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、優れた消臭性能と、埃などの除去性能とを兼ね備えた消臭機能付き粘着シートと、これを備えた粘着クリーナの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、特定量の消臭基剤とともに、特定の溶剤を粘着層に含有させることによって、粘着層の粘着力を維持したまま、粘着層に優れた消臭機能を付与できることに想到して、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の消臭機能付き粘着シートは、基材シート上に粘着層が形成され、前記粘着層には、0.01g/m以上の消臭基剤(A)と、常温で液体であり、沸点が120℃以上である高沸点溶剤(B)と、粘着剤(C)とが含まれることを特徴とする。
前記消臭基剤(A)と前記高沸点溶剤(B)との質量比率((B)/(A))は、0.001〜100であることが好ましい。
また、前記粘着層には、前記消臭基剤(A)が0.3〜10g/m含まれ、前記高沸点溶剤(B)が8g/m以下の範囲で含まれ、かつ、前記質量比率((B)/(A))は、0.001〜30であることがより好ましい。
前記消臭基剤(A)は、界面活性剤、植物抽出液、シリカ微粒子、ポリヒドロキシアミン化合物、シクロデキストリン、イオン性高分子からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記消臭基剤(A)は、アミンオキシド型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
本発明の粘着クリーナは、前記消臭機能付き粘着シートをローラ面上に備えるローラ部材と、該ローラ部材を回動自在に支持するシャフト部材とを具備することを特徴とする。
本発明のクリーニング方法は、前記消臭機能付き粘着シートまたは前記粘着クリーナの粘着層を被処理物に接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の消臭機能付き粘着シートと、これを備えた粘着クリーナによれば、優れた消臭性能と、埃などの除去性能とを兼ね備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の消臭機能付き粘着シート(以下、粘着シートという場合もある。)は、基材シートと、基材シートの少なくとも片面上に形成された粘着層とを有し、粘着層の表面を衣類などの被処理物に接触させることによって、タバコ臭、調理臭、ペット臭などの臭いと、ホコリ、髪の毛、ペットの毛などとを被処理物から除去するものである。
基材シートは、粘着層を保持するシート状物であって、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックからなるシート、セルロース系材料からなるシート、不織布などからなり、例えば厚さ1〜1000μmのシート状物が挙げられる。
【0012】
粘着層は、消臭基剤(A)と、高沸点溶剤(B)と、粘着剤(C)とを少なくとも含有して形成される。
(消臭基剤(A))
消臭基剤(A)としては、感覚的消臭基剤、物理的消臭基剤、化学的消臭基剤、生物的消臭基剤等が挙げられる。
感覚的消臭基剤は、悪臭を感じさせなくさせるものであり、合成香料や天然香料等が挙げられる。
物理的消臭基剤は、基剤自身または基剤を構成する分子中に存在する孔の中に、悪臭分子を取り込むことによって、臭いを発生させないようにするものであり、シリカ微粒子、シクロデキストリン、カンファー、ボルネオール、活性炭等が挙げられる。
化学的消臭基剤は、悪臭成分と化学反応することにより、臭いを弱くしたり、無臭の成分に変換したりするものであり、界面活性剤(カチオン性界面活性剤(塩化ジデシルジメチルアンモニウム等)、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のイオン性界面活性剤など。)、イオン性高分子(カチオン性高分子(ポリビニルピロリドン)、アニオン性高分子、両性高分子など。)、各種酸、塩基成分(ポリヒドロキシアミン化合物(トリスヒドロキシメチルアミノメタンなど。)が挙げられる。
生物的消臭基剤は、汗などの分泌物を分解する細菌の数を減らしたり、細菌の増殖を抑制したりすることで、臭いの発生を抑制する基剤であり、除菌・抗菌剤(例えば塩化ジデシルジメチルアンモニウムなど。)が挙げられる。
また、植物抽出物のような感覚的消臭と化学的消臭の両作用機構を持つような消臭基剤も用いることができる。
消臭基剤(A)は、1種以上を使用できる。
【0013】
これらのなかでも、消臭効果が優れることから、界面活性剤、植物抽出液、シリカ微粒子、ポリヒドロキシアミン化合物、シクロデキストリン、イオン性高分子が好ましく、なかでも、両性界面活性剤が好ましい。両性界面活性剤は、その詳細な理由は明らかではないが、粘着層に含有させた形態においても、優れた消臭効果を発揮でき、粘着層に含有させることによる消臭効果の低下が少ない点で好ましい。具体的には、アミンオキシド型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく、なかでも、下記構造式(1)または(2)で示される化合物がさらに好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中、Rは炭素数8〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−及び−O−から選ばれる基であり、aは0又は1である。また、Rは好ましくは炭素数10〜16、さらに好ましくは炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖であり、特に直鎖のアルキル基が好ましい。Rは好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、R及びRは、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、Aは好ましくは−COO−又は−CONH−である。
【0016】
【化2】

【0017】
式(2)中、R、R及びAは式(1)と同じ内容を示す。Rは炭素数8〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rはヒドロキシ基を有してもよい炭素数1〜5のアルキレン基であり、BはCOO−、−SOから選ばれる基であり、bは0又は1である。また、Rは好ましくは炭素数8〜18、特に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基である。Rは好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、R及びRは好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、Rは好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基であり、Aは好ましくは−COO−又は−CONH−である。Bは好ましくは−COO又は−SOである。
【0018】
消臭基剤(A)の量は、粘着シートに使用した際の消臭効果の観点から、粘着シートのシート面単位面積あたり、0.01g/m以上とすることが必要であり、より好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.3g/m以上、さらに好ましくは0.5g/m以上である。一方、ホコリ、髪の毛、ペットの毛などを取除く粘着力を低下させずに維持する観点などからは、10g/m以下が好ましく、より好ましくは8g/m以下、さらに好ましくは5g/m以下である。
【0019】
(高沸点溶剤(B))
高沸点溶剤(B)は、消臭基剤(A)を粘着シートに適用した際において、消臭基剤(A)が十分な消臭効果を発揮するために必要な成分であり、常温で液体で、沸点が120℃以上の溶剤である。沸点の上限には特に制限はない。沸点が120℃未満の溶剤を用いた場合には、粘着シートの製造工程や、粘着シートの保管中などに、溶剤が揮発しやすい。そのため、消臭基剤(A)が粘着層中で凝集したり、粘着シートを被処理物に接触させても消臭基剤(A)が移行しにくくなったりし、その結果、消臭基剤(A)に十分な消臭効果を発揮させることが困難となる。
なお、ここで常温とは、日本薬局方に準じて、15〜25℃のことをいう(日本薬局方に準ずる。)。
【0020】
高沸点溶剤(B)は、消臭基剤(A)成分と相溶するか、消臭基剤(A)を分散させるものであり、例えば、トリアセチン、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、イソプロピルミリステート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、安息香酸ベンジル、エチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、ジメチルフタレート、イソプロピルパルミテート、ジプロピレングリコール、ファルネセン、ジオクチルアジペート、グリセリルトリブタノエート、1,2−ペンタンジオール、プロピレングリコールジアセテート、ヘキサデシルアセテート、エチルアビエテート、メチルアビエテート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルアセチルシトレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、メチルジヒドロアビエテート、イソトリデシルミリステート、リモネンポリマー、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、流動パラフィンが例示され、1種以上を使用できる。
なかでも、消臭効果を十分に発揮させることができ、汎用性も高い点で、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、ジプロピレングリコールなどが好ましい。
【0021】
高沸点溶剤(B)は、消臭基剤(A)の消臭効果を十分に発揮させる観点から、前記消臭基剤(A)と前記高沸点溶剤(B)との質量比率((B)/(A))として、0.001以上が好ましく、より好ましくは0.1以上である。この質量比率が大きくなっても、消臭効果の観点からは問題はないが、過度に大きくなると、粘着層の粘着力が低下する傾向があり、粘着性を維持するために、過剰な量の粘着剤(C)を粘着層に配合する必要が出てくる場合などがある。そのような観点と、高沸点溶剤(B)のコスト面などからは、100以下が好ましく、より好ましくは30以下、さらに好ましくは10以下である。
また、粘着シートの単位面積あたりでは、高沸点溶剤(B)は好ましくは0.001g/m以上、より好ましくは0.01g/m以上、さらに好ましくは0.1g/m以上であり、好ましくは10g/m以下、より好ましくは8g/m以下、さらに好ましくは5g/m以下である。
【0022】
(粘着剤(C))
粘着剤(C)は、被処理物に付着したホコリ、髪の毛、ペットの毛などを取除く粘着力を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然ゴム、スチレン/ブタジエンラテックス系粘着剤、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、熱可塑性ゴムABAブロックポリマー、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。熱可塑性ゴムABAブロックポリマーにおいて、Aは熱可塑性のポリスチレンブロック、Bはポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリブチレンブロックを表す。アクリル系粘着剤の主成分は(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であり、いかなる(メタ)アクリル酸エステルも使用することが可能である。
【0023】
粘着剤(C)の量は、粘着剤(C)の種類にもよるが、ホコリ、髪の毛、ペットの毛などを取除く粘着力の観点からは、1g/m以上が好ましく、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは5g/m以上であり、コストの観点などからは、50g/m以下、好ましくは40g/m以下、さらに好ましくは30g/m以下である。
【0024】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、基材シート上に、消臭基剤(A)と、高沸点溶剤(B)と、粘着剤(C)とを少なくとも含有する粘着層を形成することにより製造できる。
粘着層の形成方法としては、消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)と粘着剤(C)とを少なくとも含有する組成物を調製し、この組成物を基材シート上に塗布(コーティング)または印刷する方法や、容器等に入れられた組成物中に基材シートを浸漬する方法などが挙げられる。
その他の方法としては、粘着剤(C)を含み、消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)とを含まない層を基材シート上に形成した後、この層に消臭基剤(A)および高沸点溶剤(B)を付着させる方法が挙げられる。具体的には、まず、粘着剤(C)を含み、消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)とを含まない組成物を調製し、この組成物を基材シート上に塗布(コーティング)または印刷したり、容器等に入れられた組成物中に基材シートを浸漬したりして、消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)とを含まない層を形成する。ついで、この層の表面に、消臭基剤(A)と高沸点溶剤(B)とを含有する組成物を塗布または噴霧するなどして付着させたり、消臭基剤(A)を含む組成物と高沸点溶剤(B)を含む組成物とをそれぞれ調製し、これらを塗布または噴霧するなどして付着させたりする方法が挙げられる。
【0025】
上述の各組成物には、消臭基剤(A)、高沸点溶剤(B)、粘着剤(C)を溶解させる溶媒を適宜加えて、組成物の濃度や粘度を調整してもよい。ここで溶媒を使用した場合には、この溶媒が揮発し、かつ、消臭基剤(A)や高沸点溶剤(B)が揮発しにくい条件で、溶媒を乾燥することが好ましい。この際に使用される溶媒としては、最終的に得られた粘着シートの粘着層には残存しないものが好ましく、沸点が120℃未満のものが好ましい。例えば、1価アルコール類、2価アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ケトン類、脂環族炭化水素類等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、トルエン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が挙げられ、これらを1種以上使用できる。なかでも、これらの有機溶剤のうち、安全性、使用時における臭気の点から、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコールや水が好ましく、エタノール、2−プロパノール、水がさらに好ましい。
【0026】
粘着シートは、2次元のシート形状のままで使用されてもよいが、例えば、粘着シートをローラ面上に備えるローラ部材と、該ローラ部材を回動自在に支持するシャフト部材とを備えた粘着クリーナの形態で使用されてもよい。
このような粘着クリーナを製造する場合には、まず、外形円柱状のローラ部材を用意し、このローラ部材のローラ面(外周面)上に、基材シートの片面に粘着層が形成された粘着シートの粘着層が外側になるように、該粘着シートを巻き付ける。そして、ローラ部材を回動自在に支持するとともに使用者に把持されるシャフト部材をローラ部材に取り付ければよい。このような粘着クリーナであれば、使用者がシャフト部材を把持し、ローラ部材がその軸線を中心として回動するように、被処理物上に転圧することによって、臭いと、ホコリ、髪の毛、ペットの毛などとを効率よく被処理物から除去することができる。
また、このように粘着クリーナの形態とする場合には、基材シートにおける粘着層が形成されていない側の面に剥離塗工剤等を塗布して、剥離加工することが好適である。剥離塗工剤としては、シリコーン、ポリビニルカルバメート、フルオロカーボンポリマー等が挙げられる。
【0027】
以上のように、上述の粘着シートと、これを具備した粘着クリーナによれば、優れた消臭性能と、埃などの除去性能とを兼ね備えることができる。より好ましくは、粘着層には、消臭基剤(A)が0.3〜10g/m含まれ、高沸点溶剤(B)が8g/m以下の範囲で含まれ、かつ、質量比率((B)/(A))が0.001〜30であると、消臭性能と、埃などの除去性能とがバランスよく優れる。
【実施例】
【0028】
本発明について、実施例を示してさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(10cm×75cm)の片面に、アクリル酸アルキルエステル系共重合体を含有する溶液を塗布し、溶液に含まれる溶媒を乾燥させ、粘着剤(C)層を形成した。この際、粘着剤(C)であるアクリル酸アルキルエステル系共重合体としての塗布量が8g/mとなるように、塗布量を調整した。
一方、(A)成分であるラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(A−1)と、(B)成分であるジプロピレングリコール(B−1)とをそれぞれ2質量%となるように、2−プロパノールに溶解し、得られた溶液をスプレー容器(ライオン(株)製、商品名「スタイルガードしわもニオイもすっきりスプレー携帯用」)に充填した。
ついで、粘着剤(C)層の表面に、スプレー容器内の溶液を7.5g噴霧した後、室温で12時間自然乾燥させて粘着層を形成し、粘着シートを製造した。
そして、市販の粘着クリーナ(住友スリーエム(株)製、商品名「ペタコロ」)の具備するローラ部材のローラ面上に、粘着層が外側となるように粘着シートを巻き付け、粘着クリーナとした。
得られた粘着クリーナのシャフト部材を把持し、ローラ部材を被処理物の上に転がし、粘着シートの消臭性と埃除去性を評価した。
【0029】
[評価方法と判断基準]
(1)消臭性の評価
縦50cm×横30cm×高さ50cmの段ボール箱を用意し、この段ボール箱内上部に、(株)谷頭商店より入手したウールサージ布(15cm×20cm)16枚を吊るした。そして、この段ボール箱内(底部)に、火を付けたタバコ(日本たばこ産業(株)製、商品名「マイルドセブン」)を置き、段ボール箱を密閉して5分間放置した。
放置後、ウールサージ布を段ボール箱から取り出し、25℃、45%RHの室内で30分放置したものを試験布(被処理物)とし、この試験布の両面上において、粘着クリーナをそれぞれ2回ずつ転がした。
このように処理した後の試験布の臭いを10人のパネラーに嗅いでもらい、下記の6段階の臭気強度表示法で評価してもらい、平均値を求めた。
粘着クリーナを使用する前の試験布の臭気強度は5点であることから、4点以下であれば消臭効果があったと感じられるレベルとなる。
0点:無臭
1点:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ
2点:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い
3点:明らかに感じる臭い
4点:強い臭い
5点:耐えられないほど強い臭い
【0030】
(2)埃除去性
ウールジョーゼット(毛100%、71066−10RTVOW 187)を10cm×15cmに裁断し、その片面上に綿埃200mgを散布し、試験布とした。そして、綿埃が散布された面上において、粘着クリーナをそれぞれ2回ずつ転がし、綿埃を粘着層に捕捉した。
ついで、試験布に残存した綿埃を回収し、その質量を測定し、下記式を用いて「埃除去率」を算出した。
埃除去率が80%以上であると、合格レベルである。
【0031】
埃除去率(%)=[200(mg)−残存した綿埃量(mg)]×100/200mg
【0032】
(実施例2〜32、比較例1〜5)
A成分およびB成分を表に示す物質および量とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートおよび粘着クリーナを得て、同様に評価した。
【0033】
表に示す各成分は以下のとおりである。
(A) 成分:消臭基剤
A−1:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(川研ファインケミカルズ(株)製、商品名「ソフタゾリンLAO」):該(A−1)は、式(1)の化合物に相当し、式(1)中のRがC1122、RがC、R及びRはいずれもCH、AはCONH、aは1である。
A−2:ラウリン酸アミドプロピルベタイン(川研ファインケミカルズ(株)製、商品名「ソフタゾリンLPB」):該(A−2)は、式(2)の化合物に相当し、式(2)中のR及びRはいずれもCH、RはC1122、RはC、RはCH、AはCONH、BはCOO、bは1である。
A−3:塩化ジデシルジメチルアンモニウム(ライオンアクゾ(株)製、商品名「アーカード210」)
A−4:植物抽出液(シムライズ(株)製、商品名「Flowerpone Lavender」)
A−5:コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスAK」)
A−6:トリスヒドロキシメチルアミノメタン(関東化学(株)製)
A−7:β-シクロデキストリン(日本食品化工(株)製、商品名「セルデックスB」)
A−8:ポリビニルピロリドン(日本触媒(株)製、商品名「K−30」)
A−9:特開2002−146399号公報記載の表11〜18記載の香料組成物A
【0034】
(B)成分:高沸点溶剤または沸点が120℃未満の溶剤
B−1:ジプロピレングリコール(沸点が232℃であり、常温で液体。)
B−2:安息香酸ベンジル(沸点が324℃であり、常温で液体。)
B−3:ヘキシレングリコール(沸点が198℃であり、常温で液体。)
B−4:流動パラフィン(沸点が238℃であり、常温で液体。)
B−5:アセトン(沸点が56℃であり、常温で液体。)
B−6:イソプロピルミリステート(沸点193℃であり、常温で液体。)
B−7:イオン交換水(沸点100℃であり、常温で液体。)
【0035】
(C)粘着剤:アクリル酸アルキルエステル系共重合体(一方社油脂工業(株)製、商品名「バインゾールR−5540」)
【0036】
2−プロパノール:三洋化成品(株)製
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
以上の結果から、各実施例によれば、優れた消臭性能と、埃などの除去性能とをバランスよく発揮させることができた。また、特に、消臭基剤(A)が0.3〜10g/m含まれ、高沸点溶剤(B)が8g/m以下の範囲で含まれ、かつ、質量比率((B)/(A))が0.001〜30である例では、消臭性能と埃などの除去性能とがよりバランスよく、優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に粘着層が形成され、
前記粘着層には、0.01g/m以上の消臭基剤(A)と、常温で液体であり、沸点が120℃以上である高沸点溶剤(B)と、粘着剤(C)とが含まれることを特徴とする消臭機能付き粘着シート。
【請求項2】
前記消臭基剤(A)と前記高沸点溶剤(B)との質量比率((B)/(A))は、0.001〜100であることを特徴とする請求項1に記載の消臭機能付き粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層には、前記消臭基剤(A)が0.3〜10g/m含まれ、前記高沸点溶剤(B)が8g/m以下の範囲で含まれ、かつ、前記質量比率((B)/(A))は、0.001〜30であることを特徴とする請求項2に記載の消臭機能付き粘着シート。
【請求項4】
前記消臭基剤(A)は、界面活性剤、植物抽出液、シリカ微粒子、ポリヒドロキシアミン化合物、シクロデキストリン、イオン性高分子からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の消臭機能付き粘着シート。
【請求項5】
前記消臭基剤(A)は、アミンオキシド型両性界面活性剤およびベタイン型両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の消臭機能付き粘着シート。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の消臭機能付き粘着シートをローラ面上に備えるローラ部材と、該ローラ部材を回動自在に支持するシャフト部材とを具備することを特徴とする粘着クリーナ。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の消臭機能付き粘着シートまたは請求項6に記載の粘着クリーナの粘着層を被処理物に接触させることを特徴とするクリーニング方法。

【公開番号】特開2011−160916(P2011−160916A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25347(P2010−25347)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】