説明

消臭製品

【課題】ヒト身体の表面及びヒトの身体に極めて近い周辺の消臭効果を有する組成物の提供。
【解決手段】遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系の化合物とから成る抗菌性製品を塗布することから成り、前記化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤から成る、消臭効果の達成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌・消臭組成物の分野に関する。更に、本発明はヒト身体の表面及びヒトの身体に極めて近い周辺の消臭効果の達成に関する。関与する組成物及び方法は遷移金属キレート化剤と特定のフェノール系またはエタノール系の化合物とを使用する。ヒトの身体に使用される本発明の組成物及び方法は一般に、最も悪臭を発生し易い身体領域、例えば、腋窩または足に使用されたときに最も効果的である。
【背景技術】
【0002】
抗菌・消臭組成物は様々な手段によって機能し得る。ヒトの身体に使用されたとき、このような組成物の機能は、皮膚を代表とする身体表面で発汗を抑制するかまたは身体表面の微生物に直接作用することによって微生物の数を有意に減少させることである。本発明は主として後者の作用メカニズムに関する。
【0003】
殆んどの抗菌・消臭組成物は、皮膚の表面で生存する微生物の数を減少させる。汗が皮膚の微生物相によって分解されるまでは一般に無臭であることは公知である。典型的な消臭剤は、エタノール及びトリクロサン(2,4,4′−トリクロロ,2′−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)であり、後者が抗菌剤であることは公知である。しかしながらこのような消臭剤によって得られた消臭効果は時間の経過に伴って消滅し、微生物相はそれらの数を次第に回復する。従って、長期持続性の有効な消臭組成物が市場では絶えず要望されている。即ち、解決すべき課題は、単に身体表面の微生物の数を減少させるだけではない。身体表面(特に、最も悪臭を発生する領域、例えば、腋窩)の微生物の数(特に細菌の数)を少ない状態に維持することが同等に重要である。
【0004】
キレート化剤を含有する消臭組成物は我々の最近の英国特許出願GB0001133.8、GB0001132.0、GB0001131.2、GB0001130.4及びGB0001129.6に記載されている。これらの特許の全部が参照によって本発明に含まれるものとする。これらの特許出願は、ある種のキレート化剤は皮膚表面の微生物が必須遷移金属イオンを養分として摂取することを有効に阻害し、これによって微生物の増殖を最低限にするという仮説を開示している。遷移金属キレート化剤を含む消臭組成物に関する別の参考文献もこれらの特許出願に引用されている。最も適切な文献を以下に列挙する。
【0005】
米国特許US4,356,190(Personal Products Co.)は、皮膚表面のCorynebacteriumによる短鎖脂肪酸の形成を阻害するために、選択されたアミノポリカルボン酸化合物を使用することを開示している。
【0006】
国際特許WO97/02010(Procter and Gamble Co.)は、コハク酸、グルタル酸及びホスホン酸のクラスから選択されたキレート化剤を抗菌化合物として使用することを開示している。
【0007】
国際特許97/44006(Ciba Speciality Chemicals Holding,Inc.)は、皮膚及び紡織繊維材料の抗菌処理に窒素含有錯形成剤を使用することを特許請求の範囲に記載している。
【0008】
国際特許WO97/01360(Concat Ltd.)は、特定の置換ポリアザ化合物をキレート化剤として使用して細菌増殖を阻害する方法を特許請求の範囲に記載している。
【0009】
本発明の研究中に我々は、遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系のトランスフェリン解離促進剤との併用によって、特に長期持続性悪臭抑制が維持されることを観察した。
【0010】
ヒトの汗を含む哺乳動物の汗にトランスフェリンが存在することは、確認された事実である(例えばS.E.Lind,Corros,Sci.,1972,12(9),749参照)。また、ある種の細菌が親鉄剤と細胞表面のトランスフェリン受容体とを含む複雑な鉄捕獲系を利用してトランスフェリンに結合した鉄を利用することも公知である(E.Griffiths and P.Williams,The Iron Uptake Systems of Pathogenic Bacteria,Fungi and Protozoa in Iron and Infection(editors:S.S.Bullen and E.Griffiths),2nd Edn.,1999,John Wiley and Sons,pp 87−212参照)。細菌の親鉄剤以外にも、ある種の化学物質はトランスフェリンからの鉄の遊離を促進することができ、本発明は主として、この種の特定トランスフェリン解離促進剤の使用に関する。より特定的には本発明は、トランスフェリンに結合した鉄(III)からトランスフェリンに結合し難い鉄(II)への還元を補助する作用を果たすフェノール系またはエノール系のトランスフェリン解離促進剤に関する(N.Kojima and G.W.Bates,J.Biol.Chem.,1979,254(18),8847参照)。
【0011】
ある種の遷移金属キレート化剤及びトランスフェリン解離促進剤として作用し得る特定の物質は従来文献では化粧組成物の保存剤/抗酸化剤系として開示されている。しかしながら、開示された量は典型的には極めて少量であり、更に、これらの文献に開示されたトランスフェリン解離促進剤はトランスフェリン解離促進剤としての作用は認識されていない。典型例は欧州特許EP979,644(ITBR−N)であり、該特許は0.05%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)と0.05%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(NaEDTA)とから成る消臭組成物を開示している。
【0012】
(発明の概要)
我々は意外にも、遷移金属キレート化剤と特定のフェノール系またはエノール系の化合物とを有効量で併用することによって優れた抗菌効果及び消臭効果が得られることを知見した。
【0013】
従って本発明の第一の目的によれば、有効量の遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系の化合物とから成る抗菌性製品をヒトの身体または身体に極めて近接して装用される身装品に塗布することから成り、フェノール系またはエノール系の化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤から成る、抗菌および消臭効果の達成方法が提供される。
【0014】
上記本発明の態様において、“有効量”という用語は、抗菌性製品の使用後24時間は有意な消臭効果が観察されるべく十分な量を意味する。“塗布”という用語は、処理される基質に双方の有効成分を付着させることを意味する。
【0015】
本発明の第二の態様によれば、少なくとも0.35重量%の遷移金属キレート化剤と少なくとも0.05重量%のフェノール系またはエノール系の化合物とから成り、フェノール系またはエノール系の化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤であり、前記重量パーセンテージは、存在する揮発性噴射剤を除外して計算される、ヒト身体用の抗菌消臭組成物が提供される。
【0016】
本発明の第三の態様によれば、少なくとも0.35重量%の遷移金属キレート化剤と少なくとも0.05重量%のフェノール系またはエノール系の化合物との混合物を形成する段階から成り、フェノール系またはエノール系の化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤であり、前記重量パーセンテージは、存在する揮発性噴射剤を除外して計算される、ヒト身体用の消臭組成物の製造方法が提供される。
【0017】
(詳細な説明)
本文中に記載したように遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系の化合物を併用するときに優れた抗菌効果及び消臭効果が観察される。遷移金属キレート化剤は、皮膚表面の微生物が必須遷移金属イオン特に鉄(III)を養分として摂取することを阻害し、これによって微生物の増殖を最低限にすることによってこれらの効果の達成に役立つという仮説が考えられるが、この理論に固執することは望ましくない。また、フェノール系またエノール系の化合物は、皮膚表面の微生物がヒトの鉄輸送タンパク質複合体であるトランスフェリンから鉄(III)を抽出するという生化学経路を妨害することによって役立つという別の仮説も考えられる。
【0018】
本発明の第一の態様となる方法を使用する場合、遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系の化合物とが必ずしも同一組成物の部分を構成しなくてもよい。本発明の使用によって得られる抗菌・消臭効果が、キレート化剤及びフェノール系またはエノール系の化合物の個別の塗布によって得られてもよい。処理された基質に双方の化合物が同時に作用するという条件さえ満たせば、このような塗布を同時に行っても順次に行ってもよい。これら成分を個別の組成物から塗布するときは、製品が更に、ヒト身体に双方の組成物を適用するための手段及び/または指示を含むのが好ましい。
【0019】
遷移金属キレート化剤とフェノール系またはエノール系の化合物との双方が同一組成物から塗布されるのが好ましい。
【0020】
本発明によって提供される悪臭抑制方法は、製品の塗布後に効果が長時間、例えば10時間、24時間またはもっと長く持続するので特に有効である。これは消臭効果の延長を表す。即ち、ヒトの身体または身体に密着した身装品で悪臭が発生することを長期にわたって阻止する。
【0021】
上述のように、ヒトの身体に極めて近接して装用される身装品による悪臭発生も本発明によって防御され得る。このような身装品としては、皮膚に接して着用される衣類、例えばストッキングやソックス、及び、靴及びその他の履物がある。
【0022】
遷移金属キレート化剤及びフェノール系またはエノール系の化合物は、1つまたは複数の本発明の組成物中に任意の形態で存在し得る。例えば、これらの成分の一方または双方をそのままで使用してもよく、または、揮発性噴射剤で希釈してエアロゾルとしてもよく、液体を加えてロールオン製品もしくは圧搾スプレー製品としてもよく、担体液体と増粘剤または構造化剤とを使用して例えばクリーム、ジェル、軟質固体または固体スティック製品としてもよい。
【0023】
本発明による抗菌・消臭効果の達成方法は、ヒトの身体に抗菌性製品を塗布する方法であるときに最も効果的である。
【0024】
本発明の抗菌性製品は任意の手段によってヒトの身体に塗布し得る。液体組成物の塗布では、紙、布またはスポンジのような担体マトリックスに吸収させ、この担体マトリックスを身体の表面に接触させることによって塗布する。固体または半固体の組成物は直接接触によって塗布してもよくまたは塗布に先立って液体媒体に溶解または分散させてもよい。塗布が上記の方法の2つ以上の組合せから成ってもよい。
【0025】
遷移金属キレート化剤
好ましい遷移金属キレート化剤は、鉄(III)に親和性をもつ、好ましくは鉄(III)に高い親和性をもつ、即ち、鉄(III)に対して1010よりも大きい結合定数または最適性能には1026よりも大きい結合定数をもつアニオンとの酸または塩である。上記の“鉄(III)結合定数”という用語は、キレート−鉄(III)錯体に対する絶対安定定数を意味する。このような値はpH依存性でなく、キレート化剤の最もアニオン性の完全脱保護形態だけに考えられる。この値は電位差測定法またはその他の多くの方法で測定できる。適当な方法は、“Determination and Use of Stability Constants”,A.E.Martell and R.J.Motekaitis(VCH,New York,1989)に細部まで十分に記載されている。塗布可能値の表は多くの文献、例えば、“Critical Stability Constants”,R.M.Smith and A.E.Martell(Plenum Pub.Corp.,1977)に見出される。
【0026】
本発明で使用されるキレート化剤は好ましくは、少なくとも2つのイオン性酸基をもつ酸形を有している。酸基は好ましくはカルボン酸基及び/またはホスホン酸基であるが、スルホン酸基またはホスフィン酸基でもよく、あるいはこれらの基の任意の混合物でもよい。
【0027】
ホスホン酸基をもつ好ましいキレート化剤は、酸形では、ジエチレントリアミンペンタ(メチルホスホスン)酸(DTPMP)、エタンヒドロキシジホスホン酸(EHDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)及びヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HMDTMP)である。
【0028】
カルボン酸基をもつ好ましいキレート化剤は、アミノポリカルボキシレート化合物である。好ましいアミノポリカルボキシレート化合物の酸形としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸(CDTA)及びエチレンジアミン二コハク酸(EDDS)がある。より好ましいアミノポリカルボキシレートから成るキレート化剤の酸形としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)及びエチレンビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)グリシン](EDDHA)がある。
【0029】
特に好ましいキレート化剤は、3×10−4mol.dm−3以下の濃度で存在するときに微生物Staphylococcus epidermidisの増殖を有意に阻害し得る。支持培地上のS.epidermidisの増殖が少なくとも30%減、好ましくは少なくとも45%減になるときに阻害が有意であると考える。S.epidermidisの増殖阻害の程度を判断する適当な試験を実施例に示す。DTPA及びTTHAは有意な阻害を果たし得るキレート化剤であるが、EDTA及びCDTAは有意な阻害を果たし得ない。
【0030】
キレート化剤は好ましくは、適度な分子量を有している。これは、キレート化剤が酸の形態では1,000未満、より好ましくは200−800、最も好ましくは290−580の分子量を有しており、塩の形態では2,000未満、より好ましくは300−1,400、最も好ましくは500−1,000の分子量を有していることを意味する。
【0031】
キレート化アニオンと会合したカチオンの種類は、組成物の均質性及び安定性の面から極めて重要である。キレート化剤が有機カチオンを有しているのが好ましい。キレート化剤の塩は、キレート化剤の酸基が有機塩基によって完全中和または部分中和された結果として得られる。また、キレート化剤の酸基の一部が有機塩基によって部分中和され、一部が無機塩基によって部分中和された塩も包含される。但し、このような塩では中和可能な酸基の少なくとも40%が有機塩基によって中和されているのが好ましい。
【0032】
適当な有機カチオンはプロトン化または第四級化されたアミンである。芳香族アミンから形成された塩よりも脂肪族アミンを使用して形成された塩のほうが好ましい。更に、キレート化塩を形成するために使用されたアミンが比較的疎水性であり、C−C10末端ヒドロカルビル基から成る少なくとも1個のN−置換基を有しているのが好ましい。
【0033】
本文中のヒドロカルビル基という用語は、炭素原子と水素原子とだけから成るラジカルを意味する。
【0034】
キレート化塩のプロトン化または第四級化された好ましいアミンカチオンは、式R(+)を有しており、ここに、RはHまたはCHを表し;R、R及びRの各々は独立にHまたは0−3個のヒドロキシル基を含む脂肪族もしくは芳香族の置換基を表し、場合によっては、エーテル、アミン、エステルもしくはアミドのような官能基によって遮断及び/または置換されており;但し、R、RまたはRの少なくとも1つはC−C10末端ヒドロカルビル基から成り、場合によってはRとRとが一緒に末端ヒドロカルビル基として環を形成している。
【0035】
上記の式R(+)の好ましい遷移金属キレート化剤のうちでも特に、R、RまたはRの少なくとも1つがN原子またはO原子に直結したH原子を含むことを特徴とするカチオンを有している遷移金属キレート化剤が好ましい。より特定的には、R、RまたはRの少なくとも1つが、O原子に直結したH原子(即ち、ヒドロキシル基)を、1個のN置換基あたり3個以内のヒドロキシル基という上記の範囲内で存在させているのが好ましい。
【0036】
別の特に好ましい遷移金属キレート化剤の塩は、総合すると全部で0−3個のヒドロキシル基、好ましくは0−2個のヒドロキシル基を含むN置換基(式のR、R、R及びR)を含むカチオンを有している。
【0037】
多くの望ましいキレート化剤の塩においては、N置換基(式のR、R、R及びR)の各々がヒドロキシル基を1個しか含まない。
【0038】
特に好ましいキレート化剤の塩は、プロトン化脂肪族アミンから成るカチオンを有しており、例えば、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール及びN,N−ジメチルアミノエタノールの塩である。2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、ジイソプロパノールアミン、2−アミノブタン−1−オール及びシクロヘキシルアミンの塩が特に好ましい。
【0039】
遷移金属キレート化剤は好ましくは、該キレート化剤を構成成分として含む組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の少なくとも0.35重量%のレベルで使用される。キレート化剤は特に、該キレート化剤を存在させている組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の0.45重量%−7重量%のレベル、特に0.65重量%−5重量%のレベルで使用される。また、キレート化剤の混合物を使用してもよい。
【0040】
フェノール系またはエノール系の化合物
フェノール系またはエノール系の化合物は、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤、及び/または、(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤である。以下の試験に合格する物質がクラス(a)の化合物である:
2.7g.l−1のヒトのジフェリックトランスフェリン(Sigma Chemicals製)を水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した50mMのHEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N′−[2−エタンスルホン酸])バッファ中で0.115g.l−1のFerroZine(Sigma Chemicals製;3−(2−ピリジル)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4−トリアジン,一ナトリウム塩)と、被験物質が水溶性であるときは10mmol.l−1の被験物質、水不溶性であるときは微細粉末の形態で添加される2.5g.l−1の被験物質と共に37℃でインキュベートする。
【0041】
24時間後にトランスフェリン解離の程度を目視または分光光度法によって評価する。トランスフェリン解離促進剤が紫色を生じさせたか、特に562nmに0.15以上の吸光度を生じさせたか否かを判定する。このような紫色の呈色は、鉄(II)トリ(FerroZine)錯体産生の結果である。この錯体のモル濃度はトランスフェリンから解離した鉄のモル濃度に等しい。
【0042】
本発明による好ましい水溶性トランスフェリン解離促進剤は、アスコルビン酸(及びその塩)、アスコルビルリン酸ナトリウム、Tocophersolan、プロトカテク酸(及びその塩)、サリチル酸(及びその塩)、Tiron(4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼン二スルホン酸)である。好ましい水不溶性物質は、アスコルビル−6−パルミテート、オイゲノール、フェルラ酸(及びその塩)、チモール、Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)(及びその塩)、トコフェロール、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)及びBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)である。本発明の特に好ましいトランスフェリン解離促進剤はtert−ブチル化フェノール基を含む。
【0043】
tert−ブチル化フェノール基を含む好ましいフェノール系またはエノール系の化合物は、2個のtert−ブチル置換基を有するフェノール基を含む化合物、例えば、BHT、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、及び、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。
【0044】
特に好ましいフェノール系またはエノール系の化合物は、アスコルビン酸(及びその塩)、アスコルビル−6−バルミテート、BHT、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)及びペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。BHTが特に好ましい。
【0045】
フェノール系またはエノール系の化合物は、該化合物を構成成分として含む組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の少なくとも0.05重量%のレベルで使用される。該化合物を構成成分として含む組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の5重量%未満の使用レベルも好ましい。特に、フェノール系またはエノール系の化合物は、該化合物を存在させている組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の0.075重量%−2.5重量%のレベル、特に0.1重量%−1重量%のレベルで使用される。また、フェノール系またはエノール系の化合物の混合物を使用してもよい。
【0046】
(1種または複数の)フェノール系またはエノール系の化合物と(1種または複数の)遷移金属キレート化剤との重量比は好ましくは1:20−2:1の範囲、特に1:10−1:1の範囲である。
【0047】
任意添加成分
担体材料は本発明の製品に対して極めて望ましい追加成分である。担体材料は疎水性または親水性の固体または液体である。好ましい担体材料は液体である。本発明のキレート化剤の塩と共に使用される適当な疎水性液体は液体シリコーン、即ち、液体ポリオルガノシロキサンである。このような材料は環状または線状であり、その例としては、Dow Corningシリコーン流体344、345、244、245、246、556及び200のシリーズ;Union Carbide CorporationのSilicones 7207及び7158;General ElectricのシリコーンSF1202がある。代替的にまたは付加的に、非シリコーン系の疎水性液体も使用し得る。このような材料としては、鉱油、水素化ポリイソブテン、ポリデセン、パラフィン、炭素原子数が少なくとも10個のイソパラフィン、脂肪族または芳香族のエステル油(例えば、イソプロピルミリステート、ラウリルミリステート、イソプロピルパルミテート、ジイソプロピルセバケート、ジイソプロピルアジペート、または、C−C18のアルキルベンゾエート)、及び、ポリグリコールエーテル、例えば、ポリグリコールブタノールエーテルがある。
【0048】
親水性液体担体材料例えば水も使用し得る。
【0049】
特に好ましい液体担体材料は有機溶媒から成る。キレート化剤と有機溶媒との相溶性を補助するために、特に好ましい有機溶媒は2未満、特定的には−2から1の範囲、より特定的には−0.5から0.5の範囲のc.logPを有する比較的親水性の溶媒である。c.logPは、基底10で計算したオクタノール:水の分配係数の対数である。このような値の計算方法は、“Computer−assisted cmputation of partition coefficients from molecular structures using fragment constants”,J.Chou and P.Jurs,J.Chem.Inf.Comput.Sci.,19,172(1979)に記載されている。好ましい有機溶媒は更に、10℃未満、好ましくは5℃未満の融点を有している。これは、低温貯蔵安定度及び取り扱い容易性の双方に有利である。好ましい有機溶媒の1つのクラスは、脂肪族アルコール(一価または多価、好ましくは2−8個の炭素原子を有している)及びポリグリコールエーテル、好ましくは2−5個という少ない反復単位を有しているオリゴグリコールエーテルである。その例は、ジプロピレングリコール、グリセロール(c.logP −1.538)、プロピレングリコール(c.logP −1.06)、ブチレングリコール(c.logP −0.728)、エタノール(c.logP 0.235)、プロパノール(c.logP 0.294)、イソプロパノール(c.logP −0.074)及び工業用変性アルコール(methylated spirits)である。最も好ましい有機溶媒は脂肪族アルコール、特に2−3個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、特定的にはエタノール及びイソプロパノールである。
【0050】
担体材料の混合物も使用し得る。担体材料の使用量は、噴射剤の存在量を除外した組成物の重量の好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは30重量%−99重量%、最も好ましくは60重量%−98重量%である。
【0051】
組成物中に有機溶媒が存在するとき、有機溶媒は好ましくは、組成物の液体成分の全重量の30重量%−98重量%で存在する。より好ましくは有機溶媒は存在する液体全量の60重量%−70重量%を構成する。
【0052】
ある種の組成物、特にロールオンまたは圧搾スプレーの形態の組成物の場合、水性エタノールを担体材料に使用するのが望ましい。製品の均質化を容易にするためには、このような組成物中のエタノール対水の重量比を1:1から2.5:1の範囲、特に1.5:1から2:1の範囲にするのが好ましい。
【0053】
いくつかの用途に対しては、50重量%未満、より好ましくは10重量%未満の水が組成物の液体成分の一部として存在するのが望ましい。いくつかの好ましい組成物では、水以外の液体成分と水との重量比が95:5から99:1の範囲である。このような組成物では、有機カチオンを有しているキレート化塩が特に溶解度及び相溶性に対して有利に作用する。
【0054】
有機溶媒を含む好ましい組成物は、該有機溶媒中のキレート化剤の溶液から成る。このような溶液は好ましくは均質であり、また好ましくは、Pharmacia Biotech Ultraspec 200 Spectrophotometerまたは同様の器具で測定した溶媒に対する吸光度が0.2未満、特に0.1未満である(600nmで1cmの路長)。
【0055】
慣用の有機抗菌剤も本発明の方法及び製品中で有利に使用し得る。添合レベルは好ましくは、これらの抗菌剤を存在させている組成物の重量から同じ組成物中に存在する揮発性噴射剤を除外した重量の0.01重量%−3重量%、より好ましくは0.03重量%−0.5重量%である。このクラスに属する当業界で常用の物質の殆どを利用できる。好ましい追加の有機抗菌剤は殺菌剤、例えば、セチルトリメチルアンモニウム塩のような第四級アンモニウム化合物;クロロヘキシジン及びその塩;ジグリセロールモノカプレート、ジグリセロールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、並びに、“Deodorant Ingredients”,S.A.Makin and M.R.Lowry及び“Antiperspirants and Deodorants”,Ed.K.Laden(1999,Marcel Dekker,New York)に記載されているような同様の物質である。本発明の組成物に使用するためのいっそう好ましい追加の抗菌剤は、ポリヘキサメチレンビグアニド塩、2′,4,4′−トリクロロ,2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン)、及び、3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエノール(ファルネゾル)である。
【0056】
無機の抗菌剤も本発明の組成物に使用し得る。このような物質は適当な濃度で存在するときにしばしば発汗抑制有効成分として作用する。これらはしばしば収斂剤活性塩、特に、アルミニウム、ジルコニウム及びアルミニウム/ジルコニウム混塩から選択される。塩には無機塩、有機アニオンとの塩及び錯体も含める。好ましい収斂剤塩はアルミニウム、ジルコニウム及びアルミニウム/ジルコニウムのハロゲン化物及びハロヒドレート塩、例えばクロロヒドレートである。これらが含まれているとき、好ましい添合レベルは組成物の0.5重量%−60重量%、特に5重量%−30重量%または40重量%、より特定的には5重量%または10重量%から30重量%または35重量%までの範囲である。特に好ましいアルミニウムハロヒドレート塩は活性化アルミニウムクロロヒドレートとして公知であり、欧州特許EP 6,739(Unilever PLC and NV)に記載されている。例えば米国特許US3,792,068(Procter and Gamble Co.)に開示されているいわゆるZAG(ジルコニウム−アルミニウム−グリシン)錯体のようなジルコニウムアルミニウムクロロヒドレート活性剤も好ましい材料である。フェノールスルホン酸亜鉛も好ましくは組成物の3重量%までの量で使用し得る。
【0057】
構造化剤及び乳化剤はある種の製品形態に極めて望ましい本発明組成物の別の追加成分である。使用する場合、構造化剤は好ましくは組成物の1重量%−30重量%で存在し、乳化剤は好ましくは組成物の0.1重量%−10重量%で存在する。適当な構造化剤は、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース系増粘剤、並びに、ジベンジリデンソルビトールである。別の適当な構造化剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルアルコール、セチルアルコール、水素化ヒマシ油、合成ワックス、パラフィン蝋、ヒドロキシステアリン酸、ジブチルラウロイルグルタミド、アルキルシリコーンワックス、クアテルニウム−18ベントナイト、クアテルニウム−18ヘクトライト、シリカ及びプロピレンカーボネートである。適当な乳化剤は、steareth−2、steareth−20、steareth−21、ceteareth−20、グリセリルステアレート、セチルアルコール、セテアリールアルコール、PEG−20ステアレート、ジメチコーンコポリオール、及び、ポロキサミンである。
【0058】
ある種の本発明組成物に望ましい別の乳化剤/界面活性剤は香料可溶化剤及びウォッシュオフ剤である。前者の例は、BASFからCremaphor RH及びCOシリーズで入手可能なPEG−水素化ヒマシ油であり、好ましくは1.5重量%まで、より好ましくは0.3−0.7重量%の範囲で存在する。後者の例は、ポリ(オキシエチレン)エーテルである。ある種の官能調整剤(sensory modifier)は本発明の組成物の別の望ましい成分である。このような材料は好ましくは組成物の20重量%までのレベルで使用される。皮膚緩和剤、保湿剤、揮発性油、不揮発性油、及び、潤滑性を与える粒状固体はいずれも適当な官能調整剤のクラスである。このような材料の例は、シクロメチコーン、ジメチコーン、ジメチコノール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、タルク、微細シリカ(例えば、Aerosil 200)、ポリエチレン(例えば、Acumist B18)、多糖類、コーンスターチ、C12−C15アルコールベンゾエート、PPG−3ミリスチルエーテル、オクチルドデカノール、C7−C14イソパラフイン、ジ−イソプロピルアジペート、イソソルビドラウレート、PPG−14ブチルエーテル、グリセロール、水素化ポリイソブテン、ポリデセン、二酸化チタン、フェニルトリメチコーン、ジオクチルアジペート、及び、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0059】
芳香剤もまた本発明組成物中の望ましい追加成分である。適当な材料は香油のような慣用の香料であり、また、欧州特許EP 545 556及びその他の刊行物に記載されているようないわゆるデオ−パーヒュームである。これらの後者の材料を追加の有機抗菌剤と考えてもよい。添合レベルは好ましくは4重量%まで、特に0.1重量%−2重量%、より特定的には0.7重量%−1.7重量%である。本発明の必須成分とある種の芳香成分との間に相乗作用が存在し、その結果として臭気抑制が長期間持続する。
【0060】
組成物の幾つかの成分は2つ以上の機能を果たすことに注目されたい。このような成分は特に好ましい追加成分である、これらの使用はしばしば経費及び配合スペースを節約する。このような成分の例は、メタノール、イソプロピルミリステート、及び、構造化剤と官能調整剤との双方の作用を果たす多くの成分、例えば、シリカである。同じく含有され得る別の追加成分は着色剤及び保存剤、例えばC−Cアルキルパラベンである。
【0061】
本発明がエアロゾル組成物の使用を包含するとき、揮発性噴射剤はこのような組成物の必須成分である。揮発性噴射剤の添合レベルは典型的には30−99重量部、特に50−95重量部である。非塩素化揮発性噴射剤、特に、10℃以下の沸点を有している液化炭化水素ガスまたは水素化炭化水素ガス(特に、1,1−ジフルオロエタン及び/または1−トリフルオロ−2−フルオロエタン)のようなフッ素化炭化水素)、より特定的には0℃以下の沸点を有しているこのような物質が好ましい。液化炭化水素ガス、特定的にはプロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン及びイソペンタンのようなC−Cの炭化水素及び2種以上のそれらの混合物の使用が特に好ましい。好ましい噴射剤はイソブタン、イソブタン/イソプロパン、イソブタン/プロパン、及び、イソプロパンとイソブタンとブタンとの混合物である。
【0062】
考察できる別の噴射剤は、ジメチルエーテルのようなアルキルエーテル、または、空気、窒素または炭酸ガスのような不反応性圧縮ガスである。
【0063】
製造方法
適当な製造方法の細目は関連する製品形態に依存する。しかしながら幾つかの好ましい本発明組成物では、製造方法が、揮発性噴射剤の存在量を重量パーセンテージから除外して、少なくとも0.35重量%の遷移金属キレート化剤と、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤から成る少なくとも0.05重量%のフェノール系またはエノール系の化合物との混合物を形成する段階を含む。
【実施例】
【0064】
(“文字”符号は比較実施例を表すことに留意されたい)。
【0065】
エアロゾル消臭組成物の製造
表1に詳細に示した組成物を以下の手順で製造した。
【0066】
約64g(正確な量は表1に記載)の96%(w/w)エタノールに、0.50gのDTFAを粉末として添加した。この混合物に0.38gのAMPを添加(撹拌を伴って滴下)し、穏やかに加熱(50℃)して30分間維持した。得られた溶液に0.33gのイソプロピルミリステートを添加し、これに、実施例1の場合には0.10gのBHT、実施例2の場合には0.05gのBHTを混合した。得られた混合物を出入弁を有している慣用の消臭剤用アルミ缶に入れて密閉し、35g(±0.2g)の液化噴射剤(CAP 40、Calor製)を、ポリエチレン移送デバイスを使用して噴射剤“移送缶”から弁を介してアルミ缶に導入した。最後に、製品を有効に噴霧塗布できる適当なアクチュエーターをアルミ缶に装着した。
【0067】
消臭試験1
本発明の抗菌組成物(実施例1及び2、表1参照)及び対照組成物(比較実施例A、表1参照)を上記の方法で製造した。組成物の消臭性能を以下のプロトコルで試験した。表1に示した結果は、本発明の組成物を使用して得られた消臭効果を示す。
【0068】
消臭試験プロトコル
50人から成るパネルを使用し、試験の前週に対照エタノール消臭製品を使用するように全員に指示した。試験の開始時に、パネリストは腋窩を無香料セッケンで洗い、腋窩の各々に種々の製品(1.20g用量のエアロゾルまたは0.30g用量のロールオン)を塗布した。(左右の偏りを考慮して製品塗布は任意にした)。試験期間中は香料入りの食品やアルコールを摂取しないように、また、腋窩を洗浄しないようにパネリストに指示した。塗布後の設定時間(5時間、10時間及び24時間から選択)に少なくとも3人の専門鑑定人が腋窩の臭いの強さを判定し、1−5段階で評価した。各24時間後の評価の後、パネリストは再び上記と同様の洗浄及び製品の塗布を行った。この手順を4回繰り返した。試験の終了後に標準統計法を使用してデータを分析した。
【0069】
【表1】

成分はいずれも、加えた全成分に対する重量パーセントで表す。
【0070】
1.噴射剤、Calor社専売のブタン、イソブタン及びプロパンのミックス
表示されている悪臭強度は24時間後に測定した。実施例1の成績と実施例Aの成績との差は、99%レベルで有意であった。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.17、95%信頼レベルで0.13)。
【0071】
消臭試験2
実施例3とBとの性能試験にも上述の消臭試験プロトコルを使用した(表2参照)。これらの実施例の組成物は以下の表に示すように成分を変更して実施例1及びAと同様の手順で調製した。
【0072】
【表2】

成分はいずれも、加えた全成分に対する重量パーセントで表す。
【0073】
5時間後及び24時間後の組成物間の悪臭の差は99%レベルで有意であった。(99%信頼レベルで有意性に必要な最小差は、5時間後に0.12、24時間後に0.15であった)。
【0074】
これらの結果は、本発明組成物の消臭効果が香料の存在下であっても明白であることを示す。
【0075】
消臭試験3
実施例1の性能と表3に詳細に示した比較実施例の性能とを比較するために上述の消臭試験プロトコルを使用した。新しい比較実施例は比較実施例Bと同様の手順で調製した。
【0076】
【表3】

成分はいずれも、加えた全成分に対する重量パーセントで表す。
【0077】
実施例1と比較実施例Dとの平均悪臭強度の差は99%レベルで有意であった。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.17、95%信頼レベルで0.13)。
【0078】
10時間後、実施例1の性能は双方の比較実施例よりも99%レベルで有意に改善されていた。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.18、95%信頼レベルで0.14)。
【0079】
24時間後、実施例1の性能は双方の比較実施例よりも99%レベルで有意に改善されていた。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.17、95%信頼レベルで0.13)。
【0080】
実施例1を塗布した腋窩では試験の全期間中に臭いの増加が全く観察されなかったことが理解されよう。また、実施例C(BHT含有)が対照(実施例D)よりも有意に優れた性能を示さなかったことも注目に値する。
【0081】
ロールオン消臭組成物の製造
実施例E(対照)
1.0gのDTPA(遊離酸の形態)を約25gの水に加えた。0.76gのAMPを滴下することによってpHを約7.0に調整した。別に、0.65gのヒドロキシプロピルセルロース(Klucel M,Aqualon製)と0.5gのPEG−40水素化ヒマシ油(Cremaphor RH40、BASF製)とを70gのエタノールに加えて、均一溶液が得られるまでSilverson L4RTミキサー(Silverson,Chesham,Bucks.製)で約8,000rmの速度で剪断した。エタノール溶液を放冷し、DTPA/AMPの水溶液と混合し、100gになるように水で重量調整した。
【0082】
実施例4
1.0gのDTPA(遊離酸の形態)を約25gの水に加えた。0.76gのAMPを滴下することによってpHを約7.0に調整した。別に、0.65gのヒドロキシプロピルセルロース(Klucel M,Aqualon製)と0.5gのPEG−40水素化ヒマシ油(Cremaphor RH40、BASF製)と0.25gの2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール(Vanox 1290、Vanderbilt Co.,Inc.製)とを70gのエタノールに加えて、均一溶液が得られるまでSilverson L4RTミキサー(Silverson,Chesham,Bucks.製)で約8,000rmの速度で剪断した。エタノール溶液を放冷し、DTPA/AMPの水溶液と混合し、100gになるように水で重量調整した。
【0083】
実施例5
実施例5と同様に調製したが、Vanox 1290に代えて、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Tinogard TT、Ciba Speciality Chemicals製)を使用した。
【0084】
消臭試験4
実施例4及び5の性能と比較実施例Eの性能とを比較するために上述の消臭試験プロトコルを使用した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】

成分はいずれも、加えた全成分に対する重量パーセントで表す。
【0086】
平均悪臭強度の比較は実施例4と比較実施例E、及び、実施例5と比較実施例Eとの間で別々に行った。2つの試験の結果を直接比較することはできない。
【0087】
実施例4に関する試験では、5時間後の実施例4と比較実施例Eとの平均悪臭強度の差は、99%レベルで有意であった。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.14、95%信頼レベルで0.11)。同様に、24時間後にも99%レベルの有意差が存在した。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.15、95%信頼レベルで0.11)。
【0088】
実施例5に関する試験では、5時間後の実施例5と比較実施例Eとの平均悪臭強度の差は、99%レベルで有意であった。(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.14、95%信頼レベルで0.11)。同様に、24時間後にも99%レベルの有意差が存在した(有意性に必要な最小差は、99%信頼レベルで0.17、95%信頼レベルで0.13)。
【0089】
抗菌性能試験
以下の試験はDTPA及びTTHAのミクロモル活性の性質を示す。
【0090】
腋窩から単離したStaphylococcus epidermidisを100mlのトリプトンダイズブロス(TBS,Oxoid Ltd)中で一夜増殖させた。10mlのこの培養物を採取し、遠心分離した。分離した細胞を10mlのリン酸塩緩衝生理食塩水に再浮遊せさ、遠心手順を繰り返した。洗浄した細胞を10mlのリン酸塩緩衝生理食塩水に再浮遊させて、接種物を作製した。100μlの接種物を、(NHSO(0.066g)、MgSO.7HO(0.012g)、KCl(0.1g)、KHPO(0.27g)、NaHPO(1.43g)、チアミン(0.1mg)、ビオチン(0.05mg)、ペプトンP(0.05g)及びグルコース(2.0ミリモル)を含み、予め121℃のオートクレーブで20分間滅菌処理した100mlの半合成培地(SSM)に加えた。滅菌後、接種物を添加する前にSSMのpHをHClで6.7に調整した。すべてのin vitro阻害試験にこの対照培地を使用した。HClによるpH調整の前にキレート化剤を3×10−6mol.dm−3の濃度で導入することによってキレート化剤含有被験培地を同様にして調製した。
【0091】
100μlのS.epidermidis接種物を対照培地及び表2に示すキレート化剤を含む被験培地に導入した。培養物を37℃で(200rpmの撹拌を伴って)16時間接種し、培養物の光学密度を600nmで測定し、細菌増殖の程度を判定した。キレート化剤の存在下の培養物の光学密度を対照の光学密度に比較することによって増殖阻害のパーセンテージを算定した。(光学密度の測定は、0.9%(w/v)生理食塩水で希釈した4つの培養物の1つに対して、1cm路長のキュベットを使用し、Pharmacia Biotech Ultrospec 200分光光度計で行った)。
【0092】
【表5】

【0093】
トランスフェリン解離促進試験
2.7g.l−1のヒトのジフェリックトランスフェリン(Sigma Chemicals製)を、水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した50mMのHEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N′−[2−エタンスルホン酸])バッファ中で、0.115g.l−1のFerroZine(Sigma Chemicals製;3−(2−ピリジル)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4−トリアジン,一ナトリウム塩)及び10mmol.l−1の被験物質と共に37℃でインキュベートした。
【0094】
24時間後、562nmの吸光度を測定することによってトランスフェリン解離の程度を分光光度法で評価した(上記参照)。データ(表5参照)は、表示した被験物質の存在下でトランスフェリン解離の促進が生じたことを示す。
【0095】
【表6】

【0096】
更なる組成物
当業界で常用の方法で表6−8に示す組成物を調製し得る。成分は加えた全成分に対する重量パーセントで表す。
【0097】
【表7】

【0098】
【表8】

【0099】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.35重量%の遷移金属キレート化剤と少なくとも0.05重量%のフェノール系またはエノール系の化合物とから成り、前記化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤であり、前記重量パーセンテージは、揮発性噴射剤が存在する場合には、その揮発性噴射剤を除外して計算されるものであり、遷移金属キレート化剤は、鉄(III)に対して1026よりも大きい結合係数を有するものであり、トランスフェリン解離促進剤は、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビルリン酸ナトリウム、Tocophersolan、プロトカテク酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、Tiron(4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼン二スルホン酸、アスコルビル−6−パルミテート、オイゲノール、フェルラ酸及びその塩、チモール、Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸及びその塩、トコフェロール、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)並びにBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)から成る群から選択されるものである、ヒト身体用の抗菌・消臭組成物。
【請求項2】
フェノール系またはエノール系の化合物が、以下の試験、即ち、
2.7g.l−1のヒトのジフェリックトランスフェリン(Sigma Chemicals製)を水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した50mMのHEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N′−[2−エタンスルホン酸])バッファ中で0.115g.l−1のFerroZine(Sigma Chemicals製;3−(2−ピリジル)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4−トリアジン,一ナトリウム塩)と、被験物質が水溶性であるときは10mmol.l−1の被験物質、水不溶性であるときは微細粉末の形態で添加される2.5g.l−1の被験物質と共に37℃でインキュベートし、24時間後にトランスフェリン解離の程度を目視または分光光度法によって評価し、トランスフェリン解離促進剤が紫色を生じさせたか、特に562nmに0.15以上の吸光度を生じさせたか否かを判定する試験、に合格し得るトランスフェリン解離促進剤であることを特徴とする請求項1に記載の消臭組成物。
【請求項3】
フェノール系またはエノール系の化合物がtert−ブチルフェノール基を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消臭組成物。
【請求項4】
フェノール系またはエノール系の化合物が2個のtert−ブチル置換基を有するフェノール基を含むことを特徴とする請求項3に記載の消臭組成物。
【請求項5】
遷移金属キレート化剤が有機カチオンをもつ塩であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項6】
追加の慣用の有機抗菌剤を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項7】
遷移金属キレート化剤が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、DTPAの塩、TTHAの塩、または、これらの遷移金属キレート化剤の任意の混合物から選択されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項8】
フェノール系またはエノール系の化合物がBHTである請求項4から7のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項9】
揮発性噴射剤を含むエアロゾル組成物である請求項1から8のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項10】
エタノールと水とを1:1−2.5:1の範囲の重量比で含むロールオン組成物または圧搾スプレー組成物である請求項1から8のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項11】
増粘剤または構造化剤を含むクリーム、ジェル、軟質固体または固体スティックの形態の組成物である請求項1から8のいずれか一項に記載の消臭組成物。
【請求項12】
少なくとも0.35重量%の遷移金属キレート化剤と少なくとも0.05重量%のフェノール系またはエノール系の化合物との混合物を形成する段階から成り、前記化合物が、(a)トランスフェリンに結合した鉄(III)から鉄(II)への還元を補助することによって作用するトランスフェリン解離促進剤及び/または(b)tert−ブチルフェノール基を含む抗酸化剤であり、前記重量パーセンテージは、揮発性噴射剤が存在する場合には、その揮発性噴射剤を除外して計算されるものであり、遷移金属キレート化剤は、鉄(III)に対して1026よりも大きい結合係数を有するものであり、トランスフェリン解離促進剤は、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビルリン酸ナトリウム、Tocophersolan、プロトカテク酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、Tiron(4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼン二スルホン酸、アスコルビル−6−パルミテート、オイゲノール、フェルラ酸及びその塩、チモール、Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸及びその塩、トコフェロール、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)並びにBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)から成る群から選択されるものである、ヒト身体用の消臭組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−195725(P2008−195725A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62122(P2008−62122)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【分割の表示】特願2002−533827(P2002−533827)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】