説明

消費電力の制御システム及び制御方法並びに電気機器

【課題】弊害を回避しつつ、計画停電と同様な消費電力抑制の効果をもたらす制御システムを提供する。
【解決手段】電力供給の上位側から電力需要の端末側に対して消費電力の制御を行う制御システム/制御方法であって、端末側の電気機器Eに予め、電力安定供給の重要性に関するクラス(評価)を設定しておく。そして、上位側から端末側のクラスを指定する消費電力抑制指令の信号を送信し、電気機器は、自己に設定されたクラスと、受信した信号のクラスとに基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは、自ら待機状態に入って消費電力抑制を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要に対して、電力供給不足が発生した場合に、消費電力を制御によって抑制するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要に発電能力が追いつかない国では、送電の系統単位で計画的に一定時間だけ送電を中止する計画停電が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−200963号公報(段落[0002]〜[0004])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような計画停電によれば、系統単位で送電が遮断されるため、例えば道路の信号機や病院の電気設備のように、公益性が高く人命にも関わる可能性のある重要な機器が停電状態となり、種々の弊害が想定される。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、弊害を回避しつつ、計画停電と同様な消費電力抑制の効果をもたらす制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明は、電力供給の上位側から電力需要の端末側に対して消費電力の制御を行うための、消費電力の制御システムであって、
前記端末側の所定の種類の負荷群に対する消費電力抑制指令の信号を送信する機能を有する送信部と、前記送信部から送信された前記信号を受信する受信部、及び、電力安定供給の重要性に関する自己への評価が予め設定され、当該評価及び前記受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制を実行する制御部、を有する前記端末側の電気機器とを備えたものである。
【0006】
上記のように構成された消費電力の制御システムでは、消費電力抑制指令の信号を受信した電気機器が、電力安定供給の重要性に関する自己への評価及び受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制を実行する。従って、予め設定された評価と、現時点の消費電力抑制指令とに基づいて、計画的な消費電力抑制を実行することができる。例えば、同じ評価に分類される電気機器を全て消費電力抑制の状態(典型的には待機状態)にすることで、計画的な節電を実行することができる。
【0007】
(2)また、上記(1)の消費電力の制御システムにおいて、信号は、電気機器へ給電する電力線に重畳されるようにしてもよい。
この場合、電力供給と信号伝送とを、同じ媒体(電力線)で実現することができるので、構成が簡易である。また、電気機器は電力供給を得ることで必然的に信号を受信できる状態となるので信号伝送も確実である。
【0008】
(3)また、上記(1)または(2)の消費電力の制御システムにおいて、評価は、公益を考慮した優先順位に基づいて複数にクラス分けされていてもよい。
この場合、電力逼迫の程度に応じて段階的に、かつ、的確に、消費電力抑制を実行することができる。
【0009】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかの消費電力の制御システムにおいて、制御部は、電気機器を待機状態とすることにより、消費電力抑制を実行することが好ましい。
この場合、実行によって強制的に待機状態とすれば、消費電力を大幅に抑制することができる。
【0010】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかの消費電力の制御システムにおいて、消費電力抑制指令は、抑制が必要なときは連続して又は繰り返し出力され、抑制が不要となったときに出力停止となるものであってもよい。
この場合、消費電力抑制の開始後に利用者が電気機器の電源プラグをコンセントから「抜き差し」しても、抑制の出力が出続けている限り、確実に、消費電力抑制を実行することができる。
【0011】
(6)また、上記(1)〜(4)のいずれかの消費電力の制御システムにおいて、消費電力抑制指令は、抑制開始の時刻、及び、抑制を解除する時刻の情報を含んでいるものであってもよい。
この場合、必要な情報を1回で出力できることになり、連続した出力は行わなくてもよい。
【0012】
(7)また、上記(1)〜(6)のいずれかの消費電力の制御システムにおいて、制御部は、消費電力抑制を実行する前に、注意を喚起する表示又は警報を生じさせることが好ましい。
この場合、電気機器の利用者は、予め消費電力抑制が実行されることを知り得るので、いわば不意打ちの如き消費電力抑制の実行を、避けることができる。
【0013】
(8)また、上記(7)の消費電力の制御システムにおいて、電気機器は、消費電力抑制の開始を一定時間猶予する操作部を備えていてもよい。
この場合、電気機器の利用者は、消費電力抑制が実行されることに備えて、支障なく使用を終える準備をすることができる。
【0014】
(9)また、上記(1)〜(8)のいずれかの消費電力の制御システムにおいて、電気機器は、商用電源電圧を喪失しても、喪失直前に消費電力抑制を実行していたか否かを記憶しており、喪失直前に消費電力抑制を実行していた場合は、商用電源電圧喪失後の復帰の際に引き続き消費電力抑制を実行するようにしてもよい。
この場合、消費電力抑制の実行開始後に電気機器の利用者が電源プラグをコンセントから「抜き差し」しても、抑制を解除する指令が出るまでは、消費電力抑制の状態はリセットされずに維持される。
【0015】
(10)また、上記(2)の消費電力の制御システムにおいて、重畳される信号を増幅する中継部が設けられていてもよい。
この場合、減衰した信号を増幅することができるので、確実に、信号を電気機器に届けることができる。
【0016】
(11)また、上記(10)の消費電力の制御システムにおいて、送信部から中継部までは専用回線で前記信号を送信し、中継部から電力線に信号を重畳するようにしてもよい。
この場合、専用回線として例えば光ファイバを使用することにより、遠距離でも確実に信号を伝送することができる。
【0017】
(12)一方、本発明は、電力需要の端末側にある所定の種類の負荷群に対して電力供給の上位側から消費電力抑制指令の信号を送信することにより消費電力の制御を行う場合の前記端末側の電気機器であって、当該電気機器には、電力安定供給の重要性に関する自己への評価が予め設定されており、かつ、当該電気機器は、前記上位側から送信された前記信号を受信する受信部と、前記評価及び前記受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは自ら消費電力抑制を実行する制御部と、を備えたものである。
【0018】
上記のように構成された電気機器は、消費電力抑制指令の信号を受信したとき、電力安定供給の重要性に関する自己への評価及び受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは自ら消費電力抑制を実行する。従って、予め設定された評価と、現時点の消費電力抑制指令とに基づいて、計画的な消費電力抑制に対応することができる。例えば、同じ評価に分類される電気機器が全て消費電力抑制の状態(典型的には待機状態)になることで、計画的な節電を実行することができる。
【0019】
(13)また、本発明は、電力供給の上位側から電力需要の端末側に対して消費電力の制御を行うための、消費電力の制御方法であって、
前記端末側の電気機器に予め、電力安定供給の重要性に関する評価を設定し、前記上位側から前記端末側の所定の負荷群に対する消費電力抑制指令の信号を送信し、前記電気機器は、前記信号を受信し、前記評価及び受信した前記信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは、自ら消費電力抑制を実行する、というものである。
【0020】
上記のような消費電力の制御方法においては、消費電力抑制指令の信号を受信した電気機器が、電力安定供給の重要性に関する自己への評価及び受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは自ら消費電力抑制を実行する。従って、予め設定された評価と、現時点の消費電力抑制指令とに基づいて、計画的な消費電力抑制を実行することができる。例えば、同じ評価に分類される電気機器を全て消費電力抑制の状態(典型的には待機状態)にすることで、計画的な節電を実行することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、計画停電のように一律に電気機器が使用できなくなるという弊害を回避しつつ、計画停電と同様な消費電力抑制の効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】発電から配電までの電力系統の一例を示す図である。
【図2】病院内にある電気機器の一例を示す図である。
【図3】住宅内にある電気機器の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る消費電力の制御システムの接続図であり、配電用変電所から電気機器への給電までを簡略化して示している。
【図5】電気機器の制御部を主体に行われる消費電力抑制動作を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る消費電力の制御システムの接続図である。
【図7】第3実施形態に係る消費電力の制御システムの接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、発電から配電までの電力系統の一例を示す図である。図において、水力発電所1W、火力発電所1T、原子力発電所1N等の発電所から出力される電圧は、超高圧変電所2Hにて一旦、超高圧(例えば275〜500kV)に昇圧され、送電される。送電系統の詳細は省略するが、例えば、一次変電所、二次変電所を経て段階的に降圧された後、配電用変電所2Lで6.6kVに降圧される。配電用変電所2Lから先は、需要に応じて供給され、典型的には、高圧(6.6kV)がそのまま供給される場合と、柱上変圧器(図示せず。)等を介して低圧(100V/200V)として供給される場合とがある。
【0024】
図では、需要家の一例として、道路の信号機3、病院4、及び、一般の住宅5を示している。ここで、電力需要の端末側にある電気機器(図の例では、信号機3、病院4内の電気機器、住宅5内の電気機器)に対して、電力安定供給の重要性に関する評価として、クラス分けを行うものとする。ここでは、一例としてクラス0〜5の6クラスとし、クラス0は、電力を安定供給することが最も重要である電気機器、クラス5は逆に、電力安定供給の重要性が相対的に最も低い電気機器である。例えば信号機3は、クラス1に分類される。
【0025】
図2は、病院4内にある電気機器の一例を示す図である。例えば人工透析や人工心肺に関する医療機器41及び42は共に、人命に関わるため、クラス0(最重要機器)である。一方、例えばテレビ43等の娯楽設備や、ロビー、待合室、医療スタッフの部屋等のエアコン44は、共にクラス5である。
図3は、住宅5内にある電気機器の一例を示す図である。例えば冷蔵庫51は、気温の高い時期に停電すると庫内の食品が腐敗する可能性があり、人の健康に関わるのでクラス2である。一方、例えばエアコン52やテレビ53は、共にクラス5である。
上記のようなクラス分けは、具体的には、各電気機器に予めクラス設定を行うことにより行われる。すなわち、各電気機器には、クラス設定の機能が設けられる。
【0026】
《第1実施形態》
次に、クラス分けに基づく、第1実施形態に係る消費電力の制御システム(制御方法)について説明する。当該システムは、電力供給の上位側のいずれかの場所に設けられた送信部から、電力需要の端末側にある電気機器に対して、消費電力抑制指令の信号を送信し、この信号を受信した電気機器が自己のクラスに基づいて消費電力抑制(節電)を実行するものである。送信部は、例えば変電所に設置することができ、基本的にはどの変電所にでも設置し得るが、上位の変電所ほど絶縁対策が難しい。本実施形態では、各配電用変電所2Lに送信部が設置されるものとする。
【0027】
図4は、配電用変電所2Lから電気機器E(3,41〜44,51〜53の総称)への給電までを簡略化して示す接続図である。なお、この電気機器Eは、コンセント11に電源プラグEpを差し込んで使用するタイプのものを想定して描いている。
【0028】
図4において、例えば配電用変電所2Lには、変圧器21の他、送信部22及び信号注入部23が設けられている。この送信部22は、電力線通信(PLC:Power Line Communication)により電力線L1に情報伝送用の信号を重畳させるPLCモデムである。モデムの変調方式としては、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用することができる。使用帯域としては、例えば、2〜30MHzを用いることができる。電力線通信を用いる場合、対象となる電気機器Eに別途通信線が接続されていなくても、消費電力抑制指令を当該電気機器Eに与えることができる。しかしながら、消費電力抑制指令は他の通信線によって電気機器Eに与えることもできる。
【0029】
送信部22に対する指令の信号は電力会社の中央制御室(図示せず。)から例えば光ファイバ24を経由して届く。変圧器21の2次側電圧は高圧(6.6kV)であるため、絶縁を容易に確保するためには、送信部22からの出力信号を電力線に注入するための信号注入部23は、フェライトコア23aを用いた誘導結合タイプが好適である。
【0030】
電力線L1に印加される電圧は、変圧器6によって低圧(100/200V)に降圧される。変圧器6は、例えば、信号機3のための受電設備内や、病院4の受電設備内に設けられるか、または、住宅5用に、柱上変圧器として電柱に設けられる。送信部22から送信される信号は、変圧器6の1次側から2次側へ電磁誘導により抜けることが可能ではあるが、減衰するので、中継部8により信号の中継を行う。
【0031】
すなわち、高圧側の信号抽出部7(信号注入部23と同様の構造)から抽出された信号は中継部8で増幅され、低圧側の信号注入部9(例えばコンデンサによる容量結合)を介して低圧の電力線L2に注入される。なお、低圧側の信号注入部9は、中継部8の内部に設けることもできる。
このようにして、減衰した信号を中継部8により増幅することができるので、確実に、信号を低圧側へ届けることができる。なお、変圧器6とは関係なく、信号の減衰が問題となる場合には、中継部8を随所に必要な数だけ設けてもよい。
【0032】
電力線L2に印加される電圧は、需要家(住宅5等)の分電盤10に引き込まれる。また、分電盤10からさらに、宅内配線L3によってコンセント11に至る。電力線通信の信号は、分電盤10を経て、宅内配線L3にも重畳されている。
電気機器Eの電源プラグEpをコンセント11に差し込むことにより、電気機器Eには所定の電圧が供給される。電気機器E内には、電気機器本来の機能の他に、図示の回路構成が設けられている。すなわち、電気機器E内には、スイッチEs、制御部E1、受信部E2、通知部E3及び操作部E4が設けられている。
【0033】
スイッチEsは、これが閉じることにより電気機器Eをオンにすることができ、開くことにより強制的に電気機器Eを待機状態にする。スイッチEsは、制御部E1によって開閉制御される。ここでのスイッチEsは消費電力抑制を説明する便宜上の手段であり、他の回路を使ってもよく、電気機器の一部への電力供給を遮断または抑制するようにすることができる。受信部E2は、電力線通信によって宅内配線L3に重畳された信号を抽出するPLCモデムである。受信部E2は、受信した信号を制御部E1に提供する。通知部E3は、制御部E1に出力により、電気機器Eの利用者に対して注意を喚起する表示を行うか又は警報を発する機能を有している。操作部E4は、電気機器Eの利用者による入力(消費電力抑制開始を一定時間猶予すること)を受け付け、当該入力を制御部E1に提供する機能を有する。
【0034】
制御部E1は内部にメモリを有し、電力安定供給の重要性に関する評価すなわち、前述の例で言えばクラス分けが予め設定されている。制御部E1の他の設定とともに書き換え可能なメモリにクラス分けの値を記憶することができる。しかしながら、クラス分けの値が誤って変更されないように書き換えできない専用のメモリにクラス分けの値を格納するのが好ましい。制御部E1は、このクラス分け及び受信部E2が受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときはスイッチEsを開くことにより自ら消費電力抑制を実行することができる。
【0035】
次に、電気機器Eの制御部E1を主体に行われる消費電力抑制動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。まず、中央制御室(図示せず。)から送信部22に対して、現在の電力の使用状況及び今後予想される電力の逼迫状況に応じて、節電が必要であるときは、6段階の指令が与えられる。
【0036】
具体的には、最も軽度ではあるが節電が必要であると判断されるときクラス5の指令が与えられる。また、クラス5では不十分で、さらに節電が必要であれば、クラス4の指令が与えられる。同様に、必要とされる節電量の増大に応じて、順番に、クラス3、クラス2、クラス1、クラス0となる。ここでのクラスは、0が最上位、5が最下位であり、指令されたクラス以下が節電の対象となる。例えば、クラス3の指令であれば、クラス3,4,5の電気機器が節電対象になる。かかる指令を受けた送信部22は、指令されたクラスの信号を、電力線通信によって伝送する。受信機能を持つ全ての電気機器Eは、この信号を電力線経由で受信することができる。
【0037】
そこで、図5において、各電気機器Eの制御部E1はまず、既に消費電力抑制指令によって待機中か否かを判定する(ステップS1)。ここでは、待機中ではないとして、制御部E1は、次に、消費電力抑制指令を受信したか否かを判定する(ステップS2)。受信するまでは、ステップS1,S2が繰り返され、受信待ちの状態となる。
【0038】
消費電力抑制指令を受信すると、制御部E1は、自己が、指令されたクラス以下か否かを判定し(ステップS3)、指令されたクラスより上位であれば、ステップS1に戻る。一方、指令されたクラス以下であれば、制御部E1は予告をする(ステップS4)。具体的には、制御部E1の指令を受けた通知部E3が、電気機器Eの利用者に対し、注意を喚起する表示(主として視覚に訴える告知)又は警報(音による告知)を発する。これによって、利用者は、予め消費電力抑制(待機状態への移行)が実行されることを知り得るので、いわば不意打ちの如き消費電力抑制の実行を、避けることができる。
【0039】
次に、制御部E1は、猶予の操作が行われたか否か(ステップS5)、及び、所定の操作待ち時間が経過したか否か(ステップS6)の判定を行う。これはすなわち、予告に応じて利用者が猶予を望む場合に、その操作をするのを待つ、という意味である。ここで、操作が行われなかった場合は、直ちに待機状態に入り(ステップS8)、操作が行われた場合は、猶予時間の経過を待ってから(ステップS7)、待機状態に入る。猶予時間を設けることによって、電気機器Eの利用者は、消費電力抑制が実行されることに備えて、支障なく使用を終える準備をすることができる。
【0040】
待機状態では、制御部E1は、スイッチEsを開き、本体機能部の主たる消費電力を0にして、制御部E1や受信部E2のみが微小な電力を消費している状態とする。これにより、消費電力を大幅に抑制することができる。このような節電が、多くの電気機器Eで同時期に行われることにより、計画停電に匹敵する電力の抑制を実現することができる。
【0041】
また、制御部E1は、抑制解除になったか否かを判定し(ステップS9)、抑制解除になるまでは待機状態を維持し(ステップS11)、以下、ステップS1、ステップS9、ステップS11を繰り返す。なお、抑制解除とは、抑制指令が全く無くなることの他、指令のクラスが軽度方向に移行して自己が待機の対象でなくなることも含む。抑制解除になると、制御部E1は待機状態を解除し(ステップS10)、ステップS1に戻る。以下、前述の動作が繰り返される。
【0042】
以上のように、当該消費電力の制御システムでは、消費電力抑制指令の信号を受信した電気機器E1が、自己のクラス(電力安定供給の重要性に関する自己への評価)及び受信部E2が受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは自ら消費電力抑制を実行する。従って、予め設定された評価と、現時点の消費電力抑制指令とに基づいて、計画的な消費電力抑制を実行することができる。実行によって強制的に待機状態とすれば、消費電力を大幅に抑制することができる。
なお、待機状態にすることが、効果的な節電のためには好ましいが、電気機器によって省エネモード等の省電力運転が可能な機種では、待機状態の代わりに省エネモードにすることも可能である。
【0043】
また本実施の形態において、消費電力抑制指令の信号は、電気機器へ給電する電力線に、信号として重畳されるので、電力供給と信号伝送とを、同じ媒体(電力線)で実現することができる。従って、構成が簡易である。また、電気機器は電力供給を得ることで必然的に信号を受信できる状態となるので信号伝送も確実である。
また、公益を考慮した優先順位に基づいてクラス分けすることによって、電力逼迫の程度に応じて段階的に、かつ、的確に、消費電力抑制を実行することができる。
【0044】
なお、消費電力抑制指令は、例えば、抑制が必要なときは連続して又は繰り返し出力され、抑制が不要となったときに出力停止となる。この場合、消費電力抑制の開始後に電気機器Eの電源プラグEpをコンセント11から「抜き差し」しても、抑制の出力が出続けている限り、確実に、消費電力抑制を実行することができる。
【0045】
一方、消費電力抑制指令は、抑制開始の時刻、及び、抑制を解除する時刻の情報を含んでいるようにすれば、必要な情報を1回で出力できることになり、連続した出力は行わなくてもよい。この場合、図5のステップS9における「抑制解除になったか?」は、「解除する時刻になったか?」の意味となる。なお、この場合、消費電力抑制の開始後に電気機器Eの電源プラグEpをコンセント11から「抜き差し」すると、抑制すべき状態であるにも関わらず、抑制しない(待機状態にならない)、という状態になり得る。
【0046】
これを防止するには、例えば、制御部E1のメモリをバッテリでバックアップするか、不揮発メモリを備えることにより、商用電源電圧を喪失しても、喪失直前に消費電力抑制を実行していたか否かを記憶しているようにすればよい。これにより、喪失直前に消費電力抑制を実行していた場合は、商用電源電圧喪失後の復帰の際に引き続き消費電力抑制を実行することができる。従って、消費電力抑制の実行開始後に電気機器の利用者が電源プラグEpをコンセント11から「抜き差し」しても、抑制を解除する指令が出るまでは、消費電力抑制の状態はリセットされずに維持される。
【0047】
《第2実施形態》
次に、消費電力の制御システムの構成に関して、図4(第1実施形態)とは異なる第2実施形態について、図6を参照して説明する。消費電力の抑制に関する制御内容は第1実施形態と同様に図5のフローチャートに示される通りである。図6において、図4との違いは、消費電力の抑制に関する信号(電力線通信の信号)が、低圧側の信号注入部9において、中継部8から低圧の電力線L2に注入される点である。すなわち、高圧の電力線L1には信号が重畳されていない。
【0048】
中継部8へは、送信部22から例えば光ファイバ12を介して信号が送られて来る。送信部22は、配電用変電所2Lに設けるか、または、さらに上位の変電所に設けることができる。また、中継部8は、変圧器6の近傍に設けられる。このように、高圧の電力線L1に信号を重畳せず、専用回線としての光ファイバ12を使用することにより、送信部22から中継部8までの距離が遠距離であっても、減衰しにくく、かつ、ノイズの影響も受けにくい良好な信号伝送路で、確実に信号を伝送することができる。
【0049】
《第3実施形態》
図7は、第1,第2実施形態とは異なる構成における、消費電力の制御システムを示す例えば宅内の系統図である。消費電力抑制指令に基づいて消費電力の抑制を行う点は同様(図5)であるが、指令の与え方が全く異なる。すなわち、図7において、電力線通信の送信部13は、宅内における電力供給の上位側にある分電盤10の内部(但し、必ずしも内部でなくてもよい。)に設けられている。操作スイッチ14は例えば分電盤10の表面等の、操作しやすい場所に設けられている。送信部13は、操作スイッチ14から節電操作の指令を受けることができるようになっている。操作スイッチ14は、例えば、電気機器Eのクラス分け数に対応した複数のボタン操作が可能となっていて、この操作は人が行う。送信部13の出力する信号は、宅内配線L3に重畳される。
【0050】
すなわち、これは、需要家単位で自主的な節電を行うためのシステムであり、例えばクラス5の節電をしたいときは、クラス5を指令する操作スイッチ14のボタンを押すと、クラス5の消費電力抑制指令が送信部13から送信され、該当の電気機器Eは、待機状態になることで節電を実行する。また、クラス3の節電をしたいときは、クラス3を指令する操作スイッチ14のボタンを押すと、クラス3の消費電力抑制指令が送信部13から送信され、クラス3以下に該当する電気機器Eは、待機状態になることで節電を実行する。このようにして、任意に、消費電力の抑制を実行することができる。住宅以外にも、ビルや工場など、需要家単位でこのような自主的な「計画節電」を行うことにより、全体として大きな節電効果を上げることができる。
【0051】
《その他》
なお、上記の各実施形態では信号重畳に電力線通信を用いているが、これに限られるものではなく、他にも、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅変位変調)を行った信号波形を商用交流に合成したり、または、高調波周波数の組み合わせ(プッシュホンの原理による)を商用交流に重ねることも可能である。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
8:中継部
22:送信部
E:電気機器
E1:制御部
E2:受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給の上位側から電力需要の端末側に対して消費電力の制御を行うための、消費電力の制御システムであって、
前記端末側の所定の種類の負荷群に対する消費電力抑制指令の信号を送信する機能を有する送信部と、
前記送信部から送信された前記信号を受信する受信部、及び、電力安定供給の重要性に関する自己への評価が予め設定され、当該評価及び前記受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制を実行する制御部、を有する前記端末側の電気機器と
を備えていることを特徴とする消費電力の制御システム。
【請求項2】
前記信号は、前記電気機器へ給電する電力線に重畳される請求項1記載の消費電力の制御システム。
【請求項3】
前記評価は、公益を考慮した優先順位に基づいて複数にクラス分けされている請求項1又は2に記載の消費電力の制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記電気機器を待機状態とすることにより、消費電力抑制を実行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の消費電力の制御システム。
【請求項5】
前記消費電力抑制指令は、抑制が必要なときは連続して又は繰り返し出力され、抑制が不要となったときに出力停止となる請求項1〜4のいずれか1項に記載の消費電力の制御システム。
【請求項6】
前記消費電力抑制指令は、抑制開始の時刻、及び、抑制を解除する時刻の情報を含んでいる請求項1〜4のいずれか1項に記載の消費電力の制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、消費電力抑制を実行する前に、注意を喚起する表示又は警報を生じさせる請求項1〜6のいずれか1項に記載の消費電力の制御システム。
【請求項8】
前記電気機器は、前記消費電力抑制の開始を一定時間猶予する操作部を備えている請求項7記載の消費電力の制御システム。
【請求項9】
前記電気機器は、商用電源電圧を喪失しても、喪失直前に消費電力抑制を実行していたか否かを記憶しており、喪失直前に消費電力抑制を実行していた場合は、商用電源電圧喪失後の復帰の際に引き続き消費電力抑制を実行する請求項1〜8のいずれか1項に記載の消費電力の制御システム。
【請求項10】
重畳される信号を増幅する中継部が設けられた請求項2記載の消費電力の制御システム。
【請求項11】
前記送信部から前記中継部までは専用回線で前記信号を送信し、前記中継部から前記電力線に信号を重畳する請求項10記載の消費電力の制御システム。
【請求項12】
電力需要の端末側にある所定の種類の負荷群に対して電力供給の上位側から消費電力抑制指令の信号を送信することにより消費電力の制御を行う場合の前記端末側の電気機器であって、
前記電気機器には、電力安定供給の重要性に関する自己への評価が予め設定されており、かつ、当該電気機器は、
前記上位側から送信された前記信号を受信する受信部と、
前記評価及び前記受信部が受信した信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは自ら消費電力抑制を実行する制御部と
を備えていることを特徴とする電気機器。
【請求項13】
電力供給の上位側から電力需要の端末側に対して消費電力の制御を行うための、消費電力の制御方法であって、
前記端末側の電気機器に予め、電力安定供給の重要性に関する評価を設定し、
前記上位側から前記端末側の所定の負荷群に対する消費電力抑制指令の信号を送信し、
前記電気機器は、前記信号を受信し、前記評価及び受信した前記信号に基づいて消費電力抑制の必要性を判断し、必要と判断したときは、自ら消費電力抑制を実行する、
ことを特徴とする消費電力の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39003(P2013−39003A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175211(P2011−175211)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】