説明

消費電力量削減支援装置および方法、省エネ運転制御システム

【課題】消費電力の目標値を達成するためにデマンド制御を実行する際、対象領域の快適性を損なわずに負荷設備の運転状態を制御する。
【解決手段】記憶部110に記憶される各種データから導出部120によって導出される消費電力量とパラメータの設定値との関係を表す関係情報と、消費電力量の上限値を超えないような負荷設備の運転条件を表す運転条件情報とに基づいて、消費電力量の上限値を超えないようにパラメータの設定値の組を算出部130が算出し、対象となる空間の環境状態に応じて抽出部140が抽出し、パラメータの設定値の組を選択肢としてユーザに対して選択可能な状態で表示部150が表示し、表示されたパラメータの設定値の組から選択された1つを設定値反映部160が負荷設備に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力量削減支援装置および方法、省エネ運転制御システムに関し、特に、消費電力量の上限値を超えないように負荷設備の消費電力量の削減を実現させる消費電力量削減支援装置および方法、省エネ運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮のため、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する取り組みが展開されており、特に、オフィスビル、商業ビルや工場などの施設においては、施設の負荷設備について省エネルギー運転を実施し、負荷設備が一定期間に消費する電力量(以下、「消費電力量」という。)を抑制することによるCO2の排出量削減への取り組みが実践されている。
従来から、負荷設備の省エネルギー運転を実現するために、電力デマンド制御が実行されている。電力デマンド制御とは、電力の需要者が時々刻々と変化する消費電力量を監視し、需要者の需要電力(以下、「デマンド」という。)すなわち負荷設備の消費電力量が、電力会社との間で契約した契約電力値を超えないように、負荷設備の運転状態を制御するパラメータ(以下、「運転パラメータ」という。)の設定値(目標値)を変更することによって負荷設備の運転状態を制御することをいう。
【0003】
例えば、デマンド量を監視して、予め定めた消費電力量の上限値を超えないように負荷設備の運転状態をデマンド監視装置を用いて制御する技術が知られている(特許文献2)。このような電力デマンド制御は、一般的に、負荷設備の中でも相対的に消費電力が大きい空調設備や照明設備の運転状態を制御する室温や照度(運転パラメータ)の設定値を変更することにより、実施される。
【0004】
しかし、上述したような電力デマンド制御は、多様な空間を含む施設において、施設の管理者によって一律に実行されるため、その空間の居住者(以下、「利用者」という。)にとって快適性が損なわれる場合があり、また、利用者が居住空間の環境制御に自ら関わることができない不満(以下、このような利用者の不満を「疎外感」という。)を抱くといった場合があった。
そのため、引用文献2に開示されている技術では、消費電力の上限値を超えないよう電力デマンド制御を実行する際に、快適性が損なわれた利用者の疎外感を解消させることは困難であった。
【0005】
このような問題に対し、完全に空間の快適性を保たないまでも、利用者の意図を反映させた電力デマンド制御を実行する技術が知られている(特許文献1)。
特許文献1に開示されている技術は、各空間の環境状態の変更に関する利用者からの要望の度合い(以下、「要望率」という。)に応じて、負荷設備に許容されている総電力を按分するものである。
例えば、特許文献1に開示されている技術では、「温度を上げて(下げて)ほしい」または「明るく(暗く)してほしい」といった利用者からの環境状態の変更に関する要望を受け付け、決められた総電力量のうち、要望率の高い対象空間には相対的に多い電力量を按分し、要望率の低い対象空間には相対的に少ない電力量を按分する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−204188号公報
【特許文献2】特開2009−19853号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】URL:http://www.eccj.or.jp/office_bldg/04.html
【非特許文献2】独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 エネルギー使用合理化技術戦略的開発(FS事業)、「創発オフィスシステム開発の事前調査」平成20年度報告書、「5.1 照度と電力量の関係に関する実験結果」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、各空間から取得された環境状態の変更に関する要望の度合い(要望率)に応じて、予め定められた総電力をデマンド制御の対象となる負荷設備に按分して各空間の環境状態を制御する技術であることから、利用者にとって維持したい環境までも変更してしまうといった場合がある。
例えば、空間の室温を制御する空調設備と照度を制御する照明設備とを対象とするデマンド制御を実行する場合、特許文献1に開示される技術では、各空間の環境状態の変化への要望率に応じた電力量が空調設備と照明設備とに按分されるため、空間によっては「温度を変更してまで明るさを要望とおりにしなくて良かった」や、「明るさを変更してまで温度を要望とおりにしなくて良かった」というような、要望率に応じた電力のデマンド制御を実行した後の空間の環境状態と実際に利用者が要望する空間の環境状態との間に乖離が発生する恐れがある。
【0009】
その結果、ある空間では利用者の要望を実現する環境状態となり、他の空間では利用者の要望とは異なる環境状態となる場合があり、要望とは異なる環境状態となった空間の居住者に対して疎外感を誘発するといった問題があった。
そこで、本発明は上述の問題を解決するために、消費電力の上限値を超えないようにするための電力デマンド制御を実行する際、対象空間の利用者が抱く疎外感を緩和させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は、消費電力削減支援装置として、任意の空間の環境を制御する負荷設備の消費電力量と、前記負荷設備の運転状態を制御する複数のパラメータの設定値との関係を表す関係情報を記憶する記憶部と、前記関係情報に基づいて、前記負荷設備の消費電力量が予め定められた上限値を超えない前記設定値の組を算出する算出部と、この算出部によって算出された前記設定値の組の中から、前記空間の環境の状態に応じた前記設定値の組を抽出する抽出部と、この抽出部によって抽出された複数の前記設定値の組を選択可能に表示する表示部と、この表示部によって表示された前記設定値の組のうち1つが選択されると、選択された前記設定値の組に対応する前記パラメータの設定値を前記負荷設備へ反映する設定値反映部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明における前記関係情報は、前記前記パラメータの設定値と前記負荷設備の消費電力量の実績データとに基づいて導出されても良い。
また、本発明における前記抽出部は、前記設定値反映部により反映される前記設定値により前記負荷設備の運転状態の制御を行う実行時間と、時間経過と前記空間の使用状態との関係とに基づいて、前記算出部による前記設定値の組の算出結果の中から前記設定値の組を複数抽出しても良い。
【0012】
また、本発明における前記負荷設備は、少なくとも前記空間の温度環境を制御する空調設備および前記空間の照明環境を制御する照明設備を含み、前記パラメータは、少なくとも、前記空調設備によって前記空間の温度環境を制御する際に前記空調設備へ反映させる前記空間の設定温度と、前記照明設備によって前記空間の照明環境を制御する際に前記照明設備へ反映させる前記空間の設定照度とを含んでも良い。
【0013】
さらに本発明は、消費電力量削減支援方法として、任意の空間の環境を制御する負荷設備の消費電力量と、前記負荷設備の運転状態を制御する複数のパラメータの設定値との関係を表す関係情報を記憶するステップと、前記関係情報に基づいて、前記負荷設備の消費電力量が予め定められた上限値を超えない前記設定値の組を算出するステップと、前記設定値の組を算出するステップによって算出された複数の前記設定値の組の中から、前記空間の環境の状態に応じた前記設定値の組を抽出するステップと、前記設定値の組を抽出するステップによって抽出された前記設定値の組を選択可能に表示するステップと、前記設定値の組を選択可能に表示するステップによって表示された前記設定値の組のうち1つが選択されると、選択された前記設定値の組に対応する前記パラメータの設定値を前記負荷設備へ反映するステップとを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明における前記関係情報を記憶するステップは、前記パラメータの設定値と前記負荷設備の消費電力量の実績データに基づいて導出するステップによって行われても良い。
また、本発明における前記設定値の組を抽出するステップは、選択された設定値を前記負荷設備へ反映するステップにより反映された前記設定値によって前記負荷設備の運転状態の制御を行う実行時間と、時間経過と前記空間の使用状態との関係とに基づいて、前記設定値の組を算出するステップによって算出された複数の前記設定値の組の中から前記設定値の組を複数抽出しても良い。
【0015】
さらに本発明は、サーバ装置と複数の端末装置とがネットワークを介して接続され、前記端末装置の少なくとも1つが設置されている空間の環境を制御する負荷設備の運転状態に関係するパラメータの設定値を少なくとも1つの前記端末装置が選択し、前記サーバ装置が前記負荷設備に反映させる前記パラメータの設定値を決定して前記負荷設備に前記パラメータの設定値を反映させる省エネ運転制御システムとして、前記サーバ装置は、外部からのデータを受信しかつ外部に対してデータを送信する送受信部を更に備えた請求項1乃至3のいずれかに記載された消費電力削減支援装置であって、前記サーバ装置の前記表示部は、前記抽出部によって抽出された前記設定値の組を選択可能な状態で表示した省エネ選択肢画面の画面情報を生成して前記送受信部を介して外部に送信し、前記サーバ装置の前記設定値反映部は、前記送受信部を介して受信する外部から送信された前記省エネ選択肢画面の選択結果を表す選択結果情報に基づいて前記負荷設備に対して反映させる前記パラメータの設定値を決定し、前記端末装置は、前記サーバ装置から送信される前記画面情報に基づいて前記省エネ選択肢画面を表示し、表示された前記省エネ選択肢画面から前記設定値の組のうち1つが選択されると、前記パラメータの設定値の組の選択結果を表す前記選択結果情報を生成して前記サーバ装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、負荷設備の消費電力量と複数の運転パラメータの設定値とを表す実績データから、負荷設備の消費電力量と運転パラメータの設定値との関係を表す関係情報を導出して負荷設備の消費電力量の上限値を超えない運転パラメータの設定値の組を算出し、対象となる空間の環境の状態に応じた運転パラメータの設定値の組を選択可能な状態で表示する。
【0017】
その結果、該当する空間において負荷設備の消費電力量の上限値を超えない運転パラメータの設定値の組を選択肢として空間の居住者(以下「利用者」という。)に対して提示することができ、利用者は、提示された選択肢の中から、負荷設備に反映させる所望の運転パラメータの設定値の組を選択することができる。
したがって、消費電力の上限値を超えないようにするための電力デマンド制御を実行する際、対象空間の利用者が抱く疎外感を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の消費電力量削減支援装置および端末装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における省エネ運転選択肢画面の一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置を含む省エネ運転制御システムの構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態において各端末装に表示される省エネ運転選択肢画面の一例を示す図である。
【図7】第2の実施の形態において各端末装置からの投票結果を集計した得点表の一例を示す図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置を含む省エネ運転制御システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の原理]
本発明の特徴は、電力の制約を充足するために複数の調整要素(例えば、温度や照度。)を考慮に入れることで、トップダウン的かつ一意的ではない「選択肢」という幅を導入できていることと、これを管理者ではなく居住者に提示することであり、疎外感を緩和することと電力制約を充足することの両立を達成しているところにある。
すなわち、本発明は、電力デマンドの制約の中で、温度や照度といった複数の調整要素について、どの調整要素をどの程度調整するかを選択することが可能な「選択肢」を導出し、その「選択肢」を居住者に提示することで、居住者が抱く疎外感を緩和させることができるものである。
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置は、居住空間の環境を制御する負荷設備に対して運転制御を実行することにより、負荷設備の消費電力量の抑制を図るものである。
【0021】
図1は、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100の機能構成を示す機能ブロック図を、図2は、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100のハードウェア構成を示すブロック図を示す図である。
消費電力量削減支援装置100は、図1に示すように、記憶部110、導出部120、算出部130、抽出部140、表示部150、設定値反映部160とを有しており、空調設備10−1および照明設備10−2に対して図2に示すインターフェース部3を介して運転パラメータの設定値を反映させる。なお、空調設備10−1および照明設備10−2をまとめて「負荷設備10」として、以下、説明をする。
【0022】
記憶部110は、居住空間における環境の状態を制御するために稼働している負荷設備10の運転状態に関係する運転パラメータの設定値と、負荷設備10の消費電力量とを図2に示すインターフェース部3を介して負荷設備10から取得し、これら取得した運転パラメータの設定値と負荷設備10の消費電力量とを実績データとして図2に示す記憶装置2に記憶する。
【0023】
本実施の形態において、例えば、記憶部110は、空調設備10−1によって空調管理される空間の設定室温の設定値が24℃で設定された場合、すなわち、空調設備10−1の運転パラメータである設定室温の設定値が24℃であった場合、空調設備10−1の消費電力量の実績値を定期的に取得し、また、設定室温の設定値が28℃の空調設備10−1の消費電力量の実績値を定期的に取得する。このように、記憶部110は、設定室温の設定値毎に空調設備10−1の消費電力量の実績値を定期的に取得して、設定室温の設定値と消費電力量の実績値とを関連付けた実績データを記憶する。同様に、記憶部110は、設定照度の設定値と照明設備10−2の消費電力量とを関連付けた実績データについても記憶する。
なお、記憶部110は、負荷設備10の運転パラメータの設定値と消費電力量の実績値とを取得する際に、負荷設備10が保有する居住空間の室内温度,湿度,照度の現在値といった居住空間の環境状態を表す情報(以下、「環境情報」という。)を同時に取得することもできる。
【0024】
導出部120は、記憶部110によって記憶された実績データに基づいて、負荷設備10の消費電力量と運転パラメータとの関係を表す関係情報を導出する。また、導出部120は、予め記憶されている負荷設備10の消費電力量の上限値と実績データとから、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えないような負荷設備10の運転条件を表す運転条件情報についても導出する。
【0025】
ここで、導出部120が導出する「関係情報」と「運転条件情報」とについて、具体的に説明する。
なお、後述する「関係情報」および「運転条件情報」を導出する際に用いられる各種計算手法は、必要なデータを収集してそれらデータに基づいて「関係情報」および「運転条件情報」を導出する手法の一例として示すものであり、「関係情報」および「運転条件情報」を導出する手法は、本発明の本質的な事項ではない。
【0026】
<関係情報について>
関係情報は、負荷設備10の運転パラメータの設定値と、この設定値で運転する時の負荷設備10の消費電力量との関係を表す情報である。本実施の形態においては、記憶部110によって取得された負荷設備10の運転パラメータの設定値と負荷設備10の消費電力量との蓄積された実績データに基づいて構築された運転パラメータの設定値と消費電力量との関係を表す情報を、導出部120は関係情報として導出する。
このような関係情報は、運転パラメータの設定値と消費電力量との関係を演算式または対応表によって表すことができる。
【0027】
以下に、具体例として、空調設備10−1に対する運転パラメータの設定値と消費電力量との関係を表す関係情報について説明する。
居住空間の設定温度を1℃緩和すると、空調設備の消費電力は、設定温度の緩和による負荷削減分の電力削減効果を得ることができる。この電力削減効果、すなわち、空調設備10−1の運転パラメータの設定値(設定温度)と消費電力量との関係は、外気エンタルピーによって変動することが知られている。外気エンタルピーは、温度と湿度とによって決定され、一般的には、気象予報のデータや実測された物理量から予測される値である(非特許文献1)。
【0028】
ここで、本実施の形態において、蓄積された実績データに基づく空調設備10−1の関係情報が、以下の(式1)で表されるものとする。
【0029】
T(p)=a×p+b ・・・(式1)
ただし、Tは設定温度、pは電力量、a,bは係数(自然数)とする。
【0030】
上記(式1)の係数a,bは、外気エンタルピーに応じて変動する。本実施の形態においては、外気エンタルピーと(式1)の係数a,bとの対応表を図2に示す記憶装置2に予め記憶している。
導出部120は、予測される外気エンタルピーに対応する係数a,bを予め記憶している上記の対応表から求め、実績データに基づく空調設備10−1の関係情報である(式1)を導出する。
【0031】
次に、照明設備10−2に対する運転パラメータの設定値と電力量との関係を表す関係情報について説明する。
居住空間における照度と照明設備の消費電力と関係は、概ね線形関係であることは、広く知られている(非特許文献2)。また、照度設定の変更に対する照明設備の消費電力量の変動量、すなわち、照明設備10−2の運転パラメータの設定値(設定照度)と電力量との関係は、居住空間に設置された照明機器の配置状態や照明機器の種類に応じて変動する。
ここで、本実施の形態において、蓄積された実績データに基づく照明設備10−2の関係情報が、以下の(式2)で表されるものとする。
【0032】
L(p)=s×p+t ・・・(式2)
ただし、Lは設定照度、pは電力量、s,tは係数(自然数)とする。
【0033】
上記(式2)の係数s,tは、居住空間に設置された照明機器の配置状態や照明機器の種類によって定まるものである。本実施の形態においては、居住空間毎の係数s,tを予め定められた値として図2に示す記憶装置2に記憶している。
導出部120は、該当する居住空間に対応する係数s,tを記憶装置2に予め記憶している係数s,tから求め、実績データに基づく照明設備10−2の関係情報である(式2)を導出する。
このようにして、本実施の形態における導出部120は、空調設備10−1および照明設備10−2の関係情報を導出する。
【0034】
<運転条件情報について>
運転条件情報は、負荷設備に対して目標値となる消費電力量を達成するための電力デマンド制御を実施する際に、目標値の達成に必要な負荷設備の運転状態の条件を表す情報である。
本実施の形態において、運転条件情報は、負荷設備10の消費電力量が上限値を超える恐れがある場合、居住空間の環境情報と実績データに含まれる負荷設備10の現在の消費電力量とから、消費電力量の上限値を超えないようにするために必要な消費電力量の削減量(以下、「削減目標値」という。)を含んだ情報とする。さらに、運転条件情報には、削減目標値に加えて、削減目標値を達成させるために負荷設備10のそれぞれの設備が削減すべき消費電力量を振り分けた情報や、削減目標値を達成させる運転パラメータの設定値を反映させた状態で負荷設備10を運転させる時刻を表す時間情報を含んでも良い。
【0035】
例えば、本実施の形態において、該当する空間に設置されている負荷設備10の消費電力量の上限値が95kWhに設定されているものとする。また、記憶部110によって取得された空調設備10−1,照明設備10−2に関する実績データから、空調設備10−1の室温の設定値が20℃の時の空調設備10−1の消費電力量が70kWh、照明設備10−2の照度の設定値が500lxの時の照明設備10−2の消費電力量が30kWhであるとする。
【0036】
そこで、その空間において空調設備10−1の室温の設定値が20℃、照明設備10−2の照度の設定値が500lxでそれぞれ運転中の場合、導出部120は、その空間における負荷設備10の削減目標値を、70+30−95=5から、5kWhであると求める。また、導出部120は、求めた削減目標値を達成させるために、空調設備10−1と照明設備10−2とのそれぞれが削減すべき消費電力量の振り分けを行う。例えば、求められた削減目標値のうち、空調設備10−1が80%を照明設備10−2が20%を削減するといった削減目標値の振り分けを行う。
導出部120は、求めた削減目標値と削減目標値の振り分けといった負荷設備10の運転状態の条件を表す情報を運転条件情報として導出する。
【0037】
本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100の算出部130は、導出部120によって導出された関係情報に基づいて、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない負荷設備10の運転パラメータの設定値の組を算出する。
本実施の形態において、算出部130は、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の運転パラメータ設定値と、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない照明設備10−2の運転パラメータの設定値とを算出して、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の運転パラメータ設定値と照明設備10−2の運転パラメータの設定値との組を算出する。
【0038】
具体的には、算出部130は、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の設定室温の設定値と、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない照明設備10−2の設定照度の設定値とを関係情報に基づいて算出する。
この算出結果から、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の設定室温と照明設備10−2の設定照度との設定値の組を算出する。
【0039】
例えば、照明設備10−2の運転パラメータの設定値を変更せずに空調設備10−1の運転パラメータの設定値を変更することで削減目標値を達成させる場合、算出部130によって算出される空調設備10−1の設定室温と照明設備10−2の設定照度との設定値の組は、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の設定室温の設定値の算出結果と、現在の照明設備10−1の設定照度の設定値との組として算出部130によって算出される。
【0040】
また、空調設備10−1および照明設備10−2の双方の運転パラメータの設定値を変更することで削減目標値を達成させる時の算出部130によって算出される空調設備10−1の設定室温と照明設備10−2の設定照度との設定値の組は、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えないような空調設備10−1の設定室温の設定値の算出結果と、照明設備10−2の設定照度の設定値の算出結果とのうち、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない空調設備10−1の設定室温と照明設備10−2の設定照度の設定値との組み合わせとして、算出部130によって算出される。
ここで算出部130は、離散的に負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない負荷設備10の運転パラメータの設定値の組を算出しても良く、連続的に負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない負荷設備10の運転パラメータの設定値の組を算出しても良い。
【0041】
抽出部140は、算出部130によって算出された運転パラメータの設定値の組の中から、居住空間の環境の状態に応じた運転パラメータの設定値の組を抽出する。
本実施の形態において、抽出部は、記憶部110によって取得される環境情報に含まれる居住空間の環境の状態を表す各情報や、導出部120によって導出される運転条件情報に含まれる負荷設備10の運転状態の条件を表す情報に基づいて、算出部130によって算出された運転パラメータの設定値の組の中から居住空間に応じた運転パラメータの設定値の組を抽出する。
【0042】
例えば、記憶部110に記憶されている環境情報に含まれる現在の室内温度や照度を表す情報と、導出部によって導出される運転条件情報に含まれる削減目標値や各負荷設備への削減目標値の振り分け条件を表す情報とに基づいて算出したうんてんパラメータの設定値の組を、居住空間の現在の環境状態に適して抽出する。
また、環境情報や運転条件情報に加え、負荷設備10の省エネ運転の対象となる居住空間の使用状態と時刻との関係を表す情報についても加味して運転パラメータの設定値の組を抽出しても良い。
【0043】
具体的には、省エネ運転の実行予定時刻が12時〜13時、現在(例えば、11時。)の居住空間の使用状態が執務フロアで稼働中(例えば、任意の社員が作業を行っている。)、この居住空間は11時45分〜13時15分まで稼働停止(例えば、昼休みなど。)状態であった場合、抽出部140は、上記の情報に応じて12時〜13時の間の空調設備10−1および照明設備10−2の運転パラメータの設定値の組み合わせ、例えば、室温を現状維持,照度を低くすることにより負荷設備の消費電力量の上限値を超えない運転パラメータの設定値の組み合わせを、算出部130の算出結果と運転条件情報とから複数抽出することができる。また、算出部130による算出結果に基づいて、例えば設備管理者が、負荷設備10の運転パラメータの設定値の組み合わせを複数抽出しても良い。
【0044】
表示部150は、抽出部140によって抽出された、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えないような複数の運転パラメータの設定値の組を選択可能に表示する。
本実施の形態において表示部150は、抽出部140によって抽出された空調設備10−1および照明設備10−2の運転パラメータの設定値の組み合わせの中から、該当する居住空間の利用者(以下、単に「利用者」という。)が所望の運転パラメータの設定値の組み合わせを選択できるようにする。
ここで、表示部150が表示する、空調設備10−1および照明設備10−2の運転パラメータの設定値の組み合わせの選択画面(以下、「省エネ運転選択肢画面」という。)の一例を、図3に示す。
【0045】
表示部150は、図3に示すように、省エネ運転選択肢画面Aを表示する。この省エネ運転選択肢画面Aは、空調設備10−1および照明設備10−2の運転パラメータの設定値の組み合わせを、利用者がラジオボタンで選択することができるように表示した画面である。よって、このような省エネ運転選択肢画面Aを表示部150は表示することにより、利用者に負荷設備10の省エネ運転時の運転パラメータを選択させる。
【0046】
設定値反映部160は、表示部150によって表示された運転パラメータの複数の設定値の組のうち1つが選択されると、選択された設定値の組を負荷設備10に対してそれぞれ反映させる。
例えば、設定値反映部160は、図3に示す省エネ運転選択肢画面Aから利用者によって「室温を27.25℃、照度を700lxにする。」が選択されると、空調設備10−1に対して運転パラメータである室温の設定温度を27.25℃となるよう反映させ、照明設備10−2に対して運転パラメータである室内の照度設定を700lxとなるよう反映させる。
【0047】
なお、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100は、図2に示すように、CPU(中央演算装置)1やメモリやハードディスクなどの記憶装置2、インターフェース部3からなるコンピュータ(ハードウェア)にコンピュータプログラム(ソフトウェア)をインストールすることによって実現され、上述した消費電力量削減支援装置100の各機能は、上記コンピュータの各種ハードウェア資源と上記コンピュータプログラムとが協働することによって実現される。
また、上記したコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体や記憶装置に格納された状態で提供されても良く、電気通信回線を介して実現されても良い。
【0048】
次に、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
図4に示すように、消費電力量削減支援装置100の記憶部110は、定期的に空調設備10−1と照明設備10−2との運転状態に関係する運転パラメータの設定値と、それぞれの設備の消費電力量の実績値を取得して、運転パラメータの設定値と消費電力量とを関連付けた実績データを記憶する。このとき、運転パラメータの設定値と消費電力量の実績値とともに取得した居住空間の室内温度,湿度,照度といった環境情報も記憶する(ステップS101)。
【0049】
記憶部110によって実績データおよび環境情報が記憶されると、消費電力量削減支援装置100は、電力デマンド制御による電力削減要求が有るか否かを判定する(ステップS102)。
具体的には、消費電力量削減支援装置100は、記憶部110によって記憶された消費電力量の実績値に基づく今後の消費電力量の予測値と負荷設備10の消費電力量の上限値とを比較し、消費電力量の実績値が負荷設備10の消費電力量の上限値を超える恐れが有るか否かを判定する。
【0050】
消費電力量の予測値と負荷設備10の消費電力量の上限値との比較結果から、負荷設備10の消費電力量の実績値が上限値を超える恐れが有る場合には、消費電力量削減支援装置100は、電力削減要求が有りと判定する。
一方、消費電力量の予測値と負荷設備10の消費電力量の上限値との比較結果から、負荷設備10の消費電力量の実績値が上限値を超える恐れが無い場合には、消費電力量削減支援装置100は、電力削減要求が無しと判定する。また、設備管理者による入力操作によって強制的に電力削減要求有り、または、無しと判定することとしても良い。
【0051】
電力削減要求が無いと判定された場合(ステップS102で「NO」)、記憶部110は、再び定期的に空調設備10−1と照明設備10−2との運転状態を制御する運転パラメータの設定値と、それぞれの設備の消費電力量の実績値、および、居住空間の室内温度,湿度,照度の現在値を取得し、実績データと環境情報とを記憶する(ステップS101)。
一方、電力削減要求が有りと判定された場合(ステップS102で「YES」)、導出部120は、記憶部110によって記憶された実績データと環境情報とに基づいて、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えないような運転条件を表す運転条件情報と、負荷設備10の消費電力量と運転パラメータとの関係を表す関係情報とを導出する(ステップS103)。
【0052】
導出部120によって関係情報と運転条件情報とが導出されると、算出部130は、関係情報に基づいて、負荷設備10の消費電力量の上限値を超えない負荷設備10に反映させる運転パラメータの設定値の組を複数算出する(ステップS104)。
運転パラメータの設定値の組が複数算出されると、抽出部140は、算出された運転パラメータの設定値の組の中から、記憶部110によって取得された環境情報および居住空間の環境状態と運転条件情報とに応じた運転パラメータの設定値の組を抽出する(ステップS105)。
抽出部140によって運転パラメータの設定値の組が1つも抽出できない場合は、利用者に対して、変更することが可能な諸条件の見直しを要求する。例えば、運転条件情報の再設定を要求するとしても良い。
【0053】
抽出部140によって運転パラメータの設定値の組が複数抽出されると、表示部150は、抽出された運転パラメータの設定値の複数の組を選択可能に表示する(ステップS106)。
表示部150によって表示された運転パラメータの設定値の組のうち1つが選択されると、設定値反映部160は、選択された設定値の組に対応する運転パラメータの設定値を負荷設備10に対して反映する(ステップS107)。
【0054】
このように、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置100は、消費電力量の上限値を超えないようにするための電力デマンド制御を実施する際、負荷設備10の運転パラメータの設定値を居住空間の状態に応じて複数抽出して利用者に対して選択可能な状態で表示し、利用者によって選択された運転パラメータの設定値を負荷設備10に対して反映して負荷設備10の運転状態を制御する。
【0055】
上述のように、本実施の形態によれば、居住空間の温度環境を制御する空調設備および居住空間の照度環境を制御する照明設備の少なくとも2種類の負荷設備に対して消費電力量の上限値を超えないようにするための電力デマンド制御を実施する際、記憶した実績データに基づいて、負荷設備の運転条件を表す運転条件情報と、消費電力量と運転パラメータの設定値との関係を表す関係情報とを導出し、運転条件情報と関係情報とか負荷設備の消費電力量の削減目標値を達成させる運転パラメータの設定条件を算出して居住空間に応じた運転パラメータの設定値を複数抽出し、運転パラメータの設定値を複数の選択肢として利用者に選択可能な状態で表示することにより、利用者に所望の運転パラメータの設定値を選択させることができる。
その結果、消費電力量の上限値を超えないようにするための電力デマンド制御を実行する際に、利用者に運転パラメータの設定値を複数の選択肢として表示して選択させることによって、電力デマンド制御が実行される空間の利用者が抱く疎外感を緩和させることができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置を含んだ負荷設備に対する電力デマンド制御を実施する省エネ運転制御システムは、ネットワークを介して接続される複数の端末装置によって選択された負荷設備の運転パラメータの設定値に基づいて負荷設備の運転制御を実行することにより、負荷設備の消費電力量の抑制を図るものである。
【0057】
図5は、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置200を含んだ省エネ運転制御システム20の構成を説明する図である。
図5に示すように、本実施の形態における省エネ運転制御システム20は、サーバ機能を有する消費電力量削減支援装置200と、空調設備の運転状態を制御する空調コントローラ10a−1および照明設備の運転状態を制御する照明コントローラ10a−2の2つを少なくとも備える負荷設備10aと、クライアント機能を有する複数の端末装置30−1〜30−nとから構成されている。なお、第1の実施の形態において説明した消費電力量削減支援装置100の構成要素と同一の構成および機能を有するものには、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0058】
消費電力量削減支援装置200は、サーバ機能を有し、クライアント端末である端末装置30−1〜30−nとの間でデータの送受信を行う。
端末装置30−1〜30−nは、消費電力量削減支援装置200から送信されるデータを受信して、受信したデータに応じたデータ処理を実行する。
例えば、消費電力量削減支援装置200から送信された省エネ運転選択肢画面の画面情報を受信する場合、端末装置30−1〜30−nは、受信した画面情報に応じた省エネ運転選択肢画面を運転パラメータの複数の設定値を選択可能な状態で表示する。また、ユーザによって選択された運転パラメータの設定値を表す情報(以下、「選択結果情報」という。)を消費電力量削減支援装置200へ送信する。
【0059】
消費電力量削減支援装置200の表示部250は、抽出部240によって抽出された運転パラメータの設定値の複数の組を選択可能に表示する省エネ運転選択肢画面の画面情報を生成し、端末装置30−1〜30−nに対して後述する送受信部270を介して送信する。
ここで、表示部250によって生成された画面情報に基づいて端末装置30−1〜30−nで表示される省エネ運転選択肢画面の一例を図6に示す。図6に示すように、端末装置30−1〜30−nで表示される省エネ運転選択肢画面Bは、ユーザが所望する居住空間の環境状態を選択できるように表示されており、それぞれの選択肢(パターンa〜パターンc)に抽出部140によって抽出された運転パラメータの複数の設定値が関連付けられている。
【0060】
設定値反映部260は、後述する送受信部270を介して受信する選択結果情報から複数の端末装置30−1〜30−nによって選択された負荷設備10aに対する運転パラメータの設定値を集計して負荷設備10aに反映させる運転パラメータの設定値を決定し、送受信部270を介して負荷設備10aへ決定した運転パラメータの設定値を送信する。
例えば、図6に示すように、端末装置30−nに該当するユーザが省エネ運転選択肢画面Bに表示された複数の選択肢(パターンa〜パターンc)のうちパターンbを選択した場合、設定値反映部260は、送受信部270を介して端末装置30−nから送信された選択結果情報を受信して、この選択結果情報に対応する運転パラメータの設定値を識別する。同様に設定値反映部260は、他の端末装置30−1〜30−mから送信された選択結果情報に対応する運転パラメータの設定値を識別して、全ての端末装置30−1〜30−nから送信された選択結果情報に対応する運転パラメータの設定値を集計する。
【0061】
ここで、端末装置30−1〜30−nから送信された選択結果情報に対応する運転パラメータの設定値の集計結果を概念的に説明する図を図7に示す。図7に示すように、設定値反映部260は、選択肢毎に選択数の得票割合を集計し、最も選択数の多い選択肢に対応する運転パラメータの設定値を負荷設備10aに反映させる運転パラメータの設定値と決定することができる。
また、設定値反映部260は、端末装置30−1〜30−nが設置されているフロア情報も選択結果情報と同時に取得し、フロア毎に選択数の得票割合を集計して負荷設備10aに反映させる運転パラメータの設定値をフロア毎に決定するとしても良い。
【0062】
送受信部270は、ネットワーク40を介して負荷設備10aおよび端末装置30−nとの間でデータの送受信を行う。
ここで、本実施の形態にかかる消費電力量削減支援装置200および端末装置30−1〜30−nは、図2に示すように、CPU(中央演算装置)1やメモリやハードディスクなどの記憶装置2、インターフェース部3からなるコンピュータ(ハードウェア)にコンピュータプログラム(ソフトウェア)をインストールすることによって実現され、上述した消費電力量削減支援装置200の各機能および端末装置30−1〜30−nの機能は、上記コンピュータの各種ハードウェア資源と上記コンピュータプログラムとが協働することによって実現される。
また、上記したコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体や記憶装置に格納された状態で提供されても良く、電気通信回線を介して実現されても良い。
【0063】
次に、本実施の形態における省エネ運転制御システム20の動作について、図8に示すシーケンス図を参照して説明する。
図8に示すように、省エネ運転制御システム20の消費電力量削減支援装置200は、居住空間の環境の状態を制御するために稼働している空調設備と照明設備との運転状態を制御する運転パラメータの設定値と、それぞれの設備の消費電力量の実績値と、居住空間の室内温度,湿度,照度の現在値とを取得し、実績データおよび環境情報を記憶する(ステップS201)。
【0064】
実績データおよび環境情報が記憶されると、消費電力量削減支援装置200は、記憶した実績データおよび環境情報に基づいて消費電力量の上限値を超えないような空調設備と照明設備とに対する運転条件を表す運転条件情報と、消費電力量と運転パラメータの設定値との関係を表す関係情報と、を導出して運転条件情報に含まれる消費電力量の削減目標値を達成させる運転パラメータの設定値の組を算出する。運転パラメータの設定値の組の算出結果から取得した環境情報に応じた複数の設定値の組を抽出し、抽出した複数の設定値の組を選択可能に表示する省エネ運転選択肢画面の画面情報を生成する(ステップS202)。
【0065】
省エネ運転選択肢画面の画面情報が生成されると、消費電力削減支援装置200は、端末装置30−1〜30−nに対して生成した省エネ運転選択肢画面の画面情報を送信する(ステップS203)。
端末装置30−1〜30−nは、消費電力削減支援装置200から送信された画面情報を受信すると、受信した画面情報に基づいて省エネ運転選択肢画面を表示し、また、ユーザによって選択された運転パラメータの設定値の組を表す選択結果情報を生成する(ステップS204)。
選択結果情報が生成されると、端末装置30−1〜30−nは、生成した選択結果情報を消費電力量削減支援装置200へ送信する(ステップS205)。
【0066】
消費電力量削減支援装置200は、端末装置30−1〜30−nから送信された選択結果情報を受信すると、選択結果情報を集計して負荷設備10aに反映させる運転パラメータの設定値を決定する(ステップS206)。
負荷設備10aに反映させる運転パラメータの設定値が決定されると、消費電力量削減支援装置200は、負荷設備10aに対して決定した運転パラメータの設定値を示す情報を送信する(ステップS207)。
【0067】
負荷設備10aは、消費電力量削減支援装置200から送信される運転パラメータの設定値を示す情報を受信すると、受信した運転パラメータの設定値を該当する設備に反映させて省エネ運転へ切り替える(ステップS208)。
負荷設備10aによって各設備が省エネ運転に切り替わると、負荷設備10aは、消費電力量削減支援装置200に対して省エネ運転を開始したことを示す省エネ運転開始情報を送信し、この省エネ運転開始情報を受信した消費電力量削減支援装置200は、サーバ装置30−1〜30−nに対して省エネ運転開始情報を送信する(ステップS209)。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、ネットワークを介して接続される複数の端末装置によって選択された運転パラメータの設定値に基づいて負荷設備の省エネ運転を実行する際の運転パラメータの設定値を決定することができるので、端末装置が設置されている居住空間に応じた運転パラメータの設定値を負荷設備に対して反映することができる。
したがって、居住空間毎に所望の環境状態となるよう負荷設備の運転状態を制御することができるため、居住空間毎の利用者が抱く疎外感を緩和させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
オフィスビル、商業ビルや工場といった施設における消費電力量を管理する電力管理システムに利用可能である。特に、電力管理システムにおいて、消費電力量の目標値を達成するための電力デマンド制御を実行する省エネ運転制御システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
100,200…消費電力量削減支援装置、110…記憶部、120…導出部、130…算出部、140…抽出部、150,250…表示部、160,260…設定値反映部、270…送受信部、1…CPU(中央演算装置)、2…記憶装置、3…インターフェース部、10,10a…負荷設備、10−1…空調設備、10−2…照明設備、10a−1…空調コントローラ、10a−2…照明コントローラ、20…省エネ運転制御システム、30−1〜30−n…端末装置、40…ネットワーク、A,B…省エネ運転選択肢画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の空間の環境を制御する負荷設備の消費電力量と、前記負荷設備の運転状態を制御する複数のパラメータの設定値との関係を表す関係情報を記憶する記憶部と、
前記関係情報に基づいて、前記負荷設備の消費電力量が予め定められた上限値を超えない前記設定値の組を算出する算出部と、
この算出部によって算出された前記設定値の組の中から、前記空間の環境の状態に応じた前記設定値の組を抽出する抽出部と、
この抽出部によって抽出された複数の前記設定値の組を選択可能に表示する表示部と、
この表示部によって表示された前記設定値の組のうち1つが選択されると、選択された前記設定値の組に対応する前記パラメータの設定値を前記負荷設備へ反映する設定値反映部と
を備えることを特徴とする消費電力量削減支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載された消費電力量削減支援装置において、
前記関係情報は、前記前記パラメータの設定値と前記負荷設備の消費電力量の実績データとに基づいて導出されることを特徴とする消費電力量削減支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された消費電力量削減支援装置において、
前記抽出部は、前記設定値反映部によって反映される前記設定値で前記負荷設備の運転状態の制御を行う実行時間と、時間経過と前記空間の使用状態との関係とに基づいて、前記算出部による前記設定値の組の算出結果の中から前記設定値の組を複数抽出することを特徴とする消費電力量削減支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された消費電力量削減支援装置において、
前記負荷設備は、少なくとも前記空間の温度環境を制御する空調設備および前記空間の照明環境を制御する照明設備を含み、
前記パラメータは、少なくとも、前記空調設備によって制御される温度と、前記照明設備によって制御される照度とを含むことを特徴とする消費電力削減支援装置。
【請求項5】
任意の空間の環境を制御する負荷設備の消費電力量と、前記負荷設備の運転状態を制御する複数のパラメータの設定値との関係を表す関係情報を記憶するステップと、
前記関係情報に基づいて、前記負荷設備の消費電力量が予め定められた上限値を超えない前記設定値の組を算出するステップと、
前記設定値の組を算出するステップによって算出された複数の前記設定値の組の中から、前記空間の環境の状態に応じた前記設定値の組を抽出するステップと、
前記設定値の組を抽出するステップによって抽出された前記設定値の組を選択可能に表示するステップと、
前記設定値の組を選択可能に表示するステップによって表示された前記設定値の組のうち1つが選択されると、選択された前記設定値の組に対応する前記パラメータの設定値を前記負荷設備へ反映するステップと
を備えることを特徴とする消費電力量削減支援方法。
【請求項6】
請求項5に記載された消費電力量削減支援方法において、
前記関係情報を記憶するステップは、前記パラメータの設定値と前記負荷設備の消費電力量の実績データに基づいて導出するステップによって行われることを特徴とする消費電力量削減支援方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載された消費電力量削減支援方法において、
前記設定値の組を抽出するステップは、選択された設定値を前記負荷設備へ反映するステップによって反映された前記設定値で前記負荷設備の運転状態の制御を行う実行時間と、時間経過と前記空間の使用状態との関係とに基づいて、前記設定値の組を算出するステップによって算出された複数の前記設定値の組の中から前記設定値の組を複数抽出することを特徴とする消費電力量削減支援方法。
【請求項8】
サーバ装置と複数の端末装置とがネットワークを介して接続され、前記端末装置の少なくとも1つが設置されている空間の環境を制御する負荷設備の運転状態に関係するパラメータの設定値を少なくとも1つの前記端末装置が選択し、前記サーバ装置が前記負荷設備に反映させる前記パラメータの設定値を決定して前記負荷設備に前記パラメータの設定値を反映させる省エネ運転制御システムにおいて、
前記サーバ装置は、外部からのデータを受信しかつ外部に対してデータを送信する送受信部を更に備えた請求項1乃至4のいずれかに記載された消費電力削減支援装置であって、
前記サーバ装置の前記表示部は、前記抽出部によって抽出された前記設定値の組を選択可能な状態で表示した省エネ選択肢画面の画面情報を生成して前記送受信部を介して外部に送信し、
前記サーバ装置の前記設定値反映部は、前記送受信部を介して受信する外部から送信された前記省エネ選択肢画面の選択結果を表す選択結果情報に基づいて前記負荷設備に対して反映させる前記パラメータの設定値を決定し、
前記端末装置は、前記サーバ装置から送信される前記画面情報に基づいて前記省エネ選択肢画面を表示し、表示された前記省エネ選択肢画面から前記設定値の組のうち1つが選択されると、前記パラメータの設定値の組の選択結果を表す前記選択結果情報を生成して前記サーバ装置に送信することを特徴とする省エネ運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−163304(P2012−163304A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25847(P2011−25847)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】