説明

液中プラズマ処理装置、及び液中プラズマ処理方法

【課題】液体中でプラズマを安定的に発生させ、液体に含まれる被処理物質を効率よく処理することができる液中プラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】液中プラズマ処理装置11は、処理水Wを導入可能な容器12と、マイクロ波発生装置14とを備える。マイクロ波発生装置14は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器21と、そのマイクロ波を伝搬させる導波管22とを有する。導波管22は、その先端部が容器12の内部に突出した状態で容器12の側壁に固定されている。導波管22の先端面22aには貫通穴42を有する石英板41が密接配置される。導波管22から処理水W中にマイクロ波が照射されることにより、その処理水W中に発生した気泡が石英板41の貫通穴42内に捕捉され、その気泡中に放電プラズマが発生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物質を含む液体中にマイクロ波を照射し、その液体中にプラズマを発生させて被処理物質の処理を行う液中プラズマ処理装置、及び液中プラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質を含む液体中にプラズマを発生させて有害物質を分解する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている反応装置では、超音波を照射することで液体中に気泡を発生させ、さらにその液体に対して電磁波を照射することにより気泡中にプラズマを発生させている。このプラズマの作用によって液体中の有害物質が分解されて無害化される。
【0003】
また、本発明者らは、マイクロ波を液体中に照射して、放電プラズマを発生させる液中プラズマ処理装置を提案している。図11には、その液中プラズマ処理装置81を示している。図11に示されるように、液中プラズマ処理装置81は、被処理物質を含む液体Wを導入可能な容器82と、容器82内を減圧する減圧装置83と、容器82内の液体Wにマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置84とを備える。マイクロ波発生装置84は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器85と、そのマイクロ波を伝搬する導波管86とを備えている。導波管86は、その先端部が容器82内部に突出した状態で容器82の側壁に固定されている。また、導波管86の内部には、石英ガラスからなるマイクロ波透過体87が配置され、導波管86の先端部に形成されたスロットアンテナ88から電界強度が強いマイクロ波が出力されるようになっている。この液中プラズマ処理装置81では、マイクロ波の照射によって、液体Wが加熱されることで沸騰して気泡が発生する。そして、この気泡中に放電プラズマが誘起され、液体Wに含まれる被処理物質がそのプラズマにより処理される。このように構成すれば、特許文献1のように超音波を照射しなくても液体W中に気泡を発生させることができるので、装置構成が簡素化される。
【特許文献1】特開2004−306029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図11の液中プラズマ処理装置81では、導波管86のスロットアンテナ88に対応した位置で気泡が発生するが、その気泡は浮力によって上方に移動してしまう。そのため、放電プラズマの発生が不安定となり、十分な処理能力を確保できないといった問題が生じていた。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体中でプラズマを安定的に発生させ、液体に含まれる被処理物質を効率よく処理することができる液中プラズマ処理装置、及び液中プラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被処理物質を含む液体を導入可能な容器と、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、前記マイクロ波を伝搬させる導波管とを有し、前記導波管の先端部から前記液体中にマイクロ波を照射して放電プラズマを誘起させるプラズマ発生手段と、前記導波管の先端部近傍に配置され、前記マイクロ波の照射によって前記液体中に発生した気泡を捕捉するための捕捉空間を有する気泡捕捉手段とを備えたことを特徴とする液中プラズマ処理装置をその要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、マイクロ波発生器で発生されたマイクロ波が導波管により伝搬され、容器内に導入された液体中に導波管の先端部からマイクロ波が照射される。このマイクロ波の照射によって液体が加熱されることで沸騰して気泡が発生する。また、導波管の先端部近傍には気泡捕捉手段が配置されており、液体中に発生した気泡が気泡捕捉手段の捕捉空間で捕捉される。このようにすれば、従来技術のように気泡が移動することがなく、導波管の先端部近傍の捕捉空間に気泡を長時間保持することができる。よって、導波管の先端部近傍に気泡が安定的に存在するため、その気泡中に放電プラズマを効率よく確実に発生させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記導波管の先端面には前記マイクロ波を出力するためのスロットが形成され、前記気泡捕捉手段は、誘電体材料からなり、前記導波管の外部においてその導波管の先端面に密接配置されたマイクロ波透過部材であり、前記捕捉空間は、そのマイクロ波透過部材において前記スロットに対応する位置に形成された凹部または穴部であることをその要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、導波管の先端面にはマイクロ波を出力するためのスロットが形成されており、このスロットから電界強度の強いマイクロ波を出力することができる。また、誘電体材料からなるマイクロ波透過部材が気泡捕捉手段として用いられ、そのマイクロ波透過部材が導波管の外部において導波管の先端面に密接配置されている。そして、マイクロ波透過部材においてスロットに対応する位置に凹部または穴部が形成されている。この場合、マイクロ波透過部材の内部では絶縁破壊が起こることはなくマイクロ波がエネルギーロスなく伝搬される。そして、マイクロ波透過部材の凹部または穴部の補足空間においてマイクロ波のエネルギーが集中することにより、その凹部または穴部には比較的に強い電界が印加されることとなる。この結果、凹部または穴部に捕捉されている気泡中に放電プラズマを効率よく発生させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記気泡捕捉手段は、前記導波管の先端面に密接配置された石英板であることをその要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、気泡捕捉手段として石英板が用いられている。石英は、絶縁性が高く誘電損が低い材料であるため、マイクロ波のエネルギーロスをより少なくすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記捕捉空間は、前記石英板において前記スロットを部分的に露出させるようスロットに沿って設けられた複数の貫通穴であることをその要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、石英板に設けられた各貫通穴に向けてマイクロ波を確実に照射することができる。また、貫通穴が複数設けられているので、各貫通穴で捕捉した気泡中で放電プラズマを発生させることができ、処理能力を高めることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、前記気泡捕捉手段は、誘電体材料からなり、前記導波管内においてその先端部に設けられたマイクロ波透過体であり、前記捕捉空間は、そのマイクロ波透過体の先端面にて開口形成された穴部であることをその要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、誘電体材料からなるマイクロ波透過体が導波管内における先端部に設けられており、このマイクロ波透過体の先端面にて捕捉空間としての穴部が開口形成されている。この場合、マイクロ波透過部材の穴部に比較的に強い電界を印加することができ、穴部に捕捉されている気泡中に放電プラズマを効率よく発生させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、マイクロ波発生器で発生させたマイクロ波を導波管で伝搬させ、容器内に導入された液体中に前記導波管の先端部から前記マイクロ波を照射して放電プラズマを発生させることにより、前記液体中に含まれる被処理物質をその放電プラズマで処理する液中放電プラズマ処理方法であって、前記導波管の先端部近傍において気泡を捕捉するための捕捉空間を有する気泡捕捉手段を配置し、前記マイクロ波の照射によって前記液体中に発生した気泡を前記捕捉空間に捕捉して、その捕捉した気泡中に放電プラズマを発生させるようにしたことを特徴とする液中プラズマ処理方法をその要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、マイクロ波発生器で発生されたマイクロ波が導波管により伝搬され、容器内に導入された液体中に導波管の先端部からマイクロ波が照射される。このマイクロ波の照射によって液体が加熱されることで沸騰して気泡が発生する。また、導波管の先端部近傍には気泡捕捉手段が配置されており、液体中に発生した気泡が気泡捕捉手段の捕捉空間で捕捉される。このようにすれば、従来技術のように気泡が移動することがなく、導波管の先端部近傍の捕捉空間に気泡を長時間保持することができる。よって、導波管の先端部近傍に気泡が安定的に存在するため、その気泡中に放電プラズマを効率よく確実に発生させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜6に記載の発明によると、液体中でプラズマを安定的に発生させ、液体に含まれる被処理物質を効率よく処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、本発明を液中プラズマ処理装置に具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態の液中プラズマ処理装置11を示す概略構成図である。
【0021】
図1に示されるように、液中プラズマ処理装置11は、液体を導入可能な容器12と、容器12内を減圧するための減圧装置13と、マイクロ波を照射するためのマイクロ波発生装置14(プラズマ発生手段)と、液体の温度を測定する熱電対15とを備える。本実施の形態において、容器12はステンレスからなり、その容器12内には、被処理物質(例えば、テトラクロロエチレン(PCE)などの有害物質)を含む処理水Wが入れられている。
【0022】
マイクロ波発生装置14は、マイクロ波を発生するマグネトロン21(マイクロ波発生器)と、マグネトロン21にて発生したマイクロ波を伝搬する導波管22とを備えている。マイクロ波発生装置14の導波管22は、その先端が容器12内に突出した状態で容器12の側壁に固定されている。この導波管22の先端は、容器12内の液面よりも下方となる位置に設けられている。
【0023】
導波管22は、ステンレスからなる管本体31と、管本体31内部(中央孔31a)に配置されたマイクロ波透過体32(具体的には石英ガラス)とを有する。マイクロ波透過体32は、管本体31の長手方向に直交する方向に切った断面形状が略矩形状となるよう形成されている。なお、マイクロ波透過体32としては、石英の以外の材料(例えば、セラミックスからなる誘電体材料など)を用いてもよい。
【0024】
図2に示されるように、管本体31は、外形形状が略円形状となるよう形成されるとともに、中央孔31aは、管本体31の長手方向に直交する方向に切った断面が略矩形状となるように形成されている。管本体31の先端は、容器12の側面中央に設けられた管本体挿通孔33に挿入されている。この管本体31の先端面には、細長い開口部34(スロット)が設けられており、マイクロ波透過体32を伝搬したマイクロ波がその開口部34から出力される。すなわち、導波管22における管本体31の先端部がスロットアンテナとして機能し、電界強度が非常に強いマイクロ波を出力する。なお、開口部34は、マイクロ波透過体32に印加される電界方向と直交する方向に形成されている。
【0025】
本実施の形態のマイクロ波発生装置14において、マグネトロン21は、直流電流が供給されることで、例えば、2.45GHz、10W〜2000Wのマイクロ波を発生する。そして、導波管22は、そのマイクロ波を基本モードであるTE10モードで伝搬させ、先端側のマイクロ波透過体32を通して開口部34から処理水W中に照射する。
【0026】
図1に示されるように、減圧装置13は、減圧用のロータリーポンプ36と、そのロータリーポンプ36と容器12内部とを接続する排気管37と、排気管37の途中に設けられる開閉バルブ38とを備える。この減圧装置13では、開閉バルブ38が開状態に作動された後、ロータリーポンプ36が駆動されると、容器12内の気体が排気管37を介して排出され、その容器12内が減圧状態(具体的には、例えば4kPaの圧力)にされる。容器12内を減圧することにより、処理水Wはその沸点が下がり沸騰し易くなる。
【0027】
本実施の形態では、導波管22の外部においてその先端面22aに石英板41(気泡保持手段)が密接配置されている。この石英板41は、管本体31とほぼ等しい直径を有し、厚さが3mm程度の円盤状に形成されている。図3に示されるように、この石英板41には、導波管22の開口部34を部分的に露出させるようその開口部34に沿って複数の貫通穴42(捕捉空間)が形成されている。各貫通穴42の直径は10mmであり、5mm程度の間隔をあけて設けられている。
【0028】
次に、本実施の形態の液中プラズマ処理装置11におけるプラズマ処理方法を説明する。
【0029】
先ず、容器12内に処理水Wを入れ、容器12を密閉状態にした後、減圧装置13を作動させる。このとき、開閉バルブ38が開状態に作動されてロータリーポンプ36が駆動されることで、容器12内の気体が排気管37を介して排出され、その容器12内が減圧される。ここで、容器12内が減圧されることにより、処理水Wはその沸点が下がる。本実施の形態では、容器12内が水蒸気で飽和状態となる所定圧力まで減圧される。
【0030】
その後、マイクロ波発生装置14を作動させ、マイクロ波を照射する。具体的には、図示しない電源からマグネトロン21に直流電流が供給されることでマイクロ波が発生される。そして、そのマイクロ波は導波管22を伝搬して開口部34から容器12内の処理水W中に照射される。このマイクロ波の照射により、処理水Wが加熱されることで沸騰してその処理水W中に気泡が発生する。この気泡は石英板41の各貫通穴42内にトラップ(捕捉)され、マイクロ波のエネルギーによって、その気泡中で絶縁破壊が起こり、放電プラズマが誘起される。そして、その放電プラズマの熱エネルギーにより、処理水W中の有害物質が分解され無害化される。さらに、処理水W中において、放電プラズマによる発光現象が誘起され、非常に強い紫外線が処理水W中の有害物質に直接照射される。この光エネルギーによっても有害物質が分解され無害化される。
【0031】
本実施の形態の液中プラズマ処理装置11を用い、酸化還元指示薬であるメチレンブルー(被処理物質)を含む液体Wを容器12内に入れ、放電プラズマによるメチレンブルーの分解効率を測定した。その結果を図4に示している。なお、図4においては、石英板41(気泡捕捉手段)を設けていない従来の液中プラズマ処理装置(図11参照)を用いた場合の測定結果を比較例として示している。図4に示されるように、本実施の形態では、石英板41の各貫通穴42内に気泡が安定的に捕捉され、放電プラズマが確実に発生することでメチレンブルーの分解効率が向上することが確認された。
【0032】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0033】
(1)本実施の形態の液中プラズマ処理装置11では、導波管22の開口部34がスロットアンテナとして機能し、電界強度が強いマイクロ波を出力することができる。そして、そのマイクロ波を処理水W中に照射することにより、処理水Wが沸騰して処理水W中に気泡が発生される。また、液中プラズマ処理装置11において、導波管22の先端面22aには石英板41が密接配置されており、処理水W中に発生した気泡は、石英板41の各貫通穴42内にトラップされる。このようにすれば、従来技術のように気泡が移動することがなく、導波管22の先端部近傍で気泡を長時間保持することができる。よって、導波管22の先端部近傍に気泡が安定的に存在するため、マイクロ波の照射によりその気泡中に放電プラズマを効率よく確実に発生させることができる。また、液中プラズマ処理装置11では、超音波照射手段を用いなくても放電プラズマを発生させることができるため、超音波照射手段を用いた装置と比較して、装置コストや消費電力を低減することができる。
【0034】
(2)本実施の形態の液中プラズマ処理装置11では、気泡捕捉手段として石英板41を用いた。この石英板41は絶縁性が高く誘電損が低いため、マイクロ波の損失を抑えることができ、石英板41の内部で絶縁破壊が起こることはなくマイクロ波がエネルギーロスなく伝搬される。そして、石英板41の貫通穴42内においてマイクロ波のエネルギーが集中することにより、その貫通穴42には比較的に強い電界が印加されることとなる。この結果、貫通穴42に捕捉されている気泡中に放電プラズマを効率よく発生させることができる。また、石英板41には、導波管22の開口部34を部分的に露出させるよう開口部34に沿って複数の貫通穴42が形成されているので、各貫通穴42内の捕捉空間にマイクロ波が確実に照射され、各貫通穴42内で捕捉した気泡中で放電プラズマを発生させることができる。このようにすれば、低電力で確実に放電プラズマを発生させることができ、処理効率を高めることができる。
【0035】
(3)本実施の形態の液中プラズマ処理装置11では、減圧装置13により、容器12内が減圧されるので、常圧時ほど強いマイクロ波でなくも放電プラズマを効率よく発生させることができる。
【0036】
(4)本実施の形態の液中プラズマ処理装置11では、導波管22の先端部が容器12の側壁に固定されており、その導波管22から処理水W中にマイクロ波が照射されることで、その処理水W中に気泡が発生する。また、導波管22の先端面22aには、複数の貫通穴42を有する石英板41が縦置きで密接配置されている。このように構成すれば、処理水W中に発生した気泡を石英板41の各貫通穴42で確実にトラップすることができ、放電プラズマを安定的に発生させることができる。
[第2の実施の形態]
【0037】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図5には、本実施の形態のプラズマ処理システム51を示している。プラズマ処理システム51は、気中プラズマ処理装置52と、プラズマ排気処理装置53と、液中プラズマ処理装置11とを備え、処理水W中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)をプラズマで分解して除去するシステムである。
【0038】
気中プラズマ処理装置52は、液体を導入可能な大容量の容器55と、容器55内を減圧するための減圧ポンプ56と、マイクロ波を照射するためのマイクロ波発生装置57とを備える。減圧ポンプ56は、容器55内の気体を吸い出してその容器55内を減圧する真空ポンプであって、容器55内から吸い出した気体をプラズマ排気処理装置53に排気するとともに、バラスト水を液中プラズマ処理装置11に排水する。
【0039】
マイクロ波発生装置57は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器58(マグネトロン)と、そのマイクロ波を伝搬させる導波管59とを備えている。導波管59は、容器55の上部にてその長手方向に沿って設けられており、その導波管59の下面において、開口部60(スロット)が所定の間隔をおいて複数形成されている。容器55内において、導波管59は液面よりも上方の位置(気相中の位置)に設けられており、導波管59の各開口部60から気相中にマイクロ波が照射される。これにより、各開口部60に対応する複数個所で放電プラズマを発生させることができる。従って、容器55内を減圧することにより処理水W中から気化したVOCをその放電プラズマにより分解して無害化することができる。
【0040】
プラズマ排気処理装置53は、プラズマを発生させるプラズマ発生装置(図示略)を備え、減圧ポンプ56から排気された排気体中でプラズマを発生させることにより、その排気体中に残存するVOCを分解して無害化する。液中プラズマ処理装置11は、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、バラスト水中に含まれるVOCをプラズマにより分解して無害化する。
【0041】
このようにプラズマ処理システム51を構成すれば、処理水W中に含まれるVOCを効率よく分解することができる。また、このプラズマ処理システム51では、容器55内に導入された大量の処理水Wを迅速に処理することができるので、実用上好ましいものとなる。
【0042】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・上記第1の実施の形態において、3mm程度の薄い石英板41を用いたが、図6に示すような厚い石英板61を用いてもよい。この石英板61においても、導波管22の開口部34を部分的に露出させるようその開口部34に沿って複数の貫通穴62が形成されている。このように石英板61を厚くした場合、各貫通穴62内で放電プラズマを発生させることができ、その放電プラズマにより処理水W中の有害物質を分解して無害化することができる。
【0044】
・上記第1の実施の形態では、マイクロ波発生装置14の導波管22を容器12の側面に設けるものであったが、これに限定されるものではない。すなわち、マイクロ波発生装置14(導波管22)は、容器12内における処理水W中にマイクロ波を照射可能な位置であれば、容器12の任意の位置に設けることができる。具体的には、例えば、図7や図8に示される液中プラズマ処理装置65,66のように、導波管22を容器67,68の底面に設けてもよい。
【0045】
図7の液中プラズマ処理装置65では、容器67の底部において、導波管22が容器67内に突出するよう設けられている。そして、導波管22の先端面に対向する位置に石英板71(気泡保持手段)が所定の間隔をあけて配置されている。この石英板71の下面において、導波管22の開口部34の真上となる位置に、複数の凹部72(捕捉空間)が形成されている。この場合、導波管22の開口部34から照射されるマイクロ波によって処理水W中に気泡が発生し、その気泡が石英板71の各凹部72でトラップされる。そして、マイクロ波のエネルギーによって、その気泡中で絶縁破壊が起こり、放電プラズマが誘起される。
【0046】
また、図8の液中プラズマ処理装置66でも、容器68の底部に導波管22が設けられている。そして、容器68の上蓋74(気泡保持手段)が導波管22の先端面に接近するよう設けられており、その上蓋74の下面において、導波管22の開口部34の真上となる位置に、複数の凹部75(捕捉空間)が形成されている。この場合でも、導波管22の開口部34から照射されるマイクロ波によって処理水W中に気泡が発生し、その気泡が上蓋74の各凹部75でトラップされる。そして、マイクロ波のエネルギーによって、その気泡中で絶縁破壊が起こり、放電プラズマが誘起される。
【0047】
・上記各実施の形態では、導波管22の外部に気泡保持手段(石英板41,71や上蓋74)を設けるように構成したが、例えば、導波管22の内部に配置されるマイクロ波透過体32を気泡保持手段として機能させてもよい。具体的には、図9に示されるように、マイクロ波透過体32の先端面の中央部分に、気泡を捕捉するための穴部77を複数形成する。この場合、マイクロ波透過体32における穴部77の中で絶縁破壊が起きプラズマが発生する。また、マイクロ波透過体32に形成する穴部77は、中央部分以外であってもよく、図10に示されるように、より多くの穴部77を形成してもよい。
【0048】
・上記各実施の形態の液中プラズマ処理装置11,65,66は、処理水Wに含まれる有害物質を分解する処理装置として利用するものであったが、これ以外に、例えばカーボンナノチューブなどを製造するための化学反応の誘起・促進をさせる反応装置としても利用することができる。勿論、液中プラズマ処理装置11,65,66は、水耕栽培用の水などの液体を細菌する殺菌装置として利用してもよい。
【0049】
・上記第1の実施の形態の液中プラズマ処理装置11,65,66では、マイクロ波発生装置14が照射するマイクロ波は2.45GHzであったが、この周波数は適宜変更してもよい。放電プラズマを発生させるためのマイクロ波としては、例えば、300MHz〜12GHz程度に設定してもよい。
【0050】
・上記第1の実施の形態において、減圧装置13は、駆動源としてロータリーポンプ36を用いるものであったが、これに限定されるものではなく、拡散ポンプなどの他の真空ポンプを用いることができる。なお、液中プラズマ処理装置11において、放電プラズマを発生させるために減圧装置13は必須の構成ではなく省略してもよい。この減圧装置13を省略した場合、装置コストを低減することができる。
【0051】
・上記実施の形態の液中プラズマ処理装置11において、容器12内の処理水W中に超音波を照射してキャビテーションを発生させる超音波照射手段を設けてもよい。このようにすれば、処理水W中において、気泡が確実に発生されるので、放電プラズマを効率よく発生させることができる。さらに、液中プラズマ処理装置11において、容器12内の処理水W中に酸素ガス、オゾンガスまたは過酸化水素ガスをバブリングするバブリング手段を設けてもよい。このようにしても、処理水W中において、気泡が確実に発生されるので、放電プラズマを効率よく発生させることができる。
【0052】
・上記実施の形態において、マイクロ波を伝搬する導波管22はストレート形状であるが、先端部をホーン状に形成した導波管に変更してもよい。この場合、マイクロ波の出力強度を増すことができ、放電プラズマを確実に発生させることができる。
【0053】
・上記実施の形態では、気泡捕捉手段として石英板41を用いたが、その形成材料としては、石英以外にガラス、セラミックスなどの誘電体材料からなるマイクロ波透過部材を用いてもよい。このようにすれば、マイクロ波を伝搬させる際にエネルギーロスを少なくすることができ、放電プラズマを確実に発生させることができる。また、石英板41に設けられている各貫通穴42は、円形であるが、三角形、四角形などの形状に変更してもよし、そのサイズを適宜変更してもよい。
【0054】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0055】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記容器内の気体を排出して前記容器内を減圧状態にする減圧手段を備えることを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【0056】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記容器内の液体中に超音波を照射してキャビテーションを発生させる超音波照射手段を備えることを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【0057】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記容器内の液体中に酸素ガス、オゾンガスまたは過酸化水素ガスをバブリングするバブリング手段を備えることを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【0058】
(4)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記導波管の先端部は、前記マイクロ波の出力強度を増すようホーン状に形成されていることを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【0059】
(5)請求項4において、前記導波管は、その先端部が前記容器内部に突出した状態で前記容器の側壁に固定され、前記石英板が前記導波管の先端面に密着するよう縦置きで固定されていることを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の液中プラズマ処理装置を示す概略構成図。
【図2】導波管の先端面を示す平面図。
【図3】導波管の先端面に密接配置された石英板を示す平面図。
【図4】放電プラズマによる分解効率を示すグラフ。
【図5】本発明を具体化した第2の実施の形態のプラズマ処理システムを示す概略構成図。
【図6】別の実施の形態の石英板を示す断面図。
【図7】別の実施の形態の液中プラズマ処理装置を示す概略構成図。
【図8】別の実施の形態の液中プラズマ処理装置を示す概略構成図。
【図9】(a)は別の実施の形態のマイクロ波透過部材の断面図、(b)はそのマイクロ波透過部材の平面図。
【図10】別の実施の形態のマイクロ波透過部材の平面図。
【図11】従来の液中プラズマ処理装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0061】
11,65,66…液中プラズマ処理装置
12,67,68…容器
14…プラズマ発生手段としてのマイクロ波発生装置
21…マイクロ波発生器
22…導波管
22a…先端面
32…マイクロ波透過部材
34…スロットとしての開口部
41,61,71…気泡捕捉手段としての石英板
42,62…捕捉空間としての貫通穴
72,75…捕捉空間としての凹部
74…気泡捕捉手段としての上蓋
77…捕捉空間としての穴部
W…液体としての処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物質を含む液体を導入可能な容器と、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生器と、前記マイクロ波を伝搬させる導波管とを有し、前記導波管の先端部から前記液体中にマイクロ波を照射して放電プラズマを誘起させるプラズマ発生手段と、
前記導波管の先端部近傍に配置され、前記マイクロ波の照射によって前記液体中に発生した気泡を捕捉するための捕捉空間を有する気泡捕捉手段と
を備えたことを特徴とする液中プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記導波管の先端面には前記マイクロ波を出力するためのスロットが形成され、
前記気泡捕捉手段は、誘電体材料からなり、前記導波管の外部においてその導波管の先端面に密接配置されたマイクロ波透過部材であり、前記捕捉空間は、そのマイクロ波透過部材において前記スロットに対応する位置に形成された凹部または穴部であることを特徴とする請求項1に記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記気泡捕捉手段は、前記導波管の先端面に密接配置された石英板であることを特徴とする請求項2に記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記捕捉空間は、前記石英板において前記スロットを部分的に露出させるようスロットに沿って設けられた複数の貫通穴であることを特徴とする請求項3に記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記気泡捕捉手段は、誘電体材料からなり、前記導波管内においてその先端部に設けられたマイクロ波透過体であり、前記捕捉空間は、そのマイクロ波透過体の先端面にて開口形成された穴部であることを特徴とする請求項1に記載の液中プラズマ処理装置。
【請求項6】
マイクロ波発生器で発生させたマイクロ波を導波管で伝搬させ、容器内に導入された液体中に前記導波管の先端部から前記マイクロ波を照射して放電プラズマを発生させることにより、前記液体中に含まれる被処理物質をその放電プラズマで処理する液中放電プラズマ処理方法であって、
前記導波管の先端部近傍において気泡を捕捉するための捕捉空間を有する気泡捕捉手段を配置し、前記マイクロ波の照射によって前記液体中に発生した気泡を前記捕捉空間に捕捉して、その捕捉した気泡中に放電プラズマを発生させるようにしたことを特徴とする液中プラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−72716(P2009−72716A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245074(P2007−245074)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】