説明

液体のための定量供給装置

圧力下でその装置に供給される予め決められた量の液体を反復的に定量供給するための装置であって、この装置によって定量供給される液体の量がタイマによって決定され、および、前記タイマは、シリンダ内を動くピストンを備え、および、出口弁に対する流れが開いている開位置から出口弁に対する流れが閉じられている閉位置へのピストンの移動の速度が制動機構によって制御される装置において、この制動機構は、オリフィスを通過してピストンによってポンプ送りされる液体であることを特徴とする装置が特許請求されている。この装置によって定量供給される体積が、上記オリフィスのサイズを変化させることによって便利に調節されることが可能である。好ましい実施形態では、本発明は、農業用化学薬品のスポット散布のために、予め決められた体積の液体(好ましくは農業用化学薬品の溶液)を定量供給するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半発明は、圧力下でその定量供給装置に供給される予め決められた量の液体を反復的に定量供給するのに適している定量供給装置に関し、この装置によって定量供給される液体の量はタイマによって決定される。
【背景技術】
【0002】
予め決められた量の農業用化学薬品溶液のような液体を植物に対して反復的に散布するための方法の1つが、その溶液を測定するために目盛り付きのビーカまたは類似の種類の容器を使用することである。この方法は、液体の正確な測定を可能にし、および、必要に応じて、例えば植物の根元に対して、その液体が局所的に散布されることを可能にする。この方法の利点が、その機器が非常に安価であるということと、必要に応じて体積が容易に変更されることが可能であるということである。この方法の欠点は、この方法が非常に時間浪費的であるということと、農業用化学薬品の場合に一般的である重たい缶からビーカの中に液体を注入する作業が、背中、下部腰椎領域、頸部、および、手首の損傷の原因となる可能性があるということである。さらに、注入作業が跳ね飛びを結果的に生じさせる可能性があるので、農業用化学薬品に接触する危険性が高い。
【0003】
予め決められた量の液体(典型的には農業用化学薬品溶液)を送出する定量供給装置が公知であり、例えば特許文献1と特許文献2とに説明されている。これらの特許は、狭い範囲内の予め決められた体積の範囲内で、典型的には約1mlから約20mlの範囲内で、圧力下でこの装置に供給される液体を送出する定量供給装置を開示している。使用されている原理は、筒の中のプランジャで構成されている単純な注射器の働きと本質的に同一である液体の容積式移送の原理である。注射器内では、プランジャは、筒の中に液体を充填するために引っ張り戻される.その次に、プランジャを駆動することによって、液体が筒の外に押し出される。特許文献1と特許文献2とに説明されている定量供給装置では、液体の圧力がプランジャを押し戻して、その装置内に配置されている筒にそのプランジャを押し詰める。この作用が同時にばねを圧縮する。その装置のトリガが起動されると、圧縮されたばねがプランジャを押して、液体を筒の外に押し出す。これらの装置は液体の正確な測定を可能にし、および、必要に応じて、例えば植物の根元に、液体が局所的に散布されることを可能にする。さらに、この装置は、液体が定量供給されるまで、クローズドシステムとしてその装置が動作するので、農業用化学薬品に対する接触を減少させる。これらの装置の欠点は、これらの装置が小さな体積の液体だけを定量供給するということに限定されているということである。これは、容積式移送の作用を受けて定量供給されることが可能な体積が、その装置に供給される液体の圧力に制限されているばねのサイズに制限されているからである。従来の背負い形噴霧器で使用されるポンプは、約20mlよりも大きい体積を定量供給するために必要とされる圧力を発生させることが不可能である。より強力なポンプが市販されているが、重量がより重く、したがって、液体のためのこのような定量供給装置の操作者にとって手作業での取扱上の問題を生じさせるだろう。この操作者は、農業用液体を田畑に散布する最中に自分の背中に重たいポンプを担ぐことが必要とされる場合に、この操作者の背中に対する損傷を被る可能性が高く、および、疲労に苦しむ可能性が高いだろう。
【0004】
予め決められた量の液体を反復的に定量供給するための内蔵型の制動ユニット(self−contained damping unit)内のパラフィンのような粘性液体を使用する自動閉鎖式機構(self−closing mechanism)が公知であり、例えば特許文献3に説明されている。この文献では、「常時閉」2/2弁が、定量供給されるべき液体の流れを遮断する。操作者がばねに逆らってトリガを起動する時に、その弁が開かれる。操作者がトリガを釈放すると、そのばねの作用が働いて、その弁をその閉位置に戻す。この動作が、その弁が閉じるために1つのチャンバから別のチャンバに粘性液体が移動することを必要とする内蔵型の制動ユニットによって減速される。このタイプの自動閉鎖式機構の中のタイマが、操作者がトリガを釈放するや否や作動し始める。延長した時間期間にわたって操作者がトリガを引いた状態に保つことを選択する場合には、定量供給されるべき液体が、開いた弁を通って流れ続ける。このような自動閉鎖式機構は農業用の噴霧装置で使用されることが可能であるが、幾つかの明確な欠点がある。第1に、内蔵型制動ユニット内で別の液体を使用することが、噴霧機器の重量を増加させる。そして、第2に、長時間にわたってトリガを引くことが、農業用液体の過剰な使用を結果的に生じさせる。
【0005】
予め決められた量の液体を反復的に定量供給するために、定量供給されるべき液体を相互連結式の制動機構の中で使用する特定の自動閉鎖式機構が、公知であり、および、例えば特許文献4および特許文献5に説明されている。この場合には、「常時閉」2/2弁が、定量供給されるべき液体の流れを遮断する。操作者がばねに逆らってトリガを起動すると、その弁が開かれて、内部チャンバ内の可動部品も移動させられ、定量供給されるべき液体によってその内部チャンバの1つの部分が満たされることを可能にする。操作者の行為の即座の結果であるその可動部品の移動は、タイマをリセットする。操作者がトリガを釈放すると、ばねの作用と、定量供給されるべき液体の圧力とが、弁をその閉位置に戻すように働く。この動きは、相互連結式の制動機構によって減速され、この制動機構では、その内部チャンバの1つの部分の中に閉じ込められている液体が、弁が閉じるために、内部チャンバの他の部分に流れ込む必要がある。このタイプの自動閉鎖式機構のタイマは、操作者がトリガを釈放した直後に作動し始める。延長した時間期間にわたって操作者がトリガを引いた状態に保つことを選択する場合には、定量供給されるべき液体が、開いた弁を通って流れ続ける。相互連結式の制動機構を有するこのような自動閉鎖式機構は、農業用の噴霧装置で使用されることが可能であるが、幾つかの明確な欠点がある。第1に、内部チャンバの別々の部分を連結する流路が、こうした機構を粒子による閉塞に対して脆弱にする。第2に、長時間にわたってトリガを引くことが、農業用液体の過剰な散布を結果的に生じさせる。相互連結式の制動機構を有するこうした自動閉鎖式機構は、「純粋な」水を定量供給することにより適しており、および、例えば自動閉鎖式の蛇口において一般的に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,650,099号明細書
【特許文献2】米国特許第4,821,927号明細書
【特許文献3】欧州特許第0,213,102号明細書
【特許文献4】米国特許第5,451,030号明細書
【特許文献5】独国特許第4,323,063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、上述した方法および装置に課せられている限界を克服する、圧力下でその装置に供給される予め決められた量の液体を反復的に定量供給することに適している定量供給装置を発明した。好ましい実施態様では、この装置は、農業用化学薬品のスポット散布のための予め決められた体積の液体を操作者が散布することを可能にする。この装置によって定量供給される液体の量がタイマによって決定される。この好ましい実施態様の液体用定量供給装置によって定量供給される体積は、便利に選択されることが可能であり、典型的は約10mlから約1000mlまでの体積である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、一実施態様では、本発明が、圧力下でその装置に供給される予め決められた量の液体を反復的に定量供給するための装置を提供し、この装置では、この装置によって定量供給される液体の量がタイマによって決定される。これは、計量供給される液体の量がその装置内に配置されている筒の体積によって決定される特許文献1および特許文献2に説明されている装置とは対照的であることが可能である。好ましい実施態様では、タイマが、予め決められた長さの時間にわたって、出口弁に対する流れを「開いた」状態に維持し、したがって、その装置によって定量供給されるべき液体の量を決定する。
【0009】
別の実施態様では、タイマは、シリンダ内を動くピストンを備え、および、出口弁に対する流れが「開いている」「開位置」から、出口弁に対する流れが「閉じられている」「閉位置」へのこのピストンの移動の速度が制動機構によって制御される。本発明は、タイマとして作用するように、液体用定量供給装置内に配置されているピストン/シリンダアセンブリを使用する。これは、自動閉鎖式機構が内蔵型制動ユニット内で分離している特許文献3に説明されている装置とは対照的であることが可能である。適切な時間が、ピストンが一方の末端位置(開位置)から他方の末端状態(閉位置)に移動するために要する時間である。好ましい実施態様では、制動機構は、オリフィスを通過してピストンによってポンプ送りされる液体である。この制動機構で使用される液体がその装置によって定量供給される液体であることが便利である。これは、内蔵型制動ユニットを調節するために、定量供給されるべき液体とは異なる液体を自動閉鎖式機構が使用する、特許文献3で説明されている装置とは対照的であることが可能である。ピストンがそれに対して液体をポンプ送りするオリフィスの存在が、一方の末端位置(開位置)から他方の末端位置(閉位置)へのピストンの移動が妨害されるという結果をもたらす。液体は、オリフィスを通過してポンプ送りされた直後に、そのオリフィスから遠ざかるように移動することを可能にするように、好ましくは、その結果としてオリフィスを通過する流れに最小の背圧を生じさせるように、方向付けられる。好ましい実施態様では、オリフィスを通過してポンプ送りされ終わった後のその液体の流れは、噴霧散布で使用されることを可能にするように方向付けられ、および、好ましくは、計量供給のために計量された主体積の噴霧液体と合流させられるように方向付けられる。これは、内部チャンバの1つの部分内に閉じ込められている液体が内部チャンバの別の部分に流れ込む必要がある特許文献4および特許文献5で説明されている装置とは対照的であることが可能である。
【0010】
別の実施態様では、制動機構は、制動効果を変化させるために調節可能である。液体がシリンダから移動させられる時の一方の末端位置(開位置)から他方の末端位置(閉位置)へのピストンの移動に対する抵抗の量が、シリンダから移動させられる液体の流れを制限することによって調節されることが可能である。これは、様々な手段によって、例えば、シリンダからの流体の流れが制限されるようにシリンダの末端に可変オリフィス(絞り弁)を導入することによって、実現されることが可能である。好ましい実施態様では、このオリフィスのサイズは、制動効果を変化させるように調節可能である。
【0011】
別の実施態様では、ピストンは偏倚手段によって閉位置に偏倚させられている。これは、様々な手段によって、例えば、ピストン/シリンダアセンブリの中にばねを導入することによって、実現されることが可能である。好ましい実施態様では、この偏倚手段はばねである。
【0012】
別の実施態様では、ピストンを開位置に移動させるために、液体圧力によってピストンが偏倚手段に逆らって動かされることが可能である。これがタイマがリセットされることを可能にする。タイマをリセットするために使用される液体が、定量供給装置によって定量供給される液体と同じ液体であることが好ましい。タイマをリセットするために使用される液体が、定量供給装置によって定量供給される液体と同じ圧力下にあることがさらに好ましい。これは、操作によってタイマがリセットされる特許文献3と特許文献4と特許文献5とに説明されている装置とは対照的であることが可能である。好ましい実施態様では、ピストンは、圧力がその装置に供給される液体の圧力である、開位置にピストンを移動させるように、液体圧力によってピストンが偏倚手段に逆らって動かされる。
【0013】
別の実施態様では、トリガ弁は入口流路内に配置されている。好ましい実施態様では、トリガ弁は「常時開」3/2弁である。
【0014】
別の実施態様では、出口弁は出口流路内に配置されている。好ましい実施態様では、出口弁は「常時閉」2/2弁である。
【0015】
別の実施態様では、トリガ弁と出口弁は同時に切り換えられる。好ましい実施態様では、トリガ弁と出口弁は同時に切り換えられ、および、互いに反対の設定をとる。さらに好ましい実施態様では、トリガが引かれていない時には、トリガ弁が「開」に設定され、すなわち、液体が入口流路を通って入口オリフィスからシリンダに流れることが可能であるが、出口オリフィスに流れることが不可能であり、かつ、出口弁が「閉」に設定され、すなわち、液体が出口流路を通って入口オリフィスから出口オリフィスに流れることが不可能であり、および、これとは反対に、トリガが引かれている時には、トリガ弁が「閉」に設定され、すなわち、液体が入口流路を通ってシリンダから出口オリフィスに流れることが可能であるが、入口オリフィスからは流れることが不可能であり、かつ、出口弁が「開」に設定され、すなわち、液体が出口流路を通って入口オリフィスから出口オリフィスに流れることが可能である。
【0016】
別の実施態様では、操作者によってトリガが起動および釈放される。あるいは、他の手段によってトリガが起動および釈放されることが可能である。
【0017】
以下では、本発明が、後述の非限定的な実施形態によって説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、その初期状態における液体のための定量供給装置の軸方向断面図である。これは、この装置が液体供給源から分離されている場合にこの装置がとる状態である。
【図2】図2は、放出前における液体のための定量供給装置の軸方向断面図である。これは、この装置が液体供給源に連結されている場合にこの装置がとる状態である。
【図3】図3は、放出中における液体のための定量供給装置の軸方向断面図である。これは、トリガがすでに起動されている場合にこの装置がとる状態である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ブロック1は、好ましくは金属で作られている、材料ブロックである。好ましい実施形態では、このブロック1は平らな円筒形である。ブロック1の長円方向側面と軸方向側面とに関して説明する。シリンダ2が、ブロック1内の中央に配置されている空洞である。入口オリフィス3が、ブロック1の長円方向側面の1つに向かって配置されている空洞である。出口オリフィス4が、ブロックの他方の長円方向側面に向かって、好ましくは入口オリフィス3とは反対側に、配置されている空洞である。入口オリフィス3と出口オリフィス4の直径が互いに同一であることが好ましい。入口オリフィス3と出口オリフィス4の直径がシリンダ2の直径よりも小さいことが好ましい。ピストンオリフィス5が、入口オリフィス3をシリンダ2と連結するように、入口オリフィス3を越えて有効に延びる、ブロック1内に配置されている空洞である。ピストンオリフィス5の直径が入口オリフィス3の直径よりも小さいことが好ましい。シリンダ2と出口オリフィス4は互いに連結されていない。
【0020】
入口流路6は、図に示されているように、迂回シリンダ2によって入口オリフィス3と出口オリフィス4とを連結する空洞である。入口流路6がU字形流路であることが好ましい。出口流路7は、迂回シリンダ2によってピストンオリフィス5と出口オリフィス4とを連結する別の空洞であり、図に示されているように、入口流路6に本質的に類似している。出口流路7がU字形流路であることが好ましい。入口流路6と出口流路7との直径が互いに同一であることが好ましい。
【0021】
シリンダ2、入口オリフィス3、出口オリフィス4、ピストンオリフィス5、入口流路6、および、出口流路7は、互いに連結されており、および、追加の機構部品なしに液体が1つの空間から他の空間に移動することが可能である。
【0022】
ピストン8は、互いに恒久的に取り付けられている4つの要素、すなわち、ピストンヘッド8a、ピストンシャフト8b、ピストンスペーサ8c、および、ピストンシール8dを備える。これらは、好ましくは金属で作られている材料ブロックである。ピストンヘッド8aがシリンダ2内を移動すると同時にシールを形成することを可能にするように、ピストンヘッド8aの直径はシリンダ2の直径よりもわずかに小さい。ピストンシャフト8bとピストンシャフト8bとの直径が、これらの部品がピストンオリフィス5内を移動すると同時に必要に応じてシールを形成するように、ピストンオリフィス5の直径よりもわずかに小さい。ピストンスペーサ8cの直径は、ピストンシャフト8bとピストンシール8dの直径よりも小さい。
【0023】
ばね9が、金属で作られていることが好ましい螺旋形要素である。ばね9の直径が、ばね9がシリンダ2内に確実に嵌り込むようにシリンダ2の直径よりもわずかに小さい。
【0024】
シリンダ2、入口オリフィス3、出口オリフィス4、ピストンオリフィス5、ピストン8、および、ばね9の同中心配置が、液体のための定量供給装置の効率的な動作のために好ましい。
【0025】
トリガ弁10が、図1に示されているように、入口流路6内に配置されている「常時開」3/2弁である。入口オリフィス3をトリガ弁10に連結する入口流路6の部分が、前部入口流路6aと呼ばれている。「トリガ弁10を出口オリフィス4と連結する入口流路6の部分が、後部入口流路6bと呼ばれている。「常時開」3/2弁の「開位置」では、この弁の2つの出入口が互いに連結されており、かつ、他の出入口が遮断されている。この場合に、前部入口流路6aはシリンダ2に連結されており、および、後部入口流路6bに対する連結は遮断されている。3/2弁が起動される時には、この連結が変化し、この弁が「閉」状態であると表現される。この場合には、シリンダ2は後部入口流路6bに連結され、および、前部入口流路6aに対する連結が遮断される。
【0026】
出口弁11は、図1に示されているように、出口流路7内に配置されている「常時閉」2/2弁である。入口オリフィス3を出口弁11に連結する出口流路7の部分が、前部出口流路7aと呼ばれている。出口弁11を出口オリフィス4と連結する出口流路7の部分が、後部出口流路7bと呼ばれている。「常時閉」2/2弁の出入口1と出入口2は、この弁の初期状態では、その弁が起動されるまでは互いに連結されていない。この場合には、前部出口流路7aは後部出口流路7bに連結されていない。この弁が起動されると、前部出口流路7aと後部出口流路7bとが連結される。トリガ弁10と出口弁11は同時に切り換えられる。トリガが引かれていない限り、トリガ弁10は開いておりかつ出口弁11は閉じている。これとは逆に、トリガが引かれている時には、トリガ弁10は閉じられておりかつ出口弁11は開かれている。
【0027】
絞り弁12は、後部入口流路6bが出口オリフィス4と連結する箇所に配置されている。絞り弁12は、後部入口流路6bの端部のねじから成る。このねじが「緩んでいる」時には、絞り弁12を通過する液体の流れは実質的に妨害されない。これとは逆に、このねじが締められている時には、絞り弁12を通過する液体の流れは制限される。
【0028】
その初期状態(すなわち、トリガが引かれていない)における、液体のための定量供給装置の可動部品、すなわち、ピストン8、ばね9、絞り弁10、および、出口弁11の相対的な配置が、図1に示されている。この状態では、出口弁11に対するあらゆる液体の流れがピストンシール8dによって遮断され、および、絞り弁10の設定があらゆる液体の流れをシリンダ2の中に方向付ける。
【0029】
この機構が加圧液体の供給源に取り付けられる場合には、圧力が液体を入口オリフィス3から入口流路6を経由してシリンダ2の中に送り込む。そうすることによって、その液体がピストンヘッド8aをピストンオリフィス5に向けて押し、こうしてばね9を圧縮する。ばね9の力を克服するために約0.5バールの最小圧力を液体が有することが必要である。ピストンヘッド8aが、図2に示されているように、ピストンオリフィス5に近接したその最終位置に移動し終わった時には、ピストンシール8dが前部出口流路7aを遮断しないので、出口弁11に対する流れが自由である。この時にシリンダ2内に位置している液体の体積が、固定液体体積(fixed volume of liquid)と呼ばれる。
【0030】
液体を定量供給するために、操作者がトリガを引くと、図3に示されているように、このことがトリガ弁10を「閉」に切り換えると同時に、出口弁11を「開」に切り換える。この状態では、液体は入口オリフィス3から出口流路7を通って出口オリフィス4に自由に流れることが可能である。出口流路7を通る液体のこの流れは、放出流と呼ばれる。これと同時に、ばね9の作用によって、および、ピストンシール8dに対する液体の圧力によって、ピストン8がその初期位置に押し戻される。この結果として、固定液体体積がシリンダ2から後部入口流路6bと絞り弁12とを経由して出口オリフィス4に流れる。固定液体体積が放出される速度は、絞り弁12の設定と、液体の圧力とに依存している。これら2つの要因が、固定液体体積がシリンダ2から放出されるのに要する時間を決定する。絞り弁12を通過する液体の圧力は、固定液体体積は、シリンダ2から放出されるのに要する時間を決定することにおける要因とならないように、可能な限り小さくなければならない。
【0031】
したがって、予め決められた体積が、放出流の形で定量供給される液体の体積と固定液体体積との合計である。放出流の形で定量供給される液体の体積は、固定液体体積がシリンダ2から放出されるのに要する時間によって決定される。この時間が絞り弁12を調節することによって便利に調節されることが可能である。例えば、絞り弁12が完全に開かれている場合には、固定液体体積は迅速に定量供給されるだろうし、および、したがって、小さい体積の液体が放出流の形で定量供給されるだろう。この状況では、本発明の装置によって放出されるほぼすべての液体が、固定液体体積そのものであるだろう。これとは対照的に、絞り弁12が隙間なく閉じられている場合には、固定液体体積は徐々に定量供給されるだろうし、および、したがって、大きな体積の液体が放出流の形で定量供給されるだろう。この状況では、本発明の装置によって放出されるほぼすべての液体は放出流に由来するだろう。この2つの極端な状態の間のあらゆる状態が、絞り弁12のこれらの極端な設定において実現される体積の中間の体積を放出する働きをするだろう。液体の圧力が約1バールから約5バールである場合には、この液体の様々な圧力が、実質的に同一である量の液体が絞り弁12の同一の設定において放出されることを結果的に生じさせるだろう。
【0032】
絞り弁12の設定と液体の圧力とによって決定される予め決められた体積の液体が放出され終わると、操作者はトリガを釈放し、このことがトリガ弁10を「開」に切り換えかつ出口弁11を「閉」に切り換える。このことが、サイクルがそのサイクル自体を反復することを可能にし、および、したがって、同一量の液体が反復的に放出されることを可能にする。好ましい実施形態では、予め決められた体積の液体が放出され終わった後には、操作者がトリガを釈放するまで、トリガ弁10は「閉」のままでありかつ出口弁11は「開」のままである。
【0033】
固定液体体積が放出され終わる前にトリガが釈放される場合には、この釈放がトリガ弁10を「開」に切り換えかつ出口弁11を「閉」に切り換えるので、液体の流れが中断される。このサイクルは、液体でシリンダを満たす段階で再開する。操作者は、予め決められた体積の液体の正確な送出を望むならば、トリガが時期尚早に釈放されることがないことを確実なものにしなければならない。
【0034】
本発明の機構は、図に示されている要素の比率によって描かれた機構を含むだけでなく、他の液体に適合化されるように要素の比率が異なった形で選択されている機構にも及ぶ。
【0035】
さらに、本発明の機構は、図に示されている機構をその範囲内に含むだけでなく、加圧供給源から定量供給される体積を調節するためにタイマを使用するという着想が使用される機構にも及ぶ。特に、本発明は、タイマとして機能するためのピストン/シリンダ機構の使用、制動機構としての液体の使用(好ましくは、制動機構としての、定量供給されるべき液体の使用)、および、タイマをリセットするための液体の使用(好ましくは、タイマをリセットするための、定量供給されるべき液体の使用)という要素の1つまたは複数を使用する機構を含む。
【0036】
様々な構成要素のサイズと、様々な流路およびオリフィスの直径とが、定量供給されるべき液体の種類(例えば、重要な考慮事項を形成する液体の粘度)、液体が散布される際の圧力、計量のために必要とされる液体の量、および、この装置が定量供給装置の中に組み込まれる方法のような他の要素を反映するように適切に選択される。この機構は、低粘度を有しかつ実質的に粒子を含まないあらゆる液体に適している。例えば、この機構は、燃料のバッチに燃料添加剤を供給するために、動物にワクチン接種液体を供給するために、および、包装の前に容器内に飲料または流体栄養剤を送出するために使用可能である。
【0037】
ブロック1は、さらに、入口オリフィス3および/または出口オリフィス4に取り付けられている恒久的な固定具のような追加の要素を含むだろう。こうした1つまたは複数の固定具が入口オリフィス3および/または出口オリフィス4を実質的に延長して、液体のための定量供給装置が他の機器に連結されることを可能にする。恒久的な固定具の例がねじ固定具である。これは、必要に応じて他の機器が連結および分離されることを可能にする。本発明の液体用定量供給装置に連結する形で使用される機器は、ブロック1に連結されるために、この例ではナット固定具である相補的な固定具を必要とする。例えば、加圧供給源からの液体が、こうしたナット固定具が取り付けられているポンプから始まるホースを出口オリフィス3におけるねじ固定具に対して連結することによって、入口オリフィス3に連結されることが可能である。
【0038】
一実施形態では、本発明の装置は、農業用液体のための定量供給装置として使用される。ブロック1のサイズは、操作者によって便利に保持されることが可能であるように選択される。定量供給される液体の体積が約10mlから約1000mlであることが好ましい。液体が供給されなければならない圧力の範囲が約1バールから約5バールであることが好ましい。流路とオリフィスの直径は、農業用液体として一般的に使用される液体を定量供給するために適しているように選択される。例えば、こうした農業用液体は、1つまたは複数の除草剤、1つまたは複数の殺菌剤、1つまたは複数の殺虫剤、および/または、1つまたは複数の肥料を含む農業用液体のような、1つまたは複数の作物保護剤を含む農業用液体であることが可能である。操作者にとっての利点は、この農業用液体が「スポット散布」として散布されることが可能であるということである。このことは、従来の噴霧方法を使用する時の場合のように作物全体(特に葉)に対して農業用液体を散布することではなく、この場合には、必要に応じて、操作者が農業用液体を植物の根元に散布することが可能であるということを意味する。
【0039】
農業用化学薬品のスポット散布、例えば、各々の植物の根元に対する農業用液体の散布は、無駄になる農業用液体の量を制限することが可能なので有益である。例えば、植物の根によって最も適切に吸収される農業用化学薬品を噴霧する時には、吸収が限定されている葉の上に落下するあらゆる農業用化学薬品が無駄になるだろう。したがって、農業用化学薬品のスポット散布は、化学薬品を散布する環境適合的な方法である。スポット散布に特に適している農業用化学薬品の一例が、殺虫剤のチアメトキサム(ActaraTM)である。チアメトキサム(ActaraTM)は、例えばコーヒー作物の根元に対して散布される時に非常に有益な効果を有することが明らかになっている。
【0040】
従来においては、スポット散布は労働集約的な形で実現されており、例えば、操作者は、液体を計量ジャグの中に計り分けすることと、その次に植物の根元にその計量された液体を注ぐこととが必要とされてきただろう。さらに、例えば特許文献1および特許文献2とに説明されているような、予め決められた体積を送出することが可能である液体用の定量供給装置が存在する。しかし、これらの定量供給装置は、約1mlから約20mlの狭い範囲内の予め決められた体積の範囲の液体を送出することが可能であるにすぎない。これとは対照的に、上記で強調したように、本発明の装置は、約1000mlまでの体積を反復的に定量供給することが可能である。
【0041】
液体のためのこの定量供給装置は、背負い形噴霧器との組合せで使用されることが可能である。背負い形噴霧器は農業で一般的に使用されている。背負い形噴霧器は、典型的には操作者によって容易に搬送可能である約30リットルまでの体積の農業用液体で操作者がそのタンク内を満たすタンクと、液体に加圧する手段とを備える。背負い形噴霧器の安価な製品は、典型的には、操作者によって発生させられる圧力に依存している。操作者は、典型的には約1バールから約3バールの連続圧力を発生させることが可能である。
【0042】
あるいは、液体のためのこの定量供給装置は、タンクとの組合せで使用されることが可能である。このタンクは、約5000リットルまでの体積の農業用液体を運ぶために、農業で一般的に使用される。このタンクは、個別の操作者が自分の機器を取り付けるための、個別の操作者のための複数の取り付け箇所を有することが可能である。例えば6人の操作者が、自分たちの個別のスプレーヘッドまたはランス(lance)に液体を送り込むための加圧液体供給源として単一のタンクを使用するだろう。機械式ポンプが、典型的には約3バールから約5バールの圧力を農業用液体に及ぼすために、こうしたタンクとの組合せの形で典型的に使用される。
【0043】
一実施形態では、液体のためのこの定量供給装置は、さらに、入口オリフィス3の付近にまたはその箇所に配置されているフィルタを備える。このフィルタは恒久的にブロック1に連結されることが可能であり、または、ブロック1から着脱可能であってもよい。フィルタは、一般的に、スプレーヘッドおよびランスの詰まりを防止するために、農業用液体に関連して使用される。この例では、液体噴霧装置自体も、農業用液体を介して送り込まれるあらゆる粒子によって閉塞させられ易い。閉塞が生じた場合に操作者がそのフィルタを交換または掃除することを可能にするように、フィルタが容易に着脱可能であることが有利である。フィルタが着脱可能である場合には、上述したように、こうした連結が、ブロック1に取り付けられている恒久的なねじ固定具によって行われることが可能である。フィルタは、そのフィルタがブロック1に連結されるために、ナット固定具のような相補的な固定具を必要とするだろう。入口オリフィス3の付近にまたはその箇所にフィルタを固定する別の方法が、フィルタの容易な組立と分解とを補助するためにブロック1に取り付けられることが可能であるフィルタ留め具内にフィルタを収容することである。例えば、このフィルタ留め具は、ブロック1の寸法に適合する寸法を有する金属ブロックで作られることが可能であり、および、この場合も同様に、実質的に入口オリフィス3を延長することが可能である。この場合に、フィルタ留め具は、さらに、1つまたは複数のねじによってブロック1に取り付けられることが可能である。このフィルタ留め具は、ねじ固定具のような恒久的な固定具のような追加の要素も含むだろう。有利であることに、こうした固定具は実質的に入口オリフィス3をさらに延長し、液体のための定量供給装置が他の機器に連結されることを可能にする。
【0044】
別の実施形態では、液体のための定量供給装置は、出口オリフィス4の付近にまたはその箇所に配置されているランス(lance)をさらに備える。このランスはブロック1に恒久的に連結されることが可能であり、または、ブロック1から着脱可能である。このランスが着脱可能である場合には、こうした連結が、上述したように、ブロック1に取り付けられている恒久的なねじ固定具によって行われることが可能である。このランスは、このランスがブロック1に連結されるために、ナット固定具のような相補的な固定具を必要とするだろう。ランスは、操作者自身に対して安全な距離において農業用液体をその操作者が散布することを可能にするために、農業において一般的に使用されている。ランスは、典型的には、約80cmから約120cmの長さである。液体の流出を防止するために、ランス自体がそのランスの先端(ブロック1に連結されている側の端部とは反対側の端部)に制御弁を有することが有利である。この追加の要素が、操作者の安全性のさらなる改善を確実なものにし、および、さらには、計量プロセスの精度を増大させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下でその装置に供給される予め決められた量の液体を反復的に定量供給するための装置であって、この装置によって定量供給される液体の量がタイマによって決定され、および、前記タイマは、シリンダ内を動くピストンを備え、および、出口弁に対する流れが開いている開位置から、前記出口弁に対する流れが閉じられている閉位置への前記ピストンの移動の速度が制動機構によって制御される装置において、前記制動機構は、オリフィスを通過して前記ピストンによってポンプ送りされる液体であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制動機構は、制動効果を変化させるように調節可能である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記オリフィスのサイズは、前記制動効果を変化させるように調節可能である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記オリフィスのサイズは絞り弁によって調節される請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ピストンは偏倚手段によって前記閉位置に偏倚させられている請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記偏倚手段はばねである請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ピストンは、前記ピストンを前記開位置に移動させるように液体圧力によって前記偏倚手段に逆らって動かされることが可能である請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記圧力は、前記装置に供給される前記液体の圧力である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記液体は農業用液体である請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置はフィルタをさらに備える請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記フィルタは着脱可能である請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置はランスをさらに備える請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ランスは前記ランスの先端に制御弁を有する請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は手持ち型である請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の装置を備える背負い形噴霧器。
【請求項16】
農業用液体を噴霧するために請求項1から14のいずれか一項に記載の装置または請求項15に記載の背負い形噴霧器を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−506148(P2010−506148A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529618(P2009−529618)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008512
【国際公開番号】WO2008/040515
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】