液体への微小気泡注入システム
【課題】少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させる。
【解決手段】本システムは、液体1が貯溜された貯溜槽2と、導入ライン3を経由して導入した液体1に微小気泡5を注入し、微小気泡注入後の液体1を返送ライン6を経由して貯溜槽2に返送する微小気泡発生装置4と、微小気泡発生装置4に対して微小気泡発生のための気体(エア)を気体供給ライン13を経由して供給する気体供給手段としてのブロワ14と、を備えている。微小気泡発生装置4は、密閉容器8と、ブロワ14からのエアを導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材9と、円盤部材9を回転駆動するモータ手段11と、を有している。そして、円盤部材9の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔は所定長以上である。
【解決手段】本システムは、液体1が貯溜された貯溜槽2と、導入ライン3を経由して導入した液体1に微小気泡5を注入し、微小気泡注入後の液体1を返送ライン6を経由して貯溜槽2に返送する微小気泡発生装置4と、微小気泡発生装置4に対して微小気泡発生のための気体(エア)を気体供給ライン13を経由して供給する気体供給手段としてのブロワ14と、を備えている。微小気泡発生装置4は、密閉容器8と、ブロワ14からのエアを導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材9と、円盤部材9を回転駆動するモータ手段11と、を有している。そして、円盤部材9の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔は所定長以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルと呼ばれる微小気泡を発生させ、この発生させた微小気泡を液体に注入させるための液体への微小気泡注入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡径が100μm程度の水中に注入された微小気泡はマイクロバブルと呼ばれ、その化学的又は物理的特性に基づき、例えば、除菌効果や摩擦抵抗低減効果などの種々の効果を得ることができるため、各種産業分野での利用が期待されている。
【0003】
このような微小気泡を発生させる微小気泡発生装置としては種々のタイプのものが知られている。例えば、特許文献1に係る装置では、コンプレッサなどの気体供給手段から水が流れる管に多孔質体を通して気体を供給することで微小気泡を発生させるようにしている。
【0004】
また、特許文献2に係る装置では、円錐形状の回転容器本体に対し、底面付近の周面部に加圧液体導入口を設けると共に、底面側に気体導入孔を設け、更に回転容器本体の頂部には旋回気液導出孔を設けた構成としている。そして、旋回しながら上記導出孔に向かう液体と気体との間の旋回速度差を利用して気泡表面に大きなせん断力を作用させ、このせん断力で気泡を導出孔から引きちぎるようにして大量の微小気泡を発生させるようにしている。
【特許文献1】特開平8−225094号公報
【特許文献2】特開2003−205228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る装置の場合、多孔質体から気泡が離脱しにくいため、発生する気泡が多孔質体の孔径より大きくなり、充分に微小な気泡を得ることができないという欠点を有している。
【0006】
また、特許文献2に係る装置の場合、特許文献1の場合に比べて微小な気泡を得ることができるが、液体に旋回流を与える必要があるため圧力損失が大きくなると共に、液体中の気体の割合が特許文献1の場合に比べて低くなってしまうという欠点を有している。
【0007】
このように、一般的に従来の微小気泡発生装置では、気泡径と必要エネルギーとは所謂トレードオフの関係にある。つまり、充分に気泡径の小さな気泡を発生させようとすると大きなエネルギーを必要とせざるを得ず、一方、エネルギーを低減させようとすると気泡径の大きな気泡しか得ることができなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることが可能な液体への微小気泡注入システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、微小気泡注入対象となる液体が貯溜された貯溜槽と、前記貯溜槽から導入ラインを経由して導入した液体に微小気泡を注入し、微小気泡注入後の液体を返送ラインを経由して前記貯溜槽に返送する微小気泡発生装置と、前記微小気泡発生装置に対して微小気泡発生のための気体を気体供給ラインを経由して供給する気体供給手段と、を備え、前記微小気泡発生装置は、前記導入ライン及び前記返送ラインに接続された密閉容器と、前記密閉容器内部に配設され、前記気体供給手段からの気体を導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材と、前記密閉容器外部に配設され、前記円盤部材を回転駆動するモータ手段と、を有しており、しかも、前記円盤部材の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔が所定長以上である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記返送ラインに返送ポンプが配設されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導入ライン及び返送ラインと接続する前記密閉容器の導入口及び排出口は、その導入方向及び排出方向が、前記円盤部材を回転させる方向の旋回流を生じさせる方向となるように形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記密閉容器は、天井部側の径が底部側の径よりも大きな略ラッパ形の円筒形状をなしており、前記導入口が天井部付近の側面に形成され、前記排出口が底部付近の側面に形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記円盤部材に前記旋回流の抵抗を受ける回転翼部材を取り付けた、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記液体中に粗大気泡が発生し、この粗大気泡が密閉容器の天井部付近に滞溜している場合に、この粗大気泡を密閉容器内部から排出して前記気体供給ラインに返流する粗大気泡排出手段を備えた、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記密閉容器の天井部付近に粗大気泡滞溜室を設け、前記粗大気泡排出手段は、この粗大気泡滞溜室内に溜まった粗大気泡を排出するものである、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記密閉容器内の液体中に発生した大きな気泡又は粗大気泡を消失するための超音波発生手段を、前記密閉容器の外側に取り付けた、ことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記円盤部材の盤面上、又は前記密閉容器の天井部内側の少なくともいずれかに、気泡破砕部材を形成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体構成図である。微小気泡注入対象となる液体1が貯溜槽2に貯溜されている。貯溜槽2の底部付近には導入ライン3の一端側が接続されており、この導入ライン3の他端側は微小気泡発生装置4に接続されている。
【0020】
微小気泡発生装置4は発生させた微小気泡5を、貯溜槽2から導入ライン3を経由して送られてきた液体1に対して注入するものである。そして、微小気泡発生装置4は、液体1に微小気泡を注入した後、これを返送ライン6及び返送ポンプ7を介して貯溜槽2に返送するようになっている。
【0021】
微小気泡発生装置4は、天井部及びこの天井部付近の側面にそれぞれ導入ライン3及び返送ライン6が接続された密閉容器8と、この密閉容器8内部に配設され、空洞部が内部に形成されている円盤部材9と、密閉容器8外部に配設され、回転軸10を介して円盤部材9を回転駆動する駆動モータ11とを有している。
【0022】
そして、回転軸10の中間部にはロータリジョイント12が取り付けられており、このロータリジョイント12に気体供給ライン13を介して気体供給手段としてのブロワ14が接続されている。回転軸10は、ロータリジョイント12の下側部分は中実状になっているが、ロータリジョイント12の上側部分は中空状(パイプ状)となっている。したがって、ブロワ14から送られるエアは気体供給ライン13、ロータリジョイント12、及び回転軸10の中空部を通って、円盤部材9内部に形成された空洞部に供給されるようになっている。
【0023】
なお、本実施形態では、液体1が水である場合を想定しているが、本発明では水の他に、弱酸や強酸などの化学剤、あるいは油等も液体1に含まれるものとする。また、微小気泡発生のための気体として、本実施形態ではエアを想定しているが、本発明ではオゾンなども含まれるものとする。
【0024】
図2は、図1における円盤部材9及び密閉容器8の構造を示す説明図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【0025】
図2(a)に示すように、密閉容器8の天井部には導入ライン3につながる導入口8aが設けられると共に、天井部付近の側面には返送ライン6につながる排出口8bが設けられている。そして、密閉容器8の内部に円盤部材9が配設されている。
【0026】
円盤部材9は、その内部に空洞部9aが形成されると共に、上面部に多数の気泡注入孔9bが形成されたものである。そして、回転軸10の一部を形成するエア供給パイプ10aの一端側が、円盤部材9の下面側中心部に取り付けられている。なお、図示は省略しているが、密閉容器8に対するエア供給パイプ10aの取付は軸受部材等を介して行われ、良好な水密性が保持されている。
【0027】
図2(b)に示すように、多数の気泡注入孔9bは、円盤部材9の上面側の盤面周縁部付近にドーナツ状に設定された設定領域R内に形成されている。この設定領域Rは、円盤部材9の回転時における気泡注入孔9bの周速度が所定速度以上になるような領域として設定されたものである。そして、これらの気泡注入孔9bは、複数の半径R1,R2,R3毎の同一同心円上に所定のピッチPで形成されている。
【0028】
ところで、本発明の発明者らは、気泡注入孔9bの孔径、孔の数、周速度、ピッチP、及び気体流量等を種々変化させた場合に、発生する微小気泡5の平均径がどのように変化するかにつき実験・調査を重ねてきた。図3乃至図6は、この実験・調査の結果を示す特性図である。
【0029】
図3は、孔径が異なる複数の気泡注入孔について周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径が1.0mm,0.5mm,0.1mmの3種類である場合を示したものである。この特性図によれば、周速度が速くなるにしたがって、どの孔径の発生気泡平均径も次第に小さくなるが、周速度が6[m/s]以下では、気泡注入孔の孔径を小さくするほど発生気泡平均径を小さくすることができる。しかし、周速度が6[m/s]を超えるとどの孔径の発生気泡平均径も限界レベルの200μmに達し、殆ど同一となっている。
【0030】
一般に、気泡注入孔における圧力損失は孔径が大きくなるほど小さくなるので、ブロワ14等の機器のエネルギー低減の観点からは孔径が大きい方が好ましい。図3の特性図によれば、孔径が大きなものであっても、周速度を6[m/s]よりも大きくすることにより、孔径の小さなものと同等の発生気泡平均径を得ることができることが明らかになっている。
【0031】
図4は、特定孔径の気泡注入孔を有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径を1.0mm(図3における最大の孔径)、孔数を4個所とし、気体流量を0.2リットル/分,0.5リットル/分,1リットル/分,2リットル/分の4種類とした場合を示したものである。この特性図によれば、1〜3番目の気体流量の場合、周速度が6[m/s]以下では気体流量が小さなものほど発生気泡平均径が小さくなるが、周速度が6[m/s]を超えるとどの気体流量の発生気泡平均径も同一となっている。
【0032】
しかし、4番目の2リットル/分の気体流量の場合には、他の気体流量の場合とは異なる特性を示し、周速度を上昇させていっても発生気泡平均径ははるかに大きなものとなっている。このことから、気体流量には制限値が存在しており、多量の微小気泡を発生させようとして、制限値を超えた気体流量を供給するのは好ましくないことが明らかである。
【0033】
図5は、特定孔径の気泡注入孔を特定孔数だけ有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径を1.0mm、孔数を8個所(図4の場合の2倍)とし、気体流量を1リットル/分,2リットル/分の2種類とした場合を示したものである。図4の特性図では、気体流量が2リットル/分の場合については、周速度を上げていっても発生気泡平均径を充分に小さくすることができなかったが、この図5の特性図では、気泡注入孔の孔数を増やせば、周速度を6[m/s]よりも大きくすることにより、図4における他の気体流量の場合と同様に、充分に径の小さな微小気泡を得られることが分かる。
【0034】
図6は、複数の気泡注入孔を有する円盤部材を或る回転速度(例えば気泡注入孔位置の周速度が6[m/s]以上となるような速度)で回転させたときの気泡注入孔ピッチの変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔数を一定範囲内で増減した場合のものである。
【0035】
図5の特性図によれば、孔径の大きな気泡注入孔であっても孔数を増加することにより充分に小さな径の気泡を得ることができるようになる。しかし、孔数を増加し過ぎると今度は必然的に孔ピッチが狭くなり、微小気泡同士がくっついて気泡径が大きくなってしまうことになる。図6の特性図によれば、気泡注入孔のピッチが15mmよりも狭くなると、発生気泡平均径が著しく大きくなっていくことが明らかである。
【0036】
上述した図3乃至図6の特性図によれば、円盤部材9の回転速度は、図2(b)の設定領域R内に形成された全ての気泡注入孔9bの周速度が6[m/s]を超えるような速度であることが好ましく、また、隣接する気泡注入孔9b同士のピッチPは15mm以上であることが好ましいといえる。
【0037】
次に、本実施形態の動作を説明する。駆動モータ11が回転を開始すると共に、ブロワ14が起動され、更に返送ポンプ7も起動される。大気中からブロワ14に取り込まれたエアは、気体供給ライン13、ロータリジョイント12、及びエア供給パイプ10aを通って円盤部材9の空洞部9aに供給される。そして、空洞部9a内に満たされたエアは、多数の気泡注入孔9bから微小気泡5として密閉容器8内を満たしている液体1(水)中に注入される。
【0038】
このとき、気泡注入孔9bから生成し、水中に注入されようとする微小気泡5は、回転中の円盤部材9と、円盤部材9の周囲に存在する水との間の相対運動によって生じるせん断力の作用を受けて気泡注入孔9bから剥離され水中に注入される。このときのせん断力の大きさは、気泡注入孔9bが設定領域R内に形成されて高速で回転していることから大きなものとなっている。したがって、気泡注入孔9bから顔を出した状態の微小気泡5は、径の大きな気泡に成長する前に、強いせん断力で気泡注入孔9bから直ちに引きちぎられ、微細な状態を維持したままで水中に注入される。このとき気泡注入孔9b同士のピッチPは15mm以上となっているので、気泡注入孔9bから引きちぎられた微小気泡同士がくっつくことが抑制されるので気泡径が大きくなることも抑制される。すなわち、本実施形態の構成によれば、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることが可能となる。
【0039】
また、返送ポンプ7の起動により、密閉容器8内には導入口8aから水が導入されるが、この水は微小気泡5が注入された後、排出口8bから密閉容器8外に排出される。このとき、図2(b)において、円盤部材9の回転方向は左回り方向(反時計回り方向)であり、排出口8bの排出方向は円盤部材9の接線方向となっている。駆動モータ11による円盤部材9の回転で、密閉容器8内には水の旋回流が生じているが、このように円盤部材9の接線方向に排出口8bが形成されているので、密閉容器8内の水は極めて円滑に排出口8bから返送ライン6へ排出される。また、旋回流の旋回方向は、勿論駆動モータ11の回転軸10の回転方向と同じであるため、この旋回流は駆動モータ11の回転駆動力を支援するものとなる。
【0040】
したがって、本実施形態における密閉容器8によれば、返送ポンプ7及び駆動モータ11が必要とするエネルギーを低減することができ、返送ポンプ7及び駆動モータ11にそれほど大きな容量のものを用いなくても済むようになることが期待できる。
【0041】
また、本発明の発明者らがこれまで提案してきたシステム構成の多くは、円盤部材9を貯溜槽2の液体1中に配設するタイプのものであった。このようなタイプのシステム構成の場合、駆動モータ11も一緒に水中に配設しようとすると、駆動モータ11には水中モータを用いなければならず、コスト面又はメンテナンス面で不利なものとなっていた。また、駆動モータ11に気中モータを用いようとすると、駆動モータ11を水面上方又は貯溜槽2の底面下方に配設しなければならず、設置構造が複雑なものとならざるを得なかった。更に、貯溜槽2が下水処理槽であるような場合、ひどい汚れを考慮して容量の大きなモータを用いる必要があること、あるいは気泡注入孔9bの目詰まり等についての配慮が必要などいくつかの不利な点を有するものであった。
【0042】
しかし、図1の構成では、貯溜槽2とは別個に、貯溜槽2よりもはるかに小さな密閉容器8を設置するようになっているので、駆動モータ11に気中モータを用いても設置構造が複雑化することはない。したがって、貯溜槽2が既設又は新設のいずれのものであっても容易に本発明のシステムを実現できる。
【0043】
また、貯溜槽2が下水処理槽であるような場合も、導入ライン3の適当な個所にフィルタ部材を簡単に設けることが可能なので、大容量のモータを用いる必要はなく、目詰まりの問題なども解消できる。
【0044】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るシステムの要部構成図である。第1の実施形態における密閉容器8では、図2(a),(b)に示すように、導入口8aが天井部に設けられると共に、排出口8bが天井部付近の側面に設けられていたが、この図7における密閉容器8では、導入口8a及び排出口8bの双方が、天井部付近の側面に設けられており、且つこれらの導入方向及び排出方向は円盤部材9の接線方向となっている。
【0045】
したがって、この図7の構成を有する密閉容器8によれば、導入及び排出の双方を円滑に行うことができるので、図2の密閉容器8に比べて返送ポンプ7及び駆動モータ11の必要エネルギーを一層低減することができる。なお、図7では、導入口8a及び排出口8bの高さ方向の位置は図示されていないが、双方共に同一高さ位置(図2(a)における排出口8bの高さ位置)に設けられているものとする。
【0046】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図2及び図7の密閉容器8は、天井部側の径と底部側の径とが同一となっているストレート形円筒形状であるが、この図8の密閉容器8Aは、天井部側の径が底部側の径よりも大きくなっている略ラッパ形円筒形状となっている。そして、天井部付近の側面に導入口8aが形成され、底部付近の側面に排出口8bが形成されている。
【0047】
したがって、導入口8aから密閉容器8A内に導入された水は、次第に落下していく螺旋状の旋回流となって低位置に設けられている排出口8bに向かい、この排出口8bから勢いよく排出されていく。
【0048】
このように、図8の構成では、導入口8aと排出口8bとの間の高低差によって生じる位置エネルギーと、密閉容器8Aの形状によって生じる螺旋状の旋回流とを有効に利用することができるので、導入及び排出の双方を円滑に行うことができ、返送ポンプ7及び駆動モータ11の必要エネルギーを一層低減することができる。
【0049】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。既述したように、円盤部材9の上面部には設定領域Rが設定されており、この設定領域Rに多数の気泡注入孔9bが形成されている。そして、本実施形態では、この設定領域Rの内側領域つまり気泡注入孔9bが形成されていない領域に複数の回転翼部材15が取り付けられている。
【0050】
これらの回転翼部材15は、導入口8aから導入された水の流れが接触すると、駆動モータ11の回転駆動方向と同一方向の回転力を円盤部材9に生じさせる形状に形成されている。したがって、本実施形態では、このような回転翼部材15の働きによって、円盤部材9を効率よく回転させることができ、駆動モータ11及び返送ポンプ7の必要エネルギーを低減することができる。
【0051】
図10は、本発明の第5の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。本実施形態は、図9の第4の実施形態と同様に、円盤部材9に取り付けた回転翼部材16の働きにより、円盤部材9を効率よく回転させようとするものである。
【0052】
回転翼部材16は、円盤部材9の側面に取り付けられており、導入口8aから導入される水の勢いを受けてこれを円盤部材9に対する回転駆動力に変換し、また密閉容器8内で旋回する水を搬送してこれを排出口8bから勢いよく排出することを企図して設けられたものである。したがって、本実施形態における導入口8a(及び排出口8b)の密閉容器8での高さ方向の取付位置は、図10(a)に示すように、回転翼部材16とほぼ同一の高さとなっている。
【0053】
本実施形態では、このような回転翼部材16の働きによって、円盤部材9の回転、及び導入口8a及び排出口8bにおける導入及び排出を極めて効率的に行うことが可能である。したがって、本実施形態によれば、図1に示した返送ポンプ7の一層の小型化、あるいは更に返送ポンプ7の省略の可能性さえも期待することができる。
【0054】
図11は、本発明の第6の実施形態に係るシステムの要部構成図である。本実施形態は、第2の実施形態(図7)における密閉容器8の天井部外側に粗大気泡排出手段としてのエアトラップ18を取り付け、密閉容器8の天井部内側に滞溜している粗大気泡17を、粗大気泡排出ライン19及び逆止弁20を介して、気体供給ライン13側に返流するものである。逆止弁20は、一旦気体供給ライン13側に返流した粗大気泡17に係る気体が再度エアトラップ18を介して密閉容器8内部に戻るのを防止するためのものである。
【0055】
円盤部材9の気泡注入孔9bから発生する非常に小さな微小気泡5(マイクロバブル)は、水中に放たれると次第に水中に溶け込んで消失するという、通常の気泡とは異なる特異な性質を有している。しかし、密閉容器8内の状態によっては、発生した多数の微小気泡5が消失するまえに互いにくっついてしまい、これらが大きな粗大気泡17に成長することがある。このような、粗大気泡17は密閉容器8内の天井部付近に滞留することになるが、これをそのままにしておくと発生した複数の粗大気泡同士がくっついて更に大きな粗大気泡が発生し、微小気泡発生装置4の機能が低下することになる。
【0056】
本実施形態によれば、このようにして密閉容器8内に発生した粗大気泡17を密閉容器8外部に排出することができるので、粗大気泡17に起因する微小気泡発生装置4の機能低下を防止することができる。
【0057】
図12は、本発明の第7の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図12が図11と異なる点は、密閉容器8の天井部付近に粗大気泡滞溜室8cを設け、この粗大気泡滞溜室8cに粗大気泡排出手段としてのエアトラップ18を取り付けた点である。
【0058】
図11の密閉容器8の場合、天井部は平坦であるため粗大気泡17の滞溜位置がときとして大きく変化し、粗大気泡17を密閉容器8外になかなか排出できない場合もあり得る。しかし、図12の密閉容器8では粗大気泡17の滞溜位置を粗大気泡滞溜室8cに固定しておくことができるので速やかに粗大気泡17を排出することができる。
【0059】
図13は、本発明の第8の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図13の構成は、図12におけるエアトラップ18の代わりにバルブ21を用いると共に、粗大気泡滞溜室8c内に粗大気泡検出器22を配設し、この粗大気泡検出器22の検出信号に基づきバルブ21を開放するバルブ制御回路23を配設したものである。
【0060】
粗大気泡検出器22としては、例えば、水位センサ等に用いられる「接点式スイッチ」と呼ばれるスイッチなどを用いることが考えられる。詳しい説明は省略するが、このスイッチは一対の接点を有するものであり、この一対の接点間が導通状態になっているか否かに基づき粗大気泡17の存在を検出することができる。
【0061】
つまり、この一対の接点が水中に浸かっているときには、接点間が水を介して導通状態になっているので粗大気泡検出器22はオン信号をバルブ制御回路23に出力する。したがって、この状態ではバルブ制御回路23はバルブ21を閉じている。しかし、粗大気泡滞溜室8c内に粗大気泡17が入り込むと、この一対の接点間は粗大気泡17の存在のために非導通状態になるので、粗大気泡検出器22はそれまでのオン信号に代わってオフ信号をバルブ制御回路23に出力する。バルブ制御回路23は、このオフ信号を受けてバルブ21を開放する。
【0062】
本実施形態によれば、常時は閉じているバルブ21を、粗大気泡17が検出された場合のみ開放するようにしているので、密閉容器8内の気密性及び水密性を保持しつつ、確実に粗大気泡17を密閉容器8外に排出することができる。
【0063】
図14は、本発明の第9の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図14が図13と異なる点は、バルブ21の代わりにエアポンプ24を用いている点と、バルブ制御回路23がポンプ制御回路25になっている点である。
【0064】
本実施形態によれば、粗大気泡滞溜室8c内に存在する粗大気泡17を、エアポンプ24の働きにより強制的に排出し、この粗大気泡17に係る気体を確実且つ迅速にエア供給パイプ10a側に返流することができる。
【0065】
図15は、本発明の第10の実施形態に係るシステムの要部構成図である。本実施形態は、第2の実施形態(図7)における密閉容器8の外側に、大きな気泡(微小気泡よりも大きいが、粗大気泡よりも小さな気泡)又は粗大気泡を消失するための超音波発生器26を取り付けたものである。本実施形態では、超音波発生器26を密閉容器8の天井部付近と、排出口8b付近との2個所に取り付けているが、気泡の発生具合を勘案していずれか1個所のみとすることも考えられる。
【0066】
本実施形態によれば、図11乃至図14に示した粗大気泡排出ライン19や逆止弁20のような構成要素を設けることなく、超音波の機能を利用した簡易な構成により粗大気泡等を消失することができる。但し、超音波発生器26は、その機能上あまり大量の気泡を消失させることができないのが通常であるから、気泡の発生量を事前によく調査しておくことが好ましい。
【0067】
図16は、本発明の第11の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。本実施形態は、第1の実施形態における円盤部材9の上面に複数の気泡破砕部材27を設けたものである。
【0068】
本実施形態では、この気泡破砕部材27として、例えば樹脂製の円柱状部材を用いることを想定しているが、材料及び形状等は特に限定されるものではない。また、気泡破砕部材27が形成される範囲は、図16(b)に示すように、主として設定領域Rであるが(勿論気泡注入孔9bを除く個所である)、設定領域Rばかりでなくその外側にも及んでいる。
【0069】
既述したように、円盤部材9の気泡注入孔9bから水中に放たれる微小気泡は、次第に水中に溶け込んで消失するという、通常の気泡とは異なる特異な性質を有しているが、気泡注入孔9bからは微小気泡ばかりでなく微小気泡よりも大きな径の気泡も多く発生する。このような大きな径の気泡は、消失せずに密閉容器8内で旋回するが、これをそのまま放置しておくと大きな径の気泡同士がくっついて更に大きな気泡に成長し、これがそのまま排出口8bから排出されて貯溜槽2に送られてしまうことになる。
【0070】
しかし、本実施形態によれば、円盤部材9の上面に設けた複数の気泡破砕部材27により、密閉容器8内に消失せず残存している大きな気泡を破砕し、これら大きな気泡が貯溜槽2へ送られるのを極力抑制することができる。
【0071】
図17は、本発明の第12の実施形態に係るシステムの要部構成図である。上記の第11の実施形態では、気泡破砕部材27を円盤部材9の盤面上に設けていたが、本実施形態では密閉容器8内の天井部内側に立設した構成としている。このような本実施形態の構成によっても、第11の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
なお、本発明では第11の実施形態と第12の実施形態とを合わせた構成、すなわち、円盤部材9の上面と密閉容器8内の天井部内側との双方に気泡破砕部材27を設ける構成とすることも勿論可能である。これによれば、一層顕著な気泡破砕効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体構成図。
【図2】図1における円盤部材9及び密閉容器8の構造を示す説明図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図3】孔径が異なる複数の気泡注入孔について周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図4】特定孔径の気泡注入孔を有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図5】特定孔径の気泡注入孔を特定孔数だけ有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図6】複数の気泡注入孔を有する円盤部材を或る回転速度で回転させたときの気泡注入孔ピッチの変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図12】本発明の第7の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図13】本発明の第8の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図14】本発明の第9の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図15】本発明の第10の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図16】本発明の第11の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図17】本発明の第12の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【符号の説明】
【0074】
1:液体
2:貯溜槽
3:導入ライン
4:微小気泡発生装置
5:微小気泡
6:返送ライン
7:返送ポンプ
8,8A:密閉容器
8a:導入口
8b:排出口
8c:粗大気泡滞溜室
9:円盤部材
9a:空洞部
9b:気泡注入孔
10:回転軸
10a:エア供給パイプ
11:駆動モータ
12:ロータリジョイント
13:気体供給ライン
14:ブロワ(気体供給手段)
15,16:回転翼部材
17:粗大気泡
18:エアトラップ(粗大気泡排出手段)
19:粗大気泡排出ライン
20:逆止弁
21:バルブ(粗大気泡排出手段)
22:粗大気泡検出器
23:バルブ制御回路
24:エアポンプ(粗大気泡排出手段)
25:ポンプ制御回路
26:超音波発生器
27:気泡破砕部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルと呼ばれる微小気泡を発生させ、この発生させた微小気泡を液体に注入させるための液体への微小気泡注入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡径が100μm程度の水中に注入された微小気泡はマイクロバブルと呼ばれ、その化学的又は物理的特性に基づき、例えば、除菌効果や摩擦抵抗低減効果などの種々の効果を得ることができるため、各種産業分野での利用が期待されている。
【0003】
このような微小気泡を発生させる微小気泡発生装置としては種々のタイプのものが知られている。例えば、特許文献1に係る装置では、コンプレッサなどの気体供給手段から水が流れる管に多孔質体を通して気体を供給することで微小気泡を発生させるようにしている。
【0004】
また、特許文献2に係る装置では、円錐形状の回転容器本体に対し、底面付近の周面部に加圧液体導入口を設けると共に、底面側に気体導入孔を設け、更に回転容器本体の頂部には旋回気液導出孔を設けた構成としている。そして、旋回しながら上記導出孔に向かう液体と気体との間の旋回速度差を利用して気泡表面に大きなせん断力を作用させ、このせん断力で気泡を導出孔から引きちぎるようにして大量の微小気泡を発生させるようにしている。
【特許文献1】特開平8−225094号公報
【特許文献2】特開2003−205228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る装置の場合、多孔質体から気泡が離脱しにくいため、発生する気泡が多孔質体の孔径より大きくなり、充分に微小な気泡を得ることができないという欠点を有している。
【0006】
また、特許文献2に係る装置の場合、特許文献1の場合に比べて微小な気泡を得ることができるが、液体に旋回流を与える必要があるため圧力損失が大きくなると共に、液体中の気体の割合が特許文献1の場合に比べて低くなってしまうという欠点を有している。
【0007】
このように、一般的に従来の微小気泡発生装置では、気泡径と必要エネルギーとは所謂トレードオフの関係にある。つまり、充分に気泡径の小さな気泡を発生させようとすると大きなエネルギーを必要とせざるを得ず、一方、エネルギーを低減させようとすると気泡径の大きな気泡しか得ることができなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることが可能な液体への微小気泡注入システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、微小気泡注入対象となる液体が貯溜された貯溜槽と、前記貯溜槽から導入ラインを経由して導入した液体に微小気泡を注入し、微小気泡注入後の液体を返送ラインを経由して前記貯溜槽に返送する微小気泡発生装置と、前記微小気泡発生装置に対して微小気泡発生のための気体を気体供給ラインを経由して供給する気体供給手段と、を備え、前記微小気泡発生装置は、前記導入ライン及び前記返送ラインに接続された密閉容器と、前記密閉容器内部に配設され、前記気体供給手段からの気体を導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材と、前記密閉容器外部に配設され、前記円盤部材を回転駆動するモータ手段と、を有しており、しかも、前記円盤部材の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔が所定長以上である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記返送ラインに返送ポンプが配設されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導入ライン及び返送ラインと接続する前記密閉容器の導入口及び排出口は、その導入方向及び排出方向が、前記円盤部材を回転させる方向の旋回流を生じさせる方向となるように形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記密閉容器は、天井部側の径が底部側の径よりも大きな略ラッパ形の円筒形状をなしており、前記導入口が天井部付近の側面に形成され、前記排出口が底部付近の側面に形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記円盤部材に前記旋回流の抵抗を受ける回転翼部材を取り付けた、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記液体中に粗大気泡が発生し、この粗大気泡が密閉容器の天井部付近に滞溜している場合に、この粗大気泡を密閉容器内部から排出して前記気体供給ラインに返流する粗大気泡排出手段を備えた、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記密閉容器の天井部付近に粗大気泡滞溜室を設け、前記粗大気泡排出手段は、この粗大気泡滞溜室内に溜まった粗大気泡を排出するものである、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記密閉容器内の液体中に発生した大きな気泡又は粗大気泡を消失するための超音波発生手段を、前記密閉容器の外側に取り付けた、ことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記円盤部材の盤面上、又は前記密閉容器の天井部内側の少なくともいずれかに、気泡破砕部材を形成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体構成図である。微小気泡注入対象となる液体1が貯溜槽2に貯溜されている。貯溜槽2の底部付近には導入ライン3の一端側が接続されており、この導入ライン3の他端側は微小気泡発生装置4に接続されている。
【0020】
微小気泡発生装置4は発生させた微小気泡5を、貯溜槽2から導入ライン3を経由して送られてきた液体1に対して注入するものである。そして、微小気泡発生装置4は、液体1に微小気泡を注入した後、これを返送ライン6及び返送ポンプ7を介して貯溜槽2に返送するようになっている。
【0021】
微小気泡発生装置4は、天井部及びこの天井部付近の側面にそれぞれ導入ライン3及び返送ライン6が接続された密閉容器8と、この密閉容器8内部に配設され、空洞部が内部に形成されている円盤部材9と、密閉容器8外部に配設され、回転軸10を介して円盤部材9を回転駆動する駆動モータ11とを有している。
【0022】
そして、回転軸10の中間部にはロータリジョイント12が取り付けられており、このロータリジョイント12に気体供給ライン13を介して気体供給手段としてのブロワ14が接続されている。回転軸10は、ロータリジョイント12の下側部分は中実状になっているが、ロータリジョイント12の上側部分は中空状(パイプ状)となっている。したがって、ブロワ14から送られるエアは気体供給ライン13、ロータリジョイント12、及び回転軸10の中空部を通って、円盤部材9内部に形成された空洞部に供給されるようになっている。
【0023】
なお、本実施形態では、液体1が水である場合を想定しているが、本発明では水の他に、弱酸や強酸などの化学剤、あるいは油等も液体1に含まれるものとする。また、微小気泡発生のための気体として、本実施形態ではエアを想定しているが、本発明ではオゾンなども含まれるものとする。
【0024】
図2は、図1における円盤部材9及び密閉容器8の構造を示す説明図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。
【0025】
図2(a)に示すように、密閉容器8の天井部には導入ライン3につながる導入口8aが設けられると共に、天井部付近の側面には返送ライン6につながる排出口8bが設けられている。そして、密閉容器8の内部に円盤部材9が配設されている。
【0026】
円盤部材9は、その内部に空洞部9aが形成されると共に、上面部に多数の気泡注入孔9bが形成されたものである。そして、回転軸10の一部を形成するエア供給パイプ10aの一端側が、円盤部材9の下面側中心部に取り付けられている。なお、図示は省略しているが、密閉容器8に対するエア供給パイプ10aの取付は軸受部材等を介して行われ、良好な水密性が保持されている。
【0027】
図2(b)に示すように、多数の気泡注入孔9bは、円盤部材9の上面側の盤面周縁部付近にドーナツ状に設定された設定領域R内に形成されている。この設定領域Rは、円盤部材9の回転時における気泡注入孔9bの周速度が所定速度以上になるような領域として設定されたものである。そして、これらの気泡注入孔9bは、複数の半径R1,R2,R3毎の同一同心円上に所定のピッチPで形成されている。
【0028】
ところで、本発明の発明者らは、気泡注入孔9bの孔径、孔の数、周速度、ピッチP、及び気体流量等を種々変化させた場合に、発生する微小気泡5の平均径がどのように変化するかにつき実験・調査を重ねてきた。図3乃至図6は、この実験・調査の結果を示す特性図である。
【0029】
図3は、孔径が異なる複数の気泡注入孔について周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径が1.0mm,0.5mm,0.1mmの3種類である場合を示したものである。この特性図によれば、周速度が速くなるにしたがって、どの孔径の発生気泡平均径も次第に小さくなるが、周速度が6[m/s]以下では、気泡注入孔の孔径を小さくするほど発生気泡平均径を小さくすることができる。しかし、周速度が6[m/s]を超えるとどの孔径の発生気泡平均径も限界レベルの200μmに達し、殆ど同一となっている。
【0030】
一般に、気泡注入孔における圧力損失は孔径が大きくなるほど小さくなるので、ブロワ14等の機器のエネルギー低減の観点からは孔径が大きい方が好ましい。図3の特性図によれば、孔径が大きなものであっても、周速度を6[m/s]よりも大きくすることにより、孔径の小さなものと同等の発生気泡平均径を得ることができることが明らかになっている。
【0031】
図4は、特定孔径の気泡注入孔を有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径を1.0mm(図3における最大の孔径)、孔数を4個所とし、気体流量を0.2リットル/分,0.5リットル/分,1リットル/分,2リットル/分の4種類とした場合を示したものである。この特性図によれば、1〜3番目の気体流量の場合、周速度が6[m/s]以下では気体流量が小さなものほど発生気泡平均径が小さくなるが、周速度が6[m/s]を超えるとどの気体流量の発生気泡平均径も同一となっている。
【0032】
しかし、4番目の2リットル/分の気体流量の場合には、他の気体流量の場合とは異なる特性を示し、周速度を上昇させていっても発生気泡平均径ははるかに大きなものとなっている。このことから、気体流量には制限値が存在しており、多量の微小気泡を発生させようとして、制限値を超えた気体流量を供給するのは好ましくないことが明らかである。
【0033】
図5は、特定孔径の気泡注入孔を特定孔数だけ有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔径を1.0mm、孔数を8個所(図4の場合の2倍)とし、気体流量を1リットル/分,2リットル/分の2種類とした場合を示したものである。図4の特性図では、気体流量が2リットル/分の場合については、周速度を上げていっても発生気泡平均径を充分に小さくすることができなかったが、この図5の特性図では、気泡注入孔の孔数を増やせば、周速度を6[m/s]よりも大きくすることにより、図4における他の気体流量の場合と同様に、充分に径の小さな微小気泡を得られることが分かる。
【0034】
図6は、複数の気泡注入孔を有する円盤部材を或る回転速度(例えば気泡注入孔位置の周速度が6[m/s]以上となるような速度)で回転させたときの気泡注入孔ピッチの変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図である。この特性図は、気泡注入孔の孔数を一定範囲内で増減した場合のものである。
【0035】
図5の特性図によれば、孔径の大きな気泡注入孔であっても孔数を増加することにより充分に小さな径の気泡を得ることができるようになる。しかし、孔数を増加し過ぎると今度は必然的に孔ピッチが狭くなり、微小気泡同士がくっついて気泡径が大きくなってしまうことになる。図6の特性図によれば、気泡注入孔のピッチが15mmよりも狭くなると、発生気泡平均径が著しく大きくなっていくことが明らかである。
【0036】
上述した図3乃至図6の特性図によれば、円盤部材9の回転速度は、図2(b)の設定領域R内に形成された全ての気泡注入孔9bの周速度が6[m/s]を超えるような速度であることが好ましく、また、隣接する気泡注入孔9b同士のピッチPは15mm以上であることが好ましいといえる。
【0037】
次に、本実施形態の動作を説明する。駆動モータ11が回転を開始すると共に、ブロワ14が起動され、更に返送ポンプ7も起動される。大気中からブロワ14に取り込まれたエアは、気体供給ライン13、ロータリジョイント12、及びエア供給パイプ10aを通って円盤部材9の空洞部9aに供給される。そして、空洞部9a内に満たされたエアは、多数の気泡注入孔9bから微小気泡5として密閉容器8内を満たしている液体1(水)中に注入される。
【0038】
このとき、気泡注入孔9bから生成し、水中に注入されようとする微小気泡5は、回転中の円盤部材9と、円盤部材9の周囲に存在する水との間の相対運動によって生じるせん断力の作用を受けて気泡注入孔9bから剥離され水中に注入される。このときのせん断力の大きさは、気泡注入孔9bが設定領域R内に形成されて高速で回転していることから大きなものとなっている。したがって、気泡注入孔9bから顔を出した状態の微小気泡5は、径の大きな気泡に成長する前に、強いせん断力で気泡注入孔9bから直ちに引きちぎられ、微細な状態を維持したままで水中に注入される。このとき気泡注入孔9b同士のピッチPは15mm以上となっているので、気泡注入孔9bから引きちぎられた微小気泡同士がくっつくことが抑制されるので気泡径が大きくなることも抑制される。すなわち、本実施形態の構成によれば、少ないエネルギーにより気泡径の充分に小さな微小気泡を効率的に発生させることが可能となる。
【0039】
また、返送ポンプ7の起動により、密閉容器8内には導入口8aから水が導入されるが、この水は微小気泡5が注入された後、排出口8bから密閉容器8外に排出される。このとき、図2(b)において、円盤部材9の回転方向は左回り方向(反時計回り方向)であり、排出口8bの排出方向は円盤部材9の接線方向となっている。駆動モータ11による円盤部材9の回転で、密閉容器8内には水の旋回流が生じているが、このように円盤部材9の接線方向に排出口8bが形成されているので、密閉容器8内の水は極めて円滑に排出口8bから返送ライン6へ排出される。また、旋回流の旋回方向は、勿論駆動モータ11の回転軸10の回転方向と同じであるため、この旋回流は駆動モータ11の回転駆動力を支援するものとなる。
【0040】
したがって、本実施形態における密閉容器8によれば、返送ポンプ7及び駆動モータ11が必要とするエネルギーを低減することができ、返送ポンプ7及び駆動モータ11にそれほど大きな容量のものを用いなくても済むようになることが期待できる。
【0041】
また、本発明の発明者らがこれまで提案してきたシステム構成の多くは、円盤部材9を貯溜槽2の液体1中に配設するタイプのものであった。このようなタイプのシステム構成の場合、駆動モータ11も一緒に水中に配設しようとすると、駆動モータ11には水中モータを用いなければならず、コスト面又はメンテナンス面で不利なものとなっていた。また、駆動モータ11に気中モータを用いようとすると、駆動モータ11を水面上方又は貯溜槽2の底面下方に配設しなければならず、設置構造が複雑なものとならざるを得なかった。更に、貯溜槽2が下水処理槽であるような場合、ひどい汚れを考慮して容量の大きなモータを用いる必要があること、あるいは気泡注入孔9bの目詰まり等についての配慮が必要などいくつかの不利な点を有するものであった。
【0042】
しかし、図1の構成では、貯溜槽2とは別個に、貯溜槽2よりもはるかに小さな密閉容器8を設置するようになっているので、駆動モータ11に気中モータを用いても設置構造が複雑化することはない。したがって、貯溜槽2が既設又は新設のいずれのものであっても容易に本発明のシステムを実現できる。
【0043】
また、貯溜槽2が下水処理槽であるような場合も、導入ライン3の適当な個所にフィルタ部材を簡単に設けることが可能なので、大容量のモータを用いる必要はなく、目詰まりの問題なども解消できる。
【0044】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るシステムの要部構成図である。第1の実施形態における密閉容器8では、図2(a),(b)に示すように、導入口8aが天井部に設けられると共に、排出口8bが天井部付近の側面に設けられていたが、この図7における密閉容器8では、導入口8a及び排出口8bの双方が、天井部付近の側面に設けられており、且つこれらの導入方向及び排出方向は円盤部材9の接線方向となっている。
【0045】
したがって、この図7の構成を有する密閉容器8によれば、導入及び排出の双方を円滑に行うことができるので、図2の密閉容器8に比べて返送ポンプ7及び駆動モータ11の必要エネルギーを一層低減することができる。なお、図7では、導入口8a及び排出口8bの高さ方向の位置は図示されていないが、双方共に同一高さ位置(図2(a)における排出口8bの高さ位置)に設けられているものとする。
【0046】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図2及び図7の密閉容器8は、天井部側の径と底部側の径とが同一となっているストレート形円筒形状であるが、この図8の密閉容器8Aは、天井部側の径が底部側の径よりも大きくなっている略ラッパ形円筒形状となっている。そして、天井部付近の側面に導入口8aが形成され、底部付近の側面に排出口8bが形成されている。
【0047】
したがって、導入口8aから密閉容器8A内に導入された水は、次第に落下していく螺旋状の旋回流となって低位置に設けられている排出口8bに向かい、この排出口8bから勢いよく排出されていく。
【0048】
このように、図8の構成では、導入口8aと排出口8bとの間の高低差によって生じる位置エネルギーと、密閉容器8Aの形状によって生じる螺旋状の旋回流とを有効に利用することができるので、導入及び排出の双方を円滑に行うことができ、返送ポンプ7及び駆動モータ11の必要エネルギーを一層低減することができる。
【0049】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。既述したように、円盤部材9の上面部には設定領域Rが設定されており、この設定領域Rに多数の気泡注入孔9bが形成されている。そして、本実施形態では、この設定領域Rの内側領域つまり気泡注入孔9bが形成されていない領域に複数の回転翼部材15が取り付けられている。
【0050】
これらの回転翼部材15は、導入口8aから導入された水の流れが接触すると、駆動モータ11の回転駆動方向と同一方向の回転力を円盤部材9に生じさせる形状に形成されている。したがって、本実施形態では、このような回転翼部材15の働きによって、円盤部材9を効率よく回転させることができ、駆動モータ11及び返送ポンプ7の必要エネルギーを低減することができる。
【0051】
図10は、本発明の第5の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。本実施形態は、図9の第4の実施形態と同様に、円盤部材9に取り付けた回転翼部材16の働きにより、円盤部材9を効率よく回転させようとするものである。
【0052】
回転翼部材16は、円盤部材9の側面に取り付けられており、導入口8aから導入される水の勢いを受けてこれを円盤部材9に対する回転駆動力に変換し、また密閉容器8内で旋回する水を搬送してこれを排出口8bから勢いよく排出することを企図して設けられたものである。したがって、本実施形態における導入口8a(及び排出口8b)の密閉容器8での高さ方向の取付位置は、図10(a)に示すように、回転翼部材16とほぼ同一の高さとなっている。
【0053】
本実施形態では、このような回転翼部材16の働きによって、円盤部材9の回転、及び導入口8a及び排出口8bにおける導入及び排出を極めて効率的に行うことが可能である。したがって、本実施形態によれば、図1に示した返送ポンプ7の一層の小型化、あるいは更に返送ポンプ7の省略の可能性さえも期待することができる。
【0054】
図11は、本発明の第6の実施形態に係るシステムの要部構成図である。本実施形態は、第2の実施形態(図7)における密閉容器8の天井部外側に粗大気泡排出手段としてのエアトラップ18を取り付け、密閉容器8の天井部内側に滞溜している粗大気泡17を、粗大気泡排出ライン19及び逆止弁20を介して、気体供給ライン13側に返流するものである。逆止弁20は、一旦気体供給ライン13側に返流した粗大気泡17に係る気体が再度エアトラップ18を介して密閉容器8内部に戻るのを防止するためのものである。
【0055】
円盤部材9の気泡注入孔9bから発生する非常に小さな微小気泡5(マイクロバブル)は、水中に放たれると次第に水中に溶け込んで消失するという、通常の気泡とは異なる特異な性質を有している。しかし、密閉容器8内の状態によっては、発生した多数の微小気泡5が消失するまえに互いにくっついてしまい、これらが大きな粗大気泡17に成長することがある。このような、粗大気泡17は密閉容器8内の天井部付近に滞留することになるが、これをそのままにしておくと発生した複数の粗大気泡同士がくっついて更に大きな粗大気泡が発生し、微小気泡発生装置4の機能が低下することになる。
【0056】
本実施形態によれば、このようにして密閉容器8内に発生した粗大気泡17を密閉容器8外部に排出することができるので、粗大気泡17に起因する微小気泡発生装置4の機能低下を防止することができる。
【0057】
図12は、本発明の第7の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図12が図11と異なる点は、密閉容器8の天井部付近に粗大気泡滞溜室8cを設け、この粗大気泡滞溜室8cに粗大気泡排出手段としてのエアトラップ18を取り付けた点である。
【0058】
図11の密閉容器8の場合、天井部は平坦であるため粗大気泡17の滞溜位置がときとして大きく変化し、粗大気泡17を密閉容器8外になかなか排出できない場合もあり得る。しかし、図12の密閉容器8では粗大気泡17の滞溜位置を粗大気泡滞溜室8cに固定しておくことができるので速やかに粗大気泡17を排出することができる。
【0059】
図13は、本発明の第8の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図13の構成は、図12におけるエアトラップ18の代わりにバルブ21を用いると共に、粗大気泡滞溜室8c内に粗大気泡検出器22を配設し、この粗大気泡検出器22の検出信号に基づきバルブ21を開放するバルブ制御回路23を配設したものである。
【0060】
粗大気泡検出器22としては、例えば、水位センサ等に用いられる「接点式スイッチ」と呼ばれるスイッチなどを用いることが考えられる。詳しい説明は省略するが、このスイッチは一対の接点を有するものであり、この一対の接点間が導通状態になっているか否かに基づき粗大気泡17の存在を検出することができる。
【0061】
つまり、この一対の接点が水中に浸かっているときには、接点間が水を介して導通状態になっているので粗大気泡検出器22はオン信号をバルブ制御回路23に出力する。したがって、この状態ではバルブ制御回路23はバルブ21を閉じている。しかし、粗大気泡滞溜室8c内に粗大気泡17が入り込むと、この一対の接点間は粗大気泡17の存在のために非導通状態になるので、粗大気泡検出器22はそれまでのオン信号に代わってオフ信号をバルブ制御回路23に出力する。バルブ制御回路23は、このオフ信号を受けてバルブ21を開放する。
【0062】
本実施形態によれば、常時は閉じているバルブ21を、粗大気泡17が検出された場合のみ開放するようにしているので、密閉容器8内の気密性及び水密性を保持しつつ、確実に粗大気泡17を密閉容器8外に排出することができる。
【0063】
図14は、本発明の第9の実施形態に係るシステムの要部構成図である。図14が図13と異なる点は、バルブ21の代わりにエアポンプ24を用いている点と、バルブ制御回路23がポンプ制御回路25になっている点である。
【0064】
本実施形態によれば、粗大気泡滞溜室8c内に存在する粗大気泡17を、エアポンプ24の働きにより強制的に排出し、この粗大気泡17に係る気体を確実且つ迅速にエア供給パイプ10a側に返流することができる。
【0065】
図15は、本発明の第10の実施形態に係るシステムの要部構成図である。本実施形態は、第2の実施形態(図7)における密閉容器8の外側に、大きな気泡(微小気泡よりも大きいが、粗大気泡よりも小さな気泡)又は粗大気泡を消失するための超音波発生器26を取り付けたものである。本実施形態では、超音波発生器26を密閉容器8の天井部付近と、排出口8b付近との2個所に取り付けているが、気泡の発生具合を勘案していずれか1個所のみとすることも考えられる。
【0066】
本実施形態によれば、図11乃至図14に示した粗大気泡排出ライン19や逆止弁20のような構成要素を設けることなく、超音波の機能を利用した簡易な構成により粗大気泡等を消失することができる。但し、超音波発生器26は、その機能上あまり大量の気泡を消失させることができないのが通常であるから、気泡の発生量を事前によく調査しておくことが好ましい。
【0067】
図16は、本発明の第11の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図である。本実施形態は、第1の実施形態における円盤部材9の上面に複数の気泡破砕部材27を設けたものである。
【0068】
本実施形態では、この気泡破砕部材27として、例えば樹脂製の円柱状部材を用いることを想定しているが、材料及び形状等は特に限定されるものではない。また、気泡破砕部材27が形成される範囲は、図16(b)に示すように、主として設定領域Rであるが(勿論気泡注入孔9bを除く個所である)、設定領域Rばかりでなくその外側にも及んでいる。
【0069】
既述したように、円盤部材9の気泡注入孔9bから水中に放たれる微小気泡は、次第に水中に溶け込んで消失するという、通常の気泡とは異なる特異な性質を有しているが、気泡注入孔9bからは微小気泡ばかりでなく微小気泡よりも大きな径の気泡も多く発生する。このような大きな径の気泡は、消失せずに密閉容器8内で旋回するが、これをそのまま放置しておくと大きな径の気泡同士がくっついて更に大きな気泡に成長し、これがそのまま排出口8bから排出されて貯溜槽2に送られてしまうことになる。
【0070】
しかし、本実施形態によれば、円盤部材9の上面に設けた複数の気泡破砕部材27により、密閉容器8内に消失せず残存している大きな気泡を破砕し、これら大きな気泡が貯溜槽2へ送られるのを極力抑制することができる。
【0071】
図17は、本発明の第12の実施形態に係るシステムの要部構成図である。上記の第11の実施形態では、気泡破砕部材27を円盤部材9の盤面上に設けていたが、本実施形態では密閉容器8内の天井部内側に立設した構成としている。このような本実施形態の構成によっても、第11の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
なお、本発明では第11の実施形態と第12の実施形態とを合わせた構成、すなわち、円盤部材9の上面と密閉容器8内の天井部内側との双方に気泡破砕部材27を設ける構成とすることも勿論可能である。これによれば、一層顕著な気泡破砕効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体構成図。
【図2】図1における円盤部材9及び密閉容器8の構造を示す説明図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図3】孔径が異なる複数の気泡注入孔について周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図4】特定孔径の気泡注入孔を有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図5】特定孔径の気泡注入孔を特定孔数だけ有する円盤部材に対して異なる気体流量を供給したときの周速度の変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図6】複数の気泡注入孔を有する円盤部材を或る回転速度で回転させたときの気泡注入孔ピッチの変化と発生気泡平均径との間の関係を示す特性図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図12】本発明の第7の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図13】本発明の第8の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図14】本発明の第9の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図15】本発明の第10の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【図16】本発明の第11の実施形態に係るシステムの要部構成図であり、(a)は円盤部材9及び密閉容器8の縦断面図、(b)は(a)のB−B矢視図。
【図17】本発明の第12の実施形態に係るシステムの要部構成図。
【符号の説明】
【0074】
1:液体
2:貯溜槽
3:導入ライン
4:微小気泡発生装置
5:微小気泡
6:返送ライン
7:返送ポンプ
8,8A:密閉容器
8a:導入口
8b:排出口
8c:粗大気泡滞溜室
9:円盤部材
9a:空洞部
9b:気泡注入孔
10:回転軸
10a:エア供給パイプ
11:駆動モータ
12:ロータリジョイント
13:気体供給ライン
14:ブロワ(気体供給手段)
15,16:回転翼部材
17:粗大気泡
18:エアトラップ(粗大気泡排出手段)
19:粗大気泡排出ライン
20:逆止弁
21:バルブ(粗大気泡排出手段)
22:粗大気泡検出器
23:バルブ制御回路
24:エアポンプ(粗大気泡排出手段)
25:ポンプ制御回路
26:超音波発生器
27:気泡破砕部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小気泡注入対象となる液体が貯溜された貯溜槽と、
前記貯溜槽から導入ラインを経由して導入した液体に微小気泡を注入し、微小気泡注入後の液体を返送ラインを経由して前記貯溜槽に返送する微小気泡発生装置と、
前記微小気泡発生装置に対して微小気泡発生のための気体を気体供給ラインを経由して供給する気体供給手段と、
を備え、
前記微小気泡発生装置は、
前記導入ライン及び前記返送ラインに接続された密閉容器と、
前記密閉容器内部に配設され、前記気体供給手段からの気体を導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材と、
前記密閉容器外部に配設され、前記円盤部材を回転駆動するモータ手段と、
を有しており、
しかも、前記円盤部材の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔が所定長以上である、
ことを特徴とする液体への微小気泡注入システム。
【請求項2】
前記返送ラインに返送ポンプが配設されている、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項3】
前記導入ライン及び返送ラインと接続する前記密閉容器の導入口及び排出口は、その導入方向及び排出方向が、前記円盤部材を回転させる方向の旋回流を生じさせる方向となるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項4】
前記密閉容器は、天井部側の径が底部側の径よりも大きな略ラッパ形の円筒形状をなしており、前記導入口が天井部付近の側面に形成され、前記排出口が底部付近の側面に形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項5】
前記円盤部材に前記旋回流の抵抗を受ける回転翼部材を取り付けた、
ことを特徴とする請求項3記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項6】
前記液体中に粗大気泡が発生し、この粗大気泡が密閉容器の天井部付近に滞溜している場合に、この粗大気泡を密閉容器内部から排出して前記気体供給ラインに返流する粗大気泡排出手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項7】
前記密閉容器の天井部付近に粗大気泡滞溜室を設け、前記粗大気泡排出手段は、この粗大気泡滞溜室内に溜まった粗大気泡を排出するものである、
ことを特徴とする請求項6記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項8】
前記密閉容器内の液体中に発生した大きな気泡又は粗大気泡を消失するための超音波発生手段を、前記密閉容器の外側に取り付けた、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項9】
前記円盤部材の盤面上、又は前記密閉容器の天井部内側の少なくともいずれかに、気泡破砕部材を形成した、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項1】
微小気泡注入対象となる液体が貯溜された貯溜槽と、
前記貯溜槽から導入ラインを経由して導入した液体に微小気泡を注入し、微小気泡注入後の液体を返送ラインを経由して前記貯溜槽に返送する微小気泡発生装置と、
前記微小気泡発生装置に対して微小気泡発生のための気体を気体供給ラインを経由して供給する気体供給手段と、
を備え、
前記微小気泡発生装置は、
前記導入ライン及び前記返送ラインに接続された密閉容器と、
前記密閉容器内部に配設され、前記気体供給手段からの気体を導入する空洞部が内部に形成されると共に、盤面上に多数の気泡注入孔が形成された円盤部材と、
前記密閉容器外部に配設され、前記円盤部材を回転駆動するモータ手段と、
を有しており、
しかも、前記円盤部材の盤面上に形成された多数の気泡注入孔のピッチ間隔が所定長以上である、
ことを特徴とする液体への微小気泡注入システム。
【請求項2】
前記返送ラインに返送ポンプが配設されている、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項3】
前記導入ライン及び返送ラインと接続する前記密閉容器の導入口及び排出口は、その導入方向及び排出方向が、前記円盤部材を回転させる方向の旋回流を生じさせる方向となるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項4】
前記密閉容器は、天井部側の径が底部側の径よりも大きな略ラッパ形の円筒形状をなしており、前記導入口が天井部付近の側面に形成され、前記排出口が底部付近の側面に形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項5】
前記円盤部材に前記旋回流の抵抗を受ける回転翼部材を取り付けた、
ことを特徴とする請求項3記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項6】
前記液体中に粗大気泡が発生し、この粗大気泡が密閉容器の天井部付近に滞溜している場合に、この粗大気泡を密閉容器内部から排出して前記気体供給ラインに返流する粗大気泡排出手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項7】
前記密閉容器の天井部付近に粗大気泡滞溜室を設け、前記粗大気泡排出手段は、この粗大気泡滞溜室内に溜まった粗大気泡を排出するものである、
ことを特徴とする請求項6記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項8】
前記密閉容器内の液体中に発生した大きな気泡又は粗大気泡を消失するための超音波発生手段を、前記密閉容器の外側に取り付けた、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【請求項9】
前記円盤部材の盤面上、又は前記密閉容器の天井部内側の少なくともいずれかに、気泡破砕部材を形成した、
ことを特徴とする請求項1記載の液体への微小気泡注入システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−149041(P2010−149041A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329609(P2008−329609)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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