説明

液体コーティング装置

【課題】動力源を必要とせず、溶融金属が酸化してなるトップドロスを容易に除去することができる液体コーティング装置を提供することにある。
【解決手段】溶融金属Mに浸漬された後に引き上げられた帯板Sをワイパ11により当該帯板に付着する溶融金属の膜厚を調整して、前記帯板表面を処理する液体コーティング装置10であって、引き上げられる帯板Sを溶融金属Mの液面M1近傍にて包囲し、下端13aが溶融金属M内に配置される仕切具13と、ワイパ11の下方に配置される回収器15とを有し、回収器15により、ワイパ11にて除去された酸化物19やごみなどの不純物を含む溶融金属18を溶融金属Mの液面M1より上方にて回収し、仕切具13の外側に排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体コーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板の製造ラインには、圧延工程、酸洗工程、焼鈍工程等にて処理された後に、鋼板の表面にめっきを施すメッキ処理工程が設けられている。このメッキ処理工程では、メッキ浴に溜められた溶融金属に鋼板を連続的に浸漬させ、同メッキ浴内に設けられたシンクロールにより上向きに方向転換させて引き上げ、上昇時にワイピングすることで所定の膜厚にメッキ処理が施されている。
【0003】
ここで、メッキ処理工程では、溶融金属が酸化されてなり、当該溶融金属の表面に浮遊するトップドロスによるメッキ品質の劣化(メッキ不良)が生じることがあった。
【0004】
このようなメッキ不良を抑制するため、種々の技術が開発されており、例えば、特許文献1に記載の連続溶融金属めっき浴のトップドロス除去装置や、特許文献2に記載の連続金属めつき装置などがある。
【0005】
上記トップドロス除去装置は、溶融金属が溜められる溶融亜鉛めっき浴中に浸漬されたシンクロールを介して鉛直に立ち上がるストリップを浴面近傍で包囲して設けられ、下端部が内側に折り返されてなる底面壁と内側壁とが形成された浸漬トラフと、この浸漬トラフの底面壁に設けられた排出口に連結されたポンプとを有し、前記溶融金属が酸化してなるトップドロスを前記ポンプにより浸漬トラフの外側に排出している。
【0006】
上記連続金属めつき装置は、ワイピングノズルをめっき浴面上で覆い鋼帯通過スリットを上面に有する主シールボックスと、この主シールボックスを覆い、鋼帯通過スリットを上面に有する副シールボックスとを有し、前記主および前記副シールボックスを別個に昇降可能としている。前記溶融金属が酸化してなるトップドロスは、ワイパノズルからのワイピングガスの流れにより、前記主シールボックスの内側まで押しやられ、前記主シールボックスの下端を前記溶融金属の液面よりも上方に引き上げることにより、前記トップドロスを副シールボックスの内側まで押しやるようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−17214号公報
【特許文献2】特開平4−285148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したトップドロス除去装置では、浸漬トラフ内のトップドロスをポンプにより当該浸漬トラフの外へ排出して除去することができるものの、前記ポンプなどの動力源が必要となり、メッキ処理コストを増加させてしまう可能性があった。
【0009】
上述した連続溶融金属めつき装置では、主シールボックスの下端を溶融金属の液面よりも上方に持ち上げることで、ワイピングガスの流れにより、主シールボックス内の液面のトップドロスが主シールボックスの外側に配置される副シールボックスまで排出されるものの、トップドロスの排出が前記ワイピングガスの流れに依存し、ワイピングガスの流量が少ないとそれに応じて前記作用が小さくなり、主シールボックス内からのトップドロスの排出性が低下し、このトップドロスが鋼帯に付着し、メッキ不良を起こす可能性があった。また、主シールボックスを昇降可能にする動力源が必要となり、メッキ処理コストを増加させてしまう可能性があった。
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、動力源を必要とせず、溶融金属が酸化してなるトップドロスを容易に除去することができる液体コーティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する第1の発明に係る液体コーティング装置は、溶融金属に浸漬された後に引き上げられた帯板を膜厚調整手段によりワイピングして当該帯板に付着する溶融金属の膜厚を調整する液体コーティング装置であって、前記溶融金属の液面近傍にて、引き上げられる帯板近傍とそれ以外とを仕切り、下端が前記溶融金属内に配置される仕切具と、前記膜厚調整手段の下方に配置される回収器とを有し、前記回収器により、前記膜厚調整手段にて除去された不純物を含む余剰溶融金属を前記溶融金属の液面より上方にて回収し、前記仕切具の外側に排出するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第2の発明に係る液体コーティング装置は、溶融金属に浸漬された後に引き上げられた帯板を膜厚調整手段によりワイピングして当該帯板に付着する溶融金属の膜厚を調整する液体コーティング装置であって、前記溶融金属の液面近傍にて、引き上げられる帯板を包囲して、当該引き上げられる帯板近傍とそれ以外とを仕切り、前記膜厚調整手段の下方に配置されると共に、下端が前記溶融金属内に配置され、前記帯板が通板可能なスリットが形成された上面を有する仕切具と有し、前記仕切具内を不活性ガスあるいは非酸化性ガスで満たし、溶融金属の酸化を抑止すると共に、前記膜厚調整手段により除去された不純物を含む余剰溶融金属が前記仕切具内に浸入しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る液体コーティング装置によれば、ワイピングや大気との反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属が回収器により仕切具の外側に排出されるので、仕切具にて仕切られ、溶融金属から引き上げられる帯板近傍の液面に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板に付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る液体コーティング装置によれば、ワイピングや大気との反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属が仕切具の上面のスリットが小さいために、当該仕切具の外側を通って排出されるので、仕切具にて仕切られ、溶融金属から引き上げられる帯板近傍の液面に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板に付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る液体コーティング装置を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0016】
以下に、本発明の第1の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【0017】
本発明の第1の実施例に係る液体コーティング装置には、帯板が焼鈍炉(図示せず)から連続的に供給(搬送)される。この液体コーティング装置10は、図1に示すように、溶融亜鉛などの溶融金属Mを溜める液体浴(図示せず)と、溶融金属Mに浸漬された後、シンクロール(図示せず)を介して引き上げられた帯板Sを挟み対向して配置され、ガスGを噴射する膜厚調整手段である一対のワイパ11とを有し、ワイパ11から噴射される気体Gによりワイピングして引き上げられた帯板Sに付着した溶融金属Mの膜厚を調整する。この装置10は、溶融金属Mの液面M1近傍にて、溶融金属Mに浸漬された後に引き上げられる帯板S近傍と、それ以外とを仕切り、下端13aが溶融金属Mの液面M1より下方(溶融金属内)に配置される筒状部材12からなる仕切具12と、ワイパ11の下方、且つ仕切具12の上方に配置される回収器15とを有する。ただし、回収器15は、一対であり、帯板Sを挟んで配置される。
【0018】
ワイパ11は、必要に応じて接近離間するように配置される。
【0019】
回収器15は、回収部である回収口16aが形成された回収器本体16と、回収器本体16に連通し、仕切具12より外側に延在する管17とを有する。ただし、回収口16aは、管17の排出口17aよりも上方に配置される。
【0020】
回収口16aの帯板S側は、帯板Sの幅方向と略平行に延びる直線状に形成される。これにより、ワイパ11から噴射されるガスGや大気との反応によって発生した酸化物(トップドロス)19や吹付けられたごみなどの不純物、および前記ガスGにより掻き落とされた(除去された)溶融金属18をより確実に回収して仕切具12の外側に排出することができる。
【0021】
回収器本体16の回収口16aの帯板S側の先端部16bがR状に形成される。これにより、接触による帯板Sへの傷の付与を低減することができる。
【0022】
回収器本体16における帯板S側は、先端側から管17との連結部16c側にかけてテーパ状に形成される。これにより、液体潤滑によって、帯板Sと接触しにくくなる。
【0023】
回収器15は、仕切具12にて包囲された溶融金属内から排出された(引き上げられた)帯板Sを挟んで当該帯板Sの厚さや形状、および当該帯板Sに付着した溶融金属の膜厚に応じて接近離間するように対向して配置される。
【0024】
よって、上述した回収器15により、ワイパ11にて除去され帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物19やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属18を回収し、管17を通って、仕切具12の外側に排出することができる。余剰の溶融金属18が冷えて固まる場合にはヒータを設ける。
【0025】
したがって、本発明の第1の実施例に係る液体コーティング装置10によれば、ワイピングや大気との反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物19やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属18が回収器15により仕切具12の外側に排出されるので、仕切具12にて仕切られ(包囲され)、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置10自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器15を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【0026】
なお、上述した液体コーティング装置10では、仕切具12として筒状部材13を用いて説明したが、溶融金属の液面近傍にて、引き上げられる帯板近傍とそれ以外とを仕切り、下端が溶融金属内に配置される部材であれば良い。例えば溶融金属の液面における帯板近傍を包囲する仕切り板を液体浴内に配置した液体コーティング装置としても、上記液体コーティング装置10と同様な作用効果を奏する。
【実施例2】
【0027】
以下に、本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図2は、本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置は、上述した第1の実施例に係る液体コーティング装置が有する回収器の配置を変えたものであり、それ以外は同じである。第1の実施例に係る液体コーティング装置と同一部材には、同一符号を付記し、その説明を省略する。
【0028】
本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置20は、回収部である回収口26aが形成された回収器本体26と、回収器本体26に連通し、下方に延在し、溶融金属Mの液面M1より下方にて屈曲し仕切具12の側壁13の下端13aの下方を通ってこの外側まで延在する管27とを有する回収器25を具備する。
【0029】
ただし、回収器25の回収口26aは、管27の排出口27aよりも上方に配置される。
【0030】
回収口26aの帯板S側は、帯板Sの幅方向と略平行に延びる直線状に形成される。これにより、ワイパ11から噴射されるガスGや大気との反応によって発生した酸化物(トップドロス)19や吹付けられたごみなどの不純物、および前記ガスGにより掻き落とされた(除去された)溶融金属18をより確実に回収して仕切具12の外側に排出することができる。
【0031】
回収器本体26の回収口26aの帯板S側の先端部26bがR状に形成される。これにより、接触による帯板Sへ傷の付与を低減することができる。
【0032】
回収器本体26において、先端側から管27との連結部26c側にかけてテーパ状に形成される。これにより、液体潤滑によって、帯板Sと接触しにくくなる。
【0033】
回収器25は、仕切具12にて包囲された溶融金属内から排出された(引き上げられた)帯板Sを挟んで当該帯板Sの厚さや形状、および当該帯板Sに付着した溶融金属の膜厚に応じて接近離間するように対向して配置される。
【0034】
よって、上述した回収器25により、ワイパ11により除去された帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物19やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属18を回収し、管27を通って、仕切具12の外側に排出することができる。余剰の溶融金属18が冷えて固まる場合にはヒータを設ける。
【0035】
したがって、本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置20によれば、ワイピングや大気との反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物19やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属18が回収器25により仕切具12の外側に排出されるので、仕切具12にて仕切られ、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置20自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器25を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【実施例3】
【0036】
以下に、本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図3は、本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置の概略図であり、図4はその平面図である。
【0037】
本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置には、帯板が焼鈍炉(図示せず)から連続的に供給(搬送)される。この液体コーティング装置30は、図3,4に示すように、溶融亜鉛などの溶融金属Mを溜める液体浴(図示せず)と、溶融金属Mに浸漬された後、シンクロール(図示せず)を介して引き上げられた帯板Sを挟み対向して配置され、ガスGを噴射する膜厚調整手段である一対のワイパ31とを有し、ワイパ31から噴射されるガスGによりワイピングして引き上げられた帯板Sに付着した溶融金属の膜厚を調整する。この装置30は、溶融金属Mの液面M1近傍にて、溶融金属Mに浸漬された後に引き上げられる帯板Sを包囲して、当該引き上げられる帯板近傍と、それ以外とを仕切り、下端33aが溶融金属Mの液面M1より下方(溶融金属内)に配置される側壁33と、側壁の上端に接続され、帯板Sが通板可能なスリット34aが形成された上面である上板34とを有する仕切具(包囲具)32と、仕切具32内に窒素などの不活性ガスあるいは非酸化性ガスを送給するガス送給手段であるガス送給ポンプ(図示せず)が連結されたガス送給配管35とを有する。仕切具32は、ワイパ31の下方に配置される。ただし、ワイパ31による溶融金属の膜は、仕切具32のスリット34aを通過時よりも薄く形成される。
【0038】
ワイパ31は、必要に応じて接近離間するように配置される。
【0039】
仕切具32の上板34は、スリット34aから側壁33の上方に向かって下方に傾斜する。
【0040】
よって、ワイパ31により除去され、帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物(トップドロス)39やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属38を仕切具32の上板34の上部を通って、液体浴内の溶融金属内へ排出することができる。すなわち、仕切具32のスリット34aにより、ワイパ31から噴射されるガスGや大気との反応によって発生した酸化物39や吹付けられたごみなどの不純物、および前記ガスGにより掻き落とされた(除去された)溶融金属38が、仕切具32内に浸入しないようになる。なお、ガス送給配管35から仕切具32内に不活性ガスあるいは非酸化性ガスが送給されることにより、仕切具32内が不活性ガスあるいは非酸化性ガスで満たされ、仕切具32のスリット34aからのガスの侵入が抑制されると共に、溶融金属Mの酸化が抑制される。
【0041】
したがって、本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置30によれば、ワイピングや大気との反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物39やごみなどの不純物を含む余剰の溶融金属38が仕切具32の上板34により仕切具32内への浸入が抑制されるので、仕切具32にて仕切られ(包囲され)、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態を保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置30自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【実施例4】
【0042】
以下に、本発明の第4の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図5は、本発明の第4の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【0043】
本発明の第4の実施例に係る液体コーティング装置には、鋼板が焼鈍炉(図示せず)から連続的に供給(搬送)される。この液体コーティング装置40は、図5に示すように、溶融亜鉛などの溶融金属Mを溜める液体浴(図示せず)と、溶融金属Mに浸漬された後、シンクロール(図示せず)を介して引き上げられた帯板Sを挟み対向して配置され、不活性ガスあるいは非酸化性ガスG1を噴射する膜厚調整手段である一対のワイパ41とを有し、ワイパ41から噴射される不活性ガスあるいは非酸化性ガスG1によりワイピングして引き上げられた帯板Sに付着した溶融金属Mの膜厚を調整する。この装置40は、溶融金属Mの液面M1近傍にて、溶融金属Mに浸漬された後に引き上げられる帯板S近傍と、それ以外とを仕切り、下端43aが溶融金属Mの液面M1より下方(溶融金属内)に配置される側壁43と、帯板Sが通板可能なスリット44aが形成された上面である上板44を有する仕切具(包囲具)42と、ワイパ41の下方、且つ溶融金属Mの液面より上方に配置される回収器45とを備える。ただし、回収器45は、一対であり、帯板Sを挟んで配置される。
【0044】
ワイパ41は、必要に応じて接近離間するように配置される。なお、ワイパ41から噴射される不活性ガスあるいは非酸化性ガスG1で仕切具42内が満たされ、溶融金属Mの酸化が抑止される。
【0045】
回収器45は、回収部である回収口46aが形成された回収器本体46と、回収器本体46に連通し、仕切具42より外側に延在し、屈曲して下方に延在する管47とを有する。ただし、回収口46aは、管47の排出口47aよりも上方に配置される。
【0046】
回収口46aの帯板S側は、帯板Sの幅方向と略平行に延びる直線状に形成される。これにより、スリット44aから侵入したガスとの反応によって発生した酸化物(トップドロス)49や侵入したごみなどの不純物、およびワイパ41から噴射された不活性ガスあるいは非酸化性ガスG1により掻き落とされた(除去された)溶融金属48やはねかえし(スプラッシュ)50をより確実に回収して仕切具42の外側に排出することができる。
【0047】
回収器本体46の回収口46aの帯板S側の先端部46bがR状に形成される。これにより、接触による帯板Sへの傷の付与を低減することができる。
【0048】
回収器本体46における帯板S側は、先端側から管47との連結部46c側にかけてテーパ状に形成される。これにより、液体潤滑によって、帯板Sと接触しにくくなる。
【0049】
回収器45は、ワイパ41と仕切具42との間に配置されると共に、仕切具42に包囲された溶融金属内から排出された(引き上げられた)帯板Sを挟んで当該帯板Sの厚さや形状、および当該帯板Sに付着した溶融金属の膜厚に応じて接近離間するように対向して配置される。
【0050】
よって、上述した回収器45により、ワイパ41により除去され帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物49やごみなどの不純物やはねかえし50を含む余剰の溶融金属48を回収し、管47を通って、仕切具42の外側に排出することができる。余剰の溶融金属48が冷えて固まる場合にはヒータを設ける。
【0051】
したがって、本発明の第4の実施例に係る液体コーティング装置40によれば、スリット44aから侵入したガスとの反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物49やごみなどの不純物およびはねかえし50を含む余剰の溶融金属48が回収器45により仕切具42の外側に排出されるので、仕切具42にて仕切られ(包囲され)、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置40自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器45を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【実施例5】
【0052】
以下に、本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図6は、本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置は、上述した第4の実施例に係る液体コーティング装置が有する回収器の配置を変えたものであり、それ以外は同じである。第4の実施例に係る液体コーティング装置と同一部材には、同一符号を付記し、その説明を省略する。
【0053】
本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置60は、回収部である回収口66aが形成された回収器本体66と、回収器本体66に連通し、下方に延在し、溶融金属Mの液面M1より下方にて屈曲し仕切具42の側壁43の下端43aの下方を通ってこの外側まで延在する管67とを有する回収器65を具備する。
【0054】
ただし、回収器65の回収口66aは、管67の排出口67aよりも上方に配置される。
【0055】
回収口66aの帯板S側は、帯板Sの幅方向と略平行に延びる直線状に形成される。これにより、スリット44aから侵入したガスとの反応によって発生した酸化物(トップドロス)49や侵入したごみなどの不純物、およびワイパ41からの噴射された不活性ガスG1により掻き落とされた(除去された)溶融金属48やはねかえし(スプラッシュ)50をより確実に回収して仕切具42の外側に排出することができる。
【0056】
回収器本体66の回収口66aの帯板S側の先端部66bがR状に形成される。これにより、接触による帯板Sへ傷の付与を低減することができる。
【0057】
回収器本体66において、先端側から管67との連結部66c側にかけてテーパ状に形成される。これにより、液体潤滑によって、帯板Sと接触しにくくなる。
【0058】
回収器65は、仕切具42にて包囲される溶融金属Mから排出された(引き上げられた)帯板Sを挟んで当該帯板Sの厚さや形状、および当該帯板Sに付着した溶融金属の膜厚に応じて接近離間するように対向して配置される。
【0059】
よって、上述した回収器65により、ワイパ41により除去された帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物49やごみなどの不純物やはねかえし50を含む余剰の溶融金属48を回収し、管67を通って、仕切具42の外側に排出することができる。余剰の溶融金属48が冷えて固まる場合にはヒータを設ける。
【0060】
したがって、本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置60によれば、スリット44aから侵入したガスとの反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物49やごみなどの不純物およびはねかえし50を含む余剰の溶融金属48が回収器65により仕切具42の外側に排出されるので、仕切具42にて仕切られ(包囲され)、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態に保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置60自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器65を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【実施例6】
【0061】
以下に、本発明の第6の実施例に係る液体コーティング装置につき、図面を用いて説明する。
図7は、本発明の第6の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【0062】
本発明の第6の実施例に係る液体コーティング装置には、鋼板が焼鈍炉(図示せず)から連続的に供給(搬送)される。この液体コーティング装置70は、図7に示すように、溶融亜鉛などの溶融金属Mを溜める液体浴(図示せず)と、溶融金属Mに浸漬された後、シンクロール(図示せず)を介して引き上げられた帯板Sを挟み対向して配置され、不活性ガスG1を噴射する膜厚調整手段である一対のワイパ71とを有し、ワイパ71から噴射される不活性ガスG1によりワイピングして引き上げられた帯板Sに付着した溶融金属Mの膜厚を調整する。この装置70は、溶融金属Mの液面M1近傍にて、溶融金属Mに浸漬された後に引き上げられる帯板S近傍と、それ以外とを仕切り、下端73aが溶融金属Mの液面M1より下方(溶融金属内)に配置される側壁73と、帯板Sが通過可能なスリット74aが形成された上面である上板74を有する仕切具(包囲具)72と、ワイパ71の下方、且つ溶融金属Mの液面M1より上方に配置される回収器75とを備える。ただし、回収器75は、一対であり、帯板Sを挟んで配置される。
また、上板74とワイパ71の下面はガスタイトにシールされており、不活性ガス(ワイピングガス)G1は図示しない排気口を通し、図示しないバルブにより仕切具の内部圧力を正圧に保ちながら排気されている。
【0063】
ワイパ71は、必要に応じて接近離間するように配置される。ワイパ71におけるノズル先端の下部は、テーパ状に形成される。
【0064】
回収器75は、回収部である回収口76aが形成された回収器本体76と、回収器本体76に連通し、下方に延在し屈曲して仕切具72より外側に延在する管77とを有する。ただし、回収口76aは、管77の排出口77aよりも上方に配置される。
【0065】
管77の排出口77aには、セラミックスなどからなるメッシュ状のフィルタ81が取り付けられる。このフィルタ81にて、溶融金属が酸化してなる酸化物(トップドロス)および不純物との合金(ボトムドロス)79やごみなどの固形物を捕集することができる。よって、フィルタ81を設けることで、酸化物79や前記固形物の回収作業の負担を軽減することができる。また、溶融金属M内に沈んでしまうボトムドロスも回収することができ、作業効率を向上させることができる。
【0066】
回収口76aの帯板S側は、帯板Sの幅方向と略平行に延びる直線状に形成される。これにより、ワイパ71の隙間から侵入したガスとの反応によって発生した酸化物(トップドロス)および不純物との合金(ボトムドロス)79や侵入したごみなどの不純物、およびワイパ71から噴射された不活性ガスG1により掻き落とされた(除去された)溶融金属78やはねかえし(スプラッシュ)80をより確実に回収して仕切具72の外側に排出することができる。
【0067】
回収器本体76の回収口76aの帯板S側の先端部76bがR状に形成される。これにより、接触による帯板Sへの傷の付与を低減することができる。
【0068】
回収器本体76における帯板S側は、先端側から管77との連結部76c側にかけてテーパ状に形成される。これにより、液体潤滑によって、帯板Sと接触しにくくなる。
【0069】
回収器75は、ワイパ71と仕切具72との間に配置されると共に、仕切具72にて包囲された溶融金属内から排出された(引き上げられた)帯板Sを挟んで当該帯板Sの厚さや形状、および当該帯板Sに付着した溶融金属の膜厚に応じて接近離間するように対向して配置される。
【0070】
よって、上述した回収器75により、ワイパ71により除去され帯板Sに沿って流れ落ちてくる、酸化物79やごみなどの不純物やはねかえし80を含む余剰の溶融金属78を回収し、管77を通って、仕切具72の外側に排出することができる。余剰の溶融金属78が冷えて固まる場合にはヒータを設ける。
【0071】
したがって、本発明の第6の実施例に係る液体コーティング装置70によれば、ワイパ71の隙間から侵入したガスとの反応によって発生、または、侵入・吹付けられた酸化物79やごみなどの不純物およびはねかえし80を含む余剰の溶融金属78が回収器75により仕切具72の外側に排出されるので、仕切具72にて仕切られ(包囲され)、溶融金属Mから引き上げられる帯板S近傍の液面M1に前記不純物などが近接せず、同箇所を前記不純物の無い清浄な状態を保つことができる。その結果、前記不純物が帯板Sに付着することによる品質の劣化を抑制することができる。また、液体コーティング装置70自体が簡易な構造であり、回収の為の動力が不要なので、運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。さらに、ワイピング後の戻り経路の途中に回収器75を設ける為、回収の為の動力が不要で運転コストや設備コストおよび製造コストの増加を抑制することができる。
【0072】
なお、上記では、フィルタ81が排出口77aに取り付けられた管77を有する液体コーティング装置70を用いて説明したが、このフィルタを上述した第2,第4,第5の実施例に係る液体コーティング装置が有する回収器の管の排出口に設けるようにしても良い。このような液体コーティング装置であっても、上記第6の実施例に係る液体コーティング装置70と同様な作用効果を奏する。また、逆に第6の実施例に係る液体コーティング装置70において、上記フィルタ81を設けなくても、上述した第3,第4,第5の実施例に係る液体コーティング装置30,40,60と同様な作用効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、液体コーティング装置に利用することが可能であり、特に連続的に供給される鋼板に溶融金属を処理する液体コーティング装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る液体コーティング装置の平面図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【図6】本発明の第5の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【図7】本発明の第6の実施例に係る液体コーティング装置の概略図である。
【符号の説明】
【0075】
10 液体コーティング装置
11 ワイパ
12 仕切具
13 筒状部材
15 回収器
20 液体コーティング装置
25 回収器
30 液体コーティング装置
31 ワイパ
32 仕切具
35 ガス送給配管
40 液体コーティング装置
41 ワイパ
42 仕切具
45 回収器
60 液体コーティング装置
65 回収器
70 液体コーティング装置
71 ワイパ
72 仕切具
75 回収器
81 フィルタ
S 帯板
M 溶融金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属に浸漬された後に引き上げられた帯板を膜厚調整手段によりワイピングして当該帯板に付着する溶融金属の膜厚を調整する液体コーティング装置であって、
前記溶融金属の液面近傍にて、引き上げられる帯板近傍とそれ以外とを仕切り、下端が前記溶融金属内に配置される仕切具と、
前記膜厚調整手段の下方に配置される回収器とを有し、
前記回収器により、前記膜厚調整手段にて除去された不純物を含む余剰溶融金属を前記溶融金属の液面より上方にて回収し、前記仕切具の外側に排出するようにした
ことを特徴とする液体コーティング装置。
【請求項2】
溶融金属に浸漬された後に引き上げられた帯板を膜厚調整手段によりワイピングして当該帯板に付着する溶融金属の膜厚を調整する液体コーティング装置であって、
前記溶融金属の液面近傍にて、引き上げられる帯板を包囲して、当該引き上げられる帯板近傍とそれ以外とを仕切り、前記膜厚調整手段の下方に配置されると共に、下端が前記溶融金属内に配置され、前記帯板が通板可能なスリットが形成された上面を有する仕切具とを有し、
前記仕切具内を不活性ガスあるいは非酸化性ガスで満たし、溶融金属の酸化を抑止すると共に、前記膜厚調整手段により除去された不純物を含む余剰溶融金属が前記仕切具内に浸入しないようにした
ことを特徴とする液体コーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−38177(P2008−38177A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211689(P2006−211689)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(502251784)三菱日立製鉄機械株式会社 (130)
【Fターム(参考)】