説明

液体供給装置およびレジスト現像装置

【課題】レジスト現像装置などの液体供給装置では、実際に基体に供給される液体の温度変動が、処理の安定性を阻害する要因になっていた。
【解決手段】本発明のレジスト現像装置1は、恒温状態に制御された現像液11を貯留する密閉型の貯留部4と、この貯留部4に貯留された現像液11を供給すべき被処理基板6を保持する保持部8と、貯留部4の内部から当該貯留部4の外部へと導出するように配管されるとともに、当該導出部分が保持部8に臨む位置まで配管され、この保持部8に保持された被処理基板6に向けて貯留部内の現像液11を供給する供給管5と、この供給管5の配管途中に付属して設けられた付属部材としての開閉弁15とを備え、この開閉弁15が貯留部4の内部に配置された構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置およびレジスト現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある物質に液体を供給する装置は、これまでに数多く知られている。たとえば、リソグラフィの分野で用いられる液体供給装置の一例としてレジスト現像装置が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。レジスト現像装置は、露光済みのレジスト膜に現像液を供給することにより、レジスト膜の不要部分を現像液で溶解する装置である。
【0003】
近年においては、半導体デバイスの高集積化などに伴って、現像の解像度向上が強く望まれている。現像液でレジスト膜を現像(以下、「レジスト現像」とも記す)する場合は、先述のように現像液でレジスト膜の不要部分を除去するが、現像中にパターンのエッジ部分がダレを起こす場合がある。その結果、パターンのエッジ部分の角(かど)が形状的に崩れ、解像度の低下を招いてしまう。
【0004】
そこで、レジスト現像の解像度向上を図る技術として、常温よりも低い「低温の現像液」を用いてレジスト膜を現像する方法(以下、「低温現像法」と記す)が知られている(たとえば、特許文献2を参照)。低温の現像液を用いてレジスト膜を現像すると、現像中にパターンのエッジ部分がダレを起こしにくくなる。その結果、パターンのエッジ部分の形状的な崩れが抑制され、解像度の向上が図られる。ちなみに、本書で記述する「常温」とは、「15℃〜25℃の範囲内の温度」をいう。したがって、低温現像法で使用する現像液の温度は、少なくとも15℃未満となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−154641号公報
【特許文献2】特開平07−142322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、たとえばナノインプリントの分野において、ナノレベルの微細な凹凸パターンの形成が要求されている。こうした微細な凹凸パターンを高精度に形成するには、低温現像法のように、レジストの種類によって現像液の温度を所望所定の温度に設定して用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、上述のように現像液の温度を所望所定の温度に設定することに起因して、以下のような不具合が発生している。
一般に、レジスト現像装置においては、現像液を貯留部に貯留して一定(所望)の温度に制御し、その貯留部から現像液供給用の配管(以下、「供給管」という)を通して基体(被処理基板等)に現像液を供給する仕組みになっている。そうした場合、貯留部に貯留された現像液を一定の温度に制御しても、そこから供給管を通して基体に供給される現像液の温度に変動が生じると、同一(一つ)の基体内では現像のムラを招き、異なる基体間では現像のバラツキを招いてしまう。
【0008】
このため、供給管をジャケットで覆う構成が採用されている。ジャケットは、供給管を二重管構造やそれよりも多層の多重管構造で覆うことにより、供給管に対する外気温の影響を低減している。ただし、貯留部から基体の近傍に至る供給管の配管途中には、たとえば、現像液の供給を開始したり停止したりする開閉弁などが付設されている。そうすると、供給管の長さ方向において、開閉弁等が取り付けられる部分は、それ以外の部分に比べて、供給管の外側に大きく突出し、かつその突出部分が凹凸を伴った複雑な構造・形状を呈することになる。
【0009】
そうした場合、開閉弁等の取付部位を上記のジャケットで覆うことが非常に困難になる。その理由は主に2つある。第1の理由は、複雑な凹凸形状を呈する開閉弁等の外形に合わせて、ジャケットの断面形状を形成することがきわめて困難なためである。第2の理由は、供給管と開閉弁等をすべて包含するようにジャケットを構築するとなると、設備が非常に大がかりになって設備コストがかさむためである。
【0010】
こうした背景から、これまでは開閉弁等の取付部位を除いた部分をジャケットで覆うようにしている。また、ジャケットで覆えない配管部分には、外気温の影響で適切に温度制御されない現像液が残留するため、その現像液の影響をなるべく抑えるために、開閉弁等の取付部位を供給管の終端部の近傍に設定している。供給管の終端部は、そこから基体に向けて現像液を供給(吐出)するための吐出部となっている。しかしながら、このように開閉弁等の取付部位を設定しても、温度制御されない現像液の残留量がゼロになるわけではないため、その影響は少なからず残ることになる。
【0011】
本発明の主たる目的は、基体に対して実際に供給される液体の温度変動を抑えて、液体の供給を伴う基体の処理を安定的に行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、
恒温状態に制御された液体を貯留する密閉型の貯留部と、
前記貯留部に貯留された液体を供給すべき基体を保持する保持部と、
前記貯留部の内部から当該貯留部の外部へと導出するように配管されるとともに、当該導出部分が前記保持部に臨む位置まで配管され、当該保持部に保持された前記基体に向けて前記貯留部内の液体を供給する供給管と、
前記供給管の配管途中に当該供給管に付属して設けられた付属部材とを備え、
前記付属部材は、前記貯留部の内部に配置されている
ことを特徴とする液体供給装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、
前記貯留部は、当該貯留部に貯留された液体の液面上に密閉空間を有し、
前記付属部材は、前記貯留部の前記密閉空間に配置されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の液体供給装置である。
【0014】
本発明の第3の態様は、
前記付属部材が、継手部材および弁部材のうちの少なくとも一方である
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載の液体供給装置である。
【0015】
本発明の第4の態様は、
前記供給管の一部に温度調整部が設けられている
ことを特徴とする上記第1、第2または第3の態様に記載の液体供給装置である。
【0016】
本発明の第5の態様は、
被処理基板に現像液を供給して現像処理するレジスト現像装置であって、
恒温状態に制御された現像液を貯留する密閉型の貯留部と、
前記被処理基板を保持する保持部と、
前記貯留部の内部から当該貯留部の外部へと導出するように配管されるとともに、当該導出部分が前記保持部に臨む位置まで配管され、当該保持部に保持された前記被処理基板に向けて前記貯留部内の現像液を供給する供給管と、
前記供給管の配管途中に当該供給管に付属して設けられた付属部材とを備え、
前記付属部材は、前記貯留部の内部に配置されている
ことを特徴とするレジスト現像装置である。
【0017】
本発明の第6の態様は、
前記現像液の供給対象となる被処理基板が、ナノインプリント用のモールド基板である
ことを特徴とする上記第5の態様に記載のレジスト現像装置である。
【0018】
本発明の第7の態様は、
前記貯留部に貯留された現像液を0℃以下の低温に制御する液温制御手段を備える
ことを特徴とする上記第5または第6の態様に記載のレジスト現像装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基体に対して実際に供給される液体の温度変動を抑えて、液体の供給を伴う基体の処理を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】液体供給装置の一例となるレジスト現像装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】供給管を覆うジャケットの構造例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置の第1変形例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置の第2変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る液体供給装置を、たとえばフォトリソグラフィの分野で用いられるレジスト現像装置に適用した場合の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
ただし、本発明に係る液体供給装置は、ここで挙げるレジスト現像装置に限らず、他の分野において、基体を対象に液体を供給する液体供給装置全般に広く適用することが可能である。たとえば、基体の装飾や保護を目的として、液状の塗料を噴射し供給する塗装装置にも適用可能である。また、液体を供給すべき対象となる「基体」については、特に構造的に限定されるものではなく、さまざまな構造の物体が「基体」となりうる。たとえば、液体供給装置がレジスト現像装置である場合を想定すると、「露光済みのレジスト膜を有する基板」が「基体」に該当するものとなる。
【0022】
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.液体供給装置の一例としてのレジスト現像装置の構成
2.レジスト現像装置の動作
3.実施の形態の効果
4.変形例等
【0023】
<1.レジスト現像装置の構成>
図1は液体供給装置の一例となるレジスト現像装置の全体構成を示す概略図である。図示したレジスト現像装置1は、大きくは、現像液供給部2と現像処理部3とを備えた構成となっている。現像液供給部2は、現像処理部3での現像処理に必要となる現像液を供給する部分である。現像液供給部2は、少なくとも、現像液を貯留する貯留部4と、現像液を供給(輸送)する供給管5と、を備える。現像処理部3は、被処理基板6に現像処理を行う部分である。現像処理部3は、少なくとも、現像処理のための空間を有する処理室7と、この処理室7で被処理基板6を保持する保持部8と、この保持部8を駆動する駆動部9と、を備える。以下、現像液供給部2と現像処理部3の構成について、さらに詳しく説明する。
【0024】
(現像液供給部の構成)
貯留部4は、詳しくは図示しないが、たとえば、上部を開口した槽本体と、この槽本体の上部開口を閉塞する蓋体とを備え、この蓋体によって槽本体の内部を密閉し得る構造になっている。つまり、貯留部4は、密閉型の槽構造になっている。貯留部4には、適量の現像液11が収容(貯留)されている。現像液11は、想定している設定温度で液体のものが用いられる。貯留部4内において、現像液11の液面よりも上方の空間は、上述した蓋体によって気密状態に密閉された空間(以下、「密閉空間」と記す)12になっている。
【0025】
貯留部4に貯留された現像液11は、図示しない液温制御手段によって恒温状態に制御されるようになっている。液温制御手段の具体的な形態としては、たとえば図示はしないが、貯留部4内の現像液11をポンプで循環させるとともに、その循環途中で冷却器により現像液11を冷却することにより、現像液11の温度を予め決められた温度(以下、「設定温度」)に維持するといった形態が考えられる。いずれの形態を採用するにしても、貯留部4内の現像液11の温度は、設定温度(たとえば、−10℃)を中心値とした許容範囲内(たとえば、±0.2℃以内)におさまるように制御される。
【0026】
供給管5は、貯留部4に貯留された現像液11を被処理基板6に向けて供給するものである。被処理基板6は、液体(本形態では現像液)を供給すべき基体の一例として、現像処理部3の処理室7にセットされるものである。現像処理の対象となる被処理基板6は、露光済みのレジスト膜を有する基板となる。また、被処理基板6の一例として、ナノインプリント用のモールド基板を挙げることができる。ナノインプリント用のモールド基板(以下、単に「モールド基板」とも言う)は、ナノインプリント法によってパターンの転写を行う場合に、その元型となるマスターモールドの基材となる基板である。
【0027】
供給管5は、たとえば、断面円形の細長い中空の管を用いて構成されている。供給管5の一端部は取込部13となっており、同他端部は吐出部14となっている。供給管5の取込部13は、現像液11を管内に取り込むために開口している。供給管5の吐出部14は、被処理基板6に向けて現像液11を吐出するために開口している。吐出部14は、単なる一つの開口になっていてもよいし、複数の小さな開口が設けられたシャワーヘッドのような構造になっていてもよい。また、吐出部14は、現像液11を霧状に噴出するスプレーのような構造になっていてもよい。
【0028】
供給管5の取込部13は、現像液供給部2の貯留部4内に配置されている。また、供給管5の吐出部14は、現像処理部3の処理室11内に配置されている。そして、供給管5は、取込部13を最上流部とし、吐出部14を最下流部として、それらの間に現像液11の流路を形成するように配管されている。具体的には、供給管5は、貯留部4の内部から外部へと導出するように配管されている。さらに、貯留部4の外部における供給管5の導出部分は、現像処理部3の外壁部分を貫通して処理室7内に進出し、かつ、処理室7内で保持部8に臨む位置まで配管されている。保持部8に臨む位置とは、供給管5の吐出部14から吐出させた現像液11を、保持部8に保持された被処理基板6に供給しうる位置をいう。図例においては、供給管5の最下流に位置する吐出部14が、保持部8に保持される被処理基板6の直上に配置されている。
【0029】
また、供給管5の配管途中には、当該供給管5に付属する付属部材の一例として、開閉弁15とポンプ16が設けられている。開閉弁15は、貯留部4の内部に配置され、さらに詳しくは、貯留部4内の密閉空間12に配置されている。ポンプ16は、貯留部4の外部に配置され、さらに詳しくは、貯留部4の近傍に配置されている。
【0030】
開閉弁15とポンプ16は、いずれも供給管5における現像液11の流れを制御するための部材に該当するものである。すなわち、開閉弁15は、供給管5を通して現像液11を供給する場合に、供給管5の管路を開状態とすることにより、現像液11の流れを許容するとともに、供給管5の管路を閉状態とすることにより、現像液11の流れを阻止するものである。開閉弁15によって現像液11の流れを許容すると、供給管5を通して現像液11の供給が開始されることになる。また、開閉弁15によって現像液11の流れを阻止すると、供給管5を通した現像液11の供給が停止することになる。したがって、開閉弁15は、現像液11の供給を開始または停止する機能を果たす部材となる。
【0031】
ポンプ16は、当該ポンプ16を実際に駆動した場合に、供給管5に沿った現像液11の流れを生成する動力を発生するものである。ポンプ16は、供給管5を通して現像液11を供給するにあたって、現像液11の吸引および移送のための圧力を現像液11に付与する。すなわち、ポンプ16は、貯留部4に貯留された現像液11を供給管5内に吸引するとともに、吸引した現像液11を供給管5に沿って移送する駆動源となる。このため、ポンプ16の駆動を停止した状態(オフ状態)では、供給管5の内部に現像液11の流れが形成されないが、ポンプ16の駆動を開始または継続した状態(オン状態)では、供給管5の内部に現像液11の流れが形成されることになる。ポンプ16の駆動(オン、オフ)状態は、たとえば、図示しないレジスト現像装置の主制御部により制御可能となっている。
【0032】
貯留部4の外部に導出された供給管5は、ジャケット17によって覆われている。ジャケット17は、温度調整部の一例として、供給管5の一部に設けられている。ジャケット17は、供給管5とその周囲の外気(大気)との間に介在して温度調整機能をなすものであり、さらに好ましくは、供給管5の周囲に冷却液を流してこれを循環させることにより、供給管5内の現像液11を貯留部4内と同じ温度(設定温度)に保つ機能(保冷機能)を有するものである。ジャケット17は、たとえば、供給管5を中心とした多重管構造(二重管構造を含む)になっている。
【0033】
一例を挙げると、ジャケット17は、図2に示すように、供給管5を包含する三重管構造になっている。供給管5は、最も内側に位置する管となっており、その外側に供給管5よりも大径の第2の管18が配置され、さらにその外側(つまり、最も外側)に第2の管18よりも大径の第3の管19が配置されている。この三重管構造のジャケット17において、供給管5の外周面と第2の管18の内周面との間には、そこに冷却層18aを形成すべく、たとえば冷却液が循環するようになっている。また、第2の管18の外周面と第3の管19の内周面との間には、そこに断熱層19aを形成すべく、たとえば空気が循環するようになっている。
【0034】
ジャケット17は、供給管5の長さ方向において、貯留部4から現像処理部3の処理室7に至る配管部分と、処理室7内で保持部8に臨む位置に至る配管部分とに連続するかたちで、供給管5を覆う状態に設けられている。また、ジャケット17は、上記の貯留部4から現像処理部3の処理室7に至る配管部分で、ポンプ16の取付部位を除いて、その上流側および下流側の供給管5を覆う状態に設けられている。
【0035】
なお、貯留部4内に配管された供給管5については、現像液11に浸漬させた配管部分を含めて、供給管5をジャケット17で覆っていないが、この部分の供給管5をジャケット17で覆うようにしてもかまわない。その場合は、前述した理由により開閉弁15の取付部位をジャケット17で覆うことは困難になるため、その取付部位を除いた配管部分をジャケット17で覆うようにすればよい。
【0036】
(現像処理部の構成)
現像処理部3は、上述したように処理室7、保持部8および駆動部9を備えるものである。このうち、保持部8は、被処理基板6を固定状態に支持するテーブル21と、このテーブル21に連結されたスピンドル軸22とを用いて構成されている。テーブル21は、たとえば、被処理基板6が円板であるとすると、これと相似の平面視円形に形成されている。図例ではテーブル21の外径が被処理基板6の外径よりも大きくなっているが、両者の大小関係はこれに限らず、互いに同じ外径であってもよいし、図例とは逆の大小関係であってもよい。また、テーブル21の平面視形状は円形に限らず、矩形を含む多角形であってもよい。
【0037】
テーブル21は、少なくとも被処理基板6と対向する側の面(図例ではテーブル上面)が水平に配置されている。テーブル21は、そのテーブル上面に被処理基板6を載置した状態で、この被処理基板6を下面側から支持するものである。また、テーブル21は、真空吸着方式で被処理基板6を固定し得る構成になっている。具体的には、テーブル21はその上面に複数の吸引孔(または吸引溝)を有し、これらの吸引孔を通して被処理基板6の下面に真空引きによる吸引力を作用させることにより、被処理基板6を吸着(真空吸着)し得る構成になっている。ただし、テーブル21による支持構造は、ここで挙げた真空吸着方式に限らず、他の方式(たとえば、ピン等を用いた突き当て方式など)で被処理基板6を固定状態に支持する構成であってもよい。
【0038】
スピンドル軸22は、駆動部9の駆動力をもって回転駆動される軸である。スピンドル軸22は、たとえば、ボルト等の締結手段を用いて、テーブル21の下面側の中心部に連結されている。このため、スピンドル軸22が回転すると、これと一体にテーブル21が回転する。スピンドル軸22は、箱状の壁で区画された処理室7の底壁を貫通する状態で配置されている。また、処理室7の底壁におけるスピンドル軸22の貫通部分には、シール部材23が設けられている。シール部材23は、スピンドル軸22の回転を許容しつつ、スピンドル軸22の貫通部分から処理室7外への液体(現像液11を含む)の漏出を防止するものである。駆動部9は、処理室7とは壁で仕切られた下部室24に配置されている。駆動部9は、たとえば図示はしないが、回転の駆動源となるモータと、このモータの駆動力をスピンドル軸22に伝達する駆動力伝達機構(歯車列等)とを用いて構成されている。
【0039】
なお、図1には示していないが、レジスト現像装置1は、付加的な機能部として、リンス液供給部を備えている。リンス液供給部は、現像処理を終えた被処理基板6にリンス液を供給してリンス処理するための機能部である。
【0040】
<2.レジスト現像装置の動作>
次に、上記構成からなるレジスト現像装置1の動作について説明する。レジスト現像装置1の動作は、上述した主制御部からの制御指令に基づいて行われるものである。
【0041】
まず、現像液供給部2については、貯留部4に貯留された現像液11の温度を液温制御手段(不図示)によって制御することにより、貯留部4内の現像液11を設定温度(たとえば、−10℃)に維持する。一方、現像処理部3については、保持部8のテーブル21上に被処理基板6を載せた後、真空吸着等により被処理基板6を固定状態に支持する。次に、駆動部9を駆動してスピンドル軸22を回転させる。これにより、被処理基板6を支持しているテーブル21がスピンドル軸22と一体に回転した状態となる。
【0042】
このような状態のもとで、貯留部4内の開閉弁15を開状態とし、かつポンプ16を駆動することにより、貯留部4内の現像液11を供給管5内に取り込むとともに、この供給管5を通して現像液11を現像処理部3側に送り出す。そうすると、供給管5の最下流に位置する吐出部14から現像液11が吐出する。このとき、保持部8のテーブル21で被処理基板6を水平に支持し、かつ駆動部9の駆動によってテーブル21を回転させておけば、供給管5の吐出部14から吐出した現像液11が被処理基板6全体に供給される。その結果、被処理基板6の表面(上面)に形成された、露光済みのレジスト膜の可溶部が、現像液11との化学反応によって溶解・除去される。
【0043】
これにより、処理室7内で被処理基板6の現像処理がなされる。ちなみに、被処理基板6に対するレジスト膜の成膜および露光に際して、ネガ型のレジストを用いてレジスト膜を形成した場合は、その後の露光処理で露光されなかった部分が可溶部となる。これに対して、ポジ型のレジストを用いてレジスト膜を形成した場合は、その後の露光処理で露光された部分が可溶部となる。したがって、現像処理を行うと、次のようなレジストパターンが得られる。すなわち、ネガ型のレジストを用いた場合は、露光パターンを反転したかたちのレジストパターンが得られる。また、ポジ型のレジストを用いた場合は、露光パターンに整合するかたちのレジストパターンが得られる。
【0044】
現像処理を終えた後は、開閉弁15を開状態から閉状態に切り替えることにより、現像液11の供給を停止し、その後、必要に応じてポンプ16の駆動を停止しておく。次に、図示しないリンス液供給部によって被処理基板6にリンス液を供給してリンス処理を行う。次に、リンス処理を終えたらリンス液の供給を停止してスピン乾燥を行った後、駆動部9の駆動を停止する。これにより、スピンドル軸22とテーブル21の回転が停止する。
【0045】
その後、次の被処理基板6を現像する場合は、現像済みの被処理基板6を保持部8のテーブル21から取り外し、これに替えて、未現像の被処理基板6を上記同様に保持部8で保持する。以降は、上記同様の手順で被処理基板6の現像処理、リンス処理および乾燥処理(スピン乾燥)を行う。
【0046】
上述したレジスト現像装置1の動作において、n枚目(nは自然数)の被処理基板6の現像処理を終えてから、n+1枚目の被処理基板6の現像処理を開始するまでの間は、現像液11の供給が開閉弁15によって停止した状態に維持される。このため、その間は供給管5の内部に現像液11が残留する。そして、n+1枚目の被処理基板6の現像処理を開始するときに、それまで供給管5内に残留していた現像液11が、供給管5の吐出部14から被処理基板6に向けて供給される。
【0047】
その場合、供給管5に残留する現像液11の温度は、ジャケット17によって貯留部4内の現像液11と同等の温度に保たれる。このため、現像処理の再開によって供給管5の吐出部14から吐出する現像液11の温度は、貯留部4内の現像液11と同等の温度となる。したがって、n+1枚目の被処理基板6の現像処理を開始するにあたって、この被処理基板6に供給される現像液11の温度変動(特に、初期の温度変動)が抑えられる。
【0048】
また、貯留部4内に配管された供給管5やこれに付設した開閉弁15は、ジャケット17で覆っていないものの、それらの付属部材が配置された密閉空間12は、現像液11の温度に近い温度に維持される。たとえば、貯留部4内の現像液11の温度が−10℃になるように制御されている場合は、密閉空間12が−7℃程度の温度に維持される。その理由は、恒温状態に制御される現像液11の液面が密閉空間12に面し、その液面に触れることで密閉空間12の空気が冷却されるためである。したがって、供給管5や開閉弁15は、密閉空間12と同様に低い温度に保たれる。このため、供給管5や開閉弁15をジャケット17で覆わなくても、それらの付属部材が供給管5内の現像液11の温度変動に与える影響はわずかである。
【0049】
<3.実施の形態の効果>
本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置によれば、次のような効果が得られる。
【0050】
すなわち、レジスト現像装置1の構成として、密閉型の貯留部4を採用し、この貯留部4の内部でかつ供給管5の配管途中に開閉弁15を付設しているため、貯留部4の外部に引き出された供給管5の配管途中に開閉弁15を設ける必要がない。このため、開閉弁15の存在に邪魔されることなく、貯留部4の外部で供給管5全体をジャケット17で覆うことができる。
【0051】
また、貯留部4の外部で供給管5内に現像液11が残留しても、当該残留現像液の温度をジャケット17によって貯留部4内の現像液11と同等の温度に維持することができる。これにより、従来の装置構成(貯留部の外部で供給管の配管途中に開閉弁を取り付け、その取付部位を除いた部分をジャケットで覆った構成)に比較して、供給管5から被処理基板6に供給される現像液11の温度変動を抑えることができる。このため、たとえば、製造ロット等の切り替えや段取り替え等において、一つ前のロットの最終の被処理基板6を現像処理してから、次のロットの最初の被処理基板6を現像処理するまでの時間が長くなっても、ジャケット17の被覆によって低温に維持された現像液11を、当該最初の被処理基板6に供給することができる。したがって、製造ロットの変わり目などで、現像処理の再開により被処理基板6に供給される現像液11の初期の温度変動を効果的に抑制することができる。
【0052】
その結果、現像液11の温度変動に起因した現像時の溶解ムラを抑えて、高い解像度でパターン(レジストパターン)を形成することができる。この効果は、たとえば、レジスト現像装置1のメンテナンス等のために現像処理を一旦停止し、その後、メンテナンス等を終えて現像処理を再開する場合や、これ以外の様々な要因で、前回の現像処理を終えてから今回の現像処理を再開するまでに、予め決められた時間以上が経過した場合にも、同様に得られる。
【0053】
また特に、被処理基板6がナノインプリント用のモールド基板である場合は、被処理基板6に供給される現像液11の温度変動が小さくなることにより、微細な凹凸パターンを高精度に形成することが可能となる。その理由は、ナノインプリント用のモールド基板に凹凸パターンを形成する場合、現像液の温度を低温に設定して現像処理を行うことによって、パターンのエッジ部分における形状的な崩れによる現像の解像度の低下を防ぐことができるためである。特に0℃以下に設定して現像処理を行った場合、その効果は顕著に現れる。そのような現状において、上記のレジスト現像装置1の構成を採用すれば、現像液11の温度を0℃以下の低温に維持し、この現像液11を供給管5の配管途中で温度変動させずに被処理基板6に供給することができる。このため、ナノインプリント用のモールド基板を被処理基板6として現像する場合に、ナノレベルの微細な凹凸パターンの形成を実現することが可能となる。
【0054】
また、貯留部4に貯留された現像液11の液面上を密閉空間12とし、この密閉空間12に開閉弁15を配置しているため、貯留部4内の現像液11が有する低温エネルギーを利用して開閉弁15を冷却することができる。これにより、貯留部4に付属する液温制御手段(不図示)によって与えられる低温エネルギーを効率的に利用して、低温現像法におけるレジスト現像の高解像度化を図ることができる。
【0055】
<4.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。以下、具体的な変形例について説明する。
【0056】
(第1変形例)
図3は本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置の第1変形例を示す概略図である。この第1変形例においては、上記実施の形態に係るレジスト現像装置の構成と比較して、貯留部4内における開閉弁15の配置が異なっている。すなわち、上記実施の形態においては、貯留部4内の密閉空間12に開閉弁15を配置したが、第1変形例においては、貯留部4に貯留された現像液11の液中に開閉弁15を浸漬させて配置している。この第1変形例のように貯留部4内に開閉弁15を配置した場合でも、上記実施の形態と同様の効果が得られる。なお、貯留部4内における開閉弁15の配置状態としては、当該開閉弁15の一部(上部)が密閉空間12に配置され、かつ同他部(下部)が現像液11の液中に浸漬して配置された状態であってもよい。
【0057】
(第2変形例)
図4は本発明の実施の形態に係るレジスト現像装置の第2変形例を示す概略図である。この第2変形例においては、上記実施の形態に係るレジスト現像装置の構成と比較して、ポンプ16の配置が異なっている。すなわち、上記実施の形態においては、貯留部4の外部にポンプ16を配置したが、第2変形例においては、貯留部4内に開閉弁15と一緒にポンプ16を配置している。具体的には、貯留部4の密閉空間12内に開閉弁15とポンプ16を配置している。この第2変形例のように貯留部4内に開閉弁15とポンプ16を配置した場合は、貯留部4の外部の配管途中にポンプ16を付設する必要がなくなるため、ポンプ16の存在に邪魔されることなく、貯留部4の外部で供給管5全体をジャケット17で覆うことができる。このため、上記実施の形態に比べて、ジャケット17の構築が容易になる。
【0058】
さらに、上記第1変形例と第2変形例との組み合わせとして、図示はしないが、貯留部4に貯留された現像液11の液中に開閉弁15とポンプ16の両方を浸漬させて配置してもよい。また、開閉弁15およびポンプ16のうち、一方を現像液11の液中に浸漬させて配置し、他方を密閉空間12内に配置した構成を採用してもよい。
【0059】
また、供給管5に付属して設けられる付属部材としては、上述した開閉弁15やポンプ16に限らず、供給管5に付設されて現像液11(液体)の流れを制御するための部材であればよい。具体的には、たとえば、開閉弁以外の弁部材(流量制御弁など)や、T型継手などの継手部材を、それぞれ付属部材として貯留部4内に配置してもよい。これらの付属部材は、いずれも貯留部の外部の配管部分に付設すると温度変動要因になりうる部材となる。このため、当該付属部材を貯留部4内に配置すれば、所望の効果が得られる。
【0060】
また、本発明に係る液体供給装置は、上記の現像液11のように一定温度に冷却された液体に限らず、一定温度に加熱された液体、あるいは常温の範囲内で一定温度になるように制御された液体を、それぞれに対象とする基体に供給する液体供給装置に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…レジスト現像装置
2…現像液供給部
3…現像処理部
4…貯留部
5…供給管
6…被処理基板
7…処理室
8…保持部
11…現像液
12…密閉空間
15…開閉弁
16…ポンプ
17…ジャケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温状態に制御された液体を貯留する密閉型の貯留部と、
前記貯留部に貯留された液体を供給すべき基体を保持する保持部と、
前記貯留部の内部から当該貯留部の外部へと導出するように配管されるとともに、当該導出部分が前記保持部に臨む位置まで配管され、当該保持部に保持された前記基体に向けて前記貯留部内の液体を供給する供給管と、
前記供給管の配管途中に当該供給管に付属して設けられた付属部材とを備え、
前記付属部材は、前記貯留部の内部に配置されている
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記貯留部は、当該貯留部に貯留された液体の液面上に密閉空間を有し、
前記付属部材は、前記貯留部の前記密閉空間に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記付属部材が、継手部材および弁部材のうちの少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記供給管の一部に温度調整部が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の液体供給装置。
【請求項5】
被処理基板に現像液を供給して現像処理するレジスト現像装置であって、
恒温状態に制御された現像液を貯留する密閉型の貯留部と、
前記被処理基板を保持する保持部と、
前記貯留部の内部から当該貯留部の外部へと導出するように配管されるとともに、当該導出部分が前記保持部に臨む位置まで配管され、当該保持部に保持された前記被処理基板に向けて前記貯留部内の現像液を供給する供給管と、
前記供給管の配管途中に当該供給管に付属して設けられた付属部材とを備え、
前記付属部材は、前記貯留部の内部に配置されている
ことを特徴とするレジスト現像装置。
【請求項6】
前記現像液の供給対象となる被処理基板が、ナノインプリント用のモールド基板である
ことを特徴とする請求項5に記載のレジスト現像装置。
【請求項7】
前記貯留部に貯留された現像液を0℃以下の低温に制御する液温制御手段を備える
ことを特徴とする請求項5または6に記載のレジスト現像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−114273(P2012−114273A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262422(P2010−262422)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】