説明

液体充填装置

【課題】グリッパと充填バルブとの間のシール性を向上するとともに、耐久性に優れる液体充填装置を提供することを目的とする。
【解決手段】充填バルブ80とグリッパ70との間のシール性を確保するため、グリッパ70の突起93c、94cの外周面を、全体として上方に行くにしたがい外径が縮小するテーパ形状とし、充填バルブ80の外筒84の内周面を、上方に行くにしたがい内径が縮小するテーパ形状とする。さらに、突起93c、94cの外周面に、上下に間隔を隔てて、周方向に連続する突条112を複数形成することで、外筒84と突起93c、94cの合わせ面にラビリンス構造部を形成する。またグリッパ70を構成する一方のグリップアームのグリップ片と、他方のグリップアームのグリップ片との合わせ部分においても、ラビリンス構造としたりシール部材を設ける等して、シール性を向上させるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料等の液体をペットボトル等の容器に充填する液体充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水等の液体をペットボトルやガラス瓶、ボトル缶等の容器に充填する装置として、回転式充填装置が用いられている。この回転式充填装置は、回転板の外周部に、容器の首部を保持するグリッパと、製品液を吐出する充填バルブとが設けられ、回転板とともにグリッパと充填バルブとが回転するようになっている。無菌環境下ではない、一般的な回転式充填機では回転板を回転させながら、グリッパで保持した容器の口を充填バルブに押し付け、充填バルブから吐出した製品液を容器内に充填する。そして、容器への液体の充填が終了した後、容器の口を充填バルブから離し,キャッパ(打栓機)により容器へのキャップの装着が行われる。
【0003】
ところで、飲料水等の場合、雑菌等の容器内への混入を防ぐことが必須であり、このため、クリーンルーム内で、薬剤や熱水などを使って容器やキャップを殺菌し、一方製品液もUHT(超高温瞬間殺菌=130〜150℃で1〜3秒)で殺菌したものを充填してキャップ装着するといった一連の工程を行ういわゆる無菌充填方式や、充填する液体を高温に加熱しておき、搬送工程でキャッピングされた容器全体を横又は上下倒立させた状態に転倒させて、容器内の液体未接触部位の殺菌をこの液体自体の熱によって行う、高温充填方式が採用されている。
【0004】
従来、ガス入り飲料を製品液(主に2〜10℃の低温充填)として充填を行う装置は、グリッパで保持した容器の口部に充填バルブを押し付けて、容器内部に連通する空間を密閉状態とし、製品液の充填を行う。またグリッパではなく容器を容器受け台に載せ、受け台が昇降することで充填バルブに押し付けて充填する方法もある。
ここで、製品液がガス入り飲料である場合には、充填時にガス漏れによる製品液の発泡現象を抑える必要がある。充填時に製品液が発泡すると、泡の吹き出し等によって製品液が容器やグリッパに付着して不衛生な状況になったり、充填量の不足等によって充填量の精度に悪影響が出たりすることがあるからである。だからといって発泡しないように製品液を充填するには、充填速度を低下させなければならず、これでは生産性が低下する。
また、容器内に空気中の酸素が混入することを防止する必要があるため、充填前に容器内の雰囲気を炭酸ガスや窒素等の不活性ガス等に置換することも行われる。
ここで近年、ガス入り飲料を無菌環境下で充填するシステムが要望され始めており、容器口部と充填バルブを非接触状態で飲料を充填する方法が必要となってきた。このため、容器を保持したグリッパと充填バルブとの間に弾性体からなるシール部材を設け、この部分のシール性を高めることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2856057号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シール部材は、グリッパとシール部材とに高速で繰り返し挟み込まれるため、耐久性に課題がある。繰り返し挟み込まれることでシール部材が摩耗したり損傷したりして、容器内への異物混入に繋がる可能性もあり、品質管理面で好ましくない。
また、容器を保持するグリッパにおいても、容器を両側からグリップする一対のグリップアームどうしの合わせ部分において、シール性を確保する必要がある。
さらに、製品液の発泡を抑えるという観点においても、一層のシール性の向上が望まれている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、グリッパと充填バルブとの間のシール性を向上するとともに、容器の口部と充填バルブが非接触の状態であっても耐久性に優れる液体充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明の液体充填装置は、回転体の外周に複数設けられ、容器を保持するグリッパと、回転体の外周にグリッパのそれぞれに対向して設けられ、回転体の回転中に、グリッパに保持された容器内へ液体を充填する充填バルブと、を備える。グリッパは、開閉可能で、閉状態のときに容器の首部の全周を保持する金属製の一対のグリッパ本体と、一対のグリッパ本体の上面に突出して設けられ、グリッパ本体で保持された容器の首部の外周側を囲う一対の樹脂製のリング状部材と、を備えるとともに、充填バルブは、リング状部材に押し付けられる金属製の筒状部を有する。そして、リング状部材の外周面と筒状部の内周面は、それぞれ上方に行くにしたがいその径が縮小するテーパ形状とされ、かつリング状部材と筒状部との間にラビリンス構造部が形成されていることを特徴とする。
リング状部材の外周面と筒状部の内周面をテーパ形状とし、リング状部材と筒状部との間にラビリンス構造部を形成することで、従来のシール部材を設けた場合に比較し、高いシール性を確保できる。しかも、充填バルブの筒状部が押し付けられるグリッパ側のリング状部材を、筒状部を形成する金属よりも柔らかい樹脂製とすることで、この部分におけるシール性を確保しつつ、高い耐久性を確保することができる。
ここで、リング状部材と筒状部は、ラビリンス構造部において容器の開口から離間した側で互いに強く接触するようにするのが好ましい。リング状部材と筒状部とが繰り返し接触することで万が一異物が発生した場合にも、異物は、ラビリンス構造部において容器の開口から離間した側で発生することになり、容器内に混入しにくい。
【0008】
ラビリンス構造部は、いかなる構造でも良いが、例えば、リング状部材の外周面と筒状部の内周面の少なくとも一方に、周方向に連続する突条が上下に間隔を隔てて複数本形成されたものとすることができる。
【0009】
また、グリッパと充填バルブの間だけでなく、一対のグリッパ本体どうしの合わせ部分においてもシール性を確保する必要がある。このため、一対のグリッパ本体どうしの合わせ部分をラビリンス構造としたり、シール部材を設けるのが有効である。シール部材を設ける場合、シール部材を一対のグリッパ本体の一方に設け、充填時に充填バルブから作用する内圧により、グリッパ本体の他方に押し付けられるようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グリッパと充填バルブとの間のシール性を向上させることができ、その耐久性も優れたものすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における無菌充填方式の飲料充填機の全体構成を説明するための図である。図1に示す飲料充填機は、主に無菌充填方式に適用されるものである。
図1に示すように、飲料充填機は、容器100を殺菌する殺菌装置(液供給装置)20、容器100をすすぐすすぎ装置(すすぎ水供給装置)30、容器100に製品液を充填する充填装置(液体充填装置)40、製品液が充填された容器100にキャップを装着するキャッパ(図示省略)を主に備えている。
これら殺菌装置20、すすぎ装置30、充填装置40、キャッパ間には、搬送スターホイール60等が設けられ、これによって、容器100の受け渡し等が行われるようになっている。
このような飲料充填機は、その全体が所定以上のクリーン度に維持されたクリーンチャンバー内に格納される。
【0012】
図2に示すように、充填装置40は、回転体41(図1参照)の外周部に、供給された容器100を保持するグリッパ70と、グリッパ70で保持した容器100に製品液を充填する充填バルブ80とが、上下に対向するよう複数組配置されている。
充填装置40には、前工程で殺菌・すすぎの完了した空の容器100が、搬送スターホイール60等の容器搬送手段から一本ずつ受け渡される。充填装置40は、回転体41を回転させながら、受け渡された容器100をグリッパ70で保持する。そして、グリッパ70で保持した容器100を後工程側の搬送スターホイール60に受け渡すまでの間に、容器100の上方に位置する充填バルブ80から容器100内への製品液の充填を行うようになっている。
【0013】
さて、グリッパ70は、以下のような構成を有している。
図3に示すように、グリッパ70は容器100のネックリング100aの全周を包囲してグリップし、図示しない昇降手段により所定寸法だけ上昇して充填バルブ80に押し付けられる。
グリッパ70は、回転体41側に固定されたグリッパ本体91と、グリッパ本体91に固定された本体上板92と、グリッパ本体91および本体上板92に支持された一対のグリップアーム93、94とを備えている。
グリップアーム93、94は、先端部にそれぞれ半円形のグリップ片93a、94aを備えている。これらグリップアーム93、94がグリッパ本体91と本体上板92との間に固定された共通軸95に回転可能に軸支されることで、グリップ片93a、94aを開閉できるようになっている。
グリップ片93a、94aは、略半円形状を有し、グリップアーム93、94が閉のとき、グリップ片93a、94aはネックリング100aの全周を囲むようになっている。グリップ片93a、94aの内周面には、容器100から外周側に突出したネックリング100aに対応した形状の溝93d、94dが形成されており、この溝93d、94dにネックリング100aを収容することで、容器100を支持するようになっている。グリップ片93aと94aの上面には、グリップアーム93,94が閉のときリング状の突部を形成するように半円周状の突起93c、94cが設けられている。
【0014】
両グリップアーム93、94のグリップ片93a、94aと反対側のグリップアーム端部93b、94bに軸孔が設けられ、この軸孔にリンクピン98、98が軸支されている。このリンクピン98、98には、上下二枚一対のリンクアーム96、97が軸支されている。
【0015】
グリッパ本体91に設けられたブロック91c、91dに、グリッパ本体91の中心線上に沿った水平貫通孔91b、91aが明けられ、この水平貫通孔91b、91aに移動軸101が軸方向に沿って移動可能に挿入されている。移動軸101の端部101aに明けられた軸孔にリンク軸99が軸支されている。このリンク軸99には、移動軸101を挟んだ上下両側に、リンクアーム96、97がそれぞれ軸支されている。
また、移動軸101とグリッパ本体91の中側のブロック91dとの間に、移動軸101を反グリップ片側へ押すように付勢された圧縮ばね102が設置されている。
【0016】
移動軸101は、アクチュエータ103によって、その軸線方向に進退駆動される。図3(a)に示した状態からアクチュエータ103が作動すると、アクチュエータ103のロッド103aが移動軸101を押す。移動軸101が移動すると、リンク軸99も移動軸101と同じ距離だけ移動し、一対のリンクアーム96、97を回動させる。これによって、一対のグリップ片93a、94aが開き、容器100を受け入れることができる状態となる(図3(b)の状態)。
アクチュエータ103の駆動力が解除されると、移動軸101が圧縮ばね102の圧力により元の位置に向けて戻り、一対のリンクアーム96、97が回動して図3(a)に示した状態となり、グリップ片93a、94aが容器100を把持する。このとき、圧縮ばね102の力がグリップ片93a、94aのグリップ力に変換される。
【0017】
上記のようなグリッパ70は、図示しない昇降機構によって昇降し、充填バルブ80に接近・離間できるようになっている。
【0018】
図2に示したように、充填バルブ80は、図示しない液タンクから供給される製品液の流路となる液充填通路81を備えている。
液充填通路81には、液充填通路81を閉塞できる液バルブ82が設けられている。この液バルブ82は、図示しないエアシリンダ等により昇降し、液充填通路81の開放・閉塞を切り替える。
充填バルブ80の先端部には、ノズル本体83が形成されている。ノズル本体83の中央部には、前記の液充填通路81の下端を形成する内筒81aが下方に延びて設けられている。また、ノズル本体83の外周部には、下方に向けて延びる外筒(筒状部)84が形成されている。外筒84は、グリッパ70の突起93c、94cに押し付けられ、後に詳述する構造により、充填バルブ80とグリッパ70との間のシール性を確保するようになっている。
【0019】
ノズル本体83には、炭酸ガスを供給するガス通路85a、充填時のカウンタ圧用炭酸ガスを供給するガス通路85b、ガスリターン通路85cが連結されている。ガス通路85a、85bは、液充填通路81内に連通するよう連結され、ガスリターン通路85cは、外筒84の内方の空間に連通するように連結されている。
これらガス通路85a、85b、ガスリターン通路85cは、図示しない電磁弁によってその開閉が制御され、ガス通路85aによるガス入り飲料の炭酸ガスの圧力より低圧の窒素ガス又は炭酸ガスの容器100への導入、ガス通路85bによる容器100への充填前の容器100へのカウンタガスの送り込み、ガスリターン通路85cによる窒素ガス又は炭酸ガスの排出を適宜のタイミングで行う。
【0020】
さて、上記グリッパ70と充填バルブ80は、前工程から受け渡された空の容器100をグリッパ70で保持した後、グリッパ70を図示しない昇降機構で上昇させ、グリッパ70の突起93c、94cを、充填バルブ80の外筒84に押し付けた状態で製品液の供給を行う。
このとき、充填バルブ80とグリッパ70との間のシール性を確保するため、以下のような構成を用いるのが好ましい。
図3に示したグリッパ70において、グリッパ本体91、本体上板92、グリップアーム93、94等は、ステンレス等の金属で形成し、半円周状の突起93c、94cのみを樹脂により形成する。また、充填バルブ80は、ステンレス等の金属で形成する。
グリッパ70のグリッパ本体91、本体上板92、グリップアーム93、94等を、ステンレス等の金属で形成するのは、充填バルブ80と相互に押し付けるときの力に抗する強度を確保するためである。突起93c、94cを樹脂で形成するのは、充填バルブ80に直接接触する部分を、充填バルブ80よりも柔らかい材料で形成することでシール性を確保しつつ、ゴム系材料よりも高い耐久性を確保するためである。
【0021】
ここで、図4に示すように、突起93c、94cは、樹脂性の半円状リング(リング状部材)110により形成し、この半円状リング110をグリップアーム93、94に対し、適宜の嵌め込み構造やボルト109等を用いた固定構造によって取り付ければよい。なお、ボルト109は、サニタリ性の向上を図るため、グリップアーム93、94の下面側からねじ込むようにするのが好ましい。
また、半円状リング110とグリップアーム93、94の間には、パッキン111A、111Bを介在させ、これらの部材間におけるシール性と、グリッパ70とグリッパ70で保持する容器100のネックリング100aとの間のシール性を確保するのが好ましい。
【0022】
充填バルブ80とグリッパ70との間におけるシール性を向上させるため、図5〜図8に示すようなラビリンス構造部を有した構成を採用するのが好ましい。
図5に示す例では、突起93c、94cの外周面を、全体として上方に行くにしたがい外径が縮小するテーパ形状とし、充填バルブ80の外筒84の内周面を、上方に行くにしたがい内径が縮小するテーパ形状とする。さらに、突起93c、94cの外周面に、上下に間隔を隔てて、周方向に連続する突条112を複数形成することで、外筒84と突起93c、94cの合わせ面にラビリンス構造部を形成する。なお、突条112は、螺旋状に形成しても良い。
このように外筒84と突起93c、94cの合わせ部分にラビリンス構造部を形成することで、この部分におけるシール性を向上させることができる。
【0023】
なお、複数の突条112と外筒84は、その合わせ部分の下方、つまり下方に位置する突条112において、より強く接触するようにするのが好ましい。これは、外筒84と突条112とが多数回繰り返して接触することで、突条112の摩耗等によって万が一異物が発生した場合にも、下方の突条112から発生した異物はラビリンス構造部を通らないと容器100の口部まで到達しないため、異物混入の可能性を抑えることができるからである。
【0024】
図6に示す例は、外筒84の下端部のグリッパ70に対する接触面と、突起93c、94cの上端部の充填バルブ80に対する接触面に、それぞれ互いに噛み合う凹凸113、114を形成し、ラビリンス構造部を実現したものである。
これによっても、充填バルブ80とグリッパ70との間におけるシール性を向上させることができる。
この場合も、下方、つまり容器100の口部から、より遠くに位置する凹凸114において、外筒84とグリッパ70とがより強く接触するようにするのが好ましい。
【0025】
図7に示す例は、図5の例と図6の例を組み合わせ、外筒84の外周面に突条112を形成しつつ、外筒84の下端部のグリッパ70に対する接触面と、突起93c、94cの上端部の充填バルブ80に対する接触面に、それぞれ互いに噛み合う凹凸113、114を形成したものである。
これにより、充填バルブ80とグリッパ70との間におけるシール性はさらに向上する。
【0026】
図8に示す例は、突起93c、94cのベース115に、上方に突出する突条116を形成し、外筒84の下端部のグリッパ70に対する接触面において、突条116により外筒84の下端部の外周部を囲む構造を採用したものである。
このような構造においては、外筒84の下端部においてラビリンス構造部が実現されるとともに、充填バルブ80とグリッパ70との間から製品液が漏れた場合には、突起93c、94cと突条116との間に製品液が溜まり、いわば液封された状態となる。これによっても充填バルブ80とグリッパ70との間におけるシール性は向上する。
【0027】
また、充填バルブ80とグリッパ70との間だけでなく、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの合わせ部分においても、シール性を向上させる必要がある。
このため、図9に示す例では、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの合わせ部分において、互いに噛み合う凹凸120、121を形成し、ここにラビリンス構造部を実現した。
【0028】
図10〜図12に示すものは、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの間のシール性を、グリップ片93aに設けられた半円状リング(リング状部材)110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング(リング状部材)110Aとの合わせ部分で確保する例である。
図10に示す例は、半円状リング110Aと半円状リング110Bのいずれか一方(図10の例では半円状リング110A)に、上下方向に延びる断面L字状のシール部材122を設けたものである。図10(b)に示すように、シール部材122は、その基部122aが半円状リング110Aに固定され、先端部122bが他方の半円状リング110B側に向けて、半円状リング110Aの端面110sよりも突出している。シール部材122は、ゴム系材料等の可撓性を有した材料で形成されている。
これにより、図10(c)に示すように、容器100を保持するため、一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとが閉じられると、半円状リング110Aに設けられたシール部材122の先端部122bは、他方の半円状リング110Bの内側に位置した状態となる。そして、充填時に雰囲気ガスによる内圧を受けると、シール部材122が撓み、先端部122bが半円状リング110Bの内周面に押し付けられて密着するようになっている。このときの先端部122bの半円状リング110Bの内周面への密着性を高めるため、先端部122bには、凸部122cを設けるのも有効である。
その結果、グリップ片93aに設けられた半円状リング110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング110Aとの合わせ部分でシール性が確保され、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの間のシール性を確保できる。
【0029】
図11に示す例は、グリップ片93aに設けられた半円状リング110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング110Aとの合わせ部分に、上下方向に連続する溝123、124を形成し、図11(b)に示すように、一方の溝123にゴム系材料等の可撓性を有した材料で形成されたシール部材124を設けたものである。シール部材124は、その基部124aが溝123内において半円状リング110Aに固定され、先端部124bが他方の半円状リング110B側に向けて延び、半円状リング110A、110Bの合わせ部分に位置するよう設けられている。
これにより、図11(c)に示すように、容器100を保持するため、一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとが閉じられ、充填時に雰囲気ガスによる内圧を受けると、シール部材124が撓み、先端部124bが半円状リング110A、110Bの合わせ部分に押し付けられて密着するようになっている。このときの先端部124bの半円状リング110A、110Bの合わせ部分への密着性を高めるため、先端部124bは、少なくとも半円状リング110A、110Bの合わせ部分に密着する側の外周形状が断面円弧状となるように形成するのが好ましい。
その結果、グリップ片93aに設けられた半円状リング110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング110Aとの合わせ部分でシール性が確保され、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの間のシール性を確保できる。
【0030】
図12に示す例は、グリップ片93aに設けられた半円状リング110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング110Aとの合わせ部分に、互いに噛み合う凸部125、凹部126を形成したものである。
これら凸部125、凹部126は、図12(b)に示すように半円状リング110A、110B自体に形成しても良いし、図12(c)に示すように、凸部125側を、可撓性を有したゴム系材料等で形成したシール部材127を半円状リング110Aに取り付けることで形成しても良い。
これによっても、グリップ片93aに設けられた半円状リング110Bと、グリップ片94aに設けられた半円状リング110Aとの合わせ部分でシール性が確保され、グリッパ70を構成する一方のグリップアーム93のグリップ片93aと、他方のグリップアーム94のグリップ片94aとの間のシール性を確保できる。
【0031】
なお、図5〜図8に示した構成と、図9〜図12に示した構成は、適宜に組み合わせて用いることができる。
また、飲料充填機の各部の構成については、いかなる構成としても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態における無菌充填方式の飲料充填機の全体構成を示す概略図である。
【図2】充填装置に備えられたグリッパと充填バルブを示す断面図である。
【図3】グリッパを示す図であり、(a)は閉じた状態、(b)は開いた状態、(c)は(a)のF−F断面図である。
【図4】グリッパを充填バルブに押し付けた状態を示す断面図である。
【図5】グリッパのリング状部材と充填バルブの筒状部との間にラビリンス構造部を形成した例を示す断面図である。
【図6】グリッパのリング状部材と充填バルブの筒状部との間にラビリンス構造部を形成した他の例を示す断面図である。
【図7】グリッパのリング状部材と充填バルブの筒状部との間にラビリンス構造部を形成したさらに例を示す断面図である。
【図8】グリッパのリング状部材と充填バルブの筒状部との間にラビリンス構造部を形成したさらに例を示す断面図である。
【図9】グリップ片の先端部をラビリンス構造とした例を示す図である。
【図10】半円状リングどうしの合わせ部分でシール性を確保するための例を示す図である。
【図11】半円状リングどうしの合わせ部分でシール性を確保するための他の例を示す図である。
【図12】半円状リングどうしの合わせ部分でシール性を確保するためのさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
40…充填装置(液体充填装置)、41…回転体、70…グリッパ、80…充填バルブ、84…外筒(筒状部)、91…グリッパ本体、93、94…グリップアーム、93a、94a…グリップ片、93c、94c…突起、100…容器、100a…ネックリング、110、110A、110B…半円状リング(リング状部材)、112…突条、122、124…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の外周に複数設けられ、容器を保持するグリッパと、
前記回転体の外周に前記グリッパのそれぞれに対向して設けられ、前記回転体の回転中に、前記グリッパに保持された前記容器内へ液体を充填する充填バルブと、を備えた液体充填装置であって、
前記グリッパは、
開閉可能で、閉状態のときに前記容器の首部の全周を保持する金属製の一対のグリッパ本体と、
一対の前記グリッパ本体の上面に突出して設けられ、前記グリッパ本体で保持された前記容器の首部の外周側を囲う一対の樹脂製のリング状部材と、を備えるとともに、
前記充填バルブは、前記リング状部材に押し付けられる金属製の筒状部を有し、
前記リング状部材の外周面と前記筒状部の内周面は、それぞれ上方に行くにしたがいその径が縮小するテーパ形状とされ、かつ前記リング状部材と前記筒状部との間にラビリンス構造部が形成されていることを特徴とする液体充填装置。
【請求項2】
前記リング状部材と前記筒状部は、前記ラビリンス構造部において前記容器の開口から離間した側で互いに強く接触することを特徴とする請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項3】
前記リング状部材の外周面と前記筒状部の内周面の少なくとも一方に、周方向に連続する突条が上下に間隔を隔てて複数本形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体充填装置。
【請求項4】
一対の前記グリッパ本体の一方に、充填時に前記充填バルブから作用する内圧により、前記グリッパ本体の他方に押し付けられるシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−35318(P2009−35318A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202840(P2007−202840)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】