説明

液体吐出ノズルヘッドおよびその製造方法

【課題】 簡易なプロセスで、再現性がよい液体吐出ノズルヘッドを提供する。
【解決手段】 PETシート33上にポリイミドを塗布等して、ポリイミド膜32を形成し、このポリイミド膜32に対して、ドライエッチングして所望の形状の孔34を形成する(図3(A))。この際、ポリイミド膜32のエッチング形状は、垂直ではなく、エッチング方向に対して、テーパ形状を持つようにする。シリコン基板31には、ドライエッチングを用いて、所望の寸法および形状を有する孔35を形成しておく(図3(B))。
以上のようにして準備されたシリコン基板31とPETシート33上に形成されたポリイミド膜32とを、図3(A)と図3(B)とにおいて、矢印で示すように、貼り合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体吐出ノズルヘッドおよびその製造方法に関し、特に、インクジェットプリンタ等に使用される、液体吐出ノズルヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンタのノズルヘッドがたとえば、特開平9−226120号公報(特許文献1)、特開2001−260361号公報(特許文献2)、および特開2004−25862号公報(特許文献3)に記載されている。
【0003】
特許文献1は、インクジェットノズルとして、その孔径が吐出方向に向かって狭くなっているノズルを示している。図6は、特許文献1に開示されたインクジェットヘッドの全体構造を示す図である。図6を参照して、従来のインクジェットノズル111は、インクを保持する圧力室113からのインクをインクジェットノズルとは別の部材で構成された導通部112を介して外部へ吐出する。インクジェットノズル111は、その孔径が吐出方向に向かって狭くなっているテーパ状である。
【0004】
特許文献2および3は、吐出口に向かってその孔径が狭くなっている漏斗型のインクジェットヘッドのノズル部分を開示している。図7は、特許文献3に開示されたインクジェットノズルの製造工程の要部を示す図である。図7を参照して、従来の吐出口に向かってその孔径が狭くなっている漏斗型のインクジェットヘッドのノズル部分の製造方法は、まず、基板121の上に保護膜122を形成し、その上に、レジストパターン123を形成し、このレジストパターン123をマスクとして、保護膜122に開口部124形成する(図7(A))。次いで、開口部124を通じて、露出された基板121を等方性エッチングして半球状の上部ノズル124を形成する(図7(B))。
【0005】
次いで、上部開口部124を通じて露出された上部ノズル124の下部面を異方性エッチングして、基板121を貫通する下部ノズル125を形成する(図7(C))。最後に、保護膜122の上にインクカートリッジ126を設けて(図7(D)),インクジェットヘッドを完成する。
【特許文献1】特開平9−226120号公報(図3、図4等、およびそれらに関する記載)
【特許文献2】特開2001−260361号公報(図1およびそれに関する記載)
【特許文献3】特開2004−25862号公報(図5〜図8およびそれらに関する記載)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインクジェットノズルは上記のように構成されていた。吐出方向に向かって狭くなるテーパ型のノズルをエッチングで形成する場合、テーパ角に再現性がなく、基板ごと、および基板内で、テーパ角にばらつきが生じやすく、形状制御が難しいという問題があった。また、漏斗型のノズルは、上記問題に加えて、前述のように多くの工程を必要とし、製造プロセスが複雑であるという問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、簡易なプロセスで、再現性よく所望の形状が得られる液体吐出ノズルヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる液体吐出ノズルヘッドは、第1材料および第2材料により構成される。第1材料は第1開口部を有し、第2材料は、液体を外部へ吐出するための、第1開口部につながり、第1開口部より小さい、第2開口部を有する。
【0009】
第2開口部は、液体の吐出方向に向かって狭くなっていてもよいし、液体の吐出方向に向かって広くなっていてもよいし、液体の吐出方向に向かって同一開口寸法であってもよい。
【0010】
また、ノズルヘッドの吐出特性向上のためには、ノズルヘッドの厚みを薄くするほどよいが、薄膜化に伴って応力による基板の反りが問題となってくる。このため、第2材料は、第1材料に対して低応力の材料であることが好ましい。
【0011】
この発明の一つの実施の形態においては、第1材料はシリコン基板、ステンレス、銅、ガラス、ポリイミド、セラミック、金属または樹脂であり、第2材料はポリイミド、永久レジスト、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または有機材料である。
【0012】
この発明の他の局面は、第1材料および第2材料により構成される液体吐出ノズルヘッドの製造方法に関する。液体吐出ノズルヘッドの製造方法は、第1材料に第1開口部を形成するステップと、第2材料に、液体を外部に吐出するための、第1開口部につながり、第1開口部より小さい、第2開口部を形成するステップとを含み、第1開口部を形成するステップと第2開口部を形成するステップとは別々に行なわれる。
【0013】
第1開口部と第2開口部とを形成後、第1材料と第2材料とを張り合わせてもよいし、第2材料の第2開口部を形成した後、第1材料と第2材料とを張り合わせ、その後第1開口部を形成してもよいし、第1材料と第2材料とを張り合わせた後、第1開口部および第2開口部を形成してもよいし、第1材料の上に第2材料を形成した後、第1材料に第1開口部を形成し、第2材料に第2開口部を形成してもよい。
【0014】
第1開口部をエッチングで形成し、第2開口部をエッチング、露光、機械加工またはレーザ加工により形成してもよいし、第1開口部をエッチング、機械加工またはレーザ加工で形成し、第2開口部をエッチング、露光、機械加工またはレーザ加工により形成してもよいし、第2材料は、スピンオン、スプレーまたは電界メッキによって形成し、第1開口部はエッチングで形成し、第2開口部は、エッチング、露光またはレーザ加工により形成してもよい。
【0015】
なお、第1材料はシリコン基板、ステンレス、銅、ガラス、ポリイミド、セラミック、金属、または樹脂であり、第2材料はポリイミド、永久レジスト、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または有機材料であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る液体吐出ノズルヘッドにおいては、第1材料および第2材料により構成され、第1材料は第1開口部を有し、第2材料は、液体を外部へ吐出するための、第1開口部より小さい第2開口部を有する。
【0017】
液体吐出用のノズルヘッドを、それぞれの開口寸法が異なる、第1および第2材料で構成したため、簡単なプロセスで所望の形状のノズルの形成が可能になる。
【0018】
その結果、簡易なプロセスで、再現性よく所望の形状が得られる液体吐出ノズルヘッドを提供できる。
【0019】
この発明の他の局面によれば、第1材料の開口部を形成するステップと、第1材料の開口部より小さい第2材料の開口部を、第1材料の開口部を形成するステップとは別のステップで行なうことにより液体吐出ノズルヘッドを製造するため、簡易なプロセスで、再現性よく、所望の形状が得られる液体吐出ノズルヘッドを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(1)第1実施の形態
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。ここでは、液体吐出ノズルヘッドとして、インクジェットプリンタ用の、インク吐出ノズルヘッドにこの発明を適用した場合について説明する。まず、この実施の形態においては、インクの吐出方向に向かって広くなる形状を有するノズルの製造方法について説明する。
【0021】
図1は、インク吐出ノズルヘッドの製造工程をステップごとに示す図である。図1(A)を参照して、まず、シリコン基板(第1材料)11を準備し、その上にポリイミド膜
(第2材料)12を、たとえば、ポリイミドシートを転写することによって形成する。液体の吐出特性の向上のためには、シリコン基板11およびポリイミド膜12ともに膜厚の薄いものを選ぶ必要がある。この実施の形態においては、シリコン基板11の基板厚は50μmであり、ポリイミド膜の膜厚は15μmである。
【0022】
ポリイミド膜12に、ノズルを形成する位置を除いて、その上にレジストパターン13を形成する。
【0023】
次に、ドライエッチングプロセスにて、ポリイミド膜12をエッチングする。ポリイミドのエッチング形状は、レジストパターンを形成するための、フォトリゾグラフィー条件(レジストの種類、べーク条件、露光条件等)により、容易に制御することができる。
これは、レジストとポリイミドのドライエッチングレートはほぼ1:1なので、ポリイミドのエッチング形状には、レジストパターンの形状がそのまま転写されるためである。つまり、フォトグラフィー条件を変えてレジストの形状を制御することによって、間接的にポリイミドの形状を制御することが可能である。
【0024】
したがって、このフォトリゾグラフィー条件によって、図1(B)に示すようなポリイミド膜12の開口14か、または、図1(C)に示すような、シリコン基板側が小さく、表面側が大きい、テーパ状の開口(ポリイミドの孔、開口部は第2開口部に対応する)15を得ることができる。ここでは、テーパ状の開口15を形成する。
【0025】
この後、ポリイミド膜12の転写側の反対側からポリイミド膜12の形成された孔15の位置と一致するとともに、その孔15のシリコン基板11側の端部の孔寸法より大きな径を有する孔(シリコン基板の孔、開口部は第1開口部に対応する)16を、シリコン基板11をドライエッチングすることによって、図1(D)に示すような、所望のノズル形状を得る。ここで、ドライエッチングは、たとえば、D-RIE(Deep-Reactive Ion Etching)のような、一般的な工程を用いることが可能である。
【0026】
なお、このようにしてインクジェットプリンタのノズルを形成したとき、ノズルからのインク滴の吐出は、図1(D)に吐出されたインク滴18を示すように、上側が吐出側になる。
【0027】
このようにして、2つの材料、すなわち、シリコン基板とポリイミドとを用いてノズルを形成したため、簡単なプロセスで、再現性が良く、かつ、吐出特性の優れたノズルを提供できる。
【0028】
ここでノズルの吐出特性が優れているとは、例えば、高粘度のインクに対して対応できるノズルをいう。すなわち、ノズルから吐出される液体としてのインク特性としては、乾燥が早い等の観点から、高粘度である方が好ましい。一方で、高粘度のインクを使用するとノズルの吐出特性が得づらい。すなわち、吐出速度が低下する、液滴吐出頻度(周波数)が上げづらいなど、吐出特性の低下を招く。最悪の場合、高粘度のために液滴が吐出しないという問題も起こりうる。ここで形成したノズルは、このような高粘度のインクに対しても十分対応できる、つまり、吐出速度、液滴吐出頻度(周波数)を高速に保つことができる、吐出特性の優れたノズルである。
【0029】
なお、ここでは、シリコン基板上のポリイミド膜の積層方法として、転写プロセスを用い、パターニングの方法としてドライエッチングを用いた場合について説明したが、これに限らず、ポリイミド膜の積層方法としては、液状のポリイミドをスピンコートすることによって形成したり、スプレーの塗布によって形成したり、電界メッキによって形成してもよい。また、パターニングの方法としては、感光性を付与したポリイミド膜を用いるなどして、露光(露光/現像)によって形成してもよい。
【0030】
感光性を有するポリイミドを用いて露光によって孔15を形成する場合は、レジストは必要なく、ポリイミドを直接露光して、その露光の加減によって形状を制御して所望の孔15を形成する。
【0031】
一方で、レジストを用いてポリイミドをドライエッチングして孔15を形成してもよい。すなわち、レジストの露光量を加減してレジストの形状を制御し、ポリイミドのエッチング時にその形状をポリイミドに転写させて、間接的にポリイミドの形状を制御し、所望の孔15を形成してもよい。また、これに限らず、ドリルによる機械加工や、レーザ光を用いたレーザ加工により孔を形成してもよい。
【0032】
また、ここでは、ノズルをシリコン基板とポリイミドのような、異種薄膜材料を積層して形成した。ポリイミドはシリコン基板に対して、相互の熱膨張係数の差があまり大きくなく、低応力ではあるが、それでも、応力に起因する反りが問題になりうる。そこで、この実施の形態においては、ポリイミドとして、応力および弾性率がきわめて低いものを使用するのが好ましい。
【0033】
また、シリコン基板のドライエッチングの方法や、図面におけるノズルの吐出方向(吐出口は図面の上方向)、ポリイミドとしては、低応力ポリイミドを使用するのが好ましい、等については、以下の各実施の形態においても同様である。
(2)第2実施の形態
次にこの発明の第2実施の形態について説明する。図2はこの実施の形態における、ノズルの製造方法を工程毎に示す図である。まず、図2(A)を参照して、シリコン基板21の上に、ポリイミド膜22を形成し、その上に、金属または酸化物からなる薄膜を形成する。ここでは、SiO膜23を形成する。その上にレジスト24を堆積して、SiO膜23のマスクとし、SiO膜23をエッチングする。その後、SiO膜23をマスクとして、ポリイミド膜22をドライエッチングして、図2(B)に示すような孔25を有する形状を得る。ここでSiO膜23を設けたのは、ポリイミドのドライエッチングの際にポリイミドとの選択比を取りやすいSiO膜23をマスクすることによって、開口端面が垂直な孔25を容易に形成できるためである。
【0034】
この後、図2(C)で示したように、ポリイミド膜22の形成された側の反対側から、ポリイミド膜22に形成された孔25の位置と一致するとともに、それよりも大きい径の孔26を、シリコン基板26にエッチングによって形成する。
【0035】
この実施の形態によれば、図2(C)に示すように、液体の吐出方向に対して、孔25が同一開口寸法を持つノズルを形成できる。
【0036】
なお、この場合においても、ポリイミド膜の積層方法としては、液状のポリイミドをスピンコートすることによって形成したり、スプレーの塗布によって形成したり、電界メッキによって形成してもよい。また、また、ポリイミドの孔は、感光性を付与したポリイミド膜を用いた露光による加工や、ドリルによる機械加工や、レーザ光を用いたレーザ加工により形成してもよい。
(3)第3実施の形態
次にこの発明の第3実施の形態について説明する。図3はこの発明の第3実施の形態におけるノズルの製造方法をステップごとに示す図である。
【0037】
この実施の形態においては、まず、シリコン基板31には、ドライエッチング、ドリル等による機械加工、またはレーザ光を用いたレーザ加工により、所望の寸法および形状を有する孔35を形成しておく(図3(B))。
【0038】
一方、PET(polyethylene terephthalate)シート33上にポリイミドを塗布等して、ポリイミド膜32を形成し、このポリイミド膜32に対して、ドライエッチングして所望の形状の孔34を形成する(図3(A))。この際、ポリイミド膜32のエッチング形状は、垂直ではなく、エッチング方向に対して、テーパ形状を持つようにする。また、ポリイミド膜32の孔34の最大寸法は、シリコン基板31に形成された孔35に等しいか、またはそれよりも小さくしておく。
【0039】
なお、ポリイミド膜32の孔34とシリコン基板31に形成された孔35の形成は、いずれを先にしてもよい。また、ポリイミド膜32に対する孔34の形成は、エッチングに限らず、感光性を付与したポリイミド膜を用いた露光による加工や、機械加工や、レーザ加工により形成してもよい。
【0040】
この実施の形態においては、以上のようにして準備されたシリコン基板31とPETシート33上に形成されたポリイミド膜32とを、図3(A)と図3(B)とにおいて、矢印で示すように、貼り合せる。このとき、ポリイミド膜32上の孔34の位置とシリコン基板31の孔35の位置とが一致するようにアラインメントしながら、シリコン基板31にポリイミド膜32を転写する。転写後、PETシート33を除去する。このようにして、孔34が吐出方向に向かって狭くなる孔形状を有するノズルを得ることができる(図3(C))。
【0041】
なお、シリコン基板31への転写後に、ポリイミド膜32からPETシート33を剥離しやすくするために、ポリイミド膜32の成膜前にPETシート33には予め離型処理を施しておくのが好ましい。また、シリコン基板31の孔35とポリイミド膜32の孔位置とを一致させるために、PETシート33におけるポリイミドの孔34の設けられた位置に、アラインメントマークをPETシート33に設け、これをシリコン基板31に設けられた孔35から参照して、位置決めをするようにしてもよい。
【0042】
また、ここでは、それぞれ別に孔を形成した後に、ポリイミドとシリコン基板とを一体化する場合について説明したが、各孔の形成の順番、一体化は、どの順に行ってもよい。つまり、シリコン基板にポリイミドを一体化した後で、各材料に別々の工程で順次、孔を形成してもよいし、どちらか一方の材料に孔を開けた上で一体化し、もう一方の材料の孔を形成してもよい。
【0043】
これによって、形成工程の選択肢が増えるほか、工程をさまざまに選択することで孔34の形状を、必要に応じて変化させることが可能である。
【0044】
また、ここでは、PETシートを用いてポリイミドを保持したが、これ以外に、マイラーシートや、銅箔を初めとする金属箔を用いてもよい。
(4)第4実施の形態
次に、この発明の第4実施の形態について説明する。図4は、この発明の第4実施の形態におけるノズルの製造工程を示す図である。この実施の形態においては、まず、シリコン基板41を準備し、その上に金属材料薄膜42を成膜した後(図4(A))、所望の孔形状43をこの金属材料薄膜42にパターニングする(図4(B))。ここで、金属材料薄膜としては、特に限定されないが、チタンや、アルミが好ましい。
【0045】
この後、金属材料薄膜42上にポリイミド膜44を所望の膜厚で成膜する(図4(C))。ここでポリイミド膜44としては、感光性を有するものを使用する。
【0046】
次に、ポリイミド膜44を成膜したのと逆側から、金属材料薄膜42に形成された孔43の位置と一致するとともに、その孔43の寸法より大きい寸法の孔45をシリコン基板41にエッチングで形成する。シリコン基板41のエッチングが金属材料薄膜42に到達した時点でエッチングを止め、シリコン基板41のエッチング側から金属材料薄膜42をマスクにしてポリイミド膜44を露光する。この際、アンダー露光を行なう。アンダー露光とは、露光プロセスにおいて、通常の露光に対して、若干少なめに露光することをいう。たとえば、通常の露光は100%で露光するものとすると、アンダー露光は80%程度で露光することをいう。
【0047】
その結果、図4(D)に示すように、ポリイミド膜に設けられる孔46の寸法が、下側が大きく、上側ほど小さい、すなわち、テーパ状の孔を形成することができる。
【0048】
このようにして、下から順に、開口面積が小さくなる、ノズル形状を得ることができる。すなわち、この実施の形態によれば、液体の吐出方向に対して、狭くなる形状を持つノズル形状を得ることができる。
【0049】
(5)第5実施の形態
次に、この発明の第5実施の形態について説明する。図5は、この実施の形態におけるノズルの製造方法を示す図である。図5を参照して、この実施の形態においては、まず、シリコン基板51を準備する。その上に金属材料薄膜または酸化材料薄膜(以下薄膜という)52を成膜した後(図5(A))、所望の孔53を薄膜52にパターニングする(図5(B))。この後、薄膜52上にポリイミド膜54を所望の膜厚成膜する。次に、ポリイミド膜54の成膜側と逆側から、薄膜52に形成された孔53の位置と一致するとともに、それよりも大きい寸法を有する孔56を、シリコン基板51にエッチングにより形成する(図5(C))。シリコン基板51のエッチングが薄膜52に到達した時点でエッチングを止め、シリコン基板51のエッチング側から薄膜52をマスクにして、ポリイミド膜54をドライエッチングして吐出側に向かって滑らかに狭くなる開口55を形成する(図5(D))。この際ドライエッチングの条件を最適化する。その結果、吐出側に向かって順に開口寸法が小さくなる形状を有するノズルを形成できる。
【0050】
上記実施の形態においては、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドに使用される、インク吐出用のノズルヘッドおよびその製造方法について説明したが、これに限らず、任意の液体を吐出するノズルヘッドに適用できる。
【0051】
上記実施の形態においては、ノズルヘッドの製造に使用する、2種類の材料として、シリコン基板とポリイミドとを例にあげて説明したが、これに限らず、相互に熱膨張係数が近い等の、応力発生要因を無くした2種類の他の材料であってもよい。そのような材料としては、第1材料として、シリコン基板以外に、ステンレス、銅、ガラス、ポリイミド、セラミック、金属および樹脂があげられる。一方、第2材料としては、ポリイミド以外に、永久レジスト、アクリル樹脂、エポキシ樹脂または、有機材料があげられる。
【0052】
また、各実施の形態において、ポリイミドの孔の形成を露光、またはドライエッチングによって行なったが、これ以外にウエットエッチングを用いてもよい。
【0053】
また、シリコン基板の孔の形成を行なうエッチングとしては、ドライエッチングによって行なってもよいし、ウエットエッチングによって行なってもよい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、ノズルヘッドの製造において、シリコン基板の上に、ポリイミド膜を用いた場合について説明したが、これに限らず、これを逆にして、ポリイミドの上にシリコンの薄膜を設けてもよい。この場合も、基本的に上記と同様の方法でノズルを製造することができる。また、ポリイミドとポリイミドのような同じ材料からノズルを形成してもよい。
【0055】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明に係る液体吐出ノズルヘッドは、簡易なプロセスで、再現性よく製造できるため、液体吐出ノズルヘッドとして、有利に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の第1実施の形態に係るノズルの製造方法を示す図である。
【図2】この発明の第2実施の形態に係るノズルの製造方法を示す図である。
【図3】この発明の第3実施の形態に係るノズルの製造方法を示す図である。
【図4】この発明の第4実施の形態に係るノズルの製造方法を示す図である。
【図5】この発明の第5実施の形態に係るノズルの製造方法を示す図である。
【図6】従来のノズルの構成を示す図である。
【図7】従来のノズルの製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
11,21,31,41,51 シリコン基板、12,22,32,44,54 ポリイミド膜、13,24 レジスト、14 開口、15,16,25,26,34,35,43,45,46,53,54,55 孔、18 インク滴、33 PETシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料および第2材料により構成される液体吐出ノズルヘッドであって、
前記第1材料は第1開口部を有し
前記第2材料は、前記液体を外部へ吐出するための、前記第1開口部につながり、前記第1開口部より小さい第2開口部を有する、液体吐出ノズルヘッド。
【請求項2】
前記第2開口部は、前記液体の吐出方向に向かって狭くなっている、請求項1に記載の液体吐出ノズルヘッド。
【請求項3】
前記第2開口部は、前記液体の吐出方向に向かって広くなっている、請求項1に記載の液体吐出ノズルヘッド。
【請求項4】
前記第2開口部は、前記液体の吐出方向に向かって同一開口寸法である、請求項1に記載の液体吐出ノズルヘッド。
【請求項5】
前記第2材料は、前記第1材料に対して低応力の材料である、請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出ノズルヘッド。
【請求項6】
前記第1材料はシリコン基板、ステンレス、銅、ガラス、ポリイミド、セラミック、金属または樹脂であり、前記第2材料はポリイミド、永久レジスト、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または有機材料である、請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出ノズルヘッド。
【請求項7】
第1材料および第2材料により構成される液体吐出ノズルヘッドの製造方法であって、
前記第1材料に第1開口部を形成するステップと、
前記第2材料に、前記液体を外部に吐出するための、前記第1開口部につながり、前記第1開口部より小さい、第2開口部を形成するステップとを含み、
前記第1開口部を形成するステップと前記第2開口部を形成するステップとは別々に行なわれる、液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記第1開口部と前記第2開口部とを形成後、前記第1材料と第2材料とを張り合わせるステップを含む、請求項7に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記第2材料の第2開口部を形成した後、前記第1材料と第2材料とを張り合わせ、その後前記第1開口部を形成する、請求項7に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記第1材料と第2材料とを張り合わせた後、前記第1開口部および第2開口部を形成する、請求項7に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記第1材料の上に第2材料を形成した後、前記第1材料に前記第1開口部を形成し、前記第2材料に前記第2開口部を形成する、請求項7に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記第1開口部をエッチングで形成し、前記第2開口部をエッチング、露光、機械加工またはレーザ加工により形成する、請求項7から10のいずれかに記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第1開口部をエッチング、機械加工またはレーザ加工で形成し、前記第2開口部をエッチング、露光、機械加工またはレーザ加工により形成する、請求項7または8に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記第2材料は、スピンオン、スプレーまたはメッキによって形成し、
前記第1開口部はエッチングで形成し、
前記第2開口部は、エッチング、露光またはレーザ加工により形成する、請求項7または11に記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第1材料はシリコン、ステンレス、銅、ガラス、ポリイミド、セラミック、金属、または樹脂の基板であり、前記第2材料はポリイミド、永久レジスト、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または有機材料である、請求項7から14のいずれかに記載の液体吐出ノズルヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−144856(P2007−144856A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343855(P2005−343855)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】