説明

液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】使用材料種が少なく製造工程の簡略な液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】下地基板上に重合開始剤を含まず重合開始剤存在下活性エネルギー線照射により重合可能な化合物を含む樹脂組成物からなる第一層と、第一層上に重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる第二層とが形成された基板を用意し、吐出口パターンのあるモールドを第一層及び第二層に押し付け、モールド又は下地基板にある吐出口対応部分への活性エネルギー線照射を選択的に遮蔽する機構を介しモールド又は下地基板越しに第二層に活性エネルギー線を照射後、露光後ベークし、活性エネルギー線を照射された第二層を硬化し、第二層の重合反応点が拡散した第一層の一部に硬化部を形成し残部を残し、モールドを除去し、第二層を他の支持基板に貼付、第一層未硬化部を溶解し下地基板を分離する液体吐出ヘッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の形成方法及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置においては印字性能の向上、特に高解像度及び高速印字が求められている。このためには、吐出インクの小液滴化とともに、ノズル配列の高密度化を達成し、単位面積あたりの画素数を多くすることで高画質を実現することが考えられる。そのためには、多数の微細な孔(吐出口)が高密度かつ高精細に形成された液体吐出ヘッドを製造するための方法が必要とされることから、これまでに様々な手法が提案されている。とりわけ、モールドを使用したプレス成型法(インプリント法)による液体吐出ヘッドの製造方法は、複数の材料を一度に成型でき、安価に高精度な成型が可能であることから注目を集めている。
【0003】
従来、インプリント法やそれに類似する技術を用いてインクジェット記録ヘッドを作製する方法として、以下に示すような有孔プレートの製造方法が提案されている。例えば特許文献1においては、第一の材料と第二の材料を積層した二層の部材に対して、二層の部材を加熱する工程、ノズル部分に相当する突起を有する成型用モールドを用い、二層の部材を加熱しながら、該ノズル部分の突起が、第二の材料を貫通し、かつ第一の材料の途中までプレス成型する工程、モールドを前記二層から除去し、第一の材料と第二の材料を分離する工程、を経ることで有孔プレートを製造している。
【0004】
また、基板上に形成された構造体と基板を損傷させることなく分離する方法として、例えば特許文献2においては以下に示すような多層配線基板の製造方法が提案されている。支持基板上にエッチバック層を形成した後、エッチバック層上に多層配線基板を形成する工程と、支持基板及び多層配線基板がエッチングされない条件でエッチバック層をエッチングして除去する工程を経て、支持基板から多層配線基板を分離して、多層配線基板を製造している。また、特許文献3においては以下に示すような貫通孔構造体の製造方法が提案されている。同一材料からなる構造体層を重ね合わせた多層構造の被加工体において、各構造体層間に分離層を設ける工程と、プレス加工にて被加工体の少なくとも1つの構造層を打ち抜く工程を経て、被加工体の構造体層を剥離して、貫通孔構造体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−176076号公報
【特許文献2】米国特許第7138064号明細書
【特許文献3】特開2007−283657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の製造方法では、基板上に用意した2種の材料より、1種の材料からなる有孔プレートを製造するため、使用する材料が増加する問題、製造工程が長くなる懸念がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の多層配線基板の製造方法では、エッチバック層を成膜する工程、エッチバック層をエッチングにより除去する工程を必須とするため、製造工程が複雑になることが想定される。さらに、支持基板及び多層配線基板がエッチングされないようなエッチバック層及びエッチング条件を必須とするため、設計自由度を制限される懸念がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の貫通孔構造体の製造方法では、多層構造の被加工体を形成しプレス加工するため、例えば液体のような多層構造を形成できない構造体材料を使用することができない。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題に鑑み、使用する材料種が少なく、製造工程の簡略な液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は液体を吐出するための吐出口が設けられた吐出口形成部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、以下の工程を含む。(a)下地基板上に、重合開始剤を含有せず、該重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物を含有する樹脂組成物からなる第一層と、該第一層上に前記重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる第二層とが形成された基板を用意する工程、(b)少なくとも前記吐出口のパターンが形成されたモールドを、前記第一層及び第二層に押し付ける工程、(c)前記モールドを前記第一層及び第二層に押し付けた状態で、前記モールド又は下地基板に配置された、前記吐出口に対応する部分に対する活性エネルギー線の照射を選択的に遮蔽する機構を介して、前記モールドあるいは下地基板越しに前記第二層に対して活性エネルギー線を照射した後、露光後ベークを行い、活性エネルギー線の照射された第二層を硬化させると共に、前記第二層に含まれる重合反応の反応点が拡散した第一層の一部に硬化部を形成し、第一層の残りを未硬化部として残す工程、(d)前記モールドを除去する工程、(e)前記第二層を他の支持基板に対して貼り付ける工程、(f)前記第一層の未硬化部を溶解させることで、前記下地基板を分離する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法においては、下地基板上に用意した材料と同数の材料からなる液体吐出ヘッドを製造することができるため、使用する材料種を減らすことができ、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの模式的斜視図である。
【図2】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る製造方法により製造される液体吐出ヘッドを図1に示す。
【0014】
図1において、エネルギー発生素子8を具備した支持基板7には流路11に液体を供給する供給口12が形成されている。また、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子8を具備した支持基板7上には複数の液体の吐出口13と、吐出口13に連通する流路11の壁21を備えた吐出口部材20が設けられている。
【0015】
以上の構成において、液体は供給口12から流路11に供給、保持され、記録信号に応じたエネルギー発生素子8からのエネルギーにより、充填されていた液体中を吐出する。エネルギー発生素子が電気熱変換体である場合には液体内に気泡を瞬間的に発生させる。該気泡の成長によって生じる圧力変化を利用して、液滴を吐出口13から吐出させ、記録媒体に記録する。
【0016】
以下に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の実施の形態を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図2(a)〜(g)は実施の形態1における液体吐出ヘッドの製造方法を工程順に示すフロー図であり、図1の液体吐出ヘッドを破線X−X’で切断した場合の各工程での断面の一部を示している。
【0018】
まず図2(a)に示すように、下地基板1上に、重合開始剤を含有せず、該重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物を含有する樹脂組成物からなる第一層2と、該第一層2上に前記重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる第二層3と、が形成された基板を用意する。
【0019】
下地基板1は、シリコン、ガラス、樹脂フィルム(例えばPET)等を使用すれば良く、その後のモールド4を第一層2及び第二層3に押し付ける工程(以下、インプリント工程ともいう)、ならびに露光後のベーク工程に耐えうるものであれば、適宜選択して使用することができる。
【0020】
第一層2に用いられる、重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物としては、ラジカル重合開始剤の存在により重合するネガ型レジストに用いられる樹脂化合物や、カチオン重合開始剤の存在により重合するネガ型レジストに用いられる樹脂化合物が例示される。しかしながら、重合開始剤が存在しないときには活性エネルギー線を照射しても重合せず、重合開始剤が存在するときに重合するものであればこれらに限られるものではない。ここで、活性エネルギー線とは、重合開始剤の存在下で、化合物が重合反応を開始できるエネルギーを付与できる光線を意味する。例えば、X線、紫外線、可視光線、赤外線が挙げられ、これらにまたがった波長域の光線を使用することもできる。その中でも、通常使用されるラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤の感光波長域を考慮すると、紫外線を用いることが好適である。
【0021】
前記ラジカル重合開始剤の存在により重合するネガ型レジストに用いられる樹脂化合物は、樹脂化合物中に含まれるラジカル重合可能なモノマーやプレポリマーの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。ラジカル重合可能なモノマーやプレポリマーとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル、アリル基を有するモノマーやプレポリマー等が適しているが、これらに限定されるものではない。
【0022】
カチオン重合開始剤の存在により重合するネガ型レジストに用いられる樹脂化合物は、樹脂化合物中に含まれるカチオン重合可能なモノマーやプレポリマーの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。カチオン重合可能なモノマーやプレポリマーとしては、エポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を有するモノマーやプレポリマー等が適しているが、これに限られるものではない。
【0023】
また、後述するように、活性エネルギー線を下地基板1越しに照射する場合、第一層2の樹脂組成物には活性エネルギー線を透過する樹脂組成物を用いる。活性エネルギー線を透過する樹脂組成物としては、第二層3の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化するのに必要な活性エネルギー線を一部でも透過するものであればよい。
【0024】
また、第一層2に含有される重合可能な化合物が硬化することにより形成される樹脂が撥水性を有することが好ましい。硬化により撥水性を有する樹脂となる化合物を用いることで、液体吐出時における吐出口での液体の残留をより抑制し、液体吐出をより良好に行うことが可能な液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0025】
硬化により撥水性を有する樹脂となる化合物としては、フルオロアルキルアルコキシシラン、フルオロアルキル含有エポキシ樹脂、シリコーン−アクリルブロック共重合体、特開平11−335464公報に記載のアリル基を含有するフェノール類とオルガノヒドロシロキサンの共重合体とホルマリン又はホルマリンアルコールにより変性されたアミノ縮合物の混合物等が例示される。しかしながら、撥水性を有する樹脂はこれらに限定されるものではない。
【0026】
これら第一層2に用いられる、重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて添加剤等を適宜添加することができる。
【0027】
第一層上に設けられる第二層3に用いられる、前記重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、ラジカル重合反応を利用したネガ型レジストや、カチオン重合反応を利用したネガ型レジストが例示される。しかし、第一層2に含まれる前記化合物を重合させることのできる重合開始剤を含有するものであればこれらに限られるものではない。
【0028】
ラジカル重合反応を利用したネガ型レジストは、そのレジスト中に含まれる光ラジカル重合開始剤から発生するラジカルにより、レジスト中に含まれるラジカル重合可能なモノマーやプレポリマーの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、チタノセン類、アクリジン類等が挙げられる。ラジカル重合可能なモノマーとしてはアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル、アリル基を有するモノマーやプレポリマー等が適しているが、これらに限定されるものではない。
【0029】
カチオン重合反応を利用したネガ型レジストは、そのレジスト中に含まれる光カチオン重合開始剤から発生するカチオンにより、レジスト中に含まれるカチオン重合可能なモノマーやプレポリマーの分子間での重合や架橋が進むことで硬化する。光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。カチオン重合可能なモノマーやプレポリマーとしてはエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を有するモノマーやプレポリマー等が適しているが、これに限られるものではない。
【0030】
また、これら重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。さらに、必要に応じて添加剤等を適宜添加することもできる。
【0031】
また、ネガ型フォトレジストとして市販されている化薬マイクロケム社製「SU−8シリーズ」、「KMPR−1000」(商品名)、東京応化工業製「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(商品名)等も用いることができる。
【0032】
また、第二層3上に活性エネルギー線を透過する物質からなる層を形成してもよい。活性エネルギー線を透過する物質としては、第二層3に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化するのに必要な活性エネルギー線を一部でも透過するものであればよい。
【0033】
また、第一層2及び第二層3を下地基板1上に形成する方法は特に限定されるものではない。例えば、スピンコート、ラミネート、スプレーコート、等から、用いる樹脂に応じて好適な方法を用いることができる。なお、第一層2上に第二層3を形成する際、第一層2を溶解して各々の層の樹脂組成物が混合しないように、予め第一層2に含まれる溶媒を加熱により揮発させる等の操作を行う必要がある。
【0034】
第一層2の膜厚としては、用いる樹脂組成物の種類にもよるが、0.5μmから5μmであることが好ましい。また、第二層3の膜厚としては、用いる樹脂組成物の種類にもよるが、5μmから100μmであることが好ましい。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、活性エネルギー線を透過する材料からなるモールド4を用意する。モールド4の材料としては、例えばガラス、石英、樹脂などを用いることができる。ただし、モールド4の材料はこれらに限定されるものではなく、活性エネルギー線を透過する他の材料でもよい。
【0036】
これらモールド4の材料に対し、吐出口部に対応する凸部4aと、流路に対応する凸部4bと、活性エネルギー線を選択的に遮蔽する機構として吐出口に対応する遮光膜5を配置する。該モールド4は吐出口に対応する凸部4a及び流路に対応する凸部4bを有するため、吐出口と流路とを同時に形成することができる。また、凸部4a、4bは吐出口、流路に対応するため、モールド4内に複数設けられていてもよい。凸部4bのみの場合には流路形成部材が形成される。
【0037】
吐出口に対応する遮光膜5としては、金属膜が使用できる。金属膜としては、Cr膜、Al膜等を用いることができる。しかし、吐出口に対応する遮光膜5は使用する活性エネルギー線を遮蔽する能力を備えていればよく、材料や膜厚等は適宜選択することができる。
【0038】
モールド4の加工方法としては、通常の半導体プロセスで用いられるフォトリソグラフィー技術やエッチング技術、成膜技術等を用いることができる。
【0039】
モールド4の作製方法としては、例えば、まずモールド表面にスパッタリング法により金属膜を成膜する。次に、レジストを塗布し、吐出口パターンのマスクを用いてパターン露光を行い、現像を行う。その後、前記金属膜のエッチングを行い、レジストを剥離して、吐出口に対応する遮光膜5を形成する。
【0040】
次に、吐出口に対応する遮光膜5が形成されたモールドに、再度レジストを塗布し、流路パターンのマスクを用いてパターン露光を行い、現像を行う。パターニングされたレジストをマスクとしてエッチングを行い、レジストを剥離することで、流路に対応する凸部4bを形成する。
【0041】
次に、吐出口に対応する遮光膜5をマスクとしてエッチングを行うことで、吐出口に対応する凸部4aを形成する。これにより、図2(b)に示される吐出口に対応する凸部4a、流路に対応する凸部4b及び吐出口に対応する遮光膜5を有するモールド4を得ることができる。
【0042】
なお、吐出口に対応する凸部4a、流路に対応する凸部4bの深さ方向の長さは、第一層2及び第二層3の膜厚に応じて適宜設定することができる。しかし、後述するモールド4を第一層2及び第二層3に押し付ける際、吐出口に対応する凸部4aの先端が第一層2に到達する程度の長さで作製することが、吐出口の精度の観点から好ましい。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、下地基板上の第一層2、第二層3が形成された面側と、モールド4の凹凸面側が対向するように下地基板1とモールド4を向かい合わせる。その後、モールド4と下地基板1とを平行に保ったまま、モールド4を第一層2及び第二層3に押し付ける(図2(c))。
【0044】
このとき、第一層2及び第二層3は、モールド4に形成された凹凸パターンに従って流動し、第一層2及び第二層3にモールド4の凹凸パターンが転写される。
【0045】
モールド4を第一層2及び第二層3に押し付ける際の圧力としては、用いる第一層2及び第二層3の樹脂組成物の種類にもよるが、0.01MPaから10MPaであることが好ましい。また、本実施の形態では、吐出口の精度の観点から、モールド4の吐出口に対応する凸部4aの先端が第一層2にまで到達するようにする。
【0046】
なお、事前に下地基板1、第一層2及び第二層3を加熱してもよい。これにより、第一層2及び第二層3の樹脂組成物の粘度を下げ、モールド4の凹凸パターンに従って第一層2及び第二層3の樹脂組成物が流動しやすくなり、高いパターン再現性が期待できる。また、インプリント時の圧力を低減できる効果が期待できる。加熱の際の温度としては、用いる第一層2及び第二層3の樹脂組成物の種類にもよるが、50℃から200℃であることが好ましい。また、第二層3の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が液体状の場合は、流動性が高いため、数気圧程度の低い圧力でインプリントを行うことにより、モールドパターンに対して忠実度の高い転写パターンを得ることができる。
【0047】
次に、モールド4を第一層2及び第二層3に押し付けた状態で、モールド4越しに活性エネルギー線6を第二層3に照射する(図2(d))。活性エネルギー線6の種類は第二層3の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるものであれば、特に限定されない。例えば紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマ線等が挙げられる。この中でも紫外線が好ましく用いられる。また、活性エネルギー線の照射量についても、第二層3の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化できる照射量であれば特に限定されない。
【0048】
本実施の形態では、モールド4は活性エネルギー線6を透過する材料からなるため、モールド越しに照射した活性エネルギー線6はモールド4を通過して第二層3に照射される。しかし、吐出口に対応する遮光膜5は活性エネルギー線6を透過しない材質からなるため、吐出口に対応する遮光膜5により、モールド4により押し出された吐出口に対応する凸部4aの先端に存在する第二層3の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には活性エネルギー線6は照射されない。
【0049】
活性エネルギー線6が照射された第二層3は、活性エネルギー線6のエネルギーを吸収して重合反応の反応点を生じ重合反応が進むため、現像液に対して不溶となる。一方、吐出口に対応する遮光膜5により遮光され、活性エネルギー線6が照射されない第二層3は、活性エネルギー線6のエネルギーを吸収せず、重合反応が生じないため、現像液に対して可溶のままである。
【0050】
次に、下地基板1及びモールド4の少なくとも一方を加熱することで、第一層2及び第二層3を加熱する。加熱により、活性エネルギー線6が照射された第二層3の硬化が促進される。さらに、第二層3に含まれる重合反応の反応点が第一層2に拡散することにより、重合反応の反応点の拡散した第一層の一部に、第一層の硬化部2aが形成され、重合反応の反応点の拡散していない第一層の残りの部分には未硬化の第一層2が残される。なお、重合反応の反応点とは、第二層3に含まれる重合開始剤に限らず、活性エネルギー線6の照射により重合開始剤から発生した反応種も含む。加熱温度としては、用いる第一層2、第二層3の樹脂組成物の種類、重合開始剤の種類、また重合開始剤の量にもよるが、50℃から200℃であることが好ましい。
【0051】
次に、図2(e)に示すように、モールド4を第一層2及び第二層3から除去した。モールド4の除去の方法は剥離、溶解、融解等が挙げられるが、モールド4を複数回用いることができることから、剥離が好ましい。また剥離時に第一層2及び第二層3の一部がモールド4に付着することを防止するために、モールド4の吐出口部に対応する凸部4a及び流路に対応する凸部4bを有する面に離型剤を塗布する等の離型処理を施してもよい。
【0052】
次に、エネルギー発生素子8を備えた支持基板7を用意する。なお、図2(f)、(g)には図示はしていないが、支持基板7には液体供給のための開口部である供給口が形成され、エネルギー発生素子8を駆動するための配線等、電気的接合が備わっている。
【0053】
その後、図2(f)に示すように、パターンの形成された第二層3と支持基板7とを貼りあわせる。第二層3と支持基板7とを貼り合せる工程は、特に限定されるものではないが、形成した吐出口部のパターンと、支持基板7上のエネルギー発生素子8とが対応するように、位置合わせをして貼り合わせる。また、貼り合わせる際支持基板7に加える圧力としては、0.01MPaから10MPa程度である。また、必要に応じて加熱、真空中で貼り合わせてもよい。
【0054】
次に、第一層の未硬化部及び第二層の未硬化部を溶解させ、下地基板1を第一層の硬化部2aから分離する。第一層2及び第二層3の未硬化部を溶解させる方法としては、第一層2及び第二層3の未硬化部のみが溶解する溶媒によって溶出させる方法が挙げられる。必要に応じて超音波照射等を併用してもよい。ただし、これらに限定されるものではなく、他の方法でもよい。
【0055】
これにより液体を吐出するための吐出口が少なくとも設けられた吐出口形成部材20を有する液体吐出ヘッドを得ることができる(図2(g))。
【0056】
(実施の形態2)
図3(a)〜(g)は実施の形態2における液体吐出ヘッドの製造方法を工程順に示すフロー図であり、図1の液体吐出ヘッドを破線Xで切断した場合の断面図で、各工程を示したものである。
【0057】
まず図3(a)に示すように、下地基板9上に、実施の形態1と同様に第一層2及び第二層3が形成された基板を用意する。第一層2、第二層3の樹脂組成物としては、実施の形態1と同様の樹脂組成物を用いることができるが、第一層2は、活性エネルギー線を透過する樹脂組成物である。
【0058】
下地基板9は活性エネルギー線を透過する材料からなり、下地基板9の材料としては、例えばガラス、石英、樹脂などを用いることができる。ただし、下地基板9の材料はこれらに限定されるものではなく、活性エネルギー線を透過する他の材料でもよい。
【0059】
また、下地基板9には、吐出口部と対応する部分に活性エネルギー線を選択的に遮蔽する機構として遮光膜5が形成されている。図3では、遮光膜5は第一層2及び第二層3が形成されている面とは反対の面上に図示しているが、遮光膜5の位置はこれに限定されるものではなく、吐出口部と対応した位置であれば基板の他の位置でもよい。吐出口部と対応する遮光膜5としては、実施の形態1と同様に、使用する活性エネルギー線を遮蔽する能力を備えていれば良く、材料や膜厚、形成方法等は適宜選択すればよい。
【0060】
次に、図3(b)に示すように、モールド10を用意する。モールド10の材料としては、活性エネルギー線を透過する材料である必要はなく、その後のインプリント工程、ならびに露光後のベーク工程に耐えうるものであれば、適宜選択して使用することができる。なお、モールド10の加工方法としては、例えば通常の半導体プロセスで用いられるフォトリソグラフィー技術やエッチング技術、成膜技術等を用いることができ、容易に製造できるため好ましい。
【0061】
次に、実施の形態1と同様に、モールド10を第二層3に近づけ、第一層2及び第二層3に押し付ける(図3(c))。このとき、モールド10の吐出口部に対応する凸部の位置が、下地基板9に形成された遮光膜5の位置と対応するように位置合わせをして、押し付けを行う。
【0062】
次に、モールド10を第一層2及び第二層3に押し付けた状態で、下地基板越しに活性エネルギー線6を第二層3に照射する(図3(d))。これにより、活性エネルギー線6の照射された第二層3は硬化する。
【0063】
さらに、実施の形態1と同様に、下地基板9及びモールド10の少なくとも一方を加熱することで、活性エネルギー線6の照射された第二層3の硬化が促進され、また、第二層3に含まれる重合反応の反応点が第一層2に拡散することにより、重合反応の反応点の拡散した第一層の一部に、第一層の硬化部2aが形成される。一方、重合反応の反応点の拡散していない第一層の残りの部分には未硬化の第一層2が残される。
【0064】
次に、実施の形態1と同様に、モールド10を第一層2及び第二層3から除去する(図3(e))。
【0065】
次に、実施の形態1と同様に、第二層3とエネルギー発生素子8を備えた支持基板7とを貼り合わせる。第二層3と支持基板7を貼り合せる工程は、特に限定されるものではなく、実施の形態1と同様に行うことができる(図3(f))。
【0066】
次に、実施の形態1と同様に、第一層2及び第二層3の未硬化部を溶解し、下地基板9を第一層の硬化部2aから分離する。
【0067】
これにより支持基板7上に吐出口13を有する吐出口部材20が設けられた液体吐出ヘッドを得ることができる(図3(g))。
【0068】
(実施の形態3)
図4(a)〜(c)は実施の形態3における液体吐出ヘッドの製造方法を工程順に示すフロー図であり、図1の液体吐出ヘッドを破線Xで切断した場合の断面図で、各工程を示したものである。
【0069】
まず、実施の形態1同様に、第一層2及び第二層3を積層した下地基板1にパターン形成を行い、モールドを第一層2及び第二層3から除去する(図4(a))。なお、本実施の形態では実施の形態1の方法によりパターンを形成しているが、実施の形態2の方法でパターンを形成してもよい。
【0070】
次に、実施の形態1又は実施の形態2と同様に、第一層2及び第二層3の未硬化部を現像除去し、第一層の硬化部2aと下地基板1を分離する(図4(b))。
【0071】
次に、実施の形態1又は実施の形態2と同様に、第二層3とエネルギー発生素子8を備えた支持基板7とを貼り合わせる。
【0072】
これにより液体を吐出するための吐出口が少なくとも設けられた吐出口形成部材20を有する液体吐出ヘッドを得ることができる(図4(c))。
【0073】
(実施の形態4)
図5(a)〜(g)は実施の形態4における液体吐出ヘッドの製造方法を工程順に示すフロー図であり、図5(g)は図1の液体吐出ヘッドの破線Y―Y’での断面図の一部である。
【0074】
まず図5(a)に示すように下地基板1上に、実施の形態1と同様に第一層2及び第二層3が形成された基板を用意する。
【0075】
次に、モールドを用意する。モールドに対して流路に対応する凸部4bを形成する。モールド4の加工方法としては、例えば通常の半導体プロセスで用いられるフォトリソグラフィー技術やエッチング技術、成膜技術等を用いることができる。
【0076】
本実施の形態では、活性エネルギー線を透過する材料からなるモールド4を用いるが、下地基板1及びモールド4のうち少なくとも一方が、活性エネルギー線を透過すればよい。また、その後のインプリント工程、ならびに露光後のベーク工程に耐えうるものであればよい。活性エネルギー線を透過する材料としては、例えばガラス、石英、樹脂などを用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0077】
次に、実施の形態1と同様に、モールド4を第二層3に近づけ、第二層3に押し付け、所定の部分に流路のパターンを形成する(図5(c))。
【0078】
次に、モールド4を第二層3に押し付けた状態で、モールド4越しに活性エネルギー線6を第二層3に照射する(図5(d))。これにより、第二層3は硬化する。
【0079】
次に、実施の形態1と同様に、支持基板1及びモールド4のうち少なくとも一方を加熱することで、第二層3の硬化が促進され、また、第二層3に含まれる重合反応の反応点が第一層2に拡散することにより、重合反応の反応点の拡散した第一層2の一部に、第一層の硬化部2aが形成される。一方、重合反応の反応点の拡散していない第一層2の下地基板1側の部分には未硬化の第一層2が残される。
【0080】
次に、実施の形態1と同様に、モールド4を第二層3から除去する(図5(e))。
【0081】
次に、実施の形態1と同様に、第二層3と支持基板7とを貼りあわせる(図5(f))。支持基板7には液体供給のための開口部である供給口が形成されている。
【0082】
次に、実施の形態1と同様に、第一層2及び第二層3の未硬化部を溶解し、第一層の硬化部2aと下地基板1を分離する。
【0083】
吐出口と連通する液体の流路11を形成するための流路壁21を備えた吐出口部材20を有する液体吐出ヘッドを得ることができる(図5(g))。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例を実施例で示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
(実施例1)
<モールドの作製>
以下に、本実施例におけるモールドの具体的な作製方法について説明する。本実施例では、図2(b)に示される吐出口に対応する凸部4a、流路に対応する凸部4b、吐出口に対応する遮光膜5を有するモールド4を作製した。
【0086】
まず、石英基板にスパッタリング法によりAlを成膜した。その後、東京応化工業製ポジ型レジスト「OFPR−800」(商品名)を塗布した。そして吐出口パターンのマスクを用いてパターン露光を行い、現像を行った。
【0087】
その後関東化学製混酸C−6を用いて露出部のAl膜のエッチングを行い、「OFPR−800」を剥離して、吐出口に対応する遮光膜5を形成した。
【0088】
次に、吐出口に対応する遮光膜5が形成された石英表面に、再度「OFPR−800」を塗布した。そして流路パターンのマスクを用いてパターン露光を行い、現像を行った。パターニングされた「OFPR−800」をマスクとして、CHF3/CF4/Arガスを用いて石英基板をリアクティブイオンエッチング(RIE)により加工した。その後、「OFPR−800」を剥離することで、流路に対応する凸部4bを形成した。凸部4bは上面から見た場合、円形で、その径は10μmである。
【0089】
次に、吐出口に対応する遮光膜5をマスクとして、CHF3/CF4/Arガスを用いて石英基板をリアクティブイオンエッチング(RIE)により加工することで、吐出口に対応する凸部4aを形成した。
【0090】
以上により、図2(b)に示される吐出口に対応する凸部4a、流路に対応する凸部4b、吐出口に対応する遮光膜5を有するモールド4を作製した。
【0091】
<液体吐出ヘッドの作製>
以下に本実施例における液体吐出ヘッドの具体的な作製方法について図2を用いて説明する。
【0092】
まず、第一層2の樹脂組成物として、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]と1,3−ジヒドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの共重合体からなるオルガノシロキサン樹脂100質量部、ヘキサメトキシメチロールメラミン10質量部を乳酸エチル溶媒200質量部に溶解させた。これをSiからなる下地基板上にスピンコートにて成膜した。その後、ホットプレートにて80℃で加熱し、溶媒成分を揮発させた。第一層2の膜厚は1μmであった。次いで、第一層2上に第二層3として光カチオン開始剤を含む光カチオン硬化性樹脂組成物である化薬マイクロケム製「SU−8 3025」(商品名)をスピンコートにて成膜した。その後、ホットプレートにて90℃で加熱し、溶媒成分を揮発させた。第二層3の膜厚は30μmであった。これにより、図2(a)に示される第一層2及び第二層3が積層した下地基板1が得られた。
【0093】
次いで、作製したモールド4を用いて第一層2及び第二層3にインプリントを行った。具体的には、100℃に下地基板1を加熱し、図2(b)に示す第一層2及び第二層3に対して、図2(c)のように圧力1MPaでモールド4を押し付けた。モールド4の吐出口に対応する凸部4aの先端は、第一層2にまで到達した。そして下地基板1を100℃に加熱したまま、図2(d)に示すようにモールド4越しに紫外線を照射し(紫外線照射量:350mJ/cm2)、吐出口に対応する遮光膜5をマスクとして第二層3に対して吐出口のパターン露光を行った。さらにモールド4を押し付けた状態で、100℃で4分間保持し、露光後ベークを行った。これにより、第二層3の硬化が促進され、かつ、第二層3に含まれる光カチオン開始剤及び紫外線の照射により発生したカチオン種が第一層2の一部に拡散し、拡散した部分については硬化が進行するため、第一層の硬化部2aが形成された。
【0094】
次いで、図2(e)に示すように、モールド4を第一層2及び第二層3から除去した。
【0095】
次いで、図2(f)に示すように、エネルギー発生素子8を具備した支持基板7表面と、第二層3のパターンの形成された表面とを、200℃に加熱しながら支持基板7に1MPaの圧力を加えることで貼り付けた。なお、貼り付ける前に、エネルギー発生素子8と吐出口の位置が対応するように位置合わせを行った。その後、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/3の液体に浸漬し、第一層2及び第二層3の未硬化部を溶解させ、図2(g)に示すように下地基板1を第一層の硬化部2aから分離した。これにより液体吐出ヘッドを作製した。
【0096】
以上により作成した実施例の液体吐出ヘッドを装置に搭載して吐出をおこなったところ、良好に吐出することが可能であった。
【符号の説明】
【0097】
1 下地基板
2 第一層
2a 第一層の硬化部
3 第二層
4 モールド
4a 吐出口部に対応する凸部
4b 流路に対応する凸部
5 遮光膜
6 活性エネルギー線
7 支持基板
8 エネルギー発生素子
9 下地基板
10 モールド
11 流路
12 供給口
13 吐出口
20 吐出口部材
21 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が設けられた吐出口形成部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(a)下地基板上に、重合開始剤を含有せず、該重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物を含有する樹脂組成物からなる第一層と、該第一層上に前記重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる第二層とが形成された基板を用意する工程、
(b)少なくとも前記吐出口のパターンが形成されたモールドを、前記第一層及び第二層に押し付ける工程、
(c)前記モールドを前記第一層及び第二層に押し付けた状態で、前記モールド又は下地基板に配置された、前記吐出口に対応する部分に対する活性エネルギー線の照射を選択的に遮蔽する機構を介して、前記モールドあるいは下地基板越しに前記第二層に対して活性エネルギー線を照射した後、露光後ベークを行い、活性エネルギー線の照射された第二層を硬化させると共に、前記第二層に含まれる重合反応の反応点が拡散した第一層の一部に硬化部を形成し、第一層の残りを未硬化部として残す工程、
(d)前記モールドを除去する工程、
(e)前記第二層を他の支持基板に対して貼り付ける工程、
(f)前記第一層の未硬化部を溶解させることで、前記下地基板を分離する工程、
を含む液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記モールドが、前記活性エネルギー線を選択的に遮蔽する機構を有するモールドであって、
前記工程(c)において活性エネルギー線を照射する工程が、前記第二層に対して前記モールド越しに活性エネルギー線を照射する請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記下地基板が活性エネルギー線を遮蔽する基板である請求項2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記下地基板が、前記活性エネルギー線を選択的に遮蔽する機構を有する下地基板であって、前記(c)において活性エネルギー線を照射する工程が、前記第二層に対して前記下地基板越しに活性エネルギー線を照射する請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記モールドが活性エネルギー線を遮蔽するモールドである請求項4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記第一層に含有される重合可能な化合物が硬化することにより形成される樹脂が撥水性を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記第二層を他の支持基板に対して貼り付ける工程(e)の前に、前記第一層の未硬化部を溶解させることで、前記下地基板を分離する工程(f)を行う請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記モールドは、さらに吐出口と連通する液体の流路を形成するためのパターンを有し、前記吐出口形成部材に同時に前記液体の流路を形成する請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項9】
液体を吐出するための吐出口と連通する液体の流路を形成するための流路形成部材を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(a)下地基板上に、重合開始剤を含有せず、前記重合開始剤の存在下に活性エネルギー線の照射により重合可能な化合物を含有する樹脂組成物からなる第一層と、該第一層上に前記重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる第二層とが形成された基板を用意する工程、
(b)前記流路のパターンが形成されたモールドを、前記第二層に押し付ける工程、
(c)前記モールドを第二層に押し付けた状態で、前記モールドあるいは下地基板越しに前記第二層に対して活性エネルギー線を照射した後、露光後ベークを行い、前記第二層を硬化させると共に、前記第二層に含まれる重合反応の反応点が拡散した第一層の一部に硬化部を形成し、第一層の残りを未硬化部として残す工程、
(d)前記モールドを除去する工程、
(e)前記第二層を他の支持基板に対して貼り付ける工程、
(f)前記第一層の未硬化部を溶解させることで、前記下地基板を前記第一層の硬化部から分離する工程、
を含む液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−162881(P2010−162881A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276329(P2009−276329)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】