説明

液体吐出装置の制御方法および液体吐出装置

【課題】ノズルから吐出される液滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを確実に解消することが可能な液体吐出装置の制御方法を提案する。
【解決手段】ドット抜けの発生時に、ノズルから液体を吸引するクリーニング動作およびノズル面を拭き取るワイピング動作の少なくとも一方を行う液体吐出装置では、ドット抜けの発生の有無を検査してドット抜けが発生しているか否かを判別した結果、ドット抜けが発生している場合に、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っているか否かを判別する。この液体吐出装置では、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っていない場合には、ワイピング動作を行い、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っている場合には、ワイピング動作を行わずにクリーニング動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出用の複数のノズルが配列される液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置の制御方法、および、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、インク滴を吐出する複数のノズルを有する印刷ヘッドを備えており、印刷ヘッドは、複数のノズルが配列されるノズル形成面が下向きになるようにキャリッジに搭載されている。従来、この種のインクジェットプリンターとして、キャリッジの下面に露出する印刷ヘッドの保守を行うためのヘッドメンテナンス機構を備えるインクジェットプリンターが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンターでは、ヘッドメンテナンス機構は、ノズル形成面を拭き取るためのワイピング機構と、ノズルからインクを吸引するためのインク吸引機構とを備えている。また、ヘッドメンテナンス機構は、複数のノズルからインク滴が吐出されるか否かを検査する(すなわち、目詰まりを起こしているノズルがないか否かを検査する)インク滴吐出検査装置としての機能も兼ね備えている。ヘッドメンテナンス機構では、ヘッドメンテナンス機構内に配置される吸収材にノズルから吐出される帯電インクが着弾する際の電流変化に基づいて、複数のノズルからインク滴が吐出されるか否かの検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンターでは、所定枚数の印刷用紙への印刷ごとに、インク滴吐出検査装置によるインク滴吐出検査が行われる。また、インク滴吐出検査の結果、インクを吐出していないノズルが存在するドット抜けの発生が確認されると、ドット抜けを解消するための動作が行われる。ドット抜けを解消するための動作としては、インク吸引機構によってノズルからインクを吸引するクリーニング動作と、ワイピング機構によってノズル形成面を拭き取るワイピング動作とが考えられる。クリーニング動作では、ノズルからインクを吸引するため、ドット抜けの発生が確認された場合に、クリーニング動作を行えば、ドット抜けを確実に解消することが可能であるが、インクの消費量が増大する。これに対して、ワイピング動作では、インクの吸引を行わないため、ドット抜けの発生が確認された場合に、ワイピング動作を行えば、インクの消費量を低減しつつ、ドット抜けを解消することが可能である。
【0006】
しかしながら、ワイピング動作によってドット抜けを解消しようとすると、以下の問題が生じることが本願発明者の検討によって明らかになった。すなわち、ワイピング動作によって実際にはドット抜けが解消されていないにもかかわらず、ワイピング動作の際にノズル内部に刷り込まれたインクがその後のインク滴吐出検査で一時的に吐出されてしまう現象が発生することが本願発明者の検討によって明らかになった。この場合、実際には、ドット抜けが解消されていないにもかかわらず、インク滴吐出検査では、ドット抜けが解消されたものと判別される。したがって、そのまま、その後の印刷が行われるが、実際にドット抜けが解消されていないため、その後の印刷の際に再びドット抜けが発生するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ノズルから吐出される液滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを確実に解消することが可能な液体吐出装置の制御方法、および、液体吐出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の液体吐出装置の制御方法は、液滴吐出用の複数のノズルの中で液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けの発生時に、前記ノズルから液体を吸引するクリーニング動作および複数の前記ノズルが配列されるノズル面を拭き取るワイピング動作の少なくとも一方を行う液体吐出装置の制御方法であって、前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ドット抜けが発生しているか否かを判別するドット抜け判別ステップと、前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していると判別された場合に、前記ワイピング動作による前記ドット抜けの解消履歴が残っているか否かを判別する解消履歴判別ステップと、前記解消履歴判別ステップで、前記解消履歴が残っていないと判別された場合に、前記ワイピング動作を行うワイピングステップと、前記解消履歴判別ステップで、前記解消履歴が残っていると判別された場合に、前記ワイピング動作を行わずに前記クリーニング動作を行うクリーニングステップとを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体吐出装置の制御方法では、ドット抜けが発生していると判別された場合、ノズル面を拭き取るワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っていなければ、ワイピング動作を行っている。そのため、ワイピング動作によって、ノズルから吐出される液滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを解消することが可能になる。一方、本発明では、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っていれば、ワイピング動作を行わずに、ノズルから液体を吸引するクリーニング動作を行っている。したがって、ドット抜けを解消するためにワイピング動作が行われることがあっても、ワイピング動作に起因する上述の問題を解決して、ドット抜けを確実に解消することが可能になる。
【0010】
本発明において、液体吐出装置の制御方法は、前記ワイピングステップ後に、前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ワイピング動作で前記ドット抜けが解消されたか否かを判別する第2ドット抜け判別ステップを有し、前記第2ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが解消されていないと判別された場合に、前記クリーニング動作を行うことが好ましい。このように構成すると、ワイピングステップでのワイピング動作でドット抜けが解消されていない場合には、クリーニング動作が行われる。したがって、クリーニング動作によって、ドット抜けを確実に解消することが可能になる。
【0011】
本発明において、液体吐出装置の制御方法は、前記ワイピングステップ後に、前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ワイピング動作で前記ドット抜けが解消されたか否かを判別する第2ドット抜け判別ステップと、前記第2ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが解消されたと判別された場合に、ドット抜け解消フラグをセットするドット抜け解消フラグセットステップとを有していることが好ましい。このように構成すると、次回の前記ドット抜け発生時に、前記解消履歴判別ステップにおいて、前記ドット抜け解消フラグがセットされているか否かを判別することで、前記解消履歴が残っているか否かを判別することが可能になる。
【0012】
本発明において、液体吐出装置の制御方法は、たとえば、前記解消履歴判別ステップで、前記ドット抜け解消フラグがセットされていると判別された場合に、前記ドット抜け解消フラグをリセットするドット抜け解消フラグリセットステップを有し、前記ドット抜け解消フラグリセットステップ後に、前記クリーニングステップを実行する。この場合には、クリーニングステップの前にドット抜け解消フラグがリセットされる。
【0013】
本発明において、液体吐出装置の制御方法は、前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していないと判別された場合に、前記ドット抜け解消フラグをリセットする第2ドット抜け解消フラグリセットステップを有していることが好ましい。このように構成すると、ワイピング動作によって実際にドット抜けが解消した場合には、次回のドット抜け発生時に、まず、ワイピング動作が行われる。したがって、ワイピング動作によってドット抜けが実際に解消されているにもかかわらず、次回のドット抜け発生時にワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っているとして、ワイピング動作を行わずにクリーニング動作を行う場合と比較して、ノズルから吐出される液滴の消費量を低減することができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明の液体吐出装置は、液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、複数の前記ノズルの中で液滴を吐出していない前記ノズルが存在するドット抜けの発生の有無を検査する液滴吐出検査機構と、前記ノズルから液体を吸引する吸引機構と、複数の前記ノズルが配列される前記液体吐出ヘッドのノズル面を拭き取るワイピング機構と、前記ワイピング機構のワイピング動作による前記ドット抜けの解消履歴を記憶可能な記憶手段と、前記ドット抜けが発生したときに、前記記憶手段に前記解消履歴が残っていないと前記ワイピング機構を駆動し、前記記憶手段に前記解消履歴が残っていると前記吸引機構を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の液体吐出装置では、記憶手段がワイピング動作によるドット抜けの解消履歴を記憶可能となっており、駆動手段は、ドット抜けが発生したときに、記憶手段にワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っていないとワイピング機構を駆動する。そのため、ノズルから吐出される液滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを解消することが可能になる。一方、本発明では、駆動手段は、記憶手段にワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っていると吸引機構を駆動する。したがって、ドット抜けを解消するためにワイピング動作が行われることがあっても、ワイピング動作に起因する上述の問題を解決して、ドット抜けを確実に解消することが可能になる。
【0016】
本発明において、前記液体吐出ヘッドは、たとえば、インク滴吐出用の複数の前記ノズルを有するインクジェットヘッドである。この場合には、インクジェットヘッドを備える液体吐出装置において、ノズルから吐出されるインク滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを確実に解消することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】インクジェットプリンターのプリンター機構部を示す概略斜視図。
【図3】ヘッドメンテナンスユニットを取り出して示す斜視図。
【図4】(A)はフラッシング動作時のインクジェットヘッドとヘッドキャップとの関係を示す図、(B)はインク吸引動作時のインクジェットヘッドとヘッドキャップとの関係を示す図。
【図5】ワイピング動作時のインクジェットヘッドとヘッドワイパーとの関係を示す図。
【図6】インク滴吐出検査時のインクジェットヘッドとヘッドキャップの関係を示す図。
【図7】インクジェットプリンターの制御部の一部を示す概略ブロック図。
【図8】インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の液体吐出装置の実施の形態に係るインクジェットプリンター1およびその制御方法を詳細に説明する。
【0019】
(インクジェットプリンターの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンター1の外観斜視図である。図2は、インクジェットプリンター1の、プリンターケース2で覆われているプリンター機構部10を示す概略斜視図である。
【0020】
インクジェットプリンター1は、複数種類のカラーインクを用いてロール紙から繰り出される長尺状の記録紙にカラー印刷を行うものであり、全体として直方体形状をしたプリンターケース2を備えている。プリンターケース2の前面中央部分には、ロール紙装着用の開口部3が形成されている。開口部3は、上端に記録紙排出ガイド4が取り付けられた開閉蓋5によって封鎖されている。記録紙排出ガイド4とプリンターケース2の開口部3の上縁部分との間には、記録紙排出口6が形成されている。不図示のロックを解除して、記録紙排出ガイド4に指を掛けて手前に引くと開閉蓋5を図示の閉位置から、下端を中心として前方に倒れた開位置まで開けることができる。
【0021】
プリンターケース2の前面における開閉蓋5の右側部分には電源スイッチ7a、紙送りスイッチ7b、複数個の動作状態表示ランプ7cなどが配列されている。プリンターケース2の前面における開閉蓋5の左側部分には、プリンター前後方向に延びる縦長の長方形断面のインクカートリッジ装着部8の装着口8aが開口しており、このインクカートリッジ装着部8にインクカートリッジ9が装着されている。不図示のボタンを操作すると、ロックが解除されてインクカートリッジ9がばね力によって前方に押し出され、インクカートリッジ9を引き抜くことが可能となっている。
【0022】
プリンターケース2の内部に配置されるプリンター機構部10は、図2に示すように、金属製の底板11a、左右の側板11b、11cなどから構成されているプリンター本体フレーム11を備えている。プリンター本体フレーム11におけるプリンター前側の中央部分には、ロール紙収納部12が形成されている。開閉蓋5を開けると、ロール紙収納部12が前方に開口し、ロール紙の交換を行うことができる。
【0023】
ロール紙収納部12の上側には、プリンター幅方向にプラテン13が水平に架け渡されている。プラテン13の上側には、インク滴(液滴)吐出用の複数のノズル(インクノズル)が形成されたインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)14が配置されている。インクジェットヘッド14は、複数のインクノズルが配列されるノズル面14a(図4参照)を下側に向けた状態でキャリッジ15に搭載されている。
【0024】
キャリッジ15は、プリンター幅方向に水平に架け渡されたキャリッジガイド軸15aに沿ってプリンター幅方向に往復移動可能となっている。具体的には、キャリッジ15は、プラテン13から右側に外れた図2において実線で示すホームポジション15Aから、プラテン13の左側に外れた図2において二点鎖線で示す左端位置15Bまでの間を移動可能となっている。キャリッジ15には、モーターや、ベルトおよびプーリからなる伝達機構等で構成される駆動機構が連結されている。
【0025】
キャリッジ15には、カラーインクのインクポンプ、たとえば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクポンプ16a〜16dが搭載されている。各インクポンプ16a〜16dには、可撓性インクチューブ17a〜17dの一端がそれぞれに接続されている。可撓性インクチューブ17a〜17dの他端は、インクカートリッジ装着部8の後端側の部位に配置されている上下方向に延びる4本のインク供給路(図示省略)のそれぞれに接続されている。インク供給路のそれぞれは、インクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ9の側に連通している。インクカートリッジ9には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクを貯留しているインク袋が収納されており、これらのインク袋に貯留されている各色のインクが可撓性インクチューブ17a〜17dを介してインクポンプ16a〜16dに供給される。また、インクポンプ16a〜16dに供給されたインクがインクジェットヘッド14に供給される。
【0026】
ロール紙収納部12の右側の部位には、ヘッドメンテナンスユニット20が組み込まれている。キャリッジ15がホームポジション15Aに位置すると、キャリッジ15に搭載されているインクジェットヘッド14のノズル面14aがヘッドメンテナンスユニット20に対して上側から対峙した状態になる。ヘッドメンテナンスユニット20の詳細については、後述する。
【0027】
インクジェットプリンター1は、通常の印刷動作において、ロール紙収納部12に収納されているロール紙から繰り出される記録紙を不図示の搬送機構によってプラテン13の表面に沿って記録紙排出口6の側に搬送し、この搬送に同期させて、インクジェットヘッド14を左右に往復移動させながら記録紙上に印刷を行う。
【0028】
(ヘッドメンテナンスユニットの構成)
図3は、ヘッドメンテナンスユニット20を取り出して示す斜視図である。図4(A)は、フラッシング動作時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図であり、図4(B)は、インク吸引動作時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図である。図5は、ワイピング動作時のインクジェットヘッド14とヘッドワイパー25との関係を示す図である。図6は、インク滴吐出検査時のインクジェットヘッド14とヘッドキャップ22a、22bとの関係を示す図である。
【0029】
ヘッドメンテナンスユニット20は、図3に示すように、全体としてプリンター前後方向に細長い直方体形状をしたユニットケース21を備えている。ユニットケース21の前側部分の上端には、2個のヘッドキャップ22a、22bを備えたヘッドキャップユニット22が配置されている。ヘッドキャップ22a、22bは、キャリッジ走査方向に隣接配置されている。また、ヘッドキャップ22a、22bの上方は開口しており、この開口部分は、インクジェットヘッド14のノズル面14aに対峙している。ヘッドキャップ22a、22bの内部には、インク吸収体23が配置されている。なお、本形態のインクジェットプリンター1は、図4に示すように、インクジェットヘッド14として、キャリッジ走査方向に並列配置された一対のインクジェットヘッド14A、14Bを備えている。
【0030】
ヘッドキャップユニット22の下側には、これらを昇降させるヘッドキャップ昇降機構(図示省略)が組み込まれている。また、ユニットケース21におけるヘッドキャップ昇降機構の後側の部分には、チューブポンプ(図示省略)およびチューブポンプ駆動用のモーター(図示省略)が組み込まれている。
【0031】
図4(B)に示すように、インクジェットヘッド14のノズル面14aをヘッドキャップ22a、22bが下側からキャッピングするキャッピング位置22Aでは、チューブポンプによって各インクノズルからインクを吸引するインク吸引動作が行われる。インク吸引動作で吸引された廃インクは、チューブポンプによって廃インクチューブ24を通って送り出される。廃インクチューブ24は、インクカートリッジ装着部8に装着されているインクカートリッジ9に連通しており、インクカートリッジ9内の廃インク収納部に廃インクが回収される。また、図4(A)に示すように、ヘッドキャップ22a、22bがキャッピング位置22Aよりも下方に退避したフラッシング位置22Bでは、インク吸収体23に向けて各インクノズルから一定量のインク滴を吐出させるフラッシング動作が行われる。本形態では、ヘッドキャップユニット22、チューブポンプおよびチューブポンプ駆動用のモーター等によって、インクノズルからインク(液体)を吸引する吸引機構29(図7参照)が構成されている。
【0032】
また、ヘッドメンテナンスユニット20には、インクジェットヘッド14のノズル面14aに付着している余剰のインクや紙粉などの付着物を拭き取るヘッドワイパー25を備えるワイピング機構26が搭載されている。ヘッドワイパー25は、ゴムなどの可撓性素材によって矩形の薄板状に形成されており、ユニットケース21におけるヘッドキャップユニット22の後側に配置されている。ヘッドワイパー25の前面は、ノズル面14aからインクを拭き取る拭取り面25aとなっている。ヘッドワイパー25の前後両側には、ノズル面14aからインクを拭き取ったときにヘッドワイパー25に付着したインクを吸収するフェルトやスポンジ等の液体吸収体が配置されている。また、ヘッドワイパー25には、ヘッドワイパー25を前後方向に往復移動させるヘッドワイパー駆動機構27が連結されている。
【0033】
ヘッドワイパー駆動機構27は、ヘッドワイパー25を保持する前後方向に長いワイパーケース28の裏面に前後方向に延びるように形成されたラックや、このラックに噛み合うピニオン、このピニオンに駆動源からの回転力を伝達する歯車列等を備えている。本形態では、ヘッドワイパー駆動機構27の駆動源は、チューブポンプ駆動用のモーターである。
【0034】
ヘッドワイパー25は、ヘッドメンテナンスユニット20のユニットケース21の上端縁部分に沿って、プリンター前後方向へ往復移動可能となっている。インクジェットヘッド14がホームポジション15Aにあるときに、ヘッドワイパー25がヘッドキャップユニット22の後側から前側に移動すると、図5に示すように、ヘッドワイパー25が後方に反った状態に撓みながら一対のインクジェットヘッド14A、14Bの一方のノズル面14aを摺動して、ノズル面14aを拭き取るワイピング動作が行われる。
【0035】
また、本形態のヘッドメンテナンスユニット20は、インクジェットヘッド14が有する複数のインクノズルの中でインク滴を吐出していないインクノズルが存在する(すなわち、目詰まりを起こしているインクノズルが存在する)ドット抜けが発生しているか否かを検査する機能を兼ね備えている。
【0036】
図6に示すように、ヘッドキャップ22a、22bの内部には、インク吸収体23に導通可能な状態の金属棒31が配置されており、金属棒31の下端には、リード線32が接続されている。インクジェットヘッド14のインクノズルから帯電したインク滴が吐出され、帯電したインク滴がインク吸収体23に着弾すると、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流に変化が生じる。また、この電流の変化に基づいて、各インクノズルからインク滴が吐出されているか否かを判別することができる。ヘッドメンテナンスユニット20では、このように、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流の変化に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かを検査するインク滴吐出検査が行われる。本形態では、インク吸収体23、金属棒31およびリード線32等によってドット抜けの発生の有無を検査するインク滴吐出検査機構(液滴吐出検査機構)33が構成されている。
【0037】
(制御部の概略構成)
図7は、インクジェットプリンター1の制御部36の一部を示す概略ブロック図である。インクジェットプリンター1の制御部36は、ヘッドメンテナンスユニット20を制御するためのヘッドメンテナンスユニット制御部37を備えている。ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ROMやRAM等のメモリー38およびCPU(図示省略)等を備えている。ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、インク滴吐出検査機構33が接続されており、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、金属棒31およびリード線32を介して取り出される電流の変化に基づいて、ドット抜けが発生しているか否かを判別する。
【0038】
また、ヘッドメンテナンスユニット制御部37には、吸引機構29を駆動する吸引機構駆動回路39と、ワイピング機構26を駆動するワイピング駆動回路40とが接続されている。吸引機構駆動回路39は、チューブポンプ駆動用のモーター等を駆動するための回路である。ワイピング駆動回路40は、ヘッドワイパー駆動機構27を駆動するための回路である。
【0039】
(インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作)
図8は、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作の流れを示すフローチャートである。インクジェットプリンター1では、所定枚数の記録紙への印刷ごとに、ホームポジション15Aにおいて、インク滴吐出検査が行われる。また、インク滴吐出検査の結果、ドット抜けが発生している場合には、インク吸引動作によるインクジェットヘッド14のクリーニング動作、および/または、ワイピング動作を行って、ドット抜けを解消する。以下、図8を参照しながら、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作の流れを説明する。
【0040】
制御部36は、所定枚数の記録紙への印刷が終了すると、ホームポジション15Aにおいて、インクジェットヘッド14のインクノズルから帯電したインク滴を吐出させて、インク滴吐出検査を実施する(ステップS1)。また、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ドット抜けが発生しているか否かを判別する(ステップS2)。
【0041】
ステップS2で、ドット抜けが発生していると判別された場合には、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っているか否かを判別する(ステップS3)。すなわち、ステップS3では、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に記憶されたままであるか否かを判別する。具体的には、ステップS3で、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、前回のドット抜け発生時に後述のステップS7でメモリー38にセットされたドット抜け解消フラグがメモリー38にセットされたままの状態であるか否かを判別する。
【0042】
ステップS3で、メモリー38のドット抜け解消フラグがリセットされている(すなわち、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っていない)と判別された場合には、ドット抜けを解消するため、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ワイピング駆動回路40を制御して、ワイピング機構26を駆動し、ワイピング動作を実施する(ステップS4)。また、制御部36は、ワイピング動作を実施した後に、インク滴吐出検査を実施し(ステップS5)、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ステップS5でのワイピング動作によって、ドット抜けが解消されたか否かを判別する(ステップS6)。
【0043】
ステップS6で、ドット抜けが解消されたと判別されると、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ワイピング動作によってドット抜けが解消されたとの情報を保持するため、ドット抜け解消フラグをメモリー38にセットする(ステップS7)。また、ドット抜け解消フラグがメモリー38にセットされると、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作が正常に終了する。
【0044】
一方、ステップS6で、ドット抜けが解消されていないと判別されると、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、メモリー38内のクリーニングカウンター値を「0」にリセットして(ステップS8)、吸引機構駆動回路39を制御して、吸引機構29を駆動し、クリーニング動作を実施する(ステップS9)。その後、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、現状のクリーニングカウンター値に「1」を加えてクリーニングカウンター値を更新し、更新後のクリーニングカウンター値をメモリー38に記憶する(ステップS10)。また、制御部36は、その後、インク滴吐出検査を実施する(ステップS11)。
【0045】
その後、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ステップS9でのクリーニング動作によってドット抜けが解消されたか否かを判別する(ステップS12)。また、ステップS12では、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、メモリー38に記憶されたクリーニングカウンター値が所定値(たとえば、3)を超えているか否かを判別する。すなわち、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、所定回数のクリーニング動作が行われたか否かを判別する。ステップS12で、ドット抜けが解消されておらず、かつ、クリーニングカウンター値が所定値を超えていないと判別されると、ステップS9へ戻り、クリーニング動作が実施される。一方、ステップS12で、ドット抜けが解消されたと判別されると、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作が正常に終了する。また、ステップS12で、ドット抜けが解消されておらず、かつ、クリーニングカウンター値が所定値を超えたと判別されると、インクジェットプリンター1のホスト装置(図示省略)に警告を上げて、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作が終了する。
【0046】
また、ステップS3で、メモリー38にドット抜け解消フラグがセットされたままの状態である(すなわち、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っている)と判別された場合には、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、メモリー38のドット抜け解消フラグをリセットして(ステップS13)、ステップS8へ進む。すなわち、ステップS13で、ヘッドメンテナンスユニット制御部37が、メモリー38に記憶されたワイピング動作によるドット抜けの解消履歴を消去して、ステップS8へ進む。このように、ステップS3で、メモリー38にドット抜け解消フラグがセットされたままの状態であると判別されると、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、ワイピング動作を行わずにクリーニング動作を実行する。
【0047】
また、ステップS2で、ドット抜けが発生していないと判別された場合には、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、メモリー38のドット抜け解消フラグをリセットする(ステップS14)。すなわち、ステップS14で、ヘッドメンテナンスユニット制御部37は、メモリー38に記憶されたワイピング動作によるドット抜けの解消履歴を消去する。メモリー38のドット抜け解消フラグがリセットされると、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作が正常に終了する。
【0048】
本形態では、ステップS1、S2は、ドット抜け判別ステップであり、ステップS3は、解消履歴判別ステップであり、ステップS4は、ワイピングステップであり、ステップS13を経由したステップS9は、クリーニングステップである。また、ステップS5、S6は、第2ドット抜け判別ステップであり、ステップS7は、ドット抜け解消フラグセットステップであり、ステップS13は、ドット抜け解消フラグリセットステップであり、ステップS14は、第2ドット抜け解消フラグリセットステップである。なお、本形態では、メモリー38は、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴を記憶可能な記憶手段であり、吸引機構駆動回路39およびワイピング駆動回路40は、ドット抜けが発生したときに、記憶手段に解消履歴が残っていないとワイピング機構26を駆動し、記憶手段に解消履歴が残っていると吸引機構39を駆動する駆動手段である。
【0049】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ドット抜けが発生している場合、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っていなければ、ワイピング動作を行う。そのため、ワイピング動作によって、インクノズルから吐出されるインク滴の消費量を低減しつつ、ドット抜けを解消することが可能になる。一方、本形態では、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っていると、ワイピング動作を行わずに、クリーニング動作を行う。したがって、ドット抜けを解消するためにワイピング動作が行われることがあっても、ワイピング動作に起因する上述の問題を解決することができる。また、本形態では、ステップS6で、ドット抜けが解消されていないと判別されると、ドット抜けが解消されるまで、所定回数のクリーニング動作を行う。したがって、ドット抜けを確実に解消することが可能になる。
【0050】
本形態では、ステップS6で、ドット抜けが解消されたと判別されると、ステップS7で、ドット抜け解消フラグをメモリー38にセットする。そのため、次回のドット抜け発生時に、ステップS3において、ドット抜け解消フラグがメモリー38にセットされているか否かを判別することで、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っているか否かを判別することができる。
【0051】
本形態では、ステップS2で、ドット抜けが発生していないと判別されると、ステップS14で、メモリー38のドット抜け解消フラグをリセットする。そのため、ワイピング動作によって実際にドット抜けが解消されている場合には、次回のドット抜け発生時に、まず、ワイピング動作が行われる。したがって、ワイピング動作によってドット抜けが実際に解消されているにもかかわらず、次回のドット抜け発生時にワイピング動作によるドット抜けの解消履歴が残っているとして、ワイピング動作を行わずにクリーニング動作を行う場合と比較して、インクノズルから吐出されるインク滴の消費量を低減することができる。
【0052】
(他の実施の形態)
上述した形態では、ステップS3で、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っていると判別された場合に、ステップS13を経由して、ステップS8へ進んでいるが、ステップS3で、ワイピング動作によるドット抜けの解消履歴がメモリー38に残っていると判別された場合に、そのまま、ステップS8へ進んでも良い。この場合には、たとえば、ステップS8〜ステップS12のいずれかのステップの後に、ステップS13が実行される。
【0053】
上述した形態では、ステップS2で、ドット抜けが発生していないと判別された場合に、メモリー38のドット抜け解消フラグをリセットして、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作を終了させているが、ステップS2で、ドット抜けが発生していないと判別された場合に、そのまま、インク滴吐出検査およびドット抜けを解消するための動作を終了させても良い。
【0054】
上述した形態では、インクジェットプリンター1を例に本発明の液体吐出装置の実施の形態を説明したが、本発明の構成が適用される液体吐出装置は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(面発ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材や色材等の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、精密ピペットとして試料をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置などであっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェットプリンター(液体吐出装置)、14 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)、14a ノズル面、26 ワイピング機構、29 吸引機構、33 インク滴吐出検査機構(液滴吐出検査機構)、38 メモリー(記憶手段)、39 吸引機構駆動回路(駆動手段)、40 ワイピング機構駆動回路(駆動手段)、S1・S2 ドット抜け判別ステップ、S3 解消履歴判別ステップ、S4 ワイピングステップ、S5・S6 第2ドット抜け判別ステップ、S7 ドット抜け解消フラグセットステップ、S9 クリーニングステップ、S13 ドット抜け解消フラグリセットステップ、S14 第2ドット抜け解消フラグリセットステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出用の複数のノズルの中で液滴を吐出しない前記ノズルが存在するドット抜けの発生時に、前記ノズルから液体を吸引するクリーニング動作および複数の前記ノズルが配列されるノズル面を拭き取るワイピング動作の少なくとも一方を行う液体吐出装置の制御方法であって、
前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ドット抜けが発生しているか否かを判別するドット抜け判別ステップと、
前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していると判別された場合に、前記ワイピング動作による前記ドット抜けの解消履歴が残っているか否かを判別する解消履歴判別ステップと、
前記解消履歴判別ステップで、前記解消履歴が残っていないと判別された場合に、前記ワイピング動作を行うワイピングステップと、
前記解消履歴判別ステップで、前記解消履歴が残っていると判別された場合に、前記ワイピング動作を行わずに前記クリーニング動作を行うクリーニングステップとを有していることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項2】
前記ワイピングステップ後に、前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ワイピング動作で前記ドット抜けが解消されたか否かを判別する第2ドット抜け判別ステップを有し、
前記第2ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが解消されていないと判別された場合に、前記クリーニング動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項3】
前記ワイピングステップ後に、前記ドット抜けの発生の有無を検査して、前記ワイピング動作で前記ドット抜けが解消されたか否かを判別する第2ドット抜け判別ステップと、
前記第2ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが解消されたと判別された場合に、ドット抜け解消フラグをセットするドット抜け解消フラグセットステップとを有し、
次回の前記ドット抜け発生時に、前記解消履歴判別ステップにおいて、前記ドット抜け解消フラグがセットされているか否かを判別することで、前記解消履歴が残っているか否かを判別することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項4】
前記解消履歴判別ステップで、前記ドット抜け解消フラグがセットされていると判別された場合に、前記ドット抜け解消フラグをリセットするドット抜け解消フラグリセットステップを有し、
前記ドット抜け解消フラグリセットステップ後に、前記クリーニングステップを実行することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項5】
前記ドット抜け判別ステップで、前記ドット抜けが発生していないと判別された場合に、前記ドット抜け解消フラグをリセットする第2ドット抜け解消フラグリセットステップを有していることを特徴とする請求項3または4に記載の液体吐出装置の制御方法。
【請求項6】
液滴吐出用の複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
複数の前記ノズルの中で液滴を吐出していない前記ノズルが存在するドット抜けの発生の有無を検査する液滴吐出検査機構と、
前記ノズルから液体を吸引する吸引機構と、
複数の前記ノズルが配列される前記液体吐出ヘッドのノズル面を拭き取るワイピング機構と、
前記ワイピング機構のワイピング動作による前記ドット抜けの解消履歴を記憶可能な記憶手段と、
前記ドット抜けが発生したときに、前記記憶手段に前記解消履歴が残っていないと前記ワイピング機構を駆動し、前記記憶手段に前記解消履歴が残っていると前記吸引機構を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドは、インク滴吐出用の複数の前記ノズルを有するインクジェットヘッドであることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−201156(P2011−201156A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71028(P2010−71028)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】