説明

液体吐出装置

【課題】ノズルキャップの大型化やパージ動作における応答性の悪化を防止しつつ、ノズルキャップのリップがノズルに接触するのを防止する。
【解決手段】インク吐出装置10は、インク吐出ヘッド22と、キャップ本体80と、内側リップ82と、外側リップ84と、内側リップ82と外側リップ84との間に位置するリップ空間G2と内側リップ82の内側に位置するキャップ空間G1とを連通する連通孔86とを有するノズルキャップ70と、キャップ空間G1内の空気を吸引することによってキャップ空間G1内に負圧を生じさせる吸引部72と、昇降部74とを備え、内側リップ82および外側リップ84の両方がノズル形成面20aまたはその周辺に密着したときに、複数のノズル20が内側リップ82により取り囲まれた状態でリップ空間G2およびキャップ空間G1の両方が気密的に封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド内の増粘した液体や気泡をノズルから排出させるためのパージ動作を実行することができる、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する「液体吐出装置」の1つとして「インク吐出装置」が周知である。一般的な「インク吐出装置」は、複数のノズルを有するインク吐出ヘッドを備えており、用紙に画像を印刷する際には、複数のノズルからインクが選択的に吐出される。したがって、画像の種類(色、サイズ、形状)に応じて印刷動作中の各ノズルの使用頻度が異なることになり、使用頻度の低いノズルや使用されないノズルにおいては、ノズルに伝わる熱等によってインクが蒸発して増粘し、インクの吐出不良を生じるおそれがある。また、インク吐出ヘッド内のインクに気泡が大量に混入した場合には、気泡によって吐出圧が吸収されるため、インクの吐出不良を生じるおそれがある。
【0003】
そこで、従来では、増粘した液体や気泡をノズルから排出させるためのパージ動作を実行することができる「インク吐出装置」が種々開発されており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の「インク吐出装置」は、複数のノズルを有するインク吐出ヘッドと、複数のノズルを覆うノズルキャップと、ノズルキャップ内の空気を吸引するポンプとを備えている。そして、パージ動作を実行する際には、ノズルキャップの開口部に設けられたリップをインク吐出ヘッドのノズル形成面に密着させることによってノズルキャップ内の空間(以下、「キャップ空間」という。)を密閉し、続いて、キャップ空間内の空気をポンプで吸引することによってキャップ空間内に負圧を発生させ、その負圧によって増粘した液体や気泡をノズルから排出させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−44127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された「インク吐出装置」によれば、増粘した液体や気泡をノズルから排出させることができるので、インクの吐出不良を防止または解消することができる。しかし、キャップ空間内に負圧を発生させたときには、リップの内側(負圧)と外側(大気圧)との間に過大な圧力差が生じるため、リップの強度が不十分であれば、負圧に引かれたリップが変形して内側に倒れ込み、当該リップがノズルに接触することによって、ノズルが汚れたり、メニスカスが破壊されたりするおそれがあった。この問題を解決する手段として、リップの厚みを大きくして強度を高めたり、リップとノズルとの最短距離を長くしてリップがノズルに接触するのを防止したりすることが考えられるが、いずれを採用した場合でも、ノズルキャップが大型化するという問題があった。特に、リップとノズルとの最短距離を長くした場合には、キャップ空間の容積が必要以上に大きくなってしまうため、ポンプを大型のものに交換しない限り、キャップ空間内を負圧にするまでに要する時間が長くなり、パージ動作の応答性が悪くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ノズルキャップの大型化や、パージ動作における応答性の悪化を防止しつつ、ノズルキャップのリップがノズルに接触するのを確実に防止することができる、液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルが形成されたノズル形成面を覆うキャップ本体と、前記キャップ本体と一体に環状に形成された内側リップと、前記内側リップを外側から取り囲むようにして前記キャップ本体と一体に環状に形成された外側リップと、前記内側リップと前記外側リップとの間に位置するリップ空間と前記内側リップの内側に位置するキャップ空間とを連通する連通孔とを有するノズルキャップと、前記キャップ空間内の空気を吸引することによって前記キャップ空間内に負圧を生じさせる吸引手段と、前記ノズルキャップおよび前記液体吐出ヘッドを近接離間する方向に相対移動させる移動手段とを備え、前記移動手段によって前記ノズルキャップと前記液体吐出ヘッドとが互いに近接されて、前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺に密着したときに、前記複数のノズルが前記内側リップにより取り囲まれた状態で前記リップ空間および前記キャップ空間の両方が気密的に封止される、液体吐出装置である。
【0008】
この構成において、移動手段によってノズルキャップと液体吐出ヘッドとが互いに近接されると、内側リップおよび外側リップの両方がノズル形成面またはその周辺に密着し、リップ空間およびキャップ空間の両方が気密的に封止される。この状態では、リップ空間とキャップ空間とが連通孔を介して連通されているので、キャップ空間内の空気を吸引手段で吸引したときでも、キャップ空間内の圧力とリップ空間内の圧力とをほぼ均一に保持することができ、内側リップの内側と外側との圧力差を無くすこと、或いは、小さくすることができる。したがって、内側リップがキャップ空間内の負圧に引かれてノズル側に倒れ込むのを防止することができ、内側リップがノズルに接触するのを確実に防止することができる。
【0009】
また、内側リップがノズル側に倒れ込まないことから、内側リップをノズルに近付けて形成することが可能であり、リップとノズルとの最短距離を短くして、キャップ空間の容積を小さくすることができる。したがって、吸引手段の能力が一定であれば、キャップ空間内の空気を排出する時間(すなわち排気時間)を短縮することができ、パージ動作の応答性を高めることができる。一方、排気時間を短縮する必要がないならば、吸引手段の能力を小さくすることができ、エネルギー消費量の少ない小型のポンプ等を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体吐出装置によれば、内側リップがキャップ空間内の負圧に引かれてノズル側に倒れ込むのを防止することができるので、内側リップをノズルに近付けて形成した場合でも、ノズルキャップのリップがノズルに接触するのを防止することができる。つまり、ノズルキャップの大型化や、パージ動作における応答性の悪化を防止しつつ、リップがノズルに接触するのを防止することができ、「ノズルの汚れ」や「メニスカスの破壊」を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は第1実施形態に係るインク吐出装置の構成を示す平面図である。
【図2】図2は第1実施形態に係るインク吐出装置の構成を示す断面図である。
【図3】図3はノズルキャップの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)はIIIB−IIIB線断面図である。
【図4】図4は補強部材の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は第1実施形態に係るインク吐出装置のパージ動作を示すフロー図である。
【図6】図6は第1実施形態に係るインク吐出装置のパージ動作を示す工程図であり、(A)は第1状態を示す断面図、(B)は第2状態を示す断面図である。
【図7】図7は第1実施形態に係るインク吐出装置のアンキャッピング動作を示すフロー図である。
【図8】図8は第1実施形態に係るインク吐出装置のアンキャッピング動作における第1状態を示す断面図である。
【図9】図9は第2実施形態に係るインク吐出装置の一部の構成(第1状態)を示す断面図である。
【図10】図10は第3実施形態に係るインク吐出装置の一部の構成(第1状態)を示す断面図である。
【図11】図11は第4実施形態に係るインク吐出装置の一部の構成を示す断面図である。
【図12】図12は第5実施形態に係るインク吐出装置の一部の構成を示す断面図である。
【図13】図13は第6実施形態に係るインク吐出装置の一部の構成を示す図であり、(A)はノズルキャップを示す斜視図、(B)はノズルキャップを示す断面図である。
【図14】図14は第6実施形態に係るインク吐出装置に使用される補強部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る「液体吐出装置」について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態に係る「液体吐出装置」は、「液体」としてのインクを用紙に吐出する「インク吐出装置」であるが、本発明は、フィルタ基材等に着色液を吐出する「着色液吐出装置」や、絶縁基板に導電液を吐出する「導電液吐出装置」等のような他の「液体吐出装置」にも適用可能であり、本発明を「着色液吐出装置」または「導電液吐出装置」に適用する場合には、以下の説明で記載した「インク」を「着色液」または「導電液」に読み替えるものとする。また、以下の説明で記載した「下方」とは、インクを吐出する方向を意味し、「上方」とは、その反対の方向を意味する。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るインク吐出装置10は、「吐出対象物」としての用紙Pを印刷領域Qに搬送する用紙搬送部Aと、印刷領域Qに搬送された用紙Pに画像を印刷する印刷部Bと、パージ動作を実行するためのメンテナンス部Cと、これらを制御する制御部Dとを備えている。「用紙搬送部A」、「印刷部B」、「メンテナンス部C」および「制御部D」は、説明の便宜上、機能面に着目して付けた名称であり、これらの部分は、具体的には以下のように構成されている。
【0014】
[用紙搬送部Aの構成]
図1に示すように、用紙搬送部Aは、用紙Pを印刷領域Qに導く搬送経路12と、搬送経路12において印刷領域Qよりも上流側に配置された上流側搬送ローラ14aと、搬送経路12において印刷領域Qよりも下流側に配置された下流側搬送ローラ14bと、搬送ローラ14a,14bを所定のタイミングで回転させる駆動モータ16とを有している。駆動モータ16で搬送ローラ14a,14bを回転させることによって、用紙Pを印刷領域Qに搬送すると、用紙Pの上面が後述するインク吐出ヘッド22のノズル形成面20a(図2)に対向し、用紙Pの上面に対する印刷が可能になる。なお、以下の説明では、用紙Pの搬送方向を「副走査方向Y」といい、副走査方向Yに対して直交する方向を「主走査方向X」という。
【0015】
[印刷部Bの構成]
図1に示すように、印刷部Bは、インクを吐出する複数のノズル20を有するインク吐出ヘッド22と、インク吐出ヘッド22にインクを供給するインク供給部24と、インク吐出ヘッド22を搭載するキャリッジ26と、キャリッジ26を往復移動させる走査部28とを有している。
【0016】
インク吐出ヘッド22は、図2に示すように、複数のノズル20が形成されたノズル形成面20aを有する流路ユニット30と、流路ユニット30に接合された駆動ユニット32とを有している。流路ユニット30は、インクを色ごとに収容する複数のマニホールド(図示省略)を有しており、各マニホールドに対して複数のノズル20が連通されている。駆動ユニット32は、複数のノズル20のそれぞれに個別に対応する駆動部(図示省略)を有しており、駆動ユニット32には、ドライバIC34を介して制御部D(図1)が電気的に接続されている。
【0017】
インク供給部24は、図1に示すように、ブラック(BK)、イエロー(Y)、シアン(C)およびマゼンダ(M)の4色のインクを収容する4つのインクタンク40a〜40dと、インクタンク40a〜40dのそれぞれのインクをインク吐出ヘッド22の流路ユニット30(図2)に供給する4本のインクチューブ42a〜42dとを有している。画像の種類(色、サイズ、形状)に応じた制御信号が制御部DからドライバIC34に付与されると、ドライバIC34から各駆動部に対して駆動信号が付与され、各駆動部に対応するノズル20からインクが選択的に吐出される。
【0018】
キャリッジ26は、図1に示すように、副走査方向Yへ長く延びる略直方体状の部材であり、インク吐出ヘッド22を保持するホルダー部50と、ホルダー部50と一体に形成され、後述するガイドレール60a,60bのそれぞれに摺動自在に取り付けられる摺動部52a,52bとを有している。
【0019】
走査部28は、図1に示すように、キャリッジ26を搬送経路12を横断する方向(すなわち主走査方向X)に往復移動させるものであり、キャリッジ26をガイドする2つの長尺板状のガイドレール60a,60bと、一方のガイドレール60bの長手方向一方端部に設けられた主動プーリ62aと、一方のガイドレール60bの長手方向他方端部に設けられた従動プーリ62bと、主動プーリ62aと従動プーリ62bとの間に掛け渡された環状の駆動ベルト64と、主動プーリ62aを回転させる駆動モータ66とを有しており、駆動ベルト64に対してキャリッジ26が固定されている。
【0020】
なお、本実施形態の印刷部Bは、インク吐出ヘッド22をキャリッジ26で移動させるとともに用紙Pを搬送ローラ14a,14bで移動させながら印刷を行う「シリアル方式」であるが、これに代えて、固定されたライン式のインク吐出ヘッドに対して用紙Pを移動させながら印刷を行う「ライン方式」を採用してもよい。
【0021】
[メンテナンス部Cの構成]
図1および図2に示すように、メンテナンス部Cは、キャリッジ26の停止時にインク吐出ヘッド22のノズル形成面20aを覆うノズルキャップ70と、ノズルキャップ70の内部空間(すなわちキャップ空間)S1から空気および廃インクを吸引する「吸引手段」としての吸引部72と、ノズルキャップ70およびインク吐出ヘッド22を近接離間する方向(本実施形態では上下方向)に相対移動させる「移動手段」としての昇降部74とを有している。
【0022】
ノズルキャップ70は、図3に示すように、キャリッジ26の停止時にインク吐出ヘッド22の複数のノズル20が形成されたノズル形成面20aを覆うキャップ本体80と、キャップ本体80と一体に環状に形成された内側リップ82と、内側リップ82を外側から取り囲むようにしてキャップ本体80と一体に環状に形成された外側リップ84と、キャップ本体80に形成された少なくとも1本(本実施形態では10本)の連通孔86と、3本の連通孔86を同時に補強する2つの第1補強部材88と、2本の連通孔86を同時に補強する2つの第2補強部材89とを有している。
【0023】
キャップ本体80は、平面視略四角形の底部90と、底部90の外周縁から立ち上がって形成された平面視略四角形の環状の側壁部92とを有しており、底部90の中央部には、キャップ空間G1の内部と外部とを連通する排出孔94が形成されている。そして、側壁部92の上端部に内側リップ82および外側リップ84が形成されている。
【0024】
内側リップ82は、ノズルキャップ70の上端開口部においてノズル形成面20aに当接する部分であり、上方に向けて突出する略三角形の断面形状を有して、平面視略四角形の環状に形成されている。外側リップ84は、内側リップ82の外側においてノズル形成面20aに当接する部分であり、上方に向けて突出する略三角形の断面形状を有して、平面視略四角形の環状に形成されている。側壁部92の上端部における内側リップ82と外側リップ84との間には、ノズル形成面20aに対して平行な平坦面92bが形成されている。したがって、本実施形態では、底部90の上面90aと、側壁部92の内周面92aと、内側リップ82の内周面82aとによって凹部96が構成されており、内側リップ82の外周面82bと、平坦面92bと、外側リップ84の内周面84aとによって溝98が構成されている。そして、凹部96の内側にキャップ空間G1が確保されており、溝98の内側にリップ空間G2が確保されている。また、内側リップ82の高さは、外側リップ84の高さよりも高く設計されており、内側リップ82だけがノズル形成面20aに接触する状態(後述の「第1状態」)を取ることができるようになっている。さらに、内側リップ82および外側リップ84の材料には、ノズル形成面20aに密着可能であって、かつ、弾性変形可能であるゴム弾性を有するもの(ゴム、ウレタンエラストマ等)が用いられており、内側リップ82をノズル形成面20aに押し当てて圧縮変形させることによって、内側リップ82および外側リップ84の両方がノズル形成面20aに接触する状態(後述の「第2状態」)を取ることができるようになっている。
【0025】
内側リップ82をノズル形成面20aに密着させる際には、まず、内側リップ82の稜線82cがノズル形成面20aに接触し、その後、内側リップ82が圧縮変形されることによって、稜線82cを挟んだ両側の部分がノズル形成面20aに接触する。したがって、稜線82cの位置がノズル20に近過ぎる場合には、圧縮変形された内側リップ82がノズル20に接触し、ノズル20が汚れたり、メニスカスが破壊されたりするおそれがある。そこで、本実施形態では、圧縮変形された内側リップ82がノズル20に接触することのないように、ノズル20から距離L(図2)を隔てた位置に稜線82cが配置されている。なお、本実施形態では、キャップ空間G1とリップ空間G2とが連通孔86を介して連通されているので、内側リップ82の内側と外側との圧力差を無くすこと、或いは、小さくすることが可能であり、キャップ空間G1に生じた負圧によって内側リップ82が内側に倒れ込むのを防止することができる。したがって、稜線82cの位置を決める際に、内側リップ82の「倒れ込み」を考慮する必要がなく、距離L(図2)を短く設計することによってキャップ空間G1の容積を小さくすることができる。
【0026】
連通孔86は、図3に示すように、内側リップ82と外側リップ84との間に位置するリップ空間G2と内側リップ82の内側に位置するキャップ空間G1とを連通する貫通孔であり、連通孔86の一方端部が側壁部92の内周面92aに開口されており、連通孔86の他方端部が側壁部92の平坦面92bに開口されている。
【0027】
内側リップ82および外側リップ84の両方がノズル形成面20aに密着した「第2状態(図6(B))」に着目したとき、各連通孔86の流路抵抗は、吸引部72によってキャップ空間G1内の空気が吸引されたときに、複数のノズル20のメニスカスのうち最低耐圧のメニスカスが破壊されるより前にリップ空間G2内に残存した空気が連通孔86を通ってキャップ空間G1内に引き込まれるように設計されている。一方、内側リップ82がノズル形成面20aに密着し、かつ、外側リップ84がノズル形成面20aから離間した「第1状態(図6(A))」に着目したとき、各連通孔86の流路抵抗は、吸引部72によってキャップ空間G1内の空気が吸引されたときに、複数のノズル20のメニスカスのうち最低耐圧のメニスカスが破壊されることなくリップ空間G2内の空気が連通孔86を通ってキャップ空間G1内に引き込まれるように設計されている。したがって、「第1状態」および「第2状態」のいずれにおいても、吸引部72によってリップ空間G2内の空気および塵埃等を確実に吸引することができる。なお、連通孔86の数、位置、長さおよび口径は、特に限定されるものではなく、上記流路抵抗が得られる限り適宜増減されてもよい。
【0028】
第1補強部材88は、図4に示すように、ステンレスおよびプラスチック等のような高剛性材料からなる略長方形の板状の本体88aを有しており、本体88aには、3本の連通孔86が挿通される3つの円形の貫通孔88bが長さ方向に並んで形成されている。そして、図3に示すように、第1補強部材88が、3本の連通孔86を取り囲むようにしてキャップ本体80に埋め込まれている。第1補強部材88がキャップ本体80に埋め込まれた状態において、3本の連通孔86は、3つの貫通孔88bのそれぞれに斜めに通っており、第1補強部材88の一部(本実施形態では上部)は、内側リップ82の中に位置している。したがって、第1補強部材88によって、3本の連通孔86が押し潰されるのを防止することができるとともに、内側リップ82が変形して倒れるのを防止することができる。
【0029】
第2補強部材89は、図3に示すように、貫通孔の数が2つである点で第1補強部材88とは相違するが、他の点は第1補強部材88と同様に構成されている。
【0030】
なお、本実施形態に係るノズルキャップ70では、キャップ本体80の全てのノズル20(図2参照)に対応する1つの開口部に、内側リップ82および外側リップ84を一体的に形成しているが、たとえば、ブラック(BK)インクを吐出するノズルに対応する第1開口部および他のインクを吐出するノズルに対応する第2開口部のそれぞれに、内側リップおよび外側リップを一体的に形成してもよい。また、「ライン方式」の印刷部Bを採用する場合には、ライン式のインク吐出ヘッドに対応する長尺のキャップ本体の1つの開口部に、内側リップおよび外側リップを一体的に形成してもよい。さらに、キャップ本体を単なる板状に形成し、その上面に内側リップおよび外側リップを一体的に形成してもよい。
【0031】
吸引部72は、図2に示すように、廃インクタンク100と、廃インクタンク100の入口100aと排出孔94とを連通する廃インク流路102と、廃インク流路102の途中に設けられた吸引ポンプ104とを有している。したがって、吸引ポンプ104を駆動すると、キャップ空間G1内の空気および廃インクが、吸引ポンプ104の負圧に引かれて排出孔94から排出され、廃インク流路102を通して廃インクタンク100に排出される。なお、吸引ポンプ104としては、チューブポンプ等の「一方向ポンプ」および「双方向ポンプ」のいずれも使用可能であるが、逆流の生じない「一方向ポンプ」を用いることが望ましい。
【0032】
昇降部74は、図6(A)に示すように、内側リップ82がノズル形成面20aまたはその周辺に密着し、かつ、外側リップ84がノズル形成面20aまたはその周辺から離間した「第1状態」と、図6(B)に示すように、内側リップ82および外側リップ84の両方がノズル形成面20aまたはその周辺に密着した「第2状態」と、図2に示すように、内側リップ82および外側リップ84の両方がノズル形成面20aまたはその周辺から離間した「第3状態」とを切り換える機能を有するものであり、具体的には、図2に示すように、ノズルキャップ70の底面から下方に突出して形成された操作棒110と、ノズルキャップ70を下方に向けて付勢するコイルバネ112と、ノズルキャップ70をコイルバネ112の付勢に抗して持ち上げるカム114と、ピニオンギア116と、ピニオンギア116を回転させる駆動モータ118とを有している。
【0033】
カム114は、「第2状態(図6(B))」において操作棒110の下端部を受ける上側受け面114aと、「第3状態(図2)」において操作棒110の下端部を受ける下側受け面114bと、上側受け面114aと下側受け面114bとを滑らかに連続させるとともに、「第1状態(図6(A))」において操作棒110の下端部を受ける傾斜面114cとを有する略三角形の板状またはブロック状の部材であり、カム114の底面には、ピニオンギア116と噛み合うラックギア114dが形成されている。したがって、駆動モータ118でピニオンギア116を回転させると、カム114が上下方向に対して直交する方向に移動され、ピニオンギア116の回転方向に応じて、操作棒110の下端部が上側受け面114aから傾斜面114cを通って下側受け面114bに相対移動され、或いは、下側受け面114bから傾斜面114cを通って上側受け面114aに相対移動される。
【0034】
なお、本実施形態では、ノズルキャップ70を昇降させることによって、ノズルキャップ70およびインク吐出ヘッド22を近接離間する方向に相対移動させているが、インク吐出ヘッド22を昇降させることによって、或いは、ノズルキャップ70およびインク吐出ヘッド22の両方を昇降させることによって、ノズルキャップ70およびインク吐出ヘッド22を近接離間する方向に相対移動させるようにしてもよい。これらの場合には、各昇降動作に適した昇降部が「移動手段」として用いられる。
【0035】
[制御部Dの構成]
図1に示すように、制御部Dは、「用紙搬送部A」の駆動モータ16、「印刷部B」のドライバIC34(図2)および駆動モータ66、「メンテナンス部C」の吸引ポンプ104および駆動モータ118等の駆動部品を制御するものであり、図示していないが、各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)および各種のプログラムまたはデータを記憶する記憶装置(RAM、ROM)等を有している。そして、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)等に対して、上記駆動部品のそれぞれが電気配線120a〜120eを介して電気的に接続されている。
【0036】
[印刷動作]
図1に示すように、インク吐出装置10の印刷動作が開始されると、搬送ローラ14a,14bが回転されることによって、用紙Pが印刷領域Qに所定のタイミングで搬送される。また、駆動ベルト64が回転されることによって、キャリッジ26が主走査方向Xに往復移動される。そして、ドライバIC34からインク吐出ヘッド22の複数の駆動部に駆動信号が与えられることによって、当該駆動部に対応する複数のノズル20からインクが選択的に吐出され、用紙Pの上面に画像が印刷される。
【0037】
[パージ動作]
以下には、図5(フロー図)および図6(工程図)に従って、メンテナンス部Cおよび制御部Dによる「パージ動作」を説明する。
【0038】
図5に示すように、「印刷動作」から「パージ動作」に移行する際には、まず、ステップS1において、インク吐出装置10の状態が印刷時の「第3状態」から「第1状態」に移行される。つまり、「印刷動作」の終了時のインク吐出装置10は、図2に示すように「第3状態」にあるが、ステップS1では、昇降部74でノズルキャップ70が持ち上げられることによって、図6(A)に示す「第1状態」が取られる。
【0039】
ステップS3(図5)では、吸引ポンプ104が駆動され、キャップ空間G1内の空気と共にリップ空間G2内の空気が連通孔86を通して吸引され、リップ空間G2内に溜まった塵埃や廃インクが当該空気と共に廃インクタンク100に排出される。図6(A)中の矢印は、この工程における空気等の流れを示したものである。なお、この工程では、キャップ空間G1内に負圧が発生するが、上述のように、ノズル20のメニスカスが破壊されないように連通孔86の流路抵抗が設計されているので、リップ空間G2内に溜まった塵埃や廃インクを空気と共に効率よく吸引除去することができる。
【0040】
ステップS5(図5)では、インク吐出装置10の状態が「第1状態」から「第2状態」に移行される。つまり、図6(B)に示すように、リップ空間G2内に溜まった塵埃や廃インクを吸引除去するのに十分な時間が経過すると、駆動モータ118によってピニオンギア116が回転され、昇降部74でノズルキャップ70が持ち上げられることによって「第2状態」が取られる。なお、この工程では、内側リップ82がノズル形成面20aに押し当てられて圧縮変形されるが、内側リップ82の稜線82cは、ノズル20から距離L(図2)を隔てた位置に配置されているので、圧縮変形された内側リップ82がノズル20に接触することはなく、ノズル20が汚れたり、メニスカスが破壊されたりするのを防止することができる。
【0041】
ステップS7(図5)では、吸引ポンプ104が駆動され、キャップ空間G1内の空気と共に複数のノズル20内のインクが吸引除去される。この工程では、キャップ空間G1およびリップ空間G2の両方がノズル形成面20aによって気密的に封止されているが、上述のように、キャップ空間G1内の空気が吸引されたときに、最低耐圧のメニスカスが破壊されるより前にリップ空間G2内に残存した空気が連通孔86を通ってキャップ空間G1内に引き込まれるように連通孔86の流路抵抗が設計されているので、リップ空間G2内に残存した塵埃や廃インクを残存空気と共に確実に吸引除去することができる。キャップ空間G1内の圧力は、リップ空間G2内に残存した空気等が吸引除去される過程で徐々に低下し、当該圧力が所定圧力よりも低くなると、その圧力(負圧)によって複数のノズル20の全てのメニスカスが破壊され、インク吐出ヘッド22内の増粘したインクや気泡が正常なインクと共に複数のノズル20のそれぞれから排出される。図6(B)中の矢印は、この工程における廃インク等の流れを示したものである。
【0042】
なお、「パージ動作」における昇降部74の動作は、ノズルキャップ70でノズル形成面20aを覆う「キャッピング動作」であり、インク吐出ヘッド22内の増粘したインクや気泡を排出させる必要がない場合には、吸引部72を動作させずに「キャッピング動作」だけを実行するようにしてもよい。
【0043】
[アンキャッピング動作]
以下には、図7(フロー図)および図8(工程図)に従って、制御部Dによる「アンキャッピング動作」を説明する。
【0044】
図7に示すように、「パージ動作」の終了後、「アンキャッピング動作」を実行する際には、まず、ステップS9において、インク吐出装置10の状態がパージ動作時の「第2状態」から「第1状態」に移行される。つまり、「パージ動作」の終了時のインク吐出装置10は、図6(B)に示すように「第2状態」にあるが、ステップS9では、昇降部74でノズルキャップ70が降下されることによって、図8に示す「第1状態」が取られる。
【0045】
続くステップS11(図7)では、「第1状態」を保持した状態でノズルキャップ70およびインク吐出ヘッド22の相対的な動きが停止される。「第2状態」から「第1状態」に移行する際には、ノズル形成面20aから外側リップ84が離間する程度にノズルキャップ70を少しだけ降下させればよいので、キャップ空間G1およびリップ空間G2の内部が負圧であるにもかかわらず、ノズルキャップ70の自重とコイルバネ112の復元力とによって「第1状態」を取ることができる。しかし、インク吐出装置10を「第2状態」から「第3状態」まで一気に移行させようとすると、当該負圧がブレーキとなって「アンキャッピング動作」を円滑に行うことができなくなる。そこで、ステップS11(図7)では、「第1状態」を保持し、図8中の矢印で示すように、大気中の空気をリップ空間G2から連通孔86を通してキャップ空間G1内に流入させることによって、キャップ空間G1内の圧力を上昇させるようにしている。この工程では、内側リップ82がノズル形成面20aに密着しているので、リップ空間G2から取り込まれる空気がノズル20に触れて悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0046】
次のステップS13(図7)では、インク吐出装置10の状態が「第1状態」から「第3状態」に移行される。つまり、ステップS11においてキャップ空間G1内の圧力が十分に上昇すると、図2に示すように、駆動モータ118によってピニオンギア116が回転され、昇降部74でノズルキャップ70がさらに降下される。
【0047】
(第2実施形態)
図9に示す第2実施形態に係るインク吐出装置120は、第1実施形態に係るインク吐出装置10(図1、図2)のインク吐出ヘッド22をインク吐出ヘッド122に変更するとともに、ノズルキャップ70をノズルキャップ124に変更したものであり、その他の部分の構成や各種の動作は、インク吐出装置10と同様である。なお、図9では、インク吐出装置10の各部分に対応する箇所に当該部分と同じ参照番号を付している(以下の第3〜6実施形態において同じ。)。
【0048】
インク吐出ヘッド122は、複数のノズル126が形成されたノズル形成面126aを有する流路ユニット128と、流路ユニット128に接合された駆動ユニット130とを有しており、流路ユニット128のノズル形成面126aと駆動ユニット130の下面(以下、「外側リップ当接面」という。)130aとの間には、段差132が形成されている。ノズルキャップ124は、内側リップ124aの高さが外側リップ124bの高さと同じに設計されている点においてノズルキャップ70(図3)とは相違しているが、他の点はノズルキャップ70(図3)と同様である。
【0049】
そして、図9に示すように、インク吐出装置120が「第1状態」にあるときには、内側リップ124aがノズル形成面126aに密着するとともに、外側リップ124bが外側リップ当接面130aから離間し、外側リップ124bと外側リップ当接面130aとの隙間からリップ空間G2内に空気が取り込まれる。一方、図示していないが、インク吐出装置120が「第2状態」にあるときには、内側リップ124aがノズル形成面126aに密着するとともに、外側リップ124bがノズル形成面126aの周辺の外側リップ当接面130aに密着し、キャップ空間G1およびリップ空間G2の両方が気密的に封止される。
【0050】
(第3実施形態)
図10に示す第3実施形態に係るインク吐出装置140は、第1実施形態に係るインク吐出装置10(図1、図2)のインク吐出ヘッド22をインク吐出ヘッド142に変更するとともに、ノズルキャップ70をノズルキャップ144に変更したものである。
【0051】
インク吐出ヘッド142は、複数のノズル146が形成されたノズル形成面146aを有する流路ユニット148と、流路ユニット148に接合された駆動ユニット150とを有しており、流路ユニット148のノズル形成面146aとキャリッジ26の下面(以下、「外側リップ当接面」という。)26aとの間には、段差152が形成されている。ノズルキャップ144は、内側リップ144aの高さが外側リップ144bの高さよりも低く設計されている点においてノズルキャップ70(図3)とは相違しているが、他の点はノズルキャップ70(図3)と同様である。
【0052】
そして、図10に示すように、インク吐出装置140が「第1状態」にあるときには、内側リップ144aがノズル形成面146aに密着するとともに、外側リップ144bが外側リップ当接面26aから離間し、外側リップ144bと外側リップ当接面26aとの隙間からリップ空間G2内に空気が取り込まれる。一方、図示していないが、インク吐出装置140が「第2状態」にあるときには、内側リップ144aがノズル形成面146aに密着するとともに、外側リップ144bがノズル形成面146aの周辺の外側リップ当接面26aに密着し、キャップ空間G1およびリップ空間G2の両方が気密的に封止される。
【0053】
(第4実施形態)
図11に示す第4実施形態に係るインク吐出装置160は、第1実施形態に係るインク吐出装置10(図1、図2)のインク吐出ヘッド22をインク吐出ヘッド162に変更するとともに、ノズルキャップ70をノズルキャップ164に変更したものである。
【0054】
インク吐出ヘッド162は、複数のノズル166が形成されたノズル形成面166aを有する流路ユニット168と、流路ユニット168に接合された駆動ユニット170とを有しており、流路ユニット168のノズル形成面166aとキャリッジ26の下面(以下、「外側リップ当接面」という。)26bとは面一に形成されている。また、キャリッジ26には、空気流入孔172が形成されており、空気流入孔172の一方端部は外側リップ当接面26bに開口されており、空気流入孔172の他方端部はキャリッジ26の上面に開口されており、当該他方端部には、電気信号によって駆動される自動開閉弁174が取り付けられている。ノズルキャップ164は、内側リップ164aと外側リップ164bとが同じ高さで形成されている点においてノズルキャップ70(図3)とは相違しているが、他の点はノズルキャップ70(図3)と同様である。
【0055】
そして、インク吐出装置160では、図11に示すように、キャップ空間G1およびリップ空間G2の両方が密閉された状態で自動開閉弁174を開くことによって、リップ空間G2に空気を取り込む状態(以下、「吸気状態」という。)を取ることができ、リップ空間G2内に溜まった塵埃や廃インクを、連通孔86およびキャップ空間G1を通して吸引除去することができる。つまり、「吸気状態」を取ることによって、上記「第1状態」と同様の吸引除去動作を実行することができる。
【0056】
(第5実施形態)
図12に示す第5実施形態に係るインク吐出装置180は、第4実施形態に係るインク吐出装置160(図11)における空気流入孔172を空気流入孔182に変更するとともに、自動開閉弁174を機械式の自動開閉弁184に変更したものである。
【0057】
空気流入孔182は、キャリッジ26の内部に略L状に構成されたものであり、空気流入孔182の一方端部は外側リップ当接面26cに開口されており、空気流入孔182の他方端部はキャリッジ26の側部に形成された穴26d内に開口されている。そして、当該他方端部には、弁体186が回動可能に取り付けられており、弁体186を開閉操作するための棒状部材188が、取付部材190を介してノズルキャップ70に、昇降可能に取り付けられている。また、昇降部74のカム114には、棒状部材188を持ち上げるための傾斜面192aを有する操作部192が一体的に形成されており、棒状部材188の下端部が傾斜面192aに沿って持ち上げられたときに、棒状部材188の上端部が弁体186を押圧し、空気流入孔182の他方端部が開かれるようになっている。
【0058】
(第6実施形態)
第6実施形態に係るインク吐出装置(図示省略)は、第1実施形態に係るインク吐出装置10(図1、図2)のノズルキャップ70を図13に示すノズルキャップ200に変更したものである。
【0059】
図13に示すように、ノズルキャップ200では、内側リップ202と外側リップ204との間に平坦面は存在せず、内側リップ202の外周面202aと外側リップ204の内周面204aとによって略V状の溝206が構成されている。そして、内側リップ202の外周面202aに連通孔208の端部が開口されており、補強部材210が、複数の連通孔208を囲むようにしてキャップ本体212に埋め込まれている。図14に示すように、補強部材210は、上部が開放された略U状の切欠210aを有しており、切欠210aに連通孔208が挿通されている。
【0060】
(第7実施形態)
第7実施形態に係るインク吐出装置(図示省略)は、第1実施形態に係るインク吐出装置10(図1、2)に対して、ノズル形成面20aを用紙P等から保護するためのノズルガイド(図示省略)を、ノズル20が形成された領域の周囲に位置するように設けたものである。そして、第7実施形態において、インク吐出装置が「第1状態」にある場合には、外側リップ84とノズルガイドとが離間するように、ノズルキャップ70が位置付けられる。一方、「第2状態」にある場合には、外側リップ84がノズルガイドに密着するように、ノズルキャップ70が位置付けられる。
【0061】
(第8実施形態)
第8実施形態に係るインク吐出装置(図示省略)では、「パージ動作」において、ステップS7(図5)の後に、インク吐出装置10の状態が「第2状態」から「第1状態」に移行され、キャップ空間G1が大気開放される。このとき、ノズル20からインクの排出が停止される。同時に、吸引ポンプ104を駆動して、キャップ空間G1内のインクを排出する。これにより、ノズルキャップ70のキャップ空間G1内に残存するインクを排出することができる。
【符号の説明】
【0062】
A… 用紙搬送部
B… 画像形成部
C… メンテナンス部
D… 制御部
G1… キャップ空間
G2… リップ空間
P… 用紙(吐出対象物)
Q… 印刷領域
X… 主走査方向
Y… 副走査方向
10,120,140,160,180… インク吐出装置
20a… ノズル形成面
20… ノズル
22… インク吐出ヘッド
24… インク供給部
26… キャリッジ
28… 走査部
30… 流路ユニット
32… 駆動ユニット
34… ドライバIC
70… ノズルキャップ
72… 吸引部(吸引手段)
74… 昇降部(移動手段)
80… キャップ本体
82c… 稜線
82… 内側リップ
84… 外側リップ
86… 連通孔
88… 第1補強部材
89… 第2補強部材
94… 排出孔
100… 廃インクタンク
102… 廃インク流路
104… 吸引ポンプ(一方向ポンプ)
112… コイルバネ
114… カム
174,184… 自動開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記複数のノズルが形成されたノズル形成面を覆うキャップ本体と、前記キャップ本体と一体に環状に形成された内側リップと、前記内側リップを外側から取り囲むようにして前記キャップ本体と一体に環状に形成された外側リップと、前記内側リップと前記外側リップとの間に位置するリップ空間と前記内側リップの内側に位置するキャップ空間とを連通する連通孔とを有するノズルキャップと、
前記キャップ空間内の空気を吸引することによって前記キャップ空間内に負圧を生じさせる吸引手段と、
前記ノズルキャップおよび前記液体吐出ヘッドを近接離間する方向に相対移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段によって前記ノズルキャップと前記液体吐出ヘッドとが互いに近接されて、前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺に密着したときに、前記複数のノズルが前記内側リップにより取り囲まれた状態で前記リップ空間および前記キャップ空間の両方が気密的に封止される、液体吐出装置。
【請求項2】
前記連通孔の流路抵抗は、前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺に密着した状態で前記吸引手段によって前記キャップ空間内の空気が吸引されたときに、前記複数のノズルのメニスカスのうち最低耐圧のメニスカスが破壊されるより前に前記リップ空間内に残存した空気が前記連通孔を通って前記キャップ空間内に引き込まれるように設計されている、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記連通孔の流路抵抗は、前記内側リップが前記ノズル形成面またはその周辺に密着し、かつ、外側リップが前記ノズル形成面またはその周辺から離間した状態で前記吸引手段によって前記キャップ空間内の空気が吸引されたときに、前記複数のノズルのメニスカスのうち最低耐圧のメニスカスが破壊されることなく前記リップ空間内の空気が前記連通孔を通って前記キャップ空間内に引き込まれるように設計されている、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記内側リップが前記ノズル形成面またはその周辺に密着し、かつ、前記外側リップが前記ノズル形成面またはその周辺から離間した第1状態と、前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺に密着した第2状態と、前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺から離間した第3状態とを切り換える機能を有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
内側リップの高さは、外側リップの高さよりも高く設計されている、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記キャップ本体には、前記連通孔を取り囲むようにして補強部材が埋め込まれており、前記補強部材の一部が前記内側リップの中に位置している、請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吸引手段と前記移動手段とを制御する第1制御手段をさらに備えており、
前記液体吐出ヘッド内の液体を前記複数のノズルから排出させるためのパージ動作を実行する際には、前記第1制御手段が、
(a)前記内側リップが前記ノズル形成面またはその周辺に密着し、かつ、前記外側リップが前記ノズル形成面またはその周辺から離間した第1状態をとるように前記移動手段を制御する工程と、
(b)前記キャップ空間内の空気と共に前記リップ空間内の空気を吸引するように前記吸引手段を制御する工程と、
(c)前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺に密着した第2状態をとるように前記移動手段を制御する工程と、
(d)前記キャップ空間内の空気と共に前記複数のノズル内の液体を吸引するように前記吸引手段を制御する工程とを順に実行する、請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記吸引手段と前記移動手段とを制御する第2制御手段をさらに備えており、
前記吸引手段は、逆流の生じない一方向ポンプを有しており、
前記液体吐出ヘッドから前記ノズルキャップを離脱させるためのアンキャッピング動作を実行する際には、前記第2制御手段が、
(a)前記内側リップが前記ノズル形成面またはその周辺に密着し、かつ、前記外側リップが前記ノズル形成面またはその周辺から離間した第1状態をとるように前記移動手段を制御する工程と、
(b)前記第1状態を保持した状態で前記ノズルキャップおよび前記液体吐出ヘッドの相対的な動きを停止させるように前記移動手段を制御する工程と、
(c)前記内側リップおよび前記外側リップの両方が前記ノズル形成面またはその周辺から離間した第3状態をとるように前記移動手段を制御する工程とを順に実行する、請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−31465(P2011−31465A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179385(P2009−179385)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】