説明

液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】接着剤溜まりの形成を抑制して歩留まりの向上を図ることができる液体噴射ヘッ
ドの製造方法を提供する。
【解決手段】第1のウエハー110上に圧力発生素子300を形成する工程と、第2のウ
エハー130に第1のウエハー110を接着剤35によって接合して接合体250を形成
する工程と、第1のウエハー110をウェットエッチングすることにより圧力発生室12
等の流路を形成する工程と、接合体250をサイズの複数のチップに分割する工程と、を
備えると共に、接合体250を形成する工程の前に、第1又は第2のウエハー110,1
30の少なくとも何れか一方の他方との接合面の外周部に接着剤35の余剰分が流れ込む
凹部を形成する工程を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力発生素子によって圧力発生室内の液体をノズルから噴射させる液体噴射
ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表的な例であるインクジェット式記録ヘッドの構造としては、例え
ば、ノズルに連通する圧力発生室が形成されるシリコン基板からなる流路形成基板と、こ
の流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接
着されて圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板(保護基板)とを有するも
のがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような構造のインクジェット式記録ヘッドは、例えば次のように製造される
。まず流路形成基板が複数一体的に形成されるシリコンウエハーの一方面側に振動板を介
して圧電素子を形成する。そして、このシリコンウエハーに封止基板となる封止基板形成
材を接着剤によって接合し、封止基板形成材が接合された状態でシリコンウエハーをアル
カリ溶液でウェットエッチングすることにより圧力発生室等を形成する。その後、シリコ
ンウエハーを所定のチップサイズに分割することにより、インクジェット式記録ヘッドが
製造される。
【0004】
また、近年のヘッドの小型化に伴い、流路形成基板として比較的厚みの薄いシリコン基
板が用いられてきている。このように比較的厚みの薄い流路形成基板を有するインクジェ
ット式記録ヘッドの製造方法としては、例えば、流路形成基板用ウエハー(シリコンウエ
ハー)に保護基板用ウエハーを接着剤によって接合した後、流路形成基板用ウエハーを所
定の薄さに加工した後、例えば、ウェットエッチングにより圧力発生室等を形成する方法
がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−266394号公報
【特許文献2】特開2004−82722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように流路形成基板用ウエハー(第1のウエハー)と保護基板用ウエハー(第2
のウエハー)とは接着剤によって接合されている。このため、例えば、図10に示すよう
に、第1のウエハー510と第2のウエハー530とを接着剤535によって接合して接
合体500を形成する際に、接着剤535の余剰分が接合体500の外周部側に押し出さ
れ、接合体500の外周縁部の外側まではみ出して接着剤535が溜まった、いわゆる接
着剤溜まり535aが形成されてしまう。
【0007】
この接着剤溜まりは、ウェットエッチングにより圧力発生室を形成する際に、エッチン
グ液によってダメージを受けて容易に脱落する。接着剤溜まりが脱落した異物が第1又は
第2のウエハーに付着すると、それに起因して歩留まりの低下を招く虞がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、接着剤溜まりの形成を抑制して
歩留まりの向上を図ることができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、液滴を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成され
る第1の基板と、該第1の基板の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力を発生させ
る圧力発生素子と、前記第1の基板の前記一方面側に接合された第2の基板とを具備する
液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記第1の基板が複数一体的に形成される第1のウ
エハー上に前記圧力発生素子を形成する工程と、前記第2の基板が複数一体的に形成され
る第2のウエハーに前記第1のウエハーを接着剤によって接合して接合体を形成する工程
と、前記第1のウエハーをウェットエッチングすることにより前記圧力発生室を形成する
工程と、前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程と、を備えると共に、且
つ前記接合体を形成する工程の前に、前記第1又は第2のウエハーの少なくとも何れか一
方の他方との接合面の外周部に前記接着剤の余剰分が流れ込む凹部を形成する工程を備え
ることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる本発明では、第1のウエハーと第2ウエハーとを接合する際に、これらのウエハ
ーを接合するための接着剤の余剰分が凹部内に流れ込むため、接合体の外周部に接着剤溜
まりが形成されるのを抑制することができる。このため、その後に第1のウエハーをウェ
ットエッチングして圧力発生室を形成する際に、接着剤溜まりの脱落を実質的に防止する
ことができる。すなわち接着剤溜まりが脱落した異物が第1又は第2の基板に付着するこ
とによる製造不良の発生を実質的に防止することができる。
【0010】
ここで、前記第1又は第2のウエハーの全周に亘って連続的に前記凹部を形成すること
が好ましい。また前記第1又は第2のウエハーの径方向に前記凹部を複数形成することが
好ましい。また前記第1のウエハー又は前記第2のウエハーの一方が他方よりも大径であ
る場合には、前記接合面の外周部の露出される部分に前記凹部を形成することが好ましい
。また前記第1のウエハーと前記第2のウエハーとのそれぞれに前記凹部を形成すること
が好ましい。これにより、接着剤の余剰分が凹部内により確実に流れ込み、接合体の外周
部に接着剤溜まりが形成されるのをさらに抑制することができる。
【0011】
さらに前記第1のウエハーと前記第2のウエハーとのそれぞれに前記凹部を形成する場
合には、前記第1のウエハーと前記第2のウエハーとで異なる位置に前記凹部を形成する
ことが好ましい。これにより、接合体の外周部に接着剤溜まりが形成されるのを抑制しつ
つ、接合体の外周部の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の概略を示す断面図である。
【図4】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の概略を示す断面図である。
【図5】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の変形例を示す平面図である。
【図6】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の変形例を示す断面図である。
【図7】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の変形例を示す平面図である。
【図8】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の変形例を示す断面図である。
【図9】一実施形態に係る記録ヘッドの製造工程の変形例を示す断面図である。
【図10】従来技術に係る記録ヘッドの製造過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断
面図である。
【0014】
図示するように、シリコン基板からなる第1の基板である流路形成基板10は、その一
方面に酸化膜からなる弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11に
よって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。流路形成基板1
0の圧力発生室12の長手方向一端側には、隔壁11によって区画され各圧力発生室12
に連通するインク供給路13と連通路14とが設けられている。さらに、連通路14の外
側には、各連通路14と連通する連通部15が設けられている。この連通部15は、後述
する第2の基板である保護基板30のリザーバー部32と連通して、各圧力発生室12の
共通のインク室(液体室)となるリザーバー100を構成する。
【0015】
流路形成基板10の他方面側には、各圧力発生室12に連通するノズル21が穿設され
たノズルプレート20が、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられる絶縁膜
51を介して接合されている。このノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス
、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。なお絶縁膜51を除去して流路形
成基板10に直接ノズルプレート20を接合するようにしてもよい。
【0016】
流路形成基板10の一方面側には上述したように弾性膜50が形成されており、この弾
性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料からなる絶縁体膜55が形成されている。さ
らに、この絶縁体膜55上には、圧力発生室12内に圧力を発生させる圧力発生素子とし
ての圧電素子300が形成されている。本実施形態では、圧電素子300は、絶縁体膜5
5上に形成された共通電極である下電極膜60と、下電極膜60上に形成された圧電体層
70と、圧電体層70上に形成された個別電極である上電極膜80とで構成されている。
また圧電素子300の各上電極膜80には、リード電極90がそれぞれ接続されており、
このリード電極90を介して各上電極膜80と後述する駆動ICとが接続されている。
【0017】
流路形成基板10の圧電素子300側の面、具体的には下電極膜60、弾性膜50及び
リード電極90上には、圧電素子300を保護するための圧電素子保持部31を有する第
2の基板である保護基板30が、例えば、接着剤35によって接合されている。保護基板
30には、圧電素子保持部31と共にリザーバー部32が設けられている。このリザーバ
ー部32は、上述のように流路形成基板10に形成された連通部15と連通してリザーバ
ー100を構成している。
【0018】
保護基板30の材料は、特に限定されないが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の
材料、例えば、ガラス材料、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では
、流路形成基板10と同一材料であるシリコン基板を用いている。
【0019】
また保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられてお
り、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、この貫通孔33内
に露出されている。保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆
動IC200が固定されている。そして、駆動IC200とリード電極90とが、貫通孔
33内に延設されるボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線210に
よって電気的に接続されている。
【0020】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40
が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなる。リ
ザーバー部32の一方面はこの封止膜41によって封止されている。また、固定板42は
、金属等の硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する
領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっており、リザーバー100の一方
面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0021】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給
手段からインクを取り込み、リザーバー100からノズル21に至るまで内部をインクで
満たした後、駆動IC200からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれ
の圧電素子300に電圧を印加して撓み変形させることにより、各圧力発生室12内の圧
力が高まりノズル21からインク滴が噴射される。
【0022】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照
して説明する。
まずは、図3(a)に示すように、複数の流路形成基板10が一体的に形成される流路
形成基板用ウエハー(第1のウエハー)110の一方面側に、弾性膜50、絶縁体膜55
、圧電素子300及びリード電極90を順次形成する。なお、これら圧電素子300等の
形成方法は、公知の技術であるため詳細な説明は省略する。また流路形成基板用ウエハー
110の外周縁部には面取り部111が設けられている。この面取り部111を設けるこ
とで、流路形成基板用ウエハー110の外周部における欠けや割れ等の発生を抑制してい
る。
【0023】
一方、図3(b)に示すように、複数の保護基板30が一体的に形成される保護基板用
ウエハー130に、各保護基板30に対応する圧電素子保持部31、リザーバー部32及
び貫通孔33を、例えば、エッチング等によって形成する。さらに、保護基板用ウエハー
130の流路形成基板用ウエハーとの接合面の外周部に凹部131を形成する。ここで、
保護基板用ウエハー130の外周部とは、保護基板30となる領域よりも外側の部分をい
う。この凹部131は、後述する工程で流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエ
ハー130とを接着剤35によって接合する際に、接着剤35の余剰分を流れ込ませるた
めのものである。この凹部131は、図5に示すように、保護基板用ウエハー130の外
周縁部に沿って保護基板用ウエハー130の全周に亘って連続的に形成する。さらに本実
施形態では、図3(b)に示すように、保護基板用ウエハー130の流路形成基板用ウエ
ハー110との接合面の外周部に、その径方向に沿って凹部131を複数(例えば、3つ
)設けるようにした。これら複数の凹部131は、例えば、同心円状に設けられている。
【0024】
なお保護基板用ウエハー130の外周縁部には、流路形成基板用ウエハー110と同様
に、例えば、R形状の面取り部132が予め設けられている。これにより保護基板用ウエ
ハー130の外周部に欠けや割れ等が発生することを抑制している。このように保護基板
用ウエハー130の面取り部132に設ける場合には、凹部131は面取り部132より
も内側の領域に設けられていることが好ましい。
【0025】
次に図3(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエハー1
30とを接着剤35によって接合してウエハー接合体250を形成する。このとき、ウエ
ハー接合体250の外側に向かって押し出された接着剤35の余剰分は、保護基板用ウエ
ハー130の外周部に設けられている凹部131内に流れ込む。このため、接着剤35の
余剰分が、ウエハー接合体250の外周縁部よりも外側まではみ出すのを抑制することが
できる。つまりウエハー接合体250の外周縁部の外側に、いわゆる接着剤溜まりが形成
されるのを実質的に防止することができる。
【0026】
なお本実施形態では、第2の基板である保護基板用ウエハー130に接着剤35の逃げ
溝である凹部131を形成するようにしたが、この凹部131の代わりに、例えば、図6
に示すように第1のウエハーである流路形成基板用ウエハー110に凹部112を形成す
るようにしてもよい。また本実施形態では、各凹部131を保護基板用ウエハー130の
全周に亘って連続して形成するようにしたが、例えば、図7(a)に示すように、凹部1
31は、保護基板用ウエハー130の外周部に断続的に設けられていてもよい。さらに凹
部131は、図7(b)に示すように、ディンプル状の複数の穴部133で構成されてい
てもよい。さらには、例えば、図8(a)に示すように、保護基板用ウエハー130に凹
部131を形成すると共に、流路形成基板用ウエハー110に凹部112を形成するよう
にしてもよい。これらの何れの構成としても、接着剤35の余剰分が凹部131,112
に流れ込むことで、ウエハー接合体250の外周縁部の外側に接着剤溜まりが形成される
のを実質的に防止することができる。
【0027】
また流路形成基板用ウエハー110に凹部112を形成すると共に、保護基板用ウエハ
ー130に凹部131を形成する場合には、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウ
エハー110の凹部112と、保護基板用ウエハー130の凹部131とが異なる位置に
設けられていることが好ましい。すなわち、凹部112と凹部131とが対向しないよう
に設けられていることが好ましい。これにより、上述のようにウエハー接合体250の外
周縁部の外側に接着剤溜まりが形成されるのを実質的に防止することがきると共に、ウエ
ハー接合体250の外周部における剛性を十分に確保することができる。
【0028】
流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエハー130とを接合した後は、次いで
図4(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130が
接合された面とは反対側の面を加工することにより、流路形成基板用ウエハー110を所
定の厚さにする。具体的には、裏面研磨装置(バックグラインダー)等によって流路形成
基板用ウエハー110をある程度の厚さまで研削する。その後、例えば、フッ硝酸等から
なるエッチング液を用いて流路形成基板用ウエハー110をウェットエッチングすること
により所定の厚さとする。
【0029】
次に、流路形成基板用ウエハー110をウェットエッチングすることによって圧力発生
室12等の流路を形成する。具体的には、図4(b)に示すように、流路形成基板用ウエ
ハー110の表面に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなる絶縁膜51を新たに形成
し、図示しないレジスト等を介して所定形状にパターニングする。そして、この絶縁膜5
1をマスクとして流路形成基板用ウエハー110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)
水溶液等のアルカリ溶液を用いてウェットエッチングする。これにより、図4(c)に示
すように、流路形成基板用ウエハー110に圧力発生室12、インク供給路13、連通路
14及び連通部15が形成される。
【0030】
このとき、本発明の製造方法では、ウエハー接合体250の外周縁部の外側に張り出し
た、いわゆる接着剤溜まりが形成されていないため、接着剤35の一部が脱落して異物と
なるのを実質的に防止することができる。したがって、接着剤35が脱落した異物が流路
形成基板用ウエハー110又は保護基板用ウエハー130に付着するのを抑制することが
でき、異物の付着に伴う歩留まりの低下を実質的に防止することができる。
【0031】
その後は、図4(d)に示すように、ウエハー接合体250の外周縁部の不要部分を、
例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウ
エハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル21が穿設されたノズ
ルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコンプライアンス基板4
0を接合し、これら流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すような一つのチップサ
イズに分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明はこのような実施形態に
限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、流路形成基板用ウエハー110と保護基板用ウエハー1
30とに略同一径を有するシリコン基板を用いた例を説明したが、これらのウエハーの大
きさは異なっていてもよい。例えば、図9に示すように、保護基板用ウエハー130Aと
して流路形成基板用ウエハー110よりも大径のシリコンウエハーを用いるようにしても
よい。このような保護基板用ウエハー130と流路形成基板用ウエハー110とを接着剤
35によって接合した場合、保護基板用ウエハー130の流路形成基板用ウエハー110
との接合面の外周部には、接合面が露出された露出部135が存在することになる。この
ような場合には、保護基板用ウエハー130の露出部135内に凹部131を形成するこ
とが好ましい。これにより、接着剤35の余剰分が凹部131内にさらに流れ込みやすく
なる。
【0033】
また上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを
挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以
外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘ
ッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液
晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディ
スプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッ
ド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0034】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 30 保護基
板、 35 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体
膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、
100 リザーバー、 110 流路形成基板用ウエハー、 111 面取り部、 13
0 保護基板用ウエハー、 131 凹部、 132 面取り部、 135 露出部、
250 ウエハー接合体、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するノズルに連通する圧力発生室が形成される第1の基板と、該第1の基板
の一方面側に設けられて前記圧力発生室に圧力を発生させる圧力発生素子と、前記第1の
基板の前記一方面側に接合された第2の基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であ
って、
前記第1の基板が複数一体的に形成される第1のウエハー上に前記圧力発生素子を形成
する工程と、
前記第2の基板が複数一体的に形成される第2のウエハーに前記第1のウエハーを接着
剤によって接合して接合体を形成する工程と、
前記第1のウエハーをウェットエッチングすることにより前記圧力発生室を形成する工
程と、
前記接合体を所定サイズの複数のチップに分割する工程と、を備えると共に、
且つ前記接合体を形成する工程の前に、
前記第1又は第2のウエハーの少なくとも何れか一方の他方との接合面の外周部に前記
接着剤の余剰分が流れ込む凹部を形成する工程を備えることを特徴とする液体噴射ヘッド
の製造方法。
【請求項2】
前記第1又は第2のウエハーの全周に亘って連続的に前記凹部を形成することを特徴と
する請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第1又は第2のウエハーの径方向に前記凹部を複数形成することを特徴とする請求
項1又は2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第1のウエハー又は前記第2のウエハーの一方が他方よりも大径である場合には、
前記接合面の外周部の露出される部分に前記凹部を形成することを特徴とする請求項1〜
3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第1のウエハーと前記第2のウエハーとのそれぞれに前記凹部を形成することを特
徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記第1のウエハーと前記第2のウエハーとで異なる位置に前記凹部を形成することを
特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−207072(P2011−207072A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77506(P2010−77506)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】