説明

液体噴射ヘッドユニット

【課題】回路基板にインクが付着するのを防ぐことができ、回路基板が損傷するのを防ぐことができる液体噴射ヘッドユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】剛性を有する樹脂材から成る中間部材17にシール部材を23一体化し、下流部材18は、回路基板34を配する面から記録ヘッド12側に窪んだ窪部28を備え、窪部28の底面に第3液体流路33の入口を開口し、中間部材17のシール部材23を窪部28の底面に当接することにより、第2液体流路32と第3液体流路33を連通した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体流路を有する流路部材と、液体噴射ヘッドに電気信号を供給するための回路基板と、を備える液体噴射ヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、流路基板に形成された圧力発生室内に、圧電素子の圧力発生手段によって圧力変化を生じることで、圧力発生室に連通するノズルからインク滴(液滴の一種)を噴射するインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)がある。
【0003】
この記録ヘッドは、インク流路を有する流路部材と組み合わされてインクジェット式記録ヘッドユニットを構成し、この流路部材に形成されたインク供給路を介してインクカートリッジから記録ヘッドにインクが供給されるようになっている。また、流路部材が複数の部材で構成され、これら複数の部材どうしが接合する箇所には、弾性シートが挟持して接合されている。さらに、これら複数の部材間に、圧電素子等を駆動するための回路基板を設けることにより省スペース化を図っている。例えば、インク供給針に連通する液体流路を有するホルダを、液体流路を有する弾性シートを介して、液体流路を凸部に開口するように形成したケースに当接させた状態で固定し、これにより、上記各部材の液体流路を連通させると共に、弾性シートとケースとの間に、回路基板を設けるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−107162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成では、外部からの押圧や記録ヘッドで発生した熱の伝達によって、弾性シートが変形してしまうことがあった。この場合に、弾性シートとケースの間で良好な密着性を得ることができず、インクが漏れ出してしまうことがあった。そして、このインクが回路基板に付着してしまい、配線の短絡等によって回路基板が損傷してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、インクが漏れ出すことを防ぐと共に、たとえ、インクが漏れ出したとしても、回路基板にインクが付着するのを防ぐことができ、回路基板が損傷するのを防ぐことができる液体噴射ヘッドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドユニットは、ノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッドと、液体が貯留された液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体供給路を有する供給路部材と、前記液体噴射ヘッドに電気信号を送るための回路基板と、を備える液体噴射ヘッドユニットであって、前記供給路部材は、一端側が前記液体貯留手段に連通する第1液体流路を形成した上流部材と、該上流部材の第1液体流路に一端側が連通する第2液体流路を形成した中間部材と、該中間部材の第2液体流路に一端側が連通し、他端側が前記液体噴射ヘッドに連通する第3液体流路を形成した下流部材と、を備え、前記中間部材は、剛性を有する樹脂材から成る板状部材であり、板厚方向に貫通した状態で、前記第2液体流路が形成され、該第2液体流路の一方の開口縁が第1シール部として前記板状部材の一方の面に露出し、第2液体流路の他方の開口縁が第2シール部として板状部材の他方の面に露出した管状のシール部材を一体化してなり、前記回路基板は、前記中間部材と前記下流部材の間に配され、前記シール部材の第2液体流路が板厚方向に貫通可能な貫通部が開設され、前記下流部材は、前記回路基板を配する面から、前記液体噴射ヘッド側に窪んだ窪部を備え、前記窪部の底面に前記第3液体流路の入口を開口し、前記シール部材の第2シール部を窪部の底面に当接することにより、第2液体流路と第3液体流路を連通したことを特徴とする液体噴射ヘッドユニットである。
【0008】
この構成によれば、上記のように剛性を有する樹脂材から成る中間部材にシール部材を一体化したので、シール部材が樹脂材により支持されて、外部からの押圧や圧電素子が駆動するときに発生する熱の伝達等によって、シール部材が変形するのを防ぐことができる。このため、シール部材の変形によって生ずる第1シール部及び第2シール部での密着性の低下を防ぐことができ、液体が漏れ出すのを防ぐことができる。また、下流部材は、回路基板を配する面から、液体噴射ヘッド側に窪んだ窪部を備え、窪部の底面に第3液体流路の入口を開口し、シール部材の第2シール部を窪部の底面に当接したので、たとえ、当接箇所から液体が漏れ出たとしても、回路基板に液体が付着することがなく、短絡等による回路の破壊を防止することができる。
【0009】
ここで、シール部材は、環状の第1シール部及び第2シール部と、両シール部をつなぐ管状の中間部とからなり、該中間部が前記中間部材の樹脂材で覆われていることが望ましい。これにより、回路基板のエッジ等で、シール部材が傷つくのを防ぐことができる。
【0010】
また、前記第2シール部が中間部材の樹脂部分よりも突出し、該突出部分が窪部の底面に当接することが望ましい。これにより、第2シール部の当接箇所における密着性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェット式プリンターの構成を説明する斜視図である。
【図2】インクジェット式記録ヘッドユニットの断面図である。
【図3】インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1という)を例示する。
【0013】
プリンター1は、液体噴射ヘッドユニットの一種であるインクジェット式記録ヘッドユニット11(以下、ヘッドユニット11と言う)が取り付けられると共に、インクカートリッジ2が着脱可能に取り付けられるキャリッジ3と、ヘッドユニット11の下方に配設されたプラテン4と、ヘッドユニット11が搭載されたキャリッジ3を記録紙5(吐出対象物の一種)の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構6と、紙幅方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙5を搬送する紙送り機構7等を備えて概略構成されている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向(記録ヘッド12走査方向)であり、紙送り方向とは、副走査方向(即ち、記録ヘッド12走査方向に直交する方向)である。なお、インクカートリッジ2としては、キャリッジ3に装着するタイプを採用しても良いし、キャリッジ3とは別の位置(例えば、プリンター1の筐体側)に装着するタイプ(いわゆるオフキャリッジタイプ)を採用することも可能である。オフキャリッジタイプの場合は、インクカートリッジと印刷ヘッドとの間をインク供給チューブで連結し、インク供給チューブを介してインクカートリッジ内のインクをヘッドユニット11側へ供給する。
【0014】
キャリッジ3は、主走査方向に架設されたガイドロッド8に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構6の作動により、ガイドロッド8に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ3の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー9によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダー9からの位置情報に基づいてキャリッジ3(ヘッドユニット11)の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット11による記録動作(吐出動作)等を制御することができる。
【0015】
ヘッドユニット11は、図2に示すように、ノズル51から液滴を噴射することができる複数の記録ヘッド12と、記録ヘッド12に電気信号を送るための回路基板34と、インクカートリッジ2(液体貯留手段の一種)から、液体導入針14を介して、インクを記録ヘッド12に供給するための液体流路を形成した複数の部材で構成される供給路部材15とを備えている。
【0016】
まずは、記録ヘッド12について、図3および図4を用いて詳しく説明する。本実施形態における記録ヘッド12は、ノズルプレート41、流路基板42、保護基板43、コンプライアンス基板44、ヘッドケース45から構成されている。
【0017】
流路基板42は、長尺なシリコン単結晶基板からなり、長手方向に沿って細長な連通部54が二本、エッチングにより形成され、両連通部54に挟まれた領域に複数の圧力発生室52が各連通部54ごとに、長手方向に並んだ状態でエッチングにより形成されている。そして、各圧力発生室52は、圧力発生室52よりも狭い幅で形成されたインク供給路53を介して、連通部54と連通している。また、流路基板42の一方の面には、弾性膜61が形成され、さらにその上には、絶縁体膜62が形成されている。この絶縁体膜62上において、それぞれ下電極膜64、圧電体層65及び上電極膜66が順次積層された複数の圧電素子63が、圧力発生室52と対向するように2列に並設されている。さらに、上電極膜66に一端を接続すると共に、他端を圧電素子63の列と列の間の領域まで延在させたリード電極67が設けられている。
【0018】
流路基板42の圧電素子63とは反対側の面には、ノズルプレート41が、接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。ノズルプレート41は、ステンレス鋼(SUS)又はシリコン単結晶等で形成されており、各圧力発生室52のインク供給路53とは反対側で開口するノズル51が、例えば、360dpiのピッチで穿設されている。
【0019】
保護基板43は、流路基板42のノズルプレート41と反対側に、接合されており、保護基板43を厚さ方向に貫通するように、長尺なリザーバー部55が二本設けられている。このリザーバー部55は、各連通部54と連通し、リザーバー56を構成している。また、二本のリザーバー部55の間には、リード電極67の圧電素子63に接続していない一端部を露出させるように、厚さ方向に貫通した貫通孔74が設けられている。さらに、保護基板43の圧電素子63に対向する領域には、圧電素子63の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部71が設けられている。そして、このような保護基板43は、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等で好適に形成し得る。
【0020】
コンプライアンス基板44は、保護基板43の流路基板42と反対側に、接合されており、封止膜68と固定板69とから形成されている。封止膜68は、剛性が低く可撓性を有する部材で形成されており、また固定板69は、金属等の硬質の部材で形成されている。ここで、図4に明示するように、コンプライアンス基板44は、リザーバー56に対向する領域に、リザーバー56にインクを供給するためのインク導入口57を、厚さ方向に貫通して形成されている。また、コンプライアンス基板44のリザーバー56に対向する領域において、インク導入口57以外の領域は、固定板69が除去された封止膜68からなる封止部72となっている。そのため、リザーバー56は、可撓性を有する封止部72により封止されると共に、コンプライアンスが得られることになる。
【0021】
ヘッドケース45は、コンプライアンス基板44の保護基板43と反対側に接合されており、供給路部材15に接続される部材である。また、ヘッドケース45の中央部には、保護基板43の貫通孔74に連通し、リード電極67を露出させるように配線部材保持孔75が設けられており、コンプライアンス基板44の封止部72に対向するヘッドケース45の一部には、封止膜68の可撓変形を阻害しない程度の空間を有する開口部73を備えている。さらに、供給路部材15からの液体流路とコンプライアンス基板44のインク導入口57を連通するように、インク導入路58を設けている。このインク導入路58は、インク導入口57とは反対側で後述する下流部材18の第3の流路と連通して、記録ヘッド12内にインクを供給することができる。
【0022】
また、COF基板35が、保持部材37の側面に接着された状態で、ヘッドケース45の上部から配線部材保持孔75に挿通している。ここで、COF基板35は可撓性を有する配線基板の一種であり、圧電素子63を駆動するための駆動回路36が実装されている。そして、COF基板35の一端部がリード電極67に電気的に接続された状態で、COF基板35及び保持部材37が、配線部材保持孔75内に充填した接着剤によってヘッドケース45に固着されている。なお、本実施形態では、COF基板35を保持部材37に接着させて固定したが、これに限らず、保持部材37を用いることなくCOF基板35のみを接続しても良い。
【0023】
次に、供給路部材15について、図2を用いて詳しく説明する。供給路部材15は、上流部材16、中間部材17及び下流部材18から構成されており、中間部材17及び下流部材18の間には回路基板34が配置されている。また、供給路部材15の上面(上流部材16の上面)は、キャリッジ3に接合され、インクカートリッジ2が装着されるカートリッジ装着部13の底部を成しており、インクカートリッジ2に挿入される液体導入針14が装着されている。一方、供給路部材15の下面(下流部材18の下面)には、上記した記録ヘッド12が複数固定されており、各記録ヘッド12から延設されたCOF基板35の一端部を回路基板34に接続している。
【0024】
上流部材16は、供給路部材15の上部に位置する板状の部材であり、一端側がインクカートリッジ2に連通する第1液体流路31を形成している。より詳しくは、インクカートリッジ2が装着される面とは逆側の面において、液体導入針14に対向する位置に突出部21を形成しており、この突出部21内には、フィルター19を介して液体導入針14の連通孔30と連通することで、インクカートリッジ2と連通可能とする第1液体流路31が形成されている。なお、フィルター19はインク内の気泡や異物を、インクと共に供給路部材15に供給されないようにするための部材である。
【0025】
中間部材17は、剛性のある樹脂材からなる板状の部材であり、板状部分の側縁に立設した外壁部に、下流部材18と係合するための係合凹部22と、板厚方向に貫通した状態で形成された第2液体流路32とを有し、図示しないネジ等により上流部材16に取り付けられている。この中間部材17は、上側で上流部材16と、下側で下流部材18と、それぞれ接合することで、前記第2液体流路32の上流側に第1液体流路31が、下流側に後述する第3液体流路33が、それぞれ連通する。この第2液体流路32は、可撓性を有する管状のシール部材23によって構成されており、中間部材17の樹脂材と一体化されている。本実施形態に示す、シール部材23は、環状の第1シール部25及び第2シール部26と、両シール部をつなぐ管状の中間部24とからなり、中間部24は、下流部材18側に延設された中間部材17の筒状樹脂材で覆われている。これに対し、第1シール部25は、第2液体流路32の一方の開口縁を構成するフランジ状に成形され、このフランジ状部分の表面が中間部材17の一方の面に露出し、第2シール部26は、第2液体流路32の他方の開口縁を構成する拡径テーパー部状に成形され、このテーパー部が中間部材17の他方の面に露出し、これら露出した部分がそれぞれ上流部材16及び下流部材18と当接して両部材の流路同士の接続部を液密状態で密着させている。
【0026】
また、第1シール部25及び第2シール部26は、第2液体流路32の当接箇所(開口縁)で露出していればシール機能を発揮できるが、本実施形態では、第1シール部25においてはフランジ状部分の外周縁近傍を中間部材17の上面と面一となる厚さに設定し、この部分よりも内側の部分の厚みを増大させて中間部材17の上面よりも突出する厚肉部とし、第2シール部26においては、前記テーパー部が中間部材17の筒状樹脂部分よりも突出し、突出部分がそれぞれ上流部材16、下流部材18の当接箇所に当接するように構成している。この様に、シール部材23が中間部材17の樹脂部分よりも突出するように構成すると、図2に示すように、第1シール部25及び第2シール部26が樹脂部分の拘束を受けることなく弾性変形し易くなり、確実なシール機能を期待でき、また、中間部24よりも太径に形成しておくことで、シール部材23の上下へのずれを防ぐことができる。
【0027】
ここで、シール部材23は、エラストマーやゴムなどの弾性体からなり、中間部材17に二色成型機等を用いて一体成型することができる。あるいは、あらかじめ所定の形に成型したシール部材23を、中間部材17の成型時に挿入しても良いし(インサート成型)、中間部材17の成型後に挿入するようにしても良い。さらに、中間部材17の樹脂材は、シール部よりも剛性があればよくPPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等で好適に形成される。
【0028】
下流部材18は、外周端で垂直に起立した外周壁29と、各記録ヘッド12から延設されたCOF基板35が挿通可能な開口部と、記録ヘッド12に向けて傾斜した流路形成部27とを備えており、上面には、回路基板34が配置される。流路形成部27は、記録ヘッド12の各インク導入路58に対応して設けられ、この流路形成部27内には、上記のように第2液体流路32に連通し、反対側で記録ヘッド12のインク導入路58に連通するように、第3液体流路33が斜めに形成されている。また、下流部材18の上面、即ち、回路基板34が配置される面には、記録ヘッド12側に窪んだ窪部28が形成され、この窪部28の底面に、第3液体流路33の入口が開口している。そして、この窪部28の底面に中間部材17の第2シール部26を当接すると、第2シール部26が底面に対して密着して、第2液体流路32と第3液体流路33が連通することとなる。なお、本実施形態では、窪部28の径は、後述する回路基板34に設けられた貫通部38の径よりも大きくなるように、形成されている。さらに、中間部材17と下流部材18が当接した状態で、係合凹部22を外周壁29に係合することができ、加えて、接着剤等を用いることで中間部材17と下流部材18を強固に接合することができる。
【0029】
前記した下流部材18の上面に配置する回路基板34は、各記録ヘッド12から延設されたCOF基板35を介して電気的に接続され、圧力発生手段である各圧電素子63に駆動信号を送るための基板であり、中間部材17の第2液体流路32を板厚方向に貫通可能な貫通部38が設けられている。そして、回路基板34を下流部材18の上面に配置した状態で下流部材18と中間部材17を接合すると、各貫通部38内を、第2液体流路32を形成しているシール部材23とその周りの筒状樹脂部分が、それぞれ挿通すると共に、回路基板34が中間部材17に覆われて中間部材17と下流部材18との間に保持されることになる。なお、貫通部38は、挿通した中間部材17の筒状樹脂部分の外周面との間に隙間が形成される充分な大きさに設定することが望ましい。
【0030】
このように、供給路部材15はインクカートリッジ2から第1液体流路31、第2液体流路32、第3液体流路33を介して記録ヘッド12にインクを供給することができる。そして、記録ヘッド12に供給されたインクは、圧電素子63の駆動により発生する圧力発生室52の圧力変動によって、ノズル51からインク滴として吐出される。
【0031】
ところで、本発明のヘッドユニット11は、上記のように剛性を有する樹脂材から成る中間部材17にシール部材23を一体化したので、シール部材23が樹脂材により支持されて、外部からの押圧や圧電素子63が駆動するときに発生する熱の伝達等によって、シール部材23が変形するのを防ぐことができる。このため、シール部材23の変形によって生ずる第1シール部25及び第2シール部26での密着性の低下を防ぐことができ、インクが漏れ出すのを防ぐことができる。よって、回路基板34にインクが付着することを防ぎ、短絡等による回路の破壊を防止することができる。また、シール部材23を別部材とするのではなく、中間部材17に一体的に形成したので、組立時の部品点数を減らすことができる。
【0032】
さらに、下流部材18は、回路基板34を配する面から、液体噴射ヘッド側に窪んだ窪部28を備え、窪部28の底面に第3液体流路33の入口を開口し、シール部材23の第2シール部26を窪部28の底面に当接したので、たとえ、当接箇所からインクが漏れ出たとしても、インクを窪部28内に溜めておくことができ、回路基板34にインクが付着することがなく、短絡等による回路の破壊を防止することができる。また、回路基板34は、その上面を中間部材17で覆われているので、例えば、上流部材16を交換のために取り外す場合において、上流部材16と中間部材17の当接箇所からインクが漏れ出したとしても、回路基板34にインクが付着することがない。
【0033】
さらに、本実施形態のように、シール部材23の中間部24を中間部材17の樹脂材で覆うことが望ましい。これにより、筒状の中間部24が座屈することを防止でき、また、回路基板34のエッジ等で、シール部材23が傷つくトラブルを防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態のように、第2シール部26が中間部材17の樹脂部分よりも突出し、突出部分が窪部28の底面に当接することが望ましい。これにより、第2シール部26の当接箇所における密着性を上げることができる。
【0035】
また、本実施形態では、第3液体流路33を斜めに形成しているが、これに限らず、回路基板34の配置面から垂直に形成しても良い。本実施形態のように第3液体流路33を斜めにした場合は、液体導入針14の間隔とインク導入路58の間隔が異なる場合にも適用できるため、例えば、インク導入路58の配置間隔が狭い小型の記録ヘッド12等にも適用でき、設計の自由度が増し、この場合に、窪部28を形成して、第3液体流路33の上部入口を下流部材18の平面(回路基板34の載置面)よりも低く配置することができ、これにより第3液体流路33の流路形成部27の肉厚を無駄なく均一化できる。
【0036】
さらに、本実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電素子63を例示したが、これには限らず、例えば、所謂縦振動型の圧電素子を採用することも可能である。
【0037】
そして、本実施形態においては、液体噴射ヘッドユニットの一例としてインクジェット式記録ヘッドユニット11を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射ヘッドユニット全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドユニットや、液体噴射装置にも適用することができる。その他の液体噴射ヘッドユニットとしては、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体吐出装置、例えば、液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルター製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…インクジェット式プリンター,11…インクジェット式記録ヘッドユニット,12…インクジェット式記録ヘッド,15…供給路部材,16…上流部材,17…中間部材,18…下流部材,23…シール部材,24…中間部,25…第1シール部,26…第2シール部,28…窪部,31…第1液体流路,32…第2液体流路,33…第3液体流路,34…回路基板,38…貫通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッドと、液体が貯留された液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体供給路を有する供給路部材と、前記液体噴射ヘッドに電気信号を送るための回路基板と、を備える液体噴射ヘッドユニットであって、
前記供給路部材は、一端側が前記液体貯留手段に連通する第1液体流路を形成した上流部材と、該上流部材の第1液体流路に一端側が連通する第2液体流路を形成した中間部材と、該中間部材の第2液体流路に一端側が連通し、他端側が前記液体噴射ヘッドに連通する第3液体流路を形成した下流部材と、を備え、
前記中間部材は、剛性を有する樹脂材から成る板状部材であり、板厚方向に貫通した状態で、前記第2液体流路が形成され、該第2液体流路の一方の開口縁が第1シール部として前記板状部材の一方の面に露出し、第2液体流路の他方の開口縁が第2シール部として板状部材の他方の面に露出した管状のシール部材を一体化してなり、
前記回路基板は、前記中間部材と前記下流部材の間に配され、前記シール部材の第2液体流路が板厚方向に貫通可能な貫通部が開設され、
前記下流部材は、前記回路基板を配する面から、前記液体噴射ヘッド側に窪んだ窪部を備え、
前記窪部の底面に前記第3液体流路の入口を開口し、前記シール部材の第2シール部を窪部の底面に当接することにより、第2液体流路と第3液体流路を連通したことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記シール部材は、環状の第1シール部及び第2シール部と、両シール部をつなぐ管状の中間部とからなり、該中間部が前記中間部材の樹脂材で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記第2シール部が中間部材の樹脂部分よりも突出し、該突出部分が窪部の底面に当接することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178017(P2011−178017A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43863(P2010−43863)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】