説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】生産効率を向上させてコストダウンを図ることを目的とする。
【解決手段】複数のチャネルが間隔をあけて並列に形成され、チャネルの側壁に駆動電極が形成されると共にチャネルに連通するノズル孔が形成されたヘッドチップ21と、ヘッドチップ21又はその近傍に配設されてヘッドチップ21内の液体温度を検出する温度センサ50と、駆動回路25が実装された駆動回路基板26、信号線28が形成されたフレキシブルプリント基板27、及び温度センサ50の検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定する駆動電圧値設定手段60を備え、駆動電圧値設定手段60で決定された駆動電圧を駆動回路25から信号線28を介して印加する制御手段23と、が備えられた液体噴射ヘッドにおいて、フレキシブルプリント基板27には、温度センサ50と駆動電圧値設定手段60とを電気的に接続する接続配線29が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル孔より液体を吐出して被記録媒体に画像や文字を記録する液体噴射ヘッド、及びその液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液体噴射装置の1つとして、予め決められた方向に搬送される記録紙等の被記録媒体に対してインク(液体)を吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式の記録装置(例えば、プリンタやファックス等)が提供されている。この記録装置は、インクタンクからインク供給管を介してインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、該インクジェットヘッドに備えられたヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録を行っている。
【0003】
上記したヘッドチップには、インクが充填される複数のチャネルが間隔をあけて並列に形成されていると共にこれらのチャネルに連通するノズル孔が形成されている。上記したチャネルの側壁は圧電材料からなり、この側壁には駆動電極が形成されている。
このような構成のヘッドチップを有するインクジェットヘッドには、上記したヘッドチップの駆動を制御する制御手段が備えられている。この制御手段は、ヘッドチップを駆動させるための駆動回路が形成された駆動回路基板と、駆動回路と駆動電極とを接続する信号線が形成されたフレキシブルプリント基板と、を備えている。このような制御手段を備えるインクジェットヘッドでは、駆動回路から信号線を介して駆動電極に駆動電圧を印加することで、側壁が変形してチャネル内の圧力が高められ、チャネル内のインクがノズル孔から吐出される。
【0004】
ところで、上記したインクは温度によって粘性が変化するため、インク温度によってノズル孔からのインクの吐出量が変動する。そこで、従来、インクジェットヘッドには、ヘッドチップに取り付けられてヘッドチップ内のインクの温度を検出する温度センサが備えられている。このような温度センサを備えるインクジェットヘッドでは、温度センサによってインク温度を検出し、その検出値を駆動回路に送信し、駆動回路において検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定して駆動電極に駆動電圧を印加する。これにより、インクの吐出量を一定にすることができる(例えば、下記特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2003−182056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の技術では、温度センサと駆動回路とがリード線で接続されているため、インクジェットヘッドを製造する際、駆動回路基板上に実装されたリード線付き温度センサを手作業によってヘッドチップまで引き回して接着材等で固定することになり、生産効率が悪くコストアップの一因となっている。
また、上述したようにリード線を引き回して温度センサをヘッドチップに固定するため、この作業の邪魔にならないように例えばダンパ部材等を配置する必要があり、インクジェットヘッドの構造的な制約がある。
さらに、揮発したインクがリード線に付着するとリード線が腐食される可能性があり、その場合、温度検出に異常をきたすおそれがある。
【0006】
本発明に係る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、生産効率を向上させることでコストダウンを図ることができると共に、液体噴射ヘッドの構造的な制約を低減させることができ、さらに、温度検出の異常を生じにくくさせることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液体噴射ヘッドは、液体が充填される複数のチャネルが間隔をあけて並列に形成され、該チャネルの側壁に駆動電極が形成されていると共に前記チャネルに連通するノズル孔が形成されたヘッドチップと、前記ヘッドチップ又は該ヘッドチップの近傍に配設されて該ヘッドチップ内の前記液体の温度を検出する温度センサと、前記ヘッドチップを駆動させるための駆動回路が実装された駆動回路基板、前記駆動回路と前記駆動電極とを電気的に接続する信号線が形成されたフレキシブルプリント基板、及び、前記温度センサの検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定する駆動電圧値設定手段を備え、該駆動電圧値設定手段で決定された大きさの駆動電圧を前記駆動回路から前記信号線を介して前記駆動電極に印加する制御手段と、が備えられ、前記駆動電極に前記駆動電圧が印加されることで前記側壁が変形し、該側壁の変形によって前記チャネル内の圧力が高められて該チャネル内の前記液体が前記ノズル孔から吐出される液体噴射ヘッドにおいて、前記フレキシブルプリント基板には、前記温度センサと前記駆動電圧値設定手段とを電気的に接続する接続配線が形成されていることを特徴としている。
【0008】
これにより、上記した液体噴射ヘッドでは、温度センサと駆動回路とを接続する接続配線がフレキシブルプリント基板に形成されているので、液体噴射ヘッドを製造する際に接続配線を引き回す必要がなく、ヘッドチップと駆動回路基板との間にフレキシブルプリント基板を介装させることにより、フレキシブルプリント基板上の接続配線を介して温度センサと駆動回路とが接続される。また、フレキシブルプリント基板に形成された接続配線は、リード線等に比べて液体による腐食が生じにくい。
また、上記した液体噴射ヘッドを動作させる際には、まず、温度センサによってヘッドチップ内の液体温度を検出する。この検出値は、フレキシブルプリント基板に形成された接続配線を介して駆動電圧値設定手段に伝達され、そこで前記検出値に基づいて駆動電圧の大きさが決定される。そして、その大きさの駆動電圧が、フレキシブルプリント基板に形成された信号線を介して駆動回路から駆動電極に印加される。これにより、駆動電圧が印加された駆動電極の側壁が変形してチャネル内の圧力が高められ、そのチャネル内の液体がノズル孔から吐出される。なお、駆動電圧値設定手段は、例えば上記した駆動回路基板に設けられていてもよく、或いは、液体噴射装置の制御部に設けられていてもよく、その他の場所に設けられていてもよい。
【0009】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサが、前記フレキシブルプリント基板上に実装されていることが好ましい。
これにより、フレキシブルプリント基板上に温度センサを予め実装させておくことで、液体噴射ヘッドを製造する際に温度センサを取り付ける作業が不要となる。すなわち、ヘッドチップと駆動回路基板との間にフレキシブルプリント基板を介装させることにより、温度センサがヘッドチップの近傍に配設される。
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサと前記ヘッドチップとは前記信号線を介して熱結合されていることが好ましい。
これにより、ヘッドチップの温度が温度センサに伝達され易くなり、温度センサによるヘッドチップ内の液体温度の検出精度が向上する。
【0010】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記フレキシブルプリント基板に、前記温度センサが実装されるランドが形成されていることが好ましい。
これにより、フレキシブルプリント基板に形成されたランドに温度センサをマウントさせることで、温度センサがフレキシブルプリント基板に実装される。
さらに、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサが、前記ヘッドチップと前記駆動回路基板との間に位置する前記フレキシブルプリント基板の中間部に配設されており、前記ランドが、前記フレキシブルプリント基板の中間部から前記フレキシブルプリント基板のヘッドチップ側の接続端部まで延設されていることが好ましい。
これにより、ヘッドチップの温度がランドに伝達され、ランドから温度センサに伝達されるので、温度センサによるヘッドチップ内の液体温度の検出精度が向上する。
【0011】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサに熱伝導性樹脂が塗布されていることが好ましい。
これにより、熱伝導性樹脂を介してヘッドチップの温度が温度センサに伝達されるので、温度センサによるヘッドチップ内の液体温度の検出精度が更に向上する。
さらに、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサが、前記ヘッドチップと前記駆動回路基板との間に位置する前記フレキシブルプリント基板の中間部に配設されており、前記熱伝導性樹脂が、前記フレキシブルプリント基板の中間部から前記フレキシブルプリント基板のヘッドチップ側の接続端部まで延設されていることが好ましい。
これにより、ヘッドチップの温度が熱伝導性樹脂を介して温度センサに伝達され易くなるので、温度センサによるヘッドチップ内の液体温度の検出精度が更に向上する。
【0012】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記フレキシブルプリント基板の一方の面に前記信号線が形成され、他方の面に前記温度センサが実装されていることが好ましい。
これにより、温度センサの実装位置が信号線の無い側端部等に限定されず、フレキシブルプリント基板上の任意の位置に温度センサを配設させることが可能となり、例えば、フレキシブルプリント基板の横幅方向の中央部分に温度センサを実装させることが可能である。
【0013】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、前記温度センサがサーミスタからなることが好ましい。
これにより、温度センサが小型で簡易な構成となり、液体噴射ヘッドの構造的な制限が低減される。なお、サーミスタからなる温度センサから駆動回路には、検出値としてサーミスタの電気抵抗値が伝達され、このサーミスタの電気抵抗値に基づいて駆動電圧の大きさが決定される。
【0014】
また、本発明に係る液体噴射装置は、被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された被記録媒体の表面に対して前記ノズル孔が対向する向きに配置された請求項1から6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
このような特徴により、搬送手段によって被記録媒体を搬送するとともに、移動手段によって液体噴射ヘッドを往復移動させながらノズル孔から被記録媒体に向けて液体を吐出させることで被記録媒体に画像や文字等が記録される。このとき、温度センサによって液体温度を検出してその検出値に基づいてヘッドチップの駆動電極に印加する駆動電圧の大きさを決定するため、液体温度による液体の吐出量の変化が抑えられ、液体の吐出量が均一となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置によれば、温度センサと駆動回路とを接続する接続配線がフレキシブルプリント基板に形成されており、液体噴射ヘッドを製造する際に接続配線を引き回す必要がないため、生産効率を向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
また、液体噴射ヘッドを製造する際に接続配線を引き回す必要がないため、液体噴射ヘッドの構造的な制約を低減させることができる。
さらに、フレキシブルプリント基板に形成された接続配線は腐食しにくいため、温度検出に異常が生じにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施形態では、液体噴射装置の一例として、非導電性を有する非水性のインク(液体)Wを利用して記録を行うインクジェットプリンタ1を例に挙げて説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態について、図1から図6に基いて説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、インクWを吐出する複数のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2と、記録紙(被記録媒体)Pを予め決められた矢印L1方向(搬送方向)に搬送する搬送手段3と、前記搬送方向に直交する矢印L2方向(走査方向)に複数のインクジェットヘッド2を往復移動させる移動手段4とを、備えている。
【0019】
つまり、このインクジェットプリンタ1は、記録紙Pを搬送方向に搬送しながら、該搬送方向に直交する走査方向にインクジェットヘッド2を移動させて、記録紙Pに文字や画像を記録する所謂シャトルタイプのプリンタである。
なお、本実施形態では、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)のインクWを吐出する4つのインクジェットヘッド2を備えている場合を例にしている。なお、これら4つのインクジェットヘッド2は、同一構成とされている。
【0020】
これら4つのインクジェットヘッド2は、略直方体形状の筐体5内に組み込まれたキャリッジ6に搭載されている。
このキャリッジ6は、複数のインクジェットヘッド2を載置する平板状の基台6aと、該基台6aから垂直に立ち上げられた壁部6bと、で構成されており、上記操作方向に沿って配置されたガイドレール7によって往復移動可能に支持されている。また、キャリッジ6は、ガイドレール7に支持された状態で一対のプーリ8に巻回された搬送ベルト9に連結されている。一対のプーリ8のうち一方のプーリ8は、モータ10の出力軸に連結されており、モータ10からの回転駆動力を受けて回転するようになっている。これにより、キャリッジ6は、走査方向に向けて往復移動できるようになっている。
即ち、これら一対のガイドレール7、一対のプーリ8、搬送ベルト9及びモータ10は、上記移動手段4として機能する。
【0021】
また、筐体5には、一対のガイドレール7と同じ走査方向に沿って一対の搬入ローラ15と、一対の搬送ローラ16とが間隔を空けて並設されている。一対の搬入ローラ15は、筐体5の背面側に設けられ、一対の搬送ローラ16は筐体5の前面側に設けられている。そして、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、図示しないモータによって記録紙Pを間に挟んだ状態で回転するようになっている。これにより、筐体5の背面側から前面側に向かう前記搬送方向に沿って記録紙Pを搬送することができるようになっている。
即ち、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、上記搬送手段3として機能する。
【0022】
図2に示すように、各インクジェットヘッド2は、図1に示すキャリッジ6の基台6aに図示しないネジを介して取り付けられる矩形状の固定板20と、該固定板20の上面に固定されたヘッドチップ21と、該ヘッドチップ21の後述するインク導入口31aにインクWを供給する供給手段22と、後述する駆動電極37に駆動電圧を印加する制御手段23と、ヘッドチップ21内のインクWの温度を検出する温度センサ50と、を主に備えている。これら各インクジェットヘッド2は、搬送手段3によって搬送された記録紙Pの表面に対して後述するノズル孔33aが対向する向きに配置されている。
【0023】
図3に示すように、ヘッドチップ21は、アクチュエータプレート30、カバープレート31、支持プレート32及びノズルプレート33で主に構成されており、アクチュエータプレート30に図示せぬ接着材を介してカバープレート31が重ね合わされているとともに、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31の端面に図示せぬ接着材を介してノズルプレート33が貼着された構成からなる
【0024】
アクチュエータプレート30は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートである。このアクチュエータプレート30のカバープレート31側の面(表面)には、図3から図6に示すように、矢印L3方向(延在方向)に延びたチャネル35が矢印L1方向(配列方向)に一定間隔をあけて並列に複数形成されている。即ち、複数のチャネル35は、側壁36によってそれぞれ区分けされた状態となっている。これらのチャネル35は、インクWが充填される断面視凹形状の吐出チャネルであり、後述するカバープレート31のインク導入口31aにそれぞれ連通されている。チャネル35の延在方向の一端(先端)は、アクチュエータプレート30の先端面(ノズルプレート33側の端面)において開口されている。一方、チャネル35の延在方向の他端部(基端部)は、アクチュエータプレート30の途中まで延びており、基端側(ノズルプレート33側の反対側)に向かうにしたがって漸次深さが浅くなっている。また、アクチュエータプレート30には、チャネル35の基端からアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側反対側の端面)まで延びた浅溝部38が形成されている。この浅溝部38はチャネル35の延長線上に形成されており、その一端はチャネル35の内側に向けて開口され、その他端はアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側の反対側の端面)において開口され、図示しない封止手段によって封止されている。
【0025】
上記した複数のチャネル35の側壁36には、長さ方向に亘って駆動電極37が蒸着等により形成されている。そして、チャネル35の両側面に形成された駆動電極37は、接続電極39を介して後述するフレキシブル基板27の信号線28に電気的に接続されるようになっている。
そして、駆動電極37は、駆動電圧が印加されたときに、側壁36を圧電厚み滑り効果により変形させることでチャネル35内の圧力を高め、充填されたインクWをチャネル35内から吐出させる働きをしている。
【0026】
カバープレート31は、例えばセラミックス等で形成されたプレートであり、複数の浅溝部38の基端側部分を露出させた状態で、アクチュエータプレート30の表面に接着材を介して重ね合わせて貼着されている。また、カバープレート31には、ダンパ部材22からインクWが供給されてくるインク導入口31a(液体導入口)が形成されている。このインク導入口31aは、長方形の開口であり、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に延在されている。
【0027】
支持プレート32は、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持していると共に、ノズルプレート33を支持している。支持プレート32には、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に延在する嵌合孔32aが形成されており、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31をこの嵌合孔32a内に嵌め込んだ状態で両プレート30、31を支持している。この際、支持プレート32の先端側の表面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と面一となっている。
【0028】
ノズルプレート33は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状のプレートであり、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着材を介して貼着されている。つまり、ノズルプレート33の一方の面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着される接着面となっており、ノズルプレート33の他方の面は、図1に示す記録紙Pに対向する対向面となっている。なお、ノズルプレート33の対向面には、インクWの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜がコーティングされている。
【0029】
また、このノズルプレート33には、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)に所定の間隔を空けて複数のノズル孔33aが形成されている。これら複数のノズル孔33aは、チャネル35に対向する位置にそれぞれ形成されており、該チャネル35に連通するようになっている。各ノズル孔33aは、外形輪郭線が円形を描くように円状に形成されている。しかも、ノズル孔33aは、接着面側から対向面側に向かうに従い漸次縮径されたテーパ孔であり、接着面側の入口径(ノズル孔33aの外形輪郭線の直径)が対向面側の出口径よりも大きくなっている。なお、ノズル孔33aは、エキシマレーザ装置等を用いて形成されている。
【0030】
上記した構成のヘッドチップ21は、図2に示すように、上述したように固定板20の上面に固定されている。この固定板20の上面には、アルミニウム等で形成された矩形状のベースプレート24が垂直に立ち上がった状態で固定されていると共に、ヘッドチップ21のインク導入口31aにインクWを供給する流路部材22aが固定されている。この流路部材22aの上方には、インクWを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器(ダンパ)22bがベースプレート24に支持された状態で配置されている。この圧力緩衝器22bと流路部材22aとは、インク連結管22cを介して連結されている。また、圧力緩衝器22bの上部には、インクWが供給されてくる供給チューブ40が取り付けられている。
このように構成されているので、供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bにインクWが供給されると、該インクWは圧力緩衝器22b内の貯留室に一旦貯留される。そして、圧力緩衝器22bは、貯留されたインクWのうち、所定量のインクWをインク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21のインク導入口31aに供給するようになっている。
即ち、流路部材22a、圧力緩衝器22b及びインク連結管22cは、上記供給手段22として機能する。
【0031】
なお、供給チューブ40は、図1に示すように、筐体5内に組み込まれたインクタンク41に連結されている。これにより、インクタンク41に貯留されている色の異なるインクWが、4つのインクジェットヘッド2にそれぞれ供給されるようになっている。
【0032】
一方、図5に示すように、上記したヘッドチップ21の近傍には、温度センサ50が配設されている。この温度センサ50は、ヘッドチップ21の温度を検出することによってヘッドチップ21内のインクWの温度を検出するものである。詳しく説明すると、温度センサ50は、サーミスタからなる温度センサである。サーミスタは、温度変化に対して電気抵抗が変化する抵抗体であり、例えば金属酸化物や半導体、セラミックスなどからなり、使用温度は例えばマイナス数十度〜プラス百数十度程度である。
【0033】
上記した温度センサ50は、後述するフレキシブルプリント基板27上に実装されている。詳しく説明すると、温度センサ50は、後述するランド29d上にマウントされており、ヘッドチップ21と後述する駆動回路基板26との間に位置するフレキシブルプリント基板27の中間部に配設されている。また、温度センサ50は、フレキシブルプリント基板27の中間部においてヘッドチップ21側に寄せて配設されていると共に、ヘッドチップ21の長さ方向(矢印L1方向)の中央部分の位置に配設されている。
【0034】
また、図2および図5に示すように、上記したヘッドチップ21の上方には、ヘッドチップ21の駆動を制御する制御手段23が設けられている。この制御手段23は、上記した温度センサ50の検出値に基づいて決定された大きさの駆動電圧を上記した駆動電極37に印加するものである。具体的に説明すると、制御手段23は、駆動回路基板26と、その駆動回路基板26とヘッドチップ21との間に介装されたフレキシブルプリント基板27と、温度センサ50の検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定する駆動電圧値設定手段60と、を備えている。
【0035】
駆動回路基板26は、上記したベースプレート24のヘッドチップ21側の面(圧力緩衝器22bに対向する面)に重ね合わせてビス等で取り付けられている。この駆動回路基板26には、ヘッドチップ21を駆動させるための集積回路等の駆動回路25が実装されていると共に、その駆動回路25に電気的に接続された図示せぬ配線パターンが形成されている。
また、駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26上に配設されている。この駆動電圧値設定手段60は、温度センサ50によって検出された検出値と駆動電極37に印加する電圧値(駆動電圧)との対応関係を示す駆動電圧テーブルを有しており、温度センサ50によって検出されたインクWの温度に対応する大きさの駆動電圧を決定するものである。この駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26上に形成された図示せぬ配線パターンを介して駆動回路25に電気的に接続されており、駆動電圧値設定手段60から駆動回路25に駆動電圧の情報が伝達される。そして、駆動回路25は駆動電圧値設定手段60で決定された大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加する。
【0036】
フレキシブルプリント基板27は、柔軟性があって大きく変形可能な薄膜状のプリント基板であり、その一端が駆動回路基板26に固定され、その他端がアクチュエータプレート30の基端部(ノズルプレート33側の反対側の端部)に固定されている。このフレキシブルプリント基板27の一方の面(ベースプレート24側の面)には、図6に示すように、駆動回路25と複数の駆動電極37とをそれぞれ電気的に接続する複数の信号線28が形成されている。この信号線28は、図4から図6に示すように、ヘッドチップ21側から駆動回路基板26側に向かって延びた帯状の配線パターンであり、フレキシブルプリント基板27の一方の面にプリント配線されている。この信号線28の一端は、駆動回路基板26に形成された図示せぬ配線パターンに電気的に接続されている。一方、信号線28の他端は、カバープレート31の基端側(図5における上側)に露出されたアクチュエータプレート30の浅溝部38の基端側部分に嵌合されており、それにより、接続電極39に接触して電気的に接続されている。これにより、信号線28の他端は、接続電極39を介して駆動電極37に電気的に接続されている。
【0037】
また、図5及び図6に示すように、フレキシブルプリント基板27には、上記した温度センサ50と駆動電圧値設定手段60とを電気的に接続する一対の接続配線29が形成されている。一対の接続配線29のうちの一方は、温度センサ50の一方の引き出し電極に電気的に接続されており、他方は、温度センサ50の他方の引き出し電極に電気的に接続されている。詳しく説明すると、接続配線29は、図6に示すフレキシブルプリント基板27の一方の面に形成された第一接続配線29aと、図5に示すフレキシブルプリント基板27の他方の面(流路部材22aや圧力緩衝器22b側の面)に形成された第二接続配線29bと、フレキシブルプリント基板27を貫通してこれら第一、第二接続配線29a,29bを接続する貫通配線29cと、から構成されている。
【0038】
第一接続配線29aは、図6に示すように、信号線28と平行に延びた帯状の配線パターンであり、複数の信号線28の側方、つまりフレキシブルプリント基板27の側端部に配設されている。一対の接続配線29の各第一接続配線29aは、間隔をあけて平行に並べて配置されている。また、各第一接続配線29aの駆動回路基板26側の端部(図6における上側の端部)は、駆動回路基板26の図示せぬ配線パターンにそれぞれ電気的に接続されており、この配線パターンを介して駆動電圧値設定手段60にそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
第二接続配線29bは、図5に示すように、フレキシブルプリント基板27の横幅方向(矢印L1方向)の中央部分からフレキシブルプリント基板27の側端部に向かって延びた帯状の配線パターンである。一対の接続配線29の各第二接続配線29bは、間隔をあけて平行に並べて配置されている。また、各第二接続配線29bの基板中央側の端部には、図5に示すように、温度センサ50を実装させるためのランド29dがそれぞれ形成されている。詳しく説明すると、ランド29dは、温度センサ50をはんだ付けするための金属箔(例えば銅箔)であり、2本の第二接続配線29bのランド29dは、互いに間隔をあけて並べて配設されている。これら一対のランド29dのうちの一方には、温度センサ50の一方の引き出し電極がはんだ付けされ、他方には温度センサ50の他方の引き出し電極がはんだ付けされており、これにより、フレキシブルプリント基板27の他方の面に温度センサ50が実装されている。
【0040】
貫通配線29cは、複数の信号線28の側方、つまりフレキシブルプリント基板27の側端部に配設されていると共にフレキシブルプリント基板27を貫通する配線であり、図5及び図6に示すように、第一接続配線29aのヘッドチップ21側の端部と第二接続配線29bの基板側端側の端部との間に介装されている。
【0041】
また、上記した温度センサ50は、フレキシブルプリント基板27にプリントされた信号線28を介してヘッドチップ21と温度センサ50の熱伝導(熱結合)をとっており、これにより、温度センサ50はヘッドチップ21の温度を取得している。すなわち、ヘッドチップ21の温度は、ヘッドチップ21の接続電極39に接触された信号線28に伝達され、この信号線28からフレキシブルプリント基板27を介してランド29dに伝達され、このランド29dから温度センサ50に伝達される。
【0042】
次に、上述した構成のインクジェットヘッド2の作用について説明する。
【0043】
上記した構成のインクジェットヘッド2では、フレキシブルプリント基板27に信号線28を形成する工程の際、フレキシブルプリント基板27に接続配線29を形成する。詳しく説明すると、フレキシブルプリント基板27の一方の面に信号線28及び第一接続配線29aをそれぞれプリント配線し、また、フレキシブルプリント基板27の他方の面に第二接続配線29b及びランド29dをプリント配線し、さらに、フレキシブルプリント基板27の側端部に形成された貫通孔に貫通配線29cを形成する。
これにより、インクジェットヘッド2を製造する際にリード線等を引き回す必要がなく、ヘッドチップ21と駆動回路基板26との間にフレキシブルプリント基板27を介装させることにより、フレキシブルプリント基板27上の接続配線29を介して温度センサ50と駆動電圧値設定手段60とが接続される。
また、フレキシブルプリント基板27上にプリント配線された接続配線29は、リード線等に比べて、揮発したインクWによる腐食が生じにくい。
【0044】
また、フレキシブルプリント基板27をヘッドチップ21と駆動回路基板26との間に介装させる前に、フレキシブルプリント基板27に予め温度センサ50を実装させておく。詳しく説明すると、フレキシブルプリント基板27に形成されたランド29dに温度センサ50の引き出し電極をはんだ付けし、フレキシブルプリント基板27上に温度センサ50を実装させる。その後、フレキシブルプリント基板27の一端を駆動回路25に接続すると共にフレキシブルプリント基板27の他端をヘッドチップ21に接続し、フレキシブルプリント基板27をヘッドチップ21と駆動回路基板26との間に介装させる。
これにより、インクジェットヘッド2を製造する際に温度センサ50を取り付ける作業が不要となる。すなわち、ヘッドチップ21と駆動回路基板26との間にフレキシブルプリント基板27を介装させることにより、温度センサ50がヘッドチップ21の近傍に配設される。
【0045】
次に、上述したように構成されたインクジェットプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、4つのインクタンク41にはそれぞれ異なる色のインクWが十分に封入されているものとする。また、インクタンク41内のインクWが供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bに供給された状態となっている。そのため、所定量のインクWが、インク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21のインク導入口31aに供給され、インク導入口31aからチャネル35内に充填された状態となっている。
【0046】
このような初期状態のもと、インクジェットプリンタ1を作動させると、一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16が回転して記録紙Pを搬送方向(矢印L1方向)に向けて搬送する。また、これと同時にモータ10がプーリ8を回転させて搬送ベルト9を動かす。これにより、キャリッジ6がガイドレール7でガイドされながら走査方向(矢印L2方向)に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド2のヘッドチップ21より4色のインクWを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。特に、シャトル方式であるので、記録紙Pの所望する範囲に対して正確に記録を行うことができる。
【0047】
ここで、各インクジェットヘッド2の動きについて、以下に詳細に説明する。
【0048】
まず、温度センサ50によってヘッドチップ21内のインクWの温度が検出され、その検出値が接続配線29を介して駆動電圧値設定手段60に伝達される。詳しく説明すると、サーミスタからなる温度センサ50は温度に応じて電気抵抗が変化するため、例えばヘッドチップ21の近傍に配設された温度センサ50と駆動電圧値設定手段60との間に流れる電流値の大きさによってヘッドチップ21の温度が検出され、さらにはヘッドチップ21内のインクWの温度が検出される。
【0049】
一方、キャリッジ6によって往復移動が開始されると、駆動回路25は、フレキシブル基板27の信号線28を介して駆動電極37に駆動電圧を印加する。より詳しくは、インクWを吐出するチャネル35の両側の2つの側壁36にそれぞれ設けられている駆動電極37に駆動電圧を印加し、この2つの側壁36を、インクWを吐出させるチャネル35に隣接しているチャネル35側へ突出するように変形させる。即ち、吐出するチャネル35があたかも膨らむように変形させる。また、このとき、駆動電圧値設定手段60において、上記した駆動電圧テーブルによって温度センサ50の検出値に応じた大きさの駆動電圧を決定し、その駆動電圧の情報を駆動回路25に伝達し、駆動回路25は、その大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加する。このため、上記した2つの側壁36の変形量は、インクWの温度(粘性)に対応した大きさとなる。
【0050】
上記した2つの側壁36の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出するチャネル35の容積が増大する。そして、チャネル35の容積が増大したことにより、インクWがインク導入口31aからチャネル35に誘導される。そして、チャネル35の内部に誘導されたインクWは圧力波となってチャネル35の内部を通過し、この圧力波がノズル33aに到達したタイミングで、駆動電極37に印加した駆動電圧をゼロにする。これにより、側壁36の変形が元に戻り、一旦増大したチャネル35の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出するチャネル35の内部の圧力が増加し、インクWが加圧される。その結果、インクWがチャネル35内から吐出される。
【0051】
なお、ここで述べている駆動電極37は、それぞれ隣接するチャネル35から選択的にインクWを吐出させるための電極として、別々に機能するように形成されている。また、インクWを安定して吐出するために、さらなるインクWの加圧が必要な場合には、側壁36を吐出するチャネル35側へ突出するように変形させる。この動作によって、吐出するチャネル35の内部の圧力がさらに増加するので、インクWをより加圧することができる。但し、この動作は上述したとおり、インクWを安定して吐出させることを目的とするものであるので、必須な動作ではなく必要に応じて適宜使用すれば良い。
また、本実施形態では、非水性のインクWを使用しているので、上述した各動作を必要に応じて組み合わせて実行することにより、最適なインクWの吐出を実現することができる。
【0052】
吐出されたインクWは、ノズル孔33aを通って外部に吐出される。しかもノズル孔33aを通過する際に、インクWは液滴状、即ちインク滴となって吐出される。その結果、上述したように、記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
特に、本実施形態のノズル孔33aは、断面テーパ状であるので、インク滴を速い速度で真っ直ぐに直進性良く吐出することができる。よって、高画質に記録を行うことができる。
【0053】
上記した構成のインクジェットヘッド2及びインクジェットプリンタ1によれば、温度センサ50によってインクWの温度を検出し、その検出値に基づいて決定された大きさの駆動電圧を駆動電極37に印加するため、インクWの吐出量を一定にすることができる。
【0054】
また、温度センサ50と駆動電圧値設定手段60とを接続する接続配線29がフレキシブルプリント基板27に形成されており、インクジェットヘッド2を製造する際にリード線等を引き回す必要がないため、生産効率を向上させることができ、その結果、コストダウンを図ることができる。
特に、上記した構成のインクジェットヘッド2では、温度センサ50がフレキシブルプリント基板27上に実装されており、インクジェットヘッド2を製造する際に温度センサ50を取り付ける作業が不要となるため、生産効率をより向上させることができ、コストダウンを図ることができる。
【0055】
また、インクジェットヘッド2を製造する際にリード線等を引き回す必要がないため、インクジェットヘッド2の構造的な制約を低減させることができる。すなわち、リード線等を引き回すことができる構成にする必要がなく、圧力緩衝器22b等の他の部材の設置位置や外形寸法の制限を低減させることができる。
さらに、フレキシブルプリント基板27に形成された接続配線29はリード線等に比べて腐食しにくいため、温度検出に異常が生じにくくなる。
【0056】
また、上記した構成のインクジェットヘッド2では、フレキシブルプリント基板27の一方の面に信号線28が形成され、他方の面に温度センサ50が実装されており、温度センサ50の実装位置が信号線28の無いフレキシブルプリント基板27の側端部等に限定されず、フレキシブルプリント基板27上の任意の位置に温度センサ50を配設させることが可能となる。したがって、上記したインクジェットヘッド2では、フレキシブルプリント基板27の横幅方向(矢印L1方向)の中央部分に温度センサ50が配設されており、これにより、1つの温度センサ50によってヘッドチップ21全体のインクWの温度を適正に検出することができる。
また、上記した温度センサ50がサーミスタからなるため、温度センサ50が小型で簡易な構成となり、インクジェットヘッド2の構造的な制限を低減させることができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について図7に基いて説明する。
なお、本実施の形態は、フレキシブルプリント基板27に形成されたランド29eの構成が第1の実施の形態と異なり、他の構成は第1の実施の形態の構成と同様である。したがって、本実施の形態においては、ランド29eについてのみ説明し、第1の実施の形態の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、ランド29eが、フレキシブルプリント基板27の中間部からフレキシブルプリント基板27のヘッドチップ21側の接続端部まで延設されている。すなわち、ランド29eが下方に向けて延ばされており、このランド29eの一端部は、ヘッドチップ21と駆動回路基板26との間に位置するフレキシブルプリント基板27の中間部に配設され、ランド29eの他端部は、アクチュエータプレート30の基端部に重ね合わされたフレキシブルプリント基板27の下端部に配設されている。
これにより、ランド29eを介してヘッドチップ21の温度が温度センサ50に伝達されるので、温度センサ50によるヘッドチップ21内のインクWの温度の検出精度が向上する。その結果、インクWの吐出量をより正確に一定にすることができる。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について図8に基いて説明する。
なお、本実施の形態は、温度センサ50に熱伝導性樹脂29fが塗布された構成となっており、他の構成は第1の実施の形態の構成と同様である。したがって、本実施の形態においては、熱伝導性樹脂29fについてのみ説明し、第1の実施の形態の構成と同様の構成については説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、フレキシブルプリント基板27に実装された温度センサ50には、熱伝導性樹脂29fが塗布されている。この熱伝導性樹脂29fとしては、例えば、熱伝導性のシリコーンを主成分とする樹脂等を用いることができる。熱伝導性樹脂29fは、温度センサ50全体を覆うように塗布されている。また、この熱伝導性樹脂29fは、フレキシブルプリント基板27の中間部からフレキシブルプリント基板27のヘッドチップ21側の接続端部まで延設されており、その一部がヘッドチップ21のアクチュエータプレート30の基端部やカバープレート31の基端部に接触されている。
これにより、熱伝導性樹脂29fを介してヘッドチップ21の温度が温度センサ50に伝達されるので、温度センサ50によるヘッドチップ21内のインクWの温度の検出精度が向上する。その結果、インクWの吐出量をより正確に一定にすることができる。
【0061】
以上、本発明の第1から第3の実施の形態について説明したが、本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。 例えば、上記した各実施の形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0062】
また、上記した各実施の形態では、複数のノズル孔33aが配列方向に直線状に一列に配列されているが、本発明は、複数のノズル孔33aが直線状に配列されてなく、縦方向(矢印L2方向)にずらして配列されていてもよい。例えば、複数のノズル孔33aが斜めに配列されていてもよく、或いは、千鳥状に配列されていてもよい。
また、ノズル孔33aの形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0063】
また、上記した実施の形態では、カバープレート31にインク導入口31aが形成されているが、本発明は、アクチュエータプレートにインク導入口が形成されていてもよい。例えば、アクチュエータプレートの裏面(チャネルが形成された表面の反対側の面)に配列方向に延びた断面凹状のインク導入口が形成され、このインク導入口の底面に、チャネルに連通するスリットが形成された構成であってもよい。なお、この場合、IC基板26が固定されたベースプレート20とダンパ部材22,122との位置を入れ換えて、ダンパ部材22,122をアクチュエータプレートに重ね合わせるように配設すると共に、ベースプレート20をカバープレート31に重ね合わせるように配置すればよい。
【0064】
また、上記した実施の形態では、非水性のインクWを利用した場合を説明したが、例えば、導電性の水性インク、ソルベントインク、オイルインクやUVインク等を用いても構わない。
なお、水性インクを用いる場合には、ヘッドチップは次にように構成すれば良い。
即ち、アクチュエータプレートには、インクが充填される吐出チャネルとして機能する吐出チャネルと、インクが充填されないダミーチャネルとして機能するダミーチャネルと、が配列方向に交互に形成される。そして、インク導入口の底面には、吐出チャネルに対向する位置にスリットを形成する。これにより、インク導入口からスリットを通って吐出チャネルにだけインクが充填される。そして、ノズルプレートには、吐出チャネルに対向する位置にノズル孔が形成される。
このようにヘッドチップ21を構成することで、水性のインクであっても、吐出チャネルに設けられた駆動電極と、ダミーチャネルに設けられた駆動電極とをインクを介して導通させることなく、電気的に切り離した状態で使い分けることができる。従って、水性のインクを利用して記録を行うことができる。
特に、導電性を有するインクであっても問題なく利用できるので、インクジェットプリンタの付加価値を高めることができる。なお、その他は同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
また、上記した実施の形態では、温度センサ50としてサーミスタが用いられているが、本発明は、他の温度センサを用いることも可能である。例えば、温度センサとして熱電対などを用いることも可能である。
また、上記した実施の形態では、フレキシブルプリント基板27の一方の面に信号線28が形成され、他方の面に温度センサ50が実装されているが、本発明は、信号線28と温度センサ50とがフレキシブルプリント基板27の同じ面に配設させることも可能である。例えば、複数の信号線28の側方、つまりフレキシブルプリント基板27の側端部に温度センサ50を配設させることも可能である。
また、上記した実施の形態では、温度センサ50がフレキシブルプリント基板27上に実装されているが、本発明は、フレキシブルプリント基板27以外に温度センサ50を取り付けることも可能である。例えば、温度センサ50をヘッドチップ21に取り付けることも可能であり、或いは流路部材22aに温度センサ50を取り付けることも可能である。
【0066】
また、上記した実施の形態では、駆動電圧値設定手段60が駆動回路基板26上に配設されているが、本発明は、上記構成に限定されるものではない。例えば、インクジェットプリンタ1の図示せぬ制御部に駆動電圧値設定手段60が配設されていてもよい。この場合、フレキシブルプリント基板27上の接続配線29と駆動電圧値設定手段60、及び、駆動回路25と駆動電圧値設定手段60は、駆動回路基板26と上記した制御部とを接続する配線を介してそれぞれ電気的に接続される。
【0067】
また、上記した実施の形態では、図5から図8に示すように、第一接続配線29aがフレキシブルプリント基板27の長手方向の片側に2本一対に揃えて配設されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、第一接続配線29aがフレキシブルプリント基板27の長手方向の一方側と他方側とにそれぞれ1本ずつ配設されていてもよい。また、第一接続配線29aがフレキシブルプリント基板27の長手方向の略中央部分に配設されていてもよい。すなわち、並設された複数の信号線28の中、つまり隣り合う信号線28の間に第一接続配線29aが配線されていてもよい。これにより、温度センサ50がフレキシブルプリント基板27の長手方向の略中央に位置する場合に、フレキシブルプリント基板27の長手方向の端部から接続配線29を引き回して配置せずに実施することができる。
また、本発明は、温度センサ50をはんだ付けするための金属箔は、銅箔に限定されず、ヘッドチップ21と温度センサ50間の熱結合(熱伝導)をとり、ヘッドチップ21で発生した温度を取得することができれば、いかなる金属であってもよい。
【0068】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための液体噴射装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するための液体噴射ヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するためのヘッドチップの斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を説明するためのヘッドチップの分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を説明するためのヘッドチップ、制御手段及び温度センサを表した側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を説明するためのフレキシブルプリント基板及び温度センサを表した側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を説明するためのヘッドチップ、制御手段及び温度センサを表した側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態を説明するためのヘッドチップ、制御手段及び温度センサを表した側面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
2 インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
3 搬送手段
4 移動手段
21 ヘッドチップ
23 制御手段
25 駆動回路
26 駆動回路基板
27 フレキシブルプリント基板
28 信号線
29 接続配線
29e ランド
29f 熱伝導性樹脂
33a ノズル孔
35 チャネル
36 側壁
37 駆動電極
50 温度センサ
60 駆動電圧値設定手段
P 記録紙(被記録媒体)
W インク(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される複数のチャネルが間隔をあけて並列に形成され、該チャネルの側壁に駆動電極が形成されていると共に前記チャネルに連通するノズル孔が形成されたヘッドチップと、
前記ヘッドチップ又は該ヘッドチップの近傍に配設されて該ヘッドチップ内の前記液体の温度を検出する温度センサと、
前記ヘッドチップを駆動させるための駆動回路が実装された駆動回路基板、前記駆動回路と前記駆動電極とを電気的に接続する信号線が形成されたフレキシブルプリント基板、及び、前記温度センサの検出値に基づいて駆動電圧の大きさを決定する駆動電圧値設定手段を備え、該駆動電圧値設定手段で決定された大きさの駆動電圧を前記駆動回路から前記信号線を介して前記駆動電極に印加する制御手段と、
が備えられ、
前記駆動電極に前記駆動電圧が印加されることで前記側壁が変形し、該側壁の変形によって前記チャネル内の圧力が高められて該チャネル内の前記液体が前記ノズル孔から吐出される液体噴射ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板には、前記温度センサと前記駆動電圧値設定手段とを電気的に接続する接続配線が形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサが、前記フレキシブルプリント基板上に実装されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサと前記ヘッドチップとは前記信号線を介して熱結合されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板に、前記温度センサを実装させるランドが形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項3または4に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサは、前記ヘッドチップと前記駆動回路基板との間に位置する前記フレキシブルプリント基板の中間部に配設されており、
前記ランドは、前記フレキシブルプリント基板の中間部から前記フレキシブルプリント基板のヘッドチップ側の接続端部まで延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサに熱伝導性樹脂が塗布されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサは、前記ヘッドチップと前記駆動回路基板との間に位置する前記フレキシブルプリント基板の中間部に配設されており、
前記熱伝導性樹脂は、前記フレキシブルプリント基板の中間部から前記フレキシブルプリント基板のヘッドチップ側の接続端部まで延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記フレキシブルプリント基板の一方の面に前記信号線が形成され、他方の面に前記温度センサが実装されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記温度センサがサーミスタからなることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項10】
被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送された被記録媒体の表面に対して前記ノズル孔が対向する向きに配置された請求項1から9のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−131850(P2010−131850A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309784(P2008−309784)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】