説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】 圧電素子の破壊を抑制すると共に、圧電素子の変位特性に優れた液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 第2電極80に接続され圧力発生室12に相対向する領域外に形成される配線層95が設けられ、第2電極80上の圧電体能動部320の4つの角部321に対向する領域には、圧電体能動部320の第1方向端部を中心として第1方向両側に延設される第1部分121と、第1部分121に連続し且つ圧電体能動部320の第1方向端部に沿って第2方向に延設される第2部分122とから構成されるT型金属層120を有し、T型金属層120と配線層95とが配線層接続部123を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせ、圧電体層と圧電体層に電圧を印加する電極を有する圧電素子を具備する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、圧電素子の振動板側の第1電極を圧力発生室毎に切り分けて個別電極とし、第2電極を複数の圧力発生室に亘って連続させることで共通電極としたものが提案されている。このような構成のインクジェット式記録ヘッドでは、圧電素子の実質的な駆動部である圧電体能動部は、第1電極と第2電極によって規定されている。しかしながら、圧電体能動部の端部にひずみが集中してしまい、圧電素子が破壊されてしまうことが問題となっていた。そこで、圧電体能動部の端部のひずみを低減するために、圧電体能動部の端部に複数の圧電素子に亘って連続する帯状の金属層を設けたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−208071号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の圧電素子に亘って連続する帯状の金属層を設けることにより、ひずみを低減させることができるが、かかる金属層が圧電素子の変位を阻害してしまうという問題があった。
【0006】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外の液滴を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、圧電素子の破壊を抑制すると共に、圧電素子の変位特性に優れた液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が第1方向に並設される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられ前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子と、を具備し、前記圧電素子は、前記圧電素子毎に独立する第1電極、前記第1電極上方に設けられる圧電体層、及び該圧電体層上方に複数の圧電素子に亘って連続して設けられてこれら複数の圧電素子に共通する第2電極を備え、前記第1電極及び第2電極によって前記圧電体層が挟まれた領域である圧電体能動部が各圧力発生室に相対向する領域に設けられており、前記第2電極に接続され前記圧力発生室に相対向する領域外に形成される配線層が設けられ、前記第2電極上の前記圧電体能動部の4つの角部に対向する領域には、前記圧電体能動部の第1方向端部を中心として前記第1方向両側に延設される第1部分と、該第1部分に連続し且つ前記圧電体能動部の前記第1方向端部に沿って第2方向に延設される第2部分とから構成されるT型金属層を有し、前記T型金属層と前記配線層とが配線層接続部を介して接続されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、第2電極上の圧電体能動部の角部近傍にT型金属層を設けることにより、圧電素子の変位量を確保しつつ、圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。これにより、圧電素子の破壊を抑制すると共に、圧電素子の変位特性に優れた液体噴射ヘッドとすることができる。また、T型金属層と配線層とが接続されていることにより、エレキクロストークの発生が抑制される。
【0009】
ここで、前記第1部分の第1方向の長さは、前記第1電極の第1方向の長さの35%以上45%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子の変位量を確保しつつ圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。
【0010】
また、前記第1部分の第2方向の幅は、前記圧電体能動部の第2方向の長さの0.3%以上0.4%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子の変位量を確保しつつ圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。
【0011】
前記第2部分の第2方向の長さは、前記圧電体能動部の第2方向の長さの2.5%以上3.5%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子の変位量を確保しつつ圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。
【0012】
前記第2部分の第1方向の幅は、前記第1電極の第1方向の長さの10%以上20%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子の変位量を確保しつつ圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。
【0013】
前記圧力発生室に対応する領域における前記配線層接続部の幅は、前記圧電体能動部の第2方向の長さの0.3%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子の変位量を確保しつつ圧電体能動部の端部のひずみを低減することができる。
【0014】
前記圧力発生室に対応する領域では、前記第1方向において隣り合う前記第1部分がT型金属層接続部を介して接続されるのが好ましい。これによれば、より確実に、エレキクロストークの発生を抑制することができる。
【0015】
また、少なくとも前記T型金属層及び前記配線層接続部は、前記第1電極に接続するリード電極と同一材料からなるのが好ましい。これによれば、リード電極と、T型金属層と、を同一工程で形成することができるため、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
【0016】
本発明の他の態様は、上記に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、圧電素子の破壊を抑制すると共に、圧電素子の変位特性に優れた液体噴射ヘッドを備えることにより、信頼性に優れ、液体の噴射特性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの一部平面模式図である。
【図4】試験例1の結果を示す図である。
【図5】試験例2の結果を示す図である。
【図6】本発明に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図である。
【0019】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には、振動板を構成する二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0020】
流路形成基板10には、一方の面とは反対側の面となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1方向と称し、これと直交する方向を第2方向と称する。また、流路形成基板10の圧力発生室12の第2方向の一端部側には、インク供給路13と連通路14とが隔壁11によって区画されている。また、連通路14の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部15が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部15、インク供給路13及び連通路14からなる液体流路が設けられている。
【0021】
インク供給路13は、圧力発生室12の第2方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路13は、マニホールド100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路13を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路14は、インク供給路13の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路13の幅方向(第1方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路14を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
【0022】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、インク供給路13と、連通路14とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の一方面は、振動板を構成する弾性膜50によって画成されている。
【0023】
一方、流路形成基板10の圧力発生室12等の液体流路が開口する一方面側には、各圧力発生室12のインク供給路13とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱用着フィルム等を介して接合されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0024】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例
えば、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなる絶縁体膜55が積層形成されている。
【0025】
また、絶縁体膜55上には、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられて厚さが3μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、圧電体層70の上方に設けられた第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。なお、ここで言う上方とは、直上だけでなく、間に他の部材が介在した状態も含むものである。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70、及び第2電極80、を含む部分をいう。
【0026】
圧電素子300は、一般的には、何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極をそれぞれ独立する個別電極とする。本実施形態では、圧電素子300の実質的な駆動部となる各圧電体能動部320の個別電極として第1電極60を設け、複数の圧電体能動部320に共通する共通電極として第2電極80を設けるようにした。ここで、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320といい、圧電体能動部320から連続するが第1電極60と第2電極80に挟まれておらず、電圧駆動されない部分を圧電体非能動部という。
【0027】
なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、及び第1電極60が圧電素子300と共に変形する振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
【0028】
ここで、本実施形態では、圧電素子300は、第1方向と比較して第2方向が長い矩形状となっている。そして、第2電極80の第2方向端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電素子300の実質的な駆動部となる圧電体能動部320の第2方向の端部(圧電体能動部320の長さ)を規定している。また、第1電極60(及び圧電体層70)の第1方向端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電体能動部320の第1方向の端部(圧電体能動部320の幅)を規定している。すなわち、圧電体能動部320は、パターニングされた第1電極60及び第2電極80の端部によって規定されており、圧力発生室12に相対向する領域に設けられている。より具体的には、図2に示すように、圧力発生室12の長手方向(第2方向)において、圧電体能動部320のインク供給路13側の端部は、第2電極80の第2方向の端部によって規定されており、圧電体層70及び第1電極60は、この端部の外側まで延設されている。また、圧力発生室12の長手方向(第2方向)において、圧電体能動部320のインク供給路13とは反対側(ノズル開口21側)の端部も同様に、第2電極80の第2方向の端部によって規定されており、この端部の外側まで第1電極60及び圧電体層70は延設されている。そして、第1電極60は、各圧力発生室12に対向する部分が圧力発生室12の幅(第2方向の長さ)よりも狭い幅で形成されており、第1電極60の第1方向の端部が、圧電体能動部320の第1方向の端部を規定している。
【0029】
図2に示すように、第1電極60の第1方向端部は、圧力発生室12に対向する領域内に設けられている。すなわち、第1電極60の第1方向の幅は、圧力発生室12の第1方向の幅よりも狭くなるように形成されている。そして、各第1電極60は、第2方向一端部、具体的には、圧力発生室12のインク供給路13とは反対側であって圧力発生室12よりも外側の領域において、個別リード電極90がそれぞれ接続されている。各圧電素子300には、この個別リード電極90を介して、詳しくは後述する駆動回路200がボンディングワイヤー等の接続配線を介して接続されている。また、第1電極60は、第2方向他端部側(インク供給路13側)は、圧力発生室12の長手方向一端部よりも外側まで延設されている。
【0030】
圧電体層70は、複数の圧力発生室12に対向する領域に亘って連続的に設けられており、圧力発生室を区画する隔壁11に対向する領域に開口部301が存在する。開口部301は、第2電極80及び圧電体層70を完全に除去することによって形成されており、絶縁体膜55が露出している。この開口部301は、図2(a)に示すように、第2の方向の長さが、圧電体能動部320の長手方向(第2の方向)の長さよりも短く、且つ、第1の方向の幅が、隔壁11の第1方向の幅よりも広くなるように設けられている。これにより、圧電体層70の大半は、圧力発生室12の幅方向(第1の方向)において各圧力発生室12に相対向する領域内に形成されている。なお、本実施形態では、開口部301は、第2電極80及び圧電体層70を完全に除去することによって形成されているが、圧電体層70の厚さ方向の一部を残すようにしてもよいし、圧電体層70と共に絶縁体膜55の上部の一部を除去するように形成してもよい。
【0031】
また、圧電体層70には、図2(b)に示すように、インク供給路13とは反対側において、第1電極60の一部が露出するような貫通孔71が形成されている。かかる貫通孔71に後述するリード電極90を形成することにより、第1電極60とリード電極90が接続される。
【0032】
第2電極80は、複数の圧力発生室12に対向する領域と、隔壁11に対向する領域とに亘って圧電体層70上に連続的に形成されており、その一部に開口部301及び開口部81が存在する。第2電極80は、圧力発生室12に対向する領域内では、第1方向の両端部のそれぞれ一部が開口部301で規定されている。これにより、図2(a)に示すように、第2電極80の大半は、圧力発生室12の幅方向(第1方向)において各圧力発生室12に対向する領域内に形成されている。また、第2電極80の開口部81は、圧力発生室12の第2方向一端部側(インク供給路13側)に設けられている。これにより、圧電体能動部320の第2方向一端部側が規定されている。本実施形態では、図2(b)に示すように、第2電極80の第2方向端部によって圧電体能動部320の長手方向(第2方向)端部が規定されている。
【0033】
本実施形態では、第2電極80は、開口部81が一部に存在するが、圧力発生室12の第2方向一端部側(インク供給路13側)において、複数の圧電素子300に亘って連続するように形成されている。このように、第2電極80が、圧力発生室12の外側の領域において十分に面積を確保していることにより、抵抗値を実質的に低下させることができ、電圧降下等の発生を抑制して圧電素子300を良好に駆動させることができる。
【0034】
また、圧電素子300上の圧力発生室12に相対向する領域外に配線層95が設けられており、第2電極80に接続されている。かかる配線層95は、例えば、圧力発生室12に相対向する領域外の第2電極80上に設けられている。本実施形態では、配線層95は、圧力発生室12の第2方向インク供給路13と反対側では、第2電極80上の圧力発生室12の第1方向外側に設けられており、圧力発生室12の第2方向インク供給路13側は、第2電極80上の開口部81の第1方向両側及び開口部81の第2方向片側(インク供給路13側)に設けられている。このような構成では、配線層95によって圧電素子300の共通電極である第2電極80の抵抗値が実質的に低下するため、多数の圧電素子300を同時に駆動しても電圧降下の発生を防止することができる。本実施形態にかかる配線層95は、本実施形態では、リード電極90と同一材料からなるが、リード電極90と不連続となっている。
【0035】
また、圧電素子300上の圧力発生室12に相対向する領域外に配線層95が設けられており、第2電極80に接続されている。かかる配線層95は、例えば、圧力発生室12に相対向する領域外の第2電極80上に設けられている。本実施形態では、配線層95は、圧力発生室12の第2方向におけるインク供給路13と反対側では、第2電極80上の圧力発生室12の第1方向外側に設けられており、圧力発生室12の第2方向におけるインク供給路13側では、第2電極80上の開口部81の第1方向両側及び開口部81の第2方向片側(インク供給路13側)に設けられている。このような構成では、配線層95によって圧電素子300の共通電極である第2電極80の抵抗値が実質的に低下するため、多数の圧電素子300を同時に駆動しても電圧降下の発生を防止することができる。本実施形態にかかる配線層95は、本実施形態では、リード電極90と同一材料からなるが、リード電極90と不連続となっている。
【0036】
そして、図2に示すように、第2電極80上の圧電体能動部320の角部321に対向する領域には、T型金属層120が設けられている。かかるT型金属層120は、第1部分121と、第1部分121に連続する第2部分122とから構成される。1つの圧電体能動部320には4つの角部321が存在するが、各角部321それぞれに、第1部分121及び第2部分122からなるT型金属層120が設けられている。なお、ここでいう角部321は、圧電体能動部320の第1方向の辺と第2方向の辺との交点を指す。そして、T型金属層120と配線層95とが配線層接続部123により接続されている。また、圧力発生室12に対応する領域では、第1方向において隣り合う第1部分121がT型金属層接続部124により接続される。
【0037】
ここで、図3を用いて、第2電極80上に設けられる金属層についてより詳細に説明する。図3は、インクジェット式記録ヘッドの第2電極80上の一部平面模式図である。
【0038】
上述した通り、第2電極80の圧電体能動部320の角部321に対向する領域には、第1部分121と、第2部分122とから構成されるT型金属層120が設けられている。
【0039】
第1部分121は、第2電極80上の圧電体能動部320の角部321を中心として第1方向両側(圧電素子300の並設方向)に延設されるものである。具体的には、第1部分121は、圧電体能動部320の第1方向端部を中心として第1方向両側に延設されるものである。具体的には、角部321から第1方向に沿って圧電体能動部320の外側に向かって延びる第1部分121Aと、角部321から第1方向に沿って圧電体能動部内側に向かって延びる第2部分121Bとからなり、第1部分121Aと第2部分121Bの第1方向の長さは同一となっている。
【0040】
第2部分122は、第1部分121の圧電体能動部320内側に連続するように設けられており、圧電体能動部320の第1方向端部に沿って第2方向に延設されている。そして、第2部分122は、圧電体能動部320の第1方向端部を中心軸として対称となるように設ける。すなわち、第2部分122は、圧電体能動部320と圧電体非能動部の境界部分を覆うように設ける。
【0041】
言い換えれば、図3に示すように、T型金属層120は、第2電極80上の圧電体能動部320の角部321に対応するように設けられており、平面視がいわゆるT字状となっている。このT型金属層120において、角部321から第1方向に延びる部分を第1部分121とし、角部321から第2方向に延びる部分であって第1部分121を除いた部分を第2部分122としている。
【0042】
本実施形態では、第2電極80上に上述したT型金属層120を備えることにより、圧電体能動部320の角部321を押さえて、圧電体能動部320端部のひずみを低減させることができる。圧電体能動部320では、長手方向端部及び短手方向端部いずれにもひずみが集中するが、長手方向端部と短手方向端部の交点となる角部321は、特にひずみが集中してしまう。本実施形態では、この圧電体能動部320の角部321のひずみの集中を抑制することにより、ひずみの集中に起因する圧電素子300の破壊を抑制することができる。
【0043】
より詳細には、まず、第1部分121が圧電体能動部320の第2方向端部を覆うように且つ圧電体能動部320の第1方向端部を中心として第1方向に同一長さとなるように延設されていることにより、角部321の第1方向のひずみを第1方向両側に分散させてひずみの集中を緩和することができる。また、第2部分122が圧電体能動部320の角部321にかかる第2方向のひずみを押さえることにより、第2方向のひずみを圧電体能動部320側へ分散させてひずみの集中を緩和することができる。したがって、ひずみの集中に起因する圧電素子300の破壊を抑制することができる。
【0044】
また、従来のように、複数の圧電素子に亘って金属層を形成した場合、かかる金属層が圧電素子の変位を阻害してしまうため圧電素子の変位量を低下させてしまっていたが、本実施形態では、圧電素子300の変位を阻害するのを抑制しつつ、圧電体能動部320端部のひずみを低減させることができる。本実施形態によれば、例えば、T型金属層120を設けていない場合と同程度の圧電素子300の変位プロファイルとすることができる。したがって、圧力発生室12のインク滴の排除体積の低下を抑制することができ、インク滴量の減少等の吐出特性の低下を抑制することができる。
【0045】
また、T型金属層120は、配線層接続部123により配線層95と接続している。この配線層接続部123の第2方向の長さ(幅)は、圧力発生室12に対応する領域では幅狭となるように形成される。本実施形態では、配線層接続部123は、第1部分121よりも幅狭とし、T型金属層120の第1部分121から第1方向に沿って延設して配線層95に連続するように設けた。これにより、圧電素子300の変位特性を維持しつつ、電気的なクロストーク(エレキクロストーク)が発生するのを抑制することができる。具体的には、T型金属層120(第1部分121及び第2部分122)は、材料によっては抵抗値が高くなる虞があるが、配線層接続部123により配線層95と接続することにより、変位特性が低下するのを抑制しつつ、各T型金属層120間に電位差が生じるのを抑制することができる。これにより、各圧電素子300間の電位差により生じるクロストーク、いわゆる、エレキクロストークを抑制することができる。
【0046】
また、圧力発生室12に対応する領域では、第1方向において隣り合う第1部分121がT型金属層接続部124により接続されている。このT型金属層接続部124の幅は、できる限り幅狭となるように形成するのが好ましい。本実施形態では、配線層接続部123とT型金属層接続部124との第2方向の長さ(幅)よりも幅狭となるようにした。これにより、各T型金属層接続部124(の第1部分121)間と配線層95とが接続されて、より確実にエレキクロストークを抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、特にひずみの集中が問題となる圧電体能動部320の角部321をT型金属層120で覆うことにより圧電体能動部320端部のひずみを低減させて圧電素子300の破壊を抑制し、また、角部321以外の領域の金属層(配線層接続部123及びT型金属層接続部124)を幅狭とすることにより、圧電素子300の変位を阻害するのを抑制することができる。本実施形態のように、T字状のT型金属層120を形成することにより、従来よりも第2電極80上に形成する金属層の総面積を著しく小さくしても、ひずみの集中を抑制することができる。また、配線層接続部123及びT型金属層接続部124により、各圧電素子300間の電位差が生じるのを抑制し、エレキクロストークの発生を抑制することができる。
【0048】
なお、第1部分121を圧電体能動部320の第1方向端部(角部321)から第1方向片側のみに延設すると、反対側にひずみが集中してしまう。また、第2部分122を設けない場合は、第2方向のひずみを抑制することができず、ひずみが集中してしまう。また、配線層接続部123を設けない場合は、エレキクロストークの問題が生じる虞がある。
【0049】
ここで、第1金属121、第2部分122、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124の大きさについて説明する。
【0050】
第1部分121は、隣り合う角部321に形成される第1部分121が密着しないように設けられていればよいが、例えば、第1部分121の第1方向の長さLは、第1電極60の第1方向の長さLE1の35%以上45%以下であるのが好ましい。より確実に、圧電素子300の変位量を確保しつつ圧電体能動部320端部のひずみを低減することができるためである。なお、35%未満となると、圧電体能動部320端部のひずみを十分に低減させることができなくなる虞があり、45%より大きくなると、圧電素子300の変位特性を低下させてしまう虞がある。
【0051】
また、第1部分121の第2方向の幅Wは、圧電体能動部320の第2方向の長さ、すなわち、本実施形態の場合は第2電極80の第2方向の長さLE2の0.3%以上0.4%以下であるのが好ましい。より確実に、圧電素子300の変位量を確保しつつ圧電体能動部320端部のひずみを低減することができるためである。なお、0.3%未満となると、圧電体能動部320端部のひずみを十分に低減させることができなくなる虞があり、0.4%より大きくなると、圧電素子300の変位特性を低下させてしまう虞がある。
【0052】
第2部分122の第2方向の長さLは、圧電体能動部320の第2方向の長さ、すなわち、本実施形態の場合は第2電極80の第2方向の長さLE2の2.5%以上3.5%以下であるのが好ましい。より確実に、圧電素子300の変位量を確保しつつ圧電体能動部320端部のひずみを低減することができるためである。
【0053】
第2部分122の第1方向の幅Wは、第1電極60の第1方向の長さLE1の10%以上20%以下であるのが好ましい。より確実に、圧電素子300の変位量を確保しつつ圧電体能動部320端部のひずみを低減することができるためである。なお、0.1未満となると、圧電体能動部320端部のひずみを十分に低減させることができなくなる虞があり、0.2より大きくなると、圧電素子300の変位特性を低下させてしまう虞がある。
【0054】
圧力発生室12に対応する領域における配線層接続部123の幅W(第2方向の長さ)は、T型金属層120と配線層95とを電気的に接続させることができる幅であればよいが、例えば、圧電体能動部320の第2方向の長さの0.3%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子300の変位量の低下を抑制することができる。なお、圧力発生室12に対応する領域以外の配線層接続部123の幅(第2方向の長さ)は、幅広であってもよい。
【0055】
また、T型金属層接続部124の幅(第2方向の長さ)Wは、圧力発生室12において隣り合う第1部分121を電気的に接続させることができる幅であればよいが、第1部分121よりも幅狭となるようにするのが好ましい。T型金属層接続部124の幅は、例えば、圧電体能動部320の第2方向の長さの0.3%以下であるのが好ましい。これによれば、より確実に、圧電素子300の変位量の低下を抑制することができる。
【0056】
T型金属層120(第1部分121及び第2部分122)、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124の厚さは特に限定されないが、例えば、リード電極90と同程度の厚さとすることができ、1.3μm程度である。なお、第1部分121、第2部分122、配線層接続部123及びT型金属層接続部124の厚さは異なっていてもよいが、同程度である方が好ましい。
【0057】
本実施形態では、第1部分121、第2部分122、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124は、圧電素子300に接続するリード電極90と同一材料からなるが、リード電極90とは不連続のものとした。
【0058】
このようなT型金属層120(第1部分121及び第2部分122)、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124の材料や形成方法は、特に限定されないが、本実施形態では、リード電極90と同一材料からなるため、リード電極90と第1部分121及び第2部分122とを同一工程で形成することができる。例えば、第2電極80上の全面に金属膜を形成した後、金属膜をパターニングしてリード電極90を形成する際、この金属膜を角部321に、リード電極90とは電気的に絶縁させて残すようにすればよい。これにより、製造コストを低減させることができる。
【0059】
ここで、本実施形態では、第2電極80は、隔壁11上から圧力発生室12の長手方向他端部外側まで延設され、圧力発生室12の長手方向(第2方向)他端部の外側の領域においても圧力発生室12の幅方向(第1方向)に沿って連続的に形成されている。このような構成では、圧電素子300の共通電極である第2電極80の面積を比較的広く確保することができるため、電圧降下等の発生を抑制して圧電素子300を良好に駆動させることができる。
【0060】
また、上述したように、各圧電素子300の個別電極である第1電極60には、導電層82を介して、リード電極90がそれぞれ接続されている。リード電極90の材料は、特に限定されず、導電性を有した層からなるものであればよく、例えば、金(Au)、ニッケル−クロム合金(Ni−Cr)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等が挙げられ、本実施形態では、金(Au)からなるものとした。また、本実施形態では、導電層82は、第2電極80と同一の材料からなるが第2電極80とは不連続のものとした。かかる導電層82は、第2電極80をパターニングする工程において、貫通孔71の上方の第2電極80を構成する導電層を除去しないことで、導電層82を形成することができる。
【0061】
本実施形態では、図2(b)に示すように、電気抵抗の低い導電層82で引き回すために、圧電体能動部320の外側の圧電体層70にコンタクトホールとなる貫通孔71を設け、この貫通孔71を介して露出された第1電極60並びに貫通孔71の内面及び開口周縁部を覆うように第1電極60と接続する、第2電極80と同一層であるが第2電極80とは電気的に不連続である導電層82を設け、この導電層82に接続するように個別リード電極90を設けている。ここで、貫通孔71は、第1電極60の並設方向の幅よりも小さく開口されたものである。これにより、リード電極90と第1電極60との接続が第2電極80に近い位置であるが、ショートなどの問題が解消される。
【0062】
図1に戻り、このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55、及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部32を有する保護基板30が接着剤を介して接合されている。このマニホールド部32は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0063】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31が設けられている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0064】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0065】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路200が固定されている。この駆動回路200としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路200とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線を介して電気的に接続されている。
【0066】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってマニホールド部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0067】
以下、本発明のインクジェット式記録ヘッドについて、下記試験例等に基づいてさらに詳細に説明する。
【0068】
(実施例)
実施形態1と同一の構成からなるインクジェット式記録ヘッドとした。なお、第1電極60は、厚さ150nmの白金からなるものとし、圧電体層70は、厚さ1.3μmのチタン酸ジルコン酸鉛からなるものとし、第2電極80は、厚さ55nmのイリジウムからなるものとし、T型金属層120は、厚さ1.3μmの金(Au)からなるものとした。また、第1電極60の第1方向長さは30.63μm、圧力発生室12に対向する領域における第2電極80の第2方向端部の長さは700μmとし、各T型金属層120の第1部分121の長さLは20.5μm、第1部分121の幅Wは2.50μm、第2部分122の長さLは20.5μm、第2部分122の幅Wは4.38μmとし、配線層接続部123の幅は2.00μm、T型金属層接続部124の幅は2.00μmとした。
【0069】
(比較例)
金属層の構成が異なる以外は、実施形態1と同一の構成からなるインクジェット式記録ヘッドとした。比較例1の金属層は、第2方向の長さが15.3μmであり、圧電素子300の並設方向に亘って設けられるものとした。
【0070】
(参考例)
金属層を形成しなかった以外は、実施形態1と同一の構成からなるインクジェット式記録ヘッドとした。
【0071】
(試験例1)
実施例、比較例、及び参考例の各圧電素子について、有限要素法による3次元コンピューターシミュレーションにより、せん断ひずみを求めた。なお、ここでいう「せん断ひずみ」とは、圧電体層70で最も歪んだ箇所のせん断ひずみを指す。そして、参考例1のせん断ひずみを基準(100%)として、実施例及び比較例のせん断ひずみ率を求めた。結果を図4に示す。
【0072】
図4に示すように、実施例の圧電素子では、比較例の圧電素子よりもさらにせん断ひずみを抑制することができ、参考例の値の34%となることがわかった。
【0073】
(試験例2)
実施例、比較例、及び参考例の各インクジェット式記録ヘッドについて、有限要素法による3次元コンピューターシミュレーションにより、到達たわみを求めた。なお、ここでいう「到達たわみ」とは、圧電素子300で最もたわむ圧力発生室12中心のたわみ量を−100%としたときの圧電素子300の長手方向のたわみ量を指す。結果を図5に示す。
【0074】
図5に示すように、比較例のインクジェット式記録ヘッドは、金属層を設けていない参考例のインクジェット式記録ヘッドと比較して、圧力発生室12の長手方向(第2方向)の到達たわみが大幅に抑制されており、圧力発生室12の変位量が小さくなっていることが確認された。すなわち、圧力発生室12の排除体積が抑えられていることが確認された。
【0075】
これに対し、実施例のインクジェット式記録ヘッドの到達たわみは、金属層を設けていない参考例のインクジェット式記録ヘッドの到達たわみと比較して、遜色ないことがわかった。すなわち、実施例のインクジェット式記録ヘッドは、圧電素子300の変位特性を阻害することなく、圧電素子300の優れた圧電特性を維持することができることが確認された。
【0076】
以上より、第2電極80上に、圧電体能動部320の角部321を中心として第1方向に延設される第1部分121と、第1部分121に連続し且つ圧電体能動部320の第1方向端部に沿って延設される第2部分122と、配線層接続部123及びT型金属層接続部124が設けられているインクジェット式記録ヘッドは、圧電素子の変位量を確保しつつ、圧電体能動部端部320のひずみを低減することができることが確認された。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、実施形態1では、圧力発生室12の長手方向(第1方向)のインク供給路13側端部では、第1電極60が第2電極80よりも圧力発生室12の外側となるようにしたが、第2電極80が第1電極60よりも圧力発生室12の外側となるようにしてもよい。この場合は、圧電体能動部320の第2方向の一端部が第2電極80により規定され、他端部が第1電極60により規定されることになる。
【0078】
また、本実施形態では、圧電素子300に開口部301を設けるようにしたが、これに限定されず、開口部301は設けなくてもよい。例えば、圧電体層70及び第2電極80は、圧電素子300の並設方向に亘って形成するようにしてもよく、圧電体層70を圧力発生室12に対向する領域に設け且つ第2電極80を圧電素子300の並設方向に亘って形成するようにしてもよい。
【0079】
実施形態1では、第2電極80に開口部81を形成するようにしたが、開口部81を形成しなくてもよい。この場合は、例えば、圧電体能動部320の圧力発生室12の第1方向インク供給路13側の端部は、第1電極60により規定するようにすればよい。
【0080】
T型金属層120、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124は、圧電素子300に接続するリード電極90と同一材料からなるものとしたが、リード電極90とは異なる材料であってもよい。この場合のT型金属層120、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124のそれぞれの材料は特に限定されないが、第2電極80と密着性に優れるものが好ましい。
【0081】
また、T型金属層120、配線層接続部123、及びT型金属層接続部124の厚さは、リード電極90の厚さと同一となるようにしたが、これに限定されず、例えば、リード電極90よりも薄く形成してもよい。
【0082】
実施形態1では、配線層95を第2電極80上に形成するようにしたが、これに限定されるものではない。
【0083】
配線層接続部123は、T型金属層120と配線層95とを接続できるものであればよい。例えば、実施形態1では、配線層接続部123は、T型金属層120の第1部分121から第1方向に沿うように設けたが、第1方向に沿っていなくてもよい。また、配線層接続部123は、T型金属層120の第2部分122と配線層95とを接続するように設けていてもよい。
【0084】
また、実施形態1では、配線層接続部123は同一幅としたが、圧力発生室12に対応する領域で幅狭となるように形成されていればよく、例えば、圧力発生室12に対応する領域外では幅広となるように形成されていてもよい。
【0085】
また、実施形態1では、圧力発生室12に対応する領域における配線層接続部123を第1部分121よりも幅狭で形成して圧電素子300の変位量が低下するのを抑制したが、第1部分121と同一の幅とし、第1部分121よりも膜厚を薄くすることにより、圧電素子300の変位量が低下するのを抑制するようにしてもよい。
【0086】
また、実施形態1では、T型金属層接続部124を設けるようにしたが、T型金属層接続部124を設けなくてもよい。
【0087】
実施形態1では、リード電極90は、導電層91を介して貫通孔71内の第1電極60に接続するようにしたが、導電層91は設けずに、リード電極90と第1電極60が直接接続するようにしてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(100)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
【0089】
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図6は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0090】
図6に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0091】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0092】
上述したインクジェット式記録装置は、圧電素子300の破壊を抑制すると共に、圧電素子300の変位特性に優れたインクジェット式記録ヘッドを備えることにより、信頼性に優れ、液体の噴射特性を向上したものとなる。
【0093】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 インク連通路、 15 連通部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 95 配線層、 100 マニホールド、 121 第1部分、 122 第2部分、 123 配線層接続部、 124 T型金属層接続部、 200 駆動回路、 300 圧電素子、 320 圧電体能動部、 321 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が第1方向に並設される流路形成基板と、
該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられ前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子と、を具備し、
前記圧電素子は、前記圧電素子毎に独立する第1電極、前記第1電極上方に設けられる圧電体層、及び該圧電体層上方に複数の圧電素子に亘って連続して設けられてこれら複数の圧電素子に共通する第2電極を備え、前記第1電極及び第2電極によって前記圧電体層が挟まれた領域である圧電体能動部が各圧力発生室に相対向する領域に設けられており、
前記第2電極に接続され前記圧力発生室に相対向する領域外に形成される配線層が設けられ、
前記第2電極上の前記圧電体能動部の4つの角部に対向する領域には、前記圧電体能動部の第1方向端部を中心として前記第1方向両側に延設される第1部分と、該第1部分に連続し且つ前記圧電体能動部の前記第1方向端部に沿って第2方向に延設される第2部分とから構成されるT型金属層を有し、前記T型金属層と前記配線層とが配線層接続部を介して接続されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1部分の第1方向の長さは、前記第1電極の第1方向の長さの35%以上45%以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1部分の第2方向の幅は、前記圧電体能動部の第2方向の長さの0.3%以上0.4%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2部分の第2方向の長さは、前記圧電体能動部の第2方向の長さの2.5%以上3.5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第2部分の第1方向の幅は、前記第1電極の第1方向の長さの10%以上20%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記圧力発生室に対応する領域における前記配線層接続部の幅は、前記圧電体能動部の第2方向の長さの0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記圧力発生室に対応する領域では、前記第1方向において隣り合う前記第1部分がT型金属層接続部を介して接続されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
少なくとも前記T型金属層及び前記配線層接続部は、前記第1電極に接続するリード電極と同一材料からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218186(P2012−218186A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83161(P2011−83161)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】