説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】個別流路の寸法を非破壊で容易に測定することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口34に連通する個別流路21が設けられた流路形成基板22と、前記流路形成基板22の一方面側に設けられて前記個別流路21内の液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段40を有する第1部材23と、前記流路形成基板22の前記第1部材23とは反対面側に設けられた第2部材24と、を具備し、前記流路形成基板22、前記第1部材23及び前記第2部材24が一体化された焼成体で形成された液体噴射ヘッドであって、前記流路形成基板22には、ダミー流路21Aが前記個別流路21とは独立して設けられており、前記第1部材23及び前記第2部材24の少なくとも一方には、前記ダミー流路21Aを形成する前記流路形成基板の壁面の一部を露出する露出部60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特
に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、圧電素子
及び圧力発生室が設けられたアクチュエーターユニットと、圧力発生室に連通してインク
滴を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートを有する流路ユニットと、を具備す
るものがある。
【0003】
アクチュエーターユニットは、圧力発生室が設けられた流路形成基板と、流路形成基板
の一方面側に設けられて圧電素子が設けられた振動板と、流路形成基板の振動板とは反対
側の他方面側に設けられた圧力発生室底板と、が積層されて構成されている(例えば、特
許文献1参照)。
【0004】
このようなアクチュエーターユニットの各基板は、セラミックスなどの焼成体で形成さ
れているが、流路形成基板、振動板及び圧力発生室底板に流路等を形成し、個別に焼成し
て、焼成したもの同士を貼り合わせると、焼成による収縮のばらつきによって、位置ズレ
やピッチズレが発生してしまうという問題がある。
【0005】
このため、流路形成基板、振動板及び圧力発生室底板に流路等を形成した後、積層した
状態で焼成することで、間に接着剤を用いることなく一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−166334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、流路形成基板に圧力発生室等の個別流路を形成した後、振動板である第
1部材、圧力発生室底板である第2部材を接合して、これらを同時に焼成することで一体
化したインクジェット式記録ヘッドでは、焼成後の圧力発生室の形状及び寸法を測定する
ことができず、測定するには第1部材や第2部材などを剥離するなどの破壊を行わなくて
はならないという問題がある。
【0008】
そして、焼成により収縮した圧力発生室の形状の確認及び寸法が測定できないと、圧力
発生室の寸法を合わせて、インクジェット式記録装置に搭載することができず、インク吐
出特性にばらつきが生じ、印刷品質が低下するという問題がある。
【0009】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液
体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、個別流路の寸法を非破壊で容易に測定することができ
る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する個別流路が
設けられた流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に設けられて前記個別流路内の
液体に圧力変化を生じさせる圧力発生手段を有する第1部材と、前記流路形成基板の前記
第1部材とは反対面側に設けられた第2部材と、を具備し、前記流路形成基板、前記第1
部材及び前記第2部材が一体化された焼成体で形成された液体噴射ヘッドであって、前記
流路形成基板には、ダミー流路が前記個別流路とは独立して設けられており、前記第1部
材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記ダミー流路を形成する前記流路形成基板
の壁面の一部を露出する露出部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある

かかる態様では、焼成体として形成した後であっても、露出部を介して第1部材及び第
2部材を剥離することなく、ダミー流路の寸法を測定することができるため、ダミー流路
の寸法から個別流路の寸法を把握することができる。
【0012】
ここで、前記露出部が、前記ダミー流路を形成する前記流路形成基板の壁面のうち、相
対向する2面を露出することが好ましい。これによれば、ダミー流路の寸法を測定し易く
且つ正確に測定することができる。
【0013】
また、前記露出部が、前記ダミー流路と前記個別流路との並設方向である第1方向に対
して、交差する第2方向の少なくとも両端部に設けられていることが好ましい。これによ
れば、ダミー流路の第1方向及び第2方向の寸法を測定することができる。
【0014】
また、前記露出部は、前記ダミー流路に連通する前記ノズル開口の第2部材側の開口に
相対向して設けられていることが好ましい。これによれば、第2部材の開口の個別流路側
の形状及び寸法を露出部を介して測定することができる。
【0015】
また、前記個別流路が、前記流路形成基板を貫通して設けられていることが好ましい。
これによれば、露出部を第1部材及び第2部材の何れか一方に設けるだけで、ダミー流路
の寸法を露出部によって確実に測定することができる。
【0016】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする
液体噴射装置にある。
かかる態様では、個別流路の寸法を揃えた液体噴射ヘッドを液体噴射装置に搭載するこ
とで、液体の噴射特性を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係るアクチュエーターユニットの上面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】他の実施形態に係るアクチュエーターユニットの上面図である。
【図6】他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの分解斜視図であり、図2はインクジェット式記録ヘッドのアクチュエーターユニ
ットの平面図であり、図3は図2のA−A′線断面図及びB−B′線断面図である。
【0019】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、アクチュエーター
ユニット20と、アクチュエーターユニット20が固定される1つの流路ユニット30と
、アクチュエーターユニット20に接続される配線基板50と、を具備する。
【0020】
アクチュエーターユニット20は、圧力発生手段として圧電アクチュエーター40を具
備するアクチュエーター装置であり、圧力発生室21が形成された流路形成基板22と、
流路形成基板22の一方面側に設けられた振動板23と、流路形成基板22の他方面側に
設けられた圧力発生室底板24とを有する。
【0021】
流路形成基板22は、焼成により形成された焼成体からなる。本実施形態では、流路形
成基板22として、例えば、150μm程度の厚みを有するアルミナ(Al)や、
ジルコニア(ZrO)などのセラミックス板からなる。
【0022】
また、流路形成基板22には、個別流路である圧力発生室21が同じ色のインクを吐出
する複数のノズル開口34が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を
圧力発生室21の並設方向、又は第1の方向と称する。また、流路形成基板22には、圧
力発生室21が第1の方向に並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられてい
る。この圧力発生室21が第1の方向に沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設
された列設方向を、以降、第2の方向と称する。なお、本実施形態では、圧力発生室21
は、流路形成基板22を厚さ方向(第1部材23、流路形成基板22及び第2部材24の
積層方向)に貫通して設けられている。
【0023】
さらに、流路形成基板22には、第1方向に並設された圧力発生室21の各列の両端部
側には、圧力発生室21とは独立して設けられたダミー流路21Aが形成されている。ダ
ミー流路21Aは、複数の圧力発生室21が第1方向に並設された間隔(ピッチ)と同じ
間隔で、且つ圧力発生室21と同じ形状で形成されている。なお、ダミー流路21Aが圧
力発生室21とは独立して設けられているとは、ダミー流路21Aが、圧力発生室21と
連通していないことを言う。すなわち、ダミー流路21Aが後述する複数の圧力発生室2
1に共通して接続されたマニホールド32に連通してしまうと、ダミー流路21Aはマニ
ホールド32を介して圧力発生室21に連通してしまう。このため、本実施形態では、ダ
ミー流路21Aをマニホールド32に連通させないことで、ダミー流路21Aが圧力発生
室21と連通しない独立した状態としている。本実施形態では、詳しくは後述するが、圧
力発生室底板24のダミー流路21Aに相対向する位置に、マニホールド32と連通する
ための供給連通孔25を設けないようにすることで、ダミー流路21Aをマニホールド3
2に連通させないようにしている。
【0024】
このような流路形成基板22の一方面には、第1部材として、焼成により形成された焼
成体からなる振動板23が設けられている。本実施形態では、振動板23として、例えば
、10μm程度の厚みを有するアルミナ(Al)や、ジルコニア(ZrO)など
のセラミックス板からなる。この振動板23によって圧力発生室21の一方面側は封止さ
れている。
【0025】
また、振動板23には、ダミー流路21Aの第1方向の両端部に相対向する位置に厚さ
方向に貫通した露出部60が設けられている。すなわち、1つのダミー流路21Aには、
2つの露出部60が設けられている。
【0026】
この露出部60は、ダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁面の一部を露出
するものである。
【0027】
本実施形態では、露出部60は、ダミー流路21Aの第2方向の両端部のそれぞれに、
ダミー流路21Aの第1方向で相対向する2つの壁面と、第1方向の一方の壁面との合計
3面を露出するようにした。これにより、1つの露出部60によって、ダミー流路21A
の第1方向の幅を測定することができると共に、2つの露出部60によってダミー流路2
1Aの第2方向の長さを測定することができる。
【0028】
なお、露出部60は、本実施形態では、矩形状の開口形状を有する。ちなみに、露出部
60の開口形状は、ダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁面を露出できれば
その形状は特に限定されるものではなく、円形状、楕円形状であっても、三角形状、五角
形状等の多角形状であってもよい。
【0029】
また、露出部60によって露出されたダミー流路21Aは、振動板23及び圧力発生室
底板24によって覆われなければ、その他の部材によって覆われていてもよい。すなわち
、詳しくは後述するが、露出部60は、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底
板24を積層して焼成した状態で、ダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁面
の一部を露出していれば、その後、圧電アクチュエーター40や配線(個別端子部46及
び共通端子部47)等のその他の部材を形成した際に、その他の部材によって覆われても
よいものである。
【0030】
このように、露出部60を設けて、ダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁
面の一部を露出することで、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板24を積
層して焼成した後に、ダミー流路21Aの寸法の測定を振動板23等を剥離することなく
非破壊で行うことができる。特に、本実施形態では、露出部60をダミー流路21Aの第
2方向の両端部に、当該ダミー流路21Aの第2方向で相対向する2つの壁面と第1方向
の1つの壁面とを露出するように設けたため、2つの露出部60によってダミー流路21
Aの第1方向及び第2方向の両方の寸法を容易に且つ正確に測定することができる。すな
わち、露出部60は、ダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁面の一部を露出
するが、その露出するダミー流路21Aを形成する流路形成基板22の壁面は、相対向す
る2つの壁面であるのが好適である。
【0031】
また、本実施形態では、第1方向に並設された圧力発生室21の各列の第1方向の両側
にダミー流路21Aを設け、列毎に設けられた2つのダミー流路21Aの両方に露出部6
0を設けるようにしたため、列毎に設けられた2つのダミー流路21Aの寸法を測定する
ことができる。このため、第1方向に並設された圧力発生室21の寸法のばらつき(傾き
)を把握することができ、第1方向に並設されたノズル開口から吐出されるインク滴の吐
出特性のばらつきを把握することができる。また、本実施形態では、流路形成基板22に
第1方向に並設された圧力発生室21の列を第2方向に2列設け、列毎にダミー流路21
Aを設けるようにしたため、列間での圧力発生室21の寸法のばらつきを把握することが
できる。
【0032】
流路形成基板22の振動板23とは反対側の他方面側には、第2部材として、焼成によ
り形成された焼成体からなる圧力発生室底板24が設けられている。本実施形態では、圧
力発生室底板24は、アルミナ(Al)や、ジルコニア(ZrO)などのセラミ
ックス板からなる。
【0033】
圧力発生室底板24は、流路形成基板22の他方面側に固定されて圧力発生室21の他
方面を封止すると共に、圧力発生室21の長手方向一方の端部近傍に設けられて圧力発生
室21と後述するマニホールド32とを連通する供給連通孔25と、圧力発生室21の長
手方向他方の端部近傍に設けられて後述するノズル開口34に連通するノズル連通孔26
とを有する。
【0034】
供給連通孔25及びノズル連通孔26は、圧力発生室21の第2方向の両端部よりも内
側となるように配置されている。これは、流路形成基板22と圧力発生室底板24とを貼
り合わせた際に、公差や位置ズレなどによって供給連通孔25及びノズル連通孔26の一
部が圧力発生室21よりも外側に位置することで、供給連通孔25及びノズル連通孔26
の内部に圧力発生室21の壁が配置されないようにするためである。
【0035】
なお、圧力発生室底板24には、ダミー流路21Aに相対向する位置に、ノズル連通孔
25、26しか形成されていない。これは、上述のように、ダミー流路21Aをマニホー
ルド32に連通させないようにするためである。もちろん、圧力発生室底板24のダミー
流路21Aに相対向する位置に、供給連通孔25を設け、供給連通孔25とマニホールド
32とを連通するインク供給口37を設けないようにしてもよい。
【0036】
そして、圧電アクチュエーター40は、振動板23上の各圧力発生室21に対向する領
域のそれぞれに設けられている。本実施形態では、圧力発生室21が第1方向に並設され
た列が、第2方向に2列設けられているため、圧電アクチュエーター40の列も2列設け
られている。
【0037】
ここで、各圧電アクチュエーター40は、振動板23上に設けられた下電極膜43と、
各圧力発生室21毎に独立して設けられた圧電体層44と、各圧電体層44上に設けられ
た上電極膜45とで構成されている。圧電体層44は、圧電材料からなるグリーンシート
を貼付することや、印刷することで形成されている。また、下電極膜43は、並設された
圧電体層44に亘って設けられて複数の圧電アクチュエーター40の共通電極となってお
り、振動板の一部として機能する。勿論、下電極膜43を各圧電体層44毎に設けるよう
にしてもよい。さらに、上電極膜45は、各圧電体層44毎に独立して設けられて各圧電
アクチュエーター40の個別電極となっている。なお、本実施形態では、下電極膜43を
複数の圧電アクチュエーター40の共通電極とし、上電極膜45を圧電アクチュエーター
40の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
【0038】
このようなアクチュエーターユニット20を構成する各層は、以下の製造方法によって
一体化される。なお、図4は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの
製造方法を示す断面図である。
【0039】
まず、図4(a)に示すように、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板2
4は、粘土状のセラミックス材料、いわゆるグリーンシートを所定の厚さに成形して、例
えば、圧力発生室21等を穿設後、積層する。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、積層した流路形成基板22、振動板23及び圧力発生
室底板24を焼成する。これにより、アクチュエーターユニット20を構成する各層、す
なわち、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板24は、接着剤を必要とする
ことなく一体化される。このとき、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板2
4は、焼成によって収縮する。
【0041】
そして、圧力発生室21を形成する流路形成基板22の壁面は、振動板23及び圧力発
生室底板24によって覆われているため、収縮後の圧力発生室21の第1方向及び第2方
向の寸法を確認することができない。なお、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生
室底板24の収縮度は、焼成温度、焼成時間、環境温度、湿度等によって変化する。そし
て、アクチュエーターユニットを構成する各層の積層体は、複数個を同時に焼成して形成
するため、加熱装置内の配置によって温度ムラが発生し、収縮量にばらつきが生じる。し
たがって、圧力発生室21の寸法は、直接測定する必要があるが、圧力発生室21を直接
測定するためには、振動板23や圧力発生室底板24を剥がすなどの破壊が必要になり、
破壊によってインクジェット式記録ヘッドとして用いることができなくなるなどの不具合
が発生する。
【0042】
本実施形態では、流路形成基板22に圧力発生室21と同じ形状を有するダミー流路2
1Aを設け、振動板23に1つのダミー流路21Aに対して第1方向で相対向する2つの
壁面と、第2方向で相対向する2つの壁面と、を露出する2つの露出部60を設けたため
、流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板24を焼成して一体化して後であっ
ても、ダミー流路21Aの第1方向及び第2方向の両側の壁面が外部に露出される。した
がって、振動板23や圧力発生室底板24を剥がすなどの破壊を行うことなく、露出部6
0によって露出されたダミー流路21Aの第1方向及び第2方向の寸法を測定することが
できる。そして、このように測定したダミー流路21Aは、第1方向に並設された圧力発
生室21と同じピッチで圧力発生室21と同じ形状を有するものであるため、焼成後のダ
ミー流路21Aの寸法を測定することで、圧力発生室21の焼成後の圧力発生室21の寸
法を測定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1方向に並設された圧力発生室21の各列の第1方向の両端
部の外側にダミー流路21Aを設け、列毎に設けられた2つのダミー流路21Aの両方に
露出部60を設けるようにしたため、列毎に設けられた2つのダミー流路21Aの寸法を
測定することができる。このように、圧力発生室21の列の第1方向の両側に設けられた
ダミー流路21Aの寸法を測定することで、第1方向に並設された圧力発生室21の寸法
のばらつきの傾きを把握することができ、第1方向に並設されたノズル開口から吐出され
るインク滴の吐出特性のばらつきを把握することができる。また、本実施形態では、流路
形成基板22に第1方向に並設された圧力発生室21の列を第2方向に2列設け、列毎に
ダミー流路21Aを設けるようにしたため、第2方向に並設された圧力発生室21の列間
での圧力発生室21の寸法のばらつきを把握して、圧力発生室21の列毎にインク滴の吐
出特性のばらつきを把握することができる。
【0044】
そして、このように圧力発生室21の寸法を把握することで、複数のインクジェット式
記録ヘッドをインクジェット式記録装置に搭載する際に、圧力発生室21の寸法が同じ又
は近似する複数のインクジェット式記録ヘッドをインクジェット式記録装置に搭載するこ
とが可能となる。ここで、圧力発生室21の寸法を揃えるということは、インク吐出特性
を揃えることであるため、インク吐出特性を揃えたインクジェット式記録ヘッドをインク
ジェット式記録ヘッドに搭載することで、印刷品質を向上することができる。なお、イン
クジェット式記録ヘッドを圧力発生室21の寸法に基づいてランク分けし、ランク毎に組
み合わせるようにしてもよい。
【0045】
このように流路形成基板22、振動板23及び圧力発生室底板24を同時に焼成して一
体化した後に、振動板23上に圧電アクチュエーター40が形成される。
【0046】
一方、図1及び図3に示すように、流路ユニット30は、アクチュエーターユニット2
0の圧力発生室底板24に接合されるインク供給口形成基板31と、複数の圧力発生室2
1の共通インク室となるマニホールド32が形成されるマニホールド形成基板33と、ノ
ズル開口34が形成されたノズルプレート35とからなる。
【0047】
インク供給口形成基板31は、厚さ150μmのジルコニアの薄板からなり、ノズル開
口34と圧力発生室21とを接続するノズル連通孔36と、前述の供給連通孔25と共に
マニホールド32と圧力発生室21とを接続するインク供給口37を穿設して構成され、
また、各マニホールド32と連通し、外部のインクタンクからのインクを供給するインク
導入口38が設けられている。
【0048】
マニホールド形成基板33は、インク流路を構成するに適した、例えば、150μmの
ステンレス鋼などの耐食性を備えた板材に、外部のインクタンク(図示なし)からインク
の供給を受けて圧力発生室21にインクを供給するマニホールド32と、圧力発生室21
とノズル開口34とを連通するノズル連通孔39とを有する。
【0049】
ノズルプレート35は、例えば、ステンレス鋼からなる薄板に、圧力発生室21と同一
の配列ピッチでノズル開口34が穿設されて形成されている。例えば、本実施形態では、
流路ユニット30には、圧力発生室21の列が2列設けられているため、ノズルプレート
35にも、ノズル開口34の列が2列形成されている。また、このノズルプレート35は
、マニホールド形成基板33の流路形成基板22の反対面に接合されてマニホールド32
の一方面を封止している。
【0050】
このような流路ユニット30は、これらインク供給口形成基板31、マニホールド形成
基板33及びノズルプレート35を、接着剤や熱溶着フィルム等によって固定することで
形成される。なお、本実施形態では、マニホールド形成基板33及びノズルプレート35
をステンレス鋼によって形成しているが、例えば、セラミックスを用いて形成し、アクチ
ュエーターユニット20と同様に流路ユニット30を一体的に形成することもできる。
【0051】
そして、このような流路ユニット30とアクチュエーターユニット20とは、接着剤や
熱溶着フィルムを介して接合されて固定されている。
【0052】
また、図2に示すように、各圧電アクチュエーター40の第2方向の一端部の圧力発生
室21の周壁に相対向する領域には、圧電アクチュエーター40に導通する端子部として
、個別端子部46と共通端子部47とが設けられている。個別端子部46は、圧電アクチ
ュエーター40毎に設けられて圧電アクチュエーター40の上電極膜45に導通する。ま
た、共通端子部47は、圧電アクチュエーター40の並設方向両端部側に引き出されて下
電極膜43に導通する。本実施形態では、並設された圧電アクチュエーター40の列と列
の間に並設された個別端子部46の列を2列設け、個別端子部46が並設された両側にそ
れぞれ共通端子部47を設けるようにした。また、共通端子部47は、2列の圧電アクチ
ュエーター40の下電極膜43に共通して設けられている。すなわち、2列の圧電アクチ
ュエーター40の下電極膜43は、圧電アクチュエーター40の並設方向(第1方向)両
端部側で連続しており、この連続した領域に共通端子部47が設けられている。
【0053】
なお、このような個別端子部46及び共通端子部47は、例えば、銀(Ag)等の導電
性の高い金属材料を用いて、例えば、スクリーン印刷によって形成することができる。
【0054】
そして、圧電アクチュエーター40の各上電極膜45及び下電極膜43に導通する個別
端子部46及び共通端子部47には、配線基板50に設けられた配線層51が電気的に接
続されている。各圧電アクチュエーター40には、この配線基板50を介して図示しない
駆動回路からの駆動信号が供給される。なお、駆動回路は特に図示していないが、配線基
板50上に実装されていても、また、配線基板50以外に実装されていてもよい。
【0055】
配線基板50は、2列の圧電アクチュエーター40に亘って1つ設けられた、例えば、
フレキシブルプリンティングサーキット(FPC)や、テープキャリアパッケージ(TC
P)などからなる。詳しくは、配線基板50は、例えば、ポリイミド等のベースフィルム
52の表面に銅薄をベースとして錫メッキ等を施した所定パターンの配線層51を形成し
、配線層51の個別端子部46及び共通端子部47と接続される接続端子部以外の領域を
レジスト等の絶縁材料53で覆ったものである。
【0056】
また、配線基板50には、並設された圧電アクチュエーター40の列と列の間に対向す
る領域に貫通孔54が設けられており、配線層51は、貫通孔54側の端部で個別端子部
46と接続されている。なお、配線基板50の貫通孔54は、貫通孔54が設けられてい
ないベースフィルム52の表面に、一方の列の圧電アクチュエーター40に接続される配
線層51と、他方の列の圧電アクチュエーター40に接続される配線層51とが連続する
ように形成後、2列の圧電アクチュエーター40に接続される導通された配線層51を切
断することで形成される。
【0057】
そして、配線基板50の配線層51と圧電アクチュエーター40に導通する個別端子部
46及び共通端子部47とは電気的に接続されている。ここで、配線層51と個別端子部
46及び共通端子部47との接続は、例えば、異方性導電膜(ACF)や異方性導電ペー
スト(ACP)等の異方性導電材を用いることができる。なお、異方性導電材としては、
例えば、エポキシ系樹脂と、樹脂ボールにニッケルメッキを施したものなど、従来周知の
ものを用いることができる。本実施形態では、個別端子部46及び共通端子部47と配線
基板50の配線層51とは、異方性導電接着剤からなる接着層55を介して機械的及び電
気的に接続するようにした。なお、接着層55は、並設された複数の個別端子部46及び
共通端子部47に亘って設けられており、個別端子部46及び共通端子部47と配線層5
1との間に設けられた接着層55によって個別端子部46及び共通端子部47と配線層5
1とを電気的に接続すると共に、隣り合う個別端子部46の間や個別端子部46と共通端
子部47との間などに設けられた接着層55によって流路形成基板22と配線基板50と
を機械的に接続している。
【0058】
このような構成のインクジェット式記録ヘッド10では、インクカートリッジ(貯留手
段)からインク導入口38を介してマニホールド32内にインクを取り込み、マニホール
ド32からノズル開口34に至るまでの液体流路内をインクで満たした後、図示しない駆
動回路からの記録信号を配線基板50を介して圧電アクチュエーター40に供給すること
で、各圧力発生室21に対応する各圧電アクチュエーター40に電圧を印加して圧電アク
チュエーター40と共に振動板23をたわみ変形させることにより、各圧力発生室21内
の圧力が高まり各ノズル開口34からインク滴が噴射される。
【0059】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定さ
れるものではない。
【0060】
例えば、上述した実施形態1では、振動板23に、1つのダミー流路21Aに対して、
当該ダミー流路21Aの第2方向の両端部のそれぞれを開口する2つの露出部60を独立
して設けるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、露出部60の他の例を図5
に示す。なお、図5は、他の実施形態に係る露出部の他の例を示すアクチュエーターユニ
ットの上面図である。
【0061】
図5に示すように、露出部60Aは、ダミー流路21Aの振動板23側の壁面を全て露
出する大きさで設けられている。これにより、ダミー流路21Aの第1方向及び第2方向
の寸法を容易に測定することができる。なお、露出部60Aがダミー流路21Aを全て露
出した場合、下電極膜43は、ダミー流路21Aの内面に亘って形成してもよく、また、
下電極膜43をダミー流路21Aの周壁に相対向する領域に形成するようにしてもよい。
【0062】
また、上述した例では、振動板23に露出部60、60Aを設けるようにしたが、特に
これに限定されず、露出部は、振動板23及び圧力発生室底板24の少なくとも一方に設
ければよい。ここで、圧力発生室底板24に露出部を設けた例を図6に示す。なお、図6
は、他の実施形態に係る露出部の他の例を示すインクジェット式記録ヘッドの断面図であ
る。
【0063】
図6に示すように、圧力発生室底板24には、ダミー流路21Aに相対向する領域に、
ダミー流路21Aの圧力発生室底板24側の開口よりも大きな開口面積を有する露出部6
0Bが設けられている。また、インク供給口形成基板31には、インク供給口37が設け
られておらず、ダミー流路21Aは、マニホールド32と連通せずに独立して設けられて
いる。このように、圧力発生室底板24側に露出部60Bを設けても、流路形成基板22
、振動板23及び圧力発生室底板24を焼成して一体化した後に、ダミー流路21Aの寸
法を測定することができる。勿論、圧力発生室底板24には、上述した実施形態1と同様
に、ダミー流路21Aの第2方向の両端部のみを露出する2つの露出部60と同等のもの
を設けるようにしてもよい。また、露出部60、60A、60B等を振動板23と圧力発
生室底板24との両方に設けるようにしてもよい。なお、圧力発生室底板24に露出部6
0Bを設けた場合には、振動板23上に圧電アクチュエーター40を設けるようにしても
よい。
【0064】
さらに、上述した実施形態1では、流路形成基板22の他方面側に設けられる第2部材
として、圧力発生室底板24を設けるようにしたが、第2部材は圧力発生室底板24に限
定されるものではない。例えば、第2部材として、圧力発生室底板24に代わってノズル
開口34が設けられたノズルプレート35を設けるようにしてもよい。このように第2部
材がノズルプレート35の場合には、振動板23に露出部60、60Aを設けると共に、
露出部60、60Aは、ノズル開口34に相対向する位置に設けるのが好ましい。これに
より、ノズル開口34の圧力発生室21側の開口形状や開口寸法を焼成後に確認すること
ができ、歩留まりを向上することができる。ちなみに、ノズル開口34は、圧力発生室2
1側ほど開口面積が漸大するテーパー形状を有するため、露出部が設けられていないと、
焼成後の開口形状、特に圧力発生室21側の開口形状を確認することができないものであ
る。
【0065】
また、上述した実施形態1では、圧力発生手段として、厚膜型の圧電アクチュエーター
40を例示したが、特にこれに限定されず、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧
電体層及び上電極を成膜及びリソグラフィー法により順次積層する薄膜型の圧電アクチュ
エーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型
の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。
【0066】
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通
するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録
装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0067】
図7に示すように、インクジェット式記録ヘッド10を有する記録ヘッドユニット1A
及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ
、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付
けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1
A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出す
るものとしている。
【0068】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を
介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキ
ャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5
に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙
等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになって
いる。
【0069】
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10(
ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例
示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定され
て、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録
装置にも本発明を適用することができる。
【0070】
また、上述した実施形態1においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式
記録ヘッド10を、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置Iを挙げて
説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであ
り、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することが
できる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用い
られる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色
材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に
用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド
等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッ
ド(液体噴射装置)、 20 アクチュエーターユニット、 21 圧力発生室(個別流
路)、 21A ダミー流路、 22 流路形成基板、 23 振動板(第1部材)、
24 圧力発生室底板(第2部材)、 30 流路ユニット、 31 インク供給口形成
基板、 32 マニホールド、 33 マニホールド形成基板、 34 ノズル開口、
35 ノズルプレート、 40 圧電アクチュエーター(圧力発生手段)、 43 下電
極膜(共通電極)、 44 圧電体層、 45 上電極膜(個別電極)、 46 個別端
子部、 47 共通端子部、 50 配線基板、 51 配線層、 52 ベースフィル
ム、 53 絶縁材料、 54 貫通孔、 55 接着層、 58 スリット、 60、
60A、60B 露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する個別流路が設けられた流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に設けられて前記個別流路内の液体に圧力変化を生じさせ
る圧力発生手段を有する第1部材と、
前記流路形成基板の前記第1部材とは反対面側に設けられた第2部材と、を具備し、
前記流路形成基板、前記第1部材及び前記第2部材が一体化された焼成体で形成された
液体噴射ヘッドであって、
前記流路形成基板には、ダミー流路が前記個別流路とは独立して設けられており、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記ダミー流路を形成する前記
流路形成基板の壁面の一部を露出する露出部が設けられていることを特徴とする液体噴射
ヘッド。
【請求項2】
前記露出部が、前記ダミー流路を形成する前記流路形成基板の壁面のうち、相対向する
2面を露出することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記露出部が、前記ダミー流路と前記個別流路との並設方向である第1方向に対して、
交差する第2方向の少なくとも両端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2
記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記露出部は、前記ダミー流路に連通する前記ノズル開口の第2部材側の開口に相対向
して設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド

【請求項5】
前記個別流路が、前記流路形成基板を貫通して設けられていることを特徴とする請求項
1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴
射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245625(P2012−245625A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116641(P2011−116641)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】