説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】ノズル開口の高密度化を図ることができると共に、ノズルプレートと個別流路とを容易に位置決めして、液体の吐出不良などの不具合を抑制することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】複数のノズル開口34が第1の方向Xに並設されたノズルプレートと、該ノズルプレートに接合される流路部材と、を具備し、前記流路部材は、各ノズル開口34に連通する個別流路22を具備し、前記個別流路22は、前記ノズル開口34に連通した連通部26と、該連通部26に連通し且つ前記連通部26よりも前記第1の方向Xの幅が狭い圧力発生室21と、を具備し、前記流路部材には、当該個別流路22が前記第1の方向Xに並設された第1個別流路列221と、当該個別流路22が前記第1の方向Xに並設された第2個別流路列222とが、前記第1の方向Xに交差する第2の方向Yに並設されて設けられており、且つ前記第2個別流路列222の各連通部26は、前記第1個別流路列221の前記圧力発生室21の間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室内のインクに圧力変化を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、ノズル開口を高密度に配置するために、ノズル開口を第1の方向に並設した第1ノズル列と、ノズル開口を第1の方向に並設したノズル開口と、を第1の方向に交差する第2の方向に並設し、第1ノズル列と第2ノズル列とを第2の方向で同じ位置とならないように第1の方向にずらした、いわゆる千鳥配置としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−309877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズル開口を千鳥配置とした場合、圧力発生室等の個別流路の並設方向(第1の方向)の幅を狭くする必要があるが、個別流路の幅を狭くすると個別流路とノズルプレートのノズル開口との位置決めが困難になってしまい、高い位置決め精度が要求されるという問題がある。
【0006】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズル開口の高密度化を図ることができると共に、ノズルプレートと個別流路とを容易に位置決めして、液体の吐出不良などの不具合を抑制することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、複数のノズル開口が第1の方向に並設されたノズルプレートと、該ノズルプレートに接合される流路部材と、を具備し、前記流路部材は、各ノズル開口に連通する個別流路を具備し、前記個別流路は、前記ノズル開口に連通した連通部と、該連通部に連通し且つ前記連通部よりも前記第1の方向の幅が狭い圧力発生室と、を具備し、前記流路部材には、当該個別流路が前記第1の方向に並設された第1個別流路列と、当該個別流路が前記第1の方向に並設された第2個別流路列とが、前記第1の方向に交差する第2の方向に並設されて設けられており、且つ前記第2個別流路列の各連通部は、前記第1個別流路列の前記圧力発生室の間に設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、第1の方向における連通部の幅を圧力発生室の幅よりも幅広にすることで、連通部とノズル開口との位置決めに高い精度が不要となり、位置決めを容易に行うことができる。この結果、連通部とノズル開口との位置ズレによる液体の吐出不良を抑制することができる。また、第2個別流路列の連通部を第1個別流路列の圧力発生室の間に配置することで、第1の方向で互いに隣り合う圧力発生室の間の間隔を短くすることができ、圧力発生室に連通するノズル開口の第1の方向の配設密度を高くすることができる。
【0009】
ここで、前記圧力発生室は、前記第1の方向の幅が前記連通部に連通する側で狭くなっており、前記第2個別流路列の前記連通部が、前記第1個別流路列の前記圧力発生室の前記連通部に連通する側の間に設けられていることが好ましい。これによれば、第2個別流路列の連通部を第1個別流路列の圧力発生室の幅が狭くなった部分の間に配置することで、第1の方向で互いに隣り合う圧力発生室の間の間隔をさらに短くすることができ、圧力発生室に連通するノズル開口の第1の方向の配設密度をさらに高くすることができる。
【0010】
また、前記圧力発生室から前記ノズル開口までの距離は各個別流路で同じ長さで設けられていることが好ましい。これによれば、各ノズル開口から吐出される液滴の吐出特性、特に吐出速度や重量にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0011】
また、前記連通部と前記ノズル開口とが、前記ノズルプレートと前記流路部材との積層方向に貫通して設けられたノズル連通孔を介して連通されていることが好ましい。これによれば、幅広の連通部に合わせて連通孔の第1の方向の幅を広くすることができるため、連通孔とノズル開口との位置決めに高い精度が不要となって位置決めを容易に行うことができる。
【0012】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の被噴射媒体への着弾位置を高密度にすることができると共に、ノズルプレートと個別流路とを容易に位置決めして、液体の吐出不良などの不具合を抑制した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部を切り欠いた斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの流路を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの比較の流路を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る記録ヘッドの流路を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例を示すインクジェット式記録ヘッドの要部を切り欠いた斜視図であり、図2はインクジェット式記録ヘッドの圧電素子側の平面図及びそのA−A′線断面図であり、図3は、インクジェット式記録ヘッドの個別流路を示す平面図である。
【0015】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、アクチュエーターユニット20と、このアクチュエーターユニット20が固定される流路ユニット30とで構成されている。
【0016】
アクチュエーターユニット20は、圧電素子40を具備するアクチュエーター装置であり、圧力発生室21が形成された流路形成基板23と、流路形成基板23の一方面側に設けられた振動板24と、流路形成基板23の他方面側に設けられた圧力発生室底板25とを有する。
【0017】
流路形成基板23は、例えば、150μm程度の厚みを有するアルミナ(Al)や、ジルコニア(ZrO)などのセラミックス板からなり、本実施形態では、複数の圧力発生室21が第1の方向Xに並設されている。
【0018】
圧力発生室21は、第2の方向Yの一端部が第1の方向Xの幅が狭く形成されている。具体的には、圧力発生室21は、第2の方向Yの一端側に第1の方向Xの幅が狭い幅狭部21aと、他端側に幅狭部21aよりも第1の方向Xの幅が広い幅広部21bと、を具備する。
【0019】
また、圧力発生室21の幅狭部21a側には、圧力発生室21よりも第1の方向Xの幅が広い連通部26が設けられている。すなわち、流路形成基板23には、連通部26、幅狭部21a及び幅広部21bが第2の方向Yに沿って順に配置されている。
【0020】
この連通部26は、本実施形態では、開口形状が略六角形を有する。もちろん、連通部26の開口形状は特に限定されず、例えば、四角形、円形等の開口形状であってもよい。本実施形態では、連通部26の開口形状を略六角形とすることで、詳しくは後述するノズル連通孔を円形状の開口で且つ直径をできるだけ大きくなるように設けることができる。すなわち、連通部の開口形状を四角形等にすると、四角形に内接する円形のノズル連通孔は六角形に内接する円形に比べて直径が小さくなってしまうからである。
【0021】
このような連通部26は、詳しくは後述するノズル開口34にノズル連通孔を介して連通し、圧力発生室21内のインクをノズル開口34に供給する。
【0022】
このような連通部26及び圧力発生室21は、個別流路22の一部を構成する。この個別流路22は、第1の方向Xに並設されており、第1の方向Xで互いに隣り合う個別流路22は、第1の方向Xと交差(直交)する第2の方向Yに互いにずれて配置されている。
【0023】
具体的には、個別流路22が第1の方向Xに並設された列が、第2の方向Yに2列設けられている。この第2の方向Yに列設された個別流路22の2列の一方を第1個別流路列221、他方を第2個別流路列222とすると、第1個別流路列221を構成する個別流路22と、第2個別流路列222を構成する個別流路22とは第1の方向Xに交互に配置されている。すなわち、第1個別流路列221の個別流路22の間(第1の方向Xの間)に第2個別流路列222の個別流路22が配置されている。逆に言うと、第2個別流路列222の個別流路22の間(第1の方向Xの間)に第1個別流路列221の個別流路22が配置されている。そして、第1個別流路列221の圧力発生室21の間、本実施形態では、幅狭部21aの間に、第2個別流路列222の連通部26が配置されている。つまり、第1個別流路列221の各圧力発生室21は、第2の方向Yが同じ位置で、第1の方向Xに並設されており、第1個別流路列221の各圧力発生室21の幅狭部21aの第2の方向Yの位置と同じ位置に第1個別流路列221の各個別流路22の連通部26が位置する。これにより、第2の方向Yで同じ位置に第1個別流路列221の幅狭部21aと第2個別流路列222の連通部26とが第1の方向Xに交互に配置されている。
【0024】
このように、第1の方向Xにおいて、第1個別流路列221の圧力発生室21の間、特に本実施形態では、圧力発生室21に幅狭部21aを設け、幅狭部21aの間に第2個別流路列222の連通部26を設けることで、連通部26の第1の方向の幅を圧力発生室21の幅(ここでは幅広部21bの幅)よりも広くしたとしても、第1の方向Xで互いに隣り合う圧力発生室21の間の間隔(本実施形態では幅広部21bの間隔)dを狭くすることができる。これに対して、例えば、図4に示すように、個別流路22を第2の方向Yにずらすことなく、第2の方向Yが同じ位置で第1の方向Xに配置した場合、連通部26の第1の方向Xの幅が圧力発生室21(幅広部21b)の幅よりも広いため、第1の方向Xで互いに隣り合う連通部26の間にもある程度の厚さの壁が必要となる。このため、図4に示す例では、第1の方向Xで互いに隣り合う圧力発生室21(幅広部21b)の間の間隔dは、dよりも広くなってしまい、各個別流路22に連通するノズル開口34を高密度に配置することができず、インク滴を被噴射媒体に高密度に着弾させることができなくなってしまう。
【0025】
本実施形態では、圧力発生室21に第1の方向Xの幅が狭い幅狭部21aを設け、圧力発生室21(幅広部21b)よりも第1の方向Xの幅が広い連通部26を第1の方向Xで2つの幅狭部21aの間に配置することで、連通部26の幅を圧力発生室21(幅広部21b)よりも広くしても、第1の方向Xで互いに隣り合う圧力発生室21の間の間隔dを間隔dよりも狭くすることができる。したがって、圧力発生室21を第1の方向Xに高密度に配置することができ、各個別流路22に連通するノズル開口34を第1の方向に高密度に配置して、ノズル開口34から吐出されるインク滴を被噴射媒体に第1の方向で高密度に着弾させることができ、高解像度の印刷が可能となる。
【0026】
このような流路形成基板23の一方面には、例えば、厚さが10〜12μmのステンレス鋼(SUS)の薄板からなる振動板24が固定され、圧力発生室21の一方面はこの振動板24により封止されている。
【0027】
そして、振動板24上には、各圧力発生室21に対向する領域、本実施形態では、幅広部21bに対向する領域のそれぞれに圧電素子40が設けられている。
【0028】
ここで、各圧電素子40は、振動板24上に設けられた下電極膜41と、各圧力発生室21毎に独立して設けられた圧電体層42と、各圧電体層42上に設けられた上電極膜43とで構成されている。圧電体層42は、圧電材料からなるグリーンシートを貼付することや、印刷することで形成されている。また、下電極膜41は、並設された圧電体層42に亘って設けられて各圧電素子40の共通電極となっており、振動板の一部として機能する。勿論、下電極膜41を各圧電体層42毎に設けるようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、第1の方向Xに並設された圧力発生室21は、上述のように1つ置きに第2の方向Yにずれて配置されている。このため、本実施形態の下電極膜41は、圧力発生室21の第2の方向Yに合わせて蛇行して設けられている。すなわち、第1個別流路列221の個別流路22の圧力発生室21は、第2個別流路列222の個別流路22の圧力発生室21に比べて、第2の方向の連通部26側に設けられているため、第1個別流路列221の圧力発生室21に対向する下電極膜41は連通部26側に設けられている。また、第2個別流路列222の個別流路22の圧力発生室21は、第1個別流路列221の個別流路22の圧力発生室21に比べて、第2の方向の連通部26とは反対側に設けられているため、第2個別流路列222の圧力発生室21に対向する下電極膜41は連通部26とは反対側に設けられている。そして、このような下電極膜41は、第1の方向Xで連続して設けられているため、第2の方向Yにずれた圧力発生室21に合わせて第1の方向に向かって蛇行して設けられている。
【0030】
また、圧電体層42及び上電極膜43は、当該圧電素子40の中心位置が各圧力発生室21に対して第2の方向Yで同じ位置となるように配置されている。すなわち、第1個別流路列221と第2個別流路列222との圧力発生室21は、第2の方向Yで異なる位置に設けられているが、この圧力発生室21の第2の方向の位置に関わらず、各圧力発生室21に対して圧電素子40の第2の方向Yの位置は同じ位置で配置されている。これにより、圧電素子40を駆動させた際に、圧力発生室21内のインクの圧力変動にばらつきが生じるのを抑制して、ノズル開口34からインク滴が吐出する際の吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。すなわち、圧電素子40の圧力発生室21に対する第2の方向の位置にばらつきがあると、圧電素子40の各圧力発生室21内の圧力分布が均一化されずにばらつきが生じ、各ノズル開口34からインク滴を同じ吐出特性、特にインク滴の飛翔速度やインク滴の重量などで吐出させることができなくなってしまう。
【0031】
このような流路形成基板23の振動板24が設けられた一方面とは反対の他方面には、圧力発生室底板25が設けられている。
【0032】
圧力発生室底板25は、流路形成基板23の振動板24とは反対の他方面側に固定されて圧力発生室21の他方面を封止すると共に、圧力発生室21の第2の方向Yの連通部26とは反対の端部側、すなわち幅広部21b側に開口して設けられて圧力発生室21と後述するマニホールドとを連通する供給連通孔27と、連通部26に連通すると共に後述するノズル開口34に連通する第1ノズル連通孔28とを有する。
【0033】
第1ノズル連通孔28は、本実施形態では、供給連通孔27よりも大きな直径を有する。本実施形態では、第1ノズル連通孔28は、第1の方向Xにおいて連通部26に開口する開口の幅が、圧力発生室21の幅狭部21a及び幅広部21bの幅よりも大きな幅(円柱形状を有する場合は直径とも言う)を有する。
【0034】
このようなアクチュエーターユニット20の各層である流路形成基板23、振動板24及び圧力発生室底板25は、粘土状のセラミックス材料、いわゆるグリーンシートを所定の厚さに成形して、例えば、圧力発生室21等を穿設後、積層して焼成することにより接着剤を必要とすることなく一体化される。そして、その後、振動板24上に圧電素子40が形成される。
【0035】
一方、流路ユニット30は、アクチュエーターユニット20の圧力発生室底板25に接合された液体供給口形成基板31と、複数の圧力発生室21の共通インク室となるマニホールド32が形成されるマニホールド形成基板33と、マニホールド形成基板33の液体供給口形成基板31とは反対側に設けられてマニホールド32を封止すると共にノズル開口34が設けられたノズルプレート35と、を具備する。
【0036】
液体供給口形成基板31は、厚さ60μmのステンレス鋼(SUS)の薄板からなり、前述の第1ノズル連通孔28と略同じ直径を有し、第1ノズル連通孔28と共にノズル開口34と圧力発生室21とを連通する第2ノズル連通孔36と、供給連通孔27と共にマニホールド32と圧力発生室21とを接続する液体供給口37が厚さ方向(アクチュエーターユニット20と流路ユニット30との積層方向)に貫通して設けられている。また、液体供給口形成基板31には、各マニホールド32と連通し、外部のインクタンクからのインクを供給する液体導入口38が設けられている。液体供給口37と液体導入口38とは、後述するマニホールド32の第2の方向の両端部にそれぞれ連通するように設けられている。なお、本実施形態では、1つの液体導入口38は、マニホールド32の第1の方向の中央部に連通するように設けられている。
【0037】
マニホールド形成基板33は、インク流路(液体流路)を構成するに適した、例えば、150μmのステンレス鋼などの耐食性を備えた板材に、外部のインクタンク(図示なし)からインクの供給を受けて圧力発生室21にインクを供給するマニホールド32と、第2ノズル連通孔36と略同じ直径を有し、第1ノズル連通孔28及び第2ノズル連通孔36と共に圧力発生室21とノズル開口34とを連通する第3ノズル連通孔39と、を有する。
【0038】
マニホールド32は、複数の圧力発生室21に亘って、すなわち、圧力発生室21の第1の方向に亘って連続して設けられている。
【0039】
また、第3ノズル連通孔39は、第1ノズル連通孔28及び第2ノズル連通孔36と共に圧力発生室21とノズル開口34とを連通するノズル連通孔を構成する。
【0040】
すなわち、第1ノズル連通孔28、第2ノズル連通孔36及び第3ノズル連通孔39を有するノズル連通孔は、ノズルプレート35と流路部材である流路形成基板23、圧力発生室底板25、液体供給口形成基板31及びマニホールド形成基板33との積層方向において、圧力発生室21とノズル開口34とを連通する。そして、本実施形態の個別流路22とは、圧力発生室21、連通部26及びノズル連通孔(第1ノズル連通孔28、第2ノズル連通孔36及び第3ノズル連通孔39)で構成されている。
【0041】
このようなノズル連通孔は、連通部26の第1の方向X及び第2の方向Yの位置に合わせて、流路部材である圧力発生室底板25、液体供給口形成基板31及びマニホールド形成基板33に形成されている。
【0042】
ノズルプレート35は、例えば、ステンレス鋼等の金属やシリコン等のセラミックス材料で形成された板状部材からなる。ノズルプレート35には、連通部26と同一の配列ピッチでノズル開口34が穿設されて形成されている。
【0043】
具体的には、ノズル開口34は、第1個別流路列221に連通する第1ノズル列341と、第2個別流路列222に連通する第2ノズル列342と、を具備する。すなわち、ノズルプレート35は、第1の方向Xのノズル開口34が並設された第1ノズル列341と、第1の方向Xにノズル開口34が並設された第2ノズル列342と、を具備し、第1ノズル列341と第2ノズル列342とが第2の方向Yに並設されている。そして、第2ノズル列342のノズル開口34は、第1の方向Xにおいて、第1ノズル列341の2つのノズル開口34の間に配置されている。
【0044】
このような流路ユニット30は、液体供給口形成基板31、マニホールド形成基板33及びノズルプレート35を接着剤や熱溶着フィルム等によって固定することで形成される。なお、本実施形態では、流路部材として、アクチュエーターユニット20の流路形成基板23及び圧力発生室底板25と、流路ユニット30の液体供給口形成基板31及びマニホールド形成基板33とが設けられている。
【0045】
そして、このような液体供給口形成基板31とマニホールド形成基板33とノズルプレート35とは、ノズル連通孔(第1ノズル連通孔28、第2ノズル連通孔36及び第3ノズル連通孔39)とノズル開口34とが互いに連通するように位置決めされて接合されている。このとき、ノズル連通孔の開口面積が小さいと、圧力発生室底板25、液体供給口形成基板31、マニホールド形成基板33の第1ノズル連通孔28、第2ノズル連通孔36及び第3ノズル連通孔39の位置決めが困難となる。つまり、図5(a)に示すように、圧力発生室底板25の第1ノズル連通孔28と液体供給口形成基板31の第2ノズル連通孔36との直径Rが小さい場合と、図5(b)に示す本実施形態のように第1ノズル連通孔28と第2ノズル連通孔36の直径Rが図5(a)に示す直径Rよりも大きな場合とを比較する。このノズル連通孔の直径がRとRとで異なる場合、圧力発生室底板25と液体供給口形成基板31とが同じ量tだけずれたとしても、ノズル連通孔の直径Rで表される開口面積全体に対して圧力発生室底板25や液体供給口形成基板31が覆う割合は、ノズル連通孔の直径Rで表される開口面積全体に対してこれを覆う割合よりも小さくなる。そして、ノズル連通孔の開口面積全体にこれを覆う割合が小さければ、ノズル連通孔を介して圧力発生室21からノズル開口34にインクを供給する供給特性、すなわち、流量や流速などが低下する割合が小さくなる。これに対して、ノズル連通孔の開口面積全体にこれを覆う割合が大きければ、ノズル連通孔を介して圧力発生室21からノズル開口34にインクを供給する供給特性、すなわち、流量や流速などが低下する割合が大きくなる。したがって、ズレ量tにばらつきが生じたとしても、インク連通孔の開口面積を大きくすることで、ノズル連通孔を介してインクをノズル開口34に供給する供給特性のばらつきが増大するのを抑制することができる。
【0046】
また、ノズル連通孔、特に第3ノズル連通孔39の開口面積が小さいと、ノズル連通孔とノズル開口34との位置決めが困難になる。例えば、ノズル開口34がノズル連通孔(第3ノズル連通孔39)内に完全に開口しておらず、ノズル開口34の一部がマニホールド形成基板33で覆われてしまうと、覆われたノズル開口34からインク滴が正常に吐出することができなくなってしまう。また、ノズル開口34がノズル連通孔(第3ノズル連通孔39)の中心から第1の方向X又は第2の方向Yにずれて配置されると、インク滴の飛翔曲がりなどが発生する虞がある。特に、ノズル開口34のノズル連通孔(第3ノズル連通孔39)に対するズレ量にばらつきが生じると、インク滴の飛翔曲がりにもばらつきが生じ、インク滴の被噴射媒体への着弾位置にずれが生じてしまう虞がある。
【0047】
本実施形態では、圧力発生室21の幅に合わせたノズル連通孔を設ける場合に比べて、圧力発生室21(幅広部21b)の第1の方向Xの幅よりも幅広の連通部26を設け、連通部26に合わせてノズル連通孔の開口面積を大きくすることができ、ノズル連通孔(第3ノズル連通孔39)とノズル開口34との位置決めを容易にして、ノズル開口34のノズル連通孔(第3ノズル連通孔39)に対する位置ズレを抑制し、インク滴の吐出不良等を抑制することができる。
【0048】
このような構成のインクジェット式記録ヘッド10では、インクカートリッジ(貯留手段)から液体導入口38を介してマニホールド32内にインクを取り込み、マニホールド32からノズル開口34に至るまでのインク流路内をインクで満たした後、図示しない駆動回路からの記録信号に従い、各圧力発生室21に対応する各圧電素子40に電圧を印加して圧電素子40と共に振動板24をたわみ変形させることにより、各圧力発生室21内の圧力が高まり各ノズル開口34からインク滴が噴射される。
【0049】
以上説明したように、圧力発生室21よりも幅広の連通部26を設けることで、連通部26とノズル開口34とを連通するノズル連通孔の各部材間での開口位置ズレや、ノズル開口34との位置ズレを抑制することができる。また、連通部26を設けることによって、第1の方向Xに互いに隣接する圧力発生室21の間の間隔を広くなるが、第1個別流路列221の圧力発生室21の間に第2個別流路列222の連通部26を配置することで、第1の方向Xに互いに隣接する圧力発生室21の間の間隔を狭くすることができる。これにより、各個別流路22に連通するノズル開口34を第1の方向Xに高密度に配置することができ、被噴射媒体に着弾するインク滴の第1の方向のXの間隔を短くして高密度化することができる。
【0050】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧力発生室21を幅狭部21aと幅広部21bとで構成し、第1個別流路列221の幅狭部21aの間に第2個別流路列222の連通部26を設けるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、図6に示すように、個別流路22に幅狭部21aを設けていない場合、すなわち、圧力発生室21が幅広部21bのみで構成されている場合であっても、第1個別流路列221と第2個別流路列222とを第2の方向Yにずらして配置することで、第1の方向Xで互いに隣り合う圧力発生室21の間の間隔dは、図4に示す間隔dよりも狭くすることができる。もちろん、上述した実施形態1の第1の方向Xで互いに隣り合う圧力発生室21の間の間隔dは、図6に示す間隔dよりも狭い。
【0051】
また、上述した実施形態1では、第2個別流路列222を構成する個別流路22の圧力発生室21についても幅狭部21aと幅広部21bとで構成するようにしたが、第2個別流路列222を構成する個別流路22の圧力発生室21は、幅狭部21aを設けていない、すなわち幅広部21bだけで構成されていてもよい。ただし、第1個別流路列221の個別流路22と第2個別流路列222の個別流路22とで圧力発生室21の形状が異なるため、インク滴の吐出特性に差が生じてしまう。すなわち、上述した実施形態1のように、第1個別流路列221の個別流路22と第2個別流路列222の個別流路22とを同じ形状で形成すれば、インク吐出特性を均一化することができ、印刷品質を向上することができる。
【0052】
また、上述した実施形態1では、連通部26とノズル開口34とがインク連通孔(第1ノズル連通孔28、第2ノズル連通孔36及び第3ノズル連通孔39)を介して連通するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、連通部26とノズル開口34とが直接連通するものであってもよい。このように連通部26とノズル開口34とが直接連通する場合であっても、連通部26の第1の方向Xの幅を圧力発生室21の幅よりも幅広とすることで、連通部26とノズル開口34との位置決め精度が高く要求されることがなく、位置決めを容易に行うことができる。なお、連通部26とノズル開口34とが直接連通する場合、流路部材としては、流路形成基板23のみとなる。このように、流路部材とは、圧力発生室21と連通部26とを含む個別流路22が設けられ、且つノズルプレート35に接合されたものであればよく、上述した実施形態1のように、流路部材が、流路形成基板23、圧力発生室底板25、液体供給口形成基板31及びマニホールド形成基板33を有するものであってもよい。勿論、上述した実施形態1に限定されず、流路形成基板23とノズルプレート35との間に、その他の部材が設けられていてもよい。
【0053】
さらに、例えば、上述した実施形態1では、第1の方向Xにノズル開口34が並設されたノズル列341、342を第2の方向Yに2列設け、第1個別流路列221と第2個別流路列222とを設けるようにしたが、個別流路22が第1の方向Xに並設された個別流路22の列を第2の方向Yに3列以上設けるようにしてもよい。例えば、個別流路22の列を3列設ける場合、第2個別流路列222の幅狭部21aの間に3列目の第3個別流路列の連通部26が配置されるようにすれば、ノズル開口34の第1の方向Xのピッチを狭くして、高密度に配置することができる。
【0054】
また、上述した実施形態1では、厚膜型の圧電素子40を有するインクジェット式記録ヘッド10を例示したが、圧力発生室21に圧力変化を生じさせる圧力発生手段としては、特にこれに限定されず、例えば、ゾル−ゲル法、MOD法、スパッタリング法等により形成される圧電材料を有する薄膜型の圧電素子、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子、振動板と電極を所定の隙間を開けて配置し、静電気力で振動板の振動を制御する、いわゆる静電アクチュエーター、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものなどを有するインクジェット式記録ヘッドであっても同様の効果を奏するものである。
【0055】
また、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0056】
図7に示すように、インクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッド10を有する記録ヘッドユニット1A及び1Bを具備する。記録ヘッドユニット1A、1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0057】
また、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0058】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0060】
10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20 アクチュエーターユニット、 21 圧力発生室、 21a 幅狭部、 22b 幅広部、 22 個別流路、 23 流路形成基板、 24 振動板、 25 圧力発生室底板、 26 連通部、 27 供給連通孔、 28 第1ノズル連通孔、 30 流路ユニット、 31 液体供給口形成基板、 32 マニホールド、 33 マニホールド形成基板、 34 ノズル開口、 35 ノズルプレート、 36 第2ノズル連通孔、 37 液体供給口、 38 液体導入口、 39 第3ノズル連通孔、 40 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル開口が第1の方向に並設されたノズルプレートと、
該ノズルプレートに接合される流路部材と、を具備し、
前記流路部材は、各ノズル開口に連通する個別流路を具備し、
前記個別流路は、前記ノズル開口に連通した連通部と、該連通部に連通し且つ前記連通部よりも前記第1の方向の幅が狭い圧力発生室と、を具備し、
前記流路部材には、当該個別流路が前記第1の方向に並設された第1個別流路列と、当該個別流路が前記第1の方向に並設された第2個別流路列とが、前記第1の方向に交差する第2の方向に並設されて設けられており、且つ前記第2個別流路列の各連通部は、前記第1個別流路列の前記圧力発生室の間に設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記圧力発生室は、前記第1の方向の幅が前記連通部に連通する側で狭くなっており、前記第2個別流路列の前記連通部が、前記第1個別流路列の前記圧力発生室の前記連通部に連通する側の間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記圧力発生室から前記ノズル開口までの距離は各個別流路で同じ長さで設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記連通部と前記ノズル開口とが、前記ノズルプレートと前記流路部材との積層方向に貫通して設けられたノズル連通孔を介して連通されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18197(P2013−18197A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153604(P2011−153604)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】