液体噴射装置
【課題】インクのような液体の消費の無駄を防ぎ、液体の種類の切り換えの際に確実にシールをして容易に同じノズルから異なる種類の液体を吐出させることができる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】ヘッド20のノズルから液体を噴射する液体噴射装置10であって、液体を貯留していてヘッド20へ液体を供給するための液体貯留部と、液体貯留部から供給される複数種類の液体を選択して切り換えて、選択された種類の液体をヘッド20へ供給する液体の切り換え装置200とを有し、液体の切り換え装置200は、ヘッド20の付近に配置されている。
【解決手段】ヘッド20のノズルから液体を噴射する液体噴射装置10であって、液体を貯留していてヘッド20へ液体を供給するための液体貯留部と、液体貯留部から供給される複数種類の液体を選択して切り換えて、選択された種類の液体をヘッド20へ供給する液体の切り換え装置200とを有し、液体の切り換え装置200は、ヘッド20の付近に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドから液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
この種のインクジェット式記録装置は、インクカートリッジから記録ヘッドに対してインクを供給するためにチューブを有している。各インクカートリッジからは、1本のチューブを通じて、異なる種類のインクがヘッドのノズル列側に供給できるようになっている。
【0003】
ところで、ヘッドのノズル列から吐出しているインクの種類を別の種類のインクに変える場合には、最初に使っているインクカートリッジからのインクの供給を止めた後に、チューブ内のインクを排出する必要がある。チューブ内のインクを排出してきれいにした後に、異なる種類のインクが入った別のインクカートリッジから異なる種類のインクをこのチューブを用いてヘッドのノズル列から噴射する。
このようにして異なる種類のインクが入ったカートリッジを変えて異なる種類のインクを吐出する場合には、チューブ内の残ったインクを吸引して排除する必要があるので、チューブ内のインクが無駄になってしまう。特にチューブの長さが長いインクジェット式記録装置では、インクの無駄が多くなってしまう。
一方、インクと溶剤の切り換えを行うことができる弁ユニットが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−77439号公報(第2頁ないし第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている弁ユニットは、インクと溶剤のインクの切り換えを行うためのものであるが、ボールとばねを使ってインクと溶剤の流れの切り換えを行っていて、十分に液体のシールを行うことができない恐れがある。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解消し、インクのような液体の消費の無駄を防ぎ、液体の種類の切り換えの際に確実にシールをして容易に同じノズルから異なる種類の液体を吐出させることができる液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、前記液体を貯留していて前記ヘッドへ前記液体を供給するための液体貯留部と、前記液体貯留部から供給される複数種類の前記液体を選択して切り換えて、選択された種類の前記液体を前記ヘッドへ供給する液体の切り換え装置と、を有し、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に配置されていることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
本発明の構成によれば、液体貯留部は液体を貯留していてヘッドへ液体を供給するためのものである。液体切り換え装置は、液体貯留部から供給される複数種類の液体を選択して切り換えて、選択された種類の液体をヘッドへ供給する。
この液体切り換え装置は、ヘッドの付近に配置されている。
これにより、液体切り換え装置がヘッドの付近に配置されていることから、液体の種類を切り換える際には、液体切り換え装置からヘッドの間で残っている液体のみを吸引して、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給することができる。このために、液体の種類の交換の際に液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。
【0008】
本発明は、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されていることが望ましい。
本発明の構成によれば、液体の切り換え装置は、ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されている。
これにより、液体切り換え装置がキャリッジに搭載されているのでヘッドの付近において液体の切り換えを行うことができる。
【0009】
本発明は、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に保持された本体と、前記本体内に配置されて第1種類の前記液体を通す第1通路部を開閉するための第1ダイヤフラムと、前記本体内に配置されて第2種類の前記液体を通す第2通路部を開閉するための第2ダイヤフラムと、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムを操作して、前記第1通路部と前記第2通路部の一方を開き他方を閉じるために前記切り換えるための切り換え操作部と、を有することが望ましい。
本発明の構成によれば、液体切り換え装置の本体は、ヘッドの付近に保持されている。第1ダイヤフラムは、本体内に配置されて第1種類の液体を通す第1通路部を開閉する。第2ダイヤフラムは、本体内に配置されて第2種類の液体を通す第2通路部を開閉する。
切り換え操作部は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを操作して、第1通路部と第2通路部の一方を開き他方を閉じるために切り換える。
これにより、第1種類と第2種類の液体は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを用いて、確実に供給を停止したり供給を行ったりすることができる。液体の供給と停止を液もれをせずにダイヤフラムを用いているので、確実に行うことができる。
【0010】
本発明は、前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成していることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは対向していて、第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラム室は、中心孔により通じており、この中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成している。
これにより、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの移動により、ヘッド側へ中心孔を通じて液体の種類を切り換えて送ることができる。
【0011】
本発明は、前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じており、前記中心孔の中には作動軸が配置されており、前記作動軸の一端部は前記第1ダイヤフラム室に当接しており、前記作動軸の他端部は前記第2ダイヤフラム室に当接していることが望ましい。
本発明の構成によれば、本体は中心孔を有している。第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは対向して配置されている。第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、この中心孔により通じている。作動軸は中心孔の中に配置されており、作動軸の一端部は第1ダイヤフラム室に当接しており、作動軸の他端部は第2ダイヤフラム室に当接している。
これにより、作動軸は、第1ダイヤフラムの閉じたり開いたりする動作を、第2ダイヤフラムの開いたり閉じたりする動作として、確実に機械的に伝達することができる。
【0012】
本発明は、前記本体の前記中心孔の周囲であって、前記第1ダイヤフラムによりシールされる第1周囲部分と、前記第2ダイヤフラムによりシールされる第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されていることが望ましい。
本発明の構成によれば、本体の中心孔の周囲の第1周囲部分は、第1ダイヤフラムによりシールされる。第2周囲部分は、第2ダイヤフラムによりシールされる。第1周囲部分と第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されている。
これにより、第1ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールしたり、第2ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールする場合に、第1ダイヤフラムあるいは第2ダイヤフラムが中心孔の周囲に対して張り付いてしまう現象を防止することができる。
【0013】
本発明は、前記切り換え操作部は、前記第1ダイヤフラムを前記中心孔側の一方側に押して前記中心孔をシールするための第1押圧部材と、前記第2ダイヤフラムを前記中心孔の他方側に押して前記中心孔をシールするための第2押圧部材と、スライド方向に移動することで、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを第1方向あるいは前記第1方向とは反対の第2方向に移動させるためのスライダーと、を有していて、前記第1方向と前記第2方向は前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムが前記中心孔を開閉する方向であることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1押圧部材は、第1ダイヤフラムを中心孔の一方側として中心孔をシールするためのものである。第2押圧部材は、第2ダイヤフラムを中心孔の他方側に押して中心孔をシールするためのものである。
第1押圧部材と第2押圧部材とを第1方向あるいは第2方向に移動させるためにスライダーが設けられている。
これにより、スライダーを移動させるだけで、中心孔を開閉する方向に沿って第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉操作することができる。
【0014】
本発明は、前記スライダーの前記スライド方向と、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材の前記第1方向と前記第2方向は、ほぼ直交していることが望ましい。
本発明の構成によれば、スライダーのスライド方向と、第1方向と第2方向はほぼ直交している。
これにより、ヘッドのノズルが強い吸引力で吸引されて負圧になったとしても、開いている側のダイヤフラムが閉まらないように、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉させるためのスライダーの動作方向が、第1方向と第2方向に対してほぼ直交している。このために、本体内において強い振動や強い負圧が掛かっても、スライダーは、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムを、安定して開閉することができる。
【0015】
本発明は、前記第1ダイヤフラムは、前記第1周囲部分に密着するための第1シール部を有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2周囲部分に密着するための第2シール部を有し、前記第1ダイヤフラムは、前記第1シール部を前記第1周囲部分に対して押し付けるバネを有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2シール部を前記第2周囲部分に対して押し付けるバネを有していることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムは、第1周囲部分を密着するための第1シール部を有し、第2ダイヤフラムは第2周囲部分を密着するための第2シール部を有している。
第1ダイヤフラムはバネ部材を有しており、第2ダイヤフラムもバネ部材を有している。これらのバネ部材は、第1シール部を第1周囲部分に対して押し付けるとともに、第2シール部を第2周囲部分に対して押し付ける。
これにより、本体内に強い負圧が発生しても、閉じている側のダイヤフラムのシール部は安定して中心孔の周囲部分に密着して液密状態を保つことができる。
【0016】
本発明は、前記第1ダイヤフラムの前記第1シール部の内側と前記第2ダイヤフラムの前記第2シール部の内側は、膜状部分であることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムの第1シール部の内側と第2ダイヤフラムの第2シール部の内側は膜状部分である。
これにより、各ダイヤフラムが強い負圧を受けて作動軸がわずかに移動したとしても、閉じている側のダイヤフラムが弾性変形してその作動軸のわずかな移動を吸収することができる。このために、閉じている側のダイヤフラムのシール部における液密状態に影響を与えない。作動軸が大きく移動しようとしたとしてもダイヤフラムを加圧する押圧部材を介してスライダーに対して力が伝わるので、作動軸はガタ程度しか移動せず、ダイヤフラムは大きく移動することができないことから、液密状態を保つことができる。
【0017】
本発明は、前記スライダーの前記スライド方向への移動を行うために、前記キャリッジはレバーを有していることが望ましい。
これにより、キャリッジにレバーを設けておくことにより、このレバーによりキャリッジにおいてスライダーのスライド動作を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す図。
【図2】図1における液体供給経路部とキャリッジおよび記録ヘッドを拡大して示す図。
【図3】キャリッジ、複数の圧力調整部および液体の切り換え装置の配置例を示す斜視図。
【図4】インクカートリッジ、液体供給経路部、記録ヘッドなどを示す図。
【図5】2種類のインクカートリッジ、2つの圧力調整部と液体の切り換え装置を示す図3のE−E線における断面構造例。
【図6】2種類のインクカートリッジ、2つの圧力調整部、液体の切り換え装置および記録ヘッドのインクの流れの流路を示す図。
【図7】第1ダイヤフラムが中心孔を閉じて第2ダイヤフラムが中心孔を開いている第1状態を示す図。
【図8】第1ダイヤフラムが中心孔を開き第2ダイヤフラムが中心孔を閉じている第2状態を示す図。
【図9】図7の第1状態にある液体の切り換え装置をより拡大して示す図。
【図10】中心孔の付近を拡大して示す図。
【図11】第1ダイヤフラムの形状例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、2つのカートリッジホルダ2,3、圧力ポンプ4、キャリッジ5、記録ヘッド20、ガイド軸6、移動操作部7、液体供給経路部40、そして制御部100を有している。
【0020】
カートリッジホルダ2,3には、複数個のインクカートリッジ11Aないし11Hが収容されている。図1の例では、カートリッジホルダ2,3は、それぞれ4つのインクカートリッジを収容している。このために合計8つのインクカートリッジ11Aないし11Hが本体部1に対して搭載されているが、各インクカートリッジ11Aないし11Hは、たとえばシアン、マゼンタ、イエロー、マットブラック、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレーの各色のインクを収容している。
たとえばインクカートリッジ11Dにはマットブラックインク(MB)が収容され、インクカートリッジ11Eにはフォトブラックインク(PB)が収容されている。インクカートリッジ11は、キャリッジ5には直接搭載されておらずカートリッジホルダ2,3に収容されているので、このインクジェット式記録装置10は、所謂オフキャリッジ形のインクジェットプリンタである。
【0021】
圧力ポンプ4は、カートリッジホルダ2,3に対して圧縮空気を送ることにより、各インクカートリッジ11Aないし11Hに対して圧力を与える。これによってインクカートリッジ11Aないし11H内のそれぞれのインクは、液体供給経路部40を通じてキャリッジ5側の記録ヘッド20側に供給できるようになっている。
ガイド軸6は、本体部1に対して水平に設けられている。このキャリッジ5は、移動操作部7の作動により、ガイド軸6に沿って主走査方向Tに沿って往復移動して位置決め可能である。移動操作部7は、たとえば図示しないモータと、このモータにより駆動される図示しない歯付きベルトを有している。歯付きベルトはキャリッジ5に取り付けられていて、歯付きベルトとともにキャリッジ5が主走査方向Tに移動する。キャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。この記録ヘッド20の下面にはノズルプレート21が固定されている。
記録紙22は、記録用媒体の一種であり、記録ヘッド20から噴射されるインクにより文字や画像を記録できるようになっている。記録紙22は、図示しない用紙搬送機構によりたとえば図1の紙面垂直方向に搬送することができる。
【0022】
図1の記録ヘッド20はヘッドの一例であるが、印刷ヘッドとも呼ぶことができる。
液体供給経路部40は、各インクカートリッジ11Aないし11Hから記録ヘッド20側へインクを供給するためのインク供給経路である。液体供給経路部40は、インクカートリッジ11Aないし11Hと記録ヘッド20の間においてチューブ41と圧力調整部43Aないし43Hを有している。したがって、各インクカートリッジ11Aないし11Hと記録ヘッド20とを接続している各液体供給経路部40は、チューブと圧力調整部のユニットにより構成されている。
図1の例では、8つの液体供給経路部40が8つのインクカートリッジ11Aないし11Hとキャリッジ5および記録ヘッド20の間において並列に配置されている。
【0023】
図2は、図1に示す液体供給経路部40のチューブ41と圧力調整部43Aないし43Hと、キャリッジ5および記録ヘッド20の構造例を拡大して示している。
圧力調整部43は、液体容器であるインクカートリッジ11から記録ヘッド20側へインクを供給する際のインクの圧力を調整するためのユニットである。圧力調整部43Aないし43Hの下部には、シール材50Bが配置されている。
【0024】
キャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。キャリッジ5と記録ヘッド20は、インク経路51を有している。このインク経路51は、圧力調整部43Aないし43Hと記録ヘッド20のノズル開口52とを接続している。ノズル開口52は、図2において紙面垂直方向に複数個配列されている。各ノズル開口列53は、複数のノズル開口52により構成されている。各ノズル開口列53はたとえば図2の紙面垂直方向に平行に配列されている。ノズル開口は、ノズルプレート21のノズルプレート面21Aに形成されている。各ノズル開口52は、圧力室54に接続されている。
インクカートリッジ11Aないし11Hはインクを貯留する液体貯留部であり、各色のインクは液体の一例である。
【0025】
図4は、6つのインクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11H、液体供給経路部40および針部材61に加えて記録ヘッド20を示している。
図4において、各インクカートリッジ内にはインク1000が収容されている。このインクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11H内のインク1000は、フレキシブルなチューブ41を通じて圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43H内の流路を通り、シール材50Bまで達するようになっている。圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43Hの中には自己封止弁(減圧弁)43Rが収容されている。この自己封止弁の動作により、インクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11Hからチューブ41を通じて針部材61を通って記録ヘッド20側に送られるインクの圧力を減圧して調整することができる。
たとえばキャリッジの加減速に伴ってチューブ41内のインクに圧力変動が生じた場合には、インク滴の吐出が不安定になるので、圧力調整部はインクの圧力変動を抑制する。
【0026】
圧力調整部43Aないし43Hの突出部分62の中にはインク経路63が設けられている。インク経路63の下端部にはシール材50Bが着脱可能にはめ込むことができる。
【0027】
図4に示すように、記録ヘッド20の上部20Bには、針部材61が突出して設けられている。この針部材61は、Z2方向に突出して設けられている。針部材61は、図1と図2に示す各圧力調整部43Aないし43Hに対してそれぞれ突出して設けられている。
この針部材61は、図4に示すようにインク経路63を通るようになっている。
これにより、インクカートリッジ内のインク1000は、チューブ41、圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43H、インク経路63を通り記録ヘッド20側に供給することができる。
【0028】
図1ないし図3に示すように、液体の切り換え装置200が、記録ヘッド20の付近、好ましくはキャリッジ5の上に搭載されている。図3は、液体の切り換え装置200、複数の圧力調整部43Aないし43H、キャリッジ5および記録ヘッド20を示している。キャリッジ5は、ホルダー5Aを有している。このホルダー5Aは、複数の圧力調整部43Aないし43Hを収容している保持部である。液体の切り換え装置200は、このホルダー5Aの中にたとえば搭載されている。
【0029】
図5は、図3のE−E線における断面構造例を示している。ホルダ5Aの中には、図5では圧力調整部43D,43Eが収容されている。図1と図3に示すように、液体の切り換え装置200は、一例として、圧力調整部43D,43Eの間であって、しかもキャリッジ5の上部に搭載されている。図5において、上下方向はZで示しており、図5において水平方向がYで示し、図5の紙面垂直方向がX方向である。このX方向は、図1における主走査方向Tと同じ方向である。
【0030】
インクカートリッジ11DはマットブラックインクMBを収容していて、圧力調整部43Dの接続部201に対してチューブ41を通じて接続されている。同様にしてインクカートリッジ11EはフォトブラックインクPBを収容していて、インクカートリッジ11Eは圧力調整部43Eの接続部202に対してチューブ41を通じて接続されている。
図6は、図5に示すインクカートリッジ11D,11E、2つの圧力調整部43D,43Eと、液体の切り換え装置200および記録ヘッド20にいたる接続系統を、判りやすくするために模式的に示している。
【0031】
図6において、上述したように、インクカートリッジ11Dは圧力調整部43Dの接続部201に対してチューブ41を介して接続されている。同様にしてインクカートリッジ11Eは、圧力調整部43Eの接続部202に対してチューブ41を介して接続されている。
圧力調整部43Dは、液体の切り換え装置200の本体210の第1流路部211を通じて第1ダイヤフラム221の第1ダイヤフラム室側に接続されている。同様にして圧力調整部43Eは、本体210の第2流路部212を通じて第2ダイヤフラム222の第2ダイヤフラム室側に接続されている。第1流路部211は、第1ダイヤフラム221のインク導入孔271を通じて中心孔223に接続されている。同様にして第2流路部212は、第2ダイヤフラム222のインク導入孔291を通じて中心孔223に通じている。
【0032】
本体210は、通路230と通路231を有している。中心孔223は通路230を介して通路230の一部230aのフィルム230Fによって大気と遮断され、通路231に通じてインクの流路を形成している。通路231の中には、針部材61が挿入されている。針部材61と記録ヘッド20内の構造は、図4に示すものと同じである。
液体の切り換え装置200の第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の一方を開き他方を閉じることにより、インクカートリッジ11DのマットブラックインクMBとインクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBは、選択的に流路が切り換えられて、いずれか一方が記録ヘッド20側に針部材61を通じて供給することで、ノズル開口列53のノズル開口から吐出できる構造のものである。
【0033】
図7と図8は、図5と図6に示す液体の切り換え装置200の構造を詳しく示している。図7は、第1ダイヤフラム221が中心孔223の一方側を閉じていて、第2ダイヤフラム222が中心孔223の他方側を開いている第1状態を示している。
図8は、図7の第1状態とは逆に第2ダイヤフラム222が中心孔223の他方側を閉じて、第1ダイヤフラム221が中心孔223の一方側を開いている第2状態を示している。
図9は、図7に示す液体の切り換え装置200の構造をより拡大して図示している。
【0034】
図7ないし図9を参照して、この液体の切り換え装置200の構造例について説明する。
液体の切り換え装置200の第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の構造は、ほぼ上下対称構造である。液体の切り換え装置200は、概略的には本体210、第1ダイヤフラム221、第2ダイヤフラム222、作動軸224、第1押圧部材241、第2押圧部材242、バネ243,244、スライダー250を有している。
本体210は、通路230,231、中心孔223を有している。通路231の中には、針部材61が挿入されている。
【0035】
第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、上下対称形状のものである。図10は、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の付近を拡大して示しており、図11(B)は第1ダイヤフラム221の形状例を示し、図10のW2方向から見た図である。図11(A)は本体210の第1周囲部分321の形状例を示し、図10の矢印W1方向から見た図である。
第1ダイヤフラム221は、図11(B)と図10(A)に示すように、円形状の膜状部分260と、第1シール部261を有している。第1シール部261は円形リング状の突起であり、第1シール部261の中には円形の薄い膜状部分260が形成されている。図11(A)に示すように、第1ダイヤフラム221の第1シール部261のさらに外側には円形突起部262が円形状に形成されている。本体210の第1周囲部分321には、本体210の第1周囲部分321と開閉動作によって着離する第1シール部261の半径方向外側と、本体210の第1周囲部分321と常時密接する円形突起部262の半径方向内側の間にインク導入孔271を有している。このインク導入孔271は、圧力調整部43Dからのインクを通して、第1ダイヤフラム室221Bと図10の中心孔223側に導くようになっている。シールされるエリア500は、中心孔223の周囲部分にある。
【0036】
第2ダイヤフラム222は、前記第1ダイヤフラムと同じ形状であって、上下対称に配置される。図10(B)に示すように対称な位置にある本体210の第2周囲部分322には破線で示すようにインク導入孔291が形成されている。このインク導入孔291は、圧力調整部43Eからくるインクを入れて、第2ダイヤフラム室222Bと図10の中心孔223側に導くものである。
第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、弾性変形可能なゴム材料や、プラスチック材料あるいはその他の材料を用いることができる。
【0037】
図10に示すように、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、それぞれその最も外側に基部221A,222Aを有している。また膜状部分260の周囲には外側に向けた突起部分273を有し、膜状部分280の外側には突起部分283を有している。
作動軸224の一端部224Aは、第1ダイヤフラム221の第1ダイヤフラム室221Bに対して当接している。同様にして作動軸224の他端部224Bは、第2ダイヤフラム222の第2ダイヤフラム室222Bに対して当接している。つまり、一端部224Aは膜状部分260の内面側に突き当たっていて、他端部224Bは膜状部分280の内面側に突き当たっている。作動軸224は、中心孔223内において中心孔223に対して同軸状にZ方向に沿って配置されている。
【0038】
図9に示す第1押圧部材241は、膜状部分260の外面から膜状部分260を第1方向Z1に押すための部材である。第2押圧部材242は、膜状部分280の外面から膜状部分280を第2方向Z2に押すための部材である。第1押圧部材241は支点301Aを中心として僅かな角度だけ揺動できる。第2押圧部材242は、支点302Aを中心として僅かな角度だけ揺動できる。
バネ243は第1押圧部材241の周囲に配置されていて、膜状部分260を第2方向Z2に付勢するためのものである。バネ244は、膜状部分280を、第1方向Z1に付勢する部材である。
【0039】
図10に示すように、本体210の第1周囲部分321と第2周囲部分322には、図10(B)に示すように複数本の溝400が、半径方向に沿って形成されている。この溝400は、第1周囲部分321、第2周囲部分322の円柱方向に沿って複数本配列されている。第1周囲部分321は、第1ダイヤフラム221が対面して密着する部分である。第2周囲部分322は、第2ダイヤフラム222が対面して密着する部分である。
【0040】
第1周囲部分321と第2周囲部分322がこれらの溝400を有しているのは、次のような理由からである。すなわち、図9と図7に示すように、第1ダイヤフラム221の内面が図10に示す第1周囲部分321に密着した状態で、第1ダイヤフラム221が第1周囲部分321に張り付いて固定されてしまうのを防止するために、この溝400が設けられている。同様にして、第2ダイヤフラム222の内面が、第2周囲部分322に図8に示すように密着した場合に、張り付いてしまうのを防止する。これにより、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、スムーズかつ確実に中心孔223の図9に示す一方側421と他方側422の開閉を行うことができる。
図10(B)に示すような溝400に代えて、第1周囲部分321と第2周囲部分322には、凹凸部を形成しても勿論構わない。
【0041】
次に、図7に示すスライダー250について説明する。
スライダー250は、第1押圧部材241と第2押圧部材242側にそれぞれ配置されているが、上下にあるスライダー250,250は一体形成された部材である。このスライダー250は、レバー450を操作することにより、スライド方向SDに沿って直線往復移動可能である。
図7に示す第1状態では、スライダー250は第1押圧部材241を、第1方向Z1に沿って押している。これに対して、図8に示す第2状態では、スライダー250はスライド方向SDに沿ってY(+)方向に移動することから、第1ダイヤフラム221に代えて第2ダイヤフラム222が第2方向X2に沿って押し上げられている。このように、レバー450をスライド方向SDに沿って往復移動させることにより、第1押圧部材241と第2押圧部材242を介して第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222を交互に開閉させることができる。第1押圧部材241と第2押圧部材242およびスライダー250は、切り換え操作部399を構成している。
【0042】
このレバー450は、図3に示すキャリッジ5の上に設けているのが望ましい。そしてこのレバー450は、たとえば作業者がマニュアルで操作することができる。しかし、これに限らずスライダー250は、電磁ソレノイドなどを用いて、電気的にスライダーのスライド動作を行うようにしても良い。
【0043】
次に、上述した液体の切り換え装置200による液体の切り換え動作例について説明する。
図6において、たとえば記録ヘッド20のある1つのノズル開口列53は、図6の紙面において複数のノズル開口52を有している。まず、このノズル開口列53の複数のノズル開口52から、インクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBを噴射する場合について説明する。
この場合には、図7と図9に示すように、スライダー250は第1状態にあり、スライダー250は第1押圧部材241を第1方向Z1に沿って押圧している。これに対してスライダー250は第2押圧部材242を開放している。第1押圧部材241は、第1ダイヤフラム221の膜状部分260をバネ243の力に抗して第1方向Z1方向に押す。膜状部分260が第1方向Z1に押されることにより、作動軸224も第1方向Z1に沿って押されることから、反対側の膜状部分280は第1方向Z1に沿って連動して押される。したがって第1ダイヤフラム221の膜状部分260は、第1シール部261を用いて図9に示す中心孔223の一方側421を確実にシールすることができる。つまり、シール部261が中心孔223の第1周囲部分321に当接する。
これに対して、反対側の第2ダイヤフラム222の膜状部分は、第1方向Z1に押されて第2シール部281は離れているので、図9に示す中心孔223の他方側422は開いている。図10および図7の矢印Aは、この状態でインクが流れる場合の方向を示す。
【0044】
このことから、図6に示すインクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBは、圧力調整部43Eと、本体210の第2流路部212と、そして図6と図11(B)インク導入孔291を通じて本体210の中心孔223に流れる。そして、フォトブラックインクPBは、中心孔223から通路230,231を通じて針部材61を介して図6のノズル開口列53のノズル開口52から噴射されることになる。
【0045】
次に、図6に示すフォトブラックインクPBからマットブラックインクMBに切り換える場合には、次のように行う。
図7のレバー450を操作してスライダー250をスライド方向SDにスライドさせることにより、レバー450は図8に示すように第2押圧部材242を第2方向Z2にバネ244の力に抗して押し上げるとともに第1押圧部材241を開放する。
【0046】
これによって、図7に示す第1状態とは逆に図8に示す第2状態では、第2ダイヤフラム222のシール部281(図9,図10)が中心孔223の第2周囲部分322に当接することで、膜状部分280は中心孔223の他方側422をシールする。
これに対して、第1ダイヤフラム221のシール部261は中心孔223の第1周囲部分321から離れることから、中心孔223の一方側421を開く(図10)。図8の矢印Bは、この状態でインクが流れる場合の方向を示す。
このようにして、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の開閉関係を逆にした状態で、図6に示すインクカートリッジ11DのマットブラックインクMBは、圧力調整部43Dと、本体210の第1流路部221と第1ダイヤフラム221の図6と図11(A)に示すインク導入孔271を通じて、中心孔223に送ることができる。
そして送られたマットブラックインクMBは、中心孔223と通路230,231を通じて針部材61を介して記録ヘッド20のノズル開口列53の各のズル開口52から噴射される。
逆にマットブラックインクMBを使用していて、次にフォトブラックインクPBに切り換える場合でも同様にして、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の開閉動作を変えることで異なる種類のインクの流路の切り換えを行うことができる。
【0047】
上述したように本発明の実施形態では、液体の切り換え装置200が、記録ヘッド20に近いところで、好ましくはキャリッジに搭載されていて、複数のインク流路を選択して切り換えることができる。つまり、インクの流路の切り換えによるインクの種類の切り換えがヘッドに近いところで行えるので、次のようなメリットがある。
【0048】
仮に、液体の切り換え装置がヘッド側ではなく複数のインクカートリッジ側に設けられている場合に、たとえばマットブラックインクからフォトブラックインクにインクの使用を交換する場合には、今まで使っていたマットブラックインクが流路の切り換え装置からヘッド側の間の長いチューブ内に残っていることから、この残っているチューブ内のマットブラックインクを強制的に吸引して排出しなければならない。前に使用したインクを排出しないと、次に使用するインクとの間で混色が生じてしまうからである。このように強制的に吸引することにより、インクの消費に無駄が生じる。
しかし本発明の実施形態では、液体の流路切り換え装置200は、記録ヘッドに近い側に配置されていることから、このようなインクの吸引量を減らしてインクの消費の削減を図ることができる。しかもこの液体の切り換え装置を用いることにより、同じノズル開口列53のノズル開口52から異なる種類のインクを確実にかつ容易に切り換えて吐出させることができる。
【0049】
本発明の実施形態では、液体切り換え装置がヘッドの付近に配置されていることから、液体の種類を切り換える際には、液体切り換え装置からヘッドの間で残っている液体のみを吸引して、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給することができる。このために、液体の種類の交換のための液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。液体切り換え装置が特にキャリッジに搭載されているので、ヘッドの付近において液体の切り換えを行うことができる。
【0050】
本発明の実施形態では、液体切り換え装置は、中心孔を有し、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成しているので、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給する際に、切り換え前の残留インクが少なく、切り換える新たなインクの流れによって残留インクが除去されるため、インクの液体の種類の交換のための液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。
【0051】
本発明の実施形態では、第1種類と第2種類の液体は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを用いて、確実に供給を停止したり供給を行ったりすることができる。通路部における液体を通したり通さなかったりするのはダイヤフラムを用いているので、球を用いるのに比べてより確実に行うことができる。作動軸は、第1ダイヤフラムの閉じたり開いたりする動作を第2ダイヤフラムの開いたり閉じたりする動作として確実に機械的に伝えることができる。第1ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールしたり、第2ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールする場合に、第1ダイヤフラムあるいは第2ダイヤフラムが中心孔の周囲に対して張り付いてしまう現象を防止することができる。
【0052】
本発明の実施形態では、スライダーを移動させるだけで、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを中心孔を開閉する方向に沿って第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉操作することができる。ヘッドのノズルが強い吸引力で吸引されて負圧になったとしても、開いている側のダイヤフラムが閉まらないように、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉させるためのスライダーの動作方向が、第1方向と第2方向に対してほぼ直交している。このために、本体内において強い振動や強い負圧が掛かっても、スライダーは、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムを、安定して開閉することができる。本体内に強い負圧が発生しても、閉じている側のダイヤフラムのシール部は安定して中心孔の周囲部分に密着して液密状態を保つことができる。
【0053】
本発明の実施形態では、各ダイヤフラムが強い負圧を受けて作動軸がわずかに移動したとしても、閉じている側のダイヤフラムが弾性変形してその作動軸のわずかな移動を吸収することができる。このために閉じている側のダイヤフラムのシール部における液密状態に影響を与えない。そしてさらに作動軸が大きく移動しようとしたとしてもダイヤフラムを加圧する押圧部材を介してスライダーに対して力が伝わるので、ダイヤフラムは大きく移動することができないことから、液密状態を保つことができる。
本発明の実施形態では、キャリッジにレバーを設けておくことにより、このレバーによりスライダーのスライド動作を確実に行うことができる。
【0054】
また本発明の実施形態では、異なる種類のインクとしてマットブラックインクとフォトブラックインクを例に挙げているが、これに限らず他の種類のインクの切り換えであっても勿論構わない。
図1に示すオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置では、たとえば8つのインクカートリッジ11を備えている。しかしこれに限らず、2つないし7つあるいは9つ以上のインクカートリッジを備えるものであっても勿論構わない。
【0055】
本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタなどの画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイなどのカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどの液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置などにも適用できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
5・・・キャリッジ、10・・・インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)、11A〜11H・・・インクカートリッジ(液体容器の一例)、20・・・記録ヘッド、40・・・液体供給経路部、43A〜43H・・・圧力調整部、200・・・液体の切り換え装置、210・・・本体、221・・・第1ダイヤフラム、222・・・第2ダイヤフラム、223・・・中心孔、224・・・作動軸、MB・・・マットブラックインク(第1種類の液体の一例)、PB・・・フォトブラックインク(第2種類の液体の一例)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドから液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、記録ヘッドから記録媒体に対してインク滴を噴射させて印刷を行うインクジェット式記録装置は、記録ヘッドのノズルから記録媒体に対して微小なインク滴を吐出させて、所望の文字や図形等の画像を記録する。
この種のインクジェット式記録装置は、インクカートリッジから記録ヘッドに対してインクを供給するためにチューブを有している。各インクカートリッジからは、1本のチューブを通じて、異なる種類のインクがヘッドのノズル列側に供給できるようになっている。
【0003】
ところで、ヘッドのノズル列から吐出しているインクの種類を別の種類のインクに変える場合には、最初に使っているインクカートリッジからのインクの供給を止めた後に、チューブ内のインクを排出する必要がある。チューブ内のインクを排出してきれいにした後に、異なる種類のインクが入った別のインクカートリッジから異なる種類のインクをこのチューブを用いてヘッドのノズル列から噴射する。
このようにして異なる種類のインクが入ったカートリッジを変えて異なる種類のインクを吐出する場合には、チューブ内の残ったインクを吸引して排除する必要があるので、チューブ内のインクが無駄になってしまう。特にチューブの長さが長いインクジェット式記録装置では、インクの無駄が多くなってしまう。
一方、インクと溶剤の切り換えを行うことができる弁ユニットが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−77439号公報(第2頁ないし第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている弁ユニットは、インクと溶剤のインクの切り換えを行うためのものであるが、ボールとばねを使ってインクと溶剤の流れの切り換えを行っていて、十分に液体のシールを行うことができない恐れがある。
【0006】
そこで本発明は上記課題を解消し、インクのような液体の消費の無駄を防ぎ、液体の種類の切り換えの際に確実にシールをして容易に同じノズルから異なる種類の液体を吐出させることができる液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、前記液体を貯留していて前記ヘッドへ前記液体を供給するための液体貯留部と、前記液体貯留部から供給される複数種類の前記液体を選択して切り換えて、選択された種類の前記液体を前記ヘッドへ供給する液体の切り換え装置と、を有し、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に配置されていることを特徴とする液体噴射装置により、達成される。
本発明の構成によれば、液体貯留部は液体を貯留していてヘッドへ液体を供給するためのものである。液体切り換え装置は、液体貯留部から供給される複数種類の液体を選択して切り換えて、選択された種類の液体をヘッドへ供給する。
この液体切り換え装置は、ヘッドの付近に配置されている。
これにより、液体切り換え装置がヘッドの付近に配置されていることから、液体の種類を切り換える際には、液体切り換え装置からヘッドの間で残っている液体のみを吸引して、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給することができる。このために、液体の種類の交換の際に液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。
【0008】
本発明は、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されていることが望ましい。
本発明の構成によれば、液体の切り換え装置は、ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されている。
これにより、液体切り換え装置がキャリッジに搭載されているのでヘッドの付近において液体の切り換えを行うことができる。
【0009】
本発明は、前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に保持された本体と、前記本体内に配置されて第1種類の前記液体を通す第1通路部を開閉するための第1ダイヤフラムと、前記本体内に配置されて第2種類の前記液体を通す第2通路部を開閉するための第2ダイヤフラムと、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムを操作して、前記第1通路部と前記第2通路部の一方を開き他方を閉じるために前記切り換えるための切り換え操作部と、を有することが望ましい。
本発明の構成によれば、液体切り換え装置の本体は、ヘッドの付近に保持されている。第1ダイヤフラムは、本体内に配置されて第1種類の液体を通す第1通路部を開閉する。第2ダイヤフラムは、本体内に配置されて第2種類の液体を通す第2通路部を開閉する。
切り換え操作部は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを操作して、第1通路部と第2通路部の一方を開き他方を閉じるために切り換える。
これにより、第1種類と第2種類の液体は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを用いて、確実に供給を停止したり供給を行ったりすることができる。液体の供給と停止を液もれをせずにダイヤフラムを用いているので、確実に行うことができる。
【0010】
本発明は、前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成していることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは対向していて、第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラム室は、中心孔により通じており、この中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成している。
これにより、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムの移動により、ヘッド側へ中心孔を通じて液体の種類を切り換えて送ることができる。
【0011】
本発明は、前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じており、前記中心孔の中には作動軸が配置されており、前記作動軸の一端部は前記第1ダイヤフラム室に当接しており、前記作動軸の他端部は前記第2ダイヤフラム室に当接していることが望ましい。
本発明の構成によれば、本体は中心孔を有している。第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは対向して配置されている。第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、この中心孔により通じている。作動軸は中心孔の中に配置されており、作動軸の一端部は第1ダイヤフラム室に当接しており、作動軸の他端部は第2ダイヤフラム室に当接している。
これにより、作動軸は、第1ダイヤフラムの閉じたり開いたりする動作を、第2ダイヤフラムの開いたり閉じたりする動作として、確実に機械的に伝達することができる。
【0012】
本発明は、前記本体の前記中心孔の周囲であって、前記第1ダイヤフラムによりシールされる第1周囲部分と、前記第2ダイヤフラムによりシールされる第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されていることが望ましい。
本発明の構成によれば、本体の中心孔の周囲の第1周囲部分は、第1ダイヤフラムによりシールされる。第2周囲部分は、第2ダイヤフラムによりシールされる。第1周囲部分と第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されている。
これにより、第1ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールしたり、第2ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールする場合に、第1ダイヤフラムあるいは第2ダイヤフラムが中心孔の周囲に対して張り付いてしまう現象を防止することができる。
【0013】
本発明は、前記切り換え操作部は、前記第1ダイヤフラムを前記中心孔側の一方側に押して前記中心孔をシールするための第1押圧部材と、前記第2ダイヤフラムを前記中心孔の他方側に押して前記中心孔をシールするための第2押圧部材と、スライド方向に移動することで、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを第1方向あるいは前記第1方向とは反対の第2方向に移動させるためのスライダーと、を有していて、前記第1方向と前記第2方向は前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムが前記中心孔を開閉する方向であることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1押圧部材は、第1ダイヤフラムを中心孔の一方側として中心孔をシールするためのものである。第2押圧部材は、第2ダイヤフラムを中心孔の他方側に押して中心孔をシールするためのものである。
第1押圧部材と第2押圧部材とを第1方向あるいは第2方向に移動させるためにスライダーが設けられている。
これにより、スライダーを移動させるだけで、中心孔を開閉する方向に沿って第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉操作することができる。
【0014】
本発明は、前記スライダーの前記スライド方向と、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材の前記第1方向と前記第2方向は、ほぼ直交していることが望ましい。
本発明の構成によれば、スライダーのスライド方向と、第1方向と第2方向はほぼ直交している。
これにより、ヘッドのノズルが強い吸引力で吸引されて負圧になったとしても、開いている側のダイヤフラムが閉まらないように、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉させるためのスライダーの動作方向が、第1方向と第2方向に対してほぼ直交している。このために、本体内において強い振動や強い負圧が掛かっても、スライダーは、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムを、安定して開閉することができる。
【0015】
本発明は、前記第1ダイヤフラムは、前記第1周囲部分に密着するための第1シール部を有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2周囲部分に密着するための第2シール部を有し、前記第1ダイヤフラムは、前記第1シール部を前記第1周囲部分に対して押し付けるバネを有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2シール部を前記第2周囲部分に対して押し付けるバネを有していることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムは、第1周囲部分を密着するための第1シール部を有し、第2ダイヤフラムは第2周囲部分を密着するための第2シール部を有している。
第1ダイヤフラムはバネ部材を有しており、第2ダイヤフラムもバネ部材を有している。これらのバネ部材は、第1シール部を第1周囲部分に対して押し付けるとともに、第2シール部を第2周囲部分に対して押し付ける。
これにより、本体内に強い負圧が発生しても、閉じている側のダイヤフラムのシール部は安定して中心孔の周囲部分に密着して液密状態を保つことができる。
【0016】
本発明は、前記第1ダイヤフラムの前記第1シール部の内側と前記第2ダイヤフラムの前記第2シール部の内側は、膜状部分であることが望ましい。
本発明の構成によれば、第1ダイヤフラムの第1シール部の内側と第2ダイヤフラムの第2シール部の内側は膜状部分である。
これにより、各ダイヤフラムが強い負圧を受けて作動軸がわずかに移動したとしても、閉じている側のダイヤフラムが弾性変形してその作動軸のわずかな移動を吸収することができる。このために、閉じている側のダイヤフラムのシール部における液密状態に影響を与えない。作動軸が大きく移動しようとしたとしてもダイヤフラムを加圧する押圧部材を介してスライダーに対して力が伝わるので、作動軸はガタ程度しか移動せず、ダイヤフラムは大きく移動することができないことから、液密状態を保つことができる。
【0017】
本発明は、前記スライダーの前記スライド方向への移動を行うために、前記キャリッジはレバーを有していることが望ましい。
これにより、キャリッジにレバーを設けておくことにより、このレバーによりキャリッジにおいてスライダーのスライド動作を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置を示す図。
【図2】図1における液体供給経路部とキャリッジおよび記録ヘッドを拡大して示す図。
【図3】キャリッジ、複数の圧力調整部および液体の切り換え装置の配置例を示す斜視図。
【図4】インクカートリッジ、液体供給経路部、記録ヘッドなどを示す図。
【図5】2種類のインクカートリッジ、2つの圧力調整部と液体の切り換え装置を示す図3のE−E線における断面構造例。
【図6】2種類のインクカートリッジ、2つの圧力調整部、液体の切り換え装置および記録ヘッドのインクの流れの流路を示す図。
【図7】第1ダイヤフラムが中心孔を閉じて第2ダイヤフラムが中心孔を開いている第1状態を示す図。
【図8】第1ダイヤフラムが中心孔を開き第2ダイヤフラムが中心孔を閉じている第2状態を示す図。
【図9】図7の第1状態にある液体の切り換え装置をより拡大して示す図。
【図10】中心孔の付近を拡大して示す図。
【図11】第1ダイヤフラムの形状例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、2つのカートリッジホルダ2,3、圧力ポンプ4、キャリッジ5、記録ヘッド20、ガイド軸6、移動操作部7、液体供給経路部40、そして制御部100を有している。
【0020】
カートリッジホルダ2,3には、複数個のインクカートリッジ11Aないし11Hが収容されている。図1の例では、カートリッジホルダ2,3は、それぞれ4つのインクカートリッジを収容している。このために合計8つのインクカートリッジ11Aないし11Hが本体部1に対して搭載されているが、各インクカートリッジ11Aないし11Hは、たとえばシアン、マゼンタ、イエロー、マットブラック、フォトブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレーの各色のインクを収容している。
たとえばインクカートリッジ11Dにはマットブラックインク(MB)が収容され、インクカートリッジ11Eにはフォトブラックインク(PB)が収容されている。インクカートリッジ11は、キャリッジ5には直接搭載されておらずカートリッジホルダ2,3に収容されているので、このインクジェット式記録装置10は、所謂オフキャリッジ形のインクジェットプリンタである。
【0021】
圧力ポンプ4は、カートリッジホルダ2,3に対して圧縮空気を送ることにより、各インクカートリッジ11Aないし11Hに対して圧力を与える。これによってインクカートリッジ11Aないし11H内のそれぞれのインクは、液体供給経路部40を通じてキャリッジ5側の記録ヘッド20側に供給できるようになっている。
ガイド軸6は、本体部1に対して水平に設けられている。このキャリッジ5は、移動操作部7の作動により、ガイド軸6に沿って主走査方向Tに沿って往復移動して位置決め可能である。移動操作部7は、たとえば図示しないモータと、このモータにより駆動される図示しない歯付きベルトを有している。歯付きベルトはキャリッジ5に取り付けられていて、歯付きベルトとともにキャリッジ5が主走査方向Tに移動する。キャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。この記録ヘッド20の下面にはノズルプレート21が固定されている。
記録紙22は、記録用媒体の一種であり、記録ヘッド20から噴射されるインクにより文字や画像を記録できるようになっている。記録紙22は、図示しない用紙搬送機構によりたとえば図1の紙面垂直方向に搬送することができる。
【0022】
図1の記録ヘッド20はヘッドの一例であるが、印刷ヘッドとも呼ぶことができる。
液体供給経路部40は、各インクカートリッジ11Aないし11Hから記録ヘッド20側へインクを供給するためのインク供給経路である。液体供給経路部40は、インクカートリッジ11Aないし11Hと記録ヘッド20の間においてチューブ41と圧力調整部43Aないし43Hを有している。したがって、各インクカートリッジ11Aないし11Hと記録ヘッド20とを接続している各液体供給経路部40は、チューブと圧力調整部のユニットにより構成されている。
図1の例では、8つの液体供給経路部40が8つのインクカートリッジ11Aないし11Hとキャリッジ5および記録ヘッド20の間において並列に配置されている。
【0023】
図2は、図1に示す液体供給経路部40のチューブ41と圧力調整部43Aないし43Hと、キャリッジ5および記録ヘッド20の構造例を拡大して示している。
圧力調整部43は、液体容器であるインクカートリッジ11から記録ヘッド20側へインクを供給する際のインクの圧力を調整するためのユニットである。圧力調整部43Aないし43Hの下部には、シール材50Bが配置されている。
【0024】
キャリッジ5の下部には記録ヘッド20が設けられている。キャリッジ5と記録ヘッド20は、インク経路51を有している。このインク経路51は、圧力調整部43Aないし43Hと記録ヘッド20のノズル開口52とを接続している。ノズル開口52は、図2において紙面垂直方向に複数個配列されている。各ノズル開口列53は、複数のノズル開口52により構成されている。各ノズル開口列53はたとえば図2の紙面垂直方向に平行に配列されている。ノズル開口は、ノズルプレート21のノズルプレート面21Aに形成されている。各ノズル開口52は、圧力室54に接続されている。
インクカートリッジ11Aないし11Hはインクを貯留する液体貯留部であり、各色のインクは液体の一例である。
【0025】
図4は、6つのインクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11H、液体供給経路部40および針部材61に加えて記録ヘッド20を示している。
図4において、各インクカートリッジ内にはインク1000が収容されている。このインクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11H内のインク1000は、フレキシブルなチューブ41を通じて圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43H内の流路を通り、シール材50Bまで達するようになっている。圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43Hの中には自己封止弁(減圧弁)43Rが収容されている。この自己封止弁の動作により、インクカートリッジ11A,11B,11C,11F,11G,11Hからチューブ41を通じて針部材61を通って記録ヘッド20側に送られるインクの圧力を減圧して調整することができる。
たとえばキャリッジの加減速に伴ってチューブ41内のインクに圧力変動が生じた場合には、インク滴の吐出が不安定になるので、圧力調整部はインクの圧力変動を抑制する。
【0026】
圧力調整部43Aないし43Hの突出部分62の中にはインク経路63が設けられている。インク経路63の下端部にはシール材50Bが着脱可能にはめ込むことができる。
【0027】
図4に示すように、記録ヘッド20の上部20Bには、針部材61が突出して設けられている。この針部材61は、Z2方向に突出して設けられている。針部材61は、図1と図2に示す各圧力調整部43Aないし43Hに対してそれぞれ突出して設けられている。
この針部材61は、図4に示すようにインク経路63を通るようになっている。
これにより、インクカートリッジ内のインク1000は、チューブ41、圧力調整部43A,43B,43C,43F,43G,43H、インク経路63を通り記録ヘッド20側に供給することができる。
【0028】
図1ないし図3に示すように、液体の切り換え装置200が、記録ヘッド20の付近、好ましくはキャリッジ5の上に搭載されている。図3は、液体の切り換え装置200、複数の圧力調整部43Aないし43H、キャリッジ5および記録ヘッド20を示している。キャリッジ5は、ホルダー5Aを有している。このホルダー5Aは、複数の圧力調整部43Aないし43Hを収容している保持部である。液体の切り換え装置200は、このホルダー5Aの中にたとえば搭載されている。
【0029】
図5は、図3のE−E線における断面構造例を示している。ホルダ5Aの中には、図5では圧力調整部43D,43Eが収容されている。図1と図3に示すように、液体の切り換え装置200は、一例として、圧力調整部43D,43Eの間であって、しかもキャリッジ5の上部に搭載されている。図5において、上下方向はZで示しており、図5において水平方向がYで示し、図5の紙面垂直方向がX方向である。このX方向は、図1における主走査方向Tと同じ方向である。
【0030】
インクカートリッジ11DはマットブラックインクMBを収容していて、圧力調整部43Dの接続部201に対してチューブ41を通じて接続されている。同様にしてインクカートリッジ11EはフォトブラックインクPBを収容していて、インクカートリッジ11Eは圧力調整部43Eの接続部202に対してチューブ41を通じて接続されている。
図6は、図5に示すインクカートリッジ11D,11E、2つの圧力調整部43D,43Eと、液体の切り換え装置200および記録ヘッド20にいたる接続系統を、判りやすくするために模式的に示している。
【0031】
図6において、上述したように、インクカートリッジ11Dは圧力調整部43Dの接続部201に対してチューブ41を介して接続されている。同様にしてインクカートリッジ11Eは、圧力調整部43Eの接続部202に対してチューブ41を介して接続されている。
圧力調整部43Dは、液体の切り換え装置200の本体210の第1流路部211を通じて第1ダイヤフラム221の第1ダイヤフラム室側に接続されている。同様にして圧力調整部43Eは、本体210の第2流路部212を通じて第2ダイヤフラム222の第2ダイヤフラム室側に接続されている。第1流路部211は、第1ダイヤフラム221のインク導入孔271を通じて中心孔223に接続されている。同様にして第2流路部212は、第2ダイヤフラム222のインク導入孔291を通じて中心孔223に通じている。
【0032】
本体210は、通路230と通路231を有している。中心孔223は通路230を介して通路230の一部230aのフィルム230Fによって大気と遮断され、通路231に通じてインクの流路を形成している。通路231の中には、針部材61が挿入されている。針部材61と記録ヘッド20内の構造は、図4に示すものと同じである。
液体の切り換え装置200の第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の一方を開き他方を閉じることにより、インクカートリッジ11DのマットブラックインクMBとインクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBは、選択的に流路が切り換えられて、いずれか一方が記録ヘッド20側に針部材61を通じて供給することで、ノズル開口列53のノズル開口から吐出できる構造のものである。
【0033】
図7と図8は、図5と図6に示す液体の切り換え装置200の構造を詳しく示している。図7は、第1ダイヤフラム221が中心孔223の一方側を閉じていて、第2ダイヤフラム222が中心孔223の他方側を開いている第1状態を示している。
図8は、図7の第1状態とは逆に第2ダイヤフラム222が中心孔223の他方側を閉じて、第1ダイヤフラム221が中心孔223の一方側を開いている第2状態を示している。
図9は、図7に示す液体の切り換え装置200の構造をより拡大して図示している。
【0034】
図7ないし図9を参照して、この液体の切り換え装置200の構造例について説明する。
液体の切り換え装置200の第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の構造は、ほぼ上下対称構造である。液体の切り換え装置200は、概略的には本体210、第1ダイヤフラム221、第2ダイヤフラム222、作動軸224、第1押圧部材241、第2押圧部材242、バネ243,244、スライダー250を有している。
本体210は、通路230,231、中心孔223を有している。通路231の中には、針部材61が挿入されている。
【0035】
第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、上下対称形状のものである。図10は、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の付近を拡大して示しており、図11(B)は第1ダイヤフラム221の形状例を示し、図10のW2方向から見た図である。図11(A)は本体210の第1周囲部分321の形状例を示し、図10の矢印W1方向から見た図である。
第1ダイヤフラム221は、図11(B)と図10(A)に示すように、円形状の膜状部分260と、第1シール部261を有している。第1シール部261は円形リング状の突起であり、第1シール部261の中には円形の薄い膜状部分260が形成されている。図11(A)に示すように、第1ダイヤフラム221の第1シール部261のさらに外側には円形突起部262が円形状に形成されている。本体210の第1周囲部分321には、本体210の第1周囲部分321と開閉動作によって着離する第1シール部261の半径方向外側と、本体210の第1周囲部分321と常時密接する円形突起部262の半径方向内側の間にインク導入孔271を有している。このインク導入孔271は、圧力調整部43Dからのインクを通して、第1ダイヤフラム室221Bと図10の中心孔223側に導くようになっている。シールされるエリア500は、中心孔223の周囲部分にある。
【0036】
第2ダイヤフラム222は、前記第1ダイヤフラムと同じ形状であって、上下対称に配置される。図10(B)に示すように対称な位置にある本体210の第2周囲部分322には破線で示すようにインク導入孔291が形成されている。このインク導入孔291は、圧力調整部43Eからくるインクを入れて、第2ダイヤフラム室222Bと図10の中心孔223側に導くものである。
第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、弾性変形可能なゴム材料や、プラスチック材料あるいはその他の材料を用いることができる。
【0037】
図10に示すように、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、それぞれその最も外側に基部221A,222Aを有している。また膜状部分260の周囲には外側に向けた突起部分273を有し、膜状部分280の外側には突起部分283を有している。
作動軸224の一端部224Aは、第1ダイヤフラム221の第1ダイヤフラム室221Bに対して当接している。同様にして作動軸224の他端部224Bは、第2ダイヤフラム222の第2ダイヤフラム室222Bに対して当接している。つまり、一端部224Aは膜状部分260の内面側に突き当たっていて、他端部224Bは膜状部分280の内面側に突き当たっている。作動軸224は、中心孔223内において中心孔223に対して同軸状にZ方向に沿って配置されている。
【0038】
図9に示す第1押圧部材241は、膜状部分260の外面から膜状部分260を第1方向Z1に押すための部材である。第2押圧部材242は、膜状部分280の外面から膜状部分280を第2方向Z2に押すための部材である。第1押圧部材241は支点301Aを中心として僅かな角度だけ揺動できる。第2押圧部材242は、支点302Aを中心として僅かな角度だけ揺動できる。
バネ243は第1押圧部材241の周囲に配置されていて、膜状部分260を第2方向Z2に付勢するためのものである。バネ244は、膜状部分280を、第1方向Z1に付勢する部材である。
【0039】
図10に示すように、本体210の第1周囲部分321と第2周囲部分322には、図10(B)に示すように複数本の溝400が、半径方向に沿って形成されている。この溝400は、第1周囲部分321、第2周囲部分322の円柱方向に沿って複数本配列されている。第1周囲部分321は、第1ダイヤフラム221が対面して密着する部分である。第2周囲部分322は、第2ダイヤフラム222が対面して密着する部分である。
【0040】
第1周囲部分321と第2周囲部分322がこれらの溝400を有しているのは、次のような理由からである。すなわち、図9と図7に示すように、第1ダイヤフラム221の内面が図10に示す第1周囲部分321に密着した状態で、第1ダイヤフラム221が第1周囲部分321に張り付いて固定されてしまうのを防止するために、この溝400が設けられている。同様にして、第2ダイヤフラム222の内面が、第2周囲部分322に図8に示すように密着した場合に、張り付いてしまうのを防止する。これにより、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222は、スムーズかつ確実に中心孔223の図9に示す一方側421と他方側422の開閉を行うことができる。
図10(B)に示すような溝400に代えて、第1周囲部分321と第2周囲部分322には、凹凸部を形成しても勿論構わない。
【0041】
次に、図7に示すスライダー250について説明する。
スライダー250は、第1押圧部材241と第2押圧部材242側にそれぞれ配置されているが、上下にあるスライダー250,250は一体形成された部材である。このスライダー250は、レバー450を操作することにより、スライド方向SDに沿って直線往復移動可能である。
図7に示す第1状態では、スライダー250は第1押圧部材241を、第1方向Z1に沿って押している。これに対して、図8に示す第2状態では、スライダー250はスライド方向SDに沿ってY(+)方向に移動することから、第1ダイヤフラム221に代えて第2ダイヤフラム222が第2方向X2に沿って押し上げられている。このように、レバー450をスライド方向SDに沿って往復移動させることにより、第1押圧部材241と第2押圧部材242を介して第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222を交互に開閉させることができる。第1押圧部材241と第2押圧部材242およびスライダー250は、切り換え操作部399を構成している。
【0042】
このレバー450は、図3に示すキャリッジ5の上に設けているのが望ましい。そしてこのレバー450は、たとえば作業者がマニュアルで操作することができる。しかし、これに限らずスライダー250は、電磁ソレノイドなどを用いて、電気的にスライダーのスライド動作を行うようにしても良い。
【0043】
次に、上述した液体の切り換え装置200による液体の切り換え動作例について説明する。
図6において、たとえば記録ヘッド20のある1つのノズル開口列53は、図6の紙面において複数のノズル開口52を有している。まず、このノズル開口列53の複数のノズル開口52から、インクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBを噴射する場合について説明する。
この場合には、図7と図9に示すように、スライダー250は第1状態にあり、スライダー250は第1押圧部材241を第1方向Z1に沿って押圧している。これに対してスライダー250は第2押圧部材242を開放している。第1押圧部材241は、第1ダイヤフラム221の膜状部分260をバネ243の力に抗して第1方向Z1方向に押す。膜状部分260が第1方向Z1に押されることにより、作動軸224も第1方向Z1に沿って押されることから、反対側の膜状部分280は第1方向Z1に沿って連動して押される。したがって第1ダイヤフラム221の膜状部分260は、第1シール部261を用いて図9に示す中心孔223の一方側421を確実にシールすることができる。つまり、シール部261が中心孔223の第1周囲部分321に当接する。
これに対して、反対側の第2ダイヤフラム222の膜状部分は、第1方向Z1に押されて第2シール部281は離れているので、図9に示す中心孔223の他方側422は開いている。図10および図7の矢印Aは、この状態でインクが流れる場合の方向を示す。
【0044】
このことから、図6に示すインクカートリッジ11EのフォトブラックインクPBは、圧力調整部43Eと、本体210の第2流路部212と、そして図6と図11(B)インク導入孔291を通じて本体210の中心孔223に流れる。そして、フォトブラックインクPBは、中心孔223から通路230,231を通じて針部材61を介して図6のノズル開口列53のノズル開口52から噴射されることになる。
【0045】
次に、図6に示すフォトブラックインクPBからマットブラックインクMBに切り換える場合には、次のように行う。
図7のレバー450を操作してスライダー250をスライド方向SDにスライドさせることにより、レバー450は図8に示すように第2押圧部材242を第2方向Z2にバネ244の力に抗して押し上げるとともに第1押圧部材241を開放する。
【0046】
これによって、図7に示す第1状態とは逆に図8に示す第2状態では、第2ダイヤフラム222のシール部281(図9,図10)が中心孔223の第2周囲部分322に当接することで、膜状部分280は中心孔223の他方側422をシールする。
これに対して、第1ダイヤフラム221のシール部261は中心孔223の第1周囲部分321から離れることから、中心孔223の一方側421を開く(図10)。図8の矢印Bは、この状態でインクが流れる場合の方向を示す。
このようにして、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の開閉関係を逆にした状態で、図6に示すインクカートリッジ11DのマットブラックインクMBは、圧力調整部43Dと、本体210の第1流路部221と第1ダイヤフラム221の図6と図11(A)に示すインク導入孔271を通じて、中心孔223に送ることができる。
そして送られたマットブラックインクMBは、中心孔223と通路230,231を通じて針部材61を介して記録ヘッド20のノズル開口列53の各のズル開口52から噴射される。
逆にマットブラックインクMBを使用していて、次にフォトブラックインクPBに切り換える場合でも同様にして、第1ダイヤフラム221と第2ダイヤフラム222の開閉動作を変えることで異なる種類のインクの流路の切り換えを行うことができる。
【0047】
上述したように本発明の実施形態では、液体の切り換え装置200が、記録ヘッド20に近いところで、好ましくはキャリッジに搭載されていて、複数のインク流路を選択して切り換えることができる。つまり、インクの流路の切り換えによるインクの種類の切り換えがヘッドに近いところで行えるので、次のようなメリットがある。
【0048】
仮に、液体の切り換え装置がヘッド側ではなく複数のインクカートリッジ側に設けられている場合に、たとえばマットブラックインクからフォトブラックインクにインクの使用を交換する場合には、今まで使っていたマットブラックインクが流路の切り換え装置からヘッド側の間の長いチューブ内に残っていることから、この残っているチューブ内のマットブラックインクを強制的に吸引して排出しなければならない。前に使用したインクを排出しないと、次に使用するインクとの間で混色が生じてしまうからである。このように強制的に吸引することにより、インクの消費に無駄が生じる。
しかし本発明の実施形態では、液体の流路切り換え装置200は、記録ヘッドに近い側に配置されていることから、このようなインクの吸引量を減らしてインクの消費の削減を図ることができる。しかもこの液体の切り換え装置を用いることにより、同じノズル開口列53のノズル開口52から異なる種類のインクを確実にかつ容易に切り換えて吐出させることができる。
【0049】
本発明の実施形態では、液体切り換え装置がヘッドの付近に配置されていることから、液体の種類を切り換える際には、液体切り換え装置からヘッドの間で残っている液体のみを吸引して、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給することができる。このために、液体の種類の交換のための液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。液体切り換え装置が特にキャリッジに搭載されているので、ヘッドの付近において液体の切り換えを行うことができる。
【0050】
本発明の実施形態では、液体切り換え装置は、中心孔を有し、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成しているので、新たな種類の液体に切り換えてヘッド側に供給する際に、切り換え前の残留インクが少なく、切り換える新たなインクの流れによって残留インクが除去されるため、インクの液体の種類の交換のための液体の吸引量を低減して液体の消費の無駄を防ぎ、同じノズルから異なる種類の液体を確実に吐出させることができる。
【0051】
本発明の実施形態では、第1種類と第2種類の液体は、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを用いて、確実に供給を停止したり供給を行ったりすることができる。通路部における液体を通したり通さなかったりするのはダイヤフラムを用いているので、球を用いるのに比べてより確実に行うことができる。作動軸は、第1ダイヤフラムの閉じたり開いたりする動作を第2ダイヤフラムの開いたり閉じたりする動作として確実に機械的に伝えることができる。第1ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールしたり、第2ダイヤフラムが中心孔の周囲をシールする場合に、第1ダイヤフラムあるいは第2ダイヤフラムが中心孔の周囲に対して張り付いてしまう現象を防止することができる。
【0052】
本発明の実施形態では、スライダーを移動させるだけで、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを中心孔を開閉する方向に沿って第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉操作することができる。ヘッドのノズルが強い吸引力で吸引されて負圧になったとしても、開いている側のダイヤフラムが閉まらないように、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムを開閉させるためのスライダーの動作方向が、第1方向と第2方向に対してほぼ直交している。このために、本体内において強い振動や強い負圧が掛かっても、スライダーは、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムを、安定して開閉することができる。本体内に強い負圧が発生しても、閉じている側のダイヤフラムのシール部は安定して中心孔の周囲部分に密着して液密状態を保つことができる。
【0053】
本発明の実施形態では、各ダイヤフラムが強い負圧を受けて作動軸がわずかに移動したとしても、閉じている側のダイヤフラムが弾性変形してその作動軸のわずかな移動を吸収することができる。このために閉じている側のダイヤフラムのシール部における液密状態に影響を与えない。そしてさらに作動軸が大きく移動しようとしたとしてもダイヤフラムを加圧する押圧部材を介してスライダーに対して力が伝わるので、ダイヤフラムは大きく移動することができないことから、液密状態を保つことができる。
本発明の実施形態では、キャリッジにレバーを設けておくことにより、このレバーによりスライダーのスライド動作を確実に行うことができる。
【0054】
また本発明の実施形態では、異なる種類のインクとしてマットブラックインクとフォトブラックインクを例に挙げているが、これに限らず他の種類のインクの切り換えであっても勿論構わない。
図1に示すオフキャリッジ形のインクジェット式記録装置では、たとえば8つのインクカートリッジ11を備えている。しかしこれに限らず、2つないし7つあるいは9つ以上のインクカートリッジを備えるものであっても勿論構わない。
【0055】
本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタなどの画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイなどのカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどの液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置などにも適用できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
5・・・キャリッジ、10・・・インクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)、11A〜11H・・・インクカートリッジ(液体容器の一例)、20・・・記録ヘッド、40・・・液体供給経路部、43A〜43H・・・圧力調整部、200・・・液体の切り換え装置、210・・・本体、221・・・第1ダイヤフラム、222・・・第2ダイヤフラム、223・・・中心孔、224・・・作動軸、MB・・・マットブラックインク(第1種類の液体の一例)、PB・・・フォトブラックインク(第2種類の液体の一例)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記液体を貯留していて前記ヘッドへ前記液体を供給するための液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される複数種類の前記液体を選択して切り換えて、選択された種類の前記液体を前記ヘッドへ供給する液体の切り換え装置と、を有し、
前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体の切り換え装置は、
前記ヘッドの付近に保持された本体と、
前記本体内に配置されて第1種類の前記液体を通す第1通路部を開閉するための第1ダイヤフラムと、
前記本体内に配置されて第2種類の前記液体を通す第2通路部を開閉するための第2ダイヤフラムと、
前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムを操作して、前記第1通路部と前記第2通路部の一方を開き他方を閉じるために前記切り換えるための切り換え操作部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、
前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成していることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、
前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じており、
前記中心孔の中には作動軸が配置されており、前記作動軸の一端部は前記第1ダイヤフラム室に当接しており、前記作動軸の他端部は前記第2ダイヤフラム室に当接していることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記本体の前記中心孔の周囲であって、前記第1ダイヤフラムによりシールされる第1周囲部分と、前記第2ダイヤフラムによりシールされる第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記切り換え操作部は、
前記第1ダイヤフラムを前記中心孔側の一方側に押して前記中心孔をシールするための第1押圧部材と、
前記第2ダイヤフラムを前記中心孔の他方側に押して前記中心孔をシールするための第2押圧部材と、
スライド方向に移動することで、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを第1方向あるいは前記第1方向とは反対の第2方向に移動させるためのスライダーと、を有していて、前記第1方向と前記第2方向は前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムが前記中心孔を開閉する方向であることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記スライダーの前記スライド方向と、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材の前記第1方向と前記第2方向は、ほぼ直交していることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記第1ダイヤフラムは、前記第1周囲部分に密着するための第1シール部を有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2周囲部分に密着するための第2シール部を有し、
前記第1ダイヤフラムは、前記第1シール部を前記第1周囲部分に対して押し付けるバネを有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2シール部を前記第2周囲部分に対して押し付けるバネを有していることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記第1ダイヤフラムの前記第1シール部の内側と前記第2ダイヤフラムの前記第2シール部の内側は、膜状部分であることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記スライダーの前記スライド方向への移動を行うために、前記キャリッジはレバーを有していることを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
ヘッドのノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記液体を貯留していて前記ヘッドへ前記液体を供給するための液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給される複数種類の前記液体を選択して切り換えて、選択された種類の前記液体を前記ヘッドへ供給する液体の切り換え装置と、を有し、
前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドの付近に配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体の切り換え装置は、前記ヘッドを保持しているキャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体の切り換え装置は、
前記ヘッドの付近に保持された本体と、
前記本体内に配置されて第1種類の前記液体を通す第1通路部を開閉するための第1ダイヤフラムと、
前記本体内に配置されて第2種類の前記液体を通す第2通路部を開閉するための第2ダイヤフラムと、
前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムを操作して、前記第1通路部と前記第2通路部の一方を開き他方を閉じるために前記切り換えるための切り換え操作部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、
前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じて、その中心孔はヘッドへ連通するように流路を形成していることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記本体は、中心孔を有し、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムは、対向して配置されており、
前記第1ダイヤフラムの第1ダイヤフラム室と前記第2ダイヤフラムの第2ダイヤフラム室とは、前記中心孔により通じており、
前記中心孔の中には作動軸が配置されており、前記作動軸の一端部は前記第1ダイヤフラム室に当接しており、前記作動軸の他端部は前記第2ダイヤフラム室に当接していることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記本体の前記中心孔の周囲であって、前記第1ダイヤフラムによりシールされる第1周囲部分と、前記第2ダイヤフラムによりシールされる第2周囲部分には、溝または凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記切り換え操作部は、
前記第1ダイヤフラムを前記中心孔側の一方側に押して前記中心孔をシールするための第1押圧部材と、
前記第2ダイヤフラムを前記中心孔の他方側に押して前記中心孔をシールするための第2押圧部材と、
スライド方向に移動することで、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを第1方向あるいは前記第1方向とは反対の第2方向に移動させるためのスライダーと、を有していて、前記第1方向と前記第2方向は前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムが前記中心孔を開閉する方向であることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記スライダーの前記スライド方向と、前記第1押圧部材と前記第2押圧部材の前記第1方向と前記第2方向は、ほぼ直交していることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記第1ダイヤフラムは、前記第1周囲部分に密着するための第1シール部を有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2周囲部分に密着するための第2シール部を有し、
前記第1ダイヤフラムは、前記第1シール部を前記第1周囲部分に対して押し付けるバネを有し、前記第2ダイヤフラムは、前記第2シール部を前記第2周囲部分に対して押し付けるバネを有していることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記第1ダイヤフラムの前記第1シール部の内側と前記第2ダイヤフラムの前記第2シール部の内側は、膜状部分であることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記スライダーの前記スライド方向への移動を行うために、前記キャリッジはレバーを有していることを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−214968(P2010−214968A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153664(P2010−153664)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【分割の表示】特願2004−368872(P2004−368872)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【分割の表示】特願2004−368872(P2004−368872)の分割
【原出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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