説明

液体噴射装置

【課題】ノズル面に紙粉等の異物が付着することを防止し、信頼性の高い液体噴射を行うことができる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送装置8と、搬送装置8により搬送される記録媒体6にノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド2と、液体噴射ヘッド2のノズル形成面の少なくとも一部に当接し、且つ接地されてなるキャップ70と、を備えた液体噴射装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に記録を行う構成となっている。
【0003】
ところで、記録媒体は搬送時に噴射ヘッドのノズル面に接触する場合がある。このとき、ノズル面は、記録媒体と擦れることで帯電するおそれがある。また、記録媒体として一般的に用いられる記録紙は、記録紙の裁断面である縁部や表面に紙粉等の異物が付着している。記録媒体と噴射ヘッドが異なる電位に帯電した場合、帯電したノズル面に上記異物が付着することで吐出不良を招くおそれがある。
【0004】
これに対し、ノズル面下方への搬送途中の記録紙の表面を除電針部材により擦ることで異物を除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、記録紙を給送するためのプラテンに電圧を印加し、静電力を利用することで紙粉等の異物がノズル面に付着するのを防止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−220695号公報
【特許文献2】特開平10−147035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、静電ブラシと紙面との接触により紙粉がより発生し易くなる可能性があった。また、上記特許文献2に開示の技術は、給排紙速度が速い場合、従動ローラーの気流によって印字領域内に紙粉、異物が付着してしまうおそれがあり、信頼性に欠けるものであった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ノズル面に紙粉等の異物が付着することを防止し、信頼性の高い液体噴射を行うことができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、記録媒体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記記録媒体にノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのノズル形成面の少なくとも一部に当接し、且つ接地されてなるキャップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体噴射装置は、搬送中の記録媒体が接触することで帯電したノズル形成面をキャップにより接地させ、これによりノズル形成面を除電することができる。よって、例えば記録媒体として紙を用いた場合に発生する紙粉等の異物が帯電したノズル形成面に引き寄せられて付着することが防止される。よって、ノズル形成面に異物が付着することによる液体の噴射不良の発生が防止され、ノズルから液体を精度良く噴射できる信頼性の高い装置となる。
【0010】
また、上記液体噴射装置においては、前記キャップは、前記ノズル形成面に当接するとともに接地されてなる枠状の当接部を有しており、平面視した状態で前記ノズル形成面におけるノズル形成領域を囲むように、前記ノズル形成面に前記当接部を当接させるのが好ましい。
この構成によれば、ノズル形成領域を囲むように当接部がノズル形成面に当接するので、当接部を介してノズル形成領域の全域を良好に除電することができる。
【0011】
また、上記液体噴射装置においては、前記ノズル形成面は、一方向に沿って前記ノズルが配列されてなるノズル群を複数含み、前記当接部は、平面視した状態で前記ノズル群の各々が区画されるように前記ノズル形成面に当接する仕切り部分を有するのが好ましい。
この構成によれば、ノズル群を区画するように当接部がノズル形成面に当接するので、当接部を介してノズル形成領域の全域を良好に除電することができる。
【0012】
また、上記液体噴射装置においては、前記キャップは、前記液体を保持可能な液体保持部を有し且つ接地されてなるキャップ本体を含み、前記液体保持部に保持される前記液体を前記ノズル形成面に接触させ、当該液体を介して前記ノズル形成面と前記キャップ本体とを導通させるのが好ましい。
この構成によれば、液体保持部に保持される液体を介してノズル形成面とキャップ本体とを導通させ、ノズル形成面を除電することができる。
【0013】
また、上記液体噴射装置においては、前記液体噴射ヘッドは、フラッシング動作時に、前記ノズルから前記液体保持部に向けて前記液体を噴射するのが好ましい。
この構成によれば、フラッシング時にノズルから噴射される液体を用いて、ノズル形成面の除電を行うことができるので、廃液体を有効活用することができる。
【0014】
また、上記液体噴射装置においては、前記記録媒体が紙であるのが好ましい。
記録媒体として紙を用いると紙粉の発生を避けることができないが、本発明によれば上述のようにキャップを介してノズル形成面が接地されることで紙粉が付着することが防止される。よって、紙粉に起因した液体の噴射不良を防止することができる。
【0015】
また、上記液体噴射装置においては、前記キャップには、前記ノズルから前記液体を吸引して強制的に排出させる吸引手段が設けられるのが好ましい。
この構成によれば、クリーニング処理としての吸引動作を行うキャップとして兼用することができる。よって、装置の部品点数を少なくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンターを示す外観斜視図である。
【図2】記録ヘッドを示す要部断面図である。
【図3】プリンターの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】噴射面に異物が付着する状態を説明するための図である。
【図5】キャッピング機構の概略構成を示す断面図である。
【図6】キャッピング機構の変形例に係る構成を示す図である。
【図7】キャッピング機構の動作の変形例を説明する図である。
【図8】第2実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図である。
【図9】第3実施形態に係るキャッピング機構の構成を示す図である。
【図10】第3実施形態に係るキャッピング機構の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の液体噴射装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
以下、本発明の液体噴射装置の一実施形態として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタと称す)を例示する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明のプリンター(液体噴射装置)を示す外観斜視図である。プリンター(液体噴射装置)1は、流体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド(流体噴射ヘッド)2と、インクカートリッジ3とを保持するキャリッジ4を備えている。インクカートリッジ3は、記録ヘッド2から噴射されるインク(液体)貯留するものであり、キャリッジ4に対して着脱自在に取り付けられていれば良い。
【0019】
また、プリンター(液体噴射装置)1は、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙(記録媒体)6を搬送するためのプラテン5、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に沿って移動させるキャリッジ移動機構7、および記録紙6を紙送り方向に向けて搬送する紙送り機構(搬送装置)8を備えている。なお、ここで言う紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向:同図中X方向)である。また、紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向:同図中Y方向)である。
【0020】
本実施形態のプリンター1は、インクカートリッジ3から、例えば、マゼンタ、イエロー、シアンの各インクが記録ヘッド2に供給されるようになっている。なお、これ以外に、例えばホワイトやブラックなどのインクを更に備えていても良い。
【0021】
また、インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着する形態以外にも、例えば、プリンター1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2にインクを供給する形態であってもよい。
【0022】
キャリッジ4は、ガイドロッド9に対して移動自在に取り付けられている。このガイドロッド9は、主走査方向Xに沿って架設された支持部材を成す。そして、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向Xに沿って移動する。
【0023】
また、プリンター1には、リニアエンコーダ10が設けられている。このリニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向Xにおける位置を検出する。そして、検出された信号は、位置情報として制御部(図示せず)に送信される。後述する制御装置58は、このリニアエンコーダ10によって検出された位置情報に基づき、記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御する。
【0024】
記録ヘッド2の主走査方向Xに沿った移動範囲のうち、プラテン5の外側の領域には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャッピング機構11が設けられている。キャッピング機構11は、キャップ70によって記録ヘッド2のノズル開口形成面を封止し、インク溶媒の蒸発を防止する。このキャッピング機構11は、封止状態にある記録ヘッド2のノズル形成面に対して負圧を与え、インクを強制的に吸引排出するクリーニング動作等にも用いられる。
【0025】
本実施形態に係るキャッピング機構11のキャップ70は、記録ヘッド2におけるノズル形成面を除電するための接地手段として機能するようになっている。なお、キャッピング機構11の構成、作用は後ほど詳述する。
【0026】
そして、キャッピング機構11に隣接して、記録ヘッド2のノズルが形成された噴射面を払拭するワイパー部12が設けられている。このワイパー部12は、記録ヘッド2が主走査方向Xに沿ってプラテン5の領域からキャッピング機構11に向けて移動する際に、このワイパー部12を記録ヘッド2の噴射面全体に摺接させ、ノズルの開口周辺に付着したインクを払拭することができる。ワイパー部12は、例えばエラストマー等の可撓性を有する部材から構成されている。
【0027】
図2は、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を示す要部断面図である。
記録ヘッド2は、ヘッド本体48と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット42とを備えている。ノズル24は、ノズル基板21に形成されている。
【0028】
流路形成ユニット42は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合して一体にしたものである。また、こうした記録ヘッド2は、プリンター1が対象とする最大サイズの記録紙(記録媒体)の幅(最大記録紙幅)以上の長さに亘ってノズル24が多数配列された、所謂ラインヘッドとして使用しても良い。
【0029】
記録ヘッド2は、ヘッド本体48の内部に形成された収容空間63と、収容空間63に配置された駆動ユニット44とを備えている。駆動ユニット44は、複数の圧電素子65と、圧電素子65の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子65に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子65は、複数のノズル24のそれぞれに対応するように設けられている。
【0030】
また、記録ヘッド2は、ヘッド本体48の内部に形成され、インクカートリッジからインク供給チューブを介して供給されたインク(液体)が流れる内部流路68と、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を含む流路形成ユニット42によって形成され、内部流路68と接続された共通インク室29と、流路形成ユニット42によって形成され、共通インク室29と接続されたインク供給口40と、流路形成ユニット42によって形成され、インク供給口40と接続された圧力室41とを備えている。圧力室41は、複数のノズル24に対応するように複数設けられている。複数のノズル24のそれぞれは、複数の圧力室41のそれぞれに接続されている。
【0031】
ヘッド本体48は、例えば、合成樹脂で形成されていればよい。振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものであればよい。振動板19の圧力室41に対応する部分には、圧電素子65の下端と接合される島部42が形成されている。振動板19の少なくとも一部は、圧電素子65の駆動に応じて弾性変形する。振動板19と内部流路68の下端近傍との間にはコンプライアンス部43が形成されている。
【0032】
流路基板20は、内部流路68の下端とノズル24とを接続する共通インク室29、インク供給口40、及び圧力室41それぞれの空間を形成するための凹部を有する。流路基板20は、例えば、シリコンを異方性エッチングすることで得られる。
【0033】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル24を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の下面は、後述するように複数のノズル24の開口端が露呈した噴射面(ノズル形成面)23を構成している。また複数のノズル24は、所定の数毎に集合して配置されている(図6参照)。例えば、本実施形態では、ノズル群(ノズル領域)A,B,Cとして、所定の数ごとにまとめてノズル24が形成されている。こうしたノズル群A,B,Cからは、それぞれマゼンタ、イエロー、シアンの各インクが噴射されるようになっている。
【0034】
このように構成されたプリンター1は、インクを貯留するインク貯留部(流体貯留部)として、不図示のインクカートリッジを有し、このインクカートリッジからインク供給チューブを介して供給されたインクが図2に示した内部流路68の上端に流入するように構成されている。内部流路68の下端は、共通インク室29に接続されており、インクカートリッジからインク供給チューブ(不図示)を介して内部流路68の上端に流入したインクは、内部流路68を流れた後、共通インク室29に供給される。共通インク室29に供給されたインクは、インク供給口40を介して、複数の圧力室41のそれぞれに分配されるように供給される。
【0035】
ケーブル27を介して圧電素子65に駆動信号が入力されると、圧電素子65が伸縮する。そして、振動板19が圧力室41に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。これにより、圧力室41の容積が変化し、インクを収容した圧力室41の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル24から、インクが噴射(吐出)される。このように、圧電素子65は、ノズル24よりインクを噴射するために、入力される駆動信号に基づいて、ノズル24に接続された圧力室41の圧力を変動させる。
【0036】
図3は、上述したプリンター(液体噴射装置)の電気的な構成を示すブロック図である。
プリンター1は、プリンター1全体の動作を制御する制御装置58を備えている。この制御装置58には、プリンター1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、プリンター1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0037】
また、制御装置58には、キャリッジ移動機構7、紙送り機構8、キャッピング機構11等が接続されている。更に、制御装置58には、圧電素子65に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62が接続されている。
【0038】
ところで、上述したようなプリンター1では、紙送り機構8により給送される記録紙6が記録ヘッド2の噴射面23に接触する場合がある。このとき、記録紙6と噴射面23を含むノズル基板21とが擦れ合う際の摩擦によって噴射面23が帯電してしまう。すると、図4に示すように、記録紙6から出た紙粉Kが帯電した噴射面23に異物として付着してしまう。これにより、ノズル24からインクを良好に噴射できなくなるおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態に係るプリンター1は、上記キャッピング機構11のキャップ70を用いて記録ヘッド2の噴射面23を除電するようにしている。
図5は、本実施形態に係るキャッピング機構11の概略構成を示す断面図である。図5に示されるように、キャッピング機構11は、キャップ70と、ノズル24からインクを吸引することで強制的に排出させる吸引ポンプ74と、を備えている。
【0040】
キャップ70は、キャップ本体70aと、シール部材(当接部)71と、インク吸収体72とを備えている。キャップ本体70aは、例えばSUS等の導電性材料から構成されており、底面にチューブ75に対する接続部73が設けられている。また、接続部73には、フラッシング処理或いは吸引処理等のクリーニング動作によってキャップ本体70a内に噴射された廃インクを外部に排出するための開口部73aが形成されている。
【0041】
シール部材71は、平面視略矩形状をなすキャップ本体70aの内壁面及び底面を覆うとともにキャップ本体70aの上面から突出している。また、シール部材71は噴射面23に当接した際、ノズル群A,B,Cを全て区画可能な大きさを有している。なお、シール部材71はエラストマーにカーボンブラックを混入することで構成されており、導電性を有している。
【0042】
キャップ本体70aは、リード線32を介して、プリンター1のフレーム部1aに接続されている。なお、フレーム部1aは接地されている。すなわち、キャップ本体70aに当接するシール部材71は接地されたものとなっている。
【0043】
インク吸収体72は、インクを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等で形成されている。本実施形態においては、インク吸収体72はフェルトなどの不織布で形成されている。
【0044】
キャッピング機構11は、シール部材71を介してキャップ本体70aを噴射面23に密着させた状態で、吸引ポンプ74を駆動することで噴射面23とキャップ本体70aとの間に形成される空間を負圧にし、ノズル24内からインクを強制的に排出させるようになっている。ノズル24から排出されたインクは、キャップ本体70a内に設けられているインク吸収体72に吸収されるようになっている。
【0045】
また、本実施形態に係るキャッピング機構11のキャップ70は、ノズル24内のメニスカスを整えるためにインクを予備的に噴射するフラッシング処理時のインク受け部材としても利用することができる。
【0046】
このようなキャッピング機構11は、シール部材71を噴射面23に密着させることで噴射面23に帯電した電荷を除電することができる。具体的に、プリンター1がキャップ70のシール部材71を噴射面23に当接させると、導電性を有するシール部材71はキャップ本体70a及びリード線32を介してフレーム部1aと導通する。これにより、接地されたフレーム部1aを介し、帯電した噴射面23を除電することができる。
【0047】
本実施形態に係るプリンター1は、記録ヘッド2に対するクリーニングとして吸引動作を行う際、キャップ70(シール部材71)が噴射面23に当接することで該噴射面23を除電することができる。
【0048】
また、プリンター1は、例えば、記録ヘッド2におけるフラッシング処理時にインクの受け部材としてキャップ70を利用し、シール部材71を噴射面23に当接させることで噴射面23を除電することもできる。
【0049】
なお、本実施形態に係るプリンター1は、記録ヘッド2がクリーニングモードの場合のみならず、記録ヘッド2が記録紙6にインクを噴射するインク噴射モードの場合においても、噴射面23の除電を行うことができる。ここで、インク噴射モードとは、記録ヘッド2のノズル24から記録紙6に対してインクを噴射可能な状態を意味する。インク噴射モードおいて除電するタイミングとしては、例えば記録紙6に対する印字開始直前のタイミング、記録紙6に対する連続印字処理を行う途中のタイミング等がある。特に、多数枚の記録紙6を連続的に印字する場合、記録ヘッド2と記録紙6との接触頻度が高くなるため、噴射面23が帯電し易くなる。このような場合、記録紙の所定枚毎にキャップ70により噴射面23を除電するのが好ましい。これにより、噴射面23が帯電するのを確実に防止できるようにしている。
【0050】
また、プリンター1は、クリーニングとは別に、ノズル24における吐出精度を維持するために所定の印字枚数毎に定期的なフラッシング処理を行うようにしている。本実施形態に係るキャッピング機構11は、通常のクリーニングとして行われるフラッシング処理時とは別に、このような定期フラッシングのタイミングで噴射面23を除電するようにしている。
【0051】
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター1によれば、キャッピング機構11のキャップ70を用いて帯電した噴射面23を除電できるので、記録紙6から出た紙粉が静電力により異物として付着するのを防止することができる。よって、噴射面23に異物が付着することによるインクの噴射不良が防止され、ノズルから液体を精度良く噴射できる信頼性の高いプリンターを提供できる。また、本実施形態では、クリーニング手段として用いるキャッピング機構11のキャップ70を用いて噴射面23の除電を行うので、プリンター1の部品点数を少なくすることができ、プリンター1の小型化を図ることができる。
【0052】
本実施形態に係る記録ヘッド2の噴射面23は、図6に示すように、複数のノズル24が所定方向に配置されてなるノズル群A,B,Cを有している。これに対し、シール部材71に仕切り部分71aを形成することで、平面視した状態にてシール部材71が各ノズル群A,B,Cを区画するように噴射面23に当接させるようにしてもよい。このようにすれば、ノズル群A,B,Cをそれぞれ区画するようにシール部材71が噴射面23に当接するので、噴射面23の全域を良好に除電することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、噴射面23の除電を行う際、シール部材71の全部が噴射面23に当接させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7(a)、(b)に示すようにシール部材71の一部のみを噴射面23に当接させることで噴射面23を除電するようにしてもよい。このようにすれば、インク噴射モード中に除電を行う場合において、記録ヘッド2をホームポジション内に移動させる距離を最小限に抑えることができ、噴射面23の除電処理に要する時間を短くすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
続いて、プリンターの第2実施形態に係る構成について説明する。本実施形態と第1実施形態との違いはキャッピング機構の構成のみであり、それ以外の構成については同一である。以下の説明では、第1実施形態と同一構成及び同一部材については同じ符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0055】
図8は本実施形態に係るキャッピング機構111の構成を示す図である。図8に示すように、本実施形態のキャッピング機構111のキャップ170は、キャップ本体70aと、シール部材171と、導電性部材(当接部)172と、インク吸収体72とを備えている。
【0056】
シール部材171は、平面視略矩形状をなすキャップ本体70aの上面に枠状に形成されている。また、シール部材171は噴射面23に当接した際、ノズル群A,B,Cを全て区画可能な大きさを有している。なお、シール部材171はゴム等の弾性部材から構成されている。すなわち、本実施形態はシール部材171が絶縁性を有する点で第1実施形態に係る構成とは相違している。
【0057】
導電性部材172はキャップ本体70aの内壁面に沿って形成されており、キャップ本体70aの上面から突出した状態に形成されている。導電性部材172は、例えばエラストマーにカーボンブラックを混入することで導電性が付与された樹脂材料から構成されるものである。
【0058】
また、導電性部材172の上面は、シール部材171の上面と同じ高さとなっており、シール部材171が記録ヘッド2の噴射面23に当接すると、これに合わせて導電性部材172が噴射面23に接触するようになっている。
【0059】
なお、キャップ本体70aは、第1実施形態と同様、リード線32を介して、接地されたフレーム部1aに接続されている。これにより、キャップ本体70aに当接する導電性部材172は接地されたものとなっている。
【0060】
本実施形態に係るプリンター1においても、キャッピング機構111のキャップ170を噴射面23に当接させることで、シール部材171とともに導電性部材172を噴射面23に接触させることができ、これにより噴射面23を除電することができる。
【0061】
なお、本実施形態においても、導電性部材172に仕切り部を設け、導電性部材172が各ノズル群A,B,Cを区画するように噴射面23に当接させるようにしてもよい。または、導電性部材172の一部のみを噴射面23に当接させることで噴射面23を除電するようにしてもよい。
【0062】
(第3実施形態)
続いて、プリンターの第3実施形態に係る構成について説明する。本実施形態と上記第1、2実施形態との違いはキャッピング機構の構成のみであり、それ以外の構成については同一である。以下の説明では、上記実施形態と同一構成及び同一部材については同じ符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0063】
図9は本実施形態に係るキャッピング機構211の構成を示す図であり、図10はその動作を示すための図である。図9に示すように、本実施形態に係るキャッピング機構211のキャップ270は、導電性を有するキャップ本体270aと、シール部材171と、インク吸収体72とを備えている。
【0064】
シール部材171は、平面視略矩形状をなすキャップ本体270aの上面に枠状に形成されている。シール部材171は噴射面23に当接した際、ノズル群A,B,Cを全て区画可能な大きさを有しており、ゴム等の弾性を有する絶縁部材から構成されている。
【0065】
キャップ本体270aの上面には凹部271が形成されている。この凹部271はインクを保持可能な形状となっている。なお、凹部271の深さは、保持されるインクの上面がシール部材171の上面に対して同等若しくはそれ以上となるように設定されている。
【0066】
本実施形態では、後述するようにフラッシング動作時に記録ヘッド2のノズル24から凹部271内にインクを噴射し、これにより凹部271にインクが保持されるようになっている。また、キャップ本体270aは、上記実施形態と同様、リード線32を介して、接地されたフレーム部1aに接続されている。
【0067】
本実施形態に係るプリンター1においても、キャッピング機構211を用いることで噴射面23を除電可能となっている。本実施形態に係るキャッピング機構211は、インクを介して噴射面23とキャップ270とを導通させ、帯電した噴射面23を除電するようにしている。
【0068】
以下、本実施形態に係るキャッピング機構211の動作について説明する。まず、図10(a)、(b)に示すように、フラッシング処理を行う際、記録ヘッド2のノズル24からキャップ本体270aの凹部271内にインクを噴射する。これにより、凹部271内にはインクLが保持される。なお、凹部271に保持されるインクLの上面は少なくともシール部材171の上面の同等以上の高さとなっている。
【0069】
キャッピング機構211は、記録ヘッド2との位置合わせが終了すると、図10(c)に示すようにキャップ270を噴射面23に対して上昇させ、シール部材171を噴射面23に当接させる。このとき、凹部271内に保持されているインクLは噴射面23に濡れ広がる。よって、噴射面23は、インクLを介してキャップ本体270aと導通した状態となる。したがって、接地されたフレーム部1aを介して噴射面23に帯電した電荷を除電することができる。
【0070】
なお、本実施形態においても、平面視した状態で、キャップ本体270aの上面を格子状に形成し、キャップ本体270aの上面にシール部材171とともに形成される凹部271が各ノズル群A,B,Cを区画するように噴射面23に当接させるようにしてもよい。このようにすれば、ノズル群A,B,Cをそれぞれ区画するようにインクLが噴射面23に当接するので、噴射面23の全域を良好に除電することができる。または、凹部271の一部のみが平面視した状態で噴射面23に重なるように配置させることで噴射面23を除電するようにしてもよい。
【0071】
なお、上述の実施形態においては、液体噴射装置がインクジェットプリンタである場合を例にして説明したが、インクジェットプリンタに限られず、複写機及びファクシミリ等の記録装置であってもよい。
【0072】
また、上述の各実施形態においては、液体噴射装置が、インク等の液体(液状体)を噴射する場合を例にして説明したが、本発明は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に適用することができる。液体噴射装置が噴射可能な流体は、液体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体、流体として流して噴射できる固体、及び粉体(トナー等)を含む。
【0073】
また、本発明は上述のように記録ヘッド2の噴射面23を除電することができるため、埃やインク噴射時に発生するミストが噴射面に23に付着することでインクの噴射不良が発生することを防止できる。したがって、紙粉の付着が問題とならないような紙粉を発生しない記録媒体、例えばフィルムや液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する液体噴射装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…プリンター(液体噴射装置)、2…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、8…紙送り機構(搬送装置)、23…噴射面(ノズル形成面)、24…ノズル、70…キャップ、71…シール部材(当接部)、71a…仕切り部分、172…導電性部材(当接部)、270a…キャップ本体、271…凹部、A,B,C…ノズル群(ノズル形成領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記記録媒体にノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのノズル形成面の少なくとも一部に当接し、且つ接地されてなるキャップと、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記ノズル形成面に当接するとともに接地されてなる枠状の当接部を有しており、
平面視した状態で前記ノズル形成面におけるノズル形成領域を囲むように、前記ノズル形成面に前記当接部を当接させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ノズル形成面は、一方向に沿って前記ノズルが配列されてなるノズル群を複数含み、
前記当接部は、平面視した状態で前記ノズル群の各々が区画されるように前記ノズル形成面に当接する仕切り部分を有することを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップは、前記液体を保持可能な液体保持部を有し且つ接地されてなるキャップ本体を含み、前記液体保持部に保持される前記液体を前記ノズル形成面に接触させ、当該液体を介して前記ノズル形成面と前記キャップ本体とを導通させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記液体噴射ヘッドは、フラッシング動作時に、前記ノズルから前記液体保持部に向けて前記液体を噴射することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記記録媒体が紙であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記キャップには、前記ノズルから前記液体を吸引して強制的に排出させる吸引手段が設けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−161653(P2011−161653A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23466(P2010−23466)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】