説明

液体噴射装置

【課題】構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口3が穿設されたノズルプレート17と、上記ノズル開口3に連通する圧力発生室2ならびに上記圧力発生室2に連通する圧力発生室2以外の流路空間としてインク貯留室4が形成された流路形成板13と、上記流路形成板13に積層されて開口を封止する振動板11と、上記振動板11を振動させて圧力発生室2に圧力を発生させる撓み振動モードの圧電振動子6とを含むことにより、1枚の流路形成板13に、圧力発生室2とインク貯留室4とが形成されていることから、記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の振動によりノズル開口から液体滴を吐出させる液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子を用いた液体噴射装置(以下の説明では、インクジェット式記録ヘッドに適用した例を示し、「記録ヘッド」という)は、一般に、図13に示すように、上面に圧電振動子6が貼着され、上記圧電振動子6に対応する圧力発生室2が形成されたアクチュエータユニット1と、ノズル開口3およびインク貯留室4が形成され上記アクチュエータユニット1の下面に貼着された流路ユニット5とを備え、上記圧電振動子6の振動により圧力発生室2に圧力を発生させ、ノズル開口3からインク滴を吐出させるようになっている。
【0003】
上記アクチュエータユニット1は、圧力発生室2を形成する空間が形成された圧力発生室形成板10と、この圧力発生室形成板10の上面に位置して上記空間の上面開口を塞ぐ振動板11と、上記圧力発生室形成板10の下面に位置する連通穴形成板14とを備えている。この連通穴形成板14には、インク貯留室4と圧力発生室2を連通させる連通穴12と、圧力発生室2とノズル開口3を連通させる連通路8とが形成されている。
【0004】
上記アクチュエータユニット1には、その振動板11の上面に、共通の下部電極19が形成されている。そして、上記下部電極19の上面に、平板状の圧電振動子6が形成され、上記圧電振動子6の上面には、個別の上部電極20が形成されている。そして、上記下部電極19および上部電極20を介して圧電振動子6に駆動信号を入力するようになっている。
【0005】
一方、上記流路ユニット5は、インク貯留室4を形成する空間が形成されたインク貯留室形成板16と、ノズル開口3が穿設され、上記インク貯留室形成板16の下面に位置するノズルプレート17と、上記インク貯留室形成板16の上面に位置する供給口形成板18とから構成されている。上記インク貯留室形成板16には、圧力発生室2とノズル開口3を連通させる連通路8が形成されている。また、上記供給口形成板18には、インク貯留室4から連通穴12を介して圧力発生室2にインクを供給するインク供給口9が穿設されるとともに、圧力発生室2とノズル開口3を連通させる連通路8が形成されている。
【0006】
上記アクチュエータユニット1は、セラミックスから形成された振動板11,圧力発生室形成板10,連通穴形成板14が積層され、一体的に焼成されて形成されている。一方、上記流路ユニット5は、ステンレス鋼から形成された供給口形成板18,インク貯留室形成板16,ノズルプレート17が、接着剤層15を介して積層されている。そして、アクチュエータユニット1と流路ユニット5とは、接着剤層15を介して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−115179号公報
【特許文献2】特開2000−141642号公報
【特許文献3】特開2000−141648号公報
【特許文献4】特開平07−052406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記記録ヘッドでは、圧力発生室2,インク貯留室4,インク供給口9がそれぞれ圧力発生室形成板10,インク貯留室形成板16,供給口形成板18という別個のプレートに形成されている。このため、圧力発生室2とインク貯留室4ならびにノズル開口3を連通させるために複数のパーツを積層する必要があり、構造や製造工程が複雑化してコストアップの要因になっている。また、アクチュエータユニット1はセラミックス製で流路ユニット5はステンレス鋼製で、これらが接着剤で接合されているため、貼り合わせ部の熱収縮率や線膨張係数の相違により歪や剥離が発生するおそれがある。さらに、インクがステンレス鋼や接着剤と直接接触するため、例えば、ステンレス鋼に対してエッチング作用のあるインクや、接着剤を溶出させるようなインクを用いることができず、使用するインクの特性や、適用分野にどうしても制限があるのが実情である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる液体噴射装置の提供を第1の目的とし、流路の耐液体性を向上させて使用する液体の種類や適用分野に制限が少なくなる液体噴射装置の提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、上記ノズル開口に連通する圧力発生室ならびに上記圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間が形成された流路形成板と、上記流路形成板に積層されて開口を封止する振動板と、圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子とを含み、上記振動板,流路形成板,ノズルプレートがセラミックスから形成されていることを要旨とする。
また、本発明の液体噴射装置は、ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、上記ノズル開口に連通する圧力発生室ならびに上記圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間が形成された流路形成板と、上記流路形成板に積層されて開口を封止する振動板と、上記振動板を振動させて圧力発生室に圧力を発生させる撓み振動モードの圧電振動子とを含むことを要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明の液体噴射装置は、ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、上記ノズル開口に連通する圧力発生室ならびに上記圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間が形成された流路形成板とを含んでいる。このように、1枚の流路形成板に、圧力発生室と、圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間とが形成されていることから、従来に比べて記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、上記圧力発生室以外の流路空間が、圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留室である場合や、上記液体貯留室から圧力発生室に液体を供給する液体供給路およびノズル開口と圧力発生室を連通させる連通路が形成された液体供給路形成板を備えている場合には、1枚の流路形成板に圧力発生室と液体貯留室とが形成され、その分記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、上記液体供給路形成板と流路形成板との間に、液体供給路から圧力発生室に液体を供給する供給口ならびに液体供給路と液体貯留室とを連通させる連通穴が形成された供給口形成板が積層されている場合には、圧力発生室と液体供給路との間に液体供給口が存在することから、圧力発生室内の圧力変動が液体貯留室に伝わるのを緩和し、液体貯留室を介したクロストークが抑制される。
【0014】
本発明の液体噴射装置において、上記供給口形成板と液体供給路形成板双方もしくは液体供給路形成板の、液体貯留室に対応する部分に、液体貯留室の一部を構成する空間が形成されている場合には、供給口形成板や液体供給路形成板にも液体貯留室となる空間が設けられてスペースを有効活用することができ、液体貯留室の容量にも余裕ができて流路抵抗が低減されるとともに液体貯留室を介したクロストークも低減される。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、上記圧力発生室以外の流路空間が、圧力発生室に液体を供給する液体供給路である場合や、上記液体供給路を介して圧力発生室に供給する液体を貯留する液体貯留室が形成された液体貯留室形成板を備えている場合には、1枚の流路形成板に圧力発生室と液体供給路とが形成され、その分記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、上記流路形成板の液体貯留室に対応する部分に、液体貯留室の一部を構成する空間が形成されている場合には、流路形成板にも液体貯留室となる空間が設けられてスペースを有効活用することができ、液体貯留室の容量にも余裕ができて流路抵抗が低減されるとともに液体貯留室を介したクロストークも低減される。
【0017】
本発明の液体噴射装置において、上記振動板,流路形成板,ノズルプレートがセラミックスから形成されている場合には、液体と接触する流路がすべてセラミックスから形成されることとなり、流路の耐液体性が飛躍的に向上する。したがって、使用する液体の種類に制限を受けず、例えば、ステンレス鋼に対してエッチング作用のある液体や、接着剤を溶出させるような液体も使用でき、使用する液体の特性に制限がほとんどなくなる。また、流路の化学的安定性が向上して有機物の溶出等がなくなるため、例えば、食品分野や医療分野等にも使用できるようになり、適用分野の制限もほとんどなくなる。
【0018】
本発明の液体噴射装置において、上記流路形成板,振動板,ノズルプレートの積層体が、接着層を介さずに一体的に形成されている場合には、貼り合わせの作業が不要になるうえ、熱収縮率や線膨張係数の相違による歪の発生や剥離のおそれがない。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、上記流路形成板,振動板,ノズルプレートの積層体が、流路形成板,封止板,ノズルプレートにそれぞれ対応するセラミックス材料のグリーンシートが積層され焼成されて形成されている場合には、グリーンシートの積層体を焼成するセラミックス製品の製造に適している。
【0020】
本発明の液体噴射装置において、上記ノズルプレートにノズル開口が形成されておらず、上記流路形成板の圧力発生室に対応する空間の内周面に切欠き凹部が形成され、流路形成板,振動板,ノズルプレートにそれぞれ対応するセラミックス材料のグリーンシートが積層されたのち、上記切欠き凹部を外部と連通させてノズル開口を形成する場合には、記録ヘッドの端部にノズル開口が形成されたいわゆるエッジタイプの記録ヘッドを、セラミックスで比較的容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の液体噴射装置の一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】上記液体噴射装置の流路構造を示す説明図である。
【図3】上記液体噴射装置のA−A断面図である。
【図4】本発明の液体噴射装置の第2の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明の液体噴射装置の第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の液体噴射装置の第4の実施の形態の流路構造を示す説明図である。
【図7】上記液体噴射装置を示す断面図である。
【図8】本発明の液体噴射装置の第5の実施の形態を示す断面図である。
【図9】本発明の液体噴射装置の第6の実施の形態の流路構造を示す説明図である。
【図10】上記液体噴射装置を示す断面図である。
【図11】本発明の液体噴射装置の第7の実施の形態の流路構造を示す説明図である。
【図12】上記液体噴射装置を示すA−A断面図である。
【図13】従来の液体噴射装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0023】
図1〜図3は、本発明の液体噴射装置の一実施の形態を示す図である。この実施の形態では、本発明の液体噴射装置をインクジェット式記録ヘッドに適用した例を示している。この記録ヘッドは、複数のノズル開口3が穿設されたノズルプレート17と、上記ノズルプレートに連通する連通路8が穿設された供給路形成板21と、上記連通路8を介してノズル開口3と連通する圧力発生室2が形成された流路形成板13と、上記流路形成板13の上に積層された振動板11とを備えている。
【0024】
上記流路形成板13には、上記圧力発生室2以外に、上記各圧力発生室2に連通する流路空間として、圧力発生室2に供給されるインクを貯留するインク貯留室4が形成されている。また、上記供給路形成板21には、インク貯留室4のインクを圧力発生室2に供給するインク供給路7が各圧力発生室2に対応するよう設けられている。すなわち、上記流路形成板13において、各圧力発生室2とインク貯留室4とは連通しておらず、上記供給路形成板21に形成されたインク供給路7を介して圧力発生室2とインク貯留室4とが連通するようになっている。
上記圧力発生室2,インク貯留室4,インク供給路7に対応する空間は、流路形成板13もしくは供給路形成板21を上下に貫通している。
【0025】
この例では、ノズル開口3は2列のノズル列を形成するように列設されており、圧力発生室2も、上記ノズル列に対応するように2列に列設されている。そして、各圧力発生室2の列にそれぞれ共通のインク貯留室4が設けられている。
【0026】
一方、上記振動板11の上面には、櫛歯状の下部電極19が形成されている。この下部電極19の各櫛歯部19Aは、それぞれ圧力発生室2に対応する部分に形成されている。また、上記下部電極19の各櫛歯部19A上面に、それぞれ平板状の圧電振動子6が形成され、上記圧電振動子6の上面には、個別の上部電極20が形成されている。上記上部電極20および下部電極19を介して各圧電振動子6に駆動信号を印加するようになっている。
【0027】
そして、上記ノズルプレート17の上に供給路形成板21が積層され、この供給路形成板21の上に流路形成板13が積層され、上記流路形成板13上面の流路の開口を塞ぐように圧電振動子6,上部電極20および下部電極19が形成された振動板11が積層されている。
【0028】
上記記録ヘッドにおいて、圧電振動子6に駆動信号が印加されると、圧電振動子6が横方向に収縮する。このとき、圧電振動子6の振動板11に固定された下面側は収縮せず、上面側だけが収縮するため、圧電振動子6および振動板11が下方にたわみ、圧力発生室2を圧縮する。そして、圧力発生室2内の圧力上昇により、圧力発生室2内のインクがノズル開口3からインク滴として吐出され、記録紙等にドットが形成されて印刷が行われる。ついで、圧電振動子6が放電されて元の状態に戻ると、圧力発生室2内が減圧され、インク貯留室4からインク供給路7を通して圧力発生室2へ新しいインクが供給される。
【0029】
上記のような記録ヘッドは、例えば、つぎのようにしてつくることができる。すなわち、まず、セラミックスのグリーンシート成形体を準備し、上記グリーンシート成形体を打ち抜いて、ノズルプレート17,流路形成板13,供給路形成板21,振動板11に対応するパーツを形成する。このとき、インク貯留室4,圧力発生室2,インク供給路7,連通路8,ノズル開口3に対応する空間を打ち抜き等で形成しておく。
【0030】
そして、上記ノズルプレート17,供給路形成板21,流路形成板13,振動板11に対応するグリーンシート成形体を所定の順序で積層したのち焼成することにより、接着剤を介することなくセラミックスで一体的に形成された記録ヘッドを得ることができる。
【0031】
上記記録ヘッドを構成するセラミックス材料としては、特に限定するものではなく、各種の材料を用いることができる。例えば、炭化珪素,炭化チタン,炭化クロム,炭化ニオブ,炭化バナジウム,炭化ジルコニウム,炭化モリブデン,炭化ボロン等の各種炭化物、酸化ジルコニウム(ジルコニア),酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化珪素,酸化チタン,酸化ベリリウム等の各種酸化物、窒化アルミニウム,窒化珪素,窒化ベリリウム,窒化ボロン等の各種窒化物,ほう化ジルコニウム,ほう化クロム,ほう化チタン等の各種ほう化物、サイアロン等のような複合化合物等をあげることができる。これらは、単独でもしくは併せて用いられる。
【0032】
これらのなかでも、特に、機械的強度や靭性に優れるうえ耐食性にも優れるジルコニアが液体噴射装置用の材料として好適である。
【0033】
上記記録ヘッドでは、1枚の流路形成板13に圧力発生室2とインク貯留室4とが形成されていることから、その分記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。また、振動板11,流路形成板12,供給路形成板21,ノズルプレート17がセラミックスから形成され、インクと接触する流路がすべてセラミックスから形成されているため、流路の耐インク性が飛躍的に向上する。したがって、使用するインクの種類に制限を受けず、例えば、ステンレス鋼に対してエッチング作用のあるインクや、接着剤を溶出させるようなインクも使用でき、使用するインクの特性に制限がほとんどなくなる。また、流路の化学的安定性が向上して有機物の溶出等がなくなるため、例えば、食品分野や医療分野等にも使用できるようになり、適用分野の制限もほとんどなくなる。
【0034】
さらに、上記記録ヘッドでは、流路形成板13,振動板11,供給路形成板21,ノズルプレート17の積層体が、接着層を介さずに一体的に形成されている場合には、貼り合わせの作業が不要になるうえ、熱収縮率や線膨張係数の相違による歪の発生や剥離のおそれがない。さらに、積層構造であるため、セラミックスのグリーンシート成形体からの製造に適している。
【0035】
図4は、本発明の第2の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドでは、供給路形成板21のインク貯留室4と対応する部分に、インク貯留室4の一部を構成する空間22が形成されている。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0036】
この記録ヘッドでは、供給路形成板21にもインク貯留室4となる空間22が設けられてスペースを有効活用することができ、インク貯留室4の容量にも余裕ができて流路抵抗が低減されるとともにインク貯留室4を介したクロストークも低減される。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0037】
図5は、本発明の第3の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドでは、流路形成板13と供給路形成板21との間に、インク供給路7から圧力発生室2にインクを供給するインク供給口9と、インク貯留室4とインク供給路7とを連通させる連通穴12と、ノズル開口3と圧力発生室2とを連通させる連通路8とが形成された供給口形成板18が積層されている。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0038】
この記録ヘッドでは、圧力発生室2とインク供給路7との間にインク供給口9が存在することから、圧力発生室2内の圧力変動がインク貯留室4に伝わるのを緩和し、インク貯留室4を介したクロストークが抑制される。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0039】
図6および図7は、本発明の第4の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドは、供給路形成板21がなく、圧力発生室2に供給されるインクを貯留するインク貯留室4と、圧力発生室2とノズル開口3を連通させる連通路8とが形成されたインク貯留室形成板16を備えている。そして、流路形成板13に、圧力発生室2に連通する圧力発生室2以外の流路空間として、上記インク貯留室4のインクを圧力発生室2に供給するインク供給路7が形成されている。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0040】
この記録ヘッドでは、1枚の流路形成板13に圧力発生室2とインク供給路7とが形成されていることから、その分記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0041】
図8は、本発明の第5の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドは、基本的に上記第4の実施の形態の記録ヘッドと同様の構造である。そして、この記録ヘッドでは、流路形成板13のインク貯留室4と対応する部分に、インク貯留室4の一部を構成する空間22が形成されている。それ以外は、上記第4の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0042】
この記録ヘッドでは、流路形成板13にもインク貯留室4となる空間22が設けられてスペースを有効活用することができ、インク貯留室4の容量にも余裕ができて流路抵抗が低減されるとともにインク貯留室4を介したクロストークも低減される。それ以外は、上記第4の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0043】
図9および図10は、本発明の第6の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドは、基本的に上記第4の実施の形態の記録ヘッドと同様の構造である。そして、この記録ヘッドでは、流路形成板13のインク貯留室4と対応する部分に、インク貯留室4の一部を構成する空間22が各圧力発生室2に対応するよう設けられている。それ以外は、上記第4の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0044】
この記録ヘッドでは、流路形成板13にもインク貯留室4となる空間22が設けられてスペースを有効活用することができ、インク貯留室4の容量にも余裕ができて流路抵抗が低減されるとともにインク貯留室4を介したクロストークも低減される。それ以外は、上記第4の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0045】
図11および図12は、本発明の第7の実施の形態の液体噴射装置を示す。この記録ヘッドは、圧力発生室2の列が1列だけ形成され、ノズルプレート17にノズル開口3が形成されていない。また、上記流路形成板13の圧力発生室2に対応する空間のインク貯留室4と反対側の内周面に、切欠き凹部23が形成されている。そして、流路形成板13,供給路形成板21,振動板11,ノズルプレート17にそれぞれ対応するセラミックス材料のグリーンシートを積層したのち、上記積層体を、鎖線Bに沿って切断し、上記切欠き凹部23を外部と連通させてノズル開口を形成するようになっている。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0046】
この記録ヘッドでは、記録ヘッドの端部にノズル開口が形成されたいわゆるエッジタイプの記録ヘッドを、セラミックスで比較的容易に形成することができる。それ以外は、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0047】
なお、上記各実施の形態では、ノズルプレート17,流路形成板13,インク貯留室形成板16,供給路形成板21等の各プレートをそれぞれセラミックスから形成した例を示したが、これに限定するものではなく、上記各プレートをステンレス鋼,ニッケル,クロム,単結晶シリコン等の金属材料や、感光性ガラス材料等から形成することもできる。
【0048】
また、上記各実施の形態では、本発明の液体噴射装置を、インクジェット式記録ヘッドに適用した例をしめしたが、これに限定するものではなく、例えば、吐出する液体をガソリン等の燃料とし、内燃機関の燃料噴射装置として用いることもできる。さらに、透明基板上にマトリックス状に形成された透明電極の上に有機発光層を形成する表示体の、有機発光層の形成等にも応用することができる。このように、本発明の液体噴射装置では、噴射する液体として各種の液体を適用することができ、各種の産業分野に応用することが可能である。
【0049】
以上のように、本発明の液体噴射装置によれば、1枚の流路形成板に、圧力発生室と、圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間とが形成されていることから、従来に比べて記録ヘッドを構成するパーツが少なくなり、構造や製造工程が簡素化してコスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
2…圧力発生室、3…ノズル開口、4…インク貯留室、6…圧電振動子、11…振動板、13…流路形成板、17…ノズルプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口が穿設されたノズルプレートと、上記ノズル開口に連通する圧力発生室ならびに上記圧力発生室に連通する圧力発生室以外の流路空間が形成された流路形成板と、上記流路形成板に積層されて開口を封止する振動板と、圧力発生室に圧力を発生させる圧電振動子とを含み、上記振動板,流路形成板,ノズルプレートがセラミックスから形成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
上記圧力発生室以外の流路空間が、圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留室である請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
上記液体貯留室から圧力発生室に液体を供給する液体供給路およびノズル開口と圧力発生室を連通させる連通路が形成された液体供給路形成板を備えている請求項2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
上記液体供給路形成板と流路形成板との間に、液体供給路から圧力発生室に液体を供給する供給口ならびに液体供給路と液体貯留室とを連通させる連通穴が形成された供給口形成板が積層されている請求項3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体供給路形成板の、液体貯留室に対応する部分に、液体貯留室の一部を構成する空間が形成されている請求項3記載の液体噴射装置。
【請求項6】
上記圧力発生室以外の流路空間が、圧力発生室に液体を供給する液体供給路である請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項7】
上記液体供給路を介して圧力発生室に供給する液体を貯留する液体貯留室が形成された液体貯留室形成板を備えている請求項6記載の液体噴射装置。
【請求項8】
上記流路形成板の液体貯留室に対応する部分に、液体貯留室の一部を構成する空間が形成されている請求項7記載の液体噴射装置。
【請求項9】
上記流路形成板,振動板,ノズルプレートの積層体が、接着層を介さずに一体的に形成されている請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項10】
上記流路形成板,振動板,ノズルプレートの積層体が、流路形成板,封止板,ノズルプレートにそれぞれ対応するセラミックス材料のグリーンシートが積層され焼成されて形成されている請求項9記載の液体噴射装置。
【請求項11】
上記ノズルプレートにノズル開口が形成されておらず、上記流路形成板の圧力発生室に対応する空間の内周面に切欠き凹部が形成され、流路形成板,振動板,ノズルプレートにそれぞれ対応するセラミックス材料のグリーンシートが積層されたのち、上記切欠き凹部を外部と連通させてノズル開口を形成する請求項10記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−78952(P2013−78952A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274471(P2012−274471)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2010−243317(P2010−243317)の分割
【原出願日】平成12年7月19日(2000.7.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】