液体塗布用シート、液体塗布用シート製造装置
【課題】 床面の広い面積に均一で仕上がりよく液体を塗布すること。
【解決手段】 床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)と、前記液体保持シート(4)と床面との間に配置された表面シート(2)であって、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する前記表面シート(2)と、前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する保持フィルム(3)と、を備えた液体塗布用シート。
【解決手段】 床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)と、前記液体保持シート(4)と床面との間に配置された表面シート(2)であって、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する前記表面シート(2)と、前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する保持フィルム(3)と、を備えた液体塗布用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面にワックスや液体洗浄剤等の液体を塗布するための液体塗布用シートおよび前記液体塗布用シートの製造装置に関する。
本発明は、ユーザが把持する把持部とシート装着部とを有するモップ状部材に着脱可能な交換用の液体塗布用シートに好適に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅環境の変化に伴い、床面がフローリングの部屋が増加している。従来の日本家屋の板間は天然の一枚板を使用することが多かったが、フローリングでは接着剤を使用して多数の板が合わされた合板が採用されることが多くなっている。このような合板のフローリングでは、物が落下した時、家具類の移動、土砂等の持込による歩行等で合板が傷むこともある。
したがって、このようなフローリングの床面には、フローリングを保護するために床表面に皮膜形成する保護剤(ワックス)を塗ることが望ましい。
【0003】
従来、フローリングへのワックスの塗布作業は、容器に入った液体ワックスを適量だけ綿製の布等に染みこませて、ユーザがフローリングの上面にムラなく均一に塗り広げることが一般的である。
綿製の布等を使用して塗り広げる場合は、フローリング上面にワックスをムラなく均一に塗り広げることができるが、腰を屈めての作業となるため、重労働になるという問題がある。また、ワックス液の大部分を綿製の布等が吸込んでしまうために、フローリング上面に塗布されない無駄なワックス液が発生するという問題がある。
綿製の布等を使用する場合に対して作業性を改善するために、スプレーを使用して、液体ワックスをフローリング上面に吹き付けた後、モップ等の塗布具を使用して塗り広げることが行われている。しかし、この場合、一端フローリングに多めの溶液を吹き付けた後、拭き延ばすために、塗りムラができるという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するための下記の従来技術(J01),(J02)が公知である。
(J01)特許文献1(特開2004−223022号公報)記載の技術
特許文献1には、清掃具本体(60)の柄(20)の一端に清掃シート(10)が装着された清掃部(30)が支持され、柄(20)の中央部に液体洗浄剤ないし液体艶出し剤を供給するタンクを支持し、タンクから所定量の艶出し剤等を供給して、床面に均一に艶出し液を塗布する技術が記載されている。
【0005】
(J02)特許文献2(特開2004−105710号公報)記載の技術
特許文献2には、モップ状シート保持具(30)に、表面シート(22)とウェットシート(1)とを重ねて装着する技術が記載されている。特許文献2記載の技術では、前記ウェットシート(1)は、洗浄剤または艶出し剤を含浸させた液保持シート(12)と、液保持シート(12)を封入する液不透性のシート(11)とを有し、床面側の液不透性シート(11)には2つのスリット状の開口(13)が形成されている。前記特許文献2記載の技術では、モップ状シート保持具(30)を床面に沿って移動させることにより、液保持シート(12)の液を開口(13)から放出して、床面に所定量の洗浄液等を塗布している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−223022号公報
【特許文献2】特開2004−105710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(前記従来技術の問題点)
前記従来技術(J01)では、タンクを使用し、タンクから所定量の艶出し液を供給するため、装置が大がかりであり、コストも高く、家庭用としては採用しづらいという問題がある。
前記従来技術(J02)では、ウェットシートをモップ状保持具に装着する際に、ウェットシートの開口を封止するシールを剥がした後、表面シートに重ね合わせてモップ状保持具に装着する必要があり、作業が面倒であるという問題点がある。
一般に、液体を含浸したシートをモップ状保治具に装着して塗り広げる動作を行った場合、液体の含浸量が多い初期に大量の液体が塗布されてしまい、その後は液涸れの状態となりやすい。したがって、塗りムラが発生したり、所定の面積を塗ることができないという問題がある。特に、液体が含まれる表面シートと床面との摩擦抵抗は大きくなり易いため、ユーザが強い力でモップ状保持具を操作すると、液体が大量に出てしまうという問題もある。したがって、前記従来技術(J02)では、開口のサイズを調整することで液体の放出量を調整している。
【0008】
また、特許文献2には、開口を省略し、表面シートに直接ウェットシートを支持し、洗浄剤の放出を液徐放シートの通気度をコントロールすることで放出の程度をコントロールすることが記載されている。しかし、特許文献2の比較例3にあるように、開口を省略した場合には仕上がりが悪く、現実には開口を形成して液体の放出量を調整しなければ仕上がりをよくすることができない。特に、特許文献2のように、比較的太い繊維が粗に配置され、液が透過しやすいスパンボンド不織布を表面層に使用した場合、開口で流出量を調整しないと、ワックス液が一度に大量に出やすく、液体を広い面積に均一に塗布することが難しいという問題がある。その上、繊維が比較的太いので、塗布された液が泡立ち易く、仕上がりがムラなく均一になりにくいという問題がある。泡立ちを抑えるためにスパンボンド不織布の繊維径を細くすることが考えられるが、繊維径を細くするとコスト高になると共に、スパンボンド製法の限界からあまり細くすることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、前述の事情に鑑み、次の記載内容(O01),(O02)を技術的課題とする。
(O01)床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布すること。
(O02)床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明)
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の要素との対応を容易にするため、実施の形態の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施の形態の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施の形態に限定するためではない。
【0011】
(第1発明)
前記技術的課題を解決するために、第1発明の液体塗布用シートは、
床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)と、
前記液体保持シート(4)と床面との間に配置された表面シート(2)であって、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する前記表面シート(2)と、
前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(第1発明の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の液体塗布用シートでは、床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)は、固定シート(3)により前記表面シート(2)に固定される。液体保持シート(4)と床面との間に配置される表面シート(2)は、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する。
したがって、表面シート(2)のフィルタ層(2a)により床面に放出される液体の放出量が調整されるため、床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布することができる。
【0013】
(第1発明の形態1)
第1発明の形態1の液体塗布用シートは、前記第1発明において、
平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成された前記強度層(2b)と、
平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成された前記フィルタ層(2a)と、
を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態1の液体塗布用シートでは、前記強度層(2b)は平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成されている。前記フィルタ層(2a)は、平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成されている。したがって、床面に接触するフィルタ層(2a)の繊維径が細いので、塗布された液体の泡立ちを抑えることができ、ムラなく均一に塗布することができる。
【0014】
(第1発明の形態2)
第1発明の形態2の液体塗布用シートは、前記第1発明または第1発明の形態1において、
凹凸が形成された前記表面シート(2)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態2の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態2の液体塗布用シートでは、表面シート(2)に凹凸が形成されているので、床面との摩擦抵抗を低減することができ、床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させることができる。また、摩擦抵抗が低減されるので、作業中にユーザが強い力をかけることが少なくなるため、強い力が作用することにより液体保持シート(4)に保持された液体が大量に放出されることが防止される。
【0015】
(第1発明の形態3)
第1発明の形態3の液体塗布用シートは、前記第1発明の形態2において、
熱エンボス加工により前記表面シート(2)に凹凸が形成されると共に、前記熱エンボス加工により前記フィルタ層(2a)が圧縮されることを特徴とする。
(第1発明の形態3の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態3の液体塗布用シートでは、前記表面シート(2)に凹凸を形成する熱エンボス加工により前記フィルタ層(2a)が圧縮される。したがって、フィルタ層(2a)の繊維の密集度合いが高まり、透過する液体の量を調整するフィルタ効果を高めることができる。
【0016】
(第1発明の形態4)
第1発明の形態4の液体塗布用シートは、前記第1発明および第1発明の形態1〜3のいずれかにおいて、
坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シート(4)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態4の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態4の液体塗布用シートでは、坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成されている。したがって、床面に液体を塗布する作業を行う際に、作業の初期と終期とで放出される液体の量の差を低減することができる。この結果、広い面積に均一に液体を塗布することができる。
【0017】
(第1発明の形態5)
第1発明の形態5の液体塗布用シートは、前記第1発明の形態4において、
折り重ねた合計坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シート(4)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態5の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態5の液体塗布用シートでは、前記液体保持シート(4)が、合計坪量が120g/m2以上になるようにパルプ不織布が折り重ねられているので、折り重ねられた各層の間の界面で液が浸透しにくい。したがって、液体保持シート(4)に強い力が作用しても、液体が大量に放出されてしまうことを低減できる。
【0018】
(第2発明)
前記技術的課題を解決するために、第2発明の液体塗布用シート製造装置は、
不織布により構成されて強度を付与する強度層(2b)と前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層(2a)とを有する表面シート(2)を作成するための表面用長尺シート(61)、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シート(4)を作成するための液体保持用長尺シート(41)および前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)を作成するためのシート保持用長尺シート(31)が順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シート(31)と前記表面用長尺シート(61)とを熱融着させる熱融着装置(71)と、
前記熱融着装置(71)を通過した液体保持用長尺シート(41)に液体を吐出する液体吐出装置(83)と、
前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シート(1)を作成するシート裁断装置(D5)と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(第2発明の作用)
前記構成要件を備えた第2発明の液体塗布用シート製造装置では、熱融着装置(71)は、不織布により構成されて強度を付与する強度層(2b)と前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層(2a)とを有する表面シート(2)を作成するための表面用長尺シート(61)、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シート(4)を作成するための液体保持用長尺シート(41)および前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)を作成するためのシート保持用長尺シート(31)が順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シート(31)と前記表面用長尺シート(61)とを熱融着させる。液体吐出装置(83)は、前記熱融着装置(71)を通過した液体保持用長尺シート(41)に液体を吐出する。シート裁断装置(D5)は、前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シート(1)を作成する。
したがって、第2発明の液体塗布用シート製造装置は、床面の広い面積に均一で仕上がりよく液体を塗布することができる前記第1発明の液体塗布用シート(1)を製造することができる。
【0020】
(第2発明の形態1)
第2発明の形態1の液体塗布用シート製造装置は、前記第2発明において、
表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロール(67a,67b)と、前記エンボスロール(67a,67b)を加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロール(67a,67b)の対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シート(61)に熱エンボス加工を施す熱エンボス装置(67)、を備えたことを特徴とする。
(第2発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第2発明の形態1の液体塗布用シート製造装置では、熱エンボス装置(67)は、表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロール(67a,67b)と、前記エンボスロール(67a,67b)を加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロール(67a,67b)の対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シート(61)に熱エンボス加工を施す。
したがって、熱エンボス加工が施された液体塗布用シート(1)を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
前述の本発明は、下記の効果(E01),(E02)を奏する。
(E01)床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布することができる。
(E02)床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0023】
図1は本発明の実施の形態の液体塗布用シートをモップ状保持具に装着する前の状態の説明図である。
図2は本発明の実施の形態の液体塗布用シートがモップ状保持具に装着された状態の説明図である。
図1,図2において、本発明の液体塗布用シート1は、フローリング上面に接触する表面シート2を有する。前記表面シート2の上面には、表面シート2の前後方向(塗布時移動方向、X軸方向)の長さの半分程度の長さの固定シート3が配置されている。固定シート3のシート幅方向(左右方向、Y軸方向)両端部は表面シート2に熱融着されている。前記表面シート2と固定シート3の内部には、ワックス液が含浸された液体保持シート4が収容保持されている。
【0024】
前記液体塗布用シート1は、ユーザが操作するためのモップ状保持具11に装着される。前記モップ用保持具11は、前記固定シート3とほぼ同サイズのプレート状の保治具本体12を有する。保治具本体12には、ユーザが把持して操作する棒状の柄13がヒンジ連結されている。前記保治具本体12の四隅には、スリットが複数形成された弾性材料製のシート装着部14が形成されている。したがって、図2に示すように、前記固定シート3が保治具本体12の下面に当接するようにセットされた状態で、保治具本体12を包むように表面シート2の両端部をめくり、シート装着部14に押し込むことにより、液体塗布用シート1がモップ状保持具11に装着される。
【0025】
(液体保持シートの説明)
実施の形態の液体保持シート4は、保液量は乾燥状態の不織布との重量比で15倍以上(すなわち、吸水倍率が15倍以上)、より好適には17倍〜25倍の高吸水、高保液の不織布を使用することが望ましい。このような高吸水性の不織布としては、例えば、乾式パルプにより構成された不織布を使用することができる。不織布の坪量(目付)は、保液の効果を出すために、120g/m2以上の物を使用することができ、より好適には150g/m2以上のものを使用できる。なお、実施の形態の液体保持シート4は、含浸されたワックス液の不織布内部での移行をできる限り抑制させるために、坪量40g/m2〜60g/m2の不織布を2重、3重あるいは4重以上に折り重ねて、合計坪量が120g/m2以上としている。すなわち、1枚の液体保持シート4を使用した場合、ユーザが力をかけて操作すると、含浸された液体が一気に放出されやすいが、複数枚折り重ねることにより、力がかかってもシート間の界面で液体が移行しにくい(ブロック機能が作用する)ので、液体が一気に出てしまうことを防止できる。
【0026】
(表面シートの説明)
図3は実施の形態の表面シートの要部断面拡大図であり、図1のIII−III線断面図である。
図3において、実施の形態の表面シート2は、フローリング上面に接触する表面側のフィルタ層2aと、液体保持シート4側の強度層2bとを有する2層構造の不織布により構成されている。なお、前記フィルタ層2aと強度層2bとは接着剤により接着することも可能であるが、熱融着により接着することが好ましい。なお、表面シート2は少なくともフィルタ層2aと強度層2bの2層を備えればよく、3層以上とすることも可能である。
【0027】
前記フィルタ層2aは、繊維外径の平均が15μm以下、好適には3〜10μmの細い繊維で構成された不織布を使用可能である。このような不織布としては、例えば、ポリプロピレンやポリエステル、ナイロン等の合成樹脂を含むメルトブローン不織布が好適に使用可能である。前記メルトブローン不織布は、細い繊維が比較的密に配置された物を選択することが好ましく、坪量10〜30g/m2のものが好適であり、坪量20g/m2程度のものを使用することがさらに好適である。坪量が10g/m2より小さくなると強度が弱すぎ、坪量が30g/m2より大きくなるとコスト高になるためである。なお、メルトブローン不織布のコストが下がれば、坪量30g/m2以上のものを使用することも可能である。
前記強度層2bは、前記フィルタ層2aの繊維の平均繊維径よりも繊維外径の平均が15μm以上、より好適には20μm〜30μm程度の比較的太い繊維で構成された不織布を使用可能であり、例えば、スパンボンド不織布を好適に使用することができる。前記スパンボンド不織布として、太い繊維が比較的粗に配置された物を選択することが好ましく、坪量13〜30g/m2のものが好ましく、坪量25g/m2程度のものを使用することがさらに好ましい。坪量13g/m2より小さなスパンボンド不織布は製作が困難であり、30g/m2より大きくなると厚みが厚くなりすぎる。
【0028】
図3において、実施の形態の表面シート2は、平面シート状の表面シートに熱圧縮成形(立体エンボス加工)を施して、表面に規則的な凹凸が形成されている。実施の形態の表面シート2では、凹凸の隣り合う山どうしの間隔は7mm以下に設定されており、山と谷の高さは3mm以下に設定されている。間隔および高さが前記値よりも大きくなると、間隔が広くなりすぎたりするため、液の塗布面にスジが残るなど仕上がりが極端に悪くなるためである。
さらに、実施の形態では、熱エンボス加工する際に、フィルタ層2aの厚みが熱圧縮前の厚みに比べて圧縮されるように調整されている。この圧縮により、フィルタ層2aの体積当たりの繊維密度が高くなり、表面シート2を透過する液の透過量を調整することができる。したがって、フィルタ2aの液透過量を調整する際に、材料を変更するよりも同じ材料で圧縮度を調整することにより、容易に調整にすることができる。
【0029】
(固定シートの説明)
実施の形態の固定シート3は、表面シート2に液体保持シート4を固定するためのシートであり、実施の形態では液体保持シート4を故意に抜き取れないように構成されている。前記固定シート3は、任意の材料で作成可能であり、特に限定されることはないが、例えば、低目付(低坪量)で液体が透過可能なスパンボンド不織布や液体が透過不能なポリエステルフィルム等を採用することが可能である。これらの熱融着可能な材料を使用した場合、固定シート3と表面シート2とを熱融着することができる。なお、接着剤を使用して貼り合わせることも可能である。接着剤を使用する場合には、熱融着できない材料を使用することも可能である。
【0030】
したがって、前記構成を備えた実施の形態の液体塗布用シート1では、表面シート2が、平均繊維径の細い繊維が密に配置されたフィルタ層2aと、フィルタ層2aの繊維よりも平均繊維径が太い繊維が比較的粗に配置された強度層2bとを有するので、フィルタ層2aにより床面に塗布される液体の量が調整される。したがって、床面に液体を塗布する作業の初期に大量の液体が放出されることを防止でき、広い面積をムラなく均一に塗布することができる。
また、表面シート2の表面側に平均繊維径が細い繊維により構成されたフィルタ層2aが配置されているので、塗布される液体が泡立ってしまうことを低減できる。したがって、床面に塗布された液体に泡立ちが無く、仕上がりをムラなく均一にすることができる。
【0031】
さらに、実施の形態の液体塗布用シート1は、液体が含浸された液体保持シート4が最初から内包されており、液体塗布用シート1をモップ状保持具11に装着するだけで、容易に液体塗布(ワックスがけ)の作業ができる。したがって、表面シートと別体の液体保持シートを使用する場合に比べ、作業性を向上させることができる。
また、実施の形態の液体塗布用シート1では、表面シート2をフィルタ層2aと強度層2bとの2層構造とすることにより、フィルタ層の厚みを厚くすることなく表面シート2の強度を向上させることができる。したがって、実施の形態の液体塗布用シート1は、繊維径が細く高密度で高コストのフィルタ層の厚みを厚くして強度を持たせる場合に比べ、2層構造とすることでコストを低減することができ、且つシートの着脱が厚みによって難しくなることを避けることが出来る。
【0032】
さらに、表面シート2の表面に立体エンボス加工が施されているため、床面との摩擦抵抗を少なくすることができるため、ユーザが少ない力で操作することができる。したがって、塗布作業の作業性を向上させることができる。また、大きな力をかけなくても作業ができるので、液体保持シート4に大きな力がかかることが少なく、大きな力が作用することにより液体保持シート4から大量の液体が放出されてしまうことを低減できる。さらに、実施の形態の液体保持シート4は、複数枚折り重ねられているので、力がかかった場合でも、シート間の界面がブロック機能を有することにより大量の液体が放出されてしまうことを低減できる。したがって、液体を、広い面積に均一に塗布することができる。
【0033】
(液体塗布用シートの製造装置の説明)
図4は本発明の実施の形態の液体塗布用シートのシート製造装置の説明図である。
図4において、実施の形態のシート製造装置Dは、固定シート送り出し装置D1と、液体保持シート送り出し装置D2と、表面シート送り出し装置D3と、液体含浸装置D4と、シート裁断装置D5とを有する。
(固定シート送り出し装置D1)
前記固定シート送り出し装置D1は、裁断前の固定シート3がシート幅方向に繋がったシート保持用長尺シート31がロール状に巻き取られたシート保持用ロール32が2つ回転可能に支持されている。各シート保持用ロール32のシート保持用長尺シート31の一端部は、シート支持ロール33により支持され、自動切り替え装置34に導かれる。自動切り替え装置34は、2つの各シート保持用ロール32のいずれか一方からシート保持用長尺シート31を供給するように、供給する各シート保持用ロール32を切り替える。
【0034】
したがって、一方のシート保持用長尺シート31が無くなった時に、他方のシート保持用ロール32からシート保持用長尺シート31を供給して、無くなったシート保持用ロール32を交換することにより、連続してシート保持用長尺シート31の供給を行うことができ、生産効率が高まる。なお、切替方法は従来公知の構成を採用可能であるが、例えば、供給しない側のシート保持用長尺シート31を挟み込んでブレーキをかける構成や供給する側のシート保持用長尺シート31のみ送り出す構成が考えられる。
前記自動切り替え装置34のシート搬送方向下流側には複数のシート支持ロール36が配置され、フィードロール37により下流側(図4では右方向)に搬送される。フィードロール37により搬送されたシート保持用長尺シート31は、ダンサーロール(弛み除去装置)38により弛みを除去されて、センターリング装置(シート位置調整装置)39によりシートの位置が所定の位置に調整されて(蛇行を修正されて)下流側に搬送される。
【0035】
(液体保持シート送り出し装置D2)
前記液体保持シート送り出し装置D2は、裁断前の液体保持シート4がシート幅方向に繋がった液体保持用長尺シート41がロール状に巻き取られた液体保持用ロール42が、固定シート送り出し装置D1と同様に、2つ回転可能に支持されている。前記液体保持用ロール42の液体保持用長尺シート41の一端部は、固定シート送り出し装置D1と同様に、シート支持ロール43、自動切り替え装置44、シート支持ロール46を介して、センターリング装置47に搬送される。センターリング装置47でシートが所定の位置に位置が調整された液体保持用長尺シート41は、Z折り装置(シート折り畳み装置)48に搬送される。
【0036】
図5はZ折り装置の要部拡大説明図である。
図4,図5において、Z折り装置48は、折り位置ガイドバー48aとその下流側に配置された折り畳みロール48bとを2組有する。したがって、図5に示すように、折り位置ガイドバー48aと折り畳みロール48bとにより、液体保持用長尺シート41が折り畳まれる。図4において、本実施の形態のZ折り装置48は、2つの折り位置ガイドバー48aがそれぞれ液体保持用長尺シート41の一面側と他面側に配置されているので、液体保持用長尺シート41は、断面視Z字状に3重に折り畳まれる。そして、3重に折り畳まれた液体保持用長尺シート41は、フィードロール49で、前記センターリング装置39により位置が調整されたシート保持用長尺シート31と重ね合わされて下流側に搬送される。
図4において、重ね合わされたシート保持用長尺シート31および液体保持用長尺シート41は、ダンサーロール51で弛みが除去され、センターリング装置52によりシートの位置が所定の位置に調整されて下流側に搬送される。
【0037】
(表面シート送り出し装置D3)
前記表面シート送り出し装置D3は、裁断前の表面シート2がシート幅方向に繋がった表面用長尺シート61がロール状に巻き取られた表面用ロール62が、固定シート送り出し装置D1と同様に、2つ回転可能に支持されている。前記表面用ロール62の表面用長尺シート61の一端部は、固定シート送り出し装置D1と同様に、シート支持ロール63、自動切り替え装置64、シート支持ロール66を介して、熱エンボス装置67に搬送される。
【0038】
図6は熱エンボス装置の要部拡大説明図である。
図4,図6において、熱エンボス装置67は、表面に所定の凹凸のパターンが形成された一対のエンボスローラ67a、67bを有する。前記エンボスローラ67a、67bは、ヒータ(図示せず)により加熱される。前記エンボスローラ67a、67bの温度は、30℃〜90℃程度が好ましく、特に、70℃以下が好ましい。温度が高くなりすぎると表面用長尺シート61が溶けて液体が通過しにくくなるためである。
前記一対のエンボスローラ67a、67bは、凹凸が互いに嵌合する(いわゆる、オスとメスの関係)ように配置されており、図示しないエアシリンダにより所定の圧力で圧接されている。実施の形態の熱エンボス装置67では、エアシリンダにより5Kg程度の圧力が印加され、表面用長尺シート61の表面層2aが圧縮されるように設定されている。したがって、表面用長尺シート61が、一つのエンボスローラ67a、67bにより形成される圧接領域(ニップ領域)を通過すると、熱エンボス加工により凹凸(立体エンボス)が形成されると共に表面層2aが圧縮される。
【0039】
図4において、熱エンボス加工がされた表面用長尺シート61は、ダンサーロール68で弛みが除去され、センターリング装置69によりシートの位置が所定の位置に調整されて下流側に搬送される。
センターリング装置69から下流側に搬送された表面用長尺シート61は、熱シール装置(熱融着装置)71で、センターリング装置52により位置調整がされたシート保持用長尺シート31および液体保持用長尺シート41と、シート保持用長尺シート31、液体保持用長尺シート41、表面用長尺シート61の順になるように重ね合わされる。前記熱シール装置71には、シート保持用長尺シート31の幅方向両端部に沿って加熱部(図示せず)が配置されており、熱シート装置71を通過する際に、シート保持用長尺シート31の両端部が表面シート用長尺シート61に熱融着(熱シール)される。したがって、液体保持用長尺シート41が、表面シート用長尺シート61とシート保持用長尺シート31との間に封入された状態となる。
【0040】
(液体含浸装置D4)
熱シール装置71を通過した3枚重ねの長尺シート(31+41+61)は、液体含浸装置D4のフィードロール81により下流側のC折り装置(シート折り畳み装置)82に搬送される。C折り装置82は、前記Z折り装置48と同様の原理で長尺シートを折り畳む装置であり、一対の折り位置ガイドバー(図示せず)が、両方とも、3枚重ね長尺シートの一面側(上面側)に配置されている。なお、前記一対の折り位置ガイドバーは、シート保持用長尺シート31の両端部に対応する位置に配置されている。したがって、3枚重ねの長尺シートは断面視C字状(U字状)に折り畳まれる。
【0041】
図7は液体吐出装置の要部拡大図である。
図7において、前記C折り装置82によりC折りされた長尺シートは、液体吐出装置83に搬送される。液体吐出装置83は、液体を吐出する複数の液体吐出ノズル83aを有する。前記液体吐出装置83には、液体保持用長尺シート41に含浸させる液体(ワックス液や洗浄液等)が収容された液体タンク84から、図示しないポンプにより液体が供給される。
前記液体吐出ノズル83aは、下方を搬送されるC折りされた3枚重ねの長尺シート(31+41+61)の液体保持用長尺シート41に対応する位置に配置されている。したがって、前記液体吐出ノズル83aから吐出された液体は、表面用長尺シート61やシート保持用長尺シート31を透過して液体保持用長尺シート41に浸透し、含浸される。なお、含浸される液体の量は、長尺シートの通過速度と、液体吐出ノズル83aから吐出される液体の吐出量とにより調節できる。
なお、この実施の形態では、C折り装置82が含浸される液体により汚れるのを防止するために、先にC折りをしてから液体を含浸させたが、先に液体を含浸させてからC折りをすることも可能である。
【0042】
(シート裁断装置)
図8はシート裁断装置の要部拡大図である。
図4において、液体が含浸された3枚重ねの長尺シート(31+41+61)はシート裁断装置D5に搬送される。図4,図8において、シート裁断装置D5は、内部に排気ポンプを有し長尺シートを表面に吸引して搬送するバキューム式の回転ロール91を有する。前記回転ロール91に対向して、長尺シートを液体塗布用シート1にカット(裁断)する裁断刃92aが外方に突出して配置されたカッティングロール92が配置されている。前記回転ロール91には裁断刃92aを受ける刃受け溝91aが形成されている。前記回転ロール91とカッティングロール92の対向するカッティング位置の下流側には、バキューム式の第1排出ロール93および第2排出ロール94が対向して配置されており、各排出ロール93,94にはそれぞれバキューム式の搬送ベルト96,97が巻き付けられている。
【0043】
前記カッティングロール92で裁断されて作成された液体塗布用シート1は、前記第1排出ロール93または第2排出ロール94により搬送ベルト96,97表面に吸引保持されて、搬送ベルト96,97に吸引保持された状態で下流側に搬送される。なお、液体塗布用シート1は、前記第1排出ロール93または第2排出ロール94に交互に吸引保持される。前記搬送ベルト96,97のベルト回転方向下流側には、搬送ベルト96,97から液体塗布用シート1を離脱させて下方に落下させるシート取り出し装置98が配置されている。
前記シート取り出し装置98の下方には、落下した液体塗布用シート1を収容するシート収容容器99が配置されている。前記シート収容容器99は、所定の収容枚数(例えば5枚)が収容されると、図示しないアームによりベルトコンベア101上に押し出され、密閉フィルムや蓋が取り付けられて、出荷される。
【0044】
前記構成を備えた実施の形態のシート製造装置Dでは、固定シート送り出し装置D1、液体保持シート送り出し装置D2、および、表面シート送り出し装置D3からそれぞれ送り出された長尺シートが重ね合わされて、熱シール装置71で固定できる。そして、この状態で液体が含浸された後、裁断され、シート収容容器99に収容して、出荷できる。また、各送り出し装置D1〜D3では、各長尺シート31,41,61のロール32、42,62が2つずつ配置され、一方が無くなった時に他方に自動的に切り替えられるので、連続して液体塗布用シート1を作成することができ、生産性を高めることができる。また、2つの排出ロール93,94により、交互に保持されてシート取り出し装置98で落下させるため、1つだけで行う場合に比べ、生産性を高めることができる。
【0045】
(実験例)
(素材選定実験の説明)
図9は、表面シートの素材を選定する際の実験結果の一覧表である。
次に、塗布作業の作業性や仕上がり、液体の放出量に大きな影響がある表面シートの表面層の素材を選定する実験の結果を示す。
(素材選定実験例1)
素材選定実験例1は、平均繊維径が8μmのポリプロピレン(PP)繊維で構成された坪量が60g/m2のメルトブローン(MB)不織布を使用した。素材選定実験例1の不織布は、熱融着(熱エンボス)によりウェブ状に構成されたものを使用した。
(素材選定実験例2)
素材選定実験例2は、素材選定実験例1の不織布において、熱融着されていないものを使用した。
【0046】
(素材選定実験例3)
素材選定実験例3は、平均繊維径が3〜5μmのPP繊維で構成されたメルトブローン層(表層)と、平均繊維径が20〜30μmのPP繊維で構成されたスパンボンド層(裏層)とが熱融着された坪量80g/m2不織布を使用した。
(素材選定実験例4)
素材選定実験例4は、素材選定実験例3の不織布の表裏を逆にして使用した。
(素材選定実験例5)
素材選定実験例5は、平均繊維径が3〜5μmのPP繊維で構成されたメルトブローン層(表層)と、平均繊維径が20〜30μmのPP繊維で構成されたスパンボンド層(裏層)とが熱融着された坪量47.5g/m2不織布を使用した。
【0047】
(素材選定実験例6)
素材選定実験例6は、平均繊維径が30μmのPP繊維により構成された坪量250g/m2のトウ開繊法(バーストファイバー法)で作成された不織布を使用した。なお、素材選定実験例6の不織布は、熱融着されておらず、表面はカレンダー仕上げがされている。
(素材選定実験例7)
素材選定実験例7は、素材選定実験例6と同様の不織布の裏面(カレンダー仕上げがされていない面)を使用した。
(素材選定実験例8)
素材選定実験例8は、10〜15μmのPP繊維で構成された坪量30g/m2の極細スパンボンド(SB)不織布を使用した。素材選定実験例8の不織布は、熱融着されていない。
【0048】
(素材選定実験例9)
素材選定実験例9は、14〜15μmのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維で構成された坪量50g/m2の極細スパンボンド不織布を使用した。素材選定実験例9の不織布は、熱融着されていない。
(素材選定実験例10)
素材選定実験例10は、平均繊維径15.7μmのナイロン繊維で構成された坪量50g/m2のスパンボンド不織布を使用した。素材選定実験例10の不織布は、熱融着されていない。
【0049】
前記各素材選定実験例1〜10の不織布にワックス液(株式会社リンレイ製)を浸透させてフローリングに液体を塗布する実験を行った。実験は、各素材選定実験例1〜15の不織布を、移動方向に垂直な幅方向の長さを25cmとし、市販のモップ状保持具(塗布具)に装着してフローリング板状を移動させた。前記フローリング板は、市販の30cm×180cmのフローリング板上を使用した。このときのフローリング板上に塗布された液体の仕上がり状態(泡立ちの有無)と、移動させる際に必要な力(滑り性能)との目視による観察結果を図9に示す。
図9の実験結果からわかるように、実験例1〜3、5、8〜10のような平均繊維径が15μm以下の繊維では、泡立ちが抑えられ、仕上がりが良くなることがわかる。また、実験例1,3〜5のような熱融着等の表面加工が施されている不織布の方が滑り性能が向上し、弱い力で不織布を移動させることができることがわかる。ただし、前記実験例8〜10のような極細繊維のスパンボンド不織布はコストが高く、技術的にこれ以上繊維径を細くすることが困難であるという問題がある。
【0050】
(フィルタ性能の実験)
図10は表面シートの素材と液体の吐出量との実験結果の一覧表である。
図11はフィルタ実験例1,2および14の実験結果の説明図であり、図11Aは実験結果の一覧表、図11Bは図11Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
(フィルタ実験例1)
フィルタ実験例1は、坪量が60g/m2で、レーヨン:PET(ポリエチレンテレフタレート):PP(芯)/PE(ポリエチレン、鞘)が重量割合で6:3:1のスパンレース(SL)不織布を使用した。フィルタ実験例1の不織布は、表面に、長尺方向(図1のY軸方向)が3.3mm間隔、短尺方向(図1のX軸方向)が4.3mm間隔で山の高さが1.5mmの凹凸(立体エンボス)が形成されている。なお、フィルタ実験例1の立体エンボスは、断面視V字形の谷が上記間隔で形成され、谷の上端どうしの間は平面(平らな山頂)が形成されるパターンで構成されている。
【0051】
(フィルタ実験例2)
フィルタ実験例2は、フィルタ実験例1と同様の不織布を使用している。表面に形成された立体エンボスは、断面視正弦波形状(図3参照)の凹凸により構成され、凹凸の間隔および凹凸の高さはフィルタ実験例1と同様に設定されている。
(フィルタ実験例3)
フィルタ実験例3は、坪量が55g/m2で、レーヨン:PET(ポリエチレンテレフタレート):PP(ポリプロピレン、芯)/PE(ポリエチレン、鞘)が重量割合で6:1:3のスパンレース不織布を使用した。フィルタ実験例3の不織布は、フィルタ実験例2と同様の立体エンボスが施されている。
(フィルタ実験例4)
フィルタ実験例4は、平均繊維径が3μmのPP繊維で構成された坪量が50g/m2のメルトブローン不織布を使用した。フィルタ実験例4の不織布は、フィルタ実験例2と同様の立体エンボスが施されている。
【0052】
前記各フィルタ実験例1〜4および素材選定実験例1〜5の表面シート2と、ワックス液(株式会社リンレイ製)を75g程度含浸させた坪量150g/m2のパルプ不織布により構成された液体保持シート4と、メルトブローン不織布により構成された固定シートとを有する液体塗布用シート1を使用して、フローリングに液体を塗布する実験を行った。実験は、素材選定実験と同様に、不織布の移動方向に垂直な幅方向の長さを25cmとし、市販のモップ状保持具に装着してフローリング板状を移動させた。前記フローリング板は、市販の30cm×180cmのフローリング板上を使用し、フローリング板上を1回移動させる度にふき取り、合計4回を1セットとして、最大7セット実験を行った。すなわち、1セットで塗布される面積は、25cm×4回×180cmであり、1.1畳分(1畳は90cm×180cm)として実験を行った。このとき、フローリング板上に塗布された液体の仕上がり状態(泡立ちの有無)と、移動させる際に必要な力(滑り性能)と、1セット終了毎に計量した重量と、そのセットで吐出されたワックス液の量(図10の括弧付きの数値)を図10に示す。
【0053】
図10、図11に示すように、各実験例において、吐出量は1セット目が最も多く、セット数を重ねる毎に減っていくことがわかる。このとき、素材選定実験例3〜5(比較例)は、5セット目ですでに1セットでの吐出量が3g以下となっており、塗布されるワックスの量が不足していることがわかる。すなわち、立体エンボスが施されていないため、広い面積に均一にワックス液を塗布できないことがわかる。一方、図10に示す実験結果から、スパンレース不織布(実験例3〜5)では、レーヨンの吸水、膨潤効果により十分なフィルタ効果が得られている。しかし、スパンレース不織布では、ワックス液を含浸すると柔らかくなり、モップ状保持具に装着する際に装着しにくくなると共に、強度が低下するという問題がある。
また、同じメルトブローン不織布でも、エンボスが施されていない場合(素材選定実験例1,2、〜9)では、抵抗が大きくなり、最初の数セットで放出される液体の量が多くなりすぎる傾向がわかる。したがって、表面シート2の表面層は、立体エンボスを施したメルトブローン不織布が好ましく、さらには、平均繊維径が細いメルトブローン不織布が最も好ましいことがわかった。
【0054】
(表面シートの層構成の実験)
図12は、表面シートの層構成と液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図12Aは一覧表、図12Bは図12Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、2層構造の表面シートと、素材選定実験例1の1層構造の表面シートとを対比する実験を行った。
(実施例1)
実施例1の表面シートは、平均繊維径が3μm(〜5μm(最大))のPP繊維により構成された坪量20g/m2、厚み150μmのメルトブローン不織布(フィルタ層2a)と、繊維径が25μm〜30μmのPP繊維により構成された坪量25g/m2、厚み240μmスパンボンド不織布(強度層2b)とが熱融着された複合不織布に、前記フィルタ実験例4と同様の立体エンボス加工を施したものを使用した。また、実施例1では、液体保持シート4は坪量160g/m2のパルプ不織布を使用した。
(実施例2)
実施例2の表面シートは、平均繊維径が3μm(〜5μm(最大))のPP繊維により構成された坪量20g/m2、厚み150μmのメルトブローン不織布(フィルタ層2a)と、繊維径が25μm〜30μmのPP繊維により構成された坪量25g/m2、厚み240μmスパンボンド不織布(強度層2b)とが熱融着された複合不織布に、実施例1と同様の立体エンボス加工を施したものを使用した。なお、実施例2の表面シートはエンボス加工の温度を実施例1よりも高く設定した。また、実施例2では、液体保持シート4は坪量150g/m2のパルプ不織布を使用した。
【0055】
前記実施例1,2の表面シートを使用して、前記図10の場合と同様の実験を行った。但し、今回は、最初に含浸させるワックス液の量が55gまたは80g程度として実験を行った。その結果を図12に示す。
図12の実験結果からわかるように、実施例1,2では、フィルタ層2aと強度層2bとの2層構造の表面シートでは、ワックス液のフィルタ効果が十分あり、5セット目(5.5畳分)でも十分な量(3g以上)のワックス液を塗布できている。特に、実施例2で80g程度のワックス液を含浸させた場合には、7セット目(7.8畳)でも十分な量のワックス液を塗布できる。
したがって、前記フィルタ実験例4のメルトブローン不織布のみでは、強度が不足する恐れがあったが、強度層2bを設けることにより、同様の滑り性能、泡立ちおよびフィルタ効果を有し、強度が高い表面シート2を作成できる。また、メルトブローン不織布に比べ低コストのスパンボンド不織布を強度層として使用するので、コストを抑えることができる。
【0056】
(液体保持シートの比較実験)
図13は液体保持シートの構成と、50g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図13Aは実験結果の一覧表、図13Bは図13Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
図14は液体保持シートの構成と、80g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図14Aは実験結果の一覧表、図14Bは図14Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、液体保持シート4の構成と、吐出量との実験結果を説明する。
【0057】
(実施例3)
実施例3の液体保持シートは、坪量60g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量180g/m2としたものを使用した。実施例3では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例4)
実施例4の液体保持シートは、坪量40g/m2のパルプ不織布を4枚重ねて、合計坪量160g/m2としたものを使用した。実施例4では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例5)
実施例5の液体保持シートは、坪量50g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量150g/m2としたものを使用した。実施例5では表面シートとして実施例2の表面シートを使用した。
【0058】
(実施例6)
実施例6の液体保持シートは、坪量70g/m2のパルプ不織布を2枚重ねて、合計坪量140g/m2としたものを使用した。実施例6では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例7)
実施例7の液体保持シートは、坪量40g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量120g/m2としたものを使用した。実施例7では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
【0059】
次に、各実施例3〜7の液体保持シート4および表面シート2を使用して、図10で使用した固定シート3を有する液体塗布用シート1をモップ状保持具に装着して、図10と同様にフローリング上にワックス液を塗布する実験を行った。各液体保持シートに55g程度のワックス液を含浸させた場合の実験結果を図13に示し、80g程度のワックス液を含浸させた場合の実験結果を図14に示す。
図13、図14に示すように、合計坪量が多くなるにつれて、1セット目とそれ以降のセットとの吐出量の差の割合が小さくなり、合計坪量が150g/m2以上になるとその効果が特に顕著になる。したがって、合計坪量が150g/m2より大きい液体保持シートを採用することにより、吐出量を均一にしやすくなり、広い面積にワックス液を塗布する際に、吐出量を均一に近くすることができる。
【0060】
(液体塗布用シートの比較実験の説明)
図15は実施例1の液体塗布用シートと市販の商品とを比較した実験結果の説明図であり、図15Aは実験結果の一覧表、図15Bは図15Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、前記実施例1の液体塗布用シート1と、市販品である比較例1(株式会社花王製、クイックルワイパー ワックスコートシート)との比較実験の説明を行う。実施例1の液体塗布用シート1に50g程度のワックス液を含浸させた状態で、前記図10で説明した場合と同様に、フローリング板上にワックスを塗布する実験を行った。その結果を図15に示す。
【0061】
図15において、比較例1では、4セット目(4.4畳)までしか十分(3g程度)ワックスを塗布することができなかった。一方、実施例1では、6セット目(6.6畳)まで十分ワックスを塗布することができた。また、図15Bに示すように、比較例1では塗布作業の初期に多くのワックスが吐出され、その後、急激に吐出量が減ってしまうが、実施例1の場合、ワックスの吐出量の変化が小さく、広い面積に均一に塗布することができる。
【0062】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、前記実施例において、液体塗布用シートは、モップ状保持具に装着されたが、ハンドワイパー等の任意の保治具に装着することが可能である。
また、液体塗布用シートに含浸させる液体は、ワックス液に限定されず、洗浄液や消毒液、除菌液、艶出し剤、コーティング剤、塗料、接着剤等の床面、壁面、ガラス面等の建築物や自動車、機械類等の素材の表面に塗布可能な任意の液体とすることが可能である。
さらに、前記実施例において、液体吐出装置83はノズルを使用して液体を吐出して液体保持シート4に液体を含浸させたが、この構成に限定されず、噴霧器で液体を噴霧して含浸させたり、液体が流れるパイプに穴を形成して滴下して含浸させる等任意の構成を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の実施の形態の液体塗布用シートをモップ状保持具に装着する前の状態の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態の液体塗布用シートがモップ状保持具に装着された状態の説明図である。
【図3】図3は実施の形態の表面シートの要部断面拡大図であり、図1のIII−III線断面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態の液体塗布用シートのシート製造装置の説明図である。
【図5】図5はZ折り装置の要部拡大説明図である。
【図6】図6は熱エンボス装置の要部拡大説明図である。
【図7】図7は液体吐出装置の要部拡大図である。
【図8】図8はシート裁断装置の要部拡大図である。
【図9】図9は、表面シートの素材を選定する際の実験結果の一覧表である。
【図10】図10は表面シートの素材と液体の吐出量との実験結果の一覧表である。
【図11】図11は素材選定実験例1,2,6の実験結果の説明図であり、図11Aは実験結果の一覧表、図11Bは図11Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図12】図12は、表面シートの層構成と液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図12Aは一覧表、図12Bは図12Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図13】図13は液体保持シートの構成と、50g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図13Aは実験結果の一覧表、図13Bは図13Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図14】図14は液体保持シートの構成と、80g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図14Aは実験結果の一覧表、図14Bは図14Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図15】図15は実施例1の液体塗布用シートと市販の商品とを比較した実験結果の説明図であり、図15Aは実験結果の一覧表、図15Bは図15Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【符号の説明】
【0064】
2…表面シート、
2b…強度層、
2a…フィルタ層、
3…保持フィルム、
4…液体保持シート、
31…シート保持用長尺シート、
41…液体保持用長尺シート、
61…表面用長尺シート、
67…熱エンボス装置、
67a,67b…エンボスロール、
71…熱融着装置、
83…液体吐出装置、
D5…シート裁断装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面にワックスや液体洗浄剤等の液体を塗布するための液体塗布用シートおよび前記液体塗布用シートの製造装置に関する。
本発明は、ユーザが把持する把持部とシート装着部とを有するモップ状部材に着脱可能な交換用の液体塗布用シートに好適に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅環境の変化に伴い、床面がフローリングの部屋が増加している。従来の日本家屋の板間は天然の一枚板を使用することが多かったが、フローリングでは接着剤を使用して多数の板が合わされた合板が採用されることが多くなっている。このような合板のフローリングでは、物が落下した時、家具類の移動、土砂等の持込による歩行等で合板が傷むこともある。
したがって、このようなフローリングの床面には、フローリングを保護するために床表面に皮膜形成する保護剤(ワックス)を塗ることが望ましい。
【0003】
従来、フローリングへのワックスの塗布作業は、容器に入った液体ワックスを適量だけ綿製の布等に染みこませて、ユーザがフローリングの上面にムラなく均一に塗り広げることが一般的である。
綿製の布等を使用して塗り広げる場合は、フローリング上面にワックスをムラなく均一に塗り広げることができるが、腰を屈めての作業となるため、重労働になるという問題がある。また、ワックス液の大部分を綿製の布等が吸込んでしまうために、フローリング上面に塗布されない無駄なワックス液が発生するという問題がある。
綿製の布等を使用する場合に対して作業性を改善するために、スプレーを使用して、液体ワックスをフローリング上面に吹き付けた後、モップ等の塗布具を使用して塗り広げることが行われている。しかし、この場合、一端フローリングに多めの溶液を吹き付けた後、拭き延ばすために、塗りムラができるという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するための下記の従来技術(J01),(J02)が公知である。
(J01)特許文献1(特開2004−223022号公報)記載の技術
特許文献1には、清掃具本体(60)の柄(20)の一端に清掃シート(10)が装着された清掃部(30)が支持され、柄(20)の中央部に液体洗浄剤ないし液体艶出し剤を供給するタンクを支持し、タンクから所定量の艶出し剤等を供給して、床面に均一に艶出し液を塗布する技術が記載されている。
【0005】
(J02)特許文献2(特開2004−105710号公報)記載の技術
特許文献2には、モップ状シート保持具(30)に、表面シート(22)とウェットシート(1)とを重ねて装着する技術が記載されている。特許文献2記載の技術では、前記ウェットシート(1)は、洗浄剤または艶出し剤を含浸させた液保持シート(12)と、液保持シート(12)を封入する液不透性のシート(11)とを有し、床面側の液不透性シート(11)には2つのスリット状の開口(13)が形成されている。前記特許文献2記載の技術では、モップ状シート保持具(30)を床面に沿って移動させることにより、液保持シート(12)の液を開口(13)から放出して、床面に所定量の洗浄液等を塗布している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−223022号公報
【特許文献2】特開2004−105710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(前記従来技術の問題点)
前記従来技術(J01)では、タンクを使用し、タンクから所定量の艶出し液を供給するため、装置が大がかりであり、コストも高く、家庭用としては採用しづらいという問題がある。
前記従来技術(J02)では、ウェットシートをモップ状保持具に装着する際に、ウェットシートの開口を封止するシールを剥がした後、表面シートに重ね合わせてモップ状保持具に装着する必要があり、作業が面倒であるという問題点がある。
一般に、液体を含浸したシートをモップ状保治具に装着して塗り広げる動作を行った場合、液体の含浸量が多い初期に大量の液体が塗布されてしまい、その後は液涸れの状態となりやすい。したがって、塗りムラが発生したり、所定の面積を塗ることができないという問題がある。特に、液体が含まれる表面シートと床面との摩擦抵抗は大きくなり易いため、ユーザが強い力でモップ状保持具を操作すると、液体が大量に出てしまうという問題もある。したがって、前記従来技術(J02)では、開口のサイズを調整することで液体の放出量を調整している。
【0008】
また、特許文献2には、開口を省略し、表面シートに直接ウェットシートを支持し、洗浄剤の放出を液徐放シートの通気度をコントロールすることで放出の程度をコントロールすることが記載されている。しかし、特許文献2の比較例3にあるように、開口を省略した場合には仕上がりが悪く、現実には開口を形成して液体の放出量を調整しなければ仕上がりをよくすることができない。特に、特許文献2のように、比較的太い繊維が粗に配置され、液が透過しやすいスパンボンド不織布を表面層に使用した場合、開口で流出量を調整しないと、ワックス液が一度に大量に出やすく、液体を広い面積に均一に塗布することが難しいという問題がある。その上、繊維が比較的太いので、塗布された液が泡立ち易く、仕上がりがムラなく均一になりにくいという問題がある。泡立ちを抑えるためにスパンボンド不織布の繊維径を細くすることが考えられるが、繊維径を細くするとコスト高になると共に、スパンボンド製法の限界からあまり細くすることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、前述の事情に鑑み、次の記載内容(O01),(O02)を技術的課題とする。
(O01)床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布すること。
(O02)床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明)
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の要素との対応を容易にするため、実施の形態の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施の形態の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施の形態に限定するためではない。
【0011】
(第1発明)
前記技術的課題を解決するために、第1発明の液体塗布用シートは、
床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)と、
前記液体保持シート(4)と床面との間に配置された表面シート(2)であって、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する前記表面シート(2)と、
前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(第1発明の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の液体塗布用シートでは、床面に塗布する液体が含浸された液体保持シート(4)は、固定シート(3)により前記表面シート(2)に固定される。液体保持シート(4)と床面との間に配置される表面シート(2)は、前記液体保持シート(4)側に配置され表面シート(2)に強度を付与する不織布により構成された強度層(2b)と、前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シート(4)から床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層(2a)と、を有する。
したがって、表面シート(2)のフィルタ層(2a)により床面に放出される液体の放出量が調整されるため、床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布することができる。
【0013】
(第1発明の形態1)
第1発明の形態1の液体塗布用シートは、前記第1発明において、
平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成された前記強度層(2b)と、
平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成された前記フィルタ層(2a)と、
を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態1の液体塗布用シートでは、前記強度層(2b)は平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成されている。前記フィルタ層(2a)は、平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成されている。したがって、床面に接触するフィルタ層(2a)の繊維径が細いので、塗布された液体の泡立ちを抑えることができ、ムラなく均一に塗布することができる。
【0014】
(第1発明の形態2)
第1発明の形態2の液体塗布用シートは、前記第1発明または第1発明の形態1において、
凹凸が形成された前記表面シート(2)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態2の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態2の液体塗布用シートでは、表面シート(2)に凹凸が形成されているので、床面との摩擦抵抗を低減することができ、床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させることができる。また、摩擦抵抗が低減されるので、作業中にユーザが強い力をかけることが少なくなるため、強い力が作用することにより液体保持シート(4)に保持された液体が大量に放出されることが防止される。
【0015】
(第1発明の形態3)
第1発明の形態3の液体塗布用シートは、前記第1発明の形態2において、
熱エンボス加工により前記表面シート(2)に凹凸が形成されると共に、前記熱エンボス加工により前記フィルタ層(2a)が圧縮されることを特徴とする。
(第1発明の形態3の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態3の液体塗布用シートでは、前記表面シート(2)に凹凸を形成する熱エンボス加工により前記フィルタ層(2a)が圧縮される。したがって、フィルタ層(2a)の繊維の密集度合いが高まり、透過する液体の量を調整するフィルタ効果を高めることができる。
【0016】
(第1発明の形態4)
第1発明の形態4の液体塗布用シートは、前記第1発明および第1発明の形態1〜3のいずれかにおいて、
坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シート(4)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態4の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態4の液体塗布用シートでは、坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成されている。したがって、床面に液体を塗布する作業を行う際に、作業の初期と終期とで放出される液体の量の差を低減することができる。この結果、広い面積に均一に液体を塗布することができる。
【0017】
(第1発明の形態5)
第1発明の形態5の液体塗布用シートは、前記第1発明の形態4において、
折り重ねた合計坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シート(4)を備えたことを特徴とする。
(第1発明の形態5の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態5の液体塗布用シートでは、前記液体保持シート(4)が、合計坪量が120g/m2以上になるようにパルプ不織布が折り重ねられているので、折り重ねられた各層の間の界面で液が浸透しにくい。したがって、液体保持シート(4)に強い力が作用しても、液体が大量に放出されてしまうことを低減できる。
【0018】
(第2発明)
前記技術的課題を解決するために、第2発明の液体塗布用シート製造装置は、
不織布により構成されて強度を付与する強度層(2b)と前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層(2a)とを有する表面シート(2)を作成するための表面用長尺シート(61)、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シート(4)を作成するための液体保持用長尺シート(41)および前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)を作成するためのシート保持用長尺シート(31)が順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シート(31)と前記表面用長尺シート(61)とを熱融着させる熱融着装置(71)と、
前記熱融着装置(71)を通過した液体保持用長尺シート(41)に液体を吐出する液体吐出装置(83)と、
前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シート(1)を作成するシート裁断装置(D5)と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(第2発明の作用)
前記構成要件を備えた第2発明の液体塗布用シート製造装置では、熱融着装置(71)は、不織布により構成されて強度を付与する強度層(2b)と前記強度層(2b)の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層(2a)とを有する表面シート(2)を作成するための表面用長尺シート(61)、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シート(4)を作成するための液体保持用長尺シート(41)および前記液体保持シート(4)を前記表面シート(2)に固定する固定シート(3)を作成するためのシート保持用長尺シート(31)が順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シート(31)と前記表面用長尺シート(61)とを熱融着させる。液体吐出装置(83)は、前記熱融着装置(71)を通過した液体保持用長尺シート(41)に液体を吐出する。シート裁断装置(D5)は、前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シート(1)を作成する。
したがって、第2発明の液体塗布用シート製造装置は、床面の広い面積に均一で仕上がりよく液体を塗布することができる前記第1発明の液体塗布用シート(1)を製造することができる。
【0020】
(第2発明の形態1)
第2発明の形態1の液体塗布用シート製造装置は、前記第2発明において、
表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロール(67a,67b)と、前記エンボスロール(67a,67b)を加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロール(67a,67b)の対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シート(61)に熱エンボス加工を施す熱エンボス装置(67)、を備えたことを特徴とする。
(第2発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第2発明の形態1の液体塗布用シート製造装置では、熱エンボス装置(67)は、表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロール(67a,67b)と、前記エンボスロール(67a,67b)を加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロール(67a,67b)の対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シート(61)に熱エンボス加工を施す。
したがって、熱エンボス加工が施された液体塗布用シート(1)を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
前述の本発明は、下記の効果(E01),(E02)を奏する。
(E01)床面の広い面積にムラなく均一で仕上がりよく液体を塗布することができる。
(E02)床面に液体を塗布する作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0023】
図1は本発明の実施の形態の液体塗布用シートをモップ状保持具に装着する前の状態の説明図である。
図2は本発明の実施の形態の液体塗布用シートがモップ状保持具に装着された状態の説明図である。
図1,図2において、本発明の液体塗布用シート1は、フローリング上面に接触する表面シート2を有する。前記表面シート2の上面には、表面シート2の前後方向(塗布時移動方向、X軸方向)の長さの半分程度の長さの固定シート3が配置されている。固定シート3のシート幅方向(左右方向、Y軸方向)両端部は表面シート2に熱融着されている。前記表面シート2と固定シート3の内部には、ワックス液が含浸された液体保持シート4が収容保持されている。
【0024】
前記液体塗布用シート1は、ユーザが操作するためのモップ状保持具11に装着される。前記モップ用保持具11は、前記固定シート3とほぼ同サイズのプレート状の保治具本体12を有する。保治具本体12には、ユーザが把持して操作する棒状の柄13がヒンジ連結されている。前記保治具本体12の四隅には、スリットが複数形成された弾性材料製のシート装着部14が形成されている。したがって、図2に示すように、前記固定シート3が保治具本体12の下面に当接するようにセットされた状態で、保治具本体12を包むように表面シート2の両端部をめくり、シート装着部14に押し込むことにより、液体塗布用シート1がモップ状保持具11に装着される。
【0025】
(液体保持シートの説明)
実施の形態の液体保持シート4は、保液量は乾燥状態の不織布との重量比で15倍以上(すなわち、吸水倍率が15倍以上)、より好適には17倍〜25倍の高吸水、高保液の不織布を使用することが望ましい。このような高吸水性の不織布としては、例えば、乾式パルプにより構成された不織布を使用することができる。不織布の坪量(目付)は、保液の効果を出すために、120g/m2以上の物を使用することができ、より好適には150g/m2以上のものを使用できる。なお、実施の形態の液体保持シート4は、含浸されたワックス液の不織布内部での移行をできる限り抑制させるために、坪量40g/m2〜60g/m2の不織布を2重、3重あるいは4重以上に折り重ねて、合計坪量が120g/m2以上としている。すなわち、1枚の液体保持シート4を使用した場合、ユーザが力をかけて操作すると、含浸された液体が一気に放出されやすいが、複数枚折り重ねることにより、力がかかってもシート間の界面で液体が移行しにくい(ブロック機能が作用する)ので、液体が一気に出てしまうことを防止できる。
【0026】
(表面シートの説明)
図3は実施の形態の表面シートの要部断面拡大図であり、図1のIII−III線断面図である。
図3において、実施の形態の表面シート2は、フローリング上面に接触する表面側のフィルタ層2aと、液体保持シート4側の強度層2bとを有する2層構造の不織布により構成されている。なお、前記フィルタ層2aと強度層2bとは接着剤により接着することも可能であるが、熱融着により接着することが好ましい。なお、表面シート2は少なくともフィルタ層2aと強度層2bの2層を備えればよく、3層以上とすることも可能である。
【0027】
前記フィルタ層2aは、繊維外径の平均が15μm以下、好適には3〜10μmの細い繊維で構成された不織布を使用可能である。このような不織布としては、例えば、ポリプロピレンやポリエステル、ナイロン等の合成樹脂を含むメルトブローン不織布が好適に使用可能である。前記メルトブローン不織布は、細い繊維が比較的密に配置された物を選択することが好ましく、坪量10〜30g/m2のものが好適であり、坪量20g/m2程度のものを使用することがさらに好適である。坪量が10g/m2より小さくなると強度が弱すぎ、坪量が30g/m2より大きくなるとコスト高になるためである。なお、メルトブローン不織布のコストが下がれば、坪量30g/m2以上のものを使用することも可能である。
前記強度層2bは、前記フィルタ層2aの繊維の平均繊維径よりも繊維外径の平均が15μm以上、より好適には20μm〜30μm程度の比較的太い繊維で構成された不織布を使用可能であり、例えば、スパンボンド不織布を好適に使用することができる。前記スパンボンド不織布として、太い繊維が比較的粗に配置された物を選択することが好ましく、坪量13〜30g/m2のものが好ましく、坪量25g/m2程度のものを使用することがさらに好ましい。坪量13g/m2より小さなスパンボンド不織布は製作が困難であり、30g/m2より大きくなると厚みが厚くなりすぎる。
【0028】
図3において、実施の形態の表面シート2は、平面シート状の表面シートに熱圧縮成形(立体エンボス加工)を施して、表面に規則的な凹凸が形成されている。実施の形態の表面シート2では、凹凸の隣り合う山どうしの間隔は7mm以下に設定されており、山と谷の高さは3mm以下に設定されている。間隔および高さが前記値よりも大きくなると、間隔が広くなりすぎたりするため、液の塗布面にスジが残るなど仕上がりが極端に悪くなるためである。
さらに、実施の形態では、熱エンボス加工する際に、フィルタ層2aの厚みが熱圧縮前の厚みに比べて圧縮されるように調整されている。この圧縮により、フィルタ層2aの体積当たりの繊維密度が高くなり、表面シート2を透過する液の透過量を調整することができる。したがって、フィルタ2aの液透過量を調整する際に、材料を変更するよりも同じ材料で圧縮度を調整することにより、容易に調整にすることができる。
【0029】
(固定シートの説明)
実施の形態の固定シート3は、表面シート2に液体保持シート4を固定するためのシートであり、実施の形態では液体保持シート4を故意に抜き取れないように構成されている。前記固定シート3は、任意の材料で作成可能であり、特に限定されることはないが、例えば、低目付(低坪量)で液体が透過可能なスパンボンド不織布や液体が透過不能なポリエステルフィルム等を採用することが可能である。これらの熱融着可能な材料を使用した場合、固定シート3と表面シート2とを熱融着することができる。なお、接着剤を使用して貼り合わせることも可能である。接着剤を使用する場合には、熱融着できない材料を使用することも可能である。
【0030】
したがって、前記構成を備えた実施の形態の液体塗布用シート1では、表面シート2が、平均繊維径の細い繊維が密に配置されたフィルタ層2aと、フィルタ層2aの繊維よりも平均繊維径が太い繊維が比較的粗に配置された強度層2bとを有するので、フィルタ層2aにより床面に塗布される液体の量が調整される。したがって、床面に液体を塗布する作業の初期に大量の液体が放出されることを防止でき、広い面積をムラなく均一に塗布することができる。
また、表面シート2の表面側に平均繊維径が細い繊維により構成されたフィルタ層2aが配置されているので、塗布される液体が泡立ってしまうことを低減できる。したがって、床面に塗布された液体に泡立ちが無く、仕上がりをムラなく均一にすることができる。
【0031】
さらに、実施の形態の液体塗布用シート1は、液体が含浸された液体保持シート4が最初から内包されており、液体塗布用シート1をモップ状保持具11に装着するだけで、容易に液体塗布(ワックスがけ)の作業ができる。したがって、表面シートと別体の液体保持シートを使用する場合に比べ、作業性を向上させることができる。
また、実施の形態の液体塗布用シート1では、表面シート2をフィルタ層2aと強度層2bとの2層構造とすることにより、フィルタ層の厚みを厚くすることなく表面シート2の強度を向上させることができる。したがって、実施の形態の液体塗布用シート1は、繊維径が細く高密度で高コストのフィルタ層の厚みを厚くして強度を持たせる場合に比べ、2層構造とすることでコストを低減することができ、且つシートの着脱が厚みによって難しくなることを避けることが出来る。
【0032】
さらに、表面シート2の表面に立体エンボス加工が施されているため、床面との摩擦抵抗を少なくすることができるため、ユーザが少ない力で操作することができる。したがって、塗布作業の作業性を向上させることができる。また、大きな力をかけなくても作業ができるので、液体保持シート4に大きな力がかかることが少なく、大きな力が作用することにより液体保持シート4から大量の液体が放出されてしまうことを低減できる。さらに、実施の形態の液体保持シート4は、複数枚折り重ねられているので、力がかかった場合でも、シート間の界面がブロック機能を有することにより大量の液体が放出されてしまうことを低減できる。したがって、液体を、広い面積に均一に塗布することができる。
【0033】
(液体塗布用シートの製造装置の説明)
図4は本発明の実施の形態の液体塗布用シートのシート製造装置の説明図である。
図4において、実施の形態のシート製造装置Dは、固定シート送り出し装置D1と、液体保持シート送り出し装置D2と、表面シート送り出し装置D3と、液体含浸装置D4と、シート裁断装置D5とを有する。
(固定シート送り出し装置D1)
前記固定シート送り出し装置D1は、裁断前の固定シート3がシート幅方向に繋がったシート保持用長尺シート31がロール状に巻き取られたシート保持用ロール32が2つ回転可能に支持されている。各シート保持用ロール32のシート保持用長尺シート31の一端部は、シート支持ロール33により支持され、自動切り替え装置34に導かれる。自動切り替え装置34は、2つの各シート保持用ロール32のいずれか一方からシート保持用長尺シート31を供給するように、供給する各シート保持用ロール32を切り替える。
【0034】
したがって、一方のシート保持用長尺シート31が無くなった時に、他方のシート保持用ロール32からシート保持用長尺シート31を供給して、無くなったシート保持用ロール32を交換することにより、連続してシート保持用長尺シート31の供給を行うことができ、生産効率が高まる。なお、切替方法は従来公知の構成を採用可能であるが、例えば、供給しない側のシート保持用長尺シート31を挟み込んでブレーキをかける構成や供給する側のシート保持用長尺シート31のみ送り出す構成が考えられる。
前記自動切り替え装置34のシート搬送方向下流側には複数のシート支持ロール36が配置され、フィードロール37により下流側(図4では右方向)に搬送される。フィードロール37により搬送されたシート保持用長尺シート31は、ダンサーロール(弛み除去装置)38により弛みを除去されて、センターリング装置(シート位置調整装置)39によりシートの位置が所定の位置に調整されて(蛇行を修正されて)下流側に搬送される。
【0035】
(液体保持シート送り出し装置D2)
前記液体保持シート送り出し装置D2は、裁断前の液体保持シート4がシート幅方向に繋がった液体保持用長尺シート41がロール状に巻き取られた液体保持用ロール42が、固定シート送り出し装置D1と同様に、2つ回転可能に支持されている。前記液体保持用ロール42の液体保持用長尺シート41の一端部は、固定シート送り出し装置D1と同様に、シート支持ロール43、自動切り替え装置44、シート支持ロール46を介して、センターリング装置47に搬送される。センターリング装置47でシートが所定の位置に位置が調整された液体保持用長尺シート41は、Z折り装置(シート折り畳み装置)48に搬送される。
【0036】
図5はZ折り装置の要部拡大説明図である。
図4,図5において、Z折り装置48は、折り位置ガイドバー48aとその下流側に配置された折り畳みロール48bとを2組有する。したがって、図5に示すように、折り位置ガイドバー48aと折り畳みロール48bとにより、液体保持用長尺シート41が折り畳まれる。図4において、本実施の形態のZ折り装置48は、2つの折り位置ガイドバー48aがそれぞれ液体保持用長尺シート41の一面側と他面側に配置されているので、液体保持用長尺シート41は、断面視Z字状に3重に折り畳まれる。そして、3重に折り畳まれた液体保持用長尺シート41は、フィードロール49で、前記センターリング装置39により位置が調整されたシート保持用長尺シート31と重ね合わされて下流側に搬送される。
図4において、重ね合わされたシート保持用長尺シート31および液体保持用長尺シート41は、ダンサーロール51で弛みが除去され、センターリング装置52によりシートの位置が所定の位置に調整されて下流側に搬送される。
【0037】
(表面シート送り出し装置D3)
前記表面シート送り出し装置D3は、裁断前の表面シート2がシート幅方向に繋がった表面用長尺シート61がロール状に巻き取られた表面用ロール62が、固定シート送り出し装置D1と同様に、2つ回転可能に支持されている。前記表面用ロール62の表面用長尺シート61の一端部は、固定シート送り出し装置D1と同様に、シート支持ロール63、自動切り替え装置64、シート支持ロール66を介して、熱エンボス装置67に搬送される。
【0038】
図6は熱エンボス装置の要部拡大説明図である。
図4,図6において、熱エンボス装置67は、表面に所定の凹凸のパターンが形成された一対のエンボスローラ67a、67bを有する。前記エンボスローラ67a、67bは、ヒータ(図示せず)により加熱される。前記エンボスローラ67a、67bの温度は、30℃〜90℃程度が好ましく、特に、70℃以下が好ましい。温度が高くなりすぎると表面用長尺シート61が溶けて液体が通過しにくくなるためである。
前記一対のエンボスローラ67a、67bは、凹凸が互いに嵌合する(いわゆる、オスとメスの関係)ように配置されており、図示しないエアシリンダにより所定の圧力で圧接されている。実施の形態の熱エンボス装置67では、エアシリンダにより5Kg程度の圧力が印加され、表面用長尺シート61の表面層2aが圧縮されるように設定されている。したがって、表面用長尺シート61が、一つのエンボスローラ67a、67bにより形成される圧接領域(ニップ領域)を通過すると、熱エンボス加工により凹凸(立体エンボス)が形成されると共に表面層2aが圧縮される。
【0039】
図4において、熱エンボス加工がされた表面用長尺シート61は、ダンサーロール68で弛みが除去され、センターリング装置69によりシートの位置が所定の位置に調整されて下流側に搬送される。
センターリング装置69から下流側に搬送された表面用長尺シート61は、熱シール装置(熱融着装置)71で、センターリング装置52により位置調整がされたシート保持用長尺シート31および液体保持用長尺シート41と、シート保持用長尺シート31、液体保持用長尺シート41、表面用長尺シート61の順になるように重ね合わされる。前記熱シール装置71には、シート保持用長尺シート31の幅方向両端部に沿って加熱部(図示せず)が配置されており、熱シート装置71を通過する際に、シート保持用長尺シート31の両端部が表面シート用長尺シート61に熱融着(熱シール)される。したがって、液体保持用長尺シート41が、表面シート用長尺シート61とシート保持用長尺シート31との間に封入された状態となる。
【0040】
(液体含浸装置D4)
熱シール装置71を通過した3枚重ねの長尺シート(31+41+61)は、液体含浸装置D4のフィードロール81により下流側のC折り装置(シート折り畳み装置)82に搬送される。C折り装置82は、前記Z折り装置48と同様の原理で長尺シートを折り畳む装置であり、一対の折り位置ガイドバー(図示せず)が、両方とも、3枚重ね長尺シートの一面側(上面側)に配置されている。なお、前記一対の折り位置ガイドバーは、シート保持用長尺シート31の両端部に対応する位置に配置されている。したがって、3枚重ねの長尺シートは断面視C字状(U字状)に折り畳まれる。
【0041】
図7は液体吐出装置の要部拡大図である。
図7において、前記C折り装置82によりC折りされた長尺シートは、液体吐出装置83に搬送される。液体吐出装置83は、液体を吐出する複数の液体吐出ノズル83aを有する。前記液体吐出装置83には、液体保持用長尺シート41に含浸させる液体(ワックス液や洗浄液等)が収容された液体タンク84から、図示しないポンプにより液体が供給される。
前記液体吐出ノズル83aは、下方を搬送されるC折りされた3枚重ねの長尺シート(31+41+61)の液体保持用長尺シート41に対応する位置に配置されている。したがって、前記液体吐出ノズル83aから吐出された液体は、表面用長尺シート61やシート保持用長尺シート31を透過して液体保持用長尺シート41に浸透し、含浸される。なお、含浸される液体の量は、長尺シートの通過速度と、液体吐出ノズル83aから吐出される液体の吐出量とにより調節できる。
なお、この実施の形態では、C折り装置82が含浸される液体により汚れるのを防止するために、先にC折りをしてから液体を含浸させたが、先に液体を含浸させてからC折りをすることも可能である。
【0042】
(シート裁断装置)
図8はシート裁断装置の要部拡大図である。
図4において、液体が含浸された3枚重ねの長尺シート(31+41+61)はシート裁断装置D5に搬送される。図4,図8において、シート裁断装置D5は、内部に排気ポンプを有し長尺シートを表面に吸引して搬送するバキューム式の回転ロール91を有する。前記回転ロール91に対向して、長尺シートを液体塗布用シート1にカット(裁断)する裁断刃92aが外方に突出して配置されたカッティングロール92が配置されている。前記回転ロール91には裁断刃92aを受ける刃受け溝91aが形成されている。前記回転ロール91とカッティングロール92の対向するカッティング位置の下流側には、バキューム式の第1排出ロール93および第2排出ロール94が対向して配置されており、各排出ロール93,94にはそれぞれバキューム式の搬送ベルト96,97が巻き付けられている。
【0043】
前記カッティングロール92で裁断されて作成された液体塗布用シート1は、前記第1排出ロール93または第2排出ロール94により搬送ベルト96,97表面に吸引保持されて、搬送ベルト96,97に吸引保持された状態で下流側に搬送される。なお、液体塗布用シート1は、前記第1排出ロール93または第2排出ロール94に交互に吸引保持される。前記搬送ベルト96,97のベルト回転方向下流側には、搬送ベルト96,97から液体塗布用シート1を離脱させて下方に落下させるシート取り出し装置98が配置されている。
前記シート取り出し装置98の下方には、落下した液体塗布用シート1を収容するシート収容容器99が配置されている。前記シート収容容器99は、所定の収容枚数(例えば5枚)が収容されると、図示しないアームによりベルトコンベア101上に押し出され、密閉フィルムや蓋が取り付けられて、出荷される。
【0044】
前記構成を備えた実施の形態のシート製造装置Dでは、固定シート送り出し装置D1、液体保持シート送り出し装置D2、および、表面シート送り出し装置D3からそれぞれ送り出された長尺シートが重ね合わされて、熱シール装置71で固定できる。そして、この状態で液体が含浸された後、裁断され、シート収容容器99に収容して、出荷できる。また、各送り出し装置D1〜D3では、各長尺シート31,41,61のロール32、42,62が2つずつ配置され、一方が無くなった時に他方に自動的に切り替えられるので、連続して液体塗布用シート1を作成することができ、生産性を高めることができる。また、2つの排出ロール93,94により、交互に保持されてシート取り出し装置98で落下させるため、1つだけで行う場合に比べ、生産性を高めることができる。
【0045】
(実験例)
(素材選定実験の説明)
図9は、表面シートの素材を選定する際の実験結果の一覧表である。
次に、塗布作業の作業性や仕上がり、液体の放出量に大きな影響がある表面シートの表面層の素材を選定する実験の結果を示す。
(素材選定実験例1)
素材選定実験例1は、平均繊維径が8μmのポリプロピレン(PP)繊維で構成された坪量が60g/m2のメルトブローン(MB)不織布を使用した。素材選定実験例1の不織布は、熱融着(熱エンボス)によりウェブ状に構成されたものを使用した。
(素材選定実験例2)
素材選定実験例2は、素材選定実験例1の不織布において、熱融着されていないものを使用した。
【0046】
(素材選定実験例3)
素材選定実験例3は、平均繊維径が3〜5μmのPP繊維で構成されたメルトブローン層(表層)と、平均繊維径が20〜30μmのPP繊維で構成されたスパンボンド層(裏層)とが熱融着された坪量80g/m2不織布を使用した。
(素材選定実験例4)
素材選定実験例4は、素材選定実験例3の不織布の表裏を逆にして使用した。
(素材選定実験例5)
素材選定実験例5は、平均繊維径が3〜5μmのPP繊維で構成されたメルトブローン層(表層)と、平均繊維径が20〜30μmのPP繊維で構成されたスパンボンド層(裏層)とが熱融着された坪量47.5g/m2不織布を使用した。
【0047】
(素材選定実験例6)
素材選定実験例6は、平均繊維径が30μmのPP繊維により構成された坪量250g/m2のトウ開繊法(バーストファイバー法)で作成された不織布を使用した。なお、素材選定実験例6の不織布は、熱融着されておらず、表面はカレンダー仕上げがされている。
(素材選定実験例7)
素材選定実験例7は、素材選定実験例6と同様の不織布の裏面(カレンダー仕上げがされていない面)を使用した。
(素材選定実験例8)
素材選定実験例8は、10〜15μmのPP繊維で構成された坪量30g/m2の極細スパンボンド(SB)不織布を使用した。素材選定実験例8の不織布は、熱融着されていない。
【0048】
(素材選定実験例9)
素材選定実験例9は、14〜15μmのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維で構成された坪量50g/m2の極細スパンボンド不織布を使用した。素材選定実験例9の不織布は、熱融着されていない。
(素材選定実験例10)
素材選定実験例10は、平均繊維径15.7μmのナイロン繊維で構成された坪量50g/m2のスパンボンド不織布を使用した。素材選定実験例10の不織布は、熱融着されていない。
【0049】
前記各素材選定実験例1〜10の不織布にワックス液(株式会社リンレイ製)を浸透させてフローリングに液体を塗布する実験を行った。実験は、各素材選定実験例1〜15の不織布を、移動方向に垂直な幅方向の長さを25cmとし、市販のモップ状保持具(塗布具)に装着してフローリング板状を移動させた。前記フローリング板は、市販の30cm×180cmのフローリング板上を使用した。このときのフローリング板上に塗布された液体の仕上がり状態(泡立ちの有無)と、移動させる際に必要な力(滑り性能)との目視による観察結果を図9に示す。
図9の実験結果からわかるように、実験例1〜3、5、8〜10のような平均繊維径が15μm以下の繊維では、泡立ちが抑えられ、仕上がりが良くなることがわかる。また、実験例1,3〜5のような熱融着等の表面加工が施されている不織布の方が滑り性能が向上し、弱い力で不織布を移動させることができることがわかる。ただし、前記実験例8〜10のような極細繊維のスパンボンド不織布はコストが高く、技術的にこれ以上繊維径を細くすることが困難であるという問題がある。
【0050】
(フィルタ性能の実験)
図10は表面シートの素材と液体の吐出量との実験結果の一覧表である。
図11はフィルタ実験例1,2および14の実験結果の説明図であり、図11Aは実験結果の一覧表、図11Bは図11Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
(フィルタ実験例1)
フィルタ実験例1は、坪量が60g/m2で、レーヨン:PET(ポリエチレンテレフタレート):PP(芯)/PE(ポリエチレン、鞘)が重量割合で6:3:1のスパンレース(SL)不織布を使用した。フィルタ実験例1の不織布は、表面に、長尺方向(図1のY軸方向)が3.3mm間隔、短尺方向(図1のX軸方向)が4.3mm間隔で山の高さが1.5mmの凹凸(立体エンボス)が形成されている。なお、フィルタ実験例1の立体エンボスは、断面視V字形の谷が上記間隔で形成され、谷の上端どうしの間は平面(平らな山頂)が形成されるパターンで構成されている。
【0051】
(フィルタ実験例2)
フィルタ実験例2は、フィルタ実験例1と同様の不織布を使用している。表面に形成された立体エンボスは、断面視正弦波形状(図3参照)の凹凸により構成され、凹凸の間隔および凹凸の高さはフィルタ実験例1と同様に設定されている。
(フィルタ実験例3)
フィルタ実験例3は、坪量が55g/m2で、レーヨン:PET(ポリエチレンテレフタレート):PP(ポリプロピレン、芯)/PE(ポリエチレン、鞘)が重量割合で6:1:3のスパンレース不織布を使用した。フィルタ実験例3の不織布は、フィルタ実験例2と同様の立体エンボスが施されている。
(フィルタ実験例4)
フィルタ実験例4は、平均繊維径が3μmのPP繊維で構成された坪量が50g/m2のメルトブローン不織布を使用した。フィルタ実験例4の不織布は、フィルタ実験例2と同様の立体エンボスが施されている。
【0052】
前記各フィルタ実験例1〜4および素材選定実験例1〜5の表面シート2と、ワックス液(株式会社リンレイ製)を75g程度含浸させた坪量150g/m2のパルプ不織布により構成された液体保持シート4と、メルトブローン不織布により構成された固定シートとを有する液体塗布用シート1を使用して、フローリングに液体を塗布する実験を行った。実験は、素材選定実験と同様に、不織布の移動方向に垂直な幅方向の長さを25cmとし、市販のモップ状保持具に装着してフローリング板状を移動させた。前記フローリング板は、市販の30cm×180cmのフローリング板上を使用し、フローリング板上を1回移動させる度にふき取り、合計4回を1セットとして、最大7セット実験を行った。すなわち、1セットで塗布される面積は、25cm×4回×180cmであり、1.1畳分(1畳は90cm×180cm)として実験を行った。このとき、フローリング板上に塗布された液体の仕上がり状態(泡立ちの有無)と、移動させる際に必要な力(滑り性能)と、1セット終了毎に計量した重量と、そのセットで吐出されたワックス液の量(図10の括弧付きの数値)を図10に示す。
【0053】
図10、図11に示すように、各実験例において、吐出量は1セット目が最も多く、セット数を重ねる毎に減っていくことがわかる。このとき、素材選定実験例3〜5(比較例)は、5セット目ですでに1セットでの吐出量が3g以下となっており、塗布されるワックスの量が不足していることがわかる。すなわち、立体エンボスが施されていないため、広い面積に均一にワックス液を塗布できないことがわかる。一方、図10に示す実験結果から、スパンレース不織布(実験例3〜5)では、レーヨンの吸水、膨潤効果により十分なフィルタ効果が得られている。しかし、スパンレース不織布では、ワックス液を含浸すると柔らかくなり、モップ状保持具に装着する際に装着しにくくなると共に、強度が低下するという問題がある。
また、同じメルトブローン不織布でも、エンボスが施されていない場合(素材選定実験例1,2、〜9)では、抵抗が大きくなり、最初の数セットで放出される液体の量が多くなりすぎる傾向がわかる。したがって、表面シート2の表面層は、立体エンボスを施したメルトブローン不織布が好ましく、さらには、平均繊維径が細いメルトブローン不織布が最も好ましいことがわかった。
【0054】
(表面シートの層構成の実験)
図12は、表面シートの層構成と液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図12Aは一覧表、図12Bは図12Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、2層構造の表面シートと、素材選定実験例1の1層構造の表面シートとを対比する実験を行った。
(実施例1)
実施例1の表面シートは、平均繊維径が3μm(〜5μm(最大))のPP繊維により構成された坪量20g/m2、厚み150μmのメルトブローン不織布(フィルタ層2a)と、繊維径が25μm〜30μmのPP繊維により構成された坪量25g/m2、厚み240μmスパンボンド不織布(強度層2b)とが熱融着された複合不織布に、前記フィルタ実験例4と同様の立体エンボス加工を施したものを使用した。また、実施例1では、液体保持シート4は坪量160g/m2のパルプ不織布を使用した。
(実施例2)
実施例2の表面シートは、平均繊維径が3μm(〜5μm(最大))のPP繊維により構成された坪量20g/m2、厚み150μmのメルトブローン不織布(フィルタ層2a)と、繊維径が25μm〜30μmのPP繊維により構成された坪量25g/m2、厚み240μmスパンボンド不織布(強度層2b)とが熱融着された複合不織布に、実施例1と同様の立体エンボス加工を施したものを使用した。なお、実施例2の表面シートはエンボス加工の温度を実施例1よりも高く設定した。また、実施例2では、液体保持シート4は坪量150g/m2のパルプ不織布を使用した。
【0055】
前記実施例1,2の表面シートを使用して、前記図10の場合と同様の実験を行った。但し、今回は、最初に含浸させるワックス液の量が55gまたは80g程度として実験を行った。その結果を図12に示す。
図12の実験結果からわかるように、実施例1,2では、フィルタ層2aと強度層2bとの2層構造の表面シートでは、ワックス液のフィルタ効果が十分あり、5セット目(5.5畳分)でも十分な量(3g以上)のワックス液を塗布できている。特に、実施例2で80g程度のワックス液を含浸させた場合には、7セット目(7.8畳)でも十分な量のワックス液を塗布できる。
したがって、前記フィルタ実験例4のメルトブローン不織布のみでは、強度が不足する恐れがあったが、強度層2bを設けることにより、同様の滑り性能、泡立ちおよびフィルタ効果を有し、強度が高い表面シート2を作成できる。また、メルトブローン不織布に比べ低コストのスパンボンド不織布を強度層として使用するので、コストを抑えることができる。
【0056】
(液体保持シートの比較実験)
図13は液体保持シートの構成と、50g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図13Aは実験結果の一覧表、図13Bは図13Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
図14は液体保持シートの構成と、80g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図14Aは実験結果の一覧表、図14Bは図14Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、液体保持シート4の構成と、吐出量との実験結果を説明する。
【0057】
(実施例3)
実施例3の液体保持シートは、坪量60g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量180g/m2としたものを使用した。実施例3では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例4)
実施例4の液体保持シートは、坪量40g/m2のパルプ不織布を4枚重ねて、合計坪量160g/m2としたものを使用した。実施例4では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例5)
実施例5の液体保持シートは、坪量50g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量150g/m2としたものを使用した。実施例5では表面シートとして実施例2の表面シートを使用した。
【0058】
(実施例6)
実施例6の液体保持シートは、坪量70g/m2のパルプ不織布を2枚重ねて、合計坪量140g/m2としたものを使用した。実施例6では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
(実施例7)
実施例7の液体保持シートは、坪量40g/m2のパルプ不織布を3枚重ねて、合計坪量120g/m2としたものを使用した。実施例7では表面シートとして実施例1の表面シートを使用した。
【0059】
次に、各実施例3〜7の液体保持シート4および表面シート2を使用して、図10で使用した固定シート3を有する液体塗布用シート1をモップ状保持具に装着して、図10と同様にフローリング上にワックス液を塗布する実験を行った。各液体保持シートに55g程度のワックス液を含浸させた場合の実験結果を図13に示し、80g程度のワックス液を含浸させた場合の実験結果を図14に示す。
図13、図14に示すように、合計坪量が多くなるにつれて、1セット目とそれ以降のセットとの吐出量の差の割合が小さくなり、合計坪量が150g/m2以上になるとその効果が特に顕著になる。したがって、合計坪量が150g/m2より大きい液体保持シートを採用することにより、吐出量を均一にしやすくなり、広い面積にワックス液を塗布する際に、吐出量を均一に近くすることができる。
【0060】
(液体塗布用シートの比較実験の説明)
図15は実施例1の液体塗布用シートと市販の商品とを比較した実験結果の説明図であり、図15Aは実験結果の一覧表、図15Bは図15Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
次に、前記実施例1の液体塗布用シート1と、市販品である比較例1(株式会社花王製、クイックルワイパー ワックスコートシート)との比較実験の説明を行う。実施例1の液体塗布用シート1に50g程度のワックス液を含浸させた状態で、前記図10で説明した場合と同様に、フローリング板上にワックスを塗布する実験を行った。その結果を図15に示す。
【0061】
図15において、比較例1では、4セット目(4.4畳)までしか十分(3g程度)ワックスを塗布することができなかった。一方、実施例1では、6セット目(6.6畳)まで十分ワックスを塗布することができた。また、図15Bに示すように、比較例1では塗布作業の初期に多くのワックスが吐出され、その後、急激に吐出量が減ってしまうが、実施例1の場合、ワックスの吐出量の変化が小さく、広い面積に均一に塗布することができる。
【0062】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、前記実施例において、液体塗布用シートは、モップ状保持具に装着されたが、ハンドワイパー等の任意の保治具に装着することが可能である。
また、液体塗布用シートに含浸させる液体は、ワックス液に限定されず、洗浄液や消毒液、除菌液、艶出し剤、コーティング剤、塗料、接着剤等の床面、壁面、ガラス面等の建築物や自動車、機械類等の素材の表面に塗布可能な任意の液体とすることが可能である。
さらに、前記実施例において、液体吐出装置83はノズルを使用して液体を吐出して液体保持シート4に液体を含浸させたが、この構成に限定されず、噴霧器で液体を噴霧して含浸させたり、液体が流れるパイプに穴を形成して滴下して含浸させる等任意の構成を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の実施の形態の液体塗布用シートをモップ状保持具に装着する前の状態の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態の液体塗布用シートがモップ状保持具に装着された状態の説明図である。
【図3】図3は実施の形態の表面シートの要部断面拡大図であり、図1のIII−III線断面図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態の液体塗布用シートのシート製造装置の説明図である。
【図5】図5はZ折り装置の要部拡大説明図である。
【図6】図6は熱エンボス装置の要部拡大説明図である。
【図7】図7は液体吐出装置の要部拡大図である。
【図8】図8はシート裁断装置の要部拡大図である。
【図9】図9は、表面シートの素材を選定する際の実験結果の一覧表である。
【図10】図10は表面シートの素材と液体の吐出量との実験結果の一覧表である。
【図11】図11は素材選定実験例1,2,6の実験結果の説明図であり、図11Aは実験結果の一覧表、図11Bは図11Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図12】図12は、表面シートの層構成と液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図12Aは一覧表、図12Bは図12Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図13】図13は液体保持シートの構成と、50g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図13Aは実験結果の一覧表、図13Bは図13Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図14】図14は液体保持シートの構成と、80g程度の液体を含浸させた場合の液体の吐出量との実験結果の説明図であり、図14Aは実験結果の一覧表、図14Bは図14Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【図15】図15は実施例1の液体塗布用シートと市販の商品とを比較した実験結果の説明図であり、図15Aは実験結果の一覧表、図15Bは図15Aのデータに基づいて横軸にセット回数を取り、縦軸に吐出量を取ったグラフである。
【符号の説明】
【0064】
2…表面シート、
2b…強度層、
2a…フィルタ層、
3…保持フィルム、
4…液体保持シート、
31…シート保持用長尺シート、
41…液体保持用長尺シート、
61…表面用長尺シート、
67…熱エンボス装置、
67a,67b…エンボスロール、
71…熱融着装置、
83…液体吐出装置、
D5…シート裁断装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に塗布する液体が含浸された液体保持シートと、
前記液体保持シートと床面との間に配置された表面シートであって、前記液体保持シート側に配置され表面シートに強度を付与する不織布により構成された強度層と、前記強度層の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シートから床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層と、を有する前記表面シートと、
前記液体保持シートを前記表面シートに固定する固定シートと、
を備えたことを特徴とする液体塗布用シート。
【請求項2】
平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成された前記強度層と、
平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成された前記フィルタ層と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の液体塗布用シート。
【請求項3】
凹凸が形成された前記表面シートを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液体塗布用シート。
【請求項4】
熱エンボス加工により前記表面シートに凹凸が形成されると共に、前記熱エンボス加工により前記フィルタ層が圧縮されることを特徴とする請求項3に記載の液体塗布用シート。
【請求項5】
坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シートを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体塗布用シート。
【請求項6】
折り重ねた合計坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シートを備えたことを特徴とする請求項5に記載の液体塗布用シート。
【請求項7】
不織布により構成されて強度を付与する強度層と前記強度層の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層とを有する表面シートを作成するための表面用長尺シート、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シートを作成するための液体保持用長尺シートおよび前記液体保持シートを前記表面シートに固定する固定シートを作成するためのシート保持用長尺シートが順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シートと前記表面用長尺シートとを熱融着させる熱融着装置と、
前記熱融着装置を通過した液体保持用長尺シートに液体を吐出する液体吐出装置と、
前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シートを作成するシート裁断装置と、
を備えたことを特徴とする液体塗布用シート製造装置。
【請求項8】
表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロールと、前記エンボスロールを加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロールの対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シートに熱エンボス加工を施す熱エンボス装置、を備えたことを特徴とする請求項7記載の液体塗布用シート製造装置。
【請求項1】
床面に塗布する液体が含浸された液体保持シートと、
前記液体保持シートと床面との間に配置された表面シートであって、前記液体保持シート側に配置され表面シートに強度を付与する不織布により構成された強度層と、前記強度層の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ前記液体保持シートから床面に放出される液体の放出量を調整するフィルタ層と、を有する前記表面シートと、
前記液体保持シートを前記表面シートに固定する固定シートと、
を備えたことを特徴とする液体塗布用シート。
【請求項2】
平均繊維径が15μm以上のスパンボンド不織布により構成された前記強度層と、
平均繊維径が15μm以下のメルトブローン不織布により構成された前記フィルタ層と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の液体塗布用シート。
【請求項3】
凹凸が形成された前記表面シートを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液体塗布用シート。
【請求項4】
熱エンボス加工により前記表面シートに凹凸が形成されると共に、前記熱エンボス加工により前記フィルタ層が圧縮されることを特徴とする請求項3に記載の液体塗布用シート。
【請求項5】
坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シートを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体塗布用シート。
【請求項6】
折り重ねた合計坪量が120g/m2以上且つ吸水倍率が15倍以上の高吸水性の不織布により構成された前記液体保持シートを備えたことを特徴とする請求項5に記載の液体塗布用シート。
【請求項7】
不織布により構成されて強度を付与する強度層と前記強度層の不織布の繊維の繊維径よりも細い繊維径の繊維で形成され且つ通過する液体の量を調整するフィルタ層とを有する表面シートを作成するための表面用長尺シート、床面に塗布する液体が含浸される液体保持シートを作成するための液体保持用長尺シートおよび前記液体保持シートを前記表面シートに固定する固定シートを作成するためのシート保持用長尺シートが順に積層された状態で、前記シート保持用長尺シートと前記表面用長尺シートとを熱融着させる熱融着装置と、
前記熱融着装置を通過した液体保持用長尺シートに液体を吐出する液体吐出装置と、
前記液体が含浸された長尺シートを裁断して液体塗布用シートを作成するシート裁断装置と、
を備えたことを特徴とする液体塗布用シート製造装置。
【請求項8】
表面に凹凸が形成された対向する一対のエンボスロールと、前記エンボスロールを加熱するヒータとを有し、一つのエンボスロールの対向領域により構成された圧接領域を通過する前記表面用長尺シートに熱エンボス加工を施す熱エンボス装置、を備えたことを特徴とする請求項7記載の液体塗布用シート製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−14638(P2007−14638A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200932(P2005−200932)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【出願人】(390039712)株式会社リンレイ (18)
【Fターム(参考)】
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