説明

液体容器

【課題】肩部を形成した金属製の容器本体に対して肩部材を結合する液体容器において、吊下げ荷重に対する肩部材の結合強度を、溶接を用いることなく強制嵌合以上に得る。
【解決手段】口部11の肩部材20の内方に位置する外周部分に段差部16を形成し、段差部16に引っ掛かる周方向に有端の係合具51と、この係合具51の周方向端間が広がらないように係合具51を段差部16に位置決めする係合保持具52とからなる取り付け補助具50を設け、その取り付け補助具50を、係合具51と係合保持具52とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合されるものとし、肩部13に被せた肩部材20を、前記の位置決め状態の取り付け補助具50とねじ締結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体容器や魔法瓶のように、肩部を形成した金属製の容器本体を有する液体容器においては、肩部の装飾や持ち運び時の取り扱いを考慮し、肩部に上方から被せる無端リング状の肩部材を設け、この肩部材に吊下げ部を設けることが広く行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
肩部材が容器本体から抜け落ちることは、容器本体の肩部に肩部材を受けさせることで容易かつ確実に防止することができる。ところが、吊下げ具を設けた肩部材は、満量時の吊下げ荷重に対して容器本体から引き抜けないように十分な結合強度を確保する必要がある。
【0004】
特許文献1のような携帯用の液体容器等は、容器本体の肩部材内方に位置する外周部分に、太さを部分的に変化させて段差部を形成し、肩部材の内周部に周方向の突条部を形成し、その溝部の上側溝壁面に肩部材の突条部を強制嵌合させる構造になっている。
【0005】
容器本体の容量が3リットルを超えるような大型の液体容器の場合、強制嵌合による肩部材の結合によれば吊下げ荷重に対する結合強度が不十分なので、容器本体の肩部に無端リング状の取り付け補助金具を溶接し、取り付け補助金具の上方に肩部材を被せた状態とし、肩部材と取り付け補助金具とをねじ締結することにより、十分な結合強度を得ている。
【0006】
【特許文献1】実開平6−38650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、容器本体の肩部に無端リング状の取り付け補助金具を溶接すると、その後に実施される容器本体内の電解研磨工程において溶接部分の微小隙間に電解液が入り込み、洗浄工程を得ても残留することがある。その結果、溶接部分が腐食して取り付け補助金具の結合強度が低下する問題がある。また、取り付け補助金具の溶接は、電気溶接で行われるが、溶接時の電圧バラツキや溶接面の不均一等が生じることがあり、難易度の高い加工を強いられる。
【0008】
そこで、この発明の課題は、肩部を形成した金属製の容器本体に対して肩部材を結合する液体容器において、吊下げ荷重に対する肩部材の結合強度を、溶接を用いることなく強制嵌合以上に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、この発明は、肩部を形成した金属製の容器本体と、前記肩部に上方から被せる無端リング状の肩部材と、この肩部材に設けた吊下げ部とを有し、前記肩部材を前記容器本体に取り付けた液体容器において、前記容器本体の肩部材内方に位置する外周部分に、太さを部分的に変化させて段差部を形成し、前記段差部に引っ掛かる周方向に有端の係合具と、この係合具の周方向端間が広がらないように前記係合具を前記段差部に位置決めする係合保持具とからなる取り付け補助具を設け、前記取り付け補助具を、前記の位置決め状態で前記係合具と前記係合保持具とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合されるものとし、前記肩部に被せた前記肩部材を、前記の位置決め状態の前記取り付け補助具とねじ締結したことを特徴とするものである。
【0010】
この発明の構成によれば、段差部に引っ掛かる係合具が周方向に有端なので、強制嵌合を避けつつ、引っ掛かり高さを強制嵌合以上に設定することが可能になる。係合具を係合保持具で位置決めすれば、周方向端間が広がらなくなるので、引っ掛かりが所定以上に緩むことはない。したがって、取り付け補助具と容器本体との吊下げ荷重に対する結合強度を強制嵌合以上に得ることができる。
そして、前記の位置決め状態で係合具と係合保持具とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合されるので、そのような状態の取り付け補助具と、肩部に被せた肩部材とをねじ締結すれば、取り付け補助具と肩部材との結合においても吊下げ荷重に対して強制嵌合以上の結合強度が得られる。したがって、吊下げ荷重に対する肩部材の結合強度は、溶接なしで強制嵌合以上に得られる。
【0011】
ここで、前記係合具と前記容器本体とを周方向両側に係合させて回り止めし、前記係合具と前記係合保持具とを周方向両側に係合させて回り止めした構成を採用すれば、取り付け補助具が回転しない状態で肩部材をねじ締結することが可能になり、組み立てが容易化される。また、そのような取り付け補助具に肩部材が結合されるため、組み立てた状態で肩部材が回らない液体容器を得ることができる。このような液体容器は、吊下げ具にハンドルを採用するような大型ものにおいて、吊下げ時の姿勢を安定させることができる。
【0012】
前記係合具としては、Cリング状のように周方向に一箇所で分断された構成のもの、容器外周を挟む一対の部材から構成した場合のように周方向に複数箇所で分断された構成のものを採用することができる。
なお、係合具の周方向の分断箇所を少なくする方が取り付け補助具の組み立てが容易になるが、一箇所だと、複数個所の場合と比して段差部への引っ掛けを行ない難く、3箇所以上だと、組み立てが面倒になるため、段差部への引っ掛け容易性を得つつ、組み立て容易性を得るには、容器外周を挟む一対の部材からなる構成を採用することが好ましいといえる。
【0013】
前記係合保持具としては、係合具の周方向端部間をねじ締結するボルトナットを採用することができる。ボルトナットを採用した場合、係合具を段差部に引っ掛けた状態に保持しながら、係合具を締め合せてねじ回し作業を行なうことになる。
【0014】
好ましくは、前記係合保持具を、前記係合具を下側及び外側から抱く金属板製の無端リング部材とし、前記係合保持具を前記肩部に載せた状態で前記係合具を前記段差部に引っ掛け、その状態から前記係合保持具を持ち上げて両具を上下に爪係合させて前記係合具を前記係合保持具が外側から抱いた位置決め状態とするように設けた構成を採用すれば、係合保持具を肩部上に載せて係合具を引っ掛けた状態とした後、係合保持具を持ち上げることにより、係合具が位置決めされ、両具が結合される。
ここで、肩部材の下向きの荷重が肩部で受けられる。また、引き抜き荷重は、取り付け補助具に作用するが、係合保持具が係合具を下側及び外側から抱くため、両具の爪係合に対して反抜け側に作用する。また、係合保持具は、金属板製なので、重量が嵩むこともない。したがって、爪係合による両具の結合においては、肩部材をねじ締結する際に両具がずれ動かない程度の結合力を得られればよく、大きな爪係合高さが不要なので、両具を手作業で簡単に結合させることができる。
【0015】
より好ましくは、前記肩部に被せた前記肩部材を、前記係合保持具に対して上方からねじ締結するようにした構成を採用するとよい。この構成によれば、ねじ締結力は、係合保持具を上方に引き上げる向きに作用する。このため、肩部材とのねじ締結時に、上記爪係合の負担にならず、その爪係合高さの低減を図ることができる。
【0016】
また、前記係合具に前記肩部と周方向に係合する脚部を設け、その脚部を前記係合保持具が前記肩部に載る状態でその係合保持具と前記容器本体との間に通してその容器本体上に支持されるようにした構成を採用することも好ましい。この構成によれば、係合保持具と容器本体との間に脚部が通され、係合具が開き止めされた状態でその容器本体上に支持されると共に容器本体に対して回り止めされる。このため、係合保持具を持ち上げるまでに係合具が位置ずれし難くなり、より簡単に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、この発明は、上記の構成の採用により、肩部を形成した金属製の容器本体に対して肩部材を結合する液体容器において、吊下げ荷重に対する肩部材の結合強度を、溶接を用いることなく強制嵌合以上に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の第1実施形態に係る液体容器を添付図面に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、この第1実施形態に係る液体容器は、口部11を胴部12より細くして肩部13が形成された容器本体10と、肩部13に上方から被せる肩部材20と、肩部材20に取り付けた蓋セット30と、肩部材20に設けた吊下げ具40とを有している。
【0019】
容器本体10は、内容器と外容器との間の空間を真空とした真空二重容器となっている。なお、外容器の外周下端部に、容器本体の底部となる外装底部材14が装着されている。この装着には、強制嵌合が採用されている。内容器と外容器とは、それぞれ金属製とされ、横断面形状が円筒状になっている。
【0020】
肩部材20は、無端リング状に形成されている。これは、肩部材20を分割体にすると、部材数及び組み立て工数の増加、結合部分の外観露出等を招くためである。
【0021】
肩部材20の内周部は、口部11の上端部にパッキン15を介して被さっている。これは、内容器と外容器の接合部となっている口部11の上端部を特に保護するためである。
【0022】
また、肩部材20は、口部11の上端部から肩部13の端部まで上方から被さるように形成されている。なお、肩部材20を肩部13の端部まで被せたのは、肩部13の全体的な保護、口部11と外気との接触防止を図るためである。
【0023】
肩部13の端部は、全周に亘って他の肩部分より一段低くなっている。一方、肩部材20は、肩部13の端部と上下に対向する外周壁21を有する。肩部材20は、その外周壁21の下端が肩部13の端部に受けられる。
さらに、この外周壁21の内周が肩部13の端部段差面に嵌合しており、肩部材20の水平方向の位置ずれが防止されている。したがって、肩部材20は、容器本体10の肩部13及び口部11とで受けさせられた取り付けとなっており、肩部材20が抜け落ちることが確実に防止されている。
【0024】
なお、この外周壁21は、液体容器10の外観を円筒状に見せてデザイン性を高めるため、胴部12と概ね同じ太さになっている。
【0025】
蓋セット30は、肩部材20に螺着される取り付けベース31と、口部11と取り付けベース31との間を連通させる注ぎ口32と、注ぎ口32を開閉する蓋33と、蓋33を閉じた状態に固定する蓋ロック操作部34とを備えている。
【0026】
注ぎ口32は、取り付けベース31の内周及び口部11の内周に対してパッキンを介して着脱可能に嵌合される。取り付けベース31の内周に注ぎ口32が嵌合されると、注ぎ口32の上端部が取り付けベース31から突出する。この状態で取り付けベース31が肩部材20に装着されると、取り付けベース31の内周と口部11間は注ぎ口32により水密に連通させられる。
【0027】
蓋33は、取り付けベース31にヒンジ機構で回動可能に支持されている。取り付けベース31と蓋33が係合した閉状態で、蓋33の下面に配置された栓体で注ぎ口32がシールされるようになっている。取り付けベース31と蓋33の係合解除は、蓋33側に設けられた開閉操作部材35の操作により行うようになっている。
【0028】
この第1実施形態では、液体容器本体10が少なくとも3リットルの容量を有する比較的大型のものとなっている。このため、吊下げ具40は、ハンドルとなっている。この吊下げ具40は、肩部材20の外周壁21に対してヒンジ機構により回動自在に取り付けられている。吊下げ具40の回動範囲は、胴部12と接触しないように規制されている。
【0029】
図3は、肩部材20を外した状態の肩部13を斜め上方から示している。図4は、図1の肩部13の部分を拡大して示している。
図3、図4に示すように、容器本体10の肩部材20の内方に位置する口部11の外周部分に、太さを部分的に変化させて段差部16が形成されている。段差部16は、太さを部分的に細くすることにより、水平又は下側に面するように形成されている。なお、段差部16を太さを部分的に太くして形成することも可能である。
【0030】
段差部16より上方に離間した口部11の外周部分に、上側に進むに連れて縮径する円錐面17が形成されている。これは、上向きに接触する係合相手との係合強度を高めるためである。
【0031】
第1実施形態に係る液体容器は、段差部16に引っ掛かる周方向に有端の係合具51と、この係合具51の周方向端間が広がらないように係合具51を段差部16に位置決めする係合保持具52とからなる取り付け補助具50が設けられている。
【0032】
係合具51は、容器本体10の口部11の外周を略全周に亘って挟む一対の係合部材53、53から構成されている。各係合部材53は、略半円弧状とされ、その内端部は、段差部16と円錐面17とを抱くように段差部16に外側から引っ掛けられるように形成されている。
【0033】
各係合部材53は、下端から複数本の脚部54が周方向に4等分間隔で延びており、各係合部材53がバランスよく肩部13上に支持されるようになっている。一方、容器本体10は、口部11と肩部13の境界部分に、周方向に複数本の脚部54と対応する間隔で形成された複数の凹部18を有している。各凹部18は、各脚部54を嵌め込める深さになっている。このため、各係合部材53は、段差部16と円錐面17に引っ掛かる状態で各脚部54が各凹部18に嵌り込み、凹部18の周方向両側面と各脚部54が周方向に係合可能になっている。したがって、この取り付け補助具50は、係合具51と容器本体10とを周方向両側に係合させて回り止めすることができる。
【0034】
係合保持具52は、係合具51を下側及び外側から抱く金属板製の無端リング部材から構成されている。係合保持具52の内端部は、段差部16と円錐面17に引っ掛かる係合具51のうち、段差部16の外方に位置する部分において外側から抱くようになっている。これは、係合保持具52を口部11の上方から肩部13上に載せられるようにするため、係合保持具52の内端部の最小内径を段差部16より大径にする必要があり、その径差により係合具51が捻れるように外れることを外側から抱くことにより防止することができるからである。
【0035】
さらに、係合保持具52は、その内端部から外側に水平なフランジ部56が形成されたものになっている。このフランジ部56は、ねじ孔57が周方向の複数個所に等配されており、肩部材20の上方からねじ締結する際の締結力が全周に亘ってバランスよく上向きに作用するようになっている。
【0036】
さらに、フランジ部56は、肩部材20の内面に形成された位置合わせ及び回り止め用のリブ部が通る切欠きが周方向にバランスよく形成されたものになっている。
【0037】
上記の取り付け補助具50によれば、係合具51の最大外径部と係合保持具52の内端部との間に径差があるため、図5に示すように、係合保持具52を肩部13に載せることができる。
【0038】
その状態において、図6〜図8に示すように、各係合部材53の各脚部54を斜めに傾けながら、その係合保持具52と口部11との間に通して各凹部18に嵌め込むことにより、各係合部材53を段差部16及び円錐面17に沿わせることができる。このため、この取り付け補助具50は、係合具51を構成する各係合部材53が段差部16及び円錐面17に引っ掛かると共に、肩部13上にバランスよく支持される。
【0039】
なお、係合保持具52の内端部は、図3、図7に示すように、係合部材53の外側面に周方向に等配形成されたリブ55で係合具51の内端部と部分的に接触するようになっている。これにより、係合具51と係合保持具52との上記径差によって係合保持具52の内端部上側と係合具51との間でガタがでないようにしつつ、係合保持具52を持ち上げる間に両具51、52間の摩擦を軽減することができる。
【0040】
また、図7、図9に示すように、この取り付け補助具50は、上記のように係合保持具52を肩部13に載せた状態で、係合具51を前記段差部16に引っ掛けられるので、その状態から係合保持具52を持ち上げることができる。このとき、図9、10(a)に示すように、係合保持具52と口部11との間に各脚部54が通され、係合具51は、開き止めされた状態で肩部13上に支持されると共に、容器本体10に対して回り止めされる。
【0041】
ここで、図3に示すように、係合具51は、各係合部材53の下端に突部58が周方向に複数個所に等配形成されたものとなっている。一方、係合保持具52は、各突部58の周方向配置に対応した孔59が内端部に形成されたものとなっている。
なお、突部58を係合具51側に形成したのは、各係合部材53が樹脂成形品であり、金属板製の係合保持具52に形成する場合と比して一体形成が容易なため、また、係合具51への孔形成を回避するためであり、これらに問題がなければ、突部58と孔59の配置を逆にすることも可能である。
図10(b)に示すように、係合保持具52を各突部58と各孔59の対応位置合せした状態で持ち上げると、各突部58が各孔59に嵌り込むようになっている。したがって、この取り付け補助具50は、図9に示すように、係合具51と係合保持具52とを周方向両側に係合させて回り止めすることができる。
【0042】
さらに、図10(a)に示すように、係合具51は、各係合部材53の下端に係合爪60が周方向に複数個所に等配形成されたものとなっている。係合保持具52を持ち上げると、その内端部が各係合爪60を乗り越えて段差部16に引っ掛かるようになっている。このため、両具51、52を上下に爪係合させると、係合具51を係合保持具52が外側から抱いた位置決め状態がバランスよく保持される。したがって、この取り付け補助具50は、前記の位置決め状態で係合具51と係合保持具52とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合することができる。
【0043】
上記のように位置決め状態とされた取り付け補助具50は、概観を良好にするため、肩部13に被せた肩部材20の内方に収まるようになっている。そして、図4に示すように、被せた肩部材20の上方から係合保持具52のねじ孔57を利用して肩部材20と係合保持具52とをねじ締結すると、係合保持具52が上方に引き上げられる締結力が作用し、これにより係合具51が段差部16に引き付けられる。なお、ねじ締結後、肩部材20のねじ止め孔は、キャップで塞がれる。
【0044】
上述のように位置決めされた取り付け補助具50は、係合保持具52に抱かれた係合部51の係合部材53、53間の周方向端間が広がらなくなるので、引っ掛かりが所定以上に緩むことはない。したがって、取り付け補助具50と容器本体10との吊下げ荷重に対する結合強度を強制嵌合以上に得ることができる。
【0045】
そして、前記の位置決め状態で係合具51と係合保持具52とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合されるので、そのような状態の取り付け補助具50と肩部材20とをねじ締結すれば、取り付け補助具50と肩部材20との結合においても吊下げ荷重に対して強制嵌合以上の結合強度が得られる。したがって、この第1実施形態に係る液体容器は、吊下げ荷重に対する肩部材20の結合強度を、溶接なしでも強制嵌合以上に得ることができる。
【0046】
また、上述のように肩部材20は、容器本体10の肩部13及び口部11とで受けさせられた取り付けとなっており、肩部材20が抜け落ちることが確実に防止されている。したがって、取り付け補助具50と肩部材20とをねじ締結すれば、係合保持具52が下向きの大きな力を受けて係合具51から外れることも肩部材20が余ほどに大きく変形しない限り起こり得ず、実用上問題が生じることはない。
【0047】
なお、この第1実施形態に係る液体容器において、段差部16は、全周に亘る必要はないが、容器本体10が金属製の成形部材から構成される場合、全周に形成する方が成形が簡単になる。
また、脚部58、係合爪60等は、周方向にバランスのよい支持等が得られればよく、周方向の全長に亘って又は複数個所に設けることができる。
また、液体容器本体10の容量が少ない場合は、吊下げ具40としてベルトを採用することもできる。
【0048】
上述に例示したように、この発明の作用・効果が得られる限り、適宜の構成を採用することができる。例えば、この発明は、3リットル未満の容量のものでも肩部材20の結合強度を得たい場合に適用することができる。また、蓋セット、肩部材等の構成については、前掲の特許文献1のように、肩部材と蓋セットの取り付けベースとを一体に設けた構成、栓体を取り付けベースの内周に螺着可能とした構成、蓋とコップとを兼ねさせた構成等を採用することができる。
【0049】
また、取り付け補助具についても、この発明の作用・効果が得られる限り、他の構成を採用することができる。その一例として、この発明の第2実施形態を図11に基づいて説明する。なお、以下においては、第1実施形態との相違点のみを述べ、同一に考えられる構成に同符号を用いる。
図11に示すように、この第2実施形態においては、取り付け補助具70の係合具71が、口部11の外周に嵌合する周壁72と、段差部16に引っ掛かる外鍔73とを一体に形成した一対の係合部材74、74から構成されている。
各係合部材74は、金属板製であり、半円分割とされている。
【0050】
一方、係合保持具76、76は、一対の係合部材74、74の周方向両端部間に形成されたねじ通し孔75、75に挿入されるボルト・ナットから構成されている。
【0051】
取り付け補助具70は、係合保持具76、76を外した状態で、一対の係合部材74、74を段差部16に引っ掛けた位置に保持し、その状態で係合保持具76、76を締結することにより、周壁72が口部11の外周を締め付けて係合部材74、74が段差部16に引っ掛かり、かつ係合部材74、74の周方向両端部間が閉じ合った状態から広がらないように位置決めされる。その結果、係合部材74、74と係合保持具76、76とは、上下方向の荷重を一体で受けるように結合される。その後は、上記第1実施形態と同じように各係合部材74の外鍔73に形成されたねじ孔77により肩部材とねじ締結される。
【0052】
したがって、この第2実施形態に係る液体容器は、吊下げ荷重に対する肩部材の結合強度を、溶接なしでも強制嵌合以上に得ることができる。この第2実施形態に例示したように、取り付け補助具の係合具と肩部材とをねじ締結することも可能である。なお、この第2実施形態に係る液体容器は、回り止め性能等が上記第1実施形態に劣るが、形状、構成部材が単純な分、低コストで製造可能な点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態に係る液体容器の縦断側面図
【図2】図1の液体容器の全体斜視図
【図3】図1の取り付け補助具の分解斜視図
【図4】図1の取り付け補助具の部分を拡大した断面図
【図5】図1の取り付け補助具の係合保持具を肩部に載せた様子を示す分解斜視図
【図6】図5の状態から係合部材を段差部に引っ掛ける様子を示す作用図
【図7】図6の状態から係合保持具を持ち上げた様子を示す作用図
【図8】図6の状態を外観で示した分解斜視図
【図9】図7の状態を外観で示した分解斜視図
【図10】aは図7の状態における脚部と爪係合部を示す作用図、bは図7の状態における突部を示す作用図
【図11】aは第2実施形態に係る取り付け補助具の全体斜視図、bは第2実施形態に係る取り付け補助具の作用図
【符号の説明】
【0054】
10 容器本体
11 口部
12 胴部
13 肩部
14 外装底部材
15 パッキン
16 段差部
17 円錐面
18 凹部
20 肩部材
21 外周壁
30 蓋セット
31 取り付けベース
32 注ぎ口
33 蓋
34 蓋ロック操作部
35 開閉操作部材
40 吊下げ具
50、70 取り付け補助具
51、71 係合具
52、76 係合保持具
53、74 係合部材
54 脚部
55 リブ
56 フランジ部
57、77 ねじ孔
58 突部
59 孔
60 係合爪
71 係合具
72 周壁
73 外鍔
75 ねじ通し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩部を形成した金属製の容器本体と、前記肩部に上方から被せる無端リング状の肩部材と、この肩部材に設けた吊下げ部とを有し、前記肩部材を前記容器本体に取り付けた液体容器において、
前記容器本体の肩部材内方に位置する外周部分に、太さを部分的に変化させて段差部を形成し、
前記段差部に引っ掛かる周方向に有端の係合具と、この係合具の周方向端間が広がらないように前記係合具を前記段差部に位置決めする係合保持具とからなる取り付け補助具を設け、
前記取り付け補助具を、前記の位置決め状態で前記係合具と前記係合保持具とが上下方向の荷重を一体で受けるように結合されるものとし、
前記肩部に被せた前記肩部材を、前記の位置決め状態の前記取り付け補助具とねじ締結したことを特徴とする液体容器。
【請求項2】
前記係合具と前記容器本体とを周方向両側に係合させて回り止めし、前記係合具と前記係合保持具とを周方向両側に係合させて回り止めしたことを特徴とする請求項1に記載の液体容器。
【請求項3】
前記係合保持具を、前記係合具を下側及び外側から抱く金属板製の無端リング部材とし、
前記係合保持具を前記肩部に載せた状態で前記係合具を前記段差部に引っ掛け、その状態から前記係合保持具を持ち上げて両具を上下に爪係合させて前記係合具を前記係合保持具が外側から抱いた位置決め状態とするように設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記肩部に被せた前記肩部材を、前記係合保持具に対して上方からねじ締結するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の液体容器。
【請求項5】
前記係合具に前記肩部と周方向に係合する脚部を設け、その脚部を前記係合保持具が前記肩部に載る状態でその係合保持具と前記容器本体との間に通してその容器本体に支持されるようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の液体容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−131997(P2008−131997A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318496(P2006−318496)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】