説明

液体容器

【課題】液体噴射装置に液体を供給する液体容器において、多くの液体を収容しつつ、正確なインクの残量検知を行う。
【解決手段】インクカートリッジ100は、インク収容部101と、弁500と、多孔質流路180と、を備える。インク収容部101は、流動し得る状態で液体を収容する。開口125から、インクがインクカートリッジ100の外部に送出される。弁500は、インク収容部101と開口125との間の流路に配される。弁500は、弁500の下流側の圧力の変化によって液体の流通を制御する。多孔質流路180は、互いに連通した空隙を備える多孔質部材で構成される。多孔質流路180は、インク収容部101と弁500の間の少なくとも一部の区間の流路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に液体を供給する液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターに供給すべきインクを収容したインクタンクが知られている。たとえば、特許文献1のインクタンクは、インクが保持されている第1の多孔質部材を収容する主インク室と、その下流に設けられインクの有無を検出する直角プリズムと、直角プリズムの下方に直角プリズムに接して設けられる消泡用の第2の多孔質部材を備える。
【0003】
特許文献1のインクタンクは、第1の多孔質部材にインクを保持することにより、一定値以上の力で吸引された場合に限り、インクを外部に供給することができる。また、第2の多孔質部材でインク中の気泡を吸収することにより、直角プリズムの表面にインクの気泡が付着してインク残量の誤検出が生じる可能性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−1307776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のインクタンクは、多孔質部材にインクを保持する方式であるため、インクタンク内に保持できるインクの量が、多孔質部材が占める体積分だけ少なくなる。このような問題は、プリズムを備えるインクタンクに限らず、液体を外部に供給する液体容器について、広く存在する。
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を取り扱うためになされたものであり、液体噴射装置に液体を供給する液体容器において、多くの液体を収容しつつ、正確なインクの残量検知を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を取り扱うためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
液体容器であって、
流動し得る状態で液体を収容する液体収容室と、
前記液体を前記液体容器の外部に送出する供給口と、
前記液体収容室と前記供給口との間の流路に配される流通制御部であって、前記流通制御部の下流側の圧力の変化によって前記液体の流通を制御する流通制御部と、
互いに連通した空隙を備える多孔質部材で構成され、前記液体収容室と前記流通制御部の間の少なくとも一部の区間の流路を構成する多孔質流路と、を備える、液体容器。
【0009】
このような態様とすれば、多孔質部材で液体を保持する液体容器に比べて、液体収容室内に大量の液体を収容することができる。また、流動し得る状態で保持されている液体が、制御されずに液体容器外部に漏出する事態を、流通制御部によって防止することができる。さらに、液体内の気泡を多孔質流路が捕捉して下流に流通するのを防止するため、気泡によって流通制御部が正常に機能しなくなる可能性を低減することができる。
【0010】
なお、「AとBの間の流路」とは、AからBに至る流路を意味する。
また、流通制御部は、流通制御部の下流側の圧力の変化によって、流通制御部の上流側と下流側の液体の流通を制御する。
(i)流通制御部の下流側の圧力が上流側の圧力よりも小さく、かつ両者の差が所定値より大きい場合に、液体を流通させ、(ii)流通制御部の下流側の圧力が上流側の圧力よりも小さく、かつ両者の差が所定値未満である場合に、液体の流通を阻止する態様とすることが好ましい。また、流通制御部は、流通制御部の下流側の圧力が上流側の圧力とほぼ等しい場合にも、液体の流通を阻止する態様とすることがより好ましい。そして、流通制御部は、流通制御部の下流側の圧力が上流側の圧力よりも高い場合にも、液体の流通を阻止する態様とすることがより好ましい。なお、「圧力がほぼ同じ」とは、圧力の差が、大きい方の圧力の5%未満であることをいう。
【0011】
[適用例2]
適用例1の液体容器であって、さらに、
前記液体容器内の前記液体の量が所定値を下回ったことを検出するための液体検出部であって、前記液体収容室内または前記液体収容室と前記多孔質流路との間の流路に当該液体検出部の少なくとも一部が設けられている液体検出部を備え、
前記液体検出部から前記多孔質流路に至る流路の底面の高さは、前記液体容器が使用される際の姿勢にあるときに、前記液体検出部および前記多孔質流路の高さ以下である、液体容器。
【0012】
このような態様とすれば、液体検出部に付着し、または液体検出部の周辺に残留している液体を、多孔質流路の多孔質部材が奏する毛管現象により、流路の底面に沿って多孔質流路に回収することができる。このため、液体容器内の液体の量が所定値を下回っているにもかかわらず、液体検出部に付着しまたは液体検出部の周辺に残留している液体によって、液体容器内の液体の量が所定値を下回ったことを液体検出部が検出できない、という事態が生じる可能性を低減できる。なお、液体検出部および多孔質流路の高さは、それぞれの構成の最も高い部分の位置によって決定する。
【0013】
なお、液体検出部は、液体容器内の前記液体の量が所定値を下回ったことを検出して、それ自体が電気信号を出力する態様であってもよいし、それ自体が電気信号を出力しない態様であってもよい。たとえば、液体容器内の前記液体の量が所定値を下回ったことに応じて、物理的または化学的な特性が変化し、他の機器を使用することによってその特性の変化を検出できるような態様であってもよい。
【0014】
[適用例3]
適用例1または2に記載の液体容器であって、
前記流通制御部は、
弁座と、
弁体と、
一方で大気圧を受け、他方で前記下流側の圧力を受け、前記一方側に付勢されている受圧板と、
前記弁体と前記受圧板とを接続する軸と、を備え、
大気圧と前記下流側の圧力との差が所定値より小さい場合に、前記流通制御部の上流側と前記下流側の流通を停止するように前記弁体と前記弁座を密着させ、
大気圧と前記下流側の圧力との差が所定値より大きい場合に、前記受圧板が前記圧力差のために変位されて前記軸を介して前記弁体を前記弁座から離すことにより、前記上流側と前記下流側とを流通させる、液体容器。
【0015】
流通制御部が弁座と弁体を備える弁である態様であって、液体容器が多孔質流路を備えない態様においては、液体内の気泡が弁に入り込んで、弁座と弁体との間に気体の流路を構成する可能性がある。そのような事態においては、弁が開いても、気体が優先的に流通し、液体が流通しない可能性がある。そのような場合には、液体容器内に液体が残留しているにもかかわらず、外部にその液体を供給することができない。
【0016】
しかし、弁と多孔質流路とを備える上記のような態様においては、多孔質流路が気泡を捕捉して下流の弁に流通するのを阻止する。このため、弁座と弁体との間に気体の流路が構成される可能性を低減することができる。よって、液体容器内に液体が残留しているにもかかわらず、外部にその液体を供給することができないという事態が生じる可能性を低減できる。
【0017】
また、液体容器が液体検出部を備える態様においては、弁が開いても、気体が優先的に流通し、液体が流通しない場合には、以下のような事態が生じうる。すなわち、液体検出部に基づき液体容器内の液体の量が所定値以上あると判断される状態であるにもかかわらず、液体が外部に供給されないという事態が生じる。
【0018】
しかし、弁と多孔質流路と液体検出部とを備える態様においては、弁座と弁体との間に気体の流路が構成される可能性を低減することができる。よって、液体検出部に基づき液体容器内の液体の量が所定値以上あると判断される状態であるにもかかわらず、液体が外部に供給されない、という事態が生じる可能性を低減することができる。
【0019】
[適用例4]
適用例1または2記載の液体容器であって、
前記流通制御部は、弁座と弁体とを備える弁であり、
前記弁体は、
前記下流側の圧力が前記流通制御部の上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が所定値より大きい場合に、前記弁座から離れて、前記弁座と前記弁体との間に前記液体を流通させ、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が前記所定値未満である場合に、前記弁座に密着して前記液体の流通を停止する、液体容器。
【0020】
適用例4においても適用例3と同様の効果を奏することができる。すなわち、多孔質流路が気泡を捕捉して下流の弁に流通するのを阻止する。このため、弁座と弁体との間に気体の流路が構成される可能性を低減することができる。よって、液体容器内に液体が残留しているにもかかわらず、外部にその液体を供給することができないという事態が生じる可能性を低減できる。
【0021】
さらに、弁と多孔質流路と液体検出部とを備える態様においては、弁座と弁体との間に気体の流路が構成される可能性を低減することができる。よって、液体検出部に基づき液体容器内の液体の量が所定値以上あると判断される状態であるにもかかわらず、液体が外部に供給されない、という事態が生じる可能性を低減することができる。
【0022】
[適用例5]
適用例1または2の液体容器であって、
前記流通制御部として、フィルムを備え、
前記フィルムは、
前記下流側から前記流通制御部の上流側に向かって前記液体が流通することを阻止し、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が所定値より大きい場合に、前記上流側から前記下流側に向かって前記液体を流通させ、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が前記所定値未満である場合に、前記上流側から前記下流側に向かって前記液体が流通することを停止させる、液体容器。
【0023】
流通制御部がフィルムである態様であって、液体容器が多孔質流路を備えない態様においては、液体が流通するにつれてフィルムによって流通を阻止された気泡がフィルムの表面に付着して、液体の流通を阻害する可能性がある。しかし、フィルムと多孔質流路とを備える上記のような態様においては、液体の流通方向について所定の厚みを有する多孔質流路がその内部に気泡を捕捉して下流のフィルムに流通するのを阻止する。このため、フィルムの表面に気泡が付着して液体の流通を阻害する可能性を低減できる。
【0024】
なお、本発明は、以下に示すような種々の態様で実現することが可能である。
(1)流体容器、液体供給装置、液体供給方法。
(2)流量制御装置、流量制御方法。
(3)インク収容器、インク供給装置。
(4)液体消費装置、インクジェットプリンター。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施例のインクカートリッジ100の分解斜視図。
【図2】第1実施例のインクカートリッジ100の断面図。
【図3】第2実施例のインクカートリッジ100bの分解斜視図。
【図4】第2実施例のインクカートリッジ100bの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
A.第1実施例:
図1は、第1実施例のインクカートリッジ100の分解斜視図である。インクカートリッジ100は、家庭用またはオフィス用に使用されるプリンター用のインクカートリッジである。インクカートリッジ100は、一方に開口が設けられた容器本体110と、容器本体110に組み合わされて開口を塞ぐ蓋部材20と、蓋部材20とは逆の側において容器本体110に貼付されるシート117とを備える。
【0027】
容器本体110は、底部1101および側壁1102を備え、それらで囲まれた略直方体、より正確には五角柱状の空隙を含む。蓋部材20は、略五角形の板状の部材である。蓋部材20は、容器本体110と組み合わされて容器本体110の空隙を封止し、略直方体のインクカートリッジ100の外殻を構成する。容器本体110および蓋部材20は、たとえば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の合成樹脂で形成される。
【0028】
容器本体110と蓋部材20で形成された空隙は、インク収容部101を形成する。インク収容部101には、流動し得る液体の状態でインクが収容される。インク収容部101内の液体が消費されると、その消費量に応じて、大気開放孔130を通じてインク収容部101内に空気が導入される。なお、大気開放孔130は、容器本体110の背面に設けられた大気開放流路を介して、インク収容部101に接続されている。空気は、大気開放孔130から通気孔131(図1において図示されず)を介して容器本体110の背面に送出され、容器本体110の背面から通気孔132(図1において図示されず)を介してインク収容部101に至る。
【0029】
容器本体110の側壁1102の一つには、インク供給部120が設けられている。インクカートリッジ100が使用される際には、インク供給部120が最下方に位置する姿勢であって、略直方体のインクカートリッジ100の2面がほぼ水平となる姿勢で、インクカートリッジ100は設置される。図1は、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢でインクカートリッジ100を示している。以下、インク供給部120が設けられている側壁1102を特に「底壁1103」と呼ぶ。底壁1103には、インク供給部120と、弁500と、多孔質流路180と、プリズム170と、が設けられている。
【0030】
インク供給部120は、インクカートリッジ100の外部にインクを送出するためのインク供給路122と、インク供給路122内に配されてインク供給路122内を満たしている供給孔フォーム124と、を含む。インク供給路122の一端は、容器本体110の底壁1103に設けられた開口125である。供給孔フォーム124は、互いに連通する空隙を備える多孔質部材である。インクカートリッジ100からインクジェットプリンターにインクが供給される際には、インクは、供給孔フォーム124の連通孔を通って、開口125からインクカートリッジ100の外部に送出される。
【0031】
弁500は、底壁1103であって、インク収容部101からインク供給路122に至るインク流路の途中に設けられている。弁500は、弁500の下流側の圧力の変化によってインクの流通が制御される。
【0032】
図2は、インクカートリッジ100の断面図である。図1に示したx,y,zの3軸を図2においても示す。なお、技術の理解を容易にするために、図2においては、本来、断面の奥に見えるべきである一部の構成の図示を省略している。弁500は、弁体550と、弁座520と、受圧板560と、軸部570と、バルブフィルム580と、円錐バネ590と、を備えている。
【0033】
軸部570は、円断面を有する棒状の部材であり、インク収容部101からインク供給路122に至るインク流路の途中に設けられた壁部520の穴に差し込まれている。壁部520の穴と軸部570との間には、インクを流通させるべき隙間が存在する。軸部570は、壁部520に対して上流側の流路pu内において、弁体550に接続されている。また、軸部570は、壁部520に対して下流側の流路pd内において、受圧板560に接続されている。弁体550は、略円盤状であり、壁部520の穴よりも直径が大きい。受圧板560は、略円盤状であり、壁部520の穴よりも直径が大きい。
【0034】
さらに、受圧板560と壁部520との間において、軸部570の周囲には、円錐バネ590が配されている。円錐バネ590は、受圧板560と壁部520とに対して、両者の間を広げる方向(図のz軸方向に平行である)に力を加えている。その結果、軸部570は、受圧板560を介して、壁部520に対して下流側に向かう力を加えられている。その結果、壁部520の上流側においては、弁体550が、壁部520に押しつけられている。その結果、定常状態においては、壁部520の上流側の流路pu内のインクは、下流側の流路pdに向かって、壁部520の穴内を流通することができない。すなわち、壁部520は、弁座として機能する。壁部520を弁座520とも表記する。
【0035】
壁部520の下流側の流路pdの一部は、バルブフィルム580によって、区画されている。そして、バルブフィルム580を挟んで流路pdの逆の側には、不図示の大気連通孔を介して大気と連通する空気室paが設けられている。バルブフィルム580は、可撓性のフィルムであり、壁部520の下流側の流路pdと、空気室paとの圧力差に応じて変形しうる。バルブフィルム580は、壁部520の下流側の流路pd内において受圧板560と接している。
【0036】
インクジェットプリンター側でインクが吐出され、インクカートリッジ100のインク供給路122内のインクの圧力が低下すると、壁部520の下流側の流路pdの圧力も低下する。すると、バルブフィルム580および受圧板560は、圧力が低下した流路pdの圧力と、空気室paに係る大気圧と、の差に起因する力を受ける。この力は、バルブフィルム580および受圧板560を、空気室paから流路pdに向かう向き(図2においてz軸の正の向き)に変位させようとする力である。そして、流路puの圧力と空気室paの圧力の差が所定値以上となったときに、バルブフィルム580および受圧板560、ひいては、軸部570および弁体550も、空気室paから流路pdに向かう向き(図2においてz軸の正の向き)に変位する。その結果、弁体550が壁部520(弁座520)から離れる。すると、壁部520の上流側の流路pu内のインクは、下流側の流路pdに向かって、壁部520の穴内を流通することができるようになる。
【0037】
上流側の流路puから下流側の流路pdにインクが供給されると、流路pdと空気室paと、の圧力差が所定値以下となる。すると、バルブフィルム580、受圧板560、軸部570および弁体550は、円錐バネ590の力により、流路pdから空気室paに向かう向き(図2においてz軸の負の向き)に変位する。その結果、弁体550が弁座520に密着し、再びインクの流通は阻止される。このようにして、弁500は、弁500の下流側の圧力の変化によってインクの流通を制御する。すなわち、インクジェットプリンターによってインクが吸引されていない状態において、インク供給部120からインクが漏れ出す事態を防止することができる。
【0038】
図2に示すように、多孔質流路180は、底壁1103上であって、インク収容部101から弁500に至るインク流路の途中に設けられている。多孔質流路180は、互いに連通する空隙を備える多孔質部材で構成される。インク収容部101から弁500に向かうインクは、この多孔質流路180の連通孔を通って、弁500に至る。インク収容部101から弁500に向かうインクは、すべて多孔質流路180を通る。
【0039】
インク収容部101内のインクが気泡を備えていた場合には、その気泡は、インクが多孔質流路180の連通孔を通る際に、多孔質流路180内の孔において捕獲される。そして、気泡は、多孔質流路180の下流側に到達しない。その結果、気泡を含んだインクが弁500に供給される可能性が低減される。
【0040】
仮に、弁500に気泡を含んだインクが流入すると、気泡が弁500内に入り込んで、弁座520と弁体550との間に気体の流路を構成する可能性がある。そのような事態においては、弁500が開いても、気体が優先的に弁500を流通し、インクが流通しない可能性がある。すなわち、弁500が開いても、気体が流通することによって流路puと空気室paとの適正な圧力差がなくなり、インクが十分に供給されないまま弁500が閉じてしまう可能性がある。そのような場合には、インクカートリッジ100内にインクが残留しているにもかかわらず、外部にその液体を供給することができない。
【0041】
しかし、本実施例においては、多孔質流路180が気泡を捕捉して下流の弁500に流通するのを阻止する。このため、弁座520と弁体550との間に気体の流路が構成される可能性を低減することができる。よって、インクカートリッジ100内にインクが残留しているにもかかわらず、インクカートリッジ100が外部にインクを供給することができないという事態が生じる可能性を低減できる。
【0042】
図2に示すように、プリズム170は、底壁1103に設けられており、一部がインク収容部101内に突出するように設けられている。プリズム170は、インク収容部101内のインクの液面が所定の位置を下回ったことを検出するための部材である。
【0043】
図1にしめすように、プリズム170は、略五角柱状である。プリズム170の五角形断面は、内角が90度の一つの頂点p1と、その頂点を挟んで配されそれぞれ内角が鈍角の二つの頂点p2,p3と、内角が90度の他の二つの頂点p4,p5とを有する。プリズム170のうち、頂点p1〜p3で張られる略三角柱状の部分は、インク収容部101内に露出している。このため、インク収容部101内にインクが所定量以上あるときには、頂点p1と頂点p2で張られる面と、頂点p1と頂点p3で張られる面とは、インクに接している。一方、頂点p4と頂点p5で張られる面171は、インクカートリッジ100の外面に露出している。
【0044】
インクカートリッジ100が未使用の状態においては、プリズム170の先端部分(頂点p1〜p3参照)をインクの液面の下に埋没させるのに十分なインクが存在する。このため、プリンターに設けられた光学センサからプリズム170の露出面171に向けて射出された光は、プリズム170の先端部分(頂点p1〜p3参照)において、インク収容部101内のインクに吸収される。よって、光学センサが受け取る反射光の量は所定値未満である。
【0045】
その後、インクが消費され、インクの液面が低下すると、プリズム170の先端部分(頂点p1〜p3参照)の一部は、インク収容部101内において、空気に触れることになる。このため、光学センサから射出された光は、プリズム170の先端部分(頂点p1〜p3参照)において、反射され、光学センサは、その反射光を受け取る。すなわち、光学センサが受け取る光の量は所定値以上である。よって、プリンター200は、光学センサが受け取る光の量に基づいて、インクの液面が所定の位置を下回ったこと、すなわち、インク残量が所定量を下回ったことを検出することができる。
【0046】
図2に示すように、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、プリズム170から多孔質流路180に至るインク収容部101の床面165は、プリズム170および多孔質流路180の高さよりも低い位置にあって、プリズム170から多孔質流路180に向かって傾斜している。なお、多孔質流路180とプリズム170の高さは、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、それぞれの最も高い部分の位置で評価するものとする。
【0047】
上記のような構成においては、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、インクの残量が少なくなった場合には、インクは、プリズム170から多孔質流路180に向かって流れる。インクの残量がさらに少なくなり、床面165の一部の上にのみインクが存在する状態となった場合にも、そのインクは、床面165の高い位置にあるプリズム170近傍には存在せず、床面165の低い位置にある多孔質流路180に接して多孔質流路180の近傍に存在することとなる。
【0048】
多孔質流路180は、多孔質部材で構成される。このため、下流のインク供給部120や弁500の流路pd,puの圧力が低下してインクを吸引されると、多孔質流路180の上流側から下流側に向かって順に連通孔内をインクが移動することになる。インク収容部101内のインクがほぼなくなると、多孔質流路180の上流側において、連通孔は空隙となる。すると、それらの空隙の毛細管力により、床面165上で多孔質流路180に接して多孔質流路180の近傍に存在するインクは、多孔質流路180内に吸引される。また、インク収容部101内に残留しているインクであって、多孔質流路180に接して多孔質流路180の近傍に存在するインクと繋がっているインクは、インクの液体の分子間力により、多孔質流路180の近傍のインクに引っ張られて、多孔質流路180内に吸引される。
【0049】
以上のような原理により、インク収容部101内にインクの残量が少なくなり、プリズム170表面や床面165の一部の上にのみインクが存在する状態となった場合にも、その後、それらのインクは多孔質流路180に吸引される。すなわち、プリズム170に付着したインクや、プリズム170近傍のインクが、インク収容部101内に残留する可能性は低い。このため、インク収容部101内において、インクの液面は、プリズム170の頂点p1〜p3で張られる三角形よりも下に位置しているにもかかわらず、プリズム170の表面にインクが付着して、そのインクによりプリンターの光学センサから射出された光が吸収されてしまう可能性が低い。よって、プリズム170を含むインク残量検出機構が、インク収容部101内のインクの量が検知されるべき量を下回っているにもかかわらず、それを検知できない、という事態が生じる可能性を低減できる。
【0050】
なお、本実施例におけるインク収容部101が、[課題を解決するための手段]における「液体収容室」に相当する。開口125が「供給口」に相当する。弁500が「流通制御部」に相当する。多孔質流路180が「多孔質流路」に相当する。プリズム170が「液体検出部」に相当する。弁体550が「弁体」に相当する。弁座520が「弁座」に相当する。
【0051】
B.第2実施例:
第2実施例のインクカートリッジ100bは、インクカートリッジ100bの外部とインク収容部101b内との圧力差が所定値以下である場合にインク収容部101bからインクが流出するのを防止するための機構が第1実施例とは異なる。そして、第2実施例のインクカートリッジ100bは、弁500を備えていない。また、第2実施例のインクカートリッジ100bは、インクカートリッジ100bの外部にインクを送出するインク供給部の構成が、第1実施例とは異なる。第2実施例のインクカートリッジ100bの他の点は、第1実施例のインクカートリッジ100と同じである。
【0052】
なお、第2実施例のインクカートリッジ100bの構成要素であって、第1実施例のインクカートリッジ100の構成要素と対応する構成要素には、第1実施例のインクカートリッジ100の構成要素に付した部号の末尾に符号「b」を付した符号を割り当てる。
【0053】
図3は、第2実施例のインクカートリッジ100bの分解斜視図である。第2実施例のインクカートリッジ100bの容器本体110bのバスタブ状の空隙は、可撓性を有するフィルム114で封止されている。フィルム114は、外周部を蛇腹状に折りたたまれて、外周部の外縁を容器本体110bの側壁1102bの端部に溶着される。このフィルム114と容器本体110bとで区画される空間が、インクが収容されるインク収容部101bである。
【0054】
蓋部材20bは、フィルム114の外側から容器本体110bに組み合わされて、容器本体110bを塞ぐ。蓋部材20bには、貫通孔である通気孔133bが設けられている。フィルム114と蓋部材20の間の空間には、通気孔133bを介して、空気が流通する。インク収容部101bの容量は、フィルム114の屈曲部116が伸ばされ、または折り曲げられ、平面部115が変位することにより、変化する。インク収容部101bの容量が小さくなるとき、それに応じて、フィルム114と蓋部材20の間の空間は大きくなる。
【0055】
容器本体110bの底部1101の略中央には、コイルバネ160が配されている。コイルバネ160は、他端において、受圧板112を支持している。受圧板112は、コイルバネ160によって、フィルム114および蓋部材20に向かって押しつけられている。フィルム114のうちの折りたたまれていない中央部分が、蓋部材20と受圧板112との間に位置する。すなわち、コイルバネ160は、インク収容部101bの容量が増大する方向に受圧板112を付勢している。
【0056】
インク収容部101b内のインクが消費されインクが占めていた容積が小さくなると、負圧が発生して、受圧板112およびフィルム114が底部1101に向かって引き寄せられる。フィルム114がインク収容部101b内部の圧力変化に応じて変形するのに対して、受圧板112は、インク収容部101b内部の圧力が変化しても、実質的に変形しない。しかし、フィルム114の変形に伴って、受圧板112は変位する。
【0057】
インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、底壁1103bよりも底壁1103bと向かい合う側の側壁1102bの近傍の角の位置には、大気連通室130bが設けられている。なお、図3は、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢でインクカートリッジ100を示している。大気連通室130bは、フィルム114に設けられた通気孔132bを介して、フィルム114と蓋部材20の間の空間に連通している。
【0058】
また、大気連通室130bは、インク収容部101bに連通している通気孔131bを備えている。大気連通室130bは、コイルバネ160の伸縮方向、すなわち、受圧板112が変位する方向について受圧板112を投射した場合に、受圧板112と重ならない位置に設けられる。なお、受圧板112が変位する方向を、図3において矢印Adで示す。矢印Adの方向は、Y軸正の方向と平行である。
【0059】
図4は、第2実施例のインクカートリッジ100bの断面図である。図3に示したx,y,zの3軸を図4においても示す。技術の理解を容易にするために、図4においては、本来、断面の奥に見えるべきである一部の構成の図示を省略している。大気連通室130bに対して容器本体110bの底部1101の側の位置には、変位伝達部材150が設けられている。
【0060】
変位伝達部材150は、受圧板112の変位に応じて、大気連通室130bの通気孔131bを開閉する。変位伝達部材150は、腕部153,154を有している。変位伝達部材150の腕部153,154は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の合成樹脂で形成される。
【0061】
変位伝達部材150の一方の腕部154は、大気連通室130bの通気孔131bの下に至っている。変位伝達部材150は、コイルバネ146によって、大気連通室130bの側、すなわち、受圧板112の側に向かって押されている。コイルバネ146によって、腕部154の先端部分が通気孔131bに押しつけられることにより、通気孔131bが封止される。
【0062】
変位伝達部材150の他方の腕部153は、受圧板112が変位する方向Adについて受圧板112を投射した場合に、その先端が受圧板112と重なる位置にまで達している(図4参照)。変位伝達部材150の腕部153の先端は、受圧板112が下降して所定の位置に達すると受圧板112と接触する。そして、受圧板112がさらに下降すると、腕部153の先端は、受圧板112によって押し下げられる。すると、腕部154も下降して通気孔131bから離れて、通気孔131bが開かれる。
【0063】
インク収容部101b内のインクが外部に送出され、インク収容部101b内の圧力が低下したときには、フィルム114の平面部115や受圧板112が、蓋部材20を離れて底部1101に近づく向きに変位する。すると、受圧板112に押されて変位伝達部材150が下降して、通気孔131bが開かれる。その結果、蓋部材20bに設けられた通気孔133b、フィルム114に設けられた通気孔132b、大気連通室130bの床部の通気孔131bを介して、インク収容部101b内に大気が導入される。
【0064】
容器本体110bの底壁1103bには、インク供給部120bが設けられている。インク供給部120bは、インクカートリッジ100bの外部にインクを送出するためのインク供給路122bと、インク供給路122b内に配されてインク供給路122b内を満たしている供給孔フォーム124bと、を含む。インク供給路122bの一端は、容器本体110の底壁1103bに設けられた開口125bである。供給孔フォーム124bの素材は、第1実施例の供給孔フォーム124と同じである。インクカートリッジ100bからインクジェットプリンターにインクが供給される際には、インクは、供給孔フォーム124bの連通孔を通って、開口125から外部に送出される。
【0065】
フィルム600は、底壁1103bであって、インク収容部101bからインク供給路122bの開口125bに至るインク流路の途中に設けられている。より具体的には、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、フィルム600は、供給孔フォーム124bの上部に位置する(図4参照)。
【0066】
インクジェットプリンターにおいてインクが吐出されたとき、フィルム600の下流側の圧力は、上流側の圧力に比べて低くなる。フィルム600は、フィルム600の上流側の圧力と、上流側よりも低い下流側の圧力との差が所定値未満である場合に、上流から下流に向かうインクの流通を阻止する。そして、フィルム600は、フィルム600の上流側と下流側の圧力の差が上記所定値以上である場合に、上流から下流にインクを流通させる。この所定値は、インクジェットプリンターにおいてインクが吐出されたときのフィルム600の下流側の圧力と上流側の圧力との差よりも小さい値に設定される。また、フィルム600は、上流側と下流側の圧力差によらず、下流から上流に向かうインクの流通を阻止する。
【0067】
このような構成とすることにより、インクジェットプリンターによるインクの吸引により下流側において負圧が発生していない状態において、インク供給部120bからインクが漏れ出す事態を防止することができる。また、所定の色のインクを収容するインクカートリッジ100bが、インクジェットプリンターにおいて、他の色のインクを収容するインクカートリッジが装着されるべき場所に装着された場合にも、インクジェットプリンター側の流路内の他の色のインクが、インクカートリッジ100b内に流入する事態を防止することができる。
【0068】
第2実施例のように、流通制御部がフィルム600である態様であって、かつ、インクカートリッジが多孔質流路180を備えない態様においては、インクが流通するにつれてフィルム600によって流通を阻止された気泡がフィルム600の表面に付着して、インクの流通を阻害する可能性がある。しかし、フィルム600とともに多孔質流路180とを備える第2実施例のような態様においては、インクの流通方向(図4の多孔質流路180においてx軸の正の方向)について所定の厚みを有する多孔質流路180がその内部に気泡を捕捉して、下流のフィルム600に気泡が流通するのを阻止する。このため、フィルム600の表面に気泡が付着してインクの流通が阻害される可能性を低減できる。
【0069】
図4に示すように、多孔質流路180bは、底壁1103bであって、インク収容部101bからフィルム600に至るインク流路の途中に設けられている。多孔質流路180bは、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、プリズム170よりも低い位置に設けられる。なお、多孔質流路180bとプリズム170の高さは、インクカートリッジ100が使用される際の姿勢において、それぞれの最も高い部分の位置で評価するものとする。
【0070】
インク収容部101bと多孔質流路180bとは、流路pcで接続されている。より詳細には、流路pcは、プリズム170がインク収容部101b内に露出している床面165bと接続されている。そして、流路pcは、多孔質流路180bの上端と同じ高さかそれよりも低い位置にある。すなわち、流路pcの底面は、多孔質流路180bの上端よりも高い部分を有さない。
【0071】
このような構成においても、インク収容部101b内のインクがほぼなくなると、多孔質流路180に接して多孔質流路180の近傍に存在するインクは、多孔質流路180内に吸引される。また、多孔質流路180に接しているインクと流路pcを介して繋がっているインクは、インクの粘性により多孔質流路180に接しているインクに引っ張られて、多孔質流路180内に吸引される。よって、プリズム170がインク収容部101b内に露出している床面165b上のインクや、プリズム170に付着しているインクも、インク収容部101b内に取り残されることなく、多孔質流路180内に収容される。
【0072】
このような原理により、インク収容部101内にインクの残量が少なくなり、プリズム170表面や床面165bの一部の上にのみインクが存在する状態となった場合にも、その後、それらのインクは多孔質流路180に吸引される。よって、インク収容部101内のインクの量が、検知されるべき量を下回っているにもかかわらず、プリズム170を含むインク残量検出機構がそれを検知できない、という事態が生じる可能性を低減できる。
【0073】
本実施例におけるフィルム600が、[課題を解決するための手段]における「フィルム」に相当する。
【0074】
C.変形例:
C1.変形例1:
上記実施例においては、インク収容部101のインクの量が所定値を下回ったことを検出する手段は、インクカートリッジ100に設けられたプリズム170である。そして、プリンターに設けられた光学センサの光射出部から射出された光が反射または吸収されることにより、光学センサの受光部において、インク収容部101のインクの量が所定値を下回ったことが検出される。しかし、液体容器内の液体の量が所定値を下回ったことを検出するための液体検出部は、他の態様とすることもできる。
【0075】
たとえば、液体検出部は、ピエゾ素子を備える態様とすることもできる。そのような態様においては、ピエゾ素子によって、所定期間、インク収容部または流路内に残留するインクに振動が加えられる。その後、ピエゾ素子は、残留するインクの振動の振幅や周期に応じて、インク収容部または流路内に残留するインクが少なくなったこと、またはインク収容部や流路内にインクが存在しないことを検知する。このような態様においても、上記実施例で説明したような多孔質流路を設けることで、液体検出部の誤動作を防止することができる。
【0076】
また、上記実施例では、液体検出部としてのプリズム170は、その一部がインク収容部101内に設けられている。しかし、液体検出部は、インク収容部101と多孔質流路180との間にその一部が設けられる態様とすることもできる。なお、上記第1および第2実施例では、液体検出部を備える態様を例示した。しかし、本発明の液体容器は、液体検出部を備えない態様とすることもできる。
【0077】
C2.変形例2:
上記第1実施例においては、床面165は、プリズム170および多孔質流路180の高さよりも低い位置にあって、プリズム170から多孔質流路180に向かって傾斜している。しかし、液体検出部から多孔質流路に至る流路の底面は、他の態様とすることもできる。たとえば、第2実施例に示すように、液体が、一旦下降して液体検出部より低い部位を流れ、その後上昇して多孔質流路に至る態様とすることもできる。すなわち、流路の底面の高さは、液体容器が使用される際の姿勢にあるとき(すなわち、開口125bの開口面が水平であるとき)に、液体検出部および多孔質流路の高さ以下であるように設けられ、液体検出部および多孔質流路の高さより高い部位を含まないように設けられていればよい。ただし、多孔質流路の高さは、液体検出部の高さとほぼ同じであるかそれ以下であることが好ましい。なお、「高さがほぼ同じ」とは、液体容器が使用される際の姿勢にあるときに、最も低い部位から測った高さの差が、高い方の高さの5%未満であることをいう。
【0078】
また、液体検出部から多孔質流路に至る流路の底面は、液体容器が使用される際の姿勢にあるとき(すなわち、開口125bの開口面が水平であるとき)に、水平または前記液体検出部から前記多孔質流路に向かって下降している態様とすることが好ましい。ここで、流路の底面が「水平または前記液体検出部から前記多孔質流路に向かって下降している」とは、(i)流路の底面全体が水平である態様と、(ii)流路の底面全体が液体検出部から多孔質流路に向かって下降している態様と、(iii)流路の底面が、多孔質流路に向かって下降している部分と水平である部分とを含む態様と、を含む。
【0079】
C3.変形例3:
上記実施例においては、多孔質流路180は、互いに連通する空隙を備える多孔質部材で構成される。この多孔質部材は、たとえば、発泡剤を含ませて発泡させた樹脂で構成することもできる。また、繊維を積層して構成することもできる。
【0080】
C4.変形例4:
上記実施例に対して、前記流通制御部の上流側と下流側の圧力の差によって、上流側と下流側を流通させる弁(差圧弁)を適用してもよい。かかる差圧弁は弁体と弁座を備え、差圧弁の下流側の圧力と上流側の圧力との差が所定値より大きくなると弁体が弁座から離れる方向に変位して、差圧弁の上流側と下流側が流通可能な状態になり、下流側にインクが供給される。そして、上流側から下流側へのインクの供給により、下流側の圧力と上流側の圧力との差が所定値未満となると、弁体と弁座が密着して、差圧弁の上流側と下流側の流通が停止される。
【0081】
このような態様は、第1実施例のインクカートリッジ100において、大気に連通している空気室paの部分を、以下のように置き換えることにより、実現することができる。すなわち、空気室paの部分を上流側の流路puに連通させて、上流側のインク流路の一部とする。なお、当該部分は、大気に連通してはいない。そして、バルブフィルム580が、インク流路の上流側の流路puの圧力と、インク流路の下流側の流路pdの圧力とを、その両側において受けるように構成する。
【0082】
C5.変形例5:
上記実施例では、インクカートリッジ100,100bは、家庭用またはオフィス用に使用されるプリンター用のインクカートリッジである。しかし、本発明の液体容器としてのインクカートリッジは、業務用に使用される大型のプリンターのインクカートリッジに適用することもできる。
【0083】
また、インクカートリッジは、印刷ヘッドおよびサブタンクが設置されたキャリッジとは別に、メインタンクとしてインクカートリッジ100が設置されるインクジェットプリンター(いわゆるオフキャリッジタイプのプリンター)に適用してもよく、カートリッジ装着部が印刷ヘッドと一体になって印刷媒体の紙巾方向に往復移動するインクジェットプリンター(いわゆるオンキャリッジタイプのプリンター)にも適用してもよい。
【0084】
C6.変形例6:
上記実施例及び変形例では、インクジェットプリンターに使用されるインクカートリッジについて説明したが、本発明は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に用いても良く、また、そのような液体を収容した液体容器にも適用可能である。本発明の液体容器は、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。なお、「液滴」とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
20,20b…蓋部材
100,100b…インクカートリッジ
101,101b…インク収容部
110,110b…容器本体
1101…底部
1102,1102b…側壁
1103,1103b…底壁
112…受圧板
114…フィルム
115…平面部
116…屈曲部
117…シート
120,120b…インク供給部
122,122b…インク供給路
124,124b…供給孔フォーム
125,125b…開口
130…大気開放孔
130b…大気連通室
131,131b…通気孔
132,132b…通気孔
133b…通気孔
146…コイルバネ
150…変位伝達部材
153,154…腕部
160…コイルバネ
165,165b…床面
170…プリズム
171…露出面
180,180b…多孔質流路
200…インクジェットプリンター
500…弁
520…壁部(弁座)
550…弁体
560…受圧板
570…軸部
580…バルブフィルム
590…円錐バネ
600…フィルム
Ad…受圧板の変位方向を示す矢印
p1〜p5…プリズムの頂点
pa…空気室
pc…プリズム(インク収容部)と多孔質流路を結ぶ流路
pd…弁体に対して下流側の流路
pu…弁体に対して上流側の流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器であって、
流動し得る状態で液体を収容する液体収容室と、
前記液体を前記液体容器の外部に送出する供給口と、
前記液体収容室と前記供給口との間の流路に配される流通制御部であって、前記流通制御部の下流側の圧力変化によって前記液体の流通を制御する流通制御部と、
互いに連通した空隙を備える多孔質部材で構成され、前記液体収容室と前記流通制御部の間の少なくとも一部の区間の流路を構成する多孔質流路と、を備える、液体容器。
【請求項2】
請求項1記載の液体容器であって、さらに、
前記液体容器内の前記液体の量が所定値を下回ったことを検出するための液体検出部であって、前記液体収容室内または前記液体収容室と前記多孔質流路との間の流路に少なくとも一部が設けられた液体検出部を備え、
前記液体検出部から前記多孔質流路に至る流路の底面の高さは、前記液体容器が使用される際の姿勢にあるときに、前記液体検出部および前記多孔質流路の高さ以下である、液体容器。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体容器であって、
前記流通制御部は、
弁座と、
弁体と、
一方で大気圧を受け、他方で前記下流側の圧力を受け、前記一方側に付勢されている受圧板と、
前記弁体と前記受圧板とを接続する軸と、を備え、
大気圧と前記下流側の圧力との差が所定値より小さい場合に、前記流通制御部の上流側と前記下流側の流通を停止するように前記弁体と前記弁座を密着させ、
大気圧と前記下流側の圧力との差が所定値より大きい場合に、前記受圧板が前記圧力差のために変位され前記軸を介して前記弁体を前記弁座から離すことにより、前記上流側と前記下流側とを流通させる、液体容器。
【請求項4】
請求項1または2記載の液体容器であって、
前記流通制御部は、弁座と弁体とを備える弁であり、
前記弁体は、
前記下流側の圧力が前記流通制御部の上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が所定値より大きい場合に、前記弁座から離れて、前記弁座と前記弁体との間に前記液体を流通させ、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が前記所定値未満である場合に、前記弁座に密着して前記液体の流通を停止する、液体容器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の液体容器であって、
前記流通制御部として、フィルムを備え、
前記フィルムは、
前記下流側から前記流通制御部の上流側に向かって前記液体が流通することを阻止し、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が所定値より大きい場合に、前記上流側から前記下流側に向かって前記液体を流通させ、
前記下流側の圧力が前記上流側の圧力よりも小さく、かつ前記下流側の圧力と前記上流側の圧力の差が前記所定値未満である場合に、前記上流側から前記下流側に向かって前記液体が流通することを停止させる、液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171313(P2012−171313A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38036(P2011−38036)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】