説明

液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法

【課題】洗濯の仕上がり品質を維持しつつも燃料コストを低減する。
【解決手段】この洗濯方法では、少なくとも、界面活性剤を0.2〜23.5質量%、リモネンを8.5〜17質量%、酵素を0.025〜0.15質量%、安定剤を0.1〜0.5質量%、pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、その他の成分が水及び付加剤にて構成される液体洗浄剤組成物を用いる。そして、洗濯装置に対して動作指令を行うコンピュータに、液体洗浄剤組成物と洗濯対象物とが投入された洗濯槽に対して、約40℃以下の低温水を用いて洗浄処理を行わせる洗濯工程(ステップS10)と、洗濯工程の後に常温水を用いて洗濯対象物のすすぎ処理を行わせるすすぎ工程(ステップS12)と、すすぎ工程の後に洗濯対象物の脱水処理を行わせる本脱水工程(ステップS15)と、を含む工程を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法に係り、特に、洗濯の仕上がり品質を維持しつつ低温水での洗濯処理を可能とすることによって、燃料コストの低減を実現した新たな液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶剤又は洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすることを業として行うクリーニング業が知られている(クリーニング業法第2条)。このクリーニング業を行うクリーニング業者にあっては、例えば一般家庭で行われている水を使った洗濯では落とすことが難しい油脂汚れなどを、水の代わりにあぶらを良く溶かす有機溶剤を用いて洗濯するドライクリーニングと呼ばれる方法が実施されている。ドライクリーニングでは、オイルの染みや口紅など、普通の洗濯では落ちにくい油脂系汚れもよく落とすことができる。
【0003】
ここで、クリーニング業者で行われている従来の洗濯方法について、図面を用いて具体的に説明する。図3は、従来行われている洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。図3において示す洗濯方法は、特にワイシャツ洗いを行う場合を例示するものである。
【0004】
従来の洗濯方法では、洗濯装置の洗濯槽に対して洗濯対象物であるワイシャツと洗剤、及び漂白剤が投入されて洗濯の準備が行われる。このとき、洗濯槽に投入される洗剤には一般的に粉末石鹸が使用され、漂白剤には一般的に過炭酸と過酸化水素水が使用される。この状態から洗濯装置を動作させて洗濯処理を行うことになるのであるが、洗濯装置にはコンピュータが内蔵されており、このコンピュータが洗濯対象物に応じた動作指令を洗濯装置に対して行えるようになっている。
【0005】
そして、図3に示す従来のワイシャツ洗濯の場合には、まず、60℃と高温の湯水が洗濯槽を満たすように高水位に設定され、20分の洗浄処理を行い(ステップS30)、その後、洗浄処理を行った湯水を排出するための弱脱水が1分間行われる(ステップS31)。次に、40℃の湯水が再度洗濯槽を満たすように高水位に設定され、10分間のすすぎ工程が実施される(ステップS32)。ステップS32にて行われたすすぎ工程で用いられた湯水は、続いて行われる1分間の弱脱水によって排出される(ステップS33)。従来の洗濯方法では、さらにこの後、高水位に設定された常温水を用いて10分間のすすぎ工程が繰り返される(ステップS34)。そして、ステップS34にて行われたすすぎ工程の常温水も、その後実施される1分間の弱脱水によって排出される(ステップS35)。さらに、洗濯槽に対してワイシャツをのり付けするために用いられるのりと中和剤(クエン酸)が投入され、低水位で5分程度ののり付け工程が実施される(ステップS36)。のり付け工程の5分が経過した後、本脱水が3分行われることにより、ワイシャツの洗濯処理が完了する(ステップS37)。なお、従来の洗濯方法で必要となるトータルの所要時間は、図3に示すワイシャツ洗濯の場合には51分程度である。
【0006】
ちなみに、図3を用いて説明した従来の洗濯方法では、洗剤に固体の粉末石鹸が用いられる場合を例示して説明したが、クリーニング業者が用いる洗剤は固体のものには限られず、例えば下記特許文献1〜3に開示されるような液体の洗浄剤を用いることも従来から行われている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−247899号公報
【特許文献2】特開2000−282099号公報
【特許文献3】特表2000−505138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来から実施されている洗濯方法では、40〜60℃程度といった比較的高温の湯水を用いることから、営業的にクリーニング業を行う場合には、ある程度の規模のボイラ設備を備える必要があった。そして、このようなボイラ設備で消費される重油等の燃料は非常に大きなコスト負担となるため、クリーニング業界においては、洗濯品質を維持しつつも燃料コストを抑制できるような新たな液体洗浄剤組成物や洗濯方法が求められていた。
【0009】
しかしながら、従来の液体洗浄剤組成物の開発は、上記特許文献1〜3に代表されるように、洗剤自体の性能を向上させることのみに主眼が置かれたものであり、燃料コストの抑制など、洗剤利用者の要請を考慮した技術開発は必ずしも成されていなかった。
【0010】
また、重油等の化石燃料の使用量を低減することができる液体洗浄剤組成物や洗濯方法が提供できれば、近年高まりを見せるCO2の排出量削減や地球温暖化の防止などといった環境問題にも配慮することが可能となる。
【0011】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、洗濯の仕上がり品質を維持しつつも低温水での洗濯処理を可能とすることによって、燃料コストの低減を実現した新たな液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る液体洗浄剤組成物は、少なくとも、界面活性剤を0.2〜23.5質量%、リモネンを8.5〜17質量%、酵素を0.025〜0.15質量%、安定剤を0.1〜0.5質量%、pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、その他の成分が水及び付加剤にて構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る液体洗浄剤組成物において、前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤を1.0〜10.5質量%、アニオン界面活性剤を0.2〜10.5質量%、及び/又は両性界面活性剤を2.5質量%含むこととすることができる。
【0014】
また、本発明に係る液体洗浄剤組成物において、前記酵素は、タンパク質分解酵素を0.025〜0.05質量%、脂肪分解酵素を0.025〜0.05質量%、及びデンプン分解酵素を0.025〜0.05質量%含むこととすることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る液体洗浄剤組成物において、前記リモネンは、d−リモネン、l-リモネン、又はd/l−リモネンであることとすることができる。
【0016】
本発明に係る洗濯方法は、少なくとも、界面活性剤を0.2〜23.5質量%、リモネンを8.5〜17質量%、酵素を0.025〜0.15質量%、安定剤を0.1〜0.5質量%、pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、その他の成分が水及び付加剤にて構成される液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法であって、洗濯装置に対して動作指令を行うコンピュータに、前記液体洗浄剤組成物と洗濯対象物とが投入された洗濯槽に対して、約40℃以下の低温水を用いて洗浄処理を行わせる洗濯工程と、前記洗濯工程の後に常温水を用いて洗濯対象物のすすぎ処理を行わせるすすぎ工程と、前記すすぎ工程の後に洗濯対象物の脱水処理を行わせる本脱水工程と、を含む工程を実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る別の洗濯方法は、少なくとも、界面活性剤を0.2〜23.5質量%、リモネンを8.5〜17質量%、酵素を0.025〜0.15質量%、安定剤を0.1〜0.5質量%、pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、その他の成分が水及び付加剤にて構成される液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法であって、洗濯装置に対して動作指令を行うコンピュータに、あらかじめ前記液体洗浄剤組成物の塗り込まれた洗濯対象物が投入された洗濯槽に対して、約40℃以下の低温水を用いて洗浄処理を行わせる洗濯工程と、前記洗濯工程の後に常温水を用いて洗濯対象物のすすぎ処理を行わせるすすぎ工程と、前記すすぎ工程の後に洗濯対象物の脱水処理を行わせる本脱水工程と、を含む工程を実行させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る洗濯方法において、前記洗濯工程は、7〜18分間行われることが好適である。
【0019】
また、本発明に係る洗濯方法において、前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤を1.0〜10.5質量%、アニオン界面活性剤を0.2〜10.5質量%、及び/又は両性界面活性剤を2.5質量%含むこととすることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る洗濯方法において、前記酵素は、タンパク質分解酵素を0.025〜0.05質量%、脂肪分解酵素を0.025〜0.05質量%、及びデンプン分解酵素を0.025〜0.05質量%含むこととすることができる。
【0021】
またさらに、本発明に係る洗濯方法において、前記リモネンは、d−リモネン、l-リモネン、又はd/l−リモネンであることとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、洗濯の仕上がり品質を維持しつつも低温水での洗濯処理が可能となるので、燃料コストの低減を実現した新たな液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、重油等の化石燃料の使用量を低減することができるので、CO2の排出量削減や地球温暖化の防止などといった環境問題にも配慮することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
[本実施形態に係る液体洗浄剤組成物について]
本実施形態に係る液体洗浄剤組成物は、少なくとも、界面活性剤を0.2〜23.5質量%、リモネンを8.5〜17質量%、酵素を0.025〜0.15質量%、安定剤を0.1〜0.5質量%、pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、その他の成分が水及び付加剤にて構成されている。以下、各物質の構成比率と含有理由について、詳細に説明を行う。
【0026】
界面活性剤には、ノニオン界面活性剤を1.0〜10.5質量%、アニオン界面活性剤を0.2〜10.5質量%、及び/又は両性界面活性剤を2.5質量%含むこととすることができる。
【0027】
このうち、ノニオン界面活性剤は、浸透・分散・溶解・乳化等の作用を発揮することによって、油脂(動植物系)性や鉱油(ピッチ・コールタール)性の汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。ノニオン界面活性剤に用いることのできる具体的な物質とその含有量としては、10.5質量%程度のポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、2.0質量%程度のアルキルグルコシド(AG)、1.5質量%程度のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、1.5質量%程度のショ糖脂肪酸エステル、1.2質量%程度のソルビタン脂肪酸エステル、2.0質量%程度のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、1.25質量%程度の脂肪酸アルカノールアミド、1.0質量%程度のヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0028】
アニオン界面活性剤は、吸着・分離・分解・汽泡・泡沫・凝集等の作用を発揮することによって、水溶性(酒類、マヨネーズ、砂糖、肉汁、お茶、血液、コーヒー、トマトジュース、ケッチャップ等)の汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。アニオン界面活性剤に用いることのできる具体的な物質とその含有量としては、10.5質量%程度のポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウム、3.0質量%程度のセッケン、2.0質量%程度の高級アルコール硫酸エステル塩(AS)、1.0質量%程度のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、0.2質量%程度のα−スルホ脂肪酸エステル(α−SF)、0.25質量%程度のα−オレフィンスルホン酸塩、0.25質量%程度のモノアルキルリン酸エステル塩(MAP)、0.25質量%程度のアルカンスルホン酸塩(SAS)、0.5質量%程度のラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
両性界面活性剤は、吸着・分離・分解・汽泡・泡沫・凝集等の作用を発揮することによって、油脂(動植物系)性の汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。両性界面活性剤に用いることのできる具体的な物質とその含有量としては、2.5質量%程度のヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0030】
リモネンは、脱臭・防臭・消臭・防虫・吸着・分解等の作用を発揮することによって、油脂(動植物系)性や鉱油(ピッチ・コールタール)性の汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。リモネンに用いることのできる具体的な物質とその含有量としては、8.5〜17質量%程度のd−リモネン、8.5〜17質量%程度のl−リモネン、8.5〜17質量%程度のd/l−リモネン等が挙げられる。リモネンの含有量の下限値を8.5質量%としたのは、この含有量より少ないと洗浄力が低下するからであり、一方、リモネンの含有量の上限値を17質量%としたのは、この含有量より多いと成分残留による弊害の発生や洗浄力低下を招くからである。特に、リモネンは、後述する低温水での洗濯処理を可能とする上で重要な役割を果たす物質である。
【0031】
酵素は、分解作用を発揮する物質であり、タンパク質分解酵素を0.025〜0.05質量%、脂肪分解酵素を0.025〜0.05質量%、及びデンプン分解酵素を0.025〜0.05質量%含むこととすることができる。各酵素の含有量の下限値を0.025質量%としたのは、この含有量より少ないと洗浄力が低下するからであり、一方、各酵素の含有量の上限値を0.05質量%(3つの酵素の合計で0.15質量%)としたのは、この含有量より多いと成分残留による弊害の発生や洗浄力低下を招くからである。
【0032】
タンパク質分解酵素には、0.025〜0.05質量%程度のプロテアーゼを用いることができ、タンパク質やアミノ酸等に由来する汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。
【0033】
脂肪分解酵素には、0.025〜0.05質量%程度のリパーゼを用いることができ、脂肪質や皮脂等に由来する汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。
【0034】
デンプン分解酵素には、0.025〜0.05質量%程度のアミラーゼを用いることができ、デンプン質や砂糖等に由来する汚れに対して洗浄効果を発揮することができる。
【0035】
安定剤は、浸透作用を発揮する物質であり、上述した酵素を安定させる働きがある。安定剤に用いることのできる具体的な物質とその含有量としては、0.1質量%程度のプロピレングリコールや0.1質量%程度のエチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
pH調整剤には、酸性剤として機能するものとして、硫酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、蓚酸、クエン酸等を用いることができ、これらはいずれも0.01質量%程度含有させることが好適である。また、pH調整剤には、アルカリ性剤として機能するものとして、EDTA(エデト酸塩)、NTA(ニトリロトリ酢酸)、オルソケイ酸ソーダ等を用いることができ、これらはいずれも0.02質量%程度含有させることが好適である。
【0037】
本実施形態に係る液体洗浄剤組成物では、上述した主要含有物質の他に、32.865質量%程度の水を含んでいる。ただし、この水の含有量については適宜変更が可能である。また、本実施形態に係る液体洗浄剤組成物には、付加剤を含有することが許容される。例えば、以下で説明する本実施形態の洗濯方法では、金属イオン封鎖剤として用いられるEDTA、EDTA−4Na、EDTA−2Na等のキレート剤や、漂白剤として用いられる酸素系漂白剤としての低温活性型過炭酸ナトリウムや過酸化水素水、塩素系漂白剤としての次亜塩素酸ナトリウム等を付加剤とすることができる。
【0038】
[本実施形態に係る洗濯方法について]
次に、上述した本実施形態に係る液体洗浄剤組成物を用いることによって行われる本実施形態に係る洗濯方法を、図面を用いて説明する。以下で説明する本実施形態の洗濯方法は、上述した本実施形態に係る液体洗浄剤組成物を用いることによって、洗濯の仕上がり品質を維持しつつも燃料コストの低減を図ることが可能となる。
【0039】
図1は、本実施形態に係る洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。図1において示す洗濯方法は、上述した従来の洗濯方法との比較のために、特にワイシャツ洗いを行う場合を例示している。
【0040】
本実施形態に係る洗濯方法では、洗濯装置の洗濯槽に対して洗濯対象物であるワイシャツと上述した本実施形態に係る液体洗浄剤組成物、及び付加剤としての漂白剤とが投入されて洗濯の準備が行われる。この状態から洗濯装置を動作させて洗濯処理を行うことになるのであるが、洗濯装置には従来技術の場合と同様にコンピュータが内蔵されており、このコンピュータが洗濯対象物に応じた動作指令を洗濯装置に対して行えるようになっている。
【0041】
そして、図1に示すワイシャツ洗濯の場合には、まず、40℃と低温の低温水が洗濯槽を満たすように高水位に設定され、18分の洗浄処理を行い(ステップS10:洗濯工程)、その後、洗浄処理を行った低温水を排出するための弱脱水が1分間行われる(ステップS11)。次に、常温の水が再度洗濯槽を満たすように高水位に設定され、7分間のすすぎ工程が実施される(ステップS12:すすぎ工程)。ステップS12にて行われたすすぎ工程で用いられた常温水は、続いて行われる1分間の弱脱水によって排出される(ステップS13)。本実施形態の洗濯方法では、この後、洗濯槽に対してワイシャツをのり付けするために用いられるのりと中和剤(クエン酸)が投入され、低水位で5分程度ののり付け工程が実施される(ステップS14)。のり付け工程の5分が経過した後、本脱水が3分行われることにより、ワイシャツの洗濯処理が完了する(ステップS15:本脱水工程)。なお、本実施形態に係る洗濯方法で必要となるトータルの所要時間は、図1に示すワイシャツ洗濯の場合には35分程度である。
【0042】
つまり、本実施形態に係る洗濯方法によれば、従来技術と比較して、洗濯工程で使用する水の温度が60℃から40℃へと大幅に低下しており、高温の湯水を用意する必要がなくなっている。また、洗濯工程の時間も20分から18分と短縮されている。さらに、本実施形態に係る洗濯方法では、従来技術で行われていた約40℃程度の温水を用いたすすぎ工程(温水すすぎ及び弱脱水処理)を、1工程省略することができており、温水の省略と所要時間の短縮が図られている。なお、洗濯工程の低温水の温度については、40℃以下の温度の適用が可能であることが確認されている。例えば、30℃の低温水を適用した場合、洗濯工程に要する時間を約20分程度とすることが好適である。また、図1において示す洗濯方法により洗濯されたワイシャツの仕上がり品質は、図3で示した従来技術の洗濯方法の場合と比べて同等以上の品質を示すことが確認されている。さらに、月間5万点程度の洗濯実績を有する洗濯装置において、使用する重油の量を約3分の1削減できることが確認されている。これらの事実から、本実施形態に係る洗濯方法によれば、洗濯の仕上がり品質を維持しつつ燃料コストの低減を図ることが可能となる。
【0043】
以上、図1を用いることによって、本実施形態に係る洗濯方法によりワイシャツを洗濯する場合に好適な実施形態を説明した。次に、図2を用いて、本実施形態に係る洗濯方法によりジャンパー・スキーウェア等を洗濯する場合に好適な実施形態を説明する。なお、図2は、本実施形態に係る他の洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0044】
図2に示す洗濯方法の場合においても、洗濯装置の洗濯槽に対して洗濯対象物であるジャンパー・スキーウェア等と上述した本実施形態に係る液体洗浄剤組成物、及び付加剤としての漂白剤とが投入されて洗濯の準備が行われる。
【0045】
図2に示すジャンパー・スキーウェア等を対象とした洗濯の場合には、まず、40℃と低温の低温水が洗濯槽を満たすように高水位に設定され、7分の洗浄処理を行い(ステップS20:洗濯工程)、その後、洗浄処理を行った低温水を排出するための弱脱水が2分間行われる(ステップS11)。次に、常温の水が再度洗濯槽を満たすように高水位に設定され、3分間のすすぎ工程が実施される(ステップS22:すすぎ工程)。ステップS22にて行われたすすぎ工程で用いられた常温水は、続いて行われる1分間の脱水によって排出される(ステップS23)。この後、洗濯槽に対してジャンパー・スキーウェア等の仕上がり形状を安定化させるための柔軟剤と中和剤が投入され、低水位で3分程度の柔軟処理工程が実施される(ステップS24)。柔軟処理工程の3分が経過した後、本脱水が3分行われることにより、ジャンパー・スキーウェア等の洗濯処理が完了する(ステップS25:本脱水工程)。なお、図2に示す洗濯方法で必要となるトータルの所要時間は、19分程度である。
【0046】
つまり、ジャンパー・スキーウェア等の洗濯の場合には、図1の場合と同じ温度の低温水を利用しつつ、さらに所要時間の短縮が図られている。したがって、本実施形態に係る洗濯方法によれば、洗濯対象物の種類によって、さらなる処理コストの削減が可能なのである。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0048】
上述した実施形態では、洗濯装置の洗濯槽に対して、洗濯対象物と本実施形態に係る液体洗浄剤組成物とを別々の状態で投入する場合を例示して説明した。しかしながら、本実施形態に係る液体洗浄剤組成物の投入方法は、このような手法のみに限られるものではなく、例えば、洗濯対象物に対してあらかじめ本実施形態に係る液体洗浄剤組成物を塗り込んでおき、この液体洗浄剤組成物が塗り込まれた洗濯対象物を洗濯槽に投入するようにしても良い。かかる手法によれば、汚れに対してピンポイントで液体洗浄剤組成物を作用させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る液体洗浄剤組成物は、洗濯装置を用いた洗濯のみではなく、バケツ等の容器内に洗濯対象物とともに漬け込んで使用したり、シミ抜き剤として利用したりすることも可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図2】本実施形態に係る他の洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図3】従来行われている洗濯方法を説明するためのフローチャートを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体洗浄剤組成物であって、
少なくとも、
界面活性剤を0.2〜23.5質量%、
リモネンを8.5〜17質量%、
酵素を0.025〜0.15質量%、
安定剤を0.1〜0.5質量%、
pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、
その他の成分が水及び付加剤にて構成されることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の液体洗浄剤組成物において、
前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤を1.0〜10.5質量%、アニオン界面活性剤を0.2〜10.5質量%、及び/又は両性界面活性剤を2.5質量%含むことを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物において、
前記酵素は、タンパク質分解酵素を0.025〜0.05質量%、脂肪分解酵素を0.025〜0.05質量%、及びデンプン分解酵素を0.025〜0.05質量%含むことを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体洗浄剤組成物において、
前記リモネンは、d−リモネン、l-リモネン、又はd/l−リモネンであることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
少なくとも、
界面活性剤を0.2〜23.5質量%、
リモネンを8.5〜17質量%、
酵素を0.025〜0.15質量%、
安定剤を0.1〜0.5質量%、
pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、
その他の成分が水及び付加剤にて構成される液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法であって、
洗濯装置に対して動作指令を行うコンピュータに、
前記液体洗浄剤組成物と洗濯対象物とが投入された洗濯槽に対して、約40℃以下の低温水を用いて洗浄処理を行わせる洗濯工程と、
前記洗濯工程の後に常温水を用いて洗濯対象物のすすぎ処理を行わせるすすぎ工程と、
前記すすぎ工程の後に洗濯対象物の脱水処理を行わせる本脱水工程と、
を含む工程を実行させることを特徴とする洗濯方法。
【請求項6】
少なくとも、
界面活性剤を0.2〜23.5質量%、
リモネンを8.5〜17質量%、
酵素を0.025〜0.15質量%、
安定剤を0.1〜0.5質量%、
pH調整剤を0.01〜0.03質量%含み、
その他の成分が水及び付加剤にて構成される液体洗浄剤組成物を用いる洗濯方法であって、
洗濯装置に対して動作指令を行うコンピュータに、
あらかじめ前記液体洗浄剤組成物の塗り込まれた洗濯対象物が投入された洗濯槽に対して、約40℃以下の低温水を用いて洗浄処理を行わせる洗濯工程と、
前記洗濯工程の後に常温水を用いて洗濯対象物のすすぎ処理を行わせるすすぎ工程と、
前記すすぎ工程の後に洗濯対象物の脱水処理を行わせる本脱水工程と、
を含む工程を実行させることを特徴とする洗濯方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の洗濯方法において、
前記洗濯工程は、7〜18分間行われることを特徴とする洗濯方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の洗濯方法において、
前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤を1.0〜10.5質量%、アニオン界面活性剤を0.2〜10.5質量%、及び/又は両性界面活性剤を2.5質量%含むことを特徴とする洗濯方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の洗濯方法において、
前記酵素は、タンパク質分解酵素を0.025〜0.05質量%、脂肪分解酵素を0.025〜0.05質量%、及びデンプン分解酵素を0.025〜0.05質量%含むことを特徴とする洗濯方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の洗濯方法において、
前記リモネンは、d−リモネン、l-リモネン、又はd/l−リモネンであることを特徴とする洗濯方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214421(P2008−214421A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51242(P2007−51242)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507068305)株式会社ファッションクリーニング金井 (1)
【出願人】(506320107)有限会社マサキ化学総合研究所 (1)
【Fターム(参考)】