説明

液体洗浄剤組成物

【課題】 流動性のある構造粘性(チキソトロピー性)を持ち、洗浄力、低温安定性及び高温安定性に優れた乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (a)非石鹸系アニオン界面活性剤5〜30質量%と、(b)例えば、炭素数が10〜14であるアルキルジメチルアミンオキシドに代表される特定の構造式を有する半極性界面活性剤1〜10質量%と、(c)炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種を0.1〜10質量%含有し、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa/sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となることを特徴とする、乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に台所等の食器類、調理器具やシンク周り等の硬表面に好適な液体洗浄剤組成物に関し、更に詳しくは、流動性のある構造粘性(チキソトロピー性)を有し、洗浄力に優れ、かつ保存安定性が良好な乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗浄力は、硬表面に対する液体洗浄剤にとって、最も重要な機能である。この洗浄力を向上させる技術としては、従来から継続的に鋭意検討されており、例えば、アニオン界面活性剤とアルキルジメチルアミンオキシド等の半極性性界面活性剤/両性界面活性剤やマグネシウム塩等の多価金属塩を組み合わせ、分子間の静電的相互作用を利用し、強固な分子会合体を形成させる方法などが知られている。
【0003】
これらの従来技術は、洗浄力を向上させるには、非常に有効な技術であるが、相互作用を強めることにより、低温地域での長期にわたる保存において白濁や析出を引き起こしたり、急激な増粘により著しく使用性が悪化するなど、液体洗浄剤しての基本性能を十分に満足させることは非常に困難であった。
【0004】
このような課題を解決するため、他の界面活性剤やハイドロトロープ剤等を配合した組成物が数多く知られており、従来はこれらの分子会合体を可溶化や切断することによって、配向状態を乱すことが一般的であった。
しかしながら、本発明者らは、予期せぬことに、本発明の組み合わせにおけるラメラ液晶という更なる強固な相互作用を持った大きな分子会合体を形成させることで、洗浄力を向上しつつ、これらの課題を解決できるに至ったのである。
更に、ラメラ液晶によって、流動性のある構造粘性(チキソトロピー性)を付与させることができることがわかった。この「チキソトロピー性」とは、せん断応力が低いか又はゼロの場合、大きな粘度を有し、逆にせん断応力が高い場合には、粘度が低く、液体洗浄剤としての流動性を確保できるような粘度特性を指す。また、このチキソトロピー性は、一般にジェルとよばれる剤形の外観特徴を生み出すものでもあり、この外観は一般に高洗浄力をイメージさせ、高洗浄力組成物には非常にメリットとなる。また、研磨剤及び酵素や香料等のカプセル等の機能性粒子を分散安定化するにも非常に有効である。
更にまた、本発明においては、ラメラ液晶によって安定な乳濁外観を有する。これによって乳液のようなマイルド感を想起させることができる。マイルド感を付与させるため、液体洗浄剤組成物に乳濁外観を付与させたものが開示されているが、それらのほとんどが高分子ポリマーや水不溶性粒子のような乳濁剤を添加することによって実現されている。しかしながらこれらの乳濁技術は高分子ポリマーの溶解性や水不溶性粒子の比重などに注意する必要があった。
本発明においては、ラメラ液晶によって、チキソトロピー性による高洗浄力外観および乳濁によるマイルド外観という2つの外観特徴を併せ持つことができる。
【0005】
これまで、様々な液晶状態を用いた洗浄剤の研究が行われているが、液晶という強固な相互作用を持った分子集合体の性質から、ラメラ液晶を構築し、低温安定性と硬表面に対する洗浄力を両立し、更にチキソトロピー性を持った液体洗浄剤組成物の例は少ない。
例えば、アニオン性界面活性剤と、充填パラメータで規定されたノニオン性界面活性剤と水とを組み合わせ、ゲル化又は液晶状態を呈する洗浄組成物(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この洗浄組成物は非常に高粘度であり、流動のある構造粘性を付与させるものではないものである。
また、陰イオン性界面活性剤、及び両性及び/又はツビッターイオン性界面活性剤、ラメラ相誘発性構造付与剤及びエリモント剤を含んだ洗浄組成物(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この洗浄剤組成物はシャワージェルのような皮膚洗浄剤で、潤いを与える感触を目的としており、硬表面洗浄組成物に求められる高洗浄力には関しては何等記載も示唆もないものである。
【特許文献1】特開2004−168951号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特表平11−513053号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、チキソトロピー性を有し、かつ、硬表面に適した高洗浄力及び保存安定性を併せ持つ乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、非石鹸系アニオン界面活性剤とアミンオキシドなどの半極性界面活性剤とを特定量含有せしめ、特定の油性成分を特定量組み合わせることによって、チキソトロピー性を有し、かつ、低温安定性を悪化させることなく、より洗浄力の高い上記目的の乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)非石鹸系アニオン界面活性剤5〜30質量%と、(b)下記一般式(I)で示される半極性界面活性剤1〜10質量%と、(c)炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種を0.1〜10質量%含有し、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa/sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となることを特徴とする、乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チキソトロピー性を有し、かつ、硬表面に適した高い洗浄力及び保存安定性を併せ持つ乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)非石鹸系アニオン界面活性剤5〜30質量%と、(b)下記一般式(I)で示される半極性界面活性剤1〜10質量%と、(c)炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種を0.1〜10質量%含有し、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa/sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となり、乳濁外観を有するものである。
【化2】

【0011】
本発明に用いる(a)成分の非石鹸系アニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アミノ酸系アニオン性界面活性剤等が挙げられ、これらは少なくとも1種(各単独で或いは2種以上組み合わせて)含有することができる。用いる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩、又はモノ、ジ、トリいずれの低級アルカノールアミン塩等が挙げられる。
この(a)成分のアニオン界面活性剤を非石鹸型に限定したのは、幅広いpH範囲、特に中性領域(pH5〜8)において、本発明の効果を更に発揮させるためである。
【0012】
これらの非石鹸系アニオン界面活性剤の中で、好ましくは、洗浄力及び本発明の粘度特性を特に達成する上で、その疎水基構造が分枝型/2級型/アルケニル基のいずれかを含む硫酸/スルホン酸型アニオン界面活性剤を少なくとも1種以上含有するものが望ましい。
更に好ましくは、分枝型/2級型アルキル構造のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種以上含有ものが望ましい。また洗浄力の点から、好ましくは炭素数8〜18、更に好ましくは炭素数10〜16が望ましい。これらのうち洗浄力と保存安定性を両立する上で最も好ましくは、炭素数10〜16のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であり、そのオキシエチレン基の平均付加モル数は好ましくは、0.1〜5、更に好ましくは、0.3〜4が好適である。
【0013】
これらの(a)成分の非石鹸系アニオン界面活性剤の含有量は、泡を持続性させる目的から、液体洗浄剤組成物全量に対して、5〜30質量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、8〜25%、更に好ましくは、10〜20%とすることが望ましい。
この(a)成分の含有量が5%未満であると、泡の持続力に劣り、一方、30%を超えると、高粘度化してしまい、流動性がなくなることとなり、好ましくない。
【0014】
本発明に用いる(b)成分の半極性界面活性剤としては、下記一般式(I)で示されるものが挙げられ、これらは単独で或いは2種以上組み合わせて含有することができる。
【化3】

また、式(I)中のR1は、単独のアルキル基又はアルケニル基でもよく、異なるアルキル基又はアルケニル基を有する混合アルキル基又はアルケニル基でもよい。更に、その構造は、直鎖又は分枝、もしくはそれらの混合でもよい。その炭素数は、洗浄力の点から、好ましくは8〜16、更に好ましくは10〜14が望ましい。また更なる洗浄力の点からアルキルジメチルアミンオキシド/アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシドが好ましく、特に好ましくは、炭素数が10〜14であるアルキルジメチルアミンオキシドを含有することが望ましい。
【0015】
これらの(b)成分の半極性面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、1〜10%、好ましくは、1〜8%、更に好ましくは、2〜6%とすることが望ましい。
この(b)成分の含有量が1%未満であると、洗浄力低下及びラメラ液晶形成できず、一方、10%を越えて、多いと高粘度化してしまい、流動性がなくなることとなり、好ましくない。
また、これらの(b)成分の半極性面活性剤は、pHによって電荷変化をおこし、(a)成分との相互作用が変化する場合があることから、本発明では、pHは、好ましくは、5.5〜7.5、更に好ましくは、6.0〜7.0に調整することが望ましい。pHが5.5未満の場合は、(a)成分との相互作用が強すぎることでゲル化又は固化を起こしやすくなり、7.5より大きい場合には、逆に相互作用が弱くなりすぎて安定なラメラ液晶を形成できない場合がある。
【0016】
本発明に用いる(c)成分は、安定なラメラ液晶を付与すると共に、更なる洗浄力の向上を発揮せしめる点から含有するものであり、炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種が挙げられる。
具体的には、市販されているサフォール23(サソール社製、C12/C13=50%/50%、直鎖率:50%(直鎖率とは、原料アルコール中の直鎖アルキルアルコールの占める割合))、ダイアドール13(三菱化学社製、C13:100%、直鎖率50%)、ネオドール23(シェル社製、C12/C13=40%/60%、直鎖率80%)等の分枝及び直鎖状の混合型1級アルコール、イソフォール12(サソール社製、C12:100%)トリデカノール(協和発酵社製、C13:100%)等の分枝型1級アルコール、1−デカノールや椰子油高級アルコールなどの直鎖型アルコール、更には、2−デカノール等の分枝/直鎖状の2級アルコール、また脂肪酸としては飽和/不飽和アルキル鎖を有するラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
好ましくは、粘度比を保ちつつ、高せん断粘度を低くできる(流動性を更に良好とする)点から、分枝状または2級型の高級アルコールを少なくとも1種以上含有することが望ましい。特に好ましくは、洗浄力の面から炭素数が10〜16であれば分枝状の高級アルコールが更に望ましい。炭素数が8未満の場合は洗浄力の向上効果も乏しい上、臭気も悪くなる傾向にあり、また、炭素数が24を超えて大きくなる場合には、洗浄力の向上効果も乏しい上、融点が高くなるため、組成物中に均一に相溶しない場合がある。
好適な例としては、サフォール23、ダイアドール13、ネオドール23等の分枝及び直鎖状の混合型1級アルコール、2−デカノール等の2級アルコール、イソフォール12、トリデカノール等の分枝型1級アルコールが望ましい。特に好ましくはイソフォール12、トリデカノール等の分枝型1級アルコールが望ましい。
【0018】
これらの(c)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、0.1〜10%、好ましくは、0.5〜5%、更に好ましくは、1〜3%とすることが望ましい。
この(c)成分の含有量が0.1%未満であると、安定なラメラ液晶を形成できず、一方、10%を超えると、固化または乳化を起こし、好ましくない。
【0019】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度(25℃)が500〜5000mPa・sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比(25℃)が5以上となることが必要であり、液体洗浄剤組成物として更なる流動性を確保するため、好ましくは、60rpmの粘度が1000〜4500mPa・s、更に好ましくは、1000〜4000mPa・sとすることが望ましい。
【0020】
本発明において、「6rpm/60rpm粘度比」とは、6rpmの低せん断力と60rpmの高せん断力による粘度を比率化したものである。この数値が大きいほど、せん断速度の変化による粘度差が大きく、つまり低せん断力で高粘度、高せん断力で低粘度となるような組成物が得られる。低せん断力、つまり静止に近い状態では高粘度であるため、外観上濃厚なイメージや高級感を付与することができる。また、粒子配合系においては、粒子の沈降を抑制することができる。しかしながら、高せん断力、つまり使用時にボトルなどから出そうとした場合において、そのまま高粘度であると非常に排出しづらいため、高せん断力で低粘度化できる粘度特性、つまりチキソトロピー性を付与することが非常に重要である。
より好ましいチキソトロピー性を持つには、6rpm/60rpm粘度比が5.2以上、更に好ましくは,5.5以上7.0以下とすることが望ましい。
粘度比が5未満であると、チキソトロピー性の低下だけではなく、常温において相分離を起こし、更に−5℃の低温条件下にて凍結することがある。
【0021】
また、本発明において、上記60rpmの粘度範囲、上記6rpm/60rpmの粘度比を上記範囲(5以上)に設定するには、分離を起こさない安定なラメラ液晶を形成させることが重要である。
この安定なラメラ液晶を形成させるには、初めに、上記(a)成分と(b)成分によるラメラ液晶を形成させることが望ましい。そのときの(a)成分と(b)成分の質量比率(以後、a/bと記述)が、好ましくは、a/b=1〜6、特に好ましくは、a/b=2〜5とすることが望ましい。しかしながら、(a)/(b)成分のみのラメラ液晶は常温において相分離(離水)を起こし、且つ−5℃にて凍結を起こす。このラメラ液晶に対して(c)成分を添加することで、安定で且つチキソトロピー性を持ったラメラ液晶を形成できる。この現象は(a)成分と(b)成分の強固な相互作用によって、密に配向したラメラ液晶に対して、(c)成分がくさび型となって配向に柔軟性を与え、ラメラ相間に水が保持できる構造に変化していると考えられる。このラメラ液晶の変化は偏光顕微鏡にて観察でき、(a)成分と(b)成分のみでは、規則性のない輝像が確認できるが、(c)成分を添加することによって、典型的な十字ニコル像へと変化する。チキソトロピー性及び高低温安定性を同時に満たすには、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の質量比率〔以後、a/b/c(a÷b÷c)と記述〕が、好ましくは、a/b/c=1〜4、特に好ましくは、a/b/c=1〜3とすることが望ましい。
【0022】
本発明の液体洗浄組成物には、上記(a)〜(c)成分以外にその他の成分(任意成分)を含有することができるが、本発明の効果を損なわない範囲、特に目的の構造粘性を損なわない範囲で含有せしめることが重要である。
用いることができるその他の成分としては、有機カルボン酸、両性界面活性剤及び無機塩が挙げられる。
この両性界面活性剤及び無機塩は、本発明品の液体洗浄組成物の粘度特性を発揮する上で、補助的な効果を持つ場合があり、目的の粘度特性を損なわない程度に含有することができる。
【0023】
本発明では、目的の粘度特性を達成する上で、補助的な効果を持つものとして有機カルボン酸を含有することが望ましい。例えば、グリコール酸、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、グルタミン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、MGDA、EDTA及びそれらの塩等が挙げられる。好ましくはカルボキシル基を2つ以上含む多価カルボン酸及びその塩が望ましく、特に好ましくはクエン酸、MGDA、EDTA及びそれらの塩が挙げられる。また、これらは2種以上組み合わせて用いても良い。
これらの含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは、0.5〜8%、更に好ましくは、1〜5%とすることが望ましい。
また、用いることができる両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、イミダゾリウムベタイン、N−アルキルアミノ酸などの少なくとも1種が挙げられる。
また、無機塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属及びマンガン、亜鉛等の遷移金属の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられる。
特に、補助的な効果が高いものとして、好ましくは、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドプロピルベタインが望ましく、また、無機塩としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩が望ましい。
これらの両性界面活性剤及び無機塩の合計含有量は、液体洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは、0〜8%、更に好ましくは、0〜5%とすることが望ましい。
【0024】
本発明において、非イオン界面活性剤及びハイドロトロープ剤は、更なる洗浄力及び低温下での更なる保存安定性の点から含有するものであるが、含有量が多いと、分子会合体を可溶化し、構造粘性を消失させてしまうことがあるので、注意が必要である。
用いることができる非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グリコシドエステル、脂肪酸メチルグリコシドエステル、アルキルメチルグルカミド等の少なくとも1種が挙げられる。
また、ハイドロトロープ剤としては、例えば、芳香族スルホン酸、芳香族カルボン酸及びこれらの塩、炭素数10〜16の炭化水素、炭素数1〜5の一価アルコール、炭素数4〜12の多価アルコール、分子量が200〜2000までのポリアルキレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
これらの成分は、目的の粘度特性を損なわない程度に含有することができるが、好ましくは、その合計含有量は、液体洗浄剤組成物に対して、0〜10%、好ましくは、0〜8%、更に好ましくは、0〜5%とすることが望ましい。
【0026】
その他に用いることができる任意成分としては、研磨剤、カプセルなどの水不溶性粒子や、ポリリジン、グルタルアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、ゲラニオール等の殺菌剤、パール化剤、植物抽出液、pH調整剤、色素、酸化防止剤、酵素、香料、香料可溶化剤などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。また、溶媒として、通常、水(精製水、イオン交換水、純水、超純水、常水、上水等)が使用される。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記(a)〜(c)成分を含有し、該組成物の粘度及び粘度比を上記範囲に設定できるものであれば、その製造方法等は特に限定されるものではなく、例えば、攪拌羽根を設けた攪拌槽に回分式で混合したり、インラインで混合、希釈を行うラインミキサーを使用した混合攪拌装置などにより、製造することができる。
また、(a)成分の非石鹸系アニオン界面活性剤と、(b)成分の半極性界面活性剤を直接混合するとゲル化を起こすことがある。本来なら、エタノール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等のハイドロトロープ剤により可溶化するのが一般的だが、このような方法は本発明の効果を有効に発揮できない場合があるため、(a)成分の非石鹸系アニオン界面活性剤と(b)成分の半極性界面活性剤の混合後のpHが5.5〜7.5となるように予めpH調整剤を添加することでこれを回避できる。更に、予め(a)成分の非石鹸系アニオン界面活性剤に残部水を添加し、希釈しておくこともゲル化を防ぐ上で望ましい。前記のように、残部水、(a)成分、pH調整剤、(b)成分、必要によりその他任意成分を攪拌混合後、(c)成分を添加することが望ましい。
【0028】
このように構成される本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)非石鹸系アニオン界面活性剤5〜30質量%と、(b)一般式(I)で示される半極性界面活性剤1〜10質量%と、(c)炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種を0.1〜10質量%含有し、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa/sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上とすることにより、ラメラ液晶という更なる強固な相互作用を持った大きな分子会合体によってチキソトロピー性を付与させることができるので、チキソトロピー性を有し、かつ、硬表面に適した高い洗浄力及び保存安定性を併せ持つ乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物が得られるものとなる。
また、本発明の乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物は、台所等の食器類、調理器具などの硬表面の洗浄に好適なものとなり、更に、研磨剤及び酵素や香料等のカプセル等の機能性粒子を分散安定化するにも非常に有効なものとなる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜16及び比較例1〜7〕
下記表1及び2に示される配合組成により各種液体洗浄剤組成物(残部は、精製水で調整)を下記製造方法により調製した。
(製造方法)
攪拌槽(2Lのガラスビーカーに、直径6cm、幅1cmの45°傾斜パドル翼付き攪拌機を設置)に、精製水(残部水)と(a)成分を投入し、溶解するまで攪拌した。これにpH調整剤(濃硫酸)を加え攪拌し、(b)成分、(d)成分及びその他成分を加えて、全体が均一になるまで攪拌後、(c)成分を添加して、全体が均一且つ一定粘度になるまで攪拌することで各洗浄剤組成物を得た。
なお、温度は25℃、攪拌機の回転数は、溶液の物性や量に応じて、400〜700rpmの範囲で変化させた。
【0031】
得られた各種液体洗浄剤組成物について、下記の試験方法等により、60rpmの粘度及び6rpm/60rpmの粘度比、洗浄力、低温安定性、高温安定性及び偏光顕微鏡によるラメラ液晶の確認について評価した。
これらの結果を下記表1及び2に示す。なお、表1及び2中の配合量は、質量%(全量100質量)であり、各組成物は濃硫酸(純正試薬)によりpH6.7に調整したものである。
【0032】
(60rpm粘度及び6rpm/60rpm粘度比の測定方法)
得られた各種液体洗浄組成物をPS11瓶に90g充填し、25℃の恒温槽にて25℃に調整した。ブルックフィールド型粘度計No.4ローターを設置し、恒温にした試料液をセットした。はじめにローターの回転数を60rpmに設定し、30秒後の粘度を測定した。
次に、回転数を6rpmに設定し、300秒後の粘度を測定した。これらから得られた数値から6rpm/60rpmの粘度比を算出した。
【0033】
(洗浄力の評価方法)
直径28cmのフライパンに牛脂3gを計りとり、10分間強火で加熱し、そのまま20℃で6時間放置したものを、激しく汚れた疎水表面汚垢とした。11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに38gの水道水と2gの洗浄剤組成物をとり、数回手で揉んだ後、この汚染したフライパンを25℃の水道水で通常家庭で行われるのと同様にして洗浄した。洗浄後、水道水でよくすすぎ、その時のフライパンの汚染されていた表面を手で触ったときの触感で、洗浄力を下記の評価基準に基づき評価した。
評価基準:
◎:フライパンのいずれの部位を触っても、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきはまったく感じられない。
○:フライパンの底面及び側面を触ると、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきは感じられないが、角の部位には僅かにぬるつきが残っている。
△:フライパンの底面を触ると、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきは感じられないが、側面や角の部位にぬるつきが残っている。
×:フライパン全体にぬるつきが感じられ、明らかに油が残留していることがわかる。
【0034】
(低温安定性の評価方法)
組成物を100mlのガラス瓶(PS11)に90g充填し、−5℃の恒温槽に30日保存したときの状態を下記評価基準に従って評価した。
評価基準:
◎:保存後6rpm/60rpm粘度比が初期粘度比と比較して−0.2以内
○:保存後6rpm/60rpm粘度比が5以上
△:一部凍結または一部分離透明相(3mm以内)あり
×:凍結及び分離あり
【0035】
(高温安定性の評価方法)
組成物を100mlのガラス瓶(PS11)に90g充填し、50℃の恒温槽に30日保存したときの状態を下記評価基準に従って評価した。
評価基準:
◎:保存後6rpm/60rpm粘度比が初期粘度比と比較して−0.2以内
○:保存後6rpm/60rpm粘度比が5以上
△:一部分離透明相(3mm以内)あり
×:分離透明相あり
【0036】
(ラメラ液晶の確認、偏光顕微鏡観察)
組成物を偏光顕微鏡を用いて直交偏光条件下で600倍で観察し、ラメラ液晶の存在を示す十字ニコル像が現れたか否かを調べ、以下の評価基準によって評価した。
評価基準:
◎:十字ニコルが全体にわたって見える
○:十字ニコルが一部見える
△:十字ニコルがほとんど見えない
×:十字ニコルが全く見えない
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記表1及び2中の*1〜*16は下記のとおりである。
*1:S−1 C12-13アルキルエトキシ硫酸エステルナトリウム〔平均EO鎖長2モル、原料アルコール:ネオドール23(シェル社製、C12/C13=40%/60%、直鎖率80%)〕
*2:S−2 C12アルキルエトキシ硫酸エステルナトリウム〔商品名シノリンSPE−1250(新日本理化社製)平均EO鎖長2モル、原料アルコール:ラウリルアルコール、直鎖率100%〕
*3:S−3 C12-13アルキルエトキシ硫酸エステルナトリウム(平均EO鎖長3モル、原料アルコール:サフォール23(サソール社製、C12/C13=55%/45%、直鎖率50%))
*4:AOS C14アルファオレフィンスルホン酸Na(ライオン社)
*5:AO ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ライオン社)
*6:APAO ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(商品名ソフタゾリンLAO 川研ファインケミカル社)
*7:Isofol12 分枝型C12アルコール(サソール社製)
*8:Isofol16 分枝型C16アルコール(サソール社製)
*9:Neodol23 直鎖分枝混合型C12−13アルコール(シェル社製、C12/C13=40%/60%、直鎖率80%))
*10:AE(8) ポリオキシエチレンラウリルエーテル〔平均EO付加モル数8モル 原料アルコール:ネオドール23(シェル社製、C12/C13=40%/60%、直鎖率80%)〕
*11:ZnSO4 硫酸亜鉛七水和物
*12:MgSO4 硫酸マグネシウム七水和物
*13:LPB ラウリン酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン(商品名ソフタゾリンLPB 川研ファインケミカル社)
*14:シリカ SORBOSIL BFG10(イネオス社製)
*15:香料 特開2002−327194号公報、表4〜11に記載の香料組成物A
*16:色素 黄色203号
【0040】
上記表1の結果から明らかなように、(a)〜(c)成分を含有し、60rpmの粘度及び6rpm/60rpmの粘度比が本発明の範囲となる実施例1〜16は、本発明の範囲外となる〔(a)〜(c)成分の含有、60rpmの粘度及び6rpm/60rpmの粘度比を全て充足しない〕比較例1〜7に較べて、流動性のある構造粘性(チキソトロピー性)を持ち、洗浄力、低温安定性及び高温安定性に優れた乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物となることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非石鹸系アニオン界面活性剤5〜30質量%と、(b)下記一般式(I)で示される半極性界面活性剤1〜10質量%と、(c)炭素数が8〜24の直鎖/分枝状となる高級アルコール、及び/又は脂肪酸の少なくとも1種を0.1〜10質量%含有し、(d)25℃における該組成物のブルックフィールド型粘度計による60rpmの粘度が500〜5000mPa/sであり、かつ、6rpm/60rpmの粘度比が5以上となることを特徴とする、乳濁外観を有する液体洗浄剤組成物。
【化1】


【公開番号】特開2006−193734(P2006−193734A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361343(P2005−361343)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】