説明

液体洗浄剤組成物

【課題】ポリエステルなどの疎水性繊維に付着した落ちにくい疎水性汚れに対しても良好な洗浄力を発揮し、また低泡性に優れる液体洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(1)[式中、Rは炭素数11〜13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20である。]で表されるエチレンオキサイド付加体で、かつ、ナロー率が30質量%以上のエチレンオキサイド付加体。(B)アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位及び/又はポリオキシアルキレン単位とを有する水溶性ポリマー及び(C)有機酸あるいはその塩を含有し、25℃での該組成物のpHが5.0〜8.0である濃縮タイプの液体洗浄剤組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、皮脂汚れ及び油汚れなどの疎水性汚れ、特にポリエステルなどの疎水性繊維に付着した汚れの洗浄力に優れ、且つ低泡性の濃縮タイプの液体洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】

液体洗浄剤組成物は、衣類に付着した汚れに直接塗布できるため、落ちにくい部分的な皮脂汚れや油汚れを効果的に除去することが可能であるという利点がある。特に、落ちにくい汚れに対して塗布型容器を用いて液体洗浄剤を塗布し、刷掃する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらの洗浄剤は綿など親水性の繊維に付着した汚れの洗浄力に優れているが、ポリエステルなどの疎水性繊維や、各種加工や加工剤の影響により疎水性が強まった繊維に付着した疎水性の汚れの洗浄力は充分ではなかった。
一方、この様に、落ちにくい疎水性繊維に付着した疎水性汚れを落とす手段として、例えば、ソイルリースポリマーと呼ばれる添加剤が挙げられ、過去に検討されてきた(例えば下記特許文献3〜5参照)。しかし、これらの洗浄力は塗布洗浄に比べて低い傾向がある。また、このような水溶性高分子と、油性汚れに対して優れた洗浄性能を示す。ノニオン性界面活性剤と容器を組み合わせた部分洗い用液体洗浄剤組成物(例えば、特許文献7:特開2001−181692号公報参照)が開示されているが保存により洗浄性能が低下してしまう問題があった。
【0003】

【特許文献1】特開平9−279180号公報
【特許文献2】特開平11−61196号公報
【特許文献3】特開平7−166192号公報
【特許文献4】特開2000−239365号公報
【特許文献5】特開平9−169996号公報
【特許文献6】特開2001−181692号公報
【特許文献7】特開2001−181692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

本発明は上記事情に鑑みなされたもので、特定の界面活性剤と高分子を配合することで、綿などの親水性繊維に付着した汚れに加え、ポリエステルなどの疎水性繊維に付着した落ちにくい疎水性汚れに対しても良好な洗浄力を発揮し、また低泡性に優れる液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】

前記課題を解決するために、本発明においては、(A)成分は下記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド付加体であって、エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布の割合を示すナロー率が30質量%以上のエチレンオキサイド付加体。
【化1】

(式中、Rは炭素数11〜13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;Rは炭素数1〜3のアルキル基であり;nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20である。)
【0006】

(B)成分は(b1)アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位及び/又は(b2)ポリオキシアルキレン単位とを有する水溶性ポリマー。
【0007】
(C)成分は有機酸またはその塩を含有し、25℃での該組成物のpHが5.0〜8.0である濃縮タイプの液体洗浄剤組成物を提案する。
【0008】
ここで、本明細書および特許請求の範囲において「エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布の割合を示すナロー率」とは、下記の数式(S)で表されるものを示す。

【数1】

[式中、nmaxは全体のエチレンオキサイド付加体中に最も多く存在するエチレンオキサイド付加体のエチレンオキサイドの付加モル数を示す。iはエチレンオキサイドの付加モル数を示す。Yiは全体のエチレンオキサイド付加体中に存在するエチレンオキサイドの付加モル数がiであるエチレンオキサイド付加体の割合(質量%)を示す。]
【0009】
本明細書における「濃縮タイプ」とは、液体洗浄剤組成物中の合計の界面活性剤含有量が50質量%であり、好ましくは55質量%以上のものを包含する。
【発明の効果】
【0010】

本発明によれば、綿などの親水性繊維に付着した汚れに加え、ポリエステルなどの疎水性繊維に付着した皮脂汚れや油性汚れ等の落ちにくい疎水性汚れに対しても優れた洗浄力を発揮し、また低泡性に優れる液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】

本発明の液体洗浄剤組成物は、前記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド付加体である(A)成分と(B)成分と有機酸またはその塩である(C)成分からなるものである。
【0012】

<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、前記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド付加体であって、エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布の割合を示すナロー率が30質量%以上のエチレンオキサイド付加体である。この(A)成分を用いることにより、本発明の液体洗浄剤組成物は、高濃度の界面活性剤を含有しても低泡性に優れる。
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、この(A)成分を含有することにより、水への溶解性に優れ、高い洗浄力が得られやすくなる。さらに、高濃度の界面活性剤を含有しても粘度が著しく増大(ゲル化)せず、良好な流動性を有する濃縮タイプの液体洗浄剤組成物を製造することができる。
【0013】
前記一般式(1)中、Rは、炭素数11〜13の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基である。Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。nは、エチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20である。好ましくは、疎水性汚れに対する洗浄力や、液体洗浄剤組成物の液安定性(例えば、低温での経時安定性等)の向上の点から12〜18である。
【0014】

前記ナロー率は、たとえば(A)成分の製造方法等によって制御することができる。(A)成分の製造方法としては、特に制限されるものではないが、たとえば表面改質された複合金属酸化物触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルに酸化エチレンを付加重合させる方法(特開2000−144179号公報参照)により容易に製造することができる。係る表面改質された複合金属酸化物触媒の好適なものとしては、具体的には、金属水酸化物等により表面改質された、金属イオン(Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+、Mn2+等)が添加された酸化マグネシウム等の複合金属酸化物触媒や、金属水酸化物及び/または金属アルコキシド等により表面改質されたハイドロタルサイトの焼成物触媒等である。また、前記複合金属酸化物触媒の表面改質においては、複合金属酸化物と、金属水酸化物及び/または金属アルコキシドとの混合割合を、複合金属酸化物100質量部に対して、金属水酸化物及び/または金属アルコキシドの割合を0.5〜10質量部とすることが好ましく、1〜5質量部とすることがより好ましい。
【0015】

本発明に用いられる(A)成分は、前記ナロー率が高いものである。また、(A)成分は、その分子構造において、親水基が分子の末端には存在せず(末端封鎖型であり)、かつ極性の高いカルボニル基をその分子中に有する。これらにより、(A)成分は、水溶液系中で分子どうしの配向性が弱く、ミセルが不安定なノニオン界面活性剤であるため、高濃度でゲル化等を生じず、1種単独で多量に液体洗浄剤組成物中に配合することができると推測される。また、水への溶解性が向上すると推測される。さらに、高濃度での良好な流動性に寄与していると考えられる。したがって、(A)成分が洗濯機槽内の水中へ投入された後、洗濯液中の(A)成分の濃度が早く均一となり、洗浄初期から所定の濃度で被洗物と接することができるため、高い洗浄力が得られると考えられる。
【0016】

(A)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物中、50〜80質量%であり、好ましくは55〜65質量%である。この範囲であることにより、本発明の効果が得られやすくなる。また、濃縮タイプの液体洗浄剤組成物として使用しやすくなる。また、(A)成分の含有量が50質量%以上、好ましくは55質量%以上であることにより、高濃度の界面活性剤を含有する濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が得られる。また、濃縮タイプの液体洗浄剤組成物としての有効性(商品価値)が高くなる。一方、80質量%以下、好ましくは65質量%以下であることにより、低温での液体洗浄剤組成物の粘度の増大が抑制される。
【0017】

<(B)成分>
本発明の(B)成分を構成する(b1)単位及び(b2)単位は以下の通りである。
(b1)単位
アルキレンテレフタレート単位は、下記一般式で表されるものである。
【化3】

式中、Rは低級アルキレン基であるが、例えば炭素数4以下、特に2〜4であることが好ましい。
アルキレンテレフタレート単位としては、具体的には、エチレンテレフタレート単位、n-プロピレンテレフタレート単位、イソプロピレンテレフタレート単位、n-ブチレンテレフタレート単位、イソブチレンテレフタレート単位、sec−ブチレンテレフタレート単位、tert−ブチレンテレフタレート単位等から1種または2種以上を用いることができ、中でもn−プロピレンテレフタレート単位が好ましい。
【0018】

アルキレンイソフタレート単位は、下記一般式で表されるものである。
【化4】

式中、Rは低級アルキレン基であるが、例えば炭素数4以下、特に2〜4であることが好ましい。
アルキレンイソフタレート単位としては、具体的には、エチレンイソフタレート単位、プロピレンイソフタレート単位、n-ブチレンイソフタレート単位、sec−ブチレンテレフタレート単位、tert−ブチレンイソフタレート単位、及びこれらの混合物が挙げられ、中でもプロピレンイソフタレート単位が好ましい。なお、アルキレンテレフタレート単位とアルキレンイソフタレート単位とは通常混合物で得られる。
(B)成分中、(b1)単位から選ばれるものは、1種または2種以上含まれても良い。
【0019】

(b2)単位
オキシアルキレン単位とポリオキシアルキレン単位は、ともに一般式−(R'O)m−で表すことができる。式中、R'は低級アルキレン基であり、その炭素数は例えば4以下であることが好ましい。mは1以上の整数である。
すなわち、オキシアルキレン単位はmが1の場合であり、ポリオキシアルキレン単位はmが2以上の場合である。
オキシアルキレン単位及び/又はポリオキシアルキレン単位としては、mが1以上(mは、好ましくは5〜150、さらに好ましくは10〜100)のオキシアルキレン単位又はポリオキシアルキレン単位が好ましく、例えばオキシエチレン単位又はポリオキシエチレン単位;オキシプロピレン単位又はポリオキシプロピレン単位;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位等が挙げられるが、オキシエチレン単位又はポリオキシエチレン単位が好ましい。
(B)成分中、(b2)単位から選ばれるものは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】

(B)成分は(b1)単位と(b2)単位とが、ランダムまたはブロックで重合している高分子化合物であることが好ましく、特にブロックで重合しているものが好ましい。(B)成分は、これら必須の(b1)単位、(b2)単位以外の単位(例えば重合開始剤、重合停止剤等に由来する単位や、その他共重合可能な単位)を含んでいてもよいが、これら必須の単位によって、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が形成されていることが好ましい。
【0021】

(B)成分として好適なものとして、具体的な構造を下記一般式(2)に示す。なお、以下の一般式(2)はテレフタレートであるがイソフタレートとの混合物でも良い。
【化2】

一般式(2)において、A及びBはそれぞれ独立して、水素原子もしくはメチル基であるが、共にメチル基であるのが好ましい。
は、炭素数2〜4のアルキレン基である。Rは、メチル基及び/または水素原子であるが、好ましくはメチル基が良い。
Xは、0〜10,好ましくは0.5〜5、特に好ましくは0.5〜2.5である。
yは、1〜100、好ましくは1〜80、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜30である。
X:yが、1:5〜1:20であるのが好ましく、1:8〜1:18であるのがより好ましい。
X、yがこのような範囲であると、ソイルリリース性能が十分に発揮され、かつ水に対する溶解性が向上するので好ましい。
【0022】

なお、上記一般式(2)において、Xの部分構造のうち、下記の構造のものが含まれても良い。
【化5】


式中、R及びXは前記一般式(2)で定義したものと同じである。
【0023】

(B)成分は、洗浄効果の点から重量平均分子量が好ましくは500以上のもの、より好ましくは800以上のもの、特に好ましくは1000以上のものが好ましい。一方水への溶解分散性の点から重量平均分子量の上限値は好ましくは8000以下、さらに保存中の性能維持の点からより好ましくは5000以下、特に4000以下が好ましい。ここで重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)で溶媒をTHF(テトラヒドロフラン)で測定したとき、PEG(ポリエチレングリコール)を較正曲線に用い換算することにより測定することができる。
本発明で用いることのできる(B)成分の水溶性ポリマーは、40℃において、1000gの水に10gの高分子を添加、スターラー(太さ8mm、長さ50mm、1リットルビーカー)で200rpmにおいて12時間攪拌後に溶解している。
【0024】

(B)成分は、市販品を使用することもできるし、各種の文献、教科書及び特許等に開示の方法により合成することもできる。
市販品としては、商品名TexCare SRN−100(ドイツ、Clariant GmbH社製、重量平均分子量 3000)(以下、SRN−100と略記する。)、商品名TexCare SRN−300(ドイツ、ClariantGmbH社製、重量平均分子量 7000)(以下、SRN−300と略記する。)として市販されているものが挙げられる。特に好ましいのはTexCareSRN−100(ドイツ、Clariant GmbH社製)である。その理由は、水への溶解性が高く、保存後の洗浄性能の低下が少ないからである。文献等に開示の方法としては、例えば、Journal of Polymer Science,第3巻,609〜630ページ(1948年)、Journal of Polymer Science,第8巻,1〜22ページ(1951年)、特開昭61−218699号公報記載の方法を用いてもよく、それ以外の方法を用いて製造してもよい。
【0025】

(B)成分は、液体洗浄剤組成物中に好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲内では性能がより充分に発現できる。
【0026】

本発明の(C)成分の有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、エチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸又はこれらの塩等が挙げられる。塩を形成する金属としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属があげられる。これらの中で、特に、組成物のpH安定化効果及び組成の保存安定性などの点からクエン酸、安息香酸又はそれらの塩が好ましい。
【0027】
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。

これらの(C)成分となる有機酸の含有量は、好ましくは、液体洗浄剤組成物全量中に0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3%含有する事が好ましい。この有機酸の量が0.5質量%以上であると、洗浄力の低下と保存時のpHの低下防止効果が期待できる。また5質量%以下であると有機酸の析出が抑えられるので好ましい。
【0028】

本発明の液体洗浄剤組成物には、(A)成分以外のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合することができる。ノニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜18のアルキル基を有し、グルコースユニットの平均付加モル数1〜10のアルキルポリグルコシド、炭素数8〜18のアルキル基を有し、グリセリンユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルグリセリルエーテル、炭素数10〜20の脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。これらの(A)成分以外のノニオン性界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物中0〜10質量%の範囲が好ましい。
【0029】

アニオン性界面活性剤としては、炭素数8〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するα−オレフィンスルホン酸塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するアルカンスルホン酸塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜10のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
これらのアニオン性界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物中0〜10質量%の範囲が好ましい。
【0030】

両性界面活性剤としては、炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルアミンオキサイド、炭素数10〜14のアルキル基を有するアルキルアミドプロピルベタイン等が挙げられる。
これらの両性界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物中0〜10質量%の範囲が好ましい。
【0031】

本発明の液体洗浄剤組成物には、必要に応じてその他任意成分を含有することができる。 具体的にはハイドロトロープ剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール系溶剤、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸又はその塩やエタノール等のアルコール等が挙げられる。この中でも質量平均分子量400〜5000のポリエチレングリコール、パラトルエンスルホン酸及びその塩、エタノールが好ましい。粘度調整、組成安定性向上剤として下記一般式で表されるアクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルとを共重合させた化合物が好ましい。なお、共重合体はランダムでもブロック共重合体でもよい。
【0032】

【化6】

(式中、R及びRは独立に、水素原子又はメチル基であり、Mは水素原子、Na、K等のアルカリ金属、アンモニウム又はジエタノールアミン等のアルカノールアミンであり、Rは炭素数1〜12、好ましくは1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又はベンジル基であり、a及びbは独立に任意の整数である。aとbは、モル比a/b=1/9〜9/1の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくはモル比a/b=2/8〜6/4の範囲である。)
【0033】

さらに、再汚染防止を目的として、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等の再汚染防止剤を0〜2質量%、洗浄力向上を目的として、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を0〜1質量%、酵素安定化を目的として、ホウ酸、硼砂、蟻酸又はその塩、塩化カルシウム・炭酸カルシウム・硫酸カルシウム等のカルシウム塩類、又は安息香酸又はその塩0〜3質量%、風合い向上を目的として、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーンを0〜5質量%、白色衣料の白度向上を目的として、ジスチリルビフェニル型等の蛍光剤を0〜1質量%、液体洗浄剤組成物の着色を目的として、酸性染料等の色素を0.00001〜0.001質量%、香気安定化を目的として、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤を0.0001〜0.5質量%、防腐性を目的として、ケーソンCG/ICP等の抗菌剤を0〜0.05質量%配合することができる。また、芳香のための香料としては、特開2002−146399号公報記載の、香料成分、溶剤及び安定化剤を含有する香料組成物等が挙げられ、本発明の液体洗浄剤組成物中に0.01〜1質量%含有することができる。
【0034】

pH調整剤として、硫酸、水酸化ナトリウム等の無機酸及び無機塩基を配合することができる。本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、疎水性汚れの洗浄力、保存後の洗浄力維持のから5.0〜8.0であり、好ましくは6.0〜8.0、より好ましくは7.0〜8.0である。本発明において、pHの測定は、ガラス電極を用い、緩衝液として3.33mol/L KClを用い、PS11瓶にサンプルを入れ恒温槽において25℃に調整して行なう。
【0035】

本発明の液体洗浄剤組成物は常法に基づいて調製することができる。 使用方法は、通常の使用方法、すなわち本発明の液体洗浄剤組成物(本発明品)を、洗濯時に洗濯物と一緒に水に投入する方法、汚れに本発明品を直接塗布する方法、本発明品を予め水に溶かして衣類を浸漬する方法等が挙げられる。また、本発明品を洗濯物に塗布後、適宜放置し、その後、通常の洗濯液を用いて通常の洗濯を行う方法も好ましい。
その際、本発明品の使用量は、従来の液体洗浄剤組成物の使用量よりも、実質上半量以下に少なくすることができる。たとえば、従来の液体洗浄剤組成物は、標準使用量として液体洗浄剤組成物20mLを30Lの水道水に投入して洗浄することが主流となっている。本発明の液体洗浄剤組成物においては、液体洗浄剤組成物10mLを30Lの水道水に投入して洗浄しても充分に洗浄性能を発揮できる。
【実施例】
【0036】

以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、表中の各成分の量は純分としての配合量を示す。
[実施例1〜7、比較例1〜6] 表1〜表2に示す組成の液体洗浄剤組成物を常法に基づいて調製し、下記に示す評価方法により評価した結果を表1〜2に併記する。
尚、組成物pHは製造直後の25℃における測定値を示す。
【0037】
《(A)成分のナロー率の測定方法》
下記測定条件により、エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布を測定した。そして、(A)成分のナロー率(質量%)を前記数式(S)に基づいて算出した。
(HPLCによるエチレンオキサイド付加体の分布の測定条件)
装置 :LC−6A((株)島津製作所製)
検出器 :SPD−10A
測定波長:220nm
カラム :Zorbax C8 (Du Pont(株)製)
移動相 :アセトニトリル/水=60/40(体積比)
流速 :1mL/min
温度 :20℃
【0038】

《表中に示した成分の説明》
<(A)成分>
A−1:C1123CO(OC15OCH、ナロー率 65質量%;合成品。
A−2:C1123CO(OC15OCHと、C1327CO(OC15OCHとの質量比で8/2の混合物、ナロー率 65質量%;合成品。
A−3:C1123CO(OC15OCH、ナロー率 37質量%;合成品。
A−4(比較品):C1733CO(OC15OCH、ナロー率 65質量%;合成品。
A−5(比較品):C1225O(CO)15H、ナロー率 30質量%;合成品。
A−6(比較品):C1123CO(OC15OCH、ナロー率 25質量%;合成品。
【0039】

ただし、A−1、A−4(比較品)は、特開2000−144179号公報に記載の合成方法に準じて製造した合成品である(なお、A−1は特開2000−144179号公報に記載のサンプルDに対応するものである。同様に、A−4(比較品)は、同公報に記載のサンプルFに対応するものである。)。
A−2は、A−1の合成方法において、ラウリン酸メチルエステル280gと、ミリスチン酸メチルエステル70gとをそれぞれ用い、エチレンオキサイド1052gを導入した以外は、A−1の合成方法と同様の方法により製造した。
また、A−6(比較品)は、特開平4−279552号公報に記載の実施例1に準じて製造した触媒を用いて製造した合成品(特開平5−222396号公報に記載のサンプルA1に対応するもの)である。
【0040】
A−3の合成は、以下のように行った。
化学組成が2.5MgO・Al2O3・nH2O である水酸化アルミナ・マグネシウム(協和化学工業(株)製、商品名:キョーワード300)25gを、700℃で3時間、窒素雰囲気下で焼成し、14gの焼成水酸化アルミナ・マグネシウムを得た。焼成水酸化アルミナ・マグネシウム(未改質)触媒1.2g、5質量%の水酸化カリウムメタノール溶液0.4g、およびラウリン酸メチル350gを4リットルオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内で触媒の改質を行った。次いで、オートクレーブ内を窒素で置換した後、昇温を行い、温度を180℃、圧力を3atmに維持しつつ、エチレンオキサイド1079gを導入し、撹拌しながら反応させた。
得られたラウリン酸ポリオキシエチレンメチルエーテルの平均エチレンオキサイド付加モル数は15、ナロー率は37質量%であった。さらに、反応液を80℃に冷却し、水159gと、濾過助剤として活性白土および珪藻土をそれぞれ5g添加した後、触媒を濾別し、A−3を得た。

ナロー率は、得られたラウリン酸ポリオキシエチレンメチルエーテルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布を測定して算出した。
【0041】

A−5(比較品)の合成は、以下のように行った。
ラウリルアルコール186g、30質量%NaOH水溶液2.0gを、耐圧型反応容器中にそれぞれ採取し、容器内を窒素置換した。
次に、温度100℃、圧力2.0kPa以下で30分間脱水してから、温度を160℃まで昇温した。アルコールを攪拌しながら酸化エチレン(ガス状)660gを、吹き込み管を使って、反応温度が180℃を超えないように添加速度を調整しながらアルコールの液中に徐々に加えた。
酸化エチレンの添加終了後、温度180℃、圧力0.3MPa以下で30分間熟成した後、温度180℃、圧力6.0kPa以下で10分間、未反応の酸化エチレンを留去した。 次に、温度を100℃以下まで冷却した後、反応物の1質量%水溶液のpHが約7になるように、p−トルエンスルホン酸(70質量%水溶液)を加えて中和し、A−5(比較品)を得た。
【0042】

<(B)成分>
B−1:商品名;TexCare SRN−100(ドイツ、Clariant GmbH社製、重量平均分子量 3000)
B−2:商品名;TexCare SRN−300(ドイツ、ClariantGmbH社製、重量平均分子量 7000)
【0043】

<(C)成分>
C−1:クエン酸3ナトリウム2水塩(扶桑化学工業(株)製)
C−2:安息香酸ナトリウム(株式会社伏見製薬所製)
【0044】

<任意成分>
PEG:ポリエチレングリコール、商品名;PEG#1000(日本油脂(株)製)
EtOH:95vol%合成エタノール(NEDO製)
PTS:パラトルエンスルホン酸(協和発酵工業(株)製)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン、商品名;K−NOX BHT(Degussa社製)
ケーソンCG:(ローム・アンド・ハース社製)
【0045】
<共通成分d>
EtOH :5質量%
BHT :0.1質量%
ケーソンCG :0.01質量%
水酸化ナトリウムまたは硫酸:適量
精製水 :バランス
【0046】
《評価方法》
<皮脂汚れ洗浄力(綿)>
10cm×10cmの綿平織り布(100番)を、半径3cm程度の半球面状表面を持つ小型容器の表面に半球面部分が布の中心に来るように固定して、この半球面部分を顔面に擦り付けることで汚れを付着させ、皮脂汚れ布を作成した。評価には、この皮脂汚れ布を、汚れを中心として四等分に裁断したものを用いた。この裁断した皮脂汚れ布10枚を、ターゴトメータを用いて120rpm、水道水(25℃、3°DH)900mL(洗浄剤濃度は、水道水30Lに対して液体洗浄剤組成物10mLの割合である。)、10分間洗浄し、3分間すすぎ、最後にアイロンを用いて乾燥させた。
尚、各例の液体洗浄剤組成物としては、配合直後のものを使用した。
以下の実施例において洗浄力は、汚れ付着前の原布及び洗浄前後の皮脂汚れ布のZ値を測色色差計(日本電色社製:SE2000)を用いて測定し、次式の洗浄率として求めた。
洗浄率(%)=(洗浄後のZ値−洗浄前のZ値)/(原布のZ値−洗浄前のZ値)×100
洗浄率は10枚の平均値を下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:洗浄率が65%以上
△:洗浄率が60%以上65%未満
×:洗浄率が60%未満
【0047】
<モデル皮脂汚れ洗浄力(ポリエステル)>
(汚垢布の調整)
オレイン酸0.45g、トリオレイン0.25g、コレステロールオレート0.195g、スクワレン0.04g、流動パラフィン0.04g、コレステロール0.025gをエタノール/クロロホルム=1/1(体積比)の溶媒9gに溶かし、洗浄率のインジケータとしてオイルレッドを0.001g添加し、よく分散させたものをモデル皮脂汚れとした。このモデル皮脂汚れ0.2mLをポリエステル布(ポリエステルファイユ、4cm×4cm)に滴下して1日自然乾燥し、汚垢布を作成した。
(洗浄方法)
この汚垢布に対し、液体洗浄剤組成物を汚れ部分に0.8mLずつ塗布し、5分間放置した。この汚垢布10枚と1kgの綿製未着用肌シャツを水道水(15℃、4゜DH)30Lを入れた二槽式洗濯機(三菱電気(株)製、CW−C30A)に投入し、残りの液体洗浄剤組成物2mL(全液体洗浄剤組成物量は10mL)を投入し、10分間洗浄した。
次いで、1分間脱水後、水道水(15℃、4゜DH)30Lで3分間濯ぎの工程を2回繰り返し、1分間脱水後、室内で自然乾燥させた。
尚、各例の液体洗浄剤組成物としては、45℃で30日間保存したものを用いた。
(洗浄力の測定)
汚れ付着前の原布及び洗浄前後の汚垢布のZ値を測色色差計(日本電色社製:SE2000)を用いて測定し、下記式を用いて洗浄率を求め(表1,表2には10枚の洗浄率の平均値で評価した)、下記評価基準で評価した。
洗浄率(%)=(洗浄後のZ値−洗浄前のZ値)/(原布のZ値−洗浄前のZ値)×100 洗浄率は10枚の平均値を下記の基準で評価した。

(評価基準)
◎:洗浄率75%以上
○:洗浄率65%以上〜75%未満
△:洗浄率55%以上〜65%未満
×:洗浄率55%未満
【0048】
<低泡性の評価>
二槽式洗濯機(三菱電機製、CW−C30A1−H)の洗濯槽に水道水(25℃、3°DH)を30L入れ、綿肌シャツ(BVD社製)1kgを投入し、続いて、液体洗浄剤組成物10mLを投入し、10分間標準水流で攪拌する。攪拌が終了してから30秒後の水面からの泡の高さを測定することで低起泡性を評価した。低起泡性は、泡の高さを下記の基準で評価した。
○:泡の高さが50mm未満
△:泡の高さが50mm以上100mm未満

×:泡の高さが100mm以上



【0049】
【表1】

【0050】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分50〜80質量%と、(B)成分と、(C)成分とを含有し、かつ、25℃での該組成物のpHが5〜8である濃縮タイプの液体洗浄剤組成物。

(A)成分は下記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド付加体であって、エチレンオキサイドの付加モル数が異なるエチレンオキサイド付加体の分布の割合を示すナロー率が30質量%以上のエチレンオキサイド付加体。
【化1】

(式中、Rは炭素数11〜13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;Rは炭素数1〜3のアルキル基であり;nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、10〜20である。)
(B)成分は(b1)アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、オキシアルキレン単位及び/又は(b2)ポリオキシアルキレン単位とを有する水溶性ポリマー。
(C)成分は有機酸またはその塩。
【請求項2】
前記(B)成分が、下記一般式(2)で表される水溶性ポリマーである請求項1記載の濃縮タイプの液体洗浄剤組成物。
【化2】

(式中、A及びBはそれぞれ独立して、水素原子もしくはメチル基であり、Rは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rは、メチル基及び/または水素原子であり、xは0〜10の数であり、yは1〜100の数である。)
【請求項3】
前記(B)成分の重量平均分子量が500〜8000である請求項2、3に記載の濃縮タイプの液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分がクエン酸、安息香酸又はその塩である請求項1〜3記載の濃縮タイプの液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−155606(P2009−155606A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338613(P2007−338613)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】