説明

液体洗浄剤組成物

【課題】高濃度の界面活性剤を含有し、洗浄力及び保存安定性に優れ、水で希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基)に、エチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとを特定条件で付加させて得られる非イオン界面活性剤、(b)陰イオン界面活性剤、(c)水混和性有機溶剤を、それぞれ特定比率で含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄性能と安定性、及び溶解性に優れた、液体洗浄剤組成物に関し、更には衣料用及び住居用等、特には衣料等の繊維製品用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
特許文献1〜3には、特定の非イオン界面活性剤を配合した濃縮タイプの液体洗剤組成物が記載されている。
【0004】
特許文献4には、高級アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)を付加した非イオン界面活性剤と特定の溶剤を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。本文及び実施例において好ましい非イオン界面活性剤として、EOを付加した後、POを付加した、EO/POブロックタイプの非イオン界面活性剤が記載されている。
【0005】
特許文献5には、高級アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、更にエチレンオキサイド(EO)を順にブロック付加した非イオン界面活性剤(以下、便宜的にR−EPEノニオンと表記する)を含有する高濃度で取り扱い性のよい界面活性剤組成物と該界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献6には、高級アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、更にエチレンオキサイド(EO)を順にブロック付加したR−EPEノニオンと陰イオン界面活性剤を99/1〜10/90の割合で含有する高濃度で取り扱い性のよい界面活性剤組成物と該界面活性剤を含有する液体の衣料用洗剤が開示されている。
【0007】
特許文献7には、R−EPEノニオンを10〜50質量%で含有する安定性に優れた衣料用洗剤が開示されている。
【0008】
特許文献8及び特許文献9には、R−EPEノニオン、陰イオン界面活性剤及びその他の成分を含有する液体洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−7705号公報
【特許文献2】特開2008−7706号公報
【特許文献3】特開2008−7707号公報
【特許文献4】特開平8−157867号公報
【特許文献5】国際公開第1998/024864号パンフレット
【特許文献6】国際公開第1998/024865号パンフレット
【特許文献7】特開平10−195499号公報
【特許文献8】特開平11−310800号公報
【特許文献9】特開平11−315299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常の液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させる(例えば、50質量%以上)と増粘やゲル化が起こり、著しく使用性を損ねてしまうという課題があった。これは、界面活性剤濃度の上昇により、組成物中に液晶や結晶といった粘度が著しく高い相を形成してしまうためである。またこのような界面活性剤高濃度系において、溶剤や可溶化剤等を多量に配合し低粘度組成物を得る方法が一般に知られている。しかしながら、我々は洗浄剤の使用時に、組成物が水、特に冷水で希釈されていくと、希釈された組成物は液晶を形成し溶解性不良を起こすことや、また界面活性剤濃度が高まってくると、低温保管時に組成物が結晶の形成等により固化し易くなることなど、溶解性や安定性に課題があることを見出した。
【0011】
液体洗浄剤としての本質的な性能である洗浄力を向上させるとともに、こうした課題を解決することが要望されるが、特許文献1〜9には、このような観点から最適化された界面活性剤の構造や組み合わせなどを示唆する記載は存在しない。例えば、特許文献1〜3では、安定性、低温溶解性に関して十分な検討がされていない。また、特許文献4では、洗浄力の向上と界面活性剤との関連については言及されていない。しかも、特許文献4では低温溶解性について言及されているものの、その評価手段によると、多量の水に液体洗浄剤を添加し、攪拌することで評価しており、攪拌条件については記載がなく、十分な検討がされているとは言い難く、実際に開示された組成物は低温溶解性のおいて十分とはいえない。また特許引例5〜9は、R−EPEノニオンを用いるものであるが、実際に界面活性剤を、例えば50質量%を超える高濃度で配合した、高濃度界面活性剤系の液体洗浄剤組成物とその効果について具体的に開示するものではない。
【0012】
従って、本発明の課題は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効な高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物において、洗浄力及び保存安定性に優れ、水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10である、液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基)に、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数であり、q1が1〜5の数であり、p1+p2=14〜50である非イオン界面活性剤 15〜75質量%
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【0014】
本発明の液体洗浄剤組成物として、下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10である、液体洗浄剤組成物が挙げられる。
(a)成分:R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基)に、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数であり、q1が1〜5の数であり、p1+p2=14〜50、且つp1/(p1+p2)=0.2〜0.8である非イオン界面活性剤 15〜75質量%
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物は、洗浄成分である界面活性剤を高濃度配合しているにもかかわらず、安定性、特に低温での保存安定性に優れ、溶解性、特に冷水に対する溶解性に優れ、また洗浄性能にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基)1モルに対し、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であり、Rは、安定性及び洗浄性の点から炭素数8〜18、好ましくは8〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、洗浄性の点からRに結合する酸素原子は、Rの第1炭素原子又は第2炭素原子に結合していることが好ましい。(a)成分は、1級アルコール又は2級アルコールにアルキレンオキシドを付加することによって得ることができる。Rはアルキル基が好ましく、直鎖であることが好ましい。そのようなRを有する化合物を得るための原料として1級アルコールとして天然油脂由来のアルコールを、2級アルコールとしては合成アルコールを用いることが好ましい。天然油脂由来のアルコールを用いる場合、通常、Rは炭素数8〜18の偶数の炭素数で構成されており、天然系脂肪酸のアルキル分布で構成されていてもよいが、本発明は特には炭素数10のアルキル基、炭素数12のアルキル基及び炭素数14のアルキル基から選ばれる1種以上の直鎖アルキル基を含むことが好ましい。以下、p1、p2、q1はR−OHで表される化合物1モルあたりの付加モル数であることから、以下、これらを平均付加モル数として説明する場合もある。
【0017】
本発明の(a)成分は、下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤として示すことができる。
RO(EO)p1(AO)q1(EO)p2H (I)
〔式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基を表し、p1、p2はそれぞれEOの平均付加モル数であり、p1は3〜30の数であり、q1はAOの平均付加モル数であり、1〜5の数である。p1+p2=14〜50である。〕
【0018】
この非イオン界面活性剤は、下記一般式(Ia)で表される非イオン界面活性剤として示すことができる。
RO(EO)p1(AO)q1(EO)p2H (Ia)
〔式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基を表し、p1、p2はそれぞれEOの平均付加モル数であり、p1は3〜30の数、q1はAOの平均付加モル数であり、1〜5の数である。また、p1+p2=14〜50、且つp1/(p1+p2)=0.2〜0.8である。〕
【0019】
よって、本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10である、液体洗浄剤組成物を提供する。
(a)成分:下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤として示される非イオン界面活性剤 15〜75質量%
RO(EO)p1(AO)q1(EO)p2H (I)
〔式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を表し、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基を表し、p1、p2はそれぞれEOの平均付加モル数であり、p1は3〜30の数であり、q1はAOの平均付加モル数であり、1〜5の数である。p1+p2=14〜50である。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【0020】
(a)成分は、オキシエチレン基(以下、EO基という場合がある)の平均付加モル数の合計p1が3〜30であり、好ましくは7〜30、より好ましくは8〜20である。また、EO基の平均付加モル数p2は、このような範囲のp1に対して、p1+p2が14〜50となる数であるが、p2は、好ましくは3〜30、より好ましくは7〜30、更に好ましくは8〜20である。
【0021】
(a)成分は、EO基の平均付加モル数の合計p1+p2が14〜50であり、好ましくは16〜30、より好ましくは16〜25、最も好ましくは18〜25である。p1+p2が14以上、更には16以上、特には18以上であると、低温での液晶形成が抑制され、溶解性が良好となる。これは、界面活性剤の親水基部分のサイズが疎水基部分のサイズと比較し相対的に十分大きくなり、界面活性剤の整列が抑制されるためと考えられる。また、p1+p2が50以下、更には30以下、特には25以下であると、洗浄性能及び低温での安定性が良好となる。
【0022】
また、(a)成分は、炭素数3〜5のオキシアルキレン基(以下、AO基という場合がある)の平均付加モル数q1が1〜5であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。
【0023】
AO基の平均付加モル数q1は、液晶や結晶形成抑制能、溶解性、低温での安定性に優れる点で上記の下限値以上であり、洗浄性能の点から上限値以下である。AO基は、炭素数3〜5のアルキレンオキシド(以下、AOという場合がある)を付加させることによって得られる。AO基は、分岐したアルキル基を有する点で共通しているだけでなく、EO基がブロック化することで親水性部位を形成することが知られている一方で、AO基は親油性を示すことが知られている。AO基のうち、炭素数3のオキシアルキレン基、すなわちオキシプロピレン基(以下、PO基という場合がある。)が汎用性のみならず、後に続くエチレンオキシド(以下、EOという場合がある)の付加反応の反応しやすさから好ましい。すなわち、AO基は、オキシプロピレン基であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の(a)成分は、AO基とEO基の位置関係を示す指標として、EOの平均付加モル数p1、p2の比は、好ましくはp1/(p1+p2)=0.2〜0.8であり、より好ましくは0.3〜0.7である。p1/(p1+p2)が0.2以上であると、液晶、結晶形成抑制能が向上するため、溶解性、低温での安定性に優れるようになる。また、p1/(p1+p2)が0.8以下であると、結晶形成抑制能が向上するため、低温での安定性に優れるようになる。
【0025】
(a)成分は、一般式(I)に示されるように、R−O−にEOが付加した構造を有する。その際、平均付加モル数p1が3以上であることから、RO−に結合する基がEO基である化合物の割合が多くなる。一方、一般式(I)に示されるように、末端に−EO−Hの構造を有する。その際、平均付加モル数p2はp1+p2が14〜50となることから、末端が−EO−Hである化合物の割合が多くなる。本発明では、R−O−にEOが結合している化合物〔以下、(a−i)成分という場合がある〕の割合が、一般式(I)を構成している非イオン界面活性剤を基準として75モル%以上、更に80モル%以上であることが好ましく、また、Rからみた末端の構造が−EO−Hである化合物〔以下、(a−ii)成分という場合がある〕の割合が、一般式(I)を構成している非イオン界面活性剤を基準として70モル%以上、更に80モル%以上であることが好ましい。(a−i)成分のこの割合が75モル%以上であると、液晶、結晶形成抑制能が向上するため、溶解性、低温での安定性に優れるようになる。また、(a−ii)成分のこの割合が70モル%以上であると、結晶形成抑制能が向上するため、低温での安定性に優れるようになる。本発明において、前記(a−i)成分及び(a−ii)成分の割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0026】
なお(a)成分中、(a−i)成分を75モル%以上、特には80モル%以上含むためには、R−OHに対してアルカリ触媒下で、エチレンオキシドをp1として6モル以上、特には8モル以上付加することにより達成することができ、(a−ii)成分を(a)成分中70モル%以上、特には80モル%以上含むためには、エチレンオキシドをp1モル付加の後に更に続けて炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後にエチレンオキシドをp2として6モル以上、特には8モル以上付加させることで達成することができる。
【0027】
本発明の特徴は、高濃度の界面活性剤を含む液体洗浄剤組成物、すなわち界面活性剤濃度が50質量%以上、特には60質量%以上である液体洗浄剤組成物において、後述する(b)成分の陰イオン界面活性剤と特定比率で併用し有機溶剤を配合することにより、優れた安定性と洗浄力のみならず、水での溶解時のゲル化による溶解性阻害を抑制することに成功したことである。これは(a)成分に拠るところが大きく、(a)成分により、水−界面活性剤−溶剤の3成分相図での液晶相の領域を低減させることが可能になることを見出した点にある。本発明に用いられる(a)成分は、EO基、AO基の平均付加モル数が特定されており、これは、一般的に家庭の衣料用洗浄剤用いられるAO付加型の非イオン界面活性剤と比較してEOの全付加モル数の多さ及びEOのモル数の対称性の点で特徴的であることがわかる。一般に非イオン界面活性剤を主基材とする液体洗浄剤を調製する場合、よく知られている非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、EOの平均付加モル数が14を超えると洗浄力は低下する。通常、衣料用洗浄剤の場合、洗浄性に好ましい平均EO付加モル数は3〜12程度である。しかしながら、従来の非イオン界面活性剤では、高濃度界面活性剤系で用いた場合、水で希釈する時にゲル化してしまい溶解性の問題が解決できない。本発明では14以上の平均EO付加モル数を有し、更に疎水性のオキシアルキレン基、すなわち炭素数3〜5のオキシアルキレン基、好ましくはオキシプロピレン基がEO基(ポリオキシエチレン基も含む)の間に存在する化合物の比率を特定し、更に後述の(b)成分を(a)成分と質量比で(a)/(b)=25/75〜90/10の割合で添加することで、低温安定性、及び冷水での溶解時におけるゲル化の問題を解決することに成功した。更に、R−OHにEO、PO、EOをこの順序で且つ特定の平均付加モル数で付加させることは、前記したように、(a)成分中の(a−i)成分の割合や(a−ii)成分の割合を増加させると考えられるが、これもまた、結晶相や液晶相の領域を制限する等により本発明の効果を向上させることに寄与しているものと推察される。
【0028】
(a)成分の製造に関して、R−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化カリウムを使用することが最も好ましい。
【0029】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでEOの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件でAO、好ましくはプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でEOを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各EO及びAOの使用量は、組成物中のp1、q1及びp2の平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0030】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の配合量は、15〜75質量%であり、25〜60質量%が好ましく、35〜50質量%が特に好ましい。コンパクト化による低使用量での洗浄力の観点から前記濃度は下限値以上であり、安定性や溶解性の観点から上限値以下である。
【0031】
<(b)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、洗浄性能、安定性、溶解性向上の点で、(b)陰イオン界面活性剤が配合される。(b)成分の含有量は、(a)成分との関係から後述する比率を満たす必要がある。(b)成分は、洗浄成分としての効果とともに、特定の比率で(a)成分と用いることにより、安定性、溶解性を向上させる。この理由は定かではないが、(a)成分の分子間に(b)成分の分子が混合されることで、(b)成分の陰イオン基の電気的反発から界面活性剤分子の整列が抑制され、結果として液晶、結晶形成が抑制されるものと予想される。
【0032】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(b1)〜(b5)が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b1)、(b2)、(b4)が好ましく、更に(b1)及び(b2)から選ばれる一種以上を含有することがより好ましい。(b1)及び(b2)から選ばれる一種以上を含有する場合(b)成分中の80質量%以上、特には90質量%を占めることが洗浄性、低温安定性、溶解性の点で最も好ましい。また(b4)を泡調整剤、泥分散剤等の理由で含有する場合は、低温安定性の点から(b)成分中好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0033】
(b1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
(b4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(b5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0034】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(b)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(f)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性や、組成物の酸化防止剤、具体的には着色抑制剤として亜硫酸ナトリウム等を後述する濃度範囲で配合されるが、少ないことが好ましく、実質的には5質量%以下、特には3質量%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、50〜80質量%が好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。コンパクト化による低使用量での洗浄力の観点から前記濃度は下限値以上であり、安定性や溶解性の観点から上限値以下である。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。
【0036】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)/(b)は質量比として25/75〜90/10であり、50/50〜80/20が好ましく、60/40〜80/20が更に好ましい。洗浄力の点から(a)成分の割合が下限値以上であり溶解性及び安定性の観点から上限値以下である。(a)成分は(b)成分を併用することで、組成物の洗浄力を高め、更に液晶形成を抑制することで溶解性を高めることが可能となる。
【0037】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(c)水混和性有機溶剤を5〜40質量%含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0038】
(c)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(a)成分及び(b)成分の合計と(c)成分との質量比〔(a)+(b)〕/(c)は90/10〜65/35が好ましく、85/15〜70/30がより好ましく、80/20〜70/30が更に好ましい。
【0039】
(c)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0040】
水混和性有機溶剤としては、(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(c2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又は重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(c5)1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、(c6)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類
【0041】
(c)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)〜(c6)の分類から選ばれる1種以上を使用する。上記の(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上を併用することが好ましく、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c5)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上を併用することがより好ましく、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、(c6)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上、より具体的にはプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、モノ〜トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる2種以上を併用することで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できることから最も好ましい。
【0042】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(d)成分として、水を5〜40質量%、更に10〜30質量%含有することが好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0043】
<その他の成分>
〔(e)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下、(e)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(e)成分としては、下記の(e1)〜(e3)が挙げられる。
(e1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(e1−1)及び(e1−2)が挙げられる。
(e1−1)次の一般式で表されるアルキル多糖界面活性剤。
1e−(OR2exy
〔式中、R1eは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2eは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(e1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(e2)陽イオン界面活性剤。
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
(e3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0044】
(e)成分の含有量は、本発明の液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、(e)成分のうち非イオン界面活性剤(e1)は、前記(a)成分と合わせて、〔(a)+(e1)〕/(b)として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該3級アミンの質量とする。
【0045】
〔(f)アルカリ剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(f)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノールアミンのアルカノール基以外は水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0046】
(f)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0047】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(f)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(f)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。
【0048】
以下、更に本発明に使用できるその他の成分を示す。
〔(g)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。(g)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0049】
(g)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0050】
〔その他の成分〕
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、平均分子量約2000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤
(xii)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0051】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0052】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)、(xi)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0053】
本発明の組成物のpHはJIS K3362:1998記載で25℃で測定する。pHは洗浄性能、安定性の点から6〜11、特には8〜10(25℃)が好ましい。
【0054】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(c)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0055】
また本発明の液体洗浄剤組成物は、水による希釈時に、ゲル化や高粘度化が起こらない組成物である。従って、具体的には液体洗浄剤組成物は、組成物の温度が5〜40℃において、5℃の水で0倍を超え100倍の範囲で希釈する工程において、ゲル化しないことが好ましく、特にはこの希釈工程にて得られる希釈液の粘度が5℃において1500mPa・s以下である液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0056】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。
【0057】
本発明の液体洗浄剤組成物は、容器、例えば計量キャップとボトルとを含んで構成されるプラスチック容器に充填して容器入り液体洗浄剤物品とすることができる。ボトルの材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル(PVC)等のプラスチックを用いることができる。本発明の液体洗浄剤組成物を充填するための容器としては、プラスチック材の成型容器の内圧減少による減圧変形抑制の観点から、液体洗浄剤組成物の収容部を有するプラスチック容器であって、前記収容部が曲げ弾性率(JIS K7171)が2000MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは3000MPa以下のプラスチックから構成され、且つ肉厚が0.3〜1.5mmであるプラスチック容器が好ましく、通常は、ボトルがこのような曲げ弾性率と肉厚を満たすものが使用される。容器変形の理由としては、本発明の液体洗浄剤組成物は非イオン界面活性剤を高濃度で配合するため、ボトル内の空間に存在する酸素が溶解することが推測される。光の透過は非イオン界面活性剤を含む液体洗浄剤組成物への酸素の溶解性を促進することから、本発明では遮光性を有するボトルを用いることが好ましく、特に、本発明の液体洗浄剤組成物の酸素の溶解は光透過率は波長600nm〜700nmの範囲の光による影響が大きいことから、該波長について15%以下であることが好ましい。遮光性を高めるために酸化チタンやカーボンブラックを、容器を構成するプラスチックに添加することができる。
【0058】
また、詰め替え用の容器に充填した物品として、本発明の液体洗浄剤組成物は、保存安定性の観点から、可撓性の積層樹脂フィルムを貼り合わせて形成した袋に封入されるのが好ましい。
【0059】
更に、袋本体の上部端縁部の一部に注出流路を有するノズル部を設け、レーザー加工やスコア加工等を施し、手で袋上端縁部を開封することでノズル部吐出口を形成できるものが使い易さの観点から好ましく、袋の形状としては、スタンディングパウチ形式の袋は、取り扱い易く、好ましい形式である。
【0060】
袋を形成するフィルムとしては、可撓性の単層樹脂フィルムを使用することも可能であるが、積層樹脂フィルムが使用するのが一般的である。積層樹脂フィルムの基材層としては、延伸ナイロンフィルム(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、シーラント層として無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バリヤー層としてアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM−PET)、セラミック蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム箔等を例示することができる。
【0061】
特に、積層樹脂フィルムは3層以上からなる構成とし、中間層と最内層の間に印刷インキ(インキ層)が介在しない構成が好ましい。生産適性や落下強度、開封性や包材コストの面を考慮すると、外層(液体洗浄剤組成物に接する層から最も遠い層)より、PET(好ましくは厚さが9〜25μm)/[インキ層+接着剤層]/ONy(好ましくは厚さが15〜25μm)/接着剤層/LLDPE(好ましくは厚さが60〜200μm)の積層フィルムが最も好ましい。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0063】
表1〜3に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0064】
(1)洗浄力評価
JIS K3362:1998 記載の襟あか布を調製する。JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1〜3の液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。表1〜3の液体洗浄剤組成物の使用濃度を0.33g/Lとした。洗浄力の判定は、指標洗剤より勝る場合を「◎」、指標洗剤と同等の場合を「○」、指標洗剤より劣る場合を「×」とした。
【0065】
(2)保存安定性評価
50mLのサンプルビン(No.6広口規格ビン、ガラス製、直径40mm、高さ80mmの円筒形)に、液体洗浄剤組成物を40mL充填し、蓋をした後、5℃の恒温室で20日間静置した。組成物の安定性は、目視で外観を観察し、下記の基準で判定した。
○;液晶、結晶を形成していない均一液体相であり、液安定性に優れる。
×;液晶形成、又は結晶形成、又は分離、又は析出が認められる。
【0066】
(3)溶解性のモデル評価
液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(液体洗浄剤組成物の質量)/(液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備し、5℃の恒温室で1日間静置した後、このサンプルの5℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。これは5℃の水に対する溶解性モデル試験である。
測定機器 東京計器(株)製 デジタルB型粘度計(型番; DV M−B)
測定条件 60r/min 60秒
○;すべてのサンプルの粘度が1500mPa・s未満である。これは、冷水による希釈時に液晶形成や結晶形成等により増粘しないことを意味し、溶解性に優れると判断できる。
×;サンプルの中に粘度が1500mPa・s以上のものがある。これは冷水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘する場合があることを意味し、溶解性が劣ると判断される。
××;上記×のサンプルの中に粘度が2000mPa・s以上のものがある。これは冷水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘し易く、特に溶解性が劣ると判断される。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、表中では、(a’−1)〜(a’−6)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。
(a)成分
(a−1):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均9モル、POを平均2モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの
なお、ここで(a−1)は炭素数10〜14の1級アルコール1モル当りにエチレンオキシドを9モル付加反応させた後、プロピレンオキシドを2モル付加反応させ、その後エチレンオキシドを9モル反応させることによって得られた化合物を意味し、一般式(I)においてp1=9、q1=2、p2=9の化合物をもまた意味する。下記の(a−2)〜(a−6)においても同様に解釈するものとする。(a’−1)〜(a’−7)においても同様に解釈する。
(a−2):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均7モル、POを平均2モル、EOを平均7モルの順にブロック付加させたもの
(a−3):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均25モル、POを平均2モル、EOを平均25モルの順にブロック付加させたもの
(a−4):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均4モル、POを平均2モル、EOを平均14モルの順にブロック付加させたもの
(a−5):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均14モル、POを平均2モル、EOを平均4モルの順にブロック付加させたもの
(a−6):炭素数12〜14の2級アルコールにEOを平均9モル、POを平均2モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの
【0071】
(a’−1):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均6モル、POを平均2モル、EOを平均6モルの順にブロック付加させたもの
(a’−2):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均30モル、POを平均2モル、EOを平均30モルの順にブロック付加させたもの
(a’−3):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均9モル、POを平均6モル、EOを平均9モルの順にブロック付加させたもの
(a’−4):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均18モル付加させたもの(a’−5):炭素数10〜14の1級アルコールにPOを平均2モル、EOを平均18モルの順にブロック付加させたもの
(a’−6):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均18モル、POを平均2モルの順にブロック付加させたもの
(a’−7):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均21モル付加させたもの
【0072】
ソフタノール30:(商品名)炭素数12〜14の2級アルコールにEOを平均3モル付加させたもの(株式会社 日本触媒製)
【0073】
(b)成分
(b−1):炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸
(b−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、EO平均付加モル数3、モノエタノールアミン塩、但し表中の濃度は酸型の濃度とし、対塩のモノエタノールアミンは(f)成分に合計した。)
(b−3):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、EO平均付加モル数2、モノエタノールアミン塩、但し表中の濃度は酸型の濃度とし、対塩のモノエタノールアミンは(f)成分に合計した。)
(b−4):ルナックL−55(商品名)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
【0074】
(c)成分
(c−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブトキシジグリコールとも呼ばれる)
(c−2):プロピレングリコール
(c−3):トリエチレングリコールモノフェニルエーテル
(c−4):エタノール
【0075】
(その他)
ポリマー(1):特開平10−60476号公報の4頁段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物
蛍光染料:チノパールCBS−X(商品名)(チバスペシャリティケミカルズ製)
酵素:エバラーゼ16.0L−EX(商品名)(プロテアーゼ、ノボザイム社製)
色素(1):緑色202号
【0076】
<製品例>
(1)製品例1
本発明の液体洗浄剤組成物は、袋状容器に充填した製品として提供することができる。その一例を以下に示す。
【0077】
容器を形成するフィルムとして、外層(液体洗浄剤組成物に接する層から最も遠い層)より、PET12μm/[インキ層+接着剤層]/ONy15μm/接着剤層/LLDPE150μmの積層フィルムを用い、幅120mm×高さ215mm、底部折込幅34.5mmの大きさの自立袋を形成した。本袋に本発明の液体洗浄剤組成物(例えば、実施例1〜12の組成物)を320g充填し、上部をヒートシールすることで密封してプラスチック容器に袋詰めされた容器入り液体洗浄剤を得る。プラスチック容器に袋詰めされた容器入り液体洗浄剤は、市場では詰め替え用の目的で通常販売される。
【0078】
(2)製品例2
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、ボトル、該ボトルの口部に取り付けられた本体キャップ、また必要なら該本体に計量機能を有するキャップ部を含む容器に充填した製品として提供することができる。その一例を以下に示す。
【0079】
容器として、酸化チタンを1.0質量%添加したPET樹脂(曲げ弾性率〔JIS K7171〕:2400MPa、波長600〜700nm間の光透過率:10%以下)を用いて製造された満容量438mL、最大外径61mm、胴部外径59mm、高さ190mm、ボトルの胴部平均肉厚0.5mmの円筒状ボトルに、本発明の液体洗浄剤組成物(例えば、実施例1〜12の組成物)を400g充填し、予めキャップ(容量26mL)が装着された本体キャップをボトルに嵌合させて、密封したプラスチック容器に充填された容器入り液体洗浄剤を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(f)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=25/75〜90/10であり、pH(25℃)が6〜11である、衣料用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:R−OHで表される化合物(Rは炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基)に、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをq1モル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数であり、q1が1〜5の数であり、p1+p2=14〜50である非イオン界面活性剤 15〜75質量%
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
(f)成分:アルカノールアミン
【請求項2】
(c)成分が、(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上である、請求項1記載の衣料用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−63788(P2011−63788A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87599(P2010−87599)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【分割の表示】特願2009−252012(P2009−252012)の分割
【原出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】