説明

液体流の水素化処理による閉塞性組成物の除去方法

【課題】各種の炭化水素含有地層から得られる地層流体の処理方法を改良すること。
【解決手段】地表下現場熱処理法で地層流体を製造する工程、地層流体を分離して、液体流及びガス流を製造する工程、液体流の少なくとも一部を水素化処理ユニットに供給する工程、及び該液体流の少なくとも一部を、液体流中の閉塞性組成物(水素化処理ユニットの下流に配置した1種以上の処理ユニットを閉塞させる)の少なくとも一部を除去するのに充分な条件で水素化処理する工程、及び水素化処理した液体流を下流の1つ以上の処理ユニットで処理して、1種以上の原油生成物を形成する工程を含む1種以上の原油生成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
1.発明の分野
本発明は、一般に炭化水素含有地層のような各種の地表下地層から炭化水素、水素及び/又はその他の生成物を製造する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
地下地層から得られる炭化水素は、エネルギー資源、供給原料及び消費製品として使用されることが多い。有用な炭化水素資源の枯渇に対する関心及び製造した炭化水素の品質低下に対する関心から、有用な炭化水素資源の一層効率的な回収法、処理法及び/又は使用法が発展した。地下地層中の炭化水素の化学的及び/又は物理的特性は、地下地層から炭化水素材料を一層容易に取出せるように変化させる必要があるかも知れない。このような化学的物理的変化としては、取出し可能な液体を製造する現場反応、地層中の炭化水素材料の組成変化、溶解度変化、密度変化、相変化、及び/又は粘度変化が挙げられる。限定されるものではないが、流体はガス、液体、エマルジョン、スラリー、及び/又は液体流と同様な流れ特性を有する固体粒子の流れであってよい。
【特許文献1】米国特許5,648,305
【特許文献2】米国特許5,282,957
【特許文献3】米国特許5,173,213
【特許文献4】米国特許4,840,720
【特許文献5】米国特許4,810,397
【特許文献6】米国特許4,551,226
【特許文献7】WO 96/27430
【特許文献8】WO/2006/040307
【特許文献9】米国特許5,102,551
【特許文献10】米国特許5,093,002
【特許文献11】米国特許5,275,726
【特許文献12】米国特許5,458,774
【特許文献13】米国特許5,150,118
【特許文献14】米国特許出願公開20050133414
【特許文献15】米国特許出願公開20050133405
【特許文献16】米国特許出願11/400,542
【特許文献17】米国特許出願11/425,979
【特許文献18】米国特許出願11/425,992
【特許文献19】国際公開WO 2006/020547
【特許文献20】米国特許出願公開20060191820
【特許文献21】米国特許出願公開20060178546
【特許文献22】米国特許3,130,007
【特許文献23】米国特許3,702,886
【特許文献24】米国特許3,770,614
【特許文献25】米国特許3,709,979
【特許文献26】米国特許3,832,449
【特許文献27】米国特許3,948,758
【特許文献28】米国特許4,076,842
【特許文献29】米国特許4,016,245
【特許文献30】米国特許4,440,871
【特許文献31】米国特許4,310,440
【特許文献32】米国特許4,686,029
【特許文献33】米国特許4,254,297
【特許文献34】米国特許4,500,651
【非特許文献1】“Refining Process 2000”,Hydrocarbon Processing,Gulf Publishing Co.,pp87〜142
【非特許文献2】Encyclopedia of Chemical Engineering,第4版,1995年,John Wiley & Sons Inc.,第16巻,158〜164頁
【非特許文献3】”Atlas of Zeolite Structure Types (ゼオライト構造型の図解書)“,W.H.Meier及びD.H.Olson編,Butterworth−Heineman,第三版,1992年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地下地層から現場熱処理法を用いて得られる地層流体は、固体であってもよいし、及び/又は商用製品を製造するために処理されていてもよい。現場熱処理法で製造された、このような地層流体は、従来の製造法で得られる地層流体とは異なる特性及び/又は組成を有するかも知れない。地下地層から現場熱処理法を用いて得られる地層流体は、輸送及び/又は工業的用途についての工業規格に適合しない可能性がある。したがって、各種の炭化水素含有地層から得られる地層流体の処理を改良した方法及びシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで説明する実施態様は、一般に地表下地層から製造した地層流体の処理方法に関する。
【0005】
幾つかの実施態様では本発明は、地表下現場熱処理法で地層流体を製造する工程、地層流体を分離して、液体流及びガス流を製造する工程、液体流の少なくとも一部を水素化処理ユニットに供給する工程、及び該液体流の少なくとも一部を、液体流中の閉塞性組成物の少なくとも一部を除去するのに充分な条件で水素化処理して、水素化処理液体流を製造する工程を含む1種以上の原油生成物の製造方法を提供する。
【0006】
別の実施態様では、特定の実施態様を他の実施態様の特徴と組み合せることができる。例えば、一実施態様の特徴を他の実施態様のいずれかの特徴と組み合せることができる。
別の実施態様では、地表下地層の処理は、ここで説明した方法、システム又はヒーターのいずれかを用いて行なわれる。
別の実施態様では、ここで説明した特定の実施態様に追加の特徴を加えることができる。
【0007】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、また添付図面を参照すれば、当業者に明らかとなり得る。
図1は、炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の一実施態様の概略図である。
図2は、現場熱処理法で製造された混合物を処理するためのシステムの一実施態様の概略図である。
図3は、現場熱処理法で製造された液体流を処理するためのシステムの一実施態様の概略図である。
【0008】
本発明は各種の変形及び代替形態に影響を受け易いが、それらの特定の実施態様を図面で例示し、ここで詳細に説明できる。図面は、物差しで測定できない。しかし、図面及び図面についての詳細な説明は、本発明の限定を意図するものではなく、却って本発明は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形、均等物及び代替物を包含するものであると理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
詳細な説明
以下の説明は、一般に地層中の炭化水素を処理するシステム及び方法に関する。このような地層は、炭化水素生成物、水素、その他の生成物を生成させるために処理できる。
以下の説明は、一般に現場熱処理法を用いて炭化水素含有地層から製造した地層流体を処理するシステム及び方法に関する。炭化水素含有地層は、炭化水素生成物、水素、メタン、その他の生成物を生成させるために処理できる。
【0010】
“炭化水素”は、主として炭素及び水素で形成された分子として定義される。炭化水素は、限定されるものではないが、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素及び/又は硫黄のような他の元素を含有してもよい。炭化水素は、限定されるものではないが、ケロジェン、ビチュメン、ピロ(pyro)ビチュメン、油、天然鉱物蝋及びアスファルト鉱であってよい。炭化水素は、地球の鉱物基盤中又は近辺に定着している可能性がある。基盤としては、限定されるものではないが、堆積岩、砂、シリシライト(silicilyte)、炭酸塩、珪藻土、その他の多孔質媒体が挙げられる。“炭化水素流体”は、炭化水素を含有する流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水及びアンモニアのような非炭化水素流体を含有又は連行してもよいし、非炭化水素流体に連行されていてもよい。
【0011】
“地層”は、1種以上の炭化水素含有層(炭化水素を含有する1種以上の層)、1種以上の非炭化水素層、上層土(overburden)、及び/又は下層土(underburden)を含有する。“上層土”及び/又は“下層土”は、1種以上の異なる不透過性材料を含有する。例えば“上層土”及び/又は“下層土”としては、岩、頁岩、泥岩、又は湿潤/緻密炭酸塩が挙げられる。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、上層土及び/又は下層土は、比較的不透過性で、上層土及び/又は下層土の炭化水素含有層に大きな特性変化をもたらす現場熱処理プロセス中の温度に屈服しない1種以上の炭化水素含有層を含有してよい。例えば上層土は頁岩又は泥岩を含有し得るが、下層土は、現場熱処理プロセス中の熱分解温度に加熱されない。幾つかの例では、上層土及び/又は下層土は、若干透過性である。
【0012】
“地層流体”とは、地層中に存在する流体のことで、熱分解流体、合成ガス、流動化(mobilized)流体、粘度低減化(visbroken)流体及び水(水蒸気)が挙げられる。地層流体は炭化水素流体であっても非炭化水素流体であってもよい。流動化流体とは、地層を熱処理した結果、流動可能となった炭化水素含有地層中の流体のことである。“粘度低減化流体”とは、地層を熱処理した結果、粘度が低下した流体のことである。
【0013】
“製造又は生成した流体”とは、地層から取出した地層流体のことである。
“現場(での)転化法”とは、炭化水素含有地層中に熱分解流体が生成するように、地層の少なくとも一部を熱分解温度より高い温度に上がるまで、炭化水素含有地層を熱源で加熱する方法のことである。
“炭素数”とは、分子中の炭素原子の数のことである。炭化水素流体は、炭素数分布により説明できる。炭素数分布は、真の沸点分布及び/又は気液クロマトグラフィーにより測定できる。
【0014】
“熱源”は、実質的に導電性及び/又は放射性熱伝達により地層の少なくとも一部に熱を与えるシステムである。熱源としては、例えば絶縁した導電体、長い部材(elongated member)、及び/又は導管中に配置した導電体のような電気ヒーターが挙げられる。熱源としては、地層中又は地層外部の燃料を燃焼させて、熱を発生するシステムであってもよい。このようなシステムは、表面バーナー、下降孔(downhole)ガスバーナー、無炎分配燃焼器、及び自然分配燃焼器であってもよい。幾つかの実施態様では、1種以上の熱源で供給され、又は発生した熱は、他のエネルギー源で供給できる。他のエネルギー源は、地層を直接加熱できるか、或いはこのエネルギーは、地層を直接又は間接的に加熱する伝達媒体に供給してよい。地層を加熱する熱源は、異なるエネルギー源を使用できると理解すべきである。したがって、例えば所定の地層に、幾つかの熱源は電気抵抗ヒーターから供給できるし、幾つかの熱源は燃焼熱を供給できるし、また幾つかの熱源は1種以上の他のエネルギー源(例えば化学反応、太陽エネルギー、風エネルギー、バイオマス、又はその他の更新可能なエネルギー)から熱を供給できる。化学反応としては、発熱反応(例えば酸化反応)がある。熱源は、ヒーター坑井のような加熱場所に近い、及び/又は加熱場所を囲む帯域に熱を供給するヒーターであってもよい。
【0015】
“ヒーター”は、坑井又は近くの坑井孔領域に熱を発生するシステム又は熱源である。ヒーターは、限定されるものではないが、電気ヒーター、バーナー、地層中又は地層から生成した材料と反応する燃焼器、及び/又はそれらの組合わせであってよい。
“現場熱処理法”とは、炭化水素含有地層中に流動化流体、粘度低減化流体、及び/又は熱分解流体が生成するように、地層の少なくとも一部を、流動化流体、炭化水素含有材料の粘度低減化(visbreaking)、及び/又は熱分解が生じる温度より高い温度に上がるまで、炭化水素含有地層を熱源で加熱する方法のことである。
【0016】
“坑井孔”とは、地層中に導管を穿孔又は挿入して作った地層中の孔のことである。坑井孔は、ほぼ円形の断面又は他の断面形状を有する。ここで、地層の開口に関して使用した用語“坑井”及び“開口”は、用語“坑井孔”と交換可能に使用できる。
“熱分解”は、加熱により化学結合を破壊することである。熱分解は、例えば1つの化合物を熱単独で1種以上の他の化合物に変成することである。熱は、地層の或る部分に伝達させて、熱分解を起こすことができる。幾つかの地層、地層の幾つかの部分、及び/又は地層中の他の材料は、触媒活性により熱分解を促進する可能性がある。
【0017】
“熱分解流体”又は“熱分解生成物”とは、ほぼ炭化水素の熱分解中に製造又は生成した流体のことである。熱分解反応で生成した流体は、地層中の他の流体と混合してよい。この混合物は、熱分解流体又は熱分解生成物と考えられる。ここで使用した“熱分解帯域”とは、反応するか、又は反応して熱分解流体を生成する或る容積の地層(例えばタールサンド地層のような比較的透過性のある地層)のことである。
【0018】
“分解”とは、有機化合物の分解及び再結合により初期に存在していた分子の数よりも多い分子を生成する方法のことである。分解では、分子間の水素原子の移動を伴う一連の反応が起こる。例えばナフサは、熱分解反応を受けてエチレン及び水素を形成できる。
“粘度低減化”とは、熱処理中の流体に分子の絡み合いを解いて、及び/又は熱処理中、大きい分子から小さい分子に破壊して、流体の粘度を低下させることである。
【0019】
“凝縮性炭化水素”は、25℃、1絶対圧で凝縮する炭化水素である。凝縮性炭化水素としては、炭素数が4を超える炭化水素の混合物がある。“非凝縮性炭化水素”は、25℃、1絶対圧で凝縮しない炭化水素である。非凝縮性炭化水素としては、炭素数が5未満の炭化水素の混合物がある。
“閉塞”とは、処理容器又は導管中の1種以上の組成物の流れを邪魔又は防止することである。
【0020】
“オレフィン”は、1個以上の非芳香族炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素を含む分子である。
“ガソリン炭化水素”とは、沸点範囲が32℃(90°F)〜約204℃(400°F)の炭化水素のことである。ガソリン炭化水素としては、限定されるものではないが、直留ガソリン、ナフサ、流動化した又は熱接触的に分解したガソリン、VBガソリン、及びコーカーガソリンが挙げられる。ガソリン炭化水素の含有量は、ASTM法D2887により測定される。
【0021】
“ナフサ”とは、0.101MPaでの沸点範囲分布が38〜200℃の炭化水素成分のことである。ナフサ含有量は、ASTM法D5307により測定される。
“ケロシン”とは、0.101MPaでの沸点範囲分布が204〜260℃の炭化水素のことである。ケロシン含有量は、ASTM法D2887により測定される。
“ディーゼル”とは、0.101MPaでの沸点範囲分布が260〜343℃(500〜650°F)の炭化水素のことである。ディーゼル含有量は、ASTM法D2887により測定される。
【0022】
“VGO”又は“減圧ガス油”とは、0.101MPaでの沸点範囲分布が343〜538℃の炭化水素のことである。VGO含有量は、ASTM法D5307により測定される。
“品質向上”とは、炭化水素の品質を向上させることである。例えば重質炭化水素を品質向上すると、重質炭化水素のAPI比重が増大する。
“API比重”とは、15.5℃(60°F)でのAPI比重のことである。API比重はASTM法D6822により測定される。
【0023】
“周期律表”とは、純粋及び応用化学の国際ユニオン(UPAC)が2005年10月に規定した周期律表のことである。
“X欄金属”とは、周期律表X欄の1種以上の金属、及び/又は周期律表X欄の1種以上の金属の1種以上の化合物のことである。ここで、Xは、周期律表の欄数(例えば1〜12)に相当する。例えば“6欄金属”とは、周期律表6欄の金属、及び/又は周期律表6欄の1種以上の金属の化合物のことである。
【0024】
“X欄元素”とは、周期律表X欄の1種以上の元素、及び/又は周期律表X欄の1種以上の元素の1種以上の化合物のことである。ここで、Xは、周期律表の欄数(例えば13〜18)に相当する。例えば“15欄金属”とは、周期律表15欄の元素、及び/又は周期律表15欄の1種以上の金属の化合物のことである。
【0025】
本願の範囲では、周期律表の金属の重量、周期律表の金属の化合物の重量、周期律表の元素の重量、又は周期律表の元素の化合物の重量は、金属の重量又は元素の重量として計算される。例えば触媒1g当たりMoOを1g使用すれば、触媒中のモリブデン金属の計算重量は、触媒1g当たり0.067gとなる。
“品質向上”とは、炭化水素の品質を向上させることである。例えば重質炭化水素を品質向上すると、重質炭化水素のAPI比重が増大する可能性がある。
【0026】
“サイクル油”とは、軽質サイクル油と重質サイクル油との混合物のことである。“軽質サイクル油”とは、流動接触分解システムで製造される沸点範囲分布が430〜650°F(221〜343℃)の炭化水素のことである。軽質サイクル油の含有量は、ASTM法D5307により測定される。“重質サイクル油”とは、流動接触分解システムで製造される沸点範囲分布が650〜800°F(343〜427℃)の炭化水素のことである。重質サイクル油の含有量は、ASTM法D5307により測定される。
【0027】
“オクタン価”とは、自動車燃料のアンチノック性を標準の対照燃料と比べて計算した数値を表示したものである。計算オクタン価は、ASTM法D6730により測定される。
“セノスフェア(cenosphere)”とは、高温の熱処理で有機成分の揮発により溶融成分が気球のように膨らんだ際に形成される中空粒子のことである。
【0028】
“物理的安定性”とは、地層流体の輸送中、該流体が相分離又は凝集を示さない能力のことである。物理的安定性は、ASTM法D7060により測定される。“化学的安定性”とは、地層流体の輸送中、該流体中の成分が反応して、パイプライン、バルブ、及び/又は容器を詰らせる重合体及び/又は組成物を形成することなく、地層流体が輸送される能力のことである。
【0029】
図1は、炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の一実施態様の概略図である。この現場熱処理システムは、バリヤー坑井200を備えてよい。バリヤー坑井は、処理領域周囲のバリヤーを形成するのに使用される。バリヤーは、流体流が処理領域に入る、及び/又は処理領域から出るのを防止する。バリヤーとしては、限定されるものではないが、除水性坑井、減圧坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、又はそれらの組合わせが挙げられる。幾つかの実施態様では、バリヤー坑井200は、除水性坑井である。除水性坑井は、液体水を除去し、及び/又は液体水が加熱すべき地層又はその一部に入るのを防止する。図1に示す実施態様では、バリヤー坑井200は、熱源202の片側沿いに延びていることを示したが、バリヤー坑井は、通常、地層の処理面積の加熱に使用する、又は使用すべき全ての熱源202を取り囲む。
【0030】
熱源202は、地層の少なくとも一部に配置される。熱源202としては、絶縁導電体、導管中の導電体ヒーター、表面バーナー、無炎分配燃焼器、及び/又は自然分配燃焼器のようなヒーターが挙げられる。熱源202は、他種のヒーターであってもよい。熱源202は、地層中の炭化水素を加熱するため、地層の少なくとも一部に熱を与える。供給ライン204経由で熱源202にエネルギーを供給してもよい。供給ライン204は、地層の加熱に使用する熱源の種類に依存して、構造的に異なっていてもよい。熱源用供給ライン204は、電気ヒーター用の電気を伝達できるか、燃焼器用の燃料を輸送できるか、或いは地層に循環させる熱交換流体を輸送できる。
【0031】
地層が加熱されると、この地層への熱入力により地層の膨張及び地形(geo)機械的行動が起こる。コンピューターシミュレーションは、加熱に対する地層の応答モデルを作成できる。このようなコンピューターシミュレーションを使用して、地層の地形機械的行動が地層中の熱源、製造坑井、及びその他の設備の機能性に悪影響を及ぼさないように、地層中の熱源を活性化するためのパターン及び時間順序を開発できる。
【0032】
地層を加熱すると、地層の透過性及び/又は多孔性が増大する可能性がある。透過性及び/又は多孔性の増大は、水の蒸発及び除去、炭化水素の除去、及び/又は割れ目の創成による地層の質量減少で起こる。地層の透過性及び/又は多孔性が増大したため、地層の加熱部分では流体が一層流れ易くなり得る。地層の加熱部分の流体は、地層の透過性及び/又は多孔性の増大により地層内を相当な距離、移動できる。この相当な距離は、地層の透過性、流体の特性、地層の温度、及び流体を移動させる圧力勾配等の各種要因に依存して、1000mを超えるかも知れない。地層中を相当な距離移動する流体の能力によって、製造坑井206は、地層中に比較的遠く離して一定間隔で配置できる。
【0033】
製造坑井206は、地層から地層流体を取出すために使用される。幾つかの実施態様では、製造坑井206は熱源を備える。製造坑井中の熱源は、この製造坑井での又は製造坑井近くの地層の1つ以上の部分を加熱できる。現場熱処理法の幾つかの実施態様では、製造坑井から地層に供給される製造坑井1m当たりの熱量は、地層を加熱する熱源から地層に供給される熱源1m当たりの熱量よりも少ない。製造坑井から地層に加えた熱は、製造坑井近辺の液体相流体を蒸発、除去し、及び/又は巨大な及び/又は微小な複数の裂け目の形成により、製造坑井近辺の地層の透過性を増大させ、こうして製造坑井近辺の地層透過性を増大できる。
【0034】
製造坑井には2つ以上の熱源を配置してもよい。製造坑井下部の熱源の熱が近接する熱源の熱と重なって、製造坑井での地層の加熱で得られる利益を減殺するのに充分、加熱する場合、製造坑井下部の熱源は止めてよい。幾つかの実施態様では製造坑井上部の熱源は、製造坑井下部の熱源が不活性化した後もそのまま残してよい。製造坑井上部の熱源は、地層流体の凝縮及び還流を防止できる。
【0035】
幾つかの実施態様では製造坑井206中の熱源は、地層から地層流体を気相除去する。製造坑井において、又は製造坑井経由で加熱を行なうと、(1)製造流体が上層土近くの製造坑井で移動中、このような製造流体の凝縮及び/又は還流を防止できる、(2)地層への熱入力を増大できる、(3)熱源のない製造坑井と比べて、製造坑井での製造速度を向上できる、(4)製造坑井中で炭素数の大きい化合物(C6以上)の凝集を防止できる、及び/又は(5)製造坑井での、又は製造坑井近辺の地層の透過性を増大できる。
【0036】
地層中の地下圧は、地層で発生した流体圧と同等でよい。地層の加熱部分の温度が上がると、加熱部分の圧力は、流体の発生及び水の蒸発が増大する結果、増大してよい。地層から流体を取出す際の制御速度により、地層中の圧力は制御できる。地層中の圧力は、製造坑井又はその付近、熱源又はその付近、或いはモニター坑井のような多数の異なる場所で測定できる。
【0037】
幾つかの炭化水素含有地層では、地層からの炭化水素の製造は、地層中の少なくとも幾つかの炭化水素が熱分解するまで停止される。地層流体の比重が選択される場合、このような地層流体は、地層から製造できる。幾つかの実施態様では、選択された比重としては、少なくとも約20°、30°又は40°のAPI比重が挙げられる。少なくとも幾つかの炭化水素が熱分解するまで製造を停止すると、重質炭化水素の軽質炭化水素への転化率を向上できる。初期に製造停止すると、地層からの重質炭化水素の製造量を最少化できる。重質炭化水素を相当量製造するには、高価な設備を必要とし、及び/又は製造設備の寿命を短縮する可能性がある。
【0038】
幾つかの炭化水素含有地層では、地層中の炭化水素は、地層の加熱部分に実質的に透過性が発生する前に、熱分解温度まで加熱してよい。初期に透過性がないと、発生した流体の製造坑井206への輸送を防止できる。初期の加熱中、地層内の流体圧力は、熱源202近くで増大できる。増大した流体圧力は、1つ以上の熱源202を通して、解放し、モニターし、変更し、及び/又は制御できる。例えば選択した熱源又は圧力解放坑井は、地層から若干の流体を除去できる解放バルブを備えてよい。
【0039】
幾つかの実施態様では、製造坑井206への開放路又は他の圧力吸込み(sink)は未だ地層に存在しないかも知れないが、地層中に発生した熱分解流体、又はその他の流体の膨張により生じた圧力は、増大させてよい。流体圧力は、岩石(litho)静圧にまで増大させてよい。流体がこの岩石静圧に近づくと、炭化水素含有地層の割れ目が形成できる。例えば割れ目は、熱源202から地層の加熱部分中の製造坑井206まで形成できる。加熱部分の割れ目の発生は、この部分の若干の圧力を解放できる。地層中の圧力は、所望としない製造、上層土又は下層土の粉砕、及び/又は地層中の炭化水素のコークス化を防止するため、選択した圧力未満に維持する必要があるかも知れない。
【0040】
熱分解温度に達して、地層からの製造が可能となった後、製造される地層流体の組成を変更し、及び/又は制御するため、地層流体中の非凝縮性流体に対する凝縮性流体の%割合を制御するため、及び/又は製造中の地層流体のAPI比重を制御するため、地層中の圧力は変化させてよい。例えば圧力を低下させると、更に多量の凝縮性流体成分が製造できる。凝縮性流体成分は高い%割合のオレフィンを含有する。
【0041】
現場熱処理法の幾つかの実施態様では地層中の圧力は、20°を超えるAPI比重を有する地層流体の製造を促進するのに充分高く維持してよい。地層中で増大圧を維持すると、現場熱処理中、地層の沈下を防止できる。蒸気相製造は、地層から製造された流体を輸送するのに使用される収集導管の大きさを低下できる。増大圧を維持すると、収集導管中の地層流体を処理設備に輸送するため、表面の地層流体を圧縮する必要性が少なくなるか、或いはなくなる。
【0042】
地層の加熱部分で増大圧を維持すると、品質が向上した比較的分子量の低い炭化水素の量産が可能である。圧力は、製造された地層流体が選択された炭素数を超える化合物を最少量含むように維持できる。選択された炭素数は、25以下、20以下、12以下、又は8以下であってよい。地層の蒸気中には、これより炭素数の多い幾つかの化合物が連行されてもよい。地層中で増大圧を維持すると、炭素数の大きい化合物及び/又は多環炭化水素化合物が蒸気中に連行されるのを防止できる。炭素数の大きい化合物及び/又は多環炭化水素化合物は、かなりの時間、地層の液相中に残存できる。かなりの時間とは、化合物を熱分解して炭素数の少ない化合物を形成するのに充分な時間であってよい。
【0043】
比較的低分子量の炭化水素の発生は、部分的には、炭化水素含有地層の一部で自己発生及び水素の反応によるものと考えられる。例えば増大圧を維持すると、熱分解中に発生した水素を地層内の液相中に押し込む可能性がある。前記部分を熱分解の範囲の温度に加熱すると、地層中の炭化水素を熱分解して、液相の熱分解流体を発生できる。こうして発生した液相の熱分解流体化合物は、二重結合及び/又はラジカルを持っていてよい。液相中の水素(H)は、発生した液相熱分解流体を還元し、これにより液相熱分解流体から重合又は長鎖化合物の形成可能性を低下させる。更にHは、発生した熱分解流体中のラジカルを中和できる。したがって、液相中のHは、発生した熱分解流体が地層中の他の各化合物又は他の複数の化合物と反応するのを防止できる。
【0044】
製造坑井206から製造された地層流体は、収集配管208経由で処理設備210に輸送してよい。地層流体は熱源202からも製造できる。例えば熱源近くの地層中の圧力を制御する熱源202から製造できる。熱源202から製造された流体は、配管経由で収集配管208に輸送するか、或いは配管経由で直接、処理設備210に輸送してよい。処理設備210としては、分離ユニット、反応ユニット、品質高向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、及び/又はその他、製造された地層流体を処理するためのシステム又はユニットが挙げられる。処理設備は、地層で製造された炭化水素の少なくとも一部から輸送用燃料を形成できる。
【0045】
幾つかの実施態様では、現場熱処理法で製造された地層流体は、地層流体を1つ以上の現場熱処理法液体流及び/又は1つ以上の現場熱処理法ガス流に分割するため、分離器に送られる。液体流及びガス流は、所望の生成物を得るため、更に処理してよい。地表下地層の一部を加熱すると、地層の鉱物構造を変化させ粒子を形成できる。これらの粒子は、地層流体中に分散、及び/又は部分的に溶解可能となる。粒子としては、周期律表第1、2及び4〜13欄の金属及び/又は金属の化合物(例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、バリウム、リチウム、クロム、マグネシウム、銅、ジルコニウム等)が挙げられる。特定の実施態様では、粒子はセノスフェアを含有する。幾つかの実施態様では、粒子は、例えば地層流体の炭化水素でコートされている。特定の実施態様では、粒子はゼオライトを含有する。
【0046】
地層流体中の粒子の濃度は、1〜3000ppm、50〜2000ppm、又は100〜1000ppmの範囲であってよい。粒子のサイズは、0.5〜200μm、5〜150μm、10〜100μm又は20〜50μmの範囲であってよい。
特定の実施態様では、地層流体は粒子の分布を含有してよい。粒子の分布は、限定されるものではないが、3様式又は2様式であってよい。例えば粒子の3様式分布としては、サイズ5〜10μmの粒子が1〜50ppm、サイズ50〜80μmの粒子が2〜2000ppm、及びサイズ100〜200μmの粒子が1〜100ppmが挙げられる。粒子の2様式分布としては、サイズ50〜60μmの粒子が1〜60ppm、及びサイズ100〜200μmの粒子が2〜2000ppmが挙げられる。
【0047】
幾つかの実施態様では、粒子は地層流体と接触させ、炭素数25以下、20以下、12以下、又は8以下の化合物の形成を触媒できる。特定の実施態様では、従来の製造法を用いて製造した流体には一般に見られない化合物を製造するため、ゼオライト系粒子は地層流体の酸化及び/又は還元を援助できる。ゼオライト系粒子の存在下での地層流体と水素との接触は、地層流体中の二重結合化合物の還元を触媒できる。
幾つかの実施態様では、製造された流体中の粒子の全部又は一部は、製造流体から除去してよい。これらの粒子は遠心、洗浄、酸洗浄、濾過、静電集塵、泡立て(起泡)浮遊、及び/又は他の種類の分離法を用いて除去できる。
【0048】
現場熱処理法で製造された地層流体は、現場熱処理法液体流と現場熱処理法ガス流とに分割するため、分離器に送ってよい。この液体流及びガス流は、所望の生成物を得るため、更に処理してよい。商用製品を製造するため、液体流を公知の条件を用いて処理する場合、処理設備は悪影響を与えるかも知れない。例えば処理設備は閉塞するかも知れない。商用製品を製造する方法としては、限定されるものではないが、アルキル化、蒸留,接触改質用水素化分解、水素化処理、水素化、水素化脱硫,接触分解,ディレイドコーキング、ガス化、又はそれらの組合わせが挙げられる。商用製品の製造方法は、“Refining Process 2000”,Hydrocarbon Processing,Gulf Publishing Co.,pp87〜142に記載されている。この文献はここに援用する。商用製品の例としては、ディーゼル、ガソリン、炭化水素ガス、ジェット燃料、ナフサ、真空ガス油(“VGO”)又はそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
処理設備は、現場熱処理法流体中の組成物により閉塞したり、汚染される可能性がある。閉塞性組成物としては、限定されるものではないが、現場熱処理法で製造された炭化水素及び/又は固体が挙げられる。閉塞を起こす組成物は、現場熱処理法液体の加熱中に形成される可能性がある。この組成物は処理ユニット中の液体流の流れを防止する。
【0050】
閉塞を起こす固体としては、限定されるものではないが、有機金属化合物、無機化合物、鉱物、鉱物化合物、セノフェアー、コークス、セミ煤、及び/又はそれらの混合物が挙げられる。これらの固体は、従来の濾過法では液体流から固体を除去できない粒度を有する可能性がある。閉塞を起こす炭化水素としては、限定されるものではないが、ヘテロ原子含有炭化水素、芳香族炭化水素、環式炭化水素、環式ジオレフィン、及び/又は非環式ジオレフィンが挙げられる。幾つかの実施態様では、閉塞を起こす現場熱処理法液体中に存在する固体及び/又は炭化水素は、現場熱処理法液体に部分的に可溶又は不溶である。幾つかの実施態様では、加熱中又は加熱前の液体に対する従来の濾過法は、処理設備を閉塞させる組成物の全て又は少量を除去するには不十分及び/又は無効である。
【0051】
幾つかの実施態様では、閉塞性組成物は、液体流の洗浄及び/又は脱塩により少なくとも一部、液体流から除去される。幾つかの実施態様では、処理設備の閉塞は、液体流の少なくとも一部を水素化処理することにより防止される。幾つかの実施態様では、液体流の少なくとも一部をナノ濾過し、次いで、処理設備を閉塞及び/又は汚染する可能性のある組成物を除去するため、液体流を水素化する。水素化及び/又はナノ濾過した液体流は、商用製品を製造するため、更に処理してよい。幾つかの実施態様では、処理設備の閉塞を防止するため、液体流に汚染防止添加剤が添加される。汚染防止添加剤は、マンスフィールド等の米国特許5,648,305;ライト等の米国特許5,282,957;ミラー等の米国特許5,173,213;レイドの米国特許4,840,720;Dvoracekの米国特許4,810397;Fernの米国特許4,551,226に記載されている。これらの文献はここに援用する。この添加剤の市販品としては、限定されるものではないが、Chimec RO 303、同304、同305、同306、同307、同308(Chimec、ローマ、イタリーから得られる)、GE−Betz Thermal Flow 7R29、GE−Betz ProChem 3F28、GE−Betz ProChem 3F18(GE Water and Process Technologies、Trevose,PA、米国から得られる)が挙げられる。
【0052】
図2は、原油生成物及び/又は現場熱処理法液体流及び/又は現場熱処理法ガス流から商用製品を製造するシステムの一実施態様を示す概略図である。地層流体212は、流体分離ユニット214に入り、現場熱処理法液体流216、現場熱処理法ガス流218及び水性流220に分離される。幾つかの実施態様では流体分離ユニット214は、急冷帯域を有する。製造された地層流体は、急冷帯域に入ると、地層流体を下流の処理設備での取扱いに好適な温度に急冷及び/又は冷却するため、水、飲料に適さない(nonpottable)水、及び/又は他の成分のような急冷液体を地層に添加してよい。地層流体の急冷は、流体を物理的及び/又は化学的に不安定化する一因となる化合物の形成を防止できる(例えば溶液から沈殿する、腐食の一因となる、及び/又は下流設備及び/又は配管の汚染の一因となる可能性のある化合物の形成を防止する)。急冷用流体は、噴霧及び/又は液体流として地層流体に導入できる。幾つかの実施態様では、地層流体は、急冷用流体中に導入される。幾つかの実施態様では、地層流体は、熱交換器に通して該流体から若干の熱を除去することにより冷却される。地層流体の温度が急冷流体の露点近くか又は露点である場合は、冷却地層流体に急冷流体を添加できる。地層流体を急冷流体の露点近くか又は露点に急冷すると、急冷された流体の化学的及び/又は物理的不安定性を生じる可能性のある塩(例えばアンモニウム塩)の可溶化を高めることができる。幾つかの実施態様では、急冷に使用する水の量は、無機化合物及び/又は他の成分の塩が混合物から分離しないように最小限である。分離ユニット214では、急冷流体の少なくとも一部は、急冷混合物から分離され、最小限の処理量で急冷帯域に再循環できる。この急冷で生成した熱は、他の設備で捕獲し、使用してよい。幾つかの実施態様では、急冷中、蒸気が生成するかも知れない。生成した蒸気は、ガス分離ユニット222及び/又は他の処理用設備に送ってよい。
【0053】
現場熱処理法ガス218は、該ガスからガス炭化水素流224を分離するため、ガス分離ユニット222に入れてよい。幾つかの実施態様ではガス分離ユニットは、精留式(rectified)吸着兼高圧分留ユニットである。ガス炭化水素流224は、炭素数3以上の炭化水素を含有する。
【0054】
現場熱処理法液体流216は液体分離ユニット226に入る。幾つかの実施態様では液体分離ユニット226は、必ずしも必要としない。液体分離ユニット226では、現場熱処理法液体流216の分離により、ガス炭化水素流228及び塩を含有するプロセス液体流230を生成する。ガス炭化水素流228としては、炭素数5以下の炭化水素が挙げられる。ガス炭化水素流228の一部は、ガス炭化水素流224と一緒にしてよい。塩含有プロセス液体流230は液体流234を形成するため、脱塩ユニット232で処理してよい。脱塩ユニット232は、既知の脱塩法及び水除去法を用いて無機塩及び/又は水を塩含有プロセス液体流230から塩及び/又は水を除去する。特定の実施態様では、脱塩ユニット232は、液体分離ユニット226の蒸留にある。
【0055】
液体流としては、限定されるものではないが、炭素数5以上の炭化水素及び/又はヘテロ原子を有する炭化水素(例えば、窒素、酸素、硫黄、及び燐を含有する炭化水素)がある。液体流234は、0.101MPaでの沸点範囲分布が95〜200℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上、又は0.01g以上;0.101MPaでの沸点範囲分布が200〜300℃の炭化水素を0.01g以上、0.005g以上、又は0.001g以上;0.101MPaでの沸点範囲分布が300〜400℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上、又は0.01g以上;及び0.101MPaでの沸点範囲分布が400〜650℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上、又は0.01g以上含有してよい。幾つかの実施態様では液体流234は、水を10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、又は0.1重量%以下含有する。
【0056】
脱塩ユニット232を出てから、液体流234は濾過システム236に入る。幾つかの実施態様では濾過システム236は、脱塩ユニットの出口に接続している。濾過システム236は、液体流234から閉塞性化合物の少なくとも一部を分離する。幾つかの実施態様では濾過システム236は、滑動可能に設置される。滑動可能設置型濾過システム236は、一方の処理ユニットから他方の処理ユニットに移動可能である。幾つかの実施態様では濾過システム236は、1つ以上の膜分離器、例えば1つ以上のナノ濾過膜又は1つ以上の受取り浸透膜を有する。
【0057】
膜はセラミック膜及び/又は高分子膜であってよい。セラミック膜は、2000ダルトン以下、1000ダルトン以下、又は500ダルトン以下の分子量カットオフを有するセラミック膜であってよい。セラミック膜は、基体から所望の材料を除去する(例えば液体流から閉塞性組成物を除去する)最適条件下で働かせるために膨潤してはならない。なお、セラミック膜は高温で使用できる。セラミック膜の例としては、限定されるものではないが、メソポーラスチタニア、メソポーラスγ−アルミナ、メソポーラスジルコニア、メソポーラスシリカ、及びそれらの組合わせが挙げられる。
【0058】
高分子膜は緻密な膜製の上層及び多孔質膜製の基層(支持体)を有する。高分子膜は、膜上の圧力差により上層が基層上に押圧されて、液体流がまず緻密な膜上層を、次いで、基層を通過する(透過する)ように配置できる。高分子膜は、液体流に存在する水が濃縮液(retentate)中に残留するか、実質的に残留するように親有機性又は疎水性膜である。
【0059】
緻密膜層は、液体流234から閉塞性組成物の少なくとも一部又は殆ど全部を分離できる。幾つかの実施態様では緻密な高分子膜は、その構造中に溶解、拡散させ、これにより液体流234が膜を通過するような特性を有する。閉塞性粒子の少なくとも一部は、緻密膜に溶解及び/又は拡散せず、こうして除去される。閉塞性粒子は構造が複雑であり、及び/又は高分子量であるため、緻密膜に溶解及び/又は拡散できない。緻密膜層は、シュミット等のWO 96/27430に記載されるように、架橋構造を有する。この文献はここに援用する。緻密膜の厚さは1〜15μm、2〜10μm、又は3〜5μmの範囲であってよい。
【0060】
緻密膜は、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリトリメチルシリルプロピン、又はそれらの混合物から作製できる。多孔質基層は、膜に機械的強度を与える材料で作製でき、また超遠心、ナノ濾過、又は逆浸透に使用されるいかなる多孔質膜であってもよい。このような材料の例は、ポリアクリロニトリル、酸化チタンを組合わせたポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニリデンジフルオリド、ポリテトラフルオロエチレン又はそれらの組合わせである。
【0061】
液体流234から閉塞性組成物の分離中、膜の圧力差は、5〜60バール、10〜50バール、又は20〜40バールの範囲であってよい。分離温度は、液体流の流動点から100℃まで、約−20〜約100℃、10〜90℃、20〜85℃の範囲であってよい。連続分離中、透過液(permeate)フラックス速度は、初期フラックスの50%以下、70%以下、又は90%以下であってよい。供給原料に対する透過液の重量回収率は、50〜97重量%、60〜90重量%、又は70〜80重量%の範囲であってよい。
濾過システム236は1つ以上の膜分離器を備えてよい。膜分離器は1つ以上の膜分離モジュールを備えてよい。1つ以上の膜分離器を使用した場合、第一膜分離器からの原料(濃縮液)を第二膜分離器に流入させるため、並列配置に配列してよい。膜モジュールの例としては、限定されるものではないが、渦巻きモジュール、プレート兼フレームモジュール、中空ファイバー、及び管状モジュールが挙げられる。膜モジュールは、Encyclopedia of Chemical Engineering,第4版,1995年,John Wiley & Sons Inc.,第16巻,158〜164頁に記載されている。渦巻きモジュールの例は、例えばBoestert等のWO/2006/040307;Pasternakの米国特許5,102,551;Pasternakの米国特許5,093,002;Feimer等の米国特許5,275,726;Mannapperuma等の米国特許5,458,774;及びFinkle等の米国特許5,150,118に記載されている。これらの文献はここに援用する。
【0062】
幾つかの実施態様では濾過システム236に緻密(dense)膜を使用した場合、渦巻きモジュールが使用される。渦巻きモジュールは、2枚の膜シートの間に透過液スペーサーシートを挟み、三つの側面を密封してなる膜集成体である。第四の側面は、これら膜間の面積が透過液出口導管の内部と流通可能であるように、該出口導管に接続している。一つの膜上には供給原料スペーサーシートを配置し、供給原料スペーサーシート付き膜集成体を透過液出口導管の周りに巻付けて、ほぼ円筒状の渦巻き膜モジュールを形成する。供給原料スペーサーの厚さは、渦巻きモジュール中に詰め込むのに充分な膜表面を得るため、0.6mm以上、1mm以上、又は3mm以上である。幾つかの実施態様では供給原料スペーサーは不織布供給原料スペーサーである。操作中、供給原料混合物は、膜集成体間の円筒状モジュールの一端から、複数膜の供給原料側間に挟んだ供給原料スペーサーシート沿いに通すことができる。供給原料混合物の一部は、いずれか一つの膜シート経由で透過液側に入る。得られた透過液は、透過液スペーサーシートに沿って透過液出口導管に流れる。
【0063】
幾つかの実施態様では膜分離は連続式である。液体流234は、濾過液流238(透過液)及び/又は再循環液流240(濃縮液)を得るため、圧力差により膜上を通過する。幾つかの実施態様では濾過液流238は、下流処理システムで閉塞を起こす組成物及び/又は粒子の濃度が低下した可能性がある。ナノ濾過システムに再循環液流240を連続的に再循環すると、濾過液流238の製造量を、元の液流234の容量の95%ほど高く増大できる。再循環液流240は、膜の供給原料側を清掃することなく、10時間以上、1日以上、又は1週間以上、渦巻き膜モジュール経由で連続的に再循環できる。濾過が終了すると、廃棄物流242(濃縮液)は、閉塞を起こす組成物及び/又は粒子を高濃度で含有する可能性がある。廃棄物流242は、濾過システム236を出て、例えばディレイドコーキング、及び/又はガス化ユニットのような他の処理ユニットに輸送される。
【0064】
濾過液流238は、濾過システム236を出て、1つ以上の処理ユニットに入る。原油生成物及び/又は商用製品の製造についてここで説明した処理ユニットは、以下の温度、圧力、水素源の流れ、液体流の流れ、又はそれらの組合わせで操作できるか、或いは当該技術分野で知られているように操作できる。温度は約200〜約900℃、約300〜約800℃、又は約400〜約700℃の範囲である。圧力は約0.1〜約20MPa、約1〜約12MPa、約4〜約10MPa、又は約6〜約8MPaの範囲である。液体流についての液体の時間当たり空間速度は約0.1〜約30h−1、約0.5〜約25h−1、約1〜約20h−1、約1.5〜約15h−1、又は約2〜約10h−1の範囲である。
【0065】
図2において、濾過液流238及び水素源244は、水素化処理ユニット248に入る。幾つかの実施態様では水素源244は、水素化処理ユニット248に入る前に濾過液流238に添加してい。幾つかの実施態様では液体流234には充分な水素が存在し、水素源244は必要としない。1種以上の触媒の存在下で濾過液流238と水素源244とを接触させると、液体流250を生成する。水素化処理ユニット248は、液体流250の少なくとも一部が、水素化処理ユニット248の下流に配置された設備を閉塞させる可能性のある組成物を除去する、及び/又は組成物の形成を防止するのに充分に変化するように、操作できる。水素化処理ユニット248に使用される触媒は、市販の触媒であってよい。幾つかの実施態様では液体流234の水素化処理は必ずしも必要としない。
【0066】
幾つかの実施態様では液体流234は、1種以上の触媒の存在下で水素と接触させて、輸送及び/又は製油規格に適合するよう原油原料の1つ以上の所望特性を変化させる。原油原料の1つ以上の所望特性を変化させる方法は、Bhan等の米国特許出願公開20050133414;Wellington等の米国特許出願公開20050133405;及び“原油生成物の製造用システム、方法及び触媒”と題する米国特許出願11/400,542(2006年4月7日出願)、同じ表題のBhanの米国特許出願11/425,979(2006年6月6日出願)及び同じ表題のWellington等の米国特許出願11/425,992(2006年6月6日出願)に記載されている。これらの文献はここに援用する。
【0067】
幾つかの実施態様では水素化処理ユニット248は選択的水素化ユニットである。水素化処理ユニット248では、液体流234及び/又は濾過液流238は、ジオレフィンがモノオレフィンに還元されるように、選択的に水素化される。例えば液体流234及び/又は濾過液流238は、DN−200(Criterion Catalyst & Technologies,米国テキサス州ヒューストン)の存在下、100〜200℃の範囲の温度及び0.1〜40MPaの全圧で水素と接触させて、液体流250を製造する。液体流250は、液体流234のジオレフィン及びモノオレフィンの含有量に比べて、低下した量のジオレフィン及び増加した量のモノオレフィンを含有する。幾つかの実施態様ではこれら条件下でジオレフィンのモノオレフィンへの転化率は50%以上、60%以上、80%以上、又は90%以上である。液体流250は水素化処理ユニット248を出て、該処理ユニット248の下流に配置された1つ以上の処理ユニットに入る。水素化処理ユニット248の下流に配置されるユニットとしては、蒸留ユニット、接触改質ユニット、水素化分解ユニット、水素化処理ユニット、水素化ユニット、水素化脱硫ユニット、接触分解ユニット、ディレイドコーキングユニット、ガス化ユニット、又はそれらの組合わせが挙げられる。
【0068】
液体流250は水素化処理ユニット248を出て、分留ユニット252に入る。分留ユニット252は1種以上の原油生成物を製造する。分留としては、限定されるものではないが、常圧蒸留法及び/又は真空蒸留法が挙げられる。原油生成物としては、限定されるものではないが、C3〜C5炭化水素流254、ナフサ流256、ケロシン流258、ディーゼル流262、及び塔底流264が挙げられる。塔底流264は、一般に沸点範囲分布が0.101MPaで340℃以上の炭化水素を含有する。幾つかの実施態様では塔底流264は、真空ガス油である。他の実施態様では塔底流は、沸点範囲分布が537℃以上の炭化水素を含有する。原油生成物の1種以上は販売可能であるか、或いは更にガソリン又は他の商用製品に処理できる。
地層流体から製造した流れの利用を高めるため、液体流の分留で製造された炭化水素及びプロセスガスの分離で製造された炭化水素ガスは、更に炭素数の大きい炭化水素を形成するため、配合してよい。製造された炭化水素ガス流は、アルキル化反応に受入れ可能なレベルのオレフィンを含有できる。
【0069】
幾つかの実施態様では水素化処理液体流及び/又はフラクションから製造された流れ(例えば蒸留物及び/又はナフサ)は、現場熱処理法液体及び/又は地層流体とブレンドしてブレンド流体を製造してもよい。このようなブレンド流体は、地層流体に比べて物理的安定性及び化学的安定性が向上した可能性がある。ブレンド流体は、地層流体に比べて低下した量の反応性種(例えばジオレフィン、その他のオレフィン及び/又は酸素、硫黄及び/又は窒素を含有する化合物)を含有する可能性があり、こうして、ブレンド流体の物理的安定性は向上する。ブレンド流体は、現場熱処理法で製造される地層流体及び/又は液体流よりも一層代替性のある供給原料かも知れない。ブレンド流体は、輸送、化学処理ユニット、及び/又は精製ユニットに使用するのに、地層流体よりも一層好適であるかも知れない。
【0070】
幾つかの実施態様では、油頁岩地層から、ここで説明した方法で製造された流体は、重油/タールサンド現場熱処理法(IHTP)流体とブレンドしてよい。油頁岩液体は、ほぼパラフィン系で、また重油/タールサンドIHTP流体は、ほぼ芳香族系なので、ブレンド流体は安定性が向上する。特定の実施態様では現場熱処理法流体は、精製ユニット用として好適な供給原料を得るために、ビチュメンとブレンドできる。HITP流体及び/又はビチュメンを、製造した流体とブレンドすると、ブレンド生成物の化学的及び/又は物理的安定性を向上でき、こうして、このようなブレンドは、輸送及び/又は処理ユニットに分配可能である。
【0071】
分留ユニット252で製造されたC〜C炭化水素流254、及び炭化水素ガス流224はアルキル化ユニット266に入る。アルキル化ユニット266では炭化水素ガス流224中のオレフィン(例えばプロピレン、ブチレン、アミレン、又はそれらの組合わせ)と、C〜C炭化水素流254中のイソパラフィンとの反応は炭化水素流268を生成する。幾つかの実施態様では炭化水素ガス流224中のオレフィン含有量は受入れ可能であり、追加のオレフィン源は必要としない。炭化水素流268は、炭素数4以上の炭化水素を含有する。炭素数4以上の炭化水素としては、限定されるものではないが、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンが挙げられる。特定の実施態様ではアルキル化ユニット266で製造される炭化水素は、オクタン価が70を超え、80を超え、又は90を超える。幾つかの実施態様では炭化水素流268は、更に処理することなく、ガソリンとして使用するのに好適である。
【0072】
幾つかの実施態様では塔底流264は、ナフサ及び/又はその他の製品を製造するために、水素か分解できる。しかし、得られたナフサは、ガソリンとして市販できるように、オクタンレベルを変えるため改質を必要とするかも知れない。或いは塔底流264は、ナフサ及び/又はアルキル化ユニットの供給原料を製造するため、接触分解器で処理してよい。幾つかの実施態様ではナフサ流256、ケロシン流258、及びディーゼル流262は、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び/又は芳香族系炭化水素がバランスしていない。これらの流れは、商用製品に使用するのに好適な量のオレフィン及び/又は芳香族を含有しないかも知れない。このようなアンバランスは、これら流れの少なくとも一部を配合して、沸点範囲分布が38〜343℃の配合流266を形成するように変化させてよい。配合流266を接触分解すると、アルキル化ユニット及び/又は他の処理ユニットに使用するのに好適なオレフィン及び/又は他の流れを生成できる。幾つかの実施態様ではナフサ流256は、オレフィンを製造するため、水素化分解される。
【0073】
図2では配合流266及び分留ユニット252からの塔底流264は、接触分解ユニット270に入る。接触分解ユニット270は、制御された分解条件(例えば制御された温度及び圧力)下で追加のC3〜C5炭化水素流254’、ガソリン炭化水素流272及び追加のケロシン流258’を製造する。
追加のC〜C炭化水素流254’は、販売に好適なガソリンを製造するため、アルキル化ユニット266に送って、C〜C炭化水素流254と配合し、及び/又は炭化水素ガス流224と配合してよい。幾つかの実施態様では炭化水素ガス流224中のオレフィン含有量は受入れ可能で、追加のオレフィン源は必要としない。
【0074】
幾つかの実施態様では製造された塔底流(例えばVGO)の量は少なすぎるので、水素化分解ユニット又は接触分解ユニットの操作を維持できず、また分留ユニット及び/又は接触分解ユニット(例えば図2の分留ユニット252及び/又は接触分解ユニット270)で製造したガス流中のオレフィン濃度は低すぎるので、アルキル化ユニットの操作を維持できない。分留ユニットで製造されたナフサは、例えばアルキル化ユニットで更に処理するためのオレフィンを製造するため、処理してよい。従来のナフサ改質法で製造した再配合ガソリンは、現場熱処理法で製造した液体流を供給原料流として使用する場合、例えばカリフォルニア大気資源局指令のような工業規格に適合できない。ナフサ改質処理の前の従来の水素化処理では、ナフサ中の或る量のオレフィンは飽和する可能性がある。したがって、水素化ナフサの全部を改質すると、再配合ガソリン用のガソリン溜めには、芳香族含有量が所望量より多くなる。改質ナフサ中のオレフィン及び芳香族含有量のアンバランスは、アルキル化ユニットで再配合ガソリンを製造するのに充分なアルキレートを製造すれば、変化できる。ナフサの分留及び/又は分解で生じたオレフィン、例えばプロピレン及びブチレンは、ガソリンを製造するため、イソブタンと配合できる。なお、分留ユニットで製造されたナフサ及び/又はその他の分留流を接触分解するには、接触分解ユニットで使用される他の供給原料に比べて、コークスの生成量が低下することから、更に加熱を必要とすることが判った。
【0075】
図3は、オレフィン及び/又は液体流を製造するため、現場熱処理法で製造した液体流を処理するための概略図である。中間蒸留物及びオレフィンの同様な製造方法は、国際公開WO 2006/020547、Mo等の米国特許出願公開20060191820及び同20060178546に記載されている。これらの文献はここに援用する。液体流274は接触分解システム278に入る。液体流274としては、限定されるものではないが、液体流234、水素化処理液体流250、濾過液流238、ナフサ流256、ケロシン流258、ディーゼル流262、及び図2に示すシステムの塔底流264、沸点範囲分布が65〜800℃の炭化水素流、又はそれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施態様では水蒸気276は接触分解システム278に入り、該液体流と接触分解触媒との接触を高めるため、液体流274を噴霧及び/又は上昇できる。液体流274を噴霧するための流れと供給原料との比は、0.01〜2w/w、又は0.1〜1w/wの範囲であってよい。
【0076】
接触分解システム278では液体流274は、接触分解触媒と接触して、1種以上の原油生成物を生成する。接触分解触媒としては、選択した接触分解触媒、使用済み再生接触分解触媒流280の少なくとも一部、再生分解触媒流282の少なくとも一部、又はそれらの混合物が挙げられる。使用済み再生接触分解触媒流280は、第二接触分解システム284で使用された再生接触分解触媒を含有する。第二接触分解システム284に供給される炭化水素としては、製造坑井で製造されたC3〜C5炭化水素、ガソリン炭化水素、水素化蝋(hydrowax)、フィッシャー・トロプシュ法で製造した炭化水素、バイオ燃料、又はそれらの組合わせが挙げられる。第二接触分解システムに異種の炭化水素供給原料混合物を使用すると、アルキレートの要件に適合するC3〜C5オレフィンの製造量を増大できる。こうして、生成物と製油プロセスとの一体化が強化できる。第二接触分解システム284は、濃厚相ユニット、固定流動床、ライザー、以上のユニットの組合わせ、又は当該技術分野で炭化水素分解用として公知のユニットの中のいずれかのユニット又は組合わせであってよい。
【0077】
接触分解システム278での接触分解触媒と液体流274との接触により、原油生成物及び使用済み分解触媒が製造される。原油生成物としては、限定されるものではないが、液体流274の沸点範囲分布よりも低い沸点範囲分布を有する炭化水素、液体流274の一部、又はそれらの混合物が挙げられる。原油生成物及び使用済み分解触媒は分離システム286に入る。分離システム286としては、例えば蒸留ユニット、ストリッパー、濾過システム、遠心機、又は使用済み触媒から原油生成物を分離できる、当該技術分野で公知のいずれかの装置が挙げられる。
分離された使用済み触媒流288は、分離システム286を出て、再生ユニット290に入る。再生ユニット290では、使用済み触媒は、炭素燃焼条件下で、例えば酸素及び/又は空気のような酸素源292と接触して、再生分解触媒流282及び燃焼ガス294を生成する。燃焼ガスは炭素及び/又はその他、接触分解工程で触媒上に形成された不純物を除去する際の副生物として形成できる。
【0078】
再生ユニット290中の温度は約621〜760℃又は677〜715℃の範囲であってよい。再生ユニット290中の圧力は、大気圧乃至0.345MPa、又は0.034〜0.345MPaの範囲であってよい。再生ユニット290中の再生使用済み分解触媒の滞留時間は、約1〜約6分又は約2〜約4分の範囲である。再生分解触媒上のコークス含有量(重量)は、分離した使用済み分解触媒上のコークス含有量よりも少ない。このようなコークス含有量は、コークス含有量を除く再生分解触媒の重量に対する重量%で表して、0.5重量%未満である。再生分解触媒のコークス含有量は、0.01〜0.5重量%、0.05〜0.3重量%、又は0.1〜0.1重量%の範囲であってよい。
【0079】
幾つかの実施態様では再生分解触媒流282は、再生ユニット290を出て、第二接触分解システム284に入る再生接触触媒流282’の少なくとも一部を有する2つの流れに分割してよい。再生接触触媒流282の他の少なくとも一部は、再生器290を出て、接触分解システム278に入る。使用済み再生分解触媒と再生分解触媒との相対量は、接触分解システム278内の所望の分解条件を与えるように調節される。使用済み再生分解触媒と再生分解触媒との比を調節すると、接触分解システム278内の分解条件の制御が援助できる。使用済み再生分解触媒と再生分解触媒との重量比は、0.1:1〜100:1、0.5:1〜20:1、又は1:1〜10:1の範囲であってよい。定常状態で操作するシステムでは、使用済み再生分解触媒と再生分解触媒との重量比は、第二接触分解システム284に通す再生分解触媒の少なくとも一部と、接触分解システム278に導入される液体流274と混合する再生分解触媒の残部との重量比に近似し、したがって、前述の範囲は、このような重量比にも適用できる。
【0080】
原油生成物296は分離システム286を出て、液体分離ユニット298に入る。液体分離ユニット298は、原油生成物を、例えばガス流228’、ガソリン炭化水素流300、サイクル油流302、及び塔底流304のような生成物流中に回収、分離する当業者に公知のいずれのシステムでもよい。幾つかの実施態様では、塔底流304は、接触分解システム278に再循環される。液体分離ユニット298としては、例えば吸収器及びストリッパー、分留塔、圧縮機及び分離器、又は原油生成物から生成物の回収、分離を行なう公知のシステムの組合わせのような部品及び/又はユニットが挙げられる.幾つかの実施態様では軽質サイクル油流302の少なくとも一部は、液体分離ユニット298を出て、第二接触分解システム278に入る。幾つかの実施態様では軽質サイクル油流のいずれも第二接触分解システムに送られない。幾つかの実施態様ではガソリン炭化水素流300の少なくとも一部は、液体分離ユニット298を出て、第二接触分解システム284に入る。幾つかの実施態様ではソリン炭化水素流のいずれも第二接触分解システムに送られない。幾つかの実施態様ではガソリン炭化水素流300は、販売用に、及び/又は他の方法に使用するのに好適である。
【0081】
ガス油炭化水素流306(例えば真空ガス油)及び/又はガソリン炭化水素流300及び軽質サイクル油流302の各一部は、接触分解システム284に送られる。これらの流れは水蒸気276’の存在下で接触分解され、粗製オレフィン流308を生成する。粗製オレフィン流308は、炭素数2以上の炭化水素を含有してよい。幾つかの実施態様では粗製オレフィン流308は、C〜Cオレフィンを30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、又は90重量%以上含有する。ガソリン炭化水素流300を第二接触分解システム284に再循環すると、ガス油炭化水素流306のC〜Cオレフィンへの全処理システムに亘る転化率が追加される可能性がある。
【0082】
幾つかの実施態様では第二接触分解システム284は、中間反応帯域の下に位置するストリッピング帯域と互いに流通可能な中間反応帯域及びストリッピング帯域を有する。中間反応帯域内の水蒸気速度よりもストリッピング帯域内で高い水蒸気速度を与えるため、ストリッピング帯域の断面積は中間反応帯域の断面積よりも小さい。ストリッピング帯域の断面積と中間反応帯域の断面積との比は、0.1:1〜0.9:1、0.2:1〜0.8:1、又は0.3:1〜0.7:1の範囲であってよい。
幾つかの実施態様では第二接触分解システムの幾何構造は、概略円筒形になるような構造であり、ストリッピング帯域の長さ対直径比は、ストリッピング帯域内では所望の高い水蒸気速度を与えると共に、第二接触分解システムから取出される使用済み再生触媒の所望のストリッピングに対し、ストリッピング帯域内で充分な接触時間を与えるような比である。こうして、ストリッピング帯域の長さ対直径の寸法比は、1:1〜25:1、2:1〜15:1、又は3:1〜10:1の範囲であってよい。
【0083】
幾つかの実施態様では第二接触分解システム284は、接触分解システム278の操作又は制御とは独立に操作又は制御される。第二接触分解システム284のこのような独立した操作又は制御は、ガソリン炭化水素のエチレン、プロピレン及びブチレンのような所望生成物への全転化率を向上する可能性がある。第二接触分解システム284の独立した操作又は制御によって、接触分解ユニット278の厳密性は低下し、C〜Cオレフィンの収率を最適化できる。第二接触分解システム284の温度は、482℃(900°F)〜約871℃(1600°F)、510℃(950°F)〜871℃(1600°F)、又は538℃(1000°F)〜732℃(1350°F)の範囲であってよい。第二接触分解システム284の操作圧は、大気圧乃至約0.345MPa(50psig)、又は0.034〜0.345MPa(5〜50psig)の範囲であってよい。
【0084】
第二接触分解システム284に水蒸気276’を添加すると、第二接触分解ユニットの操作上の制御が援助できる。幾つかの実施態様では水蒸気は必ずしも必要としない。幾つかの実施態様では処理システムに亘るガソリン炭化水素の所定の転化及びガソリン炭化水素の分解に水蒸気を使用すると、C〜Cオレフィンの収率に対する選択率が向上する上、他の接触分解法に比べてプロピレン及びブチレンの収率が向上する可能性がある。第二接触分解システム284に導入される水蒸気とガソリン炭化水素との重量比は、約15:1以上、0.1:1〜10:1、0.2:1〜9:1、又は0.5:1〜8:1の範囲であってよい。
【0085】
粗製オレフィン流308はオレフィン分離システム310に入る。オレフィン分離システム310は、粗製オレフィン流308をC〜Cオレフィン生成物流、例えばエチレン生成物流312、プロピレン生成物流314、及びブチレン生成物流316に回収、分離する当業者に公知のいずれのシステムも可能である。オレフィン分離システム310としては、吸収器及びストリッパー、分留塔、圧縮機及び分離器のようなシステム、或いは流体流308からC〜Cオレフィン生成物を回収、分離する公知のシステム又は設備のいずれの組合わせが挙げられる。幾つかの実施態様ではオレフィン流312、314、316は、アルキル化ユニット266に入り、炭化水素流268を生成する。幾つかの実施態様では炭化水素流268は、70以上、80以上、又は90以上のオクタン価を有する。幾つかの実施態様では、流れ312、314、316の全部又は一部は、供給原料として使用するため、重合ユニットのような他の処理ユニットに輸送される。
【0086】
幾つかの実施態様では接触分解システムからの原油生成物及び第二接触分解システムからの粗製オレフィン流は配合しできる。この配合流は、単一分離ユニット(例えば液体分離システム298とオレフィン分離システム310との組合わせ)に入ってよい。
図3では使用済み分解触媒280は第二接触分解システム284を出て、接触分解システム278に入る。使用済み分解触媒流280は、再生分解触媒282の触媒上にある炭素の濃度よりも僅かに高い炭素濃度を持ってよい。触媒上の炭素濃度が高いと、接触分解システム278からのオレフィンの収率を向上させる接触分解触媒を部分的に失活させる可能性がある。使用済み再生触媒のコークス含有量は、0.1重量%以上又は0.5重量%以上であってよい。使用済み再生触媒のコークス含有量は、0.1〜約1重量%又は0.1〜0.6重量%の範囲であってよい。
【0087】
接触分解システム278及び第二接触分解システム284で使用された接触分解触媒は、当該技術分野で公知のいずれの流動性分解触媒であってもよい。流動性分解触媒は、多孔質無機耐火性酸化物母材又はバインダー中に分散した分解活性を有するモレキュラシーブを含有してよい。“モレキュラシーブ”とは、それぞれの次元に基づく原子又は分子を分離し得る材料のことである。分解触媒の成分として好適に使用されるモレキュラシーブとしては、柱状粘土、離層粘土、及び結晶性アルミノシリケートが挙げられる。幾つかの実施態様では分解触媒は結晶性アルミノシリケートを含有する。このようなアルミノシリケートとしては、Yゼオライト、超安定Yゼオライト、Xゼオライト、ゼオライトβ、ゼオライトI、オフレタイト(offretite)、モルデナイト、ホウジャサイト、及びゼオライトωが挙げられる。幾つかの実施態様では分解触媒に使用される結晶性アルミノシリケートは、X及び/又はYゼオライトである。Breckの米国特許3,130、007はY型ゼオライトを開示している。
【0088】
分解触媒の成分として使用されるゼオライトの安定性及/又は酸度は、ゼオライトを水素イオン、アンモニウムイオン、希土類含有カチオン、マグネシウムカチオン又はカルシウムカチオンのような多価金属イオン、或いは水素イオン、アンモニウムイオン及び多価金属イオンの組合わせと交換し、これによりナトリウム含有量がNaOとして計算して、約0.8重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、最も好ましくは約0.3重量%未満になるまで該含有量を低下させれば、増大できる。イオン交換する方法は当該技術分野で周知である。
【0089】
分解触媒のゼオライト又はその他のモレキュラシーブ成分は、使用前に仕上げ触媒を形成するため、多孔質無機耐火性酸化物毋材又はバインダーと組合わされる。仕上げ触媒中の耐火性酸化物成分は、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ、天然又は合成の粘土、柱状粘土又は離層粘土、これら成分の1種以上の混合物等であってよい。幾つかの実施態様では無機耐火性酸化物毋材は、シリカ−アルミナと、カオリン、ヘクトライト(hectorite)、セピオライト(sepiolite)、及びアタパルガイトのような粘土との混合物を含有する。仕上げ触媒は、ゼオライト又は他のモレキュラシーブを約5〜約40重量%及び無機耐火性酸化物を約20重量%より多く含有してよい。幾つかの実施態様では仕上げ触媒は、ゼオライト又は他のモレキュラシーブを約10〜約35重量%、無機耐火性酸化物を約10〜約30重量%、及び粘土を約30〜約70重量%含有してよい。
【0090】
分解触媒の結晶性アルミノシリケート又はその他のモレキュラシーブは、混合、摩砕、ブレンド又は均質化等、当該技術分野で公知のいずれの好適な方法によっても、多孔質無機耐火性酸化物成分又はその前駆体と組合わせてよい。使用可能な前駆体の例としては、限定されるものではないが、アルミナ、アルミナゾル、シリカゾル、ジルコニア、アルミナヒドロゾル、アルミナ及びジルコニウムのポリオキシカチオン、及び解凝固したアルミナが挙げられる。幾つかの実施態様ではゼオライトはアルミノシリケートのゲル又はゾル、或いは他の無機耐火性酸化物成分と組合わされ、得られた混合物は噴霧乾燥して、直径が普通、約40〜約80μmの範囲にある仕上げ触媒粒子を製造する。幾つかの実施態様ではゼオライト又はその他のモレキュラシーブは摩砕するか、或いは耐火性酸化物成分又はその前駆体と混合し、押出し、次いで所望の粒度範囲に粉砕する。仕上げ触媒の平均嵩密度は、約0.30〜約0.90g/cm、細孔容積は約0.10〜約0.90cm/gであってよい。
【0091】
幾つかの実施態様では、第二接触分解システム284の中間分解反応器にZSM−5添加剤を導入できる。ZSM−5添加剤を中間分解反応器中の選択された分解触媒と併用すると、プロピレン及びブチレンのような低級オレフィンの収率が向上する。ZSM−5の量は、第二接触分解システム284に導入される再生触媒に対し30重量%以下、20重量%以下、又は18重量%以下の範囲である。第二接触分解システム284に導入されるZSM−5添加剤の量は、第二接触分解システム284に導入される再生分解触媒に対し1〜30重量%、3〜20重量%、又は5〜18重量%の範囲であってよい。
【0092】
ZSM−5添加剤は、中間細孔サイズ結晶性アルミノシリケート又はゼオライト族から選ばれる。ZSM−5添加剤として使用できるモレキュラシーブとしては、限定されるものではないが、”Atlas of Zeolite Structure Types (ゼオライト構造型の図解書)“,W.H.Meier及びD.H.Olson編,Butterworth−Heineman,第三版,1992年に記載されるような中間細孔ゼオライトが挙げられる。中間細孔サイズのゼオライトは、一般に約0.5〜約0.7nmの細孔サイズを有し、例えばMFI、MFS、MEL、MTW、EUO、MTT、HEU、FER及びTON構造型ゼオライト(IUPACゼオライト命名委員会)が挙げられる。このような中間細孔サイズゼオライトの非限定的例としては、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−34、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48、ZSM−50、シリカライト、及びシリカライト2がある。ZSM−5は、Argaur等の米国特許3,702,886及びGravenの同3,770,614に記載されている。これらの文献はここに援用する。
【0093】
ZSM−11はChuの米国特許3,709,979に、ZSM−12はRosinski等の米国特許3,832,449に、ZSM−21及びZSM−38はBonatti等の米国特許3,948,758に、ZSM−23はPlank等の米国特許4,076,842に、またZSM−35はPlank等の米国特許4,016,245に記載されている。これらの文献はここに援用する。他の好適なモレキュラシーブとしては、Lok等の米国特許4,440,871に記載のSAPO−4及びSAPO−11のようなシリコアルミノホスフェート(SAPO)、クロモシリケート、珪酸鉄、Wilson等の米国特許4,310,440に記載のALPO−11のような燐酸アルミニウム(ALPO)、Pellet等の米国特許4,686,029に記載のTASO−45のようなアルミノ珪酸チタン(TASO)、Frenken等の米国特許4,254,297に記載の珪酸ホウ素、Lok等の米国特許4,500,651に記載のTAPO−11のようなアルミノ燐酸チタン(TAPO)、及びアルミノ珪酸鉄が挙げられる。これらの文献はここに援用する。
【0094】
Chester等の米国特許4,368,114(この文献はここに援用する)は、好適なZSM−5添加剤となり得るゼオライト群を詳細に説明している。このZSM−5添加剤は、従来法に従って、触媒不活性の無機酸化物毋材成分と一緒に保持できる。
幾つかの実施態様では図2、3に記載のユニットから製造した残留物は、エネルギー源として使用できる。残留物は、燃焼する(例えばタービン中で燃焼する)及び/又は表面下の地層に注入する(例えば製造したガスを表面下の地層に注入)ガスを製造するため、ガス化できる。特定の実施態様では残留物は、アスファルトを製造するため、脱アスファルトされる。アスファルトはガス化できる。
【実施例】
【0095】
現場熱処理した液体流の濾過、及び現場熱処理した液体流からのオレフィンの製造について非限定的な例で以下に説明する。
実施例1:現場熱処理法液体流のナノ濾過
現場熱処理法で液体サンプル(500ml、398.68g)を得た。この液体サンプルは、液体サンプル1g当たり硫黄を0.0069g、窒素を0.0118g含有する。液体サンプルの最終沸点は481℃、密度は0.8474である。サンプルの濾過に用いた膜分離ユニットは、CM Celfa Membrantechnik A.G.(スイス)から得られる実験室用の平坦なシート膜タイプP28である。濾過媒体として、単一の2μ厚ポリジメチルシロキサン膜(GKSS Forschungszentrum GmbH,Geesthact,ドイツ)を使用した。濾過システムは、50℃で操作し、膜上の圧力差は10バールであった。透過液側の圧力は、ほぼ大気圧とした。透過液を収集し、連続法にシミュレートするため、濾過システム経由で再循環した。周囲の空気との接触を防止するため、透過液は窒素でガスシールした。濃縮液も分析のため収集した。濾過中、2kg/m/バール/hrの平均線束(flux)は、初期の線束から或る程度、下降しなかった。濾過液(298.15g、74.4%回収)は、濾過液1g当たり硫黄を0.007g、窒素を0.0124g含有し、また密度は0.8459、最終沸点は486℃であった。濃縮液(56.46g、14.16%回収)は、濃縮液1g当たり硫黄を0.0076g、窒素を0.0158g含有し、また密度は0.8714、最終沸点は543℃であった。
【0096】
実施例2:現場熱処理法液体流濾過液及び非濾過液の汚染テスト
実施例1の非濾過液サンプル及び濾過液サンプルについて汚染挙動をテストした。汚染挙動は、Alcor熱汚染テスターを用いて測定した。Alcor熱汚染テスターは、使用前にNorton R22サンドペーパーで擦った(grated)1018鋼製の小型多管式熱交換器である。テスト中、熱交換器温度(T)を一定値に維持しながら、サンプル出口温度(Tout)を監視した。汚染が生じて管表面に物質が沈着すれば、サンプルの熱抵抗が増大し、その結果、出口温度は低下する。所定時間後、出口温度の低下は、汚染の酷さの尺度となる。2時間操作後の温度を汚染の酷さの指標として使用する。ΔT=Tout(0)−Tout(2h)。ここでTout(0)はテスト開始時に得られた最大(安定)出口温度として定義し、Tout(2h)は、出口温度の最初に示された低下後、又は出口温度が少なくとも2時間安定であった時点で記録された2時間である。
【0097】
各テスト中、液体サンプルは約3ml/分の速度で熱交換器内を循環させた。熱交換器中の滞留時間は約10秒であった。操作条件は次のとおりである。圧力=40バール、Tサンプル=約50℃、T=350℃、テスト時間=4.41時間。非濾過液サンプルのΔTは15℃、濾過液サンプルのΔTは0であった。
本例は現場熱処理法で製造した液体流のナノ濾過により、閉塞性組成物の少なくとも一部は除去されることを示す。
【0098】
実施例3:現場熱処理法液体流からのオレフィンの製造
実験的パイロットシステムを用いて実験を行なった。このパイロットシステムは供給原料供給システム、触媒装填・輸送システム、第一流動立上り管反応器、ストリッパー、生成物分離・収集システム、及び再生器を備える。立上がり管反応器は、内径11〜19mm、長さ約3.2mの断熱性立上がり管である。立上がり管反応器の出口は、ストリーパーと流通可能に接続し、ストリッパーは立上がり管反応器の出口流と同じ温度で、かつ本質的に100%のストリッピング効率が得られるように操作した。再生器は、使用済み触媒の再生に使用される多段連続再生器である。使用済み触媒は、制御された温度で再生器に供給し、再生された触媒は容器に収集した。30分間隔での各実験運転中、物質バランスが得られた。複合ガスサンプルは、オンラインガスクロマトグラフを用いて分析し、また液体生成物サンプルは収集し、一晩で分析した。コークスの収量は、ユニットの操作が定常状態の時、各運転で採取した使用済み再生触媒サンプル上のコークスを測定する場合と同様、触媒流を測定し、触媒上のデルタコークスを測定することにより測定した。
【0099】
現場熱処理法で製造された液体流は分留し、沸点範囲分布が310〜640℃の真空ガス油(VGO)を得た。このVGO流を前述の接触システム中で10%ZSM−5を含有する流動接触分解器E−Catと接触させた。立上がり管反応器の温度は593℃(1100°F)に維持した。製造された生成物は、生成物1g当たり、Cオレフィンを0.1402g、Cオレフィンを0.137g、Cオレフィンを0.0897g、イソ−Cオレフィンを0.0152g、イソブチレンを0.0505g、エタンを0.0159g、イソブタンを0.0249g、n−ブタンを0.0089g、ペンタンを0.0043g、イソペンタンを0.0209g、C炭化水素と沸点232℃(450°F)以下の炭化水素との混合物を0.2728g、沸点範囲分布が232〜343℃(450〜650°F)の炭化水素を0.0881g、沸点範囲分布が343〜399℃(650〜750°F)の炭化水素を0.0769g、及び沸点範囲分布が399℃以上(750°F以上)の炭化水素を0.0386g、及びコークスを0.0323g含有していた。
【0100】
本例は、地層流体からの液体流を分離して製造した液体流を分留して、沸点が343℃を超える原油生成物を製造し、次いで、沸点が343℃を超える該原油生成物を接触分解して、少なくとも1種は第二ガス流である1種以上の追加の原油生成物を製造する、原油生成物の製造法を示す。
【0101】
実施例4:現場熱処理法で製造した液体流からのオレフィンの製造
熱分解したナフサを使用して、現場熱処理法で製造した沸点範囲分布が30〜182℃の液体流をシミュレートした。このナフサは、ナフサ1g当たり、ナフテンを0.186g、イソパラフィンを0.238g、n−パラフィンを0.328g、シクロパラフィンを0.029g、イソオレフィンを0.046g、n−オレフィンを0.064g、及び芳香族を0.109g含有する。ナフサ流を前述の接触分解システム中で10%ZSM−5含有FCC E−Catと接触させて原油生成物を製造した。立上がり管反応器の温度は593℃(1100°F)に維持した。原油生成物は、原油生成物1g当たり、エチレンを0.1308g、エタンを0.0139g、Cオレフィンを0.0966g、Cイソオレフィンを0.0343g、ブタンを0.0175g、イソブタンを0.0299g、Cオレフィンを0.0525g、Cイソオレフィンを0.0309g、ペンタンを0.0442g、イソペンタンを0.0384g、C炭化水素と沸点232℃(450°F)以下の炭化水素との混合物を0.4943g、沸点範囲分布が232〜343℃(450〜650°F)の炭化水素を0.0201g、沸点範囲分布が343〜399℃(650〜750°F)の炭化水素を0.0029g、及び沸点範囲分布が399℃以上(750°F以上)の炭化水素を0.00128g、及びコークスを0.00128g含有していた。C〜Cオレフィンの合計量は、ナフサ1g当たり0.2799gであった。
【0102】
本例は、地層流体からの液体流を分離して製造した液体流を分留して、沸点が343℃を超える原油生成物を製造し、次いで、沸点が343℃を超える該原油生成物を接触分解して、少なくとも1種は第二ガス流である1種以上の追加の原油生成物を製造する、原油生成物の製造法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部の一実施態様の概略図である。
【図2】現場熱処理法で製造された混合物を処理するためのシステムの一実施態様の概略図である。
【図3】現場熱処理法で製造された液体流を処理するためのシステムの一実施態様の概略図である。
【符号の説明】
【0104】
212 地層流体
214 流体分離ユニット
216 現場熱処理法液体流
218 場熱処理法ガス流
220 水性流
222 ガス分離ユニット
224 ガス炭化水素流
226 液体分離ユニット
228 ガス(炭化水素)流
230 塩含有プロセス液体流
232 脱塩ユニット
234 液体流
236 濾過システム
238 濾過液流
240 再循環液流
242 廃棄物流242
244 水素源
248 水素化処理ユニット
250 水素化処理液体流
252 分留ユニット
254 C3〜C5炭化水素流
256 ナフサ流
258 ケロシン流
262 ディーゼル流
264 塔底流
266 アルキル化ユニット又は配合流
268 炭化水素流
270 接触分解ユニット
272 ガソリン炭化水素流
274 液体流
276 水蒸気
278 接触分解システム
280 (使用済み)再生接触分解触媒流
282 再生分解触媒流
284 第二接触分解システム
286 分離システム
288 使用済み触媒流
290 再生ユニット又は再生器
292 酸素源
294 燃焼ガス
296 原油生成物
298 液体分離ユニット
300 ガソリン炭化水素流
302 (軽質)サイクル油流
304 塔底流
306 ガス油炭化水素流
308 粗製オレフィン流
310 オレフィン分離システム
312 エチレン生成物又はオレフィン流
314 プロピレン生成物又はオレフィン流
316 ブチレン生成物又はオレフィン流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下現場熱処理法で地層流体を製造する工程、
地層流体を分離して、液体流及びガス流を製造する工程、
液体流の少なくとも一部を水素化処理ユニットに供給する工程、及び
該液体流の少なくとも一部を、液体流中の閉塞性組成物の少なくとも一部を除去するのに充分な条件で水素化処理して、水素化処理液体流を製造する工程、
を含む1種以上の原油生成物の製造方法。
【請求項2】
閉塞性組成物の少なくとも1種が、前記現場熱処理法で製造された固体を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
閉塞性組成物の1種以上が、前記現場熱処理法で製造された固体と炭化水素との混合物を含有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
閉塞性組成物の1種以上が、前記現場熱処理法で製造された、オレフィン及び固体を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
閉塞性組成物がジオレフィンであり、水素化処理工程において、該ジオレフィンの少なくとも一部がモノオレフィンに転化する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素化処理工程が、液体流を水素の存在下、1種以上の触媒と接触させて、輸送用及び/又は製油所用に好適な生成物を製造する工程を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水素化処理した液体流の少なくとも一部を、下流の1つ以上の処理ユニットで処理して1種以上の原油生成物を形成する工程を更に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
処理ユニットの少なくとも1つが分留ユニットを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
原油生成物の少なくとも1種が25℃、0.101MPaで液体混合物である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
原油生成物の少なくとも1種が25℃、0.101MPaでガス状混合物である請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
原油生成物の少なくとも1種が25℃、0.101MPaでガス状混合物であり、かつ該ガス状混合物が炭素数3以上の炭化水素を含有する請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
原油生成物の少なくとも1種がディーゼルを含有する請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
原油生成物の少なくとも1種がナフサを含有する請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
原油生成物の少なくとも1種が真空ガス油である請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
原油生成物の中の1種の少なくとも一部が、前記現場熱処理法で製造された地層流体とブレンドされる請求項7〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記現場熱処理法が炭化水素含有地層を1つ以上の熱源で加熱する工程を含む請求項7〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
地層流体が、流動化流体、粘度低減化流体、熱分解流体、又はそれらの混合物を含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
地層が油頁岩を含有すると共に、原油生成物の少なくとも1種が前記現場熱処理法で製造された重油及び/又はタールサンド流体とブレンドされる請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
ずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法で製造された原油生成物を用いる輸送用燃料の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法で製造した1種以上の原油生成物を含む輸送用燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−512775(P2009−512775A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537823(P2008−537823)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/041185
【国際公開番号】WO2007/050477
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】