説明

液体流れの調節要素を備えた管束設備

本発明による液膜落下式の管束設備は、垂直方向の円筒形本体を有し、円筒形本体は、その両端部が閉鎖され、孔あきの2つの管板によって少なくとも上セクション、中間セクション及び下セクションに分割され、2つの管板は、横断方向に配置され、束を形成する管を支持する。膜の形態をなす液体の入口及び分配のためのフェルールが各管の上端部の上に位置する。フェルールは、その上部に蒸気の出口のための開口、その中間高さに位置する液体の入口のための接線方向の開口と、その下部に位置し且つ管の上に位置する環状ベースと、管内に挿入された円筒形部分を有する。円筒形部分と外側の金属製ストリップが環状ベースから下方に突出しており、ガスケットが、外側の金属製ストリップと円筒形部分の間に定められた環状領域に位置し、フェルールの環状ベースと管の上端部の間に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体流れの金属製調節要素を有する管束設備に関する。
【0002】
本発明は、特に、2つの流体間の熱交換を行なうのに適し、且つ、2つの流体のうちの一方が液体の状態で且つ膜の形態で管の内壁に沿って落下する、垂直型又は立型の管束設備に関する。
【0003】
本発明は、特に、ガス及び蒸気を非常に攻撃的な特性を有する液体から分離するのに適し、且つ、各管のヘッドのところに位置し且つ液膜を分配するための特定の要素を備えた、液膜落下式の管束熱交換器に関する。
【背景技術】
【0004】
管束設備は、2つの流体間の熱交換を効率的に行なう技術において広く用いられ、特に、相変態又は化学反応を交換壁の一方又は両方の側面に沿って熱の流れにより行うときに用いられる。この種類の設備は、それを建設するのに比較的容易であり且つ簡単であり、その理由は、かかる設備が、通常、円筒形チャンバを有し、複数の管が円筒形チャンバを長手方向に横切り、複数の管が2つの横方向プレート(管板)に密封式に固定され、管板と2つのヘッドが、設備の両端部のところで、2つのチャンバの境界を定め、2つのチャンバがそれぞれ、管の内側を流れるガス及び液体の収集及び分配を行うからである。前炉から来た高温ガス又は飽和蒸気からなることが多い交換器流体は、管の外側(いわゆるシェル側面の内側)を循環する。
【0005】
本発明が特に関連する立型液膜落下式の管束熱交換器では、複数の管は、一様且つ薄い液膜が重力によって上方から壁に沿って流れ、かくして、シェル側の流体とできるだけ短い接触時間で効率的な熱交換を行なうように、垂直方向に位置決めされる。それと同時に、加熱による蒸発又は化学反応によって生じることがある蒸気が、広い液膜面から容易に放出され、実質的に液体のない管の内部ダクトに沿って除去される。その結果、この種類の熱交換器の良好な機能を発揮するのに本質的なことは、液膜を一様に分配させること、及び、管に沿う閉塞及び圧力降下を結果的に生じさせる閉塞領域及び蒸気と混合された乱流領域を、ときたまでさえも形成しないことである。
【0006】
これらの場合に熱交換を行なうために一般的に採用される幾つかの方法及び設備が、例えば、非特許文献1(「ペリー・ケミカル・エンジニアリング部・ハンドブック(Perry's Chemical Engineering Handbook)」マグローヒル・ブック・コーポレイション(McGraw-Hill Book Co.)、1984年、第6版11〜18頁)に記載されている。この設備の典型的な例は、尿素の合成プロセスの高圧サイクルに導入されたストリッパ又は分離塔によって代表される。
【0007】
非常に攻撃的な特性を有する流体を取扱う熱交換器では、各管及び各管板の2つの表面のうちの少なくとも一方とヘッドの内面の少なくとも一部分は、かかる流体に晒されてそれと直接接触し、その結果、上記表面及び内面は、乱流又はガス生成等の動的現象に起因して生じる化学的腐食又は浸食に対する耐性を有する保護金属層で構成されなければならないか、かかる保護金属層で適切に被覆されなければならない。多くの場合、浸食作用及び腐食作用は、相乗的に作用し、流体をさらに攻撃的にする。
【0008】
腐食及び/又は浸食の問題は、既存の工業プラントにおいて種々の解決法が適用され、他の解決法が、文献に提案されている。実際、例えば硝酸及び尿素の合成におけるような極めて高い腐食性を有する流体を取扱うプロセスにおいて、設備内で生じる非常に攻撃的な状況に対して十分に長い期間にわたって耐えることが可能な多数の金属及び合金が存在する。かかる金属の中には、多くのステンレス鋼(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(AISI 316Lスチール、尿素等級)、タイプ25/22/2 Cr/Ni/Moのステンレス鋼、オーステノ−フェライト系ステンレス鋼)に加えて、鉛、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ及びそれらの種々の等級の合金が含まれる。
【0009】
チタン及びジルコニウム等の金属は、そのコストがステンレス鋼のコストよりも高いにもかかわらず、腐食に対する高い耐性及び満足できる機械的性質のため、尿素及び硝酸の合成に用いられる高圧熱交換設備内の管を製造するのにしばしば好ましい。ジルコニウムは、特に、それが接触するプロセス流体の化学的腐食作用と浸食作用の両方に対して優れた耐性を有していることで知られているのに対し、チタンは、腐食に対してジルコニウムと実質的に同様な耐性を有するが、浸食作用に対してジルコニウムよりも低い耐性しか有していない。
【0010】
立型液膜落下式の管束交換器、例えば尿素合成高圧ループに含まれるストリッパにおける特定の場合、腐食の問題に対する解決策は、極めて複雑であり、その理由は、アンモニウムカルバメートの熱分解化学反応が起こる結果、相当な浸食作用を受けると共に十分な機械的抵抗を有する金属で構成されなければならない領域において、金属表面が受ける大きい機械的応力のためであることに加えて、できるだけ制御され且つ再現可能な流体の温度及び組成の分布を可能にすることを目的とする設備の特定の幾何学的形状のためである。多くの解決策が、当業者によって長年にわたって提案されてきた。
【0011】
特許文献1(米国特許第4,899,813号明細書)に、合成反応器から来る尿素溶液の高圧分離作用に特に適した立型管束設備の構成及び使用が記載されている。カルバメートの熱的交換及び分解が起こり、その結果、流体の最大の化学的及び腐食攻撃特性が存在する管内の領域の腐食を阻止するため、バイメタル管からなる管束が用いられ、バイメタル管は、ステンレス鋼で作られた外側部分と、ジルコニウムで作られ且つ外側部分よりも薄い厚さ(0.7〜0.9mm)である内側部分とからなり、内側部分は、外側部分に機械的に接着されるが、それには溶接されておらず、その理由は、これら2つの材料は、通常の溶融溶接に対して互いに不適合だからである。この解決策は、既知の技術に対して著しい技術進歩となったが、この解決策は、スチールで作られた管の外側部分に向かう腐食性流体の侵入の結果として生じる腐食の問題を長い期間にわたっては阻止することができなかった。
【0012】
他の解決策によれば、全体が高性能金属、例えばジルコニウム、ニオブ又はタンタルで作られた管を用い、管を、腐食にさらされる装置の残りの部分の壁の材料と同じ材料で作られた被膜に結合させる提案も存在した。しかしながら、これら解決策のコストが高いので、これらの広い工業的開発が制限された。
【0013】
特許文献2(欧州特許第1577632号明細書)は、尿素合成プラントにおけるアンモニウムカルバメートの処理に適した管束交換器を記載しており、かかる管束交換器では、管束は、腐食性流体と接触状態にある側がジルコニウムの薄い層で被覆されたチタン管からなり、チタン管は、チタン間溶接によって管板のチタン被膜に密封式に固定される。ジルコニウム層は、必ずしも、管の全長にわたって延びているわけではなく、最も強烈な攻撃を受ける管の領域に位置決めされるのがよい。これら管を得るための方法は、ジルコニウム層とチタンの表面との間の冶金学的結合部の形成に好都合であるよう熱溶接又は鍛造工程を含むのがよい。
【0014】
特許文献3(国際公開第06/020381号パンフレット)は、上記問題に対する別の解決策を提案し、この解決策は、本質的に高性能耐食金属からなる金属製管状中間要素と、それが固体状態にあるときにその一方又は両方の端部に溶接された第2の2層同軸管状要素とを含む管の管束を製造することにより、2層同軸管状要素の一方の層は、中間要素の金属と同じ金属のものであり、その他方の層は、管板の被膜の金属との溶接に適したものである。
【0015】
上述した立型液膜落下式熱交換設備は、管の壁に沿う液体の最適分配を行なうと共に、好ましくは下から同伴ガスとして熱交換器内に導入されるガスと蒸気又は液体それ自体の1つ又は2つ以上の成分の蒸発又は熱的分解に続いて管それ自体内の生成物の同時排出のための装置と必要としている。この装置は、一般に「フェルール」という技術用語で知られており、一般に、管状の形態を有すると共に支持管板の上方で管束の各管の端に圧入される。フェルールは、ガス又は蒸気の出口のために上方に開かれていてもよいし、ヘッドによって上端部が閉じられていてもよく、ヘッドは、更に指定されるように用いられる場合のある固定グリッドの当接手段としても働くことができ、この場合、ガス又は蒸気は、フェルールの上端部の近くのその側壁に設けられた1つ又は2つ以上の横孔を通って排出される。1つ又は2つ以上の孔が管の端部の当接ベースの僅か上方でフェルール壁に接線方向に設けられていて、内部壁上の液体の流入及び一様な分配を可能にする。さらに、各フェルールは、当接ベースを越えて延び、熱交換器の各管の上方開口内に対応して挿入されるよう形作られた下端部を有する。固定グリッドは、通常、管束内に挿入されたフェルールの群の上方部分の上に載せられている。その目的は、上昇する蒸気の力に対抗してフェルールを管内にしっかりと挿入したままにすることにある。
【0016】
上述した形式の装置は、種々の分野における立型落下液型熱交換器に工業的に利用されている。尿素合成プロセスの多くのストリッパにおいてこれまで用いられているフェルールの興味のある説明は、非特許文献2(ファーティライザー・ニュース(Fertilizer News),1994年6月,57〜65頁に記載されたエス・アール・ゴーシュ(S. R. Ghosh)の論文)に提供されている。
【0017】
上述した形式のフェルールは、例えば、高圧尿素合成サイクルの分解装置/ストリッパと設備が落下膜型のものである場合、同一プラントの中圧又は低圧のアンモニウムカルバメートの分解のための次の設備の両方に用いられている。尿素の合成のための高圧ストリッパで用いられる典型的なフェルールの断面図を、図2に概略的に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,899,813号明細書
【特許文献2】欧州特許第1577632号明細書
【特許文献3】国際公開第06/020381号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/093064号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1.503.837号明細書
【特許文献6】イタリア国特許出願公開第MI08A001302号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「ペリー・ケミカル・エンジニアリング部・ハンドブック(Perry's Chemical Engineering Handbook)」マグローヒル・ブック・コーポレイション(McGraw-Hill Book Co.)、1984年、第6版11〜18頁、「アンモニウムカルバメート(Ammonium Carbamate)」項目の表23−22〜23−24
【非特許文献2】「ファーティライザー・ニュース(Fertilizer News)」,1994年6月,57〜65頁に発表されたエス・アール・ゴーシュ(S. R. Ghosh)の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したフェルールの使用は、長い期間にわたって知られているが、欠点のうちの幾つかは、依然として満足の行くほどには解決されていない。大きな問題のうちの1つは、事実、腐食及び浸食作用を持つ液体が、管の上端部に取り付けられたフェルールの当接領域及び挿入領域を通って侵入するということである。フェルールは、事実、取外し可能な装置としてのその機能に起因して、管に溶接されておらず、単に管の上に載っているに過ぎず、位置決め及び密封要素として管キャビティ内へのその下部分の圧入作用による挿入が利用されている。しかしながら、使用中における設備の振動に起因し、しかも、高い腐食及び浸食作用を持つ高温流体の応力を受けて、かかる高温流体が接触する表面を次第に損傷させる侵入が経時的に生じ、最終的に、管の上端部の深刻な変形現象を生じさせると共に、管内に非接線方向に且つ設定されていない位置で流入する液体の著しい損失をもたらし、かくして、壁に沿う落下膜の一様な生成が阻止されると共に、金属製の壁の浸食及び腐食という別のおそれが生じる。設備の稼働時間を延長させようとして、場合によっては添付の図2に示していると共に非特許文献2に記載されているように、フェルールを閉塞する孔又は収納部を備えたフェルールの上端部に載るグリッドが用いられる。しかしながら、これら解決策も又、満足の行くものではないことが判明した。というのは、この解決策は、フェルールと管端部との間に存在する隙間内への侵入をグリッドと管端部の両方の不可避的な変形に起因して、更にとりわけプラントの稼働開始及び稼働停止段階におけるフェルールの僅かなシフト及びその結果としての液体の侵入を可能にする完全な共平面性に対するフェルールの上方終端部の等しくない高さの結果として、十分に減少させることができないからである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本出願人は、その技術を絶えず向上させる活動において、今や、特にステンレス鋼とは異なる耐食材料、例えば上述したジルコニウム又はチタンからなる管を備えた管束設備に関し、上述した要件及びこれに関連した問題に対する適切な解決策を提供する管及びその上に載せられたフェルールの特定の構成を見出した。
【0022】
したがって、本発明の第1の目的は、流体間の熱交換に適した液膜落下式の管束設備であって、端部が閉鎖されていて、互いに適当な距離を置いて横断方向に配置された2つの有孔管板によって少なくとも1つの上セクション、中間セクション及び下セクションに分割された垂直方向円筒形本体を有し、複数の管が管束を形成して長手方向に配置されると共にそれぞれの端部が管板の孔の中に密封式に挿入され、円筒形本体の上セクションと下セクションは、互いに流体連通関係をなし、各管の上端の上には、管の壁に沿う膜の形態をした液体の流入及び分配のためのフェルールとも呼ばれている管状装置が載っており、管状装置は、上方に設けられた蒸気の出口のための1つ又は2つ以上の開口、中間高さ位置に設けられた液体の入口のための好ましくは接線方向の1つ又は2つ以上の開口、下方に設けられていて管の上端に載る環状ベース、及び下方に設けられていて、10〜200mmの長さにわたり管内に挿入された状態で環状ベースを越えて下方に延びる円筒形の下部分を有し、フェルールは、環状ベースの外側の横に配置されると共に少なくとも2mm、好ましくは3〜50mmにわたり環状ベースを越えて下方に延び、外側の金属製ストリップと下方に突出した円筒形の下部分との間に構成された環状領域中に、ガスケットが設けられ、ガスケットが、フェルールの環状ベースと管の上端との間に挿入される管束設備に関する。
【0023】
本発明の第2の目的は、上記管束設備の製造方法であって、2つの有孔管板を、2つの終端ヘッドを備えた円筒形シェル内に且つ2つの端部のところに配置して、各管板がヘッドの近くに位置するようにする工程と、各管板とそれに対応するヘッドとの間の空間を互いに流体結合するために、管板を互いに隔てる距離全体にわたって管板の平面に向かって直角に延びる複数の管を、各管板に設けられた孔の中に挿入して密封式に固定する工程と、管の各々の上端の上に、フェルールを位置決めする工程とを有し、フェルールは、その上方領域に設けられた蒸気の出口のための1つ又は2つ以上の開口と、その中間高さ位置に設けられた液体の入口のための好ましくは接線方向の1つ又は2つ以上の開口と、その下方領域に設けられていて、管の上端に載る環状ベースと、その下方領域に設けられた円筒形の下部分とを有し、下部分は、環状ベースを越えて下方に延び、10〜200mmの長さにわたり管内に挿入されると共に、管の内径に実質的に一致した外径を有し、フェルールは、環状ベースの外側の横に配置された外側の金属製ストリップを有し、金属製ストリップは、少なくとも2mm、好ましくは3〜50mmにわたって環状ベースを越えて下方に延びて、金属製ストリップと下方に突出した円筒形の下部分との間に構成された環状領域内に、ガスケットが設けられ、ガスケットは、フェルールの環状ベースと管の上端との間に挿入されることを特徴とする方法に関する。
【0024】
本発明の他の目的は、以下の説明及び特許請求の範囲の記載において明らかになろう。
【0025】
本明細書で用いられる或る特定の金属に関して「合金」という用語は、量として少なくとも50重量%のかかる金属を含む金属組成物を意味する。
【0026】
別段の規定がなければ、金属と言った場合、かかる表現は又、そのそれぞれの合金を含む。
【0027】
或る特定の金属又は合金の表面と接触状態にあるプロセス流体の作用に関して本明細書及び特許請求の範囲の記載で用いられる「腐食」及び「腐食性」という用語は、その一般的な意味において、表面を形成する材料の性質の喪失又は変更であり、表面の化学的攻撃に起因して生じる腐食作用と衝突、摩擦及び剪断力に起因した物理的除去プロセスに起因して生じる浸食作用との両方を含む。
【0028】
本明細書によれば、或る特定のプロセス条件下において流体に関して材料に言及した「耐腐食性」という用語は、規則ASTM A 262 file C(HUEY TEST)に従って設定された0.1mm/年よりも低い腐食指数を有する材料を定めている。通常の構造的使用のための材料に関する被覆指数は、当業者に知られている種々のマニュアル、例えば、非特許文献1(「ペリー・ケミカル・エンジニアリング部・ハンドブック(Perry's Chemical Engineering Handbook)の「アンモニウムカルバメート(Ammonium Carbamate)」項目の表23−22〜23−24」に示されている。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「強制溶接」及び「密封式溶接」という用語は、規則ASME VIII Div.1 UW20記載から取った以下の定義に準拠し、「強制溶接」は、溶接部品の膨張に起因して生じる機械的性質及び応力に基づいてプロジェクト要件を満足させるような特性を持つ溶接であり、「密封式溶接」は、損失を回避する目的で行なわれ、その寸法形状は、強制溶接について先に表された荷重に基づいては定められない。
【0030】
本明細書において、互いに接合される2つの金属製物体(例えば、管、金属被膜、プレート又は耐力本体から選択された任意の2つの物体)間の作用に関して「冶金学的に結合され」という表現は、金属製物体間の接触表面又は部分の存在を示しており、この場合、それぞれの成分(同種の金属又は異種金属である場合がある)は、これら金属のうちの少なくとも一方として同一の大きさの機械的及び解除抵抗の特性を備えた結合部を形成するように互いに直接的に又は間接的に接合される。冶金学的に結合された物体の例は、製造の金属が溶融溶接(可溶性ロッドの使用の有無を問わない)、ろう付け、摩擦溶接、爆発溶接、同時押し出し、熱間引抜き及び類似の技術によって接合される例である。
【0031】
「高」及び「低」又はこれら類義語及び派生語、例えば「上方」及び「下方」という用語は、本発明の目的としての設備を含む落下液式熱交換器又はこれらの部品に関して用いられる場合、使用の際に位置する垂直型又は立型装置を参照している。
【0032】
特許請求の範囲に記載された設備又はその部品、例えば管及びフェルールに関して本明細書で用いられる「環状」及び「直径」という用語は、円筒形の幾何学的形状について記載された部品を何ら制限するものではなく、類推により、閉じられた幾何学的形状、例えば楕円又は四角形という種々の形態に拡張される。
【0033】
本発明の立型熱交換設備(便宜上、以下、立型熱交換器ともいう)は、その基本的な構成要素に関し、先行技術において知られている典型的な落下膜型熱交換器の特性と異なるわけではない。立型熱交換器は、通常、直径が好ましくは0.5〜3.0mであり、端部が2つのヘッドによって閉鎖され、熱処理を受けた液体のそれぞれの分配及び収集のための2つの上側及び下セクションの容積の一部も又通常包囲する圧力スラストに良好に耐えるために通常半球形である円筒形の形をしており、これに対し、上側及び下側管板によりそれぞれ境界が定められた装置の中間又は中央セクションは、上述した分配及び収集チャンバを構成する管束及び流体が流体連通状態をなして熱を運ぶために循環するシェルとも呼ばれている空間を有する。半球形ヘッド内において且つ円筒形本体に沿って、流体の流入及び流出、設けられる場合のあるセンサの導入に適した開口及び点検のための開口(マンホール)が設けられる。設備は、作動位置にあるとき、例えば、尿素合成プロセスのストリッパ又は分離塔として用いられる場合、垂直方向に差し向けられる。
【0034】
本発明の立型熱交換器が中圧〜高圧並びに温度条件下で且つ例えば尿素製造プロセスにおける非反応カルバメートの回収において又は硝酸の濃縮の際にそうであるように特に攻撃特性的な流体の存在下において用いられるようになっている場合、当業者は、起こり得る腐食及び浸食現象に耐性を示す最も適当な金属材料及び設備の種々の部分の寸法形状、特に、管束の管、装置の管板及び外壁(耐圧本体とも呼ばれる)の厚さを注意深く選択し、これらが、圧力スラストに耐えることができ、高い安全条件が保証されるようにする。耐圧本体は、特に、通常20〜400mmの厚さを有し、ヘッドの壁についてはこれよりも大きく、所与の円筒形壁についてはこれよりも小さい。典型的には、0.2〜5MPaの圧力で飽和蒸気と接触状態にある中央円筒形領域は、好ましくは、20〜100mmの厚さを有し、これに対し、プロセス流体の大きな圧力を受けるヘッド及びその近くに位置する筒体の壁は、比例的に厚い、好ましくは80〜300mmの厚さを有する。外壁は、既知の技術のうちの任意のものに従って組立てられた炭素鋼の単一の層又は種々の層からなるのがよい。また、当業者であれば、当該技術分野において知られている方法に従って結果に起因する損失が生じないよう種々の部分を注意深く組立てると共にこれらを溶接するであろう。
【0035】
この装置の内部は、通常互いに平行にグループ分けされ、2つの管板に固定された管束の管からなる領域によって特徴付けられ、これら管板は、適切には、設備の主軸に対して横断方向に位置決めされ、管板は、圧力差を許容するのに適していて、通常、厚さが20〜500mmの炭素鋼で作られた平べったい要素からなる。最も一般的な場合、2つの管板は各々、2つのヘッドの各々の近くにそれぞれ位置し、本質的に円筒形の幾何学的形状を有する中間セクションを定める。各管板は、溶接によって、環状壁に密封式に且つ強制的に固定され、隣り合うセクション間に材料の交換又は行き来が生じることがないようになっている。
【0036】
管は、2つの管板と交差し、この目的のために、2つの管板は、適切に孔が設けられ、管により、その端部のところに位置する上セクションと下セクションとの間の流体の通行を可能にする。熱を所望温度で供給する必要な圧力状態の第2の流体、通常は飽和蒸気の流れが、通常シェル側の中間キャビティ内に導入され、それにより、管の壁を介する熱交換を行ない、そして、適当な出口ダクトを通って凝縮液の形態で除去される。
【0037】
プロジェクト仕様に応じてこれら管の数は様々であるが、通常、最も大きな設備について最小2本から約1万本までである。通常炭素鋼又はステンレス鋼で作られた厚さ数ミリメートルの中間セプタ(バッフルとも呼ばれている)を管の支持体として中間セクション内に配置するのがよい。
【0038】
本発明によれば、フェルールを載せた各管は、好ましくは、場合によっては管内部の蒸発段階中における流体の機械的作用に起因して生じる浸食と腐食に対して高い耐性を示す材料からなる。この機械的作用は、特に、液体が迅速に加熱されると共に蒸発され、表面に大きな先端応力が生じる垂直方向管の壁上で特に高い。これら管状要素の製造に特に適した材料は、腐食と浸食の両方に対して優れた耐性があると共に満足の行く商業的入手性があるので、ジルコニウム及びニオブであり、特にジルコニウム及び少なくとも60%のジルコニウムを含むその合金、例えばZircalloy(登録商標)及びZircadyne(登録商標)である。耐腐食性の高い他の好ましい材料は、チタン及びその合金並びにステンレス鋼の合金、特にアンモニウムカルバメートの高温溶液との接触に耐えるよう市販的に開発されたステンレス鋼合金、例えばINOX尿素等級、Cr/Ni/Mo;25/22/2、オーステノ−フェライト系ステンレス鋼である。
【0039】
また、本発明の場合、特許文献1(米国特許第4,899,813号明細書)に記載されている形式のジルコニウム/ステンレス鋼バイメタル管が本発明の目的に適しており、管上におけるフェルールの位置決めにあたり他方において先行技術でこれまで提案された溶液では必要であった30〜100mmの長さにわたる管の終端部のジルコニウム層の除去が不要であるという利点がある。本発明の熱交換器の実施形態は、管が特許文献3(国際公開第06/020381号パンフレット)又は特許文献4(米国特許出願公開第2008/093064号明細書)に記載されている形式のものである場合、同様に有利であることが判明しており、その上方部分は、チタン又はその合金のうちの1つからなる外側層に冶金学的に結合されたジルコニウム又はジルコニウム若しくはその合金のうちの1つからなる内側層からなる。また、この場合、事実、本発明を特徴付ける要素の組み合わせにより、設備の製造中、管端部のところのそれ以上の処理が回避される。
【0040】
本設備の管の寸法形状は、その多くの用途の結果として、しかもその構成材料に応じて、広い限度内で様々であってよい。熱的流体、通常低圧、中程度の圧力又は高圧状態にある蒸気と接触するシェル側の外面と、腐食性及び/又は浸食性流体と接触する内面との間の通常2〜30MPaの高い圧力差の存在下において最適性能を得るには、管の内径は、5〜150mm、好ましくは10〜100mmであり、その厚さは、好ましくは、1〜20mm、より好ましくは2〜15mmである。管は、通常、円筒形であるが、種々の断面、例えば楕円形又は正方形断面の管は、本発明の範囲から外れるわけではない。
【0041】
本発明によれば、管束の管の長さは、これが用いられる設備の寸法形状に対して広い限度内で様々であってよい。その長さは、一般に、直径の少なくとも5倍以上であり、好ましくは、1〜20メートル、より好ましくは2〜15メートルである。最も一般的な場合、管の長さは、管束の長さを定めると共に管板間の距離を定める。
【0042】
本発明によれば、各管の端部、特に上端部は、好都合には、管板の被膜に密封式に溶接される。この溶接は、管及び管板の組成並びに設備の使用に応じて、本発明の範囲に含まれる種々の仕方で実施できる。管板がチタン又はジルコニウムで被覆されると共に管の終端部がかかる金属又はその合金との溶接に適合性のある少なくとも1つの層からなる場合、被膜をこの適合性のある層に密封溶接し、場合によっては更に強制溶接することが好ましい。例えば、被膜と管の外壁の両方がステンレス鋼からなる場合、同一形式の実施形態の実現が可能である。かかる溶接は、更に強制溶接として実施される場合、圧力差に起因して生じる機械的応力に対して耐性のある管の固定領域を更に管板に形成する。管を管板に固定する他の手段は、当該技術分野において知られている技術に基づいて当業者によって容易に見出すことができる。
【0043】
本発明によれば、管束の管の上縁は、管束が挿入されている管板の平面を越えて最大80mmまで、好ましくは10〜50mmにわたって突出する。この場合、被膜又はいずれかの場合には管板の本体への管の溶接は、同一管の外面周りに行なわれる。
【0044】
本発明の熱交換器中の管端部の上に位置するフェルールは、管それ自体に密着した管状の装置であり、その主要な機能は、一方において、垂直方向の管の中への液体の流入を可能にして液体ができるだけ一様に薄い層(落下膜)を形成して管の壁上に落下することによって分配されるようにすることにあると共に、他方において、管の高い位置で、管束の垂直方向管内を上昇するガス及び蒸気の流出を可能にして閉塞及び気泡又は泡の生成を阻止することにあり、かかる気泡又は泡は、熱交換器の機能を低下させたり、望ましくない圧力降下を生じさせたりする。
【0045】
この目的のため、フェルールは、下方に突出する円筒形部分を有し、円筒形部分はセ、数マイクロメートルの公差を除き、管内部の外径と実質的に一致した外径を有し、垂直方向管のキャビティ内に挿入される。
【0046】
本発明によれば、フェルールは、液体の流入開口とガス及び蒸気の流出開口との間隔を置くことができるようにするのに十分な距離にわたって延びる。フェルールの長さは、一般に、その上端の縁から管のキャビティ内に挿入されている下部分の延長部の境界まで200〜800mm、好ましくは300〜600mmである。
【0047】
フェルールの下部分は、管状部分を含み、管状部分は、環状ベースの縁を越えて下方に延びる長さを有し、かかる長さは、好ましくは10〜120mmであり、より好ましくは20〜80mmであり、管状部分の厚さは、フェルールの上部よりも薄く、管状部分の外径は、熱交換器の管の内径と本質的に一致し、その結果、フェルールを管に挿入すると、2つの壁は、互いに対して内方に実質的に押込まれ、かくして、正確な位置決めを確保する。好ましい観点によれば、フェルールの下部分の管状部分の外径は、フェルールの上部の外径よりも1〜20mm、好ましくは2〜15mm小さく、管状部分は、上部と一緒に、直角の輪郭を環状接合線に沿って形成し、直角の輪郭は、水平方向に配置された環状面を形成し、フェルールの環状当接ベースを、熱交換器の管の端部上に形成し、ガスケットが介在する。別の好ましい観点によれば、管状部分の厚さは、0.5〜5mmの範囲内にあり、好ましくは1〜4mmの範囲内にあり、下端部において、好ましくは5〜50mm、より好ましくは10〜30mmの長さにわたって徐々に細くなる円錐台形状にテーパし、管の内壁の表面と実質的な連続部を下縁部に形成する。
【0048】
フェルールの下部分は、装置の残りの部分に接合され、フェルールの上部の管状輪郭に連続し、上部の内径は、好ましくは、その下に位置する管の内径と同じであり、同軸断面にわたって10〜150mm、好ましくは40〜100mmの範囲で変化する。本発明の好ましい観点によれば、下部分の内径は、上述した連続領域と一致して次第に上方に広がり、5〜50mm、好ましくは10〜30mmの距離にわたって、上述した輪郭と類似しているが逆方向に向けられた円錐台形の輪郭をもたらしている。このように、フェルールの内側輪郭は、次に説明する図3及び図4に概略的に示しているように台形の部分を備え、この場合、内径は、全部で30〜300mmの好ましくは長い部分に関し、1〜10mm、好ましくは2〜8mmだけ小さくなっている。かくして、本発明の装置により、液体をフェルールの中間領域に送ることができることが判明しており、このフェルールの中間領域の内径は、垂直方向管と実質的に同一であり、それにより大きな円形断面の表面が得られると共に液膜の一様な形成に都合がよくなっている。次に、液体は、管内に挿入された下側延長部の厚さに一致したフェルールの内径が小さくなっていることに起因して不可避的に厚くなっている部分を除き、テーパした円錐台形領域の存在によりそれほど乱流なしで下方に流れ、次に、管束の壁の内壁上でできるだけ層状の流れで戻り、かかる内壁上において、シェル側部内の飽和蒸気との熱交換において加熱が開始される。
【0049】
上述したように、突出した下部分及びフェルールの残りの本体の接合線上において、2つの管状セクションの外径の差により、水平方向に配置されたリング部が形成され、これは管の端部上に環状当接ベースを形成する。また、本発明によれば、環状金属ストリップも、環状ベースの近くでフェルールの外面上に設けられ、このストリップは、少なくとも2mm、好ましくは3〜50mm、より好ましくは3〜30mmのセクションに関し、環状ベースの縁部を越えて下方に突出して下部分の突出部分の外面、環状ベース、及び環状ストリップの延長部の内面によって境界が定められたハウジング部を形成し、このハウジング部内には、耐熱性であり且つ化学的に不活性な材料で作られた環状ガスケットが設けられ、このガスケットは、下に位置する管の上端上に載った状態で、液体のあり得る侵入に対するフェルールの密封状態を確保し、このフェルールに使用中における設備の機械的応力に対する高い安定性及び弾性を与える。いずれの場合においても、外側環状ストリップの下方突出長さは、フェルールの重量が環状ガスケットに加えられるようにするために、管束を越えて管の突出部分の長さよりも短くなければならない。
【0050】
ガスケットは、好ましくは、高性能圧縮性材料からなり、この材料は、これが接触する液体の化学的攻撃、多くの場合、例えばアンモニウムカルバメート又は硝酸の腐食性の化学的攻撃に対して高い耐性を示さなければならず、しかも、使用中における温度範囲、例えば100〜200℃の温度範囲内において永久歪を回避するその機械的性質、例えば適度な引っ張り強さ及び降伏強さを維持することができるが、これを挟んだ表面に適合するのに十分な弾性を備えなければならない。この目的に適した材料は、当業者により、フッ化ポリマー、シリコンポリマー又は高い耐薬品性及び高い耐熱性を備えた加硫され又は加硫されていない類似のエラストマー材料、高い展性及び耐薬品性を備えた或る特定の金属、例えば鉛、金、白金、銀の中から選択可能である。本発明の目的に適した代表的なフッ化ポリマーは、例えば、Teflon(登録商標)、Algoflon(登録商標)、Polymist(登録商標)で市販されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロポリアルキルエーテル、例えばペルフルオロポリエチレンオキシド(Teflon(登録商標)、Hyflon(登録商標))、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオリド(Hylar(登録商標))、フッ化エラストマー(Tecnoflon(登録商標))である。場合によって所望の形態に焼結されたPTFEが特に好ましい。
【0051】
外側のストリップの突出部分の配置により、ガスケットをそのハウジング部の内側に保つことができると共に、経時的なその変形が回避され、かくして、ガスケットは、その機能を失うことがないようになる。ガスケットは、環状の形態を有し、好ましくは、それが収納されているハウジング部の内径及び外径に実質的に一致する内径及び外径、より好ましくはそれが載っている管の内径及び外径に等しい内径及び外径を有し、垂直方向において0.5〜8mm、より好ましくは1〜5mmの厚さを有する。ガスケットの断面は、好ましくは四角形であり、したがって、ガスケットは、フェルールの環状ベース及び管端部の当接面と一致する2つの平坦な側部を備える。
【0052】
かくして、本発明の設備により、高い性能の落下膜型熱交換器の寿命期間を実質的にかなり延ばすことができる。本発明とは異なり、非特許文献2は、外部形式のフェルールと関連しただけのテフロン(登録商標)リング部の使用を記載しており、この場合、リング部は、管の外側の横に配置される。これら条件下において、非特許文献2は、管の終端領域の耐腐食性が満足の行くものではないことを記載している。
【0053】
本発明の設備のフェルールの内面の接線方向に、垂直方向管中の落下液体を流入させる少なくとも1つの開口が、金属製壁の適当な高さのところに設けられている。この開口の機能は、管の内面上にできるだけ一様に膜の形態の液体を分配させることにある。この目的のため、同一高さ位置に対称に配置されると共に管の内面に接線方向に差し向けられた好ましくは3〜4つの円形開口が設けられる。これら開口の直径は、好ましくは、液体の流動学的パラメータ及び機能発揮の際に設備について定められた流量に基づいて、1〜5mmの範囲内で選択される。液体流入のための開口が設けられている高さは、管板の上方の熱交換器の上セクション内における液体のレベル(液位)を定めると共に液体の収容容積(ホールドアップ)を定めるのに役立つ。フェルールの内側及び外側が連結されているので、液体のレベルは、必要な静圧スラストをもたらすよう一般に、開口の高さよりも僅かに上に、好ましくは100〜400mmこれよりも高い位置に維持される。本発明によれば、これら開口は、管上に載っているフェルールの環状ベースから50〜160mm、好ましくは60〜100mmの高さのところに位置することが好ましい。このように、液膜は、これが上述したように、フェルールの内径が小さくなる管状のフェルールの結合領域と交差する際に一様に分配されることが判明した。
【0054】
フェルールの上端部の近くの高いところの部分において、下に位置する管から上昇するガス又は蒸気を流出させる少なくとも1つの開口が設けられている。この開口は、単にフェルールのダクトを上方に開口したままにすることにより形成されてもよいし、好ましくは、頂部のすぐ下で、フェルールの溶接又はフェルールに溶接され又この上に載っているストッパによって得られるフェルールの上端部の閉鎖部よりも約2〜30mm下のところで横方向に設けられる。より好ましくは、フェルールの側面の周りに対称に配置されたガス又は蒸気を流入させる2つ〜4つの開口が設けられる。この開口又はこれら開口の断面は、フェルールの寸法と適合性のある形態及び延長部を有するのがよいが、著しい圧力降下を生じさせないでガスを流出させることができるようなものでなければならない。これら開口は、好都合には、正方形又は円形であり、その最大寸法は、2〜20mmである。
【0055】
上述したように、本発明の設備の各フェルールは、好ましくは、上端が溶接蓋又はストッパで閉鎖され、溶接蓋又はストッパは、上から分配された液体がフェルールのキャビティ又は下に位置する管の中に直接滴下するのを回避するよう溶接されていてもよいし、そうでなくてもよい。ストッパは、好ましくは、フェルールを固定するために上方に位置して設けられる場合のあるグリッドの対応する開口に適合することができるよう形作られる。
【0056】
グリッドは、本発明の他の要素と一緒になって、フェルールを作動位置に固定すると共にガスの流れにより引き起こされる機械的応力を含む起こり得る振動又は運動を阻止し、更に管状のフェルールの結合領域中への液体の起こり得る侵入に対する抵抗性を高める更に有利な装置を形成する。
【0057】
グリッドは、良好な機械的性能及び適切な耐腐食性を有する材料、例えばチタン及びその合金又はステンレス鋼で作られた金属構造体からなり、かかる金属構造体は、定位置に一連のキャビティ又は孔を有すると共に熱交換器の管上に位置決めされたフェルールの各々の上端部を収容することができるような形態を有する。端部が施栓され又は閉鎖され、ガスの流出のための横孔を備えたフェルールの場合、グリッドはまた、ヘッドからなる上セクションの最も高い部分に向かうガスの通過を可能にする別の開口又は孔を備え、ガスは、かかる最も高い部分から出口ラインに向かって送られる。本発明のグリッドの好ましい厚さは、2〜30mm、より好ましくは5〜20mmである。グリッドは、フェルールに対して圧入作用で取付けられると共に適当な金属製固定要素、例えば一方においてグリッドに他方において管板に溶接され又はボルト止めされた金属部分によって制止される。構成及び保守上の高い単純性を実現することができるようにするために、グリッドは、好ましくは、マンホールを通って通過するのに適した寸法を有する部分に分割され、これらの部分は、装置内での固定時に互いに組立てられる。
【0058】
本発明のフェルールの特定の形態により、特定の冶金学的処理を行なう必要がなく、しかもフェルールの下部分を収容することができるよう管それ自体の内側層を除去しないで、フェルールを各管の上側入口端部に挿入することができる。密封フェルールの位置決めは、事実、今や、上述したフェルールによって環状ベースのところに得られたハウジング部内に存在するガスケットによって管の終端境界部上に直接行なわれる。
【0059】
本発明の管束設備は、類似の機械的構成について選択された通常の方法により製造できる。当業者であれば、設備の最終使用及びプロジェクト仕様を考慮に入れて上述した構造体に基づいて構成を設計することができる。
【0060】
これに従って、高い浸食又は腐食条件下で流体間の熱交換を行なうのに特に適した本発明の管束設備の製造方法は、作動圧力を許容するのに適した外側ケーシングを備えた中空本体又は耐力本体を製作する工程と、耐力本体に密封ヒンジ止めされた2つの管板を介在させることにより少なくとも1つの上側中空セクション及び下側中空セクションをこれらに対して気密状態の中間セクションによって分離した状態で中空本体内に形成する工程とを有し、一連の管は、耐力本体上で適当な孔に挿入され、下セクションと上セクションとを流体連通させることができる管束を形成している。
【0061】
管板及び管束の管は、作動条件下における圧力スラストを許容することに加えて、プロセス流体の起こり得る腐食及び浸食作用に抵抗するのに適した材料で作られる。攻撃特性の高い流体と接触状態にあるセクション及び管を画定する壁は、好ましくは、合成反応から生じるカルバメート及び尿素の溶液のためのストリッパ又は分離塔の好ましい製作の場合、高い耐腐食性を備えた金属、特にステンレス鋼尿素等級、チタン、ジルコニウム又はこれらの合金で作られ又はこれらで被覆される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、この製造方法は、上述した特許文献3(国際公開第06/020381号パンフレット)に従って作られたチタンの外側層と同時に押出されたジルコニウムの内側層を有する2重金属管による管束の構成工程を含む。管板は、腐食にさらされる側がチタンで被覆されている。
【0063】
第2の実施形態では、管束の管は、全体がジルコニウムで作られ、管板はジルコニウムで被覆される。
【0064】
管板(下側と上側の両方)並びに上セクション及び下セクションの残りの壁の耐食被膜の作製は、当該技術分野において知られている適当な冶金学的技術のうちの任意のもの、例えば、主炭素鋼層の表面上へのあらかじめ選択された耐食金属又は合金で作られている層状要素の布設により実施でき、かかる耐食金属又は合金は、覆われるべき表面の形状に適合するよう適切に切断されると共に形作られる。これら要素は、互いに隣接して配置され、次に互いに密封溶接される。溝、支持体、連結要素並びに他の介入手段又は製品は、当業者に知られている通常のやり方に従って特に溶接されるべき境界部に沿って位置決めされる。金属、例えばジルコニウム、チタン及びこれらの合金の溶接方法は、スチールの溶接方法よりも一般的ではないが、既知であり、容易に適用可能である。
【0065】
適当な寸法形状の一連の孔が管板に作られ、各管が管板の表面に対して最大80mmまで、好ましくは10〜50mmの長さにわたり上方に突出することができるよう注意しながら管束を形成するようになった管をこれら孔の中に挿入する。各管の壁は、管及び管板の構造に応じて種々の技術により管板に密封溶接されると共に強制溶接される。全体がジルコニウムで作られた管の場合、これら管は、好ましくは、類似の材料で作られた管板の被膜に密封且つ強制溶接され、かかる被膜は、通常1〜10mmの適当な厚さを有する。バイメタル管の場合、種々の層を例えば特許文献1、特許文献5(欧州特許出願公開第1.503.837号明細書)及び特許文献6(イタリア国特許出願公開第MI08A001302号明細書)に記載されているように被膜及び下に位置する層のうちの1つに互いに異なる仕方で溶接することが可能である。溶接段階では、介在表面の全てを好ましくはアルゴン雰囲気によって慣例通り保護する。あり得る損失を明らかにするための適当なウィープホールが既知の技術に従って管板及び耐圧本体に設けられる。
【0066】
各管板への各管のそれぞれの密封及び強制溶接の完了後、上述した特性を持つフェルールを10〜50mmの長さにわたる管板の表面に対して突出した状態で各管の上端に組立、その下側突出セクションを管内に挿入する。フェルールは、好ましく且つ非限定的な製造方法により、次の加工工程によって得られ、
A)150〜700mm、より好ましくは200〜550mmの好ましい長さ、本質的に熱交換器の管の内径に等しい内径及び好ましくは管それ自体の外径に一致した2〜30mm以上の外径を有する上述した構成による適当な耐腐食性金属からなる第1の管状セグメントを形成する工程を有し、
B)10〜150mm、好ましくは40〜100mmの長さにわたり、耐腐食性金属、好ましくは第1の管状セグメントと同種の金属又はこれとの溶接に適合性のある金属からなり、本質的に第1の管状セグメントの内径に等しい外径、1〜10mm以下の内径及び20〜250mm、好ましくは40〜200mmの長さを有する第2の管状セグメントを第1の管状セグメントの下側キャビティ内に挿入して第2の管状セグメントが10〜200mm、好ましくは10〜120mm、より好ましくは20〜80mmの長さにわたり第1の管状セグメントの下側境界を越えて突出するようにする工程を有し、第2の管状セグメントは、これらの各々の内部キャビティ内に、5〜50mm、好ましくは10〜30mmの長さにわたり表面のテーパ付き円錐台形輪郭形状を得るよう両端部が加工され、
C)溶接付着物に好都合であるように好ましくはあらかじめ溝が設けられた第1の管状セグメントの下側境界部を第2の管状要素の側壁に密封溶接し、溶接領域を処理して管端部に載る水平ベースを得る工程を有し、
D)耐腐食性金属、好ましくは第1の管状セグメントと同種の金属又はこれとの溶接に適合性のある金属からなり、0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmの厚さ、5〜100mm、好ましくは10〜80mmの長さを有する管状金属ストリップを第1の管状セグメントの外側側部上に位置決めしてこのストリップの一部分が少なくとも2mm、好ましくは2〜50mm、より好ましくは3〜30mmにわたり下方に突出するようにし、第1の管状セグメントの外側面上にストリップの上方境界部を溶接してガスケットリングをフェルールの環状ベースと支持管の上方境界部との間に収容するのに適した受け座を形成する工程を有し、
E)例えば孔あけによって、少なくとも水平の孔、好ましくは管軸線に関して対称に配置された3〜4個の孔を内面に対して接線方向に第1の管状セグメントの壁に形成する工程を有し、接線方向の孔は、管状セグメント(フェルールの環状ベースに対応している)の下側縁部から50〜160mm、好ましくは60〜100mmの距離のところで1〜5mmの直径を有する。
【0067】
上記工程D)では、第1の管状セグメントへの外側ストリップの溶接は、好ましくは、外側ストリップをストリップの環状境界部全体に沿うのではなく、フェルールの平均使用時間にわたり(尿素合成法では2〜10年間)所望の位置に維持するのに十分別々の箇所で行なわれる。さらに、変形例として、溶接に代えて、異なる接合法、例えば、摩擦溶接法による冶金学的結合部の形成を行なってもよい。
【0068】
上端部が閉鎖されたフェルールが望ましい場合、上端部への閉鎖ストッパの挿入又は溶接工程と、作動時にガス又は蒸気を流出させる1つ又は2つ以上の横孔を閉鎖ストッパのすぐ下に形成する工程とを更に有する。
【0069】
管端部へのフェルールの組立時、上述した特性を備えたガスケットをフェルールの上述した製造方法によって得られたハウジング部内に挿入する。
【0070】
本発明の設備は、液体状態の媒体又は混合物からのガス及び蒸気の分離に利用され、かかる媒体又は混合物は、ガス、液体又は好ましくは飽和蒸気、より好ましくは水蒸気であるのがよい第2の高温流体との熱交換によって加熱される。第2の流体は、通常設備の側部に設けられた適当な流入及び流出ラインを通って熱交換器のシェル側部を形成する容積部内に通される。他方、蒸発すべき液体手段は、適当な分配器によって、熱交換器の上側チャンバ内に分配され、ここに液体が集められてレジーム条件下においてフェルールに設けられた液体を流入させるための孔の高さ位置よりも僅かに高く、所望の流れを得るために必要な静圧スラストを供給するのに十分な高さ位置を有する層を形成する。
【0071】
本発明の熱交換器により、管内における落下液膜からのガス及び蒸気の分離と例えば本発明の設備が尿素の分解法において尿素に変換されないアンモニウムカルバメートの分解装置及びストリッパ又は分離塔として用いられる好ましい場合において生じる化学反応に続く気体化合物のあり得る生成及び分離の両方を可能にする。
【0072】
本発明の熱交換器は、事実、尿素合成混合物からの未反応カルバメートの分離において特にストリッパとして用いられると有利である。本発明の設備は、次の化学式1
2NH3+CO2+nH2O→NH4OCONH2・nH2O ・・・ (化学式1)
の反応による化合物の凝縮生成物である水、アンモニア、二酸化炭素及びアンモニウムカルバメートを含む混合物の存在下において、通常1〜40MPaの圧力及び70〜300℃の温度で稼働する。
【0073】
動作条件は、好ましくは、12〜25MPaの圧力及び120〜240℃の温度である。
【0074】
本発明が特に関連する尿素の製造のための通常の工業プラントでは、高圧又は中程度の圧力セクションに設けられる上述した設備は、通常、2,000〜100,000リットルの容積を収容する。
【0075】
この目的のため、反応混合物は、立型落下膜型熱交換器に送られ、液膜は、極めて効果的に加熱され、外側から導入され又は反応器を出た混合物中に過剰に存在するストリッピングガスから得られるストリッピングガス、通常、新鮮なCO2又はNH3のあり得る作用を受けて、CO2及び気体NH3並びに水蒸気を放出し、かくして、液体に対して反対方向に流れて各管内を上昇し、液体混合物が分配される熱交換器の上側チャンバ内に集められる気体混合物が形成され、次に、出口ラインを通って除去されて再凝縮し、その後反応器に再循環される。
【0076】
本発明の設備は又、有利には、尿素合成プロセスの他の部分、例えば中圧又は低圧カルバメート分解装置内で使用でき、かかる分解装置では、この化合物の最後の微量成分が尿素から分離され、溶融され又は溶解状態にあり、そして反応器に向かって戻され又は再び尿素真空濃縮セクション内に送り込まれる。
【0077】
添付の図面は、本発明の実施形態の幾つかの例示の且つ非限定的な実施例及び比較目的で先行技術で知られている構成と共に相対的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】特に尿素の合成のためのプラント内においてカルバメートの分解のための高圧蒸留塔として用いられるのに適した本発明の管束設備の縦断面の概略斜視図であり、分かりやすくするために、相対的なフェルールを載せた束のうちの1本の管だけが示している図である。
【図2】尿素合成プロセスの高圧サイクル中におけるカルバメートの分離のために当該技術分野において用いられている典型的な蒸留塔において伝統形のフェルールが組立られたステンレス鋼円筒形本体に機械的に取り付けられているジルコニウムの薄い内部層を有する特許文献1に記載されている形式のバイメタル管の終端部の概略縦断面である。
【図3】図1の管束設備に示しているように、ガスケットを挟んで組立てられたフェルールを有する本発明の管の終端部の概略縦断面図である。
【図4】図3の拡大細部の2つの概略的な図であり、図4Bにおいて縦断面を示すと共に図4Aにおいて図4BのS1〜S2線における横断面を示し、垂直方向管の終端部内のフェルール自体の結合領域の細部を識別することができるようにしている図である。
【図5】本発明の管束設備内にフェルールを固定するために用いられるグリッドの一部分を上から見た略図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
簡潔にすると共に細部を図で見て分かりやすくするために、図に見える互いに異なる要素の比率は、実際の比率と一致していない。
【0080】
上述した図を参照して、本発明による管束設備の非限定的な実施形態についての説明を次に行い、特に、供給原料中に存在する極めて過剰の(N/C比は、通常、3.0〜3.6である)アンモニアからなるストリッピングガスを用いる尿素の合成(いわゆる自動ストリッピングプロセス)のためのプラントに用いられるストリッパを参照する。
【0081】
図1は、垂直方向に位置決めされたストリッパの断面図であり、このストリッパにおいて、3つの中空のセクションが識別され、3つの中空のセクションは、半球形部を有する上セクション1と、円筒形の中間セクション3と、半球形部を有する下セクション2である。円筒形の中間セクションの直径は、1.5〜2.5mの範囲内にあり、その長さは、5〜10mの範囲内にある。2つのマンホール7,8がそれぞれ、管束設備の上端部及び下端部に設けられ、上セクション1及び下セクション2は、中間セクション3から2つの管板15,16によって密封式に分離されており、各管板15,16は、管4の通路のための2,000〜4,000個の孔を備えている。上セクション1及び下セクション2の壁の残部は、耐力本体14によって境界が定められている。
【0082】
上セクション1内で識別されるフェルール5が、管4の上端部の上に組立てられ、グリッド17によって定位置に保持されている。上横孔203及び接線方向の中間孔204が液体の入口としてフェルールに設けられており、上横孔203及び中間孔204は、図3及び図4において良好に識別される。尿素、水、過剰のアンモニア及び未変換カルバメートを含む尿素合成反応器から出た溶液が、ライン9によって約180〜200℃の温度で且つ約14〜17MPaの圧力でストリッパ又は分離塔に供給される。溶液は、トロイド(toroid)又は分配器13によって分配される。液体は、グリッド17を通って滴下し、管板15の表面からなる上セクション1の底面の上に集められ、接線方向の中間孔204よりも僅かに上の高さ位置又はレベル21に達し、接線方向の中間孔204からフェルール5の内部、次いでに管4の内部に滴下し、図1には示していない薄い層を形成する。一方、分解及びストリッピング段階において放出されたアンモニア及び二酸化炭素の蒸気は、管4の中央部分を反対方向に通行する。次いで、蒸気は、フェルールの上横孔203を通って排出され、出口ライン10に向かって送られる。
【0083】
上セクション1の内面全体は、図1には示していない耐腐食性金属で覆われ、耐腐食性金属は、例えば、厚さが3〜8mmの範囲内にあり、25/22/2 Cr/Ni/Mo(尿素等級)、チタン又はジルコニウムである。
【0084】
管束設備の中間セクションは、円筒形チャンバ3を有し、円筒形チャンバ3は、炭素鋼で作られた壁20によって外側に向かう境界がさだめられ、通常20〜30mmの範囲内の厚さを有し、管束が、円筒形チャンバ3を横切り、飽和蒸気が、約2〜3MPaの圧力で且つ200〜240℃の温度で入口19を通って円筒形チャンバ3内に供給され、管4の外部を循環し、管4の外壁上で凝縮し、管4は、内部を流れている尿素及びカルバメートの水溶液に熱を伝達する。次いで、排出された蒸気の凝縮液は、ライン18から出る。このように、カルバメートを分解し、過剰のアンモニアを蒸発させ、アンモニアは、ストリッピング剤として作用する。
【0085】
下セクション2は、上セクション1と同様の耐力本体14と、下側管板16とによって境界が定められている。この場合も、プロセス流体と接触するように晒されるヘッド及び管板の表面全体は、図1に示していない被膜を有し、被膜は、耐腐食性の高い適当な金属又は合金からなり、かかる金属又は合金は、上述した材料から選択される。カルバメートから主として精製された尿素の溶液は、下セクション2の底面上に集められ、サイホン11内に押し入れられ、溶液は、サイホン11から次の精製及び乾燥セクションに向かって進む。分離を助けるために、必要であれば、更にアンモニアを入口12から導入してもよいし、変形技術により二酸化炭素を導入してもよい。必要な場合、パッシベーション空気を同じ入口12から導入してもよい。
【0086】
図2の図面において、フェルール102の下に位置する管111を識別することができる。管111は、円筒形壁109によって境界が定められ、例えば、タイプAISI316Lのステンレス鋼(尿素等級)、INOXスチール25/22/2 Cr/Ni/Moからなり、炭素鋼で作られた管板106に挿入され、管111の端部は、耐食被膜107に溶接部108によって溶接されている。ジルコニウムで作られた管状のジャケット110が、管111の円筒形壁109に機械的に取り付けられ、高耐腐食性及び高耐浸食性を有する層を形成している。図2で注目できるように、保護層の終端部は、フェルール102の下部分の挿入を可能にするために、工業適用例において30〜100mmの範囲で変化する長さにわたって除去され、フェルール102の下部分は、管111の内径と同じ内径を実質的に維持するように加工され、管111の上端の支持線と一致するL字形輪郭を有し、かくして、環状の当接面を形成している。フェルール102は、壁101によって境界が定められ、ステンレス鋼又はチタンで作られ、壁101の側面に位置する3〜4つの接線方向の孔104を有し、接線方向の孔104は、管111の上に当接するフェルール102の環状当接面から20〜50mmの範囲内の高さのところに位置している。フェルール102の上部分は、閉鎖されており、グリッド105によって、すなわち、グリッド105に単に当接することによって、定位置に維持されている。ガスの排出のための2つ又は3つの開口103が、フェルール102の最上端の僅かに下のところに位置し、約20〜25mmの直径を有している。管111(被膜又はジャケット110を含む)の内径、かくして、フェルール102の内径は、通常、高圧設備(>10MPa)において10〜40mmの範囲内にあり、中圧又は低圧設備(≦9MPa)において20〜50mmである。
【0087】
図3を参照すると、図3は、本発明による管束設備を表す要素を示している。図3に示す熱交換器の管4は、円筒形壁209によって境界が定められ、単一の金属層で表されているが、既に述べたように、異なる金属又は合金の2つ又は3つ以上の層を有していてもよい。管4は、管板206内に挿入され、管板206は、通常炭素鋼で作られ、耐食金属層207で被覆され、密封式溶接部208によって管4の上端部の近くに位置し、管4は、30〜50mmの範囲内の長さにわたって被覆207よりも上に突出している。
【0088】
フェルール5は、管4の上に位置し、図4に明確に見える下部分215が管4の入口端部に挿入され、下部分215は、管4の内径と実質的に同じ内径を維持するように加工され、フェルール5の当接ベース又は当接下面216に対して直角をなしている。フェルール5は、壁201によって境界が定められ、ステンレス鋼又はチタンで作られ、3〜4つの接線方向の孔204を有し、接線方向の孔204は、壁201の側面に位置し、当接ベース216から50〜100mmの範囲内の高さのところに位置している。
【0089】
環状の当接ベース216の近くに位置する更なる金属製ストリップ214が、図3において見られ、図4においてより明確に見られ、フェルール5の主管状要素又は壁201に対して外側に突出し、当接ベース216の水平方向環状面を下方に越えて5〜20mmの長さにわたって延びている。ハウジング部が、3つの側面においてそれぞれ、水平方向の当接ベース216、図4の拡大図で明確に見られる金属製ストリップ214の突出部分、下部分215の垂直方向壁によって境界が定められ、ハウジング部内で識別されるガスケット213が、PTFEで作られ、ガスケット213により、フェルール5が、各管211の上端部の境界部の上に間接的に当接し、それと同時に、熱交換器の上側領域に集められた液相の漏れを防止する。
【0090】
フェルールの上側部分は、ストッパ212によって閉鎖され、グリッドを205によって定位置に保たれ、グリッド205の細部を、図5の平面図で示す。ガス又は蒸気を放出するために、2つ又は3つ以上の開口203が、フェルールの最上端の僅かに下に位置し、約10〜20mmの直径を有している。管4及びそれに対応するフェルール5の上部分の内径は、通常、高圧設備(>10MPa)において10〜30mmの範囲内にあり、中圧又は低圧設備(≦9MPa)において20〜60mmの範囲内にある。
【0091】
しかしながら、本発明による管束設備では、先の図2に示した管束設備と異なり、管211の端部を、管211をフェルール5の下部分215の挿入に適合させるように予め加工する必要はなく、その理由は、フェルール5と管211の組立体の満足できるシールが、ガスケット213の存在によって確保され、外側の金属製ストリップ214の存在によって安定した位置に保たれるからである。
【0092】
図5の図面は、グリッド17の一部分を上方から見た概略図であり、グリッド17の断面が表され、グリッド17は、図1及び図3において同じ参照符号を有している。図5では、多数の円形孔301が識別され、円形孔301は、不均整な形態の他の開口302と幾何学的に規則的に交互に配置されている。各円形孔301は、フェルール5の上端部、好ましくは図3に見えるストッパ212を収容するように構成され、フェルール5の上端部又はストッパ212は、円形孔301自体の中への安定した挿入に好都合であるのに適した円錐台形、球形の一部分又は任意その他の形態を有している。したがって、各円形孔301の直径は、フェルール5の直径と実質的に同一であるか、又は、それよりも僅かに小さい。一方、開口302は、2つの機能を有し、1つは、蒸気がストリッパ交換器のヘッドの頂部に向かって流れることを可能にする機能であり、もう1つは、分散した液体が図1の分配器13から滴下することを可能にする機能であり、分散した液体は、レベル21に達するまで管板15の表面上に集められる。
【0093】
グリッドは、任意の耐食性金属から構成され、かかる耐食性金属は、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ステンレス鋼である。グリッドは、一般には、適当な厚さを有する板(シート)を、得るべき孔及び開口の輪郭に従って切断することによって得られる。この目的に特に適した既知の切断技術は、コンピュータ化されたシステムによって制御される高圧水ジェット(10〜100MPa)によるものである。
【0094】
図1、図3、図4及び図5を参照して前に説明した設備は、管の上に組立てられたフェルールの完全な密封を実証した。尿素合成プロセスにおいて高圧ストリッパの工業体制条件下(アンモニアによる自動ストリッピング条件下)における約1年の稼働の後、フェルールの組立て領域の点検結果は、明白な変形なしにテフロン(登録商標)で作られたガスケットの良好な保全状態、及び、液体の侵入に起因する浸食経路がないことを示した。
【0095】
上述した実施形態とは異なる本発明の実施形態を種々の応用上の要件に合わせて当業者により実施でき、かかる実施形態は、いずれの場合においても、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれる自明な変形例となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体間の熱交換に適した液膜落下式の管束設備であって、
垂直方向の円筒形本体を有し、前記円筒形本体は、その両端部が閉鎖され、孔あきの2つの管板によって少なくとも1つの上セクションと、中間セクションと、下セクションとに分割され、前記2つの管板は、横断方向に配置され、互いに適当な距離をおき、
複数の管を有し、前記複数の管は、管束を形成するように長手方向に配置され、前記管の両端部は、前記円筒形本体の上セクションと下セクションを互いに流体的に連通させるように前記管板の孔の中に密封式に挿入され、
前記管の壁に沿う膜の形態をなす液体の入口及び分配のために各管の上端部の上に位置するフェルールと呼ばれる管状装置を有し、前記フェルールは、その上部に位置する蒸気の出口のための1つ又は2つ以上の開口と、その中間の高さに位置する液体の入口のための好ましくは接線方向の1つ又は2つ以上の開口と、その下部に位置し且つ前記管の上端部の上に位置する環状ベースと、前記環状ベースを越えて下方に突出する円筒形の下部分と、を有し、前記円筒形の下部分は、10〜200mmの長さにわたって前記管に挿入され、前記フェルールは、前記環状ベースの外側の横に配置された金属製ストリップを有し、前記金属製ストリップは、少なくとも2mm、好ましくは3〜50mmの長さにわたって前記環状ベースを越えて下方に延び、
外側の前記金属製ストリップと前記円筒形の下部分との間に構成された環状領域内に位置するガスケットを有し、前記ガスケットは、前記フェルールの環状ベースと前記管の上端部との間に挿入される、管束設備。
【請求項2】
前記管は、5〜150mm、好ましくは10〜100mmの内径、及び、1〜20mm、好ましくは2〜15mmの厚さを有する、請求項1に記載の管束設備。
【請求項3】
前記管は、前記液膜と接触状態にあるジルコニウム又はその合金からなる少なくとも1つの内側層を有する、請求項1又は2に記載の管束設備。
【請求項4】
前記管束設備の管の上境界部は、前記管が挿入されている前記管板の平面を越えて最大80mmまで、好ましくは10〜50mmにわたって突出する、請求項1〜3の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項5】
前記フェルールの下部分は、数μmの公差を除き、前記管束設備の管の内径と実質的に同じ外径を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項6】
前記フェルールの下部分は、管状扇形部分からなり、管状扇形部分は、前記環状ベースの境界を下方に10〜120mm、好ましくは20〜80mm越える長さを有し、0.5〜5mm、好ましくは1〜4mmの厚さを有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項7】
前記フェルールの下部分の管状扇形部分は、下側末端部分が長さ5〜50mmにわたってテーパした円錐台形のものである、請求項6に記載の管束設備。
【請求項8】
前記フェルールの長さは、その上端の縁から、前記管の端部に挿入された前記下部分の延長境界部まで200〜800mm、好ましくは300〜600mmである、請求項1〜7の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項9】
前記フェルールの下部分の内側は、前記フェルールの上部分の管状輪郭に同軸に10〜150mm、好ましくは40〜100mmにわたって連続する、請求項1〜8の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項10】
前記連続領域において、前記下部分の内径は、上方に向かって徐々に増大し、長さ5〜50mmにわたって円錐台形の輪郭形状をなす、請求項9に記載の管束設備。
【請求項11】
前記フェルールの外側の環状の金属製ストリップは、環状ベースの境界部を越えて下方に2〜50mm、好ましくは3〜30mmの距離にわたって突出する、請求項1〜10の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項12】
前記ガスケットは、高性能圧縮性材料からなり、高性能圧縮性材料は、好ましくは、フッ化ポリマー、シリコンポリマー、高い耐薬品性及び高い耐熱性を備えた加硫され又は加硫されていない類似のエラストマー材料、貴金属からなる群から選択された請求項1〜11の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項13】
前記ガスケットは、可能であれば焼結された、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる、請求項12に記載の管束設備。
【請求項14】
前記ガスケットは、四角形断面を有し、垂直方向に0.5〜8mm、好ましくは1〜5mmの厚さを有する、請求項1〜13の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項15】
前記ガスケットは、環状の形状を有し、前記ガスケットが位置決めされるハウジング部の内径及び外径に実質的に一致した内径及び外径を有する、請求項1〜14の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項16】
液体の流入のための接線方向の前記開口が位置する高さは、前記管の上に位置する前記フェルールの環状ベースから50〜160mmの範囲内にある、請求項1〜15の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項17】
前記フェルールは、その上端部が溶接ストッパ又は蓋によって閉鎖され、ガスの出口のための少なくとも1つの横開口を前記上端部の近くに有する、請求項1〜16の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項18】
金属材料で作られたグリッドが、前記フェルールの上部に圧入され、一連のキャビティ又は孔を、前記フェルールの各々の上端部を収容することができる形態で適所に有する、請求項1〜17の何れか1項に記載の管束設備。
【請求項19】
前記グリッドは、前記上部分の上部に向かうガスの通行のための別の開口又は孔を有する、請求項18に記載の管束設備。
【請求項20】
請求項1〜19の何れか1項に記載の管束設備の製造方法であって、
孔あきの2つの管板を円筒形シェルの内側に配置する工程を有し、前記円筒形シェルは、その2つの端部のところに2つの終端ヘッドを備え、前記管板は、それぞれの前記終端ヘッドの近くに配置され、
複数の管を、前記管板の各々に設けられた孔の中に挿入して密封式に固定する工程を有し、前記複数の管は、前記2つの管板を互いに隔てる距離全体にわたって前記管板の平面に対して直角に延び、前記管板の各々とそれに対応する前記終端ヘッドとの間に構成される空間同士を互いに流体的に連通させ、
フェルールを前記管の各々上端部の上に位置決めする工程を有し、前記フェルールは、その上部に、蒸気の出口のための1つ又は2つ以上の開口を有し、その中間高さのところに、液体の入口のための好ましくは接線方向の1つ又は2つ以上の開口を有し、その下部に、前記管の上境界部の上に保持される環状ベースと、前記環状ベースを越えて下方に突出する円筒形部分と、を有し、前記円筒形部分は、10〜200mmの範囲の長さにわたって前記管の内に挿入され、前記管の内径と実質的に同じ外径を有し、前記フェルールは、更に、金属製ストリップを有し、前記金属製ストリップは、前記環状ベースの外側の横に配置され、前記環状ベースを越えて少なくとも2mm、好ましくは3〜50mmにわたって下方に突出し、
ガスケットを、外側の前記金属製ストリップと下方に突出した前記円筒形部分との間に構成された環状領域に挿入する工程を有し、前記ガスケットは、前記フェルールの環状ベースと前記管の上端部との間の支持部として作用する、方法。
【請求項21】
尿素の合成プロセスにおける熱交換器として、請求項1〜19の何れか1項に記載の管束設備の使用方法。
【請求項22】
前記管束設備において、アンモニウムカルバメートの分解工程の実施を行うことを含む、請求項21記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526259(P2012−526259A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509105(P2012−509105)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000961
【国際公開番号】WO2010/128371
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(593182347)サイペム・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM S.P.A.
【Fターム(参考)】