説明

液体混合方法、該液体混合方法を用いたタンパク質結晶化条件のスクリーニング方法、液滴吐出装置

【課題】 本発明は、2種以上の微量の液体を迅速かつ十分に、任意の割合で混合する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、2種以上の液体を任意の割合で混合する方法であって、ノズル(26)と、ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室(22)と、加圧室に連通する液体保持手段(16)と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッド(10)を用い、2種以上の液体を、液体保持手段のそれぞれに充填する第1工程と、液滴吐出手段を同時に作動させ、2種以上の液体が混合された1の液滴となって基板上に配置されるように吐出する第2工程と、を含む液体混合方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の液体を任意の割合で混合する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特にバイオテクノロジーの分野では、マイクロリットル単位の微量な液体の濃度や体積を制御する技術が必要とされている。例えば、近年、タンパク質の立体構造を解明するために、タンパク質を結晶化させ、得られた結晶をX線構造解析する方法が開発されている。タンパク質の結晶化は、タンパク質溶液から溶媒が蒸発し、溶けきれなくなったタンパク質が析出してくることによって得られるが、この際、結晶が生成されやすくなるように、溶液の溶解度を下げる沈殿剤と呼ばれる試薬を添加する。沈殿剤は、塩、有機溶媒、高分子化合物等を含むが、沈殿剤の至適濃度や、結晶化反応の至適pHは、タンパク質の種類によって異なる。そのため、あるタンパク質の結晶化に最適な条件を選択するためには、タンパク質溶液の溶媒の種類や、タンパク質溶液と沈殿剤との混合割合を変更して、様々な条件で結晶化試験を行ってみることが必要である。しかしながら、溶媒の種類、濃度、pHを変化させて組み合わせるため、試験の数は膨大になり、溶液の調整に多くの時間が費やされる。
【0003】
このように、液体を任意の割合で混合するためには、従来、微量分注装置が用いられている。このような分注装置として、特開2001−169771号公報には、支持アームによってサンプル用容器、微生物用容器、混合容器に移動される、液体を吸引・吐出可能な分取用のプローブと、分注量を制御する制御手段とを有する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−169771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した分注装置では、プローブが、混合すべき溶液を入れた容器(サンプル用容器および微生物用容器)と混合容器の間を往復しなければならず、この移動に時間を要する。また、混合容器中に、混合すべき複数の液体を順次分注していく場合、液体の種類によっては上下に液体が分離してしまい、十分に混合されないことがある。
【0005】
そこで、本発明は、2種以上の微量の液体を迅速かつ十分に、任意の割合で混合する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体混合方法は、ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを用い、前記2種以上の液体を、前記液体保持手段のそれぞれに充填する第1工程と、前記液滴吐出手段を同時に作動させ、前記2種以上の液体が混合された1の液滴となって固相表面上に配置されるように吐出する第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、個別に作動させることができる液滴吐出手段によって、液体保持手段が保持する任意の液体をノズルから吐出させることができる。そして、例えば、充分に近接したノズルから液滴を吐出するか、基板上の同一の領域に配置されるよう吐出する角度を調節するなどの方法によって、2以上のノズルから吐出された液滴が混合され、1の液滴となって基板上に配置される。
【0008】
また、本発明に係る液体混合方法の別の態様は、2種以上の液体を任意の割合で混合する方法であって、ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを用い、前記2種以上の液体を、前記液体保持手段のそれぞれに充填する第1工程と、前記液滴吐出手段を同時に作動させ、前記2種以上の液体を同一の容器内に吐出する第2工程と、を含むことを特徴とする。このような構成によれば、マイクロタイタープレートのウェル等、その後、実験等に使用する容器の中に、直接、任意の割合で混合された2種以上の液滴を配置していくことができる。
【0009】
また、本発明に係る液体混合方法においては、上記液滴吐出ヘッドに加えて、同様の構成を有する第2の液滴吐出ヘッドを用い、第2工程において、2種以上の液体を、上記容器として第2の液滴吐出ヘッドの液体保持手段内に吐出することも好ましい。このような構成によれば、第1の液滴吐出ヘッドの各液体保持手段内に充填された液体は、任意の比率で、第2の液滴吐出ヘッドの液体保持手段に吐出され混合される。第2の液滴吐出ヘッドからは、混合された液体をそのまま吐出してもよいし、さらに第2の液滴吐出ヘッドの2以上の液体保持手段に保持された液体を混合するように吐出してもよい。
【0010】
第2工程において、液体の混合割合は、吐出される液滴のサイズおよび/または吐出回数を変えることによって行うことができる。例えば、一の液体保持手段に保持された液体Aと、別の液体保持手段に保持された液体Bとを2:1の割合で混合するためには、液体Aの液滴のサイズを液体Bの液滴のサイズの2倍としてもよく、また、液体Aの液滴の吐出回数を、液体Bの液滴の吐出回数の2倍としてもよい。
【0011】
本発明に係る液体混合方法は、タンパク質の結晶化の条件のスクリーニング方法に好適に用いることができる。具体的には、本発明に係る液体混合方法を用い、タンパク質溶液と、該タンパク質溶液を希釈するための液体とを吐出、混合して複数の濃度のタンパク質を含む液滴を基板表面に配置する工程と、沈殿剤を含む溶液と、該沈殿剤を希釈するための液体とを吐出、混合して複数の濃度の沈殿剤を含む液体を、試料容器中に配置する工程と、上記基板を、タンパク質を含む液滴が配置された面を下にして、上記試料容器上に蓋をするように置き、ハンギング・ドロップ法によりタンパク質を結晶化させる工程と、を含む方法である。このような構成により、多くの濃度のタンパク質溶液と、多くの濃度の沈殿剤とを極めて短時間で調製することが可能であり、また、各溶液をハンギング・ドロップ法に適した形態で基板上または試料容器中に配置することができる。こうして、様々な条件でタンパク質の結晶化試験を行うことにより、結晶化に最適な条件を効率よく決定することが可能となる。
【0012】
本発明は、さらに、ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを2以上装着することができる液滴吐出装置であって、1の液滴吐出ヘッドの少なくとも2以上のノズルから吐出された液体が、別の液滴吐出ヘッドの1の液体保持手段内に吐出されることを特徴とする、液滴吐出装置をも包含する。このような装置によれば、1の液滴吐出ヘッドの液体保持手段に充填された2種以上の液滴を混合して別の液体保持手段内に配置することが可能である。これを繰り返し行うことによって、多種類の微量の液体を任意の割合で順次混合していくことができ、様々な条件の混合溶液を迅速に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0014】
(液滴吐出ヘッド)
図1(A)は、本発明に係る液体混合方法に適したインクジェットヘッド10を示す概略斜視図である。インクジェットヘッド10は、ノズルと、加圧室と、リザーバ(液体保持手段)とを備える液滴吐出手段を96セット備えている。図1(A)中、インクジェットヘッド10の上面12には、8行12列で96個の孔が設けられ、これが各液滴吐出手段の液滴保持手段16となっている。
【0015】
図1(B)は、図1(A)のIB−IB線に沿った模式断面図である。インクジェットヘッド10の面14の中央には、ノズル26を有するヘッドチップ20が備えられている。ヘッドチップには96個のノズル26が48行×2列の配置に設けられているが、本断面図では、2つのノズル26cおよび26jのみが示されている。ヘッドチップ20には、ノズル26cおよび26jから吐出する液体に加圧するための加圧室22cおよび22jも形成されている。ノズル26cと加圧室22cとリザーバ16c、また、ノズル26jと加圧室22jとリザーバ16jが、それぞれ1セットの液滴吐出手段を構成する。
【0016】
加圧室22cおよび22jには、例えば、アクチュエータ電極と、シリコン基板からなる振動板を形成し、アクチュエータ電極とSi基板に発振回路をフレキシブル回路基板にて配線することにより、静電駆動方式の液滴吐出ヘッドとすることができる。インクジェットヘッド10の加圧室は、一つ一つ独立して作動させることが可能である。
【0017】
このようなインクジェットヘッド10は、例えば、3つの基板17、18、および19を積層し、基板17にヘッドチップ20を接着することによって作製することができる。
【0018】
図2(A)に基板17の平面図を示す。基板17には、基板18を積層することによって流路13を形成する溝13’が96本形成されている。溝13’は、基板17の周縁部から中央に向かって集束し、各溝13’の基板周縁側の末端は、供給口16のピッチ(形成間隔)と一致していている。一方、各溝13’の基板中央側の末端には、圧力室に接続する貫通孔が設けられている。
【0019】
次に、図2(B)に基板17上に積層される基板18の平面図を示す。基板18には8行×12列で96個の貫通孔27が形成されている。貫通孔27のピッチは、供給口16のピッチに一致する。貫通孔27は、流路13と供給口16とを連通させる流路となる。
【0020】
図2(C)に、基板19の平面図を示す。基板19には、貫通孔28が96個形成されている。貫通孔28のピッチも供給口16のピッチと一致し、貫通孔28の下端は基板18の貫通孔27に接続される。貫通孔27は、図1(B)にも示されるように所定の深さまで大きな内径を有している。
【0021】
基板17、18および19は、ガラス、樹脂等の材料で形成することができ、溝や貫通孔は、エッチング、射出成形等、材料に適した方法によって形成することができる。
【0022】
(液滴吐出装置)
図3に、上述したインクジェットヘッド10を装着して用いる液体混合用装置200の構成例を説明する図を示す。
【0023】
本発明に係る液体混合装置200は、ガラス等の基板202上、またはマイクロタイタープレート204のウェル内に複数種類の液体を吐出混合する装置である。
【0024】
液体混合装置200は、複数の基板202またはマイクロタイタープレート204を載置可能に構成されたテーブル206と、インクジェットヘッド10を固定するための固定手段212とを備え、テーブル206をX方向に自在に移動させるためのX方向駆
動軸214と、固定手段12をY方向に自在に移動させるためのY方向駆動軸216と、固定手段12をZ方向に自在に移動させるためのZ方向駆動軸218と、を有する。X方向駆動軸214、Y方向駆動軸216、Z方向駆動軸218をそれぞれ制御するこ
とにより、液滴吐出ヘッド10に搭載された液体を、基板202またはマイクロタイタープレート204の所望の位置に吐出することができる構成となっている。
【0025】
(液体混合方法)
次に、上述した液滴吐出ヘッド10を装着した液滴吐出装置200を使用した液体混合方法について説明する。
【0026】
図4は、本発明に係る液体混合方法の第1の態様を説明する概略図である。まず、図4(A)に示すように、液体保持手段のそれぞれに、2種以上の液体を充填する。2種以上の液体とは、溶質、分散質、溶媒、分散媒等が異なるものであってもよいし、同一の溶媒および溶質からなる液体で、濃度のみが異なるものであってもよい。
【0027】
次に、図4(B)に示すように、液滴吐出手段を作動させ、即ち加圧手段によって加圧室22中の液体に加圧して、2種以上の液体が、混合された1の液滴となって基板上に配置されるように吐出する。図4(B)では、リザーバ16cおよび16j中の液体が、ノズル26cおよび26jから吐出され、1の液滴30aとなって基板202上に配置される。本実施形態では、ノズルが極めて近接して形成されているので、複数のノズルから同時に液滴を吐出すると、最初に基板に到達した微小滴は融合して1つの比較的大きな液滴を形成する。そして、後続する微小滴はその比較的大きな液滴に到達すると即座に拡散を開始するので、それぞれ順次吐出する方法に比べて充分に混合されている。
【0028】
続いて、X方向駆動軸214、Y方向駆動軸216、Z方向駆動軸218を適宜駆動
させ、基板202に対するノズル26の位置を順次移動させて、液体を吐出する。こうすることによって、基板202上に、多くの種類の混合溶液の液滴をアレイ状に配置することが可能となる。静電駆動方式によれば、微量の液滴の量を正確に制御できるとともに、液滴吐出手段を自由に選択して作動させることができる。従って、各吐出ごとに混合する溶液の種類および割合を変更することが可能であり、多種類の混合溶液の液滴を、極めて高速に配置していくことが可能である。
【0029】
図5は、本発明に係る液体混合方法の第2の態様を説明する概略図である。まず、図5(A)に示すように、液体保持手段のそれぞれに、2種以上の液体を充填する。2種以上の液体とは、溶質、分散質、溶媒、分散媒等が異なるものであってもよいし、同一の溶媒および溶質からなる液体で、濃度のみが異なるものであってもよい。
【0030】
次に、図5(B)に示すように、液滴吐出手段を作動させ、即ち加圧手段によって加圧室22中の液体に加圧して、2種以上の液体を同一の容器内に吐出する。図5(B)では、リザーバ16cおよび16j中の液体が、ノズル26cおよび26jから吐出され、マイクロタイタープレート202のウェル220中に配置される様子を示している。本実施形態では、ノズルが極めて近接して形成されており、1つのウェル220中に2種以上の液体を吐出することが可能である。各吐出ごとに、どの液滴吐出手段を作動させるか選択することができるので、それぞれのウェル220の中に、異なる混合溶液を、量を制御しながら極めて高速に配置していくことができる。なお、各液体の混合割合は、液滴のサイズおよび/または吐出回数を変えることによって制御することができる。また、インクジェット法により、同時に吐出された液体は、容器中で十分に混合され、分離しにくい。
【0031】
図6に、本発明に係る液体混合方法を用いた、ハンギング・ドロップ法によるタンパク質の結晶化条件のスクリーニング方法の概略を示す。ハンギング・ドロップ法は、タンパク質溶液をガラス等に滴下し、上下を反転させて沈殿剤を入れたマルチプレートのウェルの天井部分に配置し、化学的に溶媒を拡散させてタンパク質を結晶化させる方法である。
【0032】
まず、図6(A)に示すように、液滴吐出ヘッド10の液体保持部16に吐出する液体を充填する。例えば、リザーバ16a〜16iまでには、濃度の異なるタンパク質溶液を充填しておき、リザーバ16j〜16lまでには、タンパク質溶液の溶媒と同じ組成の緩衝液等を充填する。
【0033】
次に、図6(B)に示すように、タンパク質溶液と緩衝液とを同時に基板202に吐出する。同図は、リザーバ16cに蓄えられたタンパク質溶液とリザーバ16jに蓄えられた緩衝液が同時にノズルから吐出されているところを示している。タンパク質溶液と、緩衝液とを等量吐出すれば、タンパク質溶液は2倍に希釈される。また、緩衝液の液滴のサイズをタンパク質溶液の液滴のサイズの2倍とすれば、タンパク質溶液は3倍に希釈される。尚、必要に応じて、基板202に向けて1つのノズルから液滴を吐出してもよい。これにより、リザーバに蓄えられたのと等しい濃度の液滴が、基板202に配置される。
【0034】
こうして、基板202に様々な濃度のタンパク質溶液を配置した後、図6(C)に示すように、基板202を上下反転し、沈殿剤32を入れたマイクロタイタープレート204上に置いて、各ウェルの天井に、タンパク質溶液30が配置されるようにする。こうして化学的に溶媒を拡散させ、タンパク質を結晶化させ、最も効率よく結晶化されるタンパク質濃度をスクリーニングすることができる。
【0035】
一方、タンパク質溶液の濃度をすべて同一とし、マイクロタイタープレート204の各ウェルに用意された沈殿剤32の濃度をそれぞれ変えておくことにより、結晶化に最適な沈殿剤濃度をスクリーニングすることができる。なお、沈殿剤32も、本発明に係る液体混合方法によって、準備することができる。上述したタンパク質溶液の場合と同様に、複数の濃度の沈殿剤とその希釈のための溶液とを、それぞれリザーバに用意して、マイクロタイタープレート204の各ウェルに同時に吐出する。沈殿剤と希釈溶液との液滴のサイズや、吐出回数を制御して、各ウェルに所望の濃度で沈殿剤を配置させることが可能である。
【0036】
尚、液滴のサイズや吐出回数によって濃度を制御すると、作製される混合溶液の量を一定にするのが困難である。混合溶液の量を一定にしたい場合は、図7に示すように、2つの液滴吐出ヘッド60aおよび60bを備える装置を用いればよく、かかる構成の装置も本発明に包含される。液滴吐出ヘッド60aおよび60bは、それぞれ図示されないX方向およびY方向の位置決め手段によって独立に配置することが可能な構成となっている。
【0037】
まず、液滴吐出ヘッド60aの各リザーバに、複数の濃度のタンパク質溶液と、タンパク質溶液の溶媒と同様の組成の液体と、を充填する。そして、液滴吐出ヘッド60aのどの液滴吐出手段によって吐出するかを適宜選択するとともに、X方向およびY方向位置決め手段により、液滴吐出ヘッド60aから吐出された液滴が、液滴吐出ヘッド60bの所望のリザーバに吐出されるよう配置する。
【0038】
そして、任意のタンパク質溶液と溶媒とを、液滴吐出ヘッド60bの各リザーバに吐出していく。タンパク質溶液の濃度は、選んだ液滴吐出手段に依存するが、液滴のサイズを変更したり、吐出回数を変更したりすることによって、自由に選択することが可能である。
【0039】
このようにして、作製された種々の濃度の液滴を、液滴吐出ヘッド60bから、基板202やマイクロタイタープレート204のウェル中に吐出する。このような方法によれば、液滴吐出ヘッド60bのリザーバ中で、一旦混合溶液が作られ、これが基板202またはマイクロタイタープレート204のウェル中に吐出されるので、充分に混合された液滴を等量ずつ、配置することが可能である。
【0040】
なお、以上はハンギング・ドロップ法について述べたが、タンパク質を含む混合溶液をマルチプレートのウェル中に配置して、シッティングドロップ法により結晶化させる場合も、本発明にかかる液体吐出方法を有効に適用することが可能である。
【0041】
以上のように、本発明に係る液体混合方法および液滴吐出装置によれば、種々の濃度の混合溶液を極めて短時間に作製することができる。この方法および装置を使用すれば、タンパク質の結晶化条件のスクリーニング方法をハイスループットに行うことが可能となる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、ノズル、液体保持部、および供給口の数は96個に限定されず、目的とする混合溶液の種類、試料容器のウェルの数等に合わせて自由に変更できる。また、吐出する液体は、タンパク質結晶化のための溶液に限られず、インクジェットヘッドから吐出できる液体である限り、種類を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に用いられる液滴吐出ヘッドの一例を示す概略図である。
【図2】本発明に用いられる液滴吐出ヘッドを構成する基板の平面図である。
【図3】本発明に係る液滴吐出装置の一態様を示す概略斜視図である。
【図4】本発明に係る液体混合方法の工程を示す説明図である。
【図5】本発明に係る液体混合方法の工程を示す説明図である。
【図6】本発明に係るタンパク質スクリーニング方法の工程を示す説明図である。
【図7】本発明に係る液滴吐出装置の一態様を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10、60…液滴吐出ヘッド、16…液体保持手段(リザーバ)、17〜19…基板、13…流路、13’…溝、20…ヘッドチップ、22…加圧室、26…ノズル、27、28…貫通孔、200…液体混合装置、202…ガラス基板、204…
マイクロタイタープレート、206…テーブル、212…固定手段、214…X方向駆動手段、216…Y方向駆動手段、218…Z方向駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の液体を任意の割合で混合する方法であって、
ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを用い、
前記2種以上の液体を、前記液体保持手段のそれぞれに充填する第1工程と、
前記液滴吐出手段を同時に作動させ、前記2種以上の液体が混合された1の液滴となって固相表面に配置されるように吐出する第2工程と、を含む液体混合方法。
【請求項2】
2種以上の液体を任意の割合で混合する方法であって、
ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを用い、
前記2種以上の液体を、前記液体保持手段のそれぞれに充填する第1工程と、
前記液滴吐出手段を同時に作動させ、前記2種以上の液体を同一の容器内に吐出する第2工程と、を含む液体混合方法。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドに加えて、さらに、ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な第2の液滴吐出ヘッドを用い、
前記第2工程において、前記2種以上の液体を、前記容器として前記第2の液滴吐出ヘッドの液体保持手段内に吐出する、請求項2に記載の液体混合方法。
【請求項4】
前記第2工程において、吐出される液滴のサイズおよび/または吐出回数を変えることによって、混合の割合を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体混合方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記2種以上の液体として、タンパク質溶液と、該タンパク質溶液を希釈するための液体とを用い、基板表面上に複数の濃度のタンパク質を含む液滴を配置する工程と、
請求項2に記載の方法において、前記2種以上の液体として、沈殿剤を含む溶液と、該沈殿剤を希釈するための液体とを用い、複数の濃度の沈殿剤を含む液体を、試料容器中に配置する工程と、
前記基板を、前記タンパク質を含む液滴が配置された面を下にして、前記試料容器上に蓋をするように置き、ハンギング・ドロップ法によりタンパク質を結晶化させる工程と、を含む、タンパク質結晶化の条件のスクリーニング方法。
【請求項6】
ノズルと、該ノズルから液体を吐出するために加圧する加圧室と、該加圧室に連通する液体保持手段と、を有する液滴吐出手段を2以上備え、該液滴吐出手段を個別に作動させることが可能な液滴吐出ヘッドを2以上装着することができる液滴吐出装置であって、
1の液滴吐出ヘッドの少なくとも2以上のノズルから吐出された液体が、別の液滴吐出ヘッドの1の液体保持手段内に吐出されることを特徴とする、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−281139(P2006−281139A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106884(P2005−106884)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】